「M&Aののれんって何なの?」
「M&Aにおけるのれんの目的を知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に「M&A のれん」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、M&Aののれんについて分かりやすく簡潔に解説します。
またM&Aののれんにおける作成方法や目的についても詳しく解説するので、M&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
M&Aにおける「のれん」とは
M&Aとは、企業と企業による買収や合併といった組織再編をおこなうための手法のひとつです。特に中小企業の数が多い日本では、M&Aによる取引が盛んにおこなわれている傾向にあります。
そんなM&Aにおけるワードとして、よく登場するのが「のれん」という言葉です。のれんはM&A後の自社会計にも大きな影響を及ぼすため、よく理解しておく必要があります。
「のれん」の意味
M&Aにおける「のれん」は、買収企業(譲り受け企業)が売却企業(譲渡企業)を取得する際に支払った購入価格が、売却企業の純資産(資産総額から負債総額を引いた額)を上回る部分を指すワードです。これは、会計上の無形資産として扱われ、「Goodwill(グッドウィル)」とも呼ばれます。
のれんは売却企業が持つ以下のような無形資産の価値を表します。
- ブランド価値
- 顧客基盤やロイヤルティ
- 従業員のスキルや知識
- ビジネスの独自性や競争優位性
- 将来の収益期待
上記は通常、財務諸表に明示的に記載されていないため、買収時に価格の差額として「のれん」として計上されます。のれんは、企業価値に含まれる無形の強みを数値化するため、買収価格を正当化する材料となるものです。
「のれん」の由来
のれんは、売却企業が持つ無形資産の価値を表すワードです。「のれん」は、その名の通りお店の軒先に掲げられる「暖簾(のれん)」に由来しており、歴史の中で企業が確立してきたブランド力や顧客との関係を示しています。
「のれん」とは、元々は商店や飲食店の入口にかけられている布製の幕を指すものです。この暖簾には店名や屋号が記されており、その店の信用やブランドを象徴するものとなっています。
日本の商取引では、店の「信用」や「評判」こそが大きな財産とされ、これが商売の継続や成功を左右しました。この「暖簾の価値」が転じて、企業の持つ無形の価値(ブランドや顧客基盤、事業の信頼性など)を表す言葉となっています。
M&Aにおける「のれん」の種類
M&Aにおける「のれん」には、「会計におけるのれん」「税務におけるのれん」「負けのれん」の3つが存在します。それぞれ詳しく解説していきます。
会計における「のれん」
会計における「のれん」は、個別財務諸表と連結財務諸表を分けて考慮しなければなりません。個別財務諸表とは、会社全体における決算書のことを指します。
中小企業のM&Aにおいては、「株式譲渡」のスキームが用いられることが多いです。しかし株式譲渡のスキームにおいては、個別財務諸表上は、のれんが計上されません。そのため、買収側が売却側の純資産以上の金額を支払ったとしても、子会社株式として金額が計上されるので注意が必要です。
一方で、連結財務諸表とは、上場企業などが各社の財務諸表(個別財務諸表)を組み合わせて作ったものであるため、株式譲渡のスキームが用いられたとしても、のれんが計上されることがあります。
税務における「のれん」
税務における「のれん」では、のれんとして計算に組み込んだ金額が、税務処理において資産計上・負債調整勘定として処理されるというものです。
税務では、「のれん」は、一定の期間で償却することが認められています。会計上は、のれんを使用可能期間に基づいて償却または非償却とする選択肢がありますが、税務上は一律で5年間の均等償却が求められるのが一般的です。
また時価純資産を対価が上回れば、税務上における正ののれんとして資産調整勘定を計上します。しかし一方で、対価が純資産に達しなければ、負ののれんとして負債調整勘定に計算に組み込まれます。
負の「のれん」
通常、M&Aにおける「のれん」とは、M&A取引によって引き継いだ無形資産を表すものです。しかし一方で、負債として認識される、「負ののれん」として扱われることがあります。
