「M&AのPPAって何なの?」
「M&AにおけるPPAの目的を知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「M&A PPA」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、M&AのPPAについて分かりやすく簡潔に解説します。
またM&AのPPAにおける作成方法や目的についても詳しく解説するので、M&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
M&AにおけるPPAとは
PPA(Purchase Price Allocation:パーチェスプライスアロケーション)とは、M&Aにおける会計処理の一種です。
パーチェスプライスアロケーションは「取得原価の配分」を指す単語で、M&Aの完了後に買い手企業が行う会計処理を意味しています。PPAは、M&Aによって取得した識別可能な資産と負債を時価評価し、買収企業の財務諸表に反映する手続きです。
買い手側の企業は、買収してから1年以内にPPAをおこなう必要があり、M&Aで発生する手続きの中でも特に重要な項目です。以下では、PPAにおける目的と役割、重要性を詳しく解説していきます。
M&AにおけるPPAの目的と役割
M&AにおいてPPAは不可欠であり、取引後の経営において大きな影響を与えるものです。PPAには主に以下のような目的と役割があります。
- 財務報告の正確性向上
PPAは、買収後の財務諸表を投資家や規制当局に対して透明性の高いものにする。 - のれんの適正管理
のれんは、将来的に減損テストの対象となるため、適切な配分が重要。 - 資産の価値把握
買収した資産や負債の実際の価値を把握することで、経営判断に役立つ。
PPAの主な目的は、買収価格を合理的に配分し、買収後の財務報告や経営判断の基盤を整えることです。これにより、M&Aの結果をより正確に評価し、経営資源を最適に活用することが可能になります。
M&AにおけるPPAの重要性
PPAは、買収価格を対象企業の資産や負債に適切に配分することで、財務報告を正確かつ透明にすることが可能です。投資家や利害関係者に対し、買収の財務的影響を明確に示すことができます。
さらに買収時に識別可能な資産や負債を公正価値で評価することで、買収対象企業の実際の価値を把握することができ、償却費や減損リスクを適切に管理することが可能です。
PPAは、買収後の財務諸表を正確に反映し、経営判断や投資家との信頼関係を支える重要なプロセスです。また、無形資産やのれんの管理を通じて、M&Aの経済的価値を最大化するうえでも不可欠となります。
M&AにおけるPPAの手続きと流れ
M&AにおけるPPAの主な手続きと流れについて解説していきます。PPAの手続きは、主に以下のような流れでおこなわれます。
- 情報収集
- 買収企業と被買収企業へのヒアリング
- 無形資産の把握と識別
- 無形資産の価値算定
- 会計監査
- 会計処理
それぞれ詳しく解説していきます。
情報収集
M&AのPPAにおける情報収集は、適切な財務および税務上の処理を行うための重要なファーストステップです。このプロセスでは、買収対価を対象会社の資産と負債に合理的に配分するため、詳細で正確な情報を収集する必要があります。
情報収集では、まず対象会社の最新の財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など)を取得することが必須です。さらに固定資産台帳、負債明細、棚卸資産の評価表など、詳細な内訳を確認します。
取得する情報が欠けていると、PPAにおける評価の信頼性が低下するため、網羅的な情報収集が重要です。会計士、税理士、資産評価の専門家などの助言を得ることで、より正確なPPAを実施できます。
買収企業と被買収企業へのヒアリング
M&AのPPAにおいて、買収企業と被買収企業へのヒアリングは、取得価格の適切な配分を行うために極めて重要なプロセスです。ヒアリングのプロセスは、買収企業と被買収企業の統合後プロセスにおいても非常に重要な役割を果たします。
買収企業は、取得後の統合計画やシナジー効果の実現を目指すため、取得企業が買収を決定した背景や目的(市場拡大、技術取得、事業多角化など)。さらに、想定されるシナジー効果(コスト削減、収益拡大など)を測定することが必須です。
