「M&Aを進めるためのプロセスは?」
「M&Aを進めるときの具体的なスケジュールを知りたい!」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「M&A 進め方」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、M&Aの具体的な進め方やプロセスについて詳しく解説していきます。
またM&Aにかかる期間をフェーズ毎に解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
M&Aとは
M&Aとは、Mergers and Acquisitions(合併・買収)の略で、企業が他の企業と合併したり、買収したりする取引のことを指す単語です。M&Aでは、買収もしくは合併、提携のいずれかが実施されます。
M&Aにおける買収とは、 1つの企業が他の企業を買い取り支配権を得ることです。買収される企業は買収者によって支配され、経営が一元化されます。一方の合併とは、2つ以上の企業が統合して1つの新しい企業を形成することです。合併には、対等な立場で統合するケースや、特定の企業が他の企業を吸収する形で行われることもあります。
M&Aは企業が更なる成長を遂げることはもちろんのこと、撤退や廃業を見越して実施されるケースも多いです。M&Aにおけるゴールは企業によって異なるため、プロセスをしっかりと組んだうえでM&Aを実施することが重要になります。
M&Aのフェーズ毎の流れ
M&Aをこれから実施することを検討している人は、具体的な取引の流れが気になるはずです。そこで、ここでは、M&Aのやり方を、以下のフェーズ毎に解説していきます。
- 検討・準備
- 打診・交渉
- 最終契約
- 契約後
それぞれのフェーズに関して解説していくので、ぜひ参考にしてください。
検討・準備
M&Aにおける第一フェーズとして挙げられるのが、検討・準備のフェーズです。検討・準備のプロセスでは、M&A取引における成功に向けた基盤を築く役割を果たすことになります。検討・準備のフェーズでおこなう具体的な動きは、以下の通りです。
- 戦略的目標の明確化:企業の経営陣は、M&Aがどのように自社の戦略に適合するかを明確にし、その目的を達成するための方向性を決定する。
- ターゲット企業の選定:M&Aの目的に合致するターゲット企業を選定する。ターゲット企業は、規模や業界、地理的な位置、財務状況などを基に評価される。
- 財務状況の確認と評価:M&Aを実行するための資金調達方法(自己資本、借入、株式発行など)を決定する。ターゲット企業についても、財務諸表や過去の業績を詳細に分析し、買収後に予想されるシナジー効果やリスクを評価する。
- 法的・規制の確認:各国・地域の反トラスト法、競争法、外国投資規制などを確認し、M&Aが合法的に行えるかを評価する。
- デューデリジェンスの準備:ターゲット企業の詳細な調査(デューデリジェンス)を行う準備。財務、法務、税務、労務、契約などさまざまな側面の調査を行う。
- 組織の統合計画の策定:統合計画(PMI:Post-Merger Integration)を事前に策定する。組織構造の統合、人事の取り決め、文化の統合、システムの統合、業務の流れの調整などが含まれる。
- ステークホルダーとのコミュニケーション計画:M&Aに関するステークホルダー(従業員、株主、取引先、顧客など)への情報提供とコミュニケーション計画を立てる。
- リスク管理の検討:M&Aにおけるリスク(財務リスク、法的リスク、文化的リスクなど)を予測し、リスク管理策を検討する。
- プロジェクトチームの編成:M&Aに関わる社内外のメンバー(経営陣、財務部門、法務部門、外部アドバイザーなど)をまとめたプロジェクトチームを編成する。
検討・準備のフェーズは、M&A取引における基盤づくりです。検討・準備フェーズの検討が不十分であると取引が失敗に終わる可能性もあるため、より慎重に行うことも重要になります。
打診・交渉
M&Aにおける第2のフェーズとして、打診・交渉が挙げられます。打診・交渉とは、その名の通り、第一フェーズで選定した取引先と具体的な交渉を行うことです。M&Aにおける打診・交渉のフェーズでは以下のようなことを行います。
- 対象企業へのアプローチ:直接的な接触(CEOや役員への手紙、電話、メールなど)や間接的な方法(仲介者やアドバイザーを通じて)で行われる。
- 秘密保持契約書の締結:渉が進展し、双方が情報を交換する段階になる前に、秘密保持契約(NDA)が結ばれる。