負ののれんとは、買収価額から売却側企業の時価純資産額を引いた結果がマイナス数値である場合に用いられるものです。そのため、負けのれんであることは、買い手側にとって基本的にはプラスに働きます。
しかし、割安であることには必ず理由があるため注意が必要です。例えば、将来のリストラ計画や会計処理のない簿外債務などが発覚する場合には、買収価額が取り引かれることになります。
「のれん」の償却と減損
「のれん」は、企業にとって無形資産を意味するものであるため、他の項目と同様に会計処理されます。。
「のれん」は主に償却もしくは減損のいずれかにて会計処理されることが一般的です。それぞれの処理方法について詳しく解説していきます。
「のれん」の償却
ソフトウェアや特許権などは、「のれん」に分類される無形固定資産として会計処理されることが多いです。無形固定資産は、機械や工場などの設備と同様に減価償却されることになります。
のれんの価値は永続的に続くわけではなく、一定期間が経過することで、その価値は減少されることがほとんどです。そのため、のれんの取得費用を一定期間の中で、減価償却することが定められています。
「のれん」の減損
「のれん」の減損とは、いわば「M&Aの失敗による損失」を指すものです。のれんの減損では、のれんの帳簿価額が、実際の経済価値よりも高くなった場合、その差額を損失として計上します。
例えば、M&Aにより企業を買収した場合、その買収に投資した金額は、買収した企業の収益で回収することを目論むケースがほとんどです。しかし、M&A後の買収先企業の経営が難航すれば、投資分の金額を回収することはできません。
M&A実施時に見込んでいた収益は、取得時に貸借対照表の「資産」の部分にのれんとして計上されます。しかし、見込まれていた収益が回収できないと判断した場合には、帳簿上の価格を引き下げることが必要となり、この会計処理を「のれんの減損」と呼ぶのです。
M&Aにおける「のれん」の計算方法
M&Aにおける「のれん」の計算方法には、複数の手法が存在します。M&Aにおける「のれん」の計算方法は、主に以下の3つです。
- コストアプローチ
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
それぞれ詳しく解説していきます。
コストアプローチ
コストアプローチとは、資産を再取得するために必要なコストや、それを現在の状態に再構築するためのコストに基づいて評価を行う手法です。特に、過去の取引価格や市場取引がない資産の評価に有用とされています。
コストアプローチは、資産の再取得コストに基づくため、評価が比較的明確で計算が簡単であることが最大のメリットです。さらにコストアプローチの手法であれば、市場データが不足している場合でも適用することができます。
一方で、コストアプローチでは、実際の市場価値(取引価格)を反映していない可能性があるため注意が必要です。評価には専門的な知識が必要で、減価償却や経年劣化の計算が主観的になりやすいという弱点もあります。
インカムアプローチ
インカムアプローチとは、無形資産の価値を将来の収益やキャッシュフローに基づいて評価する手法の一つです。インカムアプローチは、対象資産が生み出す予測収益を現在価値に割り引くことで、その資産の公正価値を算定します。
インカムアプローチは、対象となる無形資産が将来にわたり生み出すと予想される収益やキャッシュフローを見積もるものです。これは、資産の利用に伴う直接的な収益やコスト削減効果などを考慮します。
PPAにおいて、インカムアプローチは特に重要な手法であり、無形資産の評価における透明性や精度を高める役割を果たすものです。このアプローチを採用する際には、収益予測や割引率の設定について十分な検討が求められます。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチは、資産を市場での取引価格や類似資産の取引価格に基づいて評価する手法です。マーケットアプローチでは、比較可能な取引データを活用し、市場の実勢価格を反映した評価を行います。
マーケットアプローチは、実際の取引価格に基づくため、評価額が市場価格に近いことがメリットです。実際のデータを基に評価を行なうため、より客観的な根拠を明確にしながら評価を行うことができます。