一方で、被買収企業の内部事情や詳細な財務データを把握するために、無形資産(特許、商標、ブランド)の詳細とその収益貢献度。さらに有形資産(機械、設備、不動産)のリストと評価額をヒアリングすることも必須です。
無形資産の把握と識別
PPAにおける無形資産の把握と識別は、企業買収後の財務報告において非常に重要なプロセスです。買収対象企業の無形資産を特定し、その公正価値を測定することで、適切な財務諸表への反映が可能となります。
無形資産の把握とは、買収対象企業が保有する目に見えない価値のある資産を特定することです。無形資産の把握では、以下のような項目に対しての情報収集を行います。
- ブランド(商標・商号):顧客の認知度や信頼性に基づく資産
- 顧客関係(顧客リスト・契約):既存顧客や顧客契約から生まれる将来的な収益
- 技術・知的財産(特許・ノウハウ):製品やサービスに競争優位性をもたらす知的財産
- ソフトウェア:内製ソフトウェアやシステム
- ノンコンペティション契約(競業避止契約):競争を防ぐための契約による権利
- ライセンス・フランチャイズ契約:特定の権利や許可に基づく収益。
無形資産の把握をおこなったうえで、把握した無形資産の中から、PPAの目的に合致する資産を分類し、適切に評価することも重要です。無形資産の把握と識別は、専門的な知識や業界特有の理解が求められるため、会計士やバリュエーションの専門家の協力も重要となります。
無形資産の価値算定
PPAにおける無形資産の価値算定は、買収対象企業の買収価格をその資産と負債に割り振るプロセスにおいて重要なステップです。無形資産として認識されるには以下の条件を満たす必要があります。
- 識別可能性:契約や法的権利に基づくもの、または分離して取引可能なもの。
- 経済的価値:収益を生み出す能力があるもの。
無形資産の価値算定は、会計基準(IFRS 3やUS GAAPなど)や税務に準拠して行われます。正確かつ適切な評価を行うため、専門的な知識と経験が求められる分野です。
会計監査
PPAにおける会計監査は、買収後の財務報告や会計処理が正確かつ適切に行われていることを確認するプロセスです。企業買収における財務上の透明性を確保し、関連する会計基準に従って、適正に処理されているかを検証する重要な役割を果たします。
PPAでは、買収価格を取得した資産(有形・無形)と負債に配分することが必要です。特に、無形資産(ブランド、顧客リスト、技術など)の識別と評価が適切に行われているか確認します。
また「のれん(Goodwill)」の計算が正確であるか、また会計基準に沿って認識されているかを確認することも必要です。「買収日」時点の公正価値で資産負債を測定しているかを監査します。
PPAにおける会計監査は、財務報告の透明性や信頼性を確保するために不可欠な工程です。また、監査人だけでなく、評価専門家や財務アドバイザーとも密に連携して進められることが一般的となります。
会計処理
PPAの会計処理は、企業がM&A(合併・買収)により他社を取得した際、取得価格を対象企業の資産と負債に適切に配分するプロセスです。企業の財務報告において、買収取引を正確に反映させるために行われます。PPAにおける会計処理で実行される項目は、以下の通りです。
- 取得原価の算定:M&Aの対価として支払われた金額(取得原価)を明確にする
- 取得原価の配分:取得原価を、被買収企業の資産と負債に配分する
PPAの会計処理は、M&A後の財務諸表において透明性を確保し、投資家や利害関係者に正確な情報を提供するために重要です。具体的な基準や方法は、適用される会計基準(IFRS、日本基準、US GAAPなど)に従う必要があります。
M&AにおけるPPAの計上パターン
M&AにおけるPPAでは、「無形資産」と「のれん」の2種類です。それぞれのパターンについて詳しく解説していきます。
無形資産の計上
取得した企業や事業に含まれる識別可能、かつ分離可能な無形資産が計上される計上パターンです。無形資産の計上では、具体的には以下のようなものがあります。
- 顧客関係(Customer Relationships)
- 技術資産(Technology or Patents)
- 商標・ブランド(Trademarks)
- 契約資産(Contractual Rights)
これらは、識別可能であり、かつ合理的に公正価値が算定できる場合に無形資産として認識されます。
のれんの計上