- 基本条件の合意:主に取引の条件(価格、支払い方法、スケジュール、役員体制、契約内容など)に関して合意を得る。
- 契約書の素案作成:交渉の終息を迎え、基本的な取引条件について合意が得られると、次に具体的な契約書の草案が作成される。
打診・交渉のフェーズでは、より具体的なM&A取引の内容に関して協議されます。M&A取引の全容を決定する非常に重要なフェーズです。
最終契約
M&Aにおける「最終契約」とは、買収プロセスの最後の段階で、両者が合意した条件に基づいて交わされる正式な法的契約です。この契約は、M&Aの取引を正式に成立させ、実行に移すために不可欠となります。最終契約のフェーズでは具体的に以下のことが行われます。
- 売主(ターゲット企業)と買主(買収側)の明記: 両者の法的名称、所在地、その他の基本情報を契約書に記載する。
- 株式の売買(または事業の譲渡): 売買対象となる株式や資産、負債を具体的に明記する。
- 価格設定: 取引の総額(価格)を明記する。価格は交渉を通じて決定され、場合によっては、金額が調整されるため、価格の調整方法(例えば、財務状況に基づく調整)を記載することがある。
- 支払い方法: 支払い方法(現金、一部株式での支払い、負債の引き受けなど)や支払い時期、分割払いの有無についても詳細に記載する。
最終契約のフェーズでは、M&A取引における最終決定事項が明記されます。本フェーズではより正確に両者間の取引内容が網羅されることが必須です。
契約後
M&Aの取引は、株式売買や企業間合併が実施されて終わりではありません。契約後に臨んだ結果を得ることがM&Aの最終ゴールとも言えます。M&A契約後のアフターケアでは、以下のようなことを行います。
- 統合計画の立案と実行: 組織構造、業務プロセス、ITシステム、ブランド、企業文化などの統合計画を立案し、実行する。
- 組織の再編成: 組織構造の変更や役員の再配置を行う。特に経営層や重要ポジションでの調整が求められることがある。
- 業務プロセスの統一: 販売戦略や製品開発、マーケティング活動などを統合し、重複や無駄を削減するためのプロセス改革を進める。
- ITシステムの統合: 会計システムや顧客管理システム、サプライチェーンの管理システムなどを統合し、効率化を図る。
第一フェーズで検討した目標や目的を実際に得ることができるかは、契約後のアフターケアにかかっています。契約後のアフターケアの仕方次第で明暗が分かれるといっても、過言ではありません。
M&Aで用いられるスキーム
M&Aでは、買収・合併・提携の種類によって、それぞれスキーム(手法)が存在します。目的に合わせてスキーム(手法)を選択することで、利益を最大化させることが可能です。
ここでは、買収・合併・提携のそれぞれのスキームについて詳細に解説します。これからM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
買収
買収とは、1つの企業が他の企業を買い取り、支配権を得ることです。買収される企業は買収者によって支配され、経営が一元化されます。
M&Aにおける買収の主なスキームは、「株式取得」「事業譲渡」「会社分割」の3種類です。それぞれのスキームについて詳しく解説していきます。
株式取得
株式取得とは、ある企業の株主が自分が所有する株式を、他の個人や法人に譲渡することです。M&Aにおいては、最も一般的なスキームのひとつでもあります。株式取得の主な目的は、以下の通りです。
- 資本間提携や支配権の移動
- 資金調達
- 株主の移動
株主取得は、特に企業の経営権に関連する場面で用いられやすいスキームです。株式取得によって3分の2以上の株式を取得すれば、反対する株主を「スクイーズアウト」により強制排除することもできます。
ただし株式取得では、対価として現金が必要であることに加えて、不要な資産や簿外債務・偶発債務などを引き継ぐリスクがあるので注意が必要です。M&Aのスキームとしては比較的簡単な手法ですが、実施には相応のリスクも伴います。
事業譲渡
事業譲渡とは、ある企業のすべての事業、あるいは一部の事業を買い手企業に譲渡するスキームです。事業譲渡では、事業そのものを譲渡するため、譲渡される対象には、通常、事業に関連する資産、負債、契約、従業員などが含まれます。事業譲渡の主な目的は、以下の通りです。
- 事業リスクの軽減
- 資金の調達
- 事業の集中と効率化
事業譲渡では、買い手側は特定の事業のみを引き継ぐことができるため、自社の事業成長に繋げやすいというメリットがあります。また株式取得や会社分割とは異なり、簿外債務などの不要な資産の承継を避けることが可能です。