ただし、十分な取引データがない場合や、類似性のある資産が存在しない場合には適用が難しいことが弱点です。評価対象と比較資産の条件が異なる場合、調整が複雑で主観的な要素が入る可能性があります。
「のれん」の財務諸表での取り扱い
「のれん」の財務諸表上での取り扱いは、実施されるM&Aのスキーム(手法)によって異なります。
M&Aにおける「のれん」の取り扱いは、株式譲渡・株式交換の場合と、合併の場合で取り扱いに違いがあるのが特徴です。それぞれ詳しく解説していきます。
株式譲渡・株式交換の場合
M&Aのスキームとしても非常に多様されやすいのが、株式譲渡または株式交換による取引です。株式譲渡・株式交換の場合では、売却側企業が買収側企業の子会社となるケースを意味します。
株式譲渡・株式交換の場合では、買収側企業の単体財務諸表では、子会社となった企業の株式を取得したことが計上されるだけで、のれんの計上は実施されません。ただし、子会社の会計データを含める連結財務諸表では、のれんの計上が必須です。
合併などの場合
M&Aにおける合併では、買収側による売却側企業の「吸収合併」が多用されます。吸収合併の場合では、買収側企業は、売却側企業の会計情報をすべて取り込むことになるため、買収側企業の単体財務諸表にのれんの計上をすることが必須です。
また他に子会社が存在しており、連結財務諸表を作成する場合には、単体財務諸表と同様に連結財務諸表にも、のれんの計上を実施することになります。
「のれん」の会計基準
のれんの計上には、「日本会計基準」と「IFRS(国際財務報告基準)」という2つの会計基準が存在します。それぞれの会計基準について詳しく解説していきます。
日本会計基準
日本会計基準における「のれん」とは、企業が他社を買収した際に、取得対価(支払金額など)が取得した純資産(資産から負債を差し引いた額)の公正な評価額を上回る場合に生じる差額を指します。日本会計基準の特徴は、以下の通りです。
- のれんの認識
のれんは、買収時に発生した差額として認識される。具体的には、買収対価から取得した純資産(資産-負債)の時価を差し引いた結果、正の差額が発生すれば「のれん」として計上する - のれんの償却
日本会計基準では、のれんは「定額法」で償却しなければならない。償却期間は20年以内の合理的な期間とされているが、原則として経済的にのれんの効果が期待される期間にわたって償却する。 - のれんの減損
のれんは減損の兆候がある場合に減損テストを行う。減損が必要と判断された場合、のれんの帳簿価額を減額し、その差額を損失として計上する。 - 負ののれん
買収対価が取得した純資産の時価を下回る場合、「負ののれん」が発生する。負ののれんは発生時に「特別利益」として一括計上されます。
日本会計基準では償却が義務付けられているため、のれんが長期間にわたって企業の収益に与える影響を徐々に反映させる仕組みが特徴的です。
IFRS(国際財務報告基準)
IFRS(国際財務報告基準)における「のれん」は、企業が他社を買収する際に、支払った取得対価が取得した純資産(資産-負債)の公正な評価額を上回る部分として認識されます。
これは、日本会計基準と同様に、ブランド力や顧客基盤、シナジー効果などの無形価値を表すものです。以下は、IFRSにおける特徴になります。
- のれんの認識
企業結合会計に関する基準(IFRS 3「企業結合」)に基づき、取得対価から被取得企業の識別可能な純資産(公正価値ベース)を差し引いた正の差額を「のれん」として計上する。 - のれんの償却
償却は行わず、償却の代わりに毎期「減損テスト」を実施して価値を評価します。 - のれんの減損
のれんの帳簿価額が回収可能かを評価するために、毎年(または減損の兆候がある場合)減損テストを実施する。帳簿価額が回収可能価額を上回る場合、その差額を「減損損失」として損益計算書に計上する。 - 負ののれん
買収対価が取得した純資産の公正価値を下回る場合、負ののれんが発生します。負ののれんは、IFRSでは「バーゲン・パーチェス」と呼ばれ、発生時に利益として損益計算書に計上します。
日本会計基準では、のれんは規則的に償却することになっていますが、IFRSではのれんの償却は実施されません。毎年償却されることがないため、損益計算書上、利益がマイナスにならないことがメリットです。