「のれん」とは、識別可能な資産(無形資産や有形資産)や負債を配分した後に残る、取得対価と被取得企業の純資産(公正価値)の差額のことです。
例えば「買収金額1,000百円・純資産700百万円」の場合には、300百万円がのれんとして計上されます。のれんは具体的な資産ではなく、被取得企業のブランド価値やシナジー効果といった目に見えない価値を反映するものです。
PPAでは、識別可能な無形資産をできる限り特定し、それらに対して公正価値を割り当てた後に残るものをのれんとして計上します。識別可能な無形資産として認識するかどうかは、「資産が分離可能であるか」や「契約上または法的な権利に基づいて存在しているか」で判断されるのが一般的です。
PPAにおける無形資産の種類と評価概要
PPAにおける無形資産の種類と評価概要に関して解説していきます。PPAにおける無形資産の主な種類は、以下の通りです。
- ブランド価値(商標権)
- 顧客リスト(顧客関係)
- 技術や特許
- ソフトウェア
それぞれ詳しく解説していきます。
ブランド価値(商標権)
ブランド価値(商標権)は、無形資産の一つであり、ブランド名や商標が持つ市場での認知度や信頼性によって評価されるものです。市場において、消費者がそのブランドに対して持つロイヤルティを指します。
ブランド価値は、PPAにおいて「インカムアプローチ」として評価されるのが一般的です。ブランドが将来的に生み出すキャッシュフローを予測し、その現在価値を計算します。
特に、「ロイヤルティ救済法(Relief from Royalty Method)」が使われることが多いです。この方法では、ブランドを使用する代わりに支払うべきロイヤルティ費用を推定し、それを現在価値に割引します。
顧客リスト(顧客関係)
PPAにおいて譲渡企業が所有している「顧客リスト(顧客関係)」も重要な評価項目のひとつです。顧客リストには、現在の収益や将来的なキャッシュフローを生み出す基盤が含まれます。
高品質な顧客が多いリストは、新たな投資家や買収者にとって魅力的です。そのため、顧客リストの評価では、リスト内の顧客の質(信用力、規模、安定性)は価値を大きく左右されます。
顧客リストは単なる名前や情報の集合ではなく、企業の将来的な成長可能性を大きく左右する資産です。そのため、適切に管理し、価値を最大化する努力が求められます。PPAにおける顧客リストの評価は非常に重要な項目のひとつです。
技術や特許
M&AにおけるPPAでは、譲渡企業側が所有する「技術や特許」は、重要な試算項目のひとつです。技術や特許は、市場での競争力を直接的に強化されるため、買収先にとって大きな価値を生み出します。
特に買収企業と被買収企業の技術や特許が補完的であれば、M&Aによるシナジー効果が発揮される可能性が非常に高いです。例えば、既存の技術と新たな特許技術を組み合わせることで、新製品開発が促進されることがあります。
また買収対象の技術が現在の市場トレンドや将来の成長分野に適しているかどうかも、評価の大きなポイントです。AIやバイオテクノロジーなど成長産業に関連する特許や技術は特に高く評価される傾向があります。
ソフトウェア
PPAにおいてソフトウェアは重要な評価項目です。現代の多くの発明は、ソフトウェアによって実現されています。特にAI、IoT、フィンテック、ヘルスケアなどの分野では、ソフトウェアが発明の中心的な要素です。
ソフトウェアは、以下のような理由で評価の中心となることがあります。
- 新規性: アルゴリズムやプロセスが、従来技術に比べて新しいものである。
- 進歩性: 技術分野において明らかな進歩をもたらしている。
- 具体性: 機能や動作が十分に詳細に記載され、実装可能である。
- 適用可能性: 特定の産業や分野でどのように利用されるかが具体的に示されている。
PPAにおいてソフトウェアが重要な評価項目である理由は、特許性のある技術的特徴を明確にし、特許取得の可能性を高めるためです。技術の詳細な説明や産業応用の具体化が、評価を左右する重要な要素となります。
PPAにおける無形資産の評価方法
M&AのPPAにおいては、無形資産の評価方法に、それぞれ方法があります。PPAにおける無形資産の評価方法は、以下の通りです。
- インカムアプローチ
- コストアプローチ
- マーケットアプローチ
それぞれ詳しく解説していきます。
インカムアプローチ
PPAにおけるインカムアプローチとは、無形資産の価値を将来の収益やキャッシュフローに基づいて評価する手法の一つです。インカムアプローチは、対象資産が生み出す予測収益を現在価値に割り引くことで、その資産の公正価値を算定します。