ただし事業譲渡では、譲渡によって消費税が課されるなど税負担が大きくなります。また売り手企業は買い手企業の利益を保護するため、一定期間・範囲において譲渡した事業を行えない(競業避止義務)というデメリットも存在します。
会社分割
会社分割とは、ある企業のすべての事業または一部の事業を別会社に承継するスキームです。別会社が既存企業なら「吸収分割」、新設会社なら「新設分割」に分類されます。会社分割の主な目的は、以下の通りです。
- 事業の集中化と再編
- 経営の効率化と最適化
- 財務の健全化
会社分割では、一部の事業を承継する場合、買い手企業は関連のある企業だけを承継することができるため、シナジー効果を得やすいのがメリットです。同時に一部事業の承継により、売り手企業は事業のスリム化を図ることもできます。
ただし会社分割のスキームでは、買い手企業は、包括承継の仕組み上、会計帳簿に記載されていない簿外負債や、不要な資産なども引き継がなければなりません。また業種によっては、許認可の引継ぎができない場合もあるので注意が必要です。
合併
合併とは、複数の会社を1つの会社に統合するM&Aの手法です。合併は、複数の企業が互いに協力し、資産や負債を統合し、1つの企業として活動を開始することを目的としています。
合併の種類は「新設合併」と「吸収合併」の2つです。それぞれのスキームについて詳しく解説していきます。
新設合併
新設合併とは、合併対象となるすべての企業の権利や義務を、新しく設立した会社に引き継ぐスキームです。新設会社設立後は、対象となった企業は1社残らず消滅します。新設合併の主な目的は、以下の通りです。
- シナジー効果の最大化
- 経営戦略の統一
- 資本調達力の強化
新設合併では、合併対象企業が持つすべての権利義務を1社に集約させることができるため、合併によるシナジー効果を最大化させることが可能です。事業統合のスキームによって、ブランド力や資金調達力・開発力などのシナジー効果を得ることが出来るでしょう。
一方で、新設合併のスキームは、M&Aの実行までに時間とコストを要するため、スピード感がある取引を求める場合には不向きです。また新設合併では、吸収した企業の許認可を引き継ぐことができないため、許認可を取り直す必要があります。
吸収合併
吸収合併とは、既存の1社のみを存続させ、他の消滅企業が所有していた一切の権利義務を承継させるM&Aのスキームです。新設合併では、合併の対象企業は全て消滅しますが、吸収合併では1社のみ存続することになります。新設合併の主な目的は、以下の通りです。
- 規模の経済の実現
- 市場シェアの拡大
- 競争力の向上
吸収合併のスキームは、主に市場での規模や競争力を高める目的で行われることが一般的です。吸収合併によって、複数企業の機能がひとつの企業に集約されるため、高いシナジー効果を得ることができます。
ただし、吸収合併において、存続企業と消滅企業の取引先が重複している場合、トータルの収益・利益が減少するおそれがあるので注意が必要です。吸収合併のスキームで得られる権利内容をよく把握しておくことが重要になります。
提携
M&Aのスキームにおける提携とは、複数の会社が協力し合うことで、共通目的の達成を目指すM&Aの手法です。提携のスキームでは、企業が独自性を持ちながらも、互いに協力関係を結び、資源や能力を共有することを目的としています。
提携のスキームにおける種類は、主に「資本提携」と「合弁会社設立」の2種類です。それぞれのスキームについて詳しく解説していきます。
資本提携
資本提携とは、対象企業同士が出資を行い、株式を保有し合うことで、経済的・戦略的に協力する関係を結ぶことです。資本提携における主な目的には、以下のものが挙げられます。
- シナジー効果の発揮
- 共同戦略の立案と実行
- 資金調達の効率化
資本提携では、企業は外部から出資を受けることができるため、資金調達をより容易にすることが可能です。また資金だけでなく、技術力や開発力なども共有することができるため、高いシナジー効果を創出することができます。
ただし、資本提携は企業間同士で資本を共有することになるため、経営方針や戦略において提携先企業の意見や影響を受けやすくなるため注意が必要です。資金的・資源的優位性が得られるものの、経営方針の合致が困難となります。
合弁会社設立
合弁会社設立とは、2社以上の企業が協力し、新たな法人を設立するM&Aのスキームです。提携した企業が共同で出資し、その会社の経営権を分担して運営する形態になります。合弁会社設立における主な目的は、以下の通りです。
- 市場への新規参入
- リスク分散
- 規模の経済の実現