M&Aにおける「のれん減損」が発生する理由
M&Aの「のれん」において大きな課題となってくるのが、「のれん減損」の発生です。のれん減損が発生する理由には、主に以下のようなものがあります。
- デューデリジェンスの不足
- 見込みよりも生産性が低い
- 償却期間中に著しくブランド価値が低下した
- 買収価額が適切な価値ではない
- 当初の予定より業績が伸びない
それぞれ詳しく解説していきます。
デューデリジェンスの不足
デューデリジェンスの不足は、のれん減損に繋がる大きな要因のひとつです。買収対象企業の将来の収益性やシナジー効果を過大評価した結果、支払価格が高くなり、のれんが過大計上されることがあります。
例えば、デューデリジェンスが不十分であると、買収後に市場環境や競争環境が大きく変化し、収益見通しが悪化する場合、減損リスクが高まるでしょう。買収時に長期的な市場動向や外部リスクへの対応策が十分検討されていないと、変化に対応できずに減損が発生することもあります。
また無形資産(顧客関係、ブランド価値、特許など)の適切な評価が行われず、のれんとして一括計上されるケースも多いです。これにより、買収後に思ったほど収益を生まない状況に陥ることがあります。
見込みよりも生産性が低い
取得時に期待していた生産性や収益性が、実際には見込みよりも低かった場合には、のれん減損が発生する可能性が高いです、
買収先企業や事業の業績が、期待された成長率や収益水準に達しない場合、のれんの価値に影響するでしょう。例えば、競争激化や市場環境の変化などが要因となります。
他には、買収後のPMI(Post Merger Integration、統合プロセス)が不十分で、シナジー効果が期待通りに得られない場合です。これには、企業文化の違いやマネジメントの不一致が含まれます。
償却期間中に著しくブランド価値が低下した
償却期間中の著しいブランド価値低下は、のれん減損を招く大きな理由のひとつです。特にブランド価値がのれんの重要な構成要素の場合、その低下がのれんの価値に直接影響を及ぼします。
例えば、消費者の信頼を大きく損失した場合、のれん減損が発生する可能性が高いです。製品の品質問題やリコールの発生、企業の不祥事などは、企業のブランド価値を大きく悪化させ、のれん減損に導きます。
また競合他社が台頭してきた場合も、同じようにのれん減損が発生する可能性が高いです。新しい競合他社が魅力的なブランドを持つ製品やサービスを提供し、自社の市場シェアを奪うこともあります。
買収価額が適切な価値ではない
M&Aによる買収価格が適切でない場合には、のれん減損が発生する可能性が高いです。特に買収先企業を過大評価していた場合には、買収後にのれん減損が発生するリスクが大きく高まります。
買収価格が対象企業の実際の経済価値や収益力を上回っている場合、その差額がのれんとして計上されるのが一般的です。しかし、期待していた収益を上げられない場合や、事業計画が達成されない場合には、のれんの価値を見直す必要が生じ、結果として減損が発生する可能性が高まります。
また買収後に市場環境や業界動向が急速に変化し、収益性が悪化する場合にも、のれん減損が発生する可能性が高いです。例えば、技術革新や新たな競争者の登場が原因となることがあります。
当初の予定より業績が伸びない
M&A取引後に当初の予定より業績が伸びなかった場合には、のれん減損が発生する可能性が高いです。当初見込んでいたシナジー効果や収益性の向上が実現せず、対象企業の業績が期待を下回る場合、のれん減損が発生する可能性が高まります。
M&Aの際に計上されたのれんは、将来の収益性や事業価値を反映したものです。業績が伸び悩むと、投資額が回収困難となり、のれんの帳簿価額が過大と判断される場合があります。
またM&A後に予期せぬ経済的要因(景気後退、競争激化、規制変更など)が発生し、業績が低迷するケースも多いです。さらに経営統合や組織文化の違いによる摩擦、シナジー効果を実現するための計画や実行が不足している場合、目標未達が生じやすくなります。
M&Aの前に行うべき「のれん減損」の対策方法
M&Aにおける「のれん減損」は、可能な限り事前に予防することが必須です。そこで、ここでは、のれん減損の対策方法について解説していきます。のれん減損の主な対策方法は、以下の通りです。
- デューデリジェンスを徹底する