インカムアプローチは、対象となる無形資産が将来にわたり生み出すと予想される収益やキャッシュフローを見積もるものです。これは、資産の利用に伴う直接的な収益やコスト削減効果などを考慮します。
PPAにおいて、インカムアプローチは特に重要な手法であり、無形資産の評価における透明性や精度を高める役割を果たすものです。このアプローチを採用する際には、収益予測や割引率の設定について十分な検討が求められます。
コストアプローチ
コストアプローチとは、資産を再取得するために必要なコストや、それを現在の状態に再構築するためのコストに基づいて評価を行う手法です。特に、過去の取引価格や市場取引がない資産の評価に有用とされています。
コストアプローチは、資産の再取得コストに基づくため、評価が比較的明確で計算が簡単であることが最大のメリットです。さらにコストアプローチの手法であれば、市場データが不足している場合でも適用することができます。
一方で、コストアプローチでは、実際の市場価値(取引価格)を反映していない可能性があるため注意が必要です。評価には専門的な知識が必要で、減価償却や経年劣化の計算が主観的になりやすいという弱点もあります。
マーケットアプローチ
PPAにおけるマーケットアプローチは、資産を市場での取引価格や類似資産の取引価格に基づいて評価する手法です。マーケットアプローチでは、比較可能な取引データを活用し、市場の実勢価格を反映した評価を行います。
マーケットアプローチは、実際の取引価格に基づくため、評価額が市場の現実に近いことがメリットです。実際のデータを基に評価を行っていくため、より客観的な根拠を明確にしながら評価を行うことができます。
ただし、十分な取引データがない場合や、類似性のある資産が存在しない場合には適用が難しいことが弱点です。評価対象と比較資産の条件が異なる場合、調整が複雑で主観的な要素が入る可能性があります。
M&AのPPAを実施する際の注意点
M&AのPPAを実施する際の注意点について解説していきます。M&AのPPAを実施する際の注意点は、以下の通りです。
- のれんの計上
- 減損テストを見据えた対応
- 税務上の注意
それぞれ詳しく解説していきます。
のれんの計上
M&AにおけるPPAでは、「のれん(Goodwill)の計上」が重要なポイントです。のれんは、買収対象企業の純資産価値(識別可能な資産から負債を差し引いた金額)を超えて支払った買収対価の差額として計上されます。
のれんの計上では、計上額を正確に算出する際に、識別可能な無形資産を適切に評価することが重要です。無形資産を過小評価または見落とすと、のれんが過大計上されるリスクがあります。
また過度に高い買収対価は、のれんの過大計上を引き起こす可能性があるため、交渉段階で買収価格の妥当性を慎重に検討することが必須です。過大な金額ののれん計上は、投資家に対して買収が過剰評価されたとの印象を与える可能性があります。
減損テストを見据えた対応
PPAでは、減損テストを見据えた対応が非常に重要です。買収後に計上される、のれん(Goodwill)や無形資産は、毎期の減損リスクを伴うため、買収時点で適切な対応を行うことが、後の財務健全性や投資家への説明責任において重要となります。
減損テストを見据えた際の対応として、留意すべきポイントは、以下の通りです。
- 識別可能資産の適正評価:無形資産(商標、特許、顧客リストなど)を過不足なく識別し、公正価値で評価することが減損テストの基盤となる。
- 収益予測と割引率の妥当性:被買収企業の実現可能な収益計画を基に、楽観的すぎない予測を立てることが求められる。
- 減損リスクを考慮したのれんの管理:のれんの金額が大きい場合、減損リスクが増すため、識別可能な無形資産を十分に分離することが重要。
PPAでは、減損テストを見据えた資産評価と収益予測が不可欠です。買収時点での識別可能な資産・負債の適切な評価、のれんの適正な計上、そして将来の経済リスクに対応する計画を立てることで、減損リスクを最小限に抑えることができます。
税務上の影響
PPAを実施する際には、税務上の影響を十分に考慮することが重要です。PPAは、買収対価を識別可能な資産や負債、のれんに配分するプロセスですが、その評価結果は企業の税務処理や財務状況に直接的な影響を及ぼします。