合弁会社設立は、互いの企業が出資をし合って新たな企業を創設するため、経営投資の目的が非常に大きいです。共同出資に近い形となるため、新規事業や市場への進出をリスク分散して行うことができます。
ただし、合弁企業を設立する際、提携する企業同士で目的や優先順位が異なることがあるため注意が必要です。特に、各企業が異なる市場戦略を持っていたり、異なる利益を追求している場合、利益相反が発生するリスクがあります。
M&Aを進めるための事前準備
M&Aを成功させるためには、順序を追って流れ通りにプロセスを進める前に事前準備が大切です。M&Aを進めるための事前準備では、以下のことを最低限確認しておきましょう。
- 自社の企業情報を把握しておく
- コンサルティング企業の選定
- 市場調査の実施
それぞれ詳しく解説していきます。
自社の企業情報を明確にしておく
買収・合併などのスキームに関わらず、M&Aにおいては自社の企業情報を把握しておくことが非常に重要です。自社情報の把握は、M&Aを進めるための事前準備として必須要項となります。
自社の自社の財務状況や業績、資産、負債、キャッシュフロー、成長性などの情報を把握しておくことで、M&Aの際に適正な企業価値を算出することが可能です。自社の強みや弱みを理解していることで、買収者からの評価にも対応しやすくなります。
また自社の企業情報を把握しておくことで、潜在的なリスクを予見し、事前に対策を講じることが可能です。例えば、未解決の訴訟や契約問題、環境リスク、人的資源の問題などがある場合、これらを事前に対処することで、M&A後のトラブルを避けることができます。
コンサルティング企業の選定
多くの企業はM&Aを行う際に、M&Aコンサルティング企業や銀行、証券会社などのコンサルティング企業を介しておこなうことが一般的です。そのため、コンサルティング企業の選定は非常に重要なポイントとなります。
M&Aコンサルティング会社を選ぶ際には、コンサルティング会社が持つこれまでの実績を見ることが大切です。M&Aという複雑で重要なプロセスにおいて、コンサルティング会社の経験や成功事例が企業にとって大きな信頼の基準となります。
またM&Aコンサルティング会社を選ぶ際には、コンサルティング会社の得意領域で選ぶようにしましょう。業界や取引規模、目的によって求められる専門性や知識が異なります。そのため、自社のニーズや状況に最適な領域で強みを持つコンサルタントを選ぶことで、より成功率を高めることができます。
以下の記事では、「おすすめのM&Aコンサルティング会社」を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
市場調査の実施
M&Aを行う前の準備として、対象となる業界の市場調査を自社内で事前に行っておくことが大切です。もちろんコンサルティング企業に市場調査を依頼することは可能ですが、まずは自社で可能な限り市場情報を取得しておきましょう。
M&Aにおける市場調査では、まずターゲット企業の選定を行います。特にM&Aの目的が新しい市場への参入である場合、ターゲット企業が自社にとって適切かどうかを判断するための市場調査が不可欠です。市場調査を通じて、業界の成長性や競争環境などを把握することで、自社の戦略にフィットする企業を見つけやすくなります。
また市場調査を通じて、ターゲット企業の競争優位性(差別化要因)や弱点を明確にすることができます。M&A後の統合において、ターゲット企業の強みをどのように活用し、弱点をどのように改善するかを戦略的に考えるための基盤となります。
M&Aを成功させるための8つのポイント
M&Aを成功させるためのポイントについて解説していきます。M&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格への理解
- 利害関係者の把握
- 統合後プロセス(PMI)の確立
- 売却価格の予測
- 協力者の確保
- 不利益情報の公開
- 情報管理を徹底
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。
M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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相場価格への理解
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
例えば、M&Aにおける「買収」のスキームでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。