- 人員整理を考える
- 人材の再配置を行う
- 競合商品の選定をする
- 会計基準の違いを認識する
- 適切な価値でのM&Aを行う
それぞれ詳しく解説していきます。
デューデリジェンスを徹底する
のれん減損を防ぐために最も有効な方法は、デューデリジェンスを徹底することです。反対にデューデリジェンスが不足していると、のれん減損のリスクは大幅に高まります。
のれん減損を防ぐためには、デューデリジェンスの際にブランド価値や特許、顧客リストなど、買収対象企業の無形資産を正確に評価することが大切です。PPA(Purchase Price Allocation)を通じて、無形資産を適切に識別するようにしましょう。
適切なデューデリジェンスを実施することで、買収価格の妥当性を確保し、過剰なのれん計上や後の減損リスクを最小限に抑えることが可能です。
人員整理を考える
のれん減損を防ぐためには人員整理を考えることも大切です。M&A後、期待されたシナジー効果を得られず業績が悪化すると、結果的にのれん減損リスクが高まります。そのため、適切な人員整理や組織の再編を行い、効率的な運営体制を構築することが大切です。
被買収企業と買収企業の間で役割が重複する場合、その調整が必要です。例えば、管理部門や間接部門の統合による人員の適正化が考えられます。
また人員整理だけではなく、従業員のスキル向上や適切な配置転換を通じて、全体的な生産性を向上させることが重要です。さらに人員整理が避けられない場合でも、従業員に対して透明性のある説明や適切な補償を行うことで、不満や士気の低下を最小限に抑えることが求められます。
人材の再配置を行う
のれん減損を防ぐためには、人材の再配置も有効な対策の一つです。買収した企業や事業において、従業員のスキルや経験を最大限活かせる部署や役割を見直すことで、生産性や業績向上を図ることができます。
人材の再配置を行うことは、M&Aによる企業間同士のシナジー効果発揮においても重要です。買収元と買収先の人材を融合させ、チーム間の協力を促進することで、組織全体の効率を高める。
また人材の再配置は、従業員自身のモチベーションの維持と向上を図ることも可能です。組織再編や配置転換時に従業員の不安を最小限に抑え、意欲を高めるためのコミュニケーションや教育プログラムを実施することも有効でしょう。
競合商品の選定をする
のれん減損を防ぐためには、競合商品の選定を行うことが有効です。競合商品の選定を通じて市場動向や顧客ニーズを把握することができ、それに基づいた戦略を策定することで、事業の収益性を維持・向上させることができます。
競合商品の選定を行ううえでは、まず競合商品の分析を徹底して行うことがポイントです。競合商品の特徴、価格帯、シェア、市場での評判などを詳細に分析することで、自社商品のポジショニングを明確化します。
また差別化戦略の構築をすることも重要です。競合商品の分析結果をもとに、自社の強みを活かし、差別化できるポイントを明確化することで、競争力を高められます。競争力を高めることでのれんの価値を維持し、減損リスクを低減することが可能です。
会計基準の違いを認識する
のれん減損を防ぐためには会計基準の違いを認識することがポイントです。償却の有無・減損テストのタイミングと手法、無形資産の識別など、会計基準の違いを認識するようにしましょう。
特にのれんの計上において、償却の有無は非常に重要なポイントです。日本基準では、のれんは定期償却(通常は20年以内)が求められる一方で、IFRS((国際財務報告基準)では償却は行わず、毎期減損テストが求められます。
また減損テストのタイミングと手法を理解することも重要です。のれん計上では、減損テストの頻度や実施基準が異なります。IFRSやUS GAAPでは年次での減損テストが必須ですが、日本基準では特定の兆候が現れた場合に実施します。
適切な価値でのM&Aを行う
のれん減損を防ぐためには、適切な価値でのM&Aを行うことが重要です。そもそも適切な価値でのM&Aを取引を実施しなければ、どんなに正確で的確なプロセスで取引に至っても、のれん減損を招いてしまいます。
適切な価値でM&Aを行うためには、価値評価手法の適用をよく検討することが重要です。インカムアプローチ、マーケットアプローチ、コストアプローチなど複数の評価手法を活用し、適切な価値を算定しましょう。