会計基準(IFRS・US GAAPなど)に基づくPPAでは公正価値で評価されますが、税務上の資産評価方法が異なる場合があるので、注意が必要です。将来的な課税所得や税金支払いに影響を与えるため、慎重な対応が求められます。
PPAを進める際は、税務専門家や税理士と密接に連携し、税務上の適用ルールやリスクを把握することが重要です。税務専門家の助言を受けながら、識別資産の評価やタックスプランニングを適切に行うことが、成功するM&Aの鍵となります。
M&AのPPAを成功させるためのポイント
M&AのPPAを成功させるためのポイントについて解説していきます。M&AのPPAを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&Aの目的を明確にする
- 無形資産の識別を的確におこなう
- 専門家を活用する
それぞれ詳しく解説していきます。
目的を明確にする
M&AのPPAを成功させるためには、M&Aの目的を明確にすることが非常に重要です。PPAのプロセスでは、買収対価を識別可能な資産や負債、のれんに配分しますが、その配分の前提として、M&Aの全体的な戦略や目的が評価の基盤となります。
PPAは、識別可能な無形資産(商標、顧客リスト、特許など)を特定し、適正な評価を行うものです。その際、買収の目的を考慮しないと、資産の重要性や価値を正確に評価できません。
また明確な目的があれば、買収後の経営計画や収益予測を適切に設定することが可能です。目的を明確にすることで、のれんや無形資産の減損リスク管理に役立ちます。さらに目的に基づいた実現可能な収益計画を作成することで、減損の発生を未然に防ぎやすくなります。
無形資産の識別を的確におこなう
PPAにおいて、無形資産の識別を的確に行うことは非常に重要です。適切な識別ができなければ、資産評価や会計処理に誤りが生じ、結果として財務諸表の正確性に影響を及ぼす可能性があります。
無形資産を正確に識別し、適切に評価することで、買収企業の財務状況を正確に反映することが可能です。識別された無形資産は、その後の減損テストの対象となります。的確に識別しておかなければ、減損リスクの評価が不十分になる可能性があります。
また無形資産の評価は、税務上の減価償却や控除計算にも影響を与える可能性が高いです。識別が適切でない場合、税務上のリスクや利益の計算が不正確になることがあります。結果としてM&A取引全体に悪影響を及ぼしてしまうでしょう。
専門家を活用する
M&AにおけるPPAでは、専門家を活用することが非常に重要です。PPAは、買収価額を対象企業の資産および負債に適切に配分するプロセスであり、これを適切に実施するには、会計・税務・評価に関する高度な専門知識が求められます。
PPAは、国際会計基準(IFRS)や米国会計基準(US GAAP)に準拠して実施されることが一般的です。これらの基準を正確に理解し適用するには、専門家の知識が不可欠です。税理士や税務コンサルタントを活用することで、税務リスクを最小限に抑えることができます。
またM&Aの目的( シナジー効果の実現、事業拡大など)とPPAの結果が整合しているかを確認するために、経営コンサルタントや評価会社が有用です。アドバイザーやコンサルタントなどの専門家の目線で適格にPPAを評価することが重要となります。
M&Aの成功事例
M&Aを成功させるためには、他社の事例を参考にすることが非常に重要です。そこで、M&Aの成功事例を紹介していきます。
高松建設とタミツプランニングによるM&A
2019年5月に、高松建設がタミツプランニングの所有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられ、取得価額は約14億円となっています。
譲り受け企業である「高松建設」は、土地活用提案事業をベースとし、賃貸マンションや工場・物流施設・ホテル・医療施設などの建設を請け負っている企業です。一方の譲渡企業である「タミツプランニング」は、横浜エリアを中心に注文住宅とリフォームを手がけ、不動産開発事業やメガソーラー事業にも進出していた企業で、2016年からRIZAPグループの子会社となっていました。
本件M&Aは、総合建設会社と工務店による取引事例です。譲り受け企業である高松建設は、2018年に買収した不動産会社ミブコーポレーションとの連携も図りながら戸建て住宅事業を本格的に展開することを目的として本取引を実施しました。
大手企業出身のスペシャリスト達による「タカマツハウス」が本格始動!