また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
利害関係者の把握
M&Aにおいて、利害関係者の把握は非常に重要です。M&Aは単なる企業間の取引ではなく、さまざまな関係者が絡む複雑なプロセスであり、その利害を理解し適切に調整することが成功への鍵となります。
利害関係者の理解が不足していると、後々の問題や紛争を引き起こし、取引が失敗に終わる可能性も高いです。例えば、株主は企業の最も重要な利害関係者の一つとなります。特に上場企業の場合、株主の意向がM&Aの成立に大きな影響を与えることがあります。
また企業の経営陣は、M&Aにおけるもう一つの主要な利害関係者です。 経営陣は通常、企業の方向性を決定する立場にあります。M&Aを通じて企業の経営権が変わることもあるため、経営陣がM&Aを支持しているか、または反対しているか、その理由を明確に理解することが重要です。
統合後プロセス(PMI)の確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新経営体制の構築
- 経営ビジョン実現のための計画策定
- 両社協業のための体制構築・業務オペレーション
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。
売却価格の予測
M&Aを行う際には、あらかじめ凡その売却価格を予測しておくことが大切です。M&Aによって自社の売却を考えている場合には、本取引移行前に売却価格の予想を行っておきましょう。
売却価格を予測するためには、企業の価値をどのように評価するかが重要です。売却価格の予測には「DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)」や「類似企業比較法(マーケットアプローチ)」の手法が用いられます。
特に類似企業比較法は、類似の業種や規模を持つ規模を持つ上場企業の株価やM&A取引の事例を元に、対象企業の価値を予測するため、比較的容易に売却価格を予測することが可能です。精度は下がりますが、インターネット上でも情報をキャッチすることができます。
協力者の確保
M&A取引においては、取引前に協力者の確保を行っておくことが大切です。M&Aにおける協力者とは、取引を成功に導くために必要な支援を提供する、さまざまな専門家やパートナーのことを指します。具体的な協力者は、以下の通りです。
- 財務アドバイザー(M&Aアドバイザー)
- 法務アドバイザー(弁護士)
- 会計士(税務アドバイザー)
- 投資家
- 業界専門家(コンサルタント)
- 人事アドバイザー(HPアドバイザー)
M&Aの取引においては、M&Aコンサルティング会社だけでなく、会計士や弁護士などのアドバイザーが協力関係に至るケースもあります。協力者を確保しておくことで、M&A取引をスムーズに進めることが可能です。
不利益情報の精査
M&Aの取引前に実行しておくべきプロセスに、不利益情報の精査が挙げられます。不利益情報とは、企業の価値を下げたり、買収・合併の交渉に悪影響を与えたりする可能性のある情報を指します。
具体的には、未解決の法的問題・営業上のリスク・財務の不安定性などです。不利益情報を精査することで、売却時のトラブルを未然に防ぎ、適切なM&A取引を成立することにも繋がります。
また不利益情報をいつ、どのように公開するかは非常に重要です。過度に早く公開すると、交渉が難航する可能性があり、逆に遅すぎると、後々の交渉で信用を失うリスクがあります。不利益情報を公開するタイミングは、専門家と相談のうえで決定しましょう。
情報管理を徹底
M&Aを行ううえで非常に重要なポイントに、情報管理の徹底が挙げられます。適切な情報管理が行われていないと、取引のスムーズな進行が妨げられたり、法的リスクが発生したり、取引が成立しなかったりする可能性があります。
情報管理が不足していると、意図せず機密情報や内部コミュニケーションの情報が相手企業に漏れてしまう可能性が高まるので注意が必要です。インサイダー取引や市場操作を防ぐためにも、非公開の重要情報が流出しないようにする必要があります。
M&Aを進める過程では、社内の関係者(経営陣や従業員)との情報共有や外部の弁護士、会計士、投資銀行などの専門家とのコミュニケーションも必要です。情報の一貫性を保つため、共有方法やタイミングを調整し、混乱を防ぐことが求められます。
M&Aを実施する際の注意点