またM&A後の事業統合計画(Post-Merger Integration, PMI)が適切に設計されていない場合、シナジー効果が実現せず、期待通りの収益を上げられない可能性があります。買収前から統合戦略を明確にし、計画的に実行することが重要です。
M&A後に「のれん減損」が問題となった事例
のれんは将来の業績予測に基づいて計上されるため、M&A後の業績が予測よりも下回る場合には、「のれん減損」が発生します。ここでは、M&A後にのれん減損が起こった事例を紹介していきます。
DeNAのキュレーションメディア事業に関する減損
大手インターネットゲーム開発業者である「DeNA」がのれん減損を発生した事例です。DeNAは、2017年(平成29年)3月期にキュレーションメディア事業に関するのれんについてのれん減損を計上しました。
DeNAは、ゲーム事業のほか、遺伝子検査サービスや自動運転、キュレーションサイトなど、事業を多角化してきた企業です。しかし、これらの事業はいずれもゲームに並ぶほどの収益化には至らず、キュレーションサイトでは不祥事も発生しています。
「WELQ」という医療情報サイトにおける情報の信ぴょう性に疑義が発生したことを受け、関連するキュレーションサイトの公開を中止したことが主な要因です。本件に関するのれん減損額は、40億円程とされており、業績に与えた影響はさほど大きくありませんでした。
楽天の米国子会社に関するのれん減損
日本の大手インターネット関連会社である「楽天」が、2016年12月期に約200億円におよぶ、のれん減損を計上した事例です。
楽天は米国子会社である「Viki」を通してアメリカでのキャリア事業を展開していました。しかし、減損テストの結果、買収時に想定した投資回収が困難と判断し、のれん減損を計上しています。
本件は、国内大手企業の海外展開が上手くいかなった代表的な事例です。本件により、楽天はのれん減損でほぼ買収額に相当する金額の損失を計上しています。
ライザップの「負ののれん」計上
国内大手パーソナルジム運営企業である「ライザップ(現:ライザップグループ)が、負ののれんを計上した事例です。M&Aにより事業拡大を目指した企業が、M&A戦略の見直しを検討した事例として注目されました。
ライザップは、異業種であっても業績の乏しい企業を安価で買収し、グループの事業規模を拡大してきた企業です。これは赤字企業を買収することで発生する「負ののれん」を特別計上利益として計上することで、会計上の増益を行うことが目的となります。
しかしM&A後に、買収した多くの企業における経営改善が思うように進捗せず、2018年にはグループ全体で大幅な赤字を計上し、同年11月にはM&A戦略を一時停止する発表をしました。
M&Aにおすすめのコンサルティング会社
M&Aにおいて専門家の助力を得ることは非常に重要です。そこで、ここでは、M&Aにおすすめのコンサルティング会社を紹介していきます。
M&A HACK
会社名 | 合同会社SFS |
設立 | 2022年12月 |
本社所在地 | 東京都台東区千足1-14-9 レアライズ浅草2 4F |
公式サイト | https://sfs-inc.jp/ma/ |
M&A HACKは、当社「合同会社SFS」が運営するM&Aコンサルティング会社です。2022年の設立から既に多くのお客様に依頼をいただいています。
当社は「スピード対応」「完全成功報酬制」「リスクなし」の3つをコンサルティングの軸としているのが特徴です。M&A取引をスムーズにすすめながらも、完全成功報酬制を採用することで、お客様の負担を最小限に抑えることをモットーとしています。
M&Aの複雑なプロセスも、当社であれば一気通貫して徹底サポートすることが可能です。もちろん相談は無料で行っているので、ぜひお気軽にご相談ください。
無料相談のご予約:https://sfs-inc.jp/ma/contact
M&Aキャピタルパートナーズ
会社名 | M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 |
設立 | 2005年10月 |
本社所在地 | 東京都中央区八重洲二丁目2番1号東京ミッドタウン八重洲八重洲セントラルタワー36階 |
公式サイト | https://www.ma-cp.com/ |