東洋運輸倉庫とSBSホールディングスによるM&A
2021年1月に、SBSホールディングスが東洋運輸倉庫の保有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられ、取得価額は72億円にのぼっています。
譲り受け企業である「SBSホールディングス」は、運輸業を主体とした総合的な物流サービスを手掛ける大手運送会社です。一方の譲渡企業である「東洋運輸倉庫」は、通関業・倉庫業・貨物運送取扱業などを手掛ける企業になります。
本件M&Aは、運送会社同士の取引事例です。譲り受け企業であるSBSホールディングスは、東京臨海エリアにおける最先端倉庫への投資を積極的に進めており、東京臨海部の東大荻島と若洲に大型倉庫を保有する東洋運輸倉庫の買収が実施されました。
マツモトキヨシホールディングスとココカラファインによるM&A
2021年2月にマツモトキヨシホールディングスとココカラファインの間で経営統合契約が締結されたM&Aの事例です。本取引は、株式交換や会社分割などのスキームを用い、数段階のプロセスを経て実行されました。
「マツモトキヨシホールディングス」は、全国に調剤併設型ドラッグストアなど約1,750店舗を展開するマツモトキヨシグループの持株会社です。一方の「ココカラファイン」は調剤薬局・ドラッグストアを全国に約1440店舗を展開する企業になります。
本件M&Aは、加速するドラッグストア業界の市場競争激化に対する対抗戦略です。大手調剤薬局・ドラッグストア企業同士が合併することで、ヘルスビューティー分野での圧倒的なプレゼンスを獲得し、更なる事業基盤強化を図っています。
株式会社マツモトキヨシホールディングスとの経営統合に関するご案内
野村総合研究所とASG GRoup LimitedによるM&A
2016年12月に、野村総合研究所がASG Group Limited(オーストラリア)の全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引における取得金額は、269億2,500万円となっています。
譲り受け企業である「野村総合研究所」は、顧客企業の課題発見・戦略立案を行うコンサルティング業に加え、システム開発・運用までを手掛ける日本有数のITコンサルティング・システム開発会社です。
一方の「SG Group Limited」はオーストラリアのパースに拠点を置き、クラウド型の統合基幹業務システムや経営データ分析システムのマネージドサービスを展開している企業になります。
本件M&Aは、野村総合研究所がオーストラリアにおける顧客や事業基盤を獲得することが目的です。ASG Group Limitedも野村総合研究所の財政基盤や各種製品・ソリューションの活用による事業成長に期待しています。
三菱UFJ銀行とPT Bank Danamon Indonesia,Tbk.によるM&A
2019年4月に、三菱UFJ銀行が、インドネシアのPT Bank Danamon Indonesia,Tbk.(バンクダナモン)の発行済株式総数の54.0%を追加取得し、同社株式の94%を取得することにより子会社化したM&Aの事例です。本取引による取得価額は約3,970億円となっています。
譲り受け企業である「三菱UFJ銀行」は、国内に565、海外に110の店舗を有する国内の大手銀行です。一方の譲渡企業である「PT Bank Danamon Indonesia,Tbk.」は、インドネシアにおける大手商業銀行になります。
本件M&Aは、ともに銀行業を手掛ける企業同士の取引事例です。本取引は、譲り受け企業である三菱UFJ銀行が、東南アジアでのビジネスプラットフォーム構築に向けた戦略出資を目的としたものとなっています。
インドネシア大手商業銀行バンクダナモンへの戦略出資について(第三段階)
PPAの実施におすすめのM&Aコンサルティング会社
M&Aを行ううえでは専門家の活用が欠かせません。そこで、ここでは、M&Aにおすすめのコンサルティング会社を紹介していきます。
M&A HACK
会社名 | 合同会社SFS |
設立 | 2022年12月 |
本社所在地 | 東京都台東区千足1-14-9 レアライズ浅草2 4F |
公式サイト | https://sfs-inc.jp/ma/ |
M&A HACKは、当社「合同会社SFS」が運営するM&Aコンサルティング会社です。2022年の設立から既に多くのお客様に依頼をいただいています。
当社は「スピード対応」「完全成功報酬制」「リスクなし」の3つをコンサルティングの軸としているのが特徴です。M&A取引をスムーズにすすめながらも、完全成功報酬制を採用することで、お客様の負担を最小限に抑えることをモットーとしています。