M&Aは当然ながらリスクも伴う行為であるため、より慎重に行うことが大切です。ここでは、M&Aにおける注意点を解説していきます。M&Aにおける注意点は、以下の通りです。
- M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
- 避止義務に関して
- 事業許可や人材の引継ぎ
それぞれ詳しく解説していきます。
M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
M&Aでは、買い手と売り手の情報格差(買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富)があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件(買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう)という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
避止義務に関して
M&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。
M&Aにおける競業避止義務とは、M&Aの成約後に譲渡企業に課される義務です。譲渡した事業に対して、譲渡企業が競合するような事業を再度行い、譲受企業に不利益を与えることを避けることが目的となります。
会社法の規定により、事業譲渡を実施した会社は、競業避止義務を負うことになるので注意が必要です。ただし、買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることはできます。将来的に同じ事業を再度手掛ける可能性があれば、買収側と交渉しましょう。
事業許可や人材の引継ぎ
事業運営行ううえで重要なのが、事業許可(許認可)です。事業許可の承認なしでの事業運営は法律で禁止されており、事業許可無しでの運営は罰則を受けることになります。
もし事業譲渡をする際に買収側の企業が許可を有していなければ、事業を営むことは不可能です。ただし、株式譲渡の場合は事業許可を引き継げるためM&A後も継続して事業を行えます。
許可を取得している同業他社と事業譲渡を実施すれば、事業の売却がスムーズに進みます。なお、買い手が許可を持っていれば新しく許可を申請する必要はありませんが、法人の名称など変更にかかわる届出は必要です。
M&Aの成功事例5選
M&Aの流れを掴むうえでは、最終的な目標や取引成立のイメージを持つことが大切です。そのためには、M&Aにおける成功事例を把握しておくことが重要になります。
ここでは、M&Aにおける成功事例を紹介していきます。これからM&A取引の実施を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
ハウスコムによる宅都とのM&A
2020年12月に「ハウスコム」と「宅都ホールディングス」にて業務提携契約が成されました。その後、「宅都」の不動産仲介以外の事業を宅都ホールディングスのグループ会社に会社分割により譲渡。さらに2021年3月にハウスコムが宅都の全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。
譲渡企業である「宅都」は「宅都ホールディングス」の子会社で、大阪市を中心に関西圏にて不動産仲介・売買・賃貸事業などを展開している企業です。一方の譲り受け企業である「ハウスコム」は全国188店舗にて不動産賃貸仲介業の展開、及び不動産売買仲介・リフォーム事業を展開しています。
ハウスコムの本M&Aの狙いは、関西圏への進出とシェア拡大、さらに不動産仲介業事業の競争力強化です。さらに宅都ホールディングスは不動産テック事業も展開していることから、次世代を見据えた不動産テック分野の強化を目的としています。
ハウスコム株式会社と株式会社宅都ホールディングスの業務提携並びに子会社である株式会社宅都の株式譲渡のお知らせ
マツモトキヨシホールディングスとココカラファインによるM&A
2021年2月にマツモトキヨシホールディングスとココカラファインの間で経営統合契約が締結されたM&Aの事例です。本取引は、株式交換や会社分割などのスキームを用い、数段階のプロセスを経て実行されました。
「マツモトキヨシホールディングス」は、全国に調剤併設型ドラッグストアなど約1,750店舗を展開するマツモトキヨシグループの持株会社です。一方の「ココカラファイン」は調剤薬局・ドラッグストアを全国に約1440店舗を展開する企業になります。