M&Aキャピタルパートナーズは、2005年の設立以来、譲渡株価総額2,565億円、じょうときぎょうの売上高4,462億円などの実績を誇るM&Aコンサルティング会社です。
「株価レーマン方式」を採用しており、取引価格に応じて手数料を設定しています。そのため、支払い手数料がリーズナブルであることが魅力です。余計なコストを抑えながら、コンサルティングを依頼することができます。
また同社には仕業を所有するコンサルティングが多数在籍しているのも特徴です。それぞれの分野に特化したコンサルタントが在籍しているので、幅広い分野の案件に対して柔軟に対応することができます。
山田コンサルティンググループ
会社名 | 山田コンサルティングブループ株式会社 |
設立 | 1989年7月 |
本社所在地 | 東京都千代田区丸の内1丁目8番1号丸の内トラストタワーN館10階 |
公式サイト | https://www.yamada-cg.co.jp/ |
山田コンサルティンググループは、1989年の設立以来長きにわたってM&Aコンサルティングを行ってきた老舗企業です。創業30年以上経過していることから、業界トップクラスの取引実績を持ちます。
山田コンサルティンググループの特徴は、大企業のM&Aのみならず、中小規模のM&A依頼も柔軟に請け負ってくれる点です。全国に支店を展開しているため、地域を問わず相談を行うことができます。
またM&Aコンサルティングの依頼以外にも、アドバイザりー業務も展開しているのが特徴です。コンサルティングとアドバイザリーの両視点から、より適切で確度の高いサポートを行ってくれます。
日本M&Aセンター
会社名 | 株式会社日本M&Aセンター |
設立 | 2021年4月 |
本社所在地 | 東京都千代田区丸の内一丁目8番2号 |
公式サイト | https://www.nihon-ma.co.jp/ |
日本M&Aセンターは、東京都千代田区に本社を置く大手M&Aコンサルティング会社です。豊富な実績と優れたコンサルタントを抱えており、業界でも高い知名度を誇ります。
日本M&Aセンターの成約数は、8500件超となっており、3年連続でギネス記録「M&Aファイナンシャルアドバイザー業務の最多取り扱い企業数」に認定されているほどです。
豊富な実績からも分かる通り、取り扱うジャンルの幅が非常に広く、あらゆる業界・取引におけるノウハウを所有しています。またM&Aコンサルティング会社でありながら、金融機関とも連携しているため、M&Aにおける資金面でも確実なサポートをおこなってくれます。
インターリンク
会社名 | インターリンク株式会社 |
設立 | 2010年8月20日 |
本社所在地 | 東京都中央区日本橋兜町5番1号 |
公式サイト | https://www.interlink-ma.co.jp/ |
インターリンクは、2010年に設立されたM&Aコンサルティング会社です。主に提携型M&A仲介の専門会社として豊富な実績を持っており、個々の企業に合わせた独自の提案をおこなうこで、潜在的なニーズの顕在化を支援してくれます。
インターリンクは、「仲介型」のM&Aコンサルティング会社であるため、仲介者として双方の企業との信頼関係を築くことを重視しているのが特徴です。M&A取引において当事者間の認識に齟齬が発生しないよう、確実に取引を進行させてくれます。
一つのジャンルや業界に特化していない反面、あくまで独立・中立役であることに重きを置いているのがインターリンクの特徴です。そのため、純粋に案件を成立させるためにのみ、注力してくれます。
まとめ
今回はM&Aにおける「のれん」の償却期間や会計処理・仕組みついて詳しく解説しました。M&Aは経営戦略として非常に有効な手段であり、実際にM&Aを実施することによって、大きく事業を発展させたり、経営を立ち直らせた企業は多く存在します。
そしてM&Aの成功には、M&Aコンサルティング会社の存在が欠かせません。M&Aコンサルティング会社を活用することで、M&Aに知見や経験がない企業も自社にメリットのあるM&A取引を結ぶことができます。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
無料相談のご予約:
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