M&Aの複雑なプロセスも、当社であれば一気通貫して徹底サポートすることが可能です。もちろん相談は無料で行っているので、ぜひお気軽にご相談ください。
無料相談のご予約:https://sfs-inc.jp/ma/contact
日本M&Aセンター
会社名 | 株式会社日本M&Aセンター |
設立 | 2021年4月 |
本社所在地 | 東京都千代田区丸の内一丁目8番2号 |
公式サイト | https://www.nihon-ma.co.jp/ |
日本M&Aセンターは、東京都千代田区に本社を置く大手M&Aコンサルティング会社です。豊富な実績と優れたコンサルタントを抱えており、業界でも高い知名度を誇ります。
日本M&Aセンターの成約数は、8500件超となっており、3年連続でギネス記録「M&Aファイナンシャルアドバイザー業務の最多取り扱い企業数」に認定されているほどです。
豊富な実績からも分かる通り、取り扱うジャンルの幅が非常に広く、あらゆる業界・取引におけるノウハウを所有しています。またM&Aコンサルティング会社でありながら、金融機関とも連携しているため、M&Aにおける資金面でも確実なサポートをおこなってくれます。
レバレジーズM&Aアドバイザリー
会社名 | レバレジーズM&Aアドバイザリー株式会社 |
設立 | 2020年4月6日 |
本社所在地 | 東京都渋谷区渋谷2-24-12 渋谷スクランブルスクエア 24F・25F |
公式サイト | https://leveragesma.jp/ |
レバレジーズM&Aアドバイザリーは、東京都に本拠を置く2020年創業のM&Aコンサルティング会社です。設立から間もないものの、既に多くの取引実績を誇っています。
レバレジーズM&Aアドバイザリーの強みは、約30,000件にも及ぶ独自顧客データベースを所有していることです。これにより、取引における相性最優先の最適なマッチングをかなえてくれます。
また母体である「レバレジーズ株式会社」は、人材業界大手の企業です。人材業で培われた取引ルートをフル活用することで、どんなジャンルのM&A取引にも柔軟に対応してくれます。
fundbook
会社名 | 株式会社fundbook |
設立 | 2017年8月 |
本社所在地 | 東京都港区虎ノ門1-23-1 虎ノ門ヒルズ森タワー25F |
公式サイト | https://fundbook.co.jp/ |
fundbookは、2017年に設立され、東京都虎ノ門に本社を置くM&Aコンサルティング会社です。豊富なネットワークとプラットフォームマッチングを武器に多くのコンサルティング実績を持ちます。
fundbookの最大の特徴は、完全成功報酬型を採用していることです。着手金・中間金・買い手相談料・株価診断などの費用は全て無料となっています。余計な費用を抑えながら、コンサルティングを依頼することが可能です。
またfundbookには、M&A支援実績が豊富なコンサルタントが100名以上在籍しています。分野に応じて専門的なノウハウと経験を有したコンサルタントが担当してくれるので、よりM&A取引をスムーズに進めることが可能です。
M&Aキャピタルパートナーズ
会社名 | M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 |
設立 | 2005年10月 |
本社所在地 | 東京都中央区八重洲二丁目2番1号東京ミッドタウン八重洲八重洲セントラルタワー36階 |
公式サイト | https://www.ma-cp.com/ |
M&Aキャピタルパートナーズは、2005年の設立以来、譲渡株価総額2,565億円、譲渡企業の売上高4,462億円などの実績を誇るM&Aコンサルティング会社です。
「株価レーマン方式」を採用しており、取引価格に応じて手数料を設定しています。そのため、支払い手数料がリーズナブルであることが魅力です。余計なコストを抑えながら、コンサルティングを依頼することができます。
また同社には仕業を所有するコンサルティングが多数在籍しているのも特徴です。それぞれの分野に特化したコンサルタントが在籍しているので、幅広い分野の案件に対して柔軟に対応することができます。
まとめ
今回はM&AにおけるPPAの基礎知識や実際の活用法について詳しく解説しました。M&Aは経営戦略として非常に有効な手段であり、実際にM&Aを実施することによって、大きく事業を発展させたり、経営を立ち直らせた企業は多く存在します。
そしてM&Aの成功には、M&Aコンサルティング会社の存在が欠かせません。M&Aコンサルティング会社を活用することで、M&Aに知見や経験がない企業も自社にメリットのあるM&A取引を結ぶことができます。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
無料相談のご予約:
https://sfs-inc.jp/ma/contact