本件M&Aは、加速するドラッグストア業界の市場競争激化に対する対抗戦略です。大手調剤薬局・ドラッグストア企業同士が合併することで、ヘルスビューティー分野での圧倒的なプレゼンスを獲得し、更なる事業基盤強化を図っています。
株式会社マツモトキヨシホールディングスとの経営統合に関するご案内
高松建設とタミツプランニングによるM&A
2019年5月に、高松建設がタミツプランニングの所有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられ、取得価額は約14億円となっています。
譲り受け企業である「高松建設」は、土地活用提案事業をベースとし、賃貸マンションや工場・物流施設・ホテル・医療施設などの建設を請け負っている企業です。一方の譲渡企業である「タミツプランニング」は、横浜エリアを中心に注文住宅とリフォームを手がけ、不動産開発事業やメガソーラー事業にも進出していた企業で、2016年からRIZAPグループの子会社となっていました。
本件M&Aは、総合建設会社と工務店による取引事例です。譲り受け企業である高松建設は、2018年に買収した不動産会社ミブコーポレーションとの連携も図りながら戸建て住宅事業を本格的に展開することを目的として本取引を実施しました。
大手企業出身のスペシャリスト達による「タカマツハウス」が本格始動!
東京建物シニアライフサポートとSOMPOケアによるM&A
2020年9月に、SOMPOケア株式会社が東京建物シニアライフサポート株式会社の所有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「SOMPOケア株式会社」は、介護関連サービス企業。 介護付きホーム・住宅型有料老人ホームなどを全国展開するほか、在宅サービス、フードサービス等の事業を展開する企業です。
一方の譲渡企業である「東京建物シニアライフサポート株式会社」は、首都圏1都2県でサービス付き高齢者向け住宅、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホームを運営している企業になります。
本件M&Aは、ともにサービス付き高齢者向け住宅を運営する会社同士の取引事例です。本取引により、譲り受け企業であるSOMPOケアは、介護サービス事業における取り組みの強化・加速化を目指しています。
東京建物シニアライフサポート株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
東洋運輸倉庫とSBSホールディングスによるM&A
2021年1月に、SBSホールディングスが東洋運輸倉庫の保有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられ、取得価額は72億円にのぼっています。
譲り受け企業である「SBSホールディングス」は、運輸業を主体とした総合的な物流サービスを手掛ける大手運送会社です。一方の譲渡企業である「東洋運輸倉庫」は、通関業・倉庫業・貨物運送取扱業などを手掛ける企業になります。
本件M&Aは、運送会社同士の取引事例です。譲り受け企業であるSBSホールディングスは、東京臨海エリアにおける最先端倉庫への投資を積極的に進めており、東京臨海部の東大荻島と若洲に大型倉庫を保有する東洋運輸倉庫の買収が実施されました。
おすすめのM&Aコンサルティング会社5選
M&Aを行う際には、M&Aコンサルティング会社を活用する可能性も高いはずです。そこで、ここでは、M&Aコンサルティング企業を紹介していきます。
M&A HACK
会社名 | 合同会社SFS |
設立 | 2022年12月 |
本社所在地 | 東京都台東区千足1-14-9 レアライズ浅草2 4F |
公式サイト | https://sfs-inc.jp/ma/ |
M&A HACKは、当社「合同会社SFS」が運営するM&Aコンサルティング会社です。2022年の設立から既に多くのお客様に依頼をいただいています。
当社は「スピード対応」「完全成功報酬制」「リスクなし」の3つをコンサルティングの軸としているのが特徴です。M&A取引をスムーズにすすめながらも、完全成功報酬制を採用することで、お客様の負担を最小限に抑えることをモットーとしています。
M&Aの複雑なプロセスも、当社であれば一気通貫して徹底サポートすることが可能です。もちろん相談は無料で行っているので、ぜひお気軽にご相談ください。
無料相談のご予約:https://sfs-inc.jp/ma/contact
M&Aキャピタルパートナーズ
会社名 | M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 |
設立 | 2005年10月 |
本社所在地 | 東京都中央区八重洲二丁目2番1号東京ミッドタウン八重洲八重洲セントラルタワー36階 |
公式サイト | https://www.ma-cp.com/ |
M&Aキャピタルパートナーズは、2005年の設立以来、譲渡株価総額2,565億円、じょうときぎょうの売上高4,462億円などの実績を誇るM&Aコンサルティング会社です。
「株価レーマン方式」を採用しており、取引価格に応じて手数料を設定しています。そのため、支払い手数料がリーズナブルであることが魅力です。余計なコストを抑えながら、コンサルティングを依頼することができます。
また同社には仕業を所有するコンサルティングが多数在籍しているのも特徴です。それぞれの分野に特化したコンサルタントが在籍しているので、幅広い分野の案件に対して柔軟に対応することができます。
山田コンサルティンググループ
会社名 | 山田コンサルティングブループ株式会社 |
設立 | 1989年7月 |
本社所在地 | 東京都千代田区丸の内1丁目8番1号丸の内トラストタワーN館10階 |
公式サイト | https://www.yamada-cg.co.jp/ |
山田コンサルティンググループは、1989年の設立以来長きにわたってM&Aコンサルティングを行ってきた老舗企業です。創業30年以上経過していることから、業界トップクラスの取引実績を持ちます。
山田コンサルティンググループの特徴は、大企業のM&Aのみならず、中小規模のM&A依頼も柔軟に請け負ってくれる点です。全国に支店を展開しているため、地域を問わず相談を行うことができます。
またM&Aコンサルティングの依頼以外にも、アドバイザりー業務も展開しているのが特徴です。コンサルティングとアドバイザリーの両視点から、より適切で確度の高いサポートを行ってくれます。
日本M&Aセンター
会社名 | 株式会社日本M&Aセンター |
設立 | 2021年4月 |
本社所在地 | 東京都千代田区丸の内一丁目8番2号 |
公式サイト | https://www.nihon-ma.co.jp/ |
日本M&Aセンターは、東京都千代田区に本社を置く大手M&Aコンサルティング会社です。豊富な実績と優れたコンサルタントを抱えており、業界でも高い知名度を誇ります。
日本M&Aセンターの成約数は、8500件超となっており、3年連続でギネス記録「M&Aファイナンシャルアドバイザー業務の最多取り扱い企業数」に認定されているほどです。
豊富な実績からも分かる通り、取り扱うジャンルの幅が非常に広く、あらゆる業界・取引におけるノウハウを所有しています。またM&Aコンサルティング会社でありながら、金融機関とも連携しているため、M&Aにおける資金面でも確実なサポートをおこなってくれます。
インターリンク
会社名 | インターリンク株式会社 |
設立 | 2010年8月20日 |
本社所在地 | 東京都中央区日本橋兜町5番1号 |
公式サイト | https://www.interlink-ma.co.jp/ |
インターリンクは、2010年に設立されたM&Aコンサルティング会社です。主に提携型M&A仲介の専門会社として豊富な実績を持っており、個々の企業に合わせた独自の提案をおこなうこで、潜在的なニーズの顕在化を支援してくれます。
インターリンクは、「仲介型」のM&Aコンサルティング会社であるため、仲介者として双方の企業との信頼関係を築くことを重視しているのが特徴です。M&A取引において当事者間の認識に齟齬が発生しないよう、確実に取引を進行させてくれます。
一つのジャンルや業界に特化していない反面、あくまで独立・中立役であることに重きを置いているのがインターリンクの特徴です。そのため、純粋に案件を成立させるためにのみ、注力してくれます。
まとめ
今回はM&Aにおける流れやプロセスについて解説しました。これからM&Aの実施を検討している場合には、しっかりとM&Aの流れを理解しておきましょう。
M&Aは経営戦略として非常に有効な手段であり、実際にM&Aを実施することによって、大きく事業を発展させたり、経営を立ち直らせた企業は多く存在します。M&A取引の実施を検討しているのであれば、まずはM&Aコンサルティング会社への相談も検討してみてください。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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