「医薬品卸会社のM&Aにおける動向は?」
「医薬品卸会社のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「医薬品卸会社 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、医薬品卸会社のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
医薬品卸会社におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、医薬品卸会社のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
医薬品卸会社とは
医薬品卸会社とは、医薬品製造会社(医薬品メーカー)から医薬品を仕入、物流倉庫で保管・菅理を行い、ドラッグストア・調剤薬局・病院などの各種医療機関に医薬品を卸売販売する企業のことです。
医薬品には大きく分けて病院や調剤薬局で扱う「医療用医薬品」と、ドラッグストアやネット通販企業が扱う「一般用医薬品」の2種類が存在します。医薬品卸会社は、その両方ともを扱う企業が多いです。
また近年では医薬品卸会社のビジネスモデルも徐々に変化してきており、従来通り医療用医薬品または一般用医薬品のみを扱う会社がある一方で、化粧品・食品・日用品など様々なカテゴリーの商品を扱う医薬品卸会社も存在します。
医薬品卸会社の事業内容
医薬品卸会社の主な事業内容を解説していきます。
医薬品等の卸売販売
医薬品を医薬品製造メーカーから購入し、病院や調剤薬局、ドラッグストアに販売することが医薬品卸会社の主な事業内容です。日本における医薬品の安定供給において非常に重要な役割を果たしているとも言えます。
医薬品は、日用品や雑貨品などとは違い取り扱いに関して厳しいルールが設けられています。医薬品の卸売販売には「医薬品卸売販売業許可」が必要であることに加え、医薬品によっては厳しい保管ルールが定められているケースも多いです。
また医薬品卸会社は、単に病院や調剤薬局、ドラッグストアに医薬品を供給するだけでなく、医薬品の販売提案や製薬メーカーからの情報収集といった業務を担います。商品を横流しするのではなく、適切な販売手段を模索することも医薬品卸会社の重要な役割のひとつです。
医薬品以外の卸売販売
医薬品卸会社と聞くと、どうしても医薬品の卸売販売だけを行っているように思われがちですが、そうではありません。医薬品卸会社であっても、化粧品・日用品・食品など、様々なジャンルの商品を卸売する企業は多いです。
医薬品卸売会社のなかでも、一般用医薬品の卸売販売に長け、ドラッグストアに強いルートを持つ企業は、化粧品・日用品など医薬品以外の卸売販売を積極的に行っているケースが多いです。医薬品のみならず多岐に渡る商品群を主にドラッグストアに対して供給しています。
医薬品卸売会社が、医薬品以外の卸売販売にも積極的である理由は、ドラッグストア市場の拡大と変化が主な要因です。ドラッグストア市場は右肩上がりに成長しており、加えて医薬品以外のカテゴリー商品も積極的に販売しています。ドラッグストア運営企業とのパイプが太い医薬品卸売会社は、必然的に医薬品以外の卸売販売に着手することが求められるのです。
物流センターの運営
医薬品卸売会社にとって欠かせない事業のひとつが、物流センターの運営です。大手の医薬品卸売会社のほとんどが自社物流センターを保有しており、商品保管および管理・商品受入・商品出荷業務を行っています。
中でも医薬品の保管・管理業務は、医薬品卸売会社が担う重要な業務のひとつです。医薬品の保管には適切な温度管理が必要であり、高温多湿な環境での保管は医薬品の品質に大きな悪影響を与えるため、適切な室温・湿度で管理することが必須です。
また医薬品のなかには、「毒物」や「劇薬」に該当するものも多く、これらを適切に管理することも卸売会社の重要な役目になります。万が一に破損や紛失が発生した場合には、人命に関わることもあるため、適切な管理体制がなくては医薬品卸売会社は勤まりません。
医薬品卸会社に必要な業許可・資格・人材
医薬品卸会社に必要な業許可・資格・人材について解説していきます。
医薬品卸会社に必要な業許可
医薬品卸会社に必要な業許可として代表的なものに「医薬品卸売販売業許可」があります。医薬品を製造メーカーから買い取ったのちに、病院や調剤薬局・ドラッグストアに販売するには医薬品卸売販売業許可が必須です。
医薬品卸売販売業許可は、無条件で取得が可能なわけではありません。医薬品卸売販売業許可の取得要件は、主に以下の4つです。
- 営業所の構造設備が、厚生労働省令で定める基準に適合
- 原則として、営業所ごとに営業所管理者を置く
- 販売する医薬品に合わせ、薬剤師又は販売管理者を置く
- 申請者が欠格事由に当てはまらない
医薬品の保管・管理に適した営業所(倉庫)を持ち合わせていることが必須条件です。また薬剤師や販売管理者の雇用も必須となるため、設備・人材の両面で体制を整えることが重要になります。
医薬品卸会社に必要な資格
医薬品卸会社の運営において欠かせないのが、国家資格である「薬剤師」資格保有者です。医薬品卸会社の事業許可である「医薬品卸売販売業許可」の取得には薬剤師の存在が不可欠となります。
医薬品卸売販売業許可の取得においては、営業所ごとに「営業所管理者」の配置が必須です。また営業所管理者は、原則として薬剤師でなければなりません。また営業所管理者は他の営業所管理者を兼任することはできないため、営業所ごとに薬剤師を雇用する必要があります。
しかし近年においては、薬剤師人材の雇用は容易ではありません。医薬品卸売会社だけでなう、病院や調剤薬局、ドラッグストアも薬剤師不足に悩んでいるため、薬剤師の獲得競争が発生しています。
医薬品卸会社に必要な人材
医薬品卸売会社の運営は、薬剤師だけが担っている訳ではありません。商品の仕入・発送・販売までの業務に適した人材を雇用することが必須です。医薬品卸会社の運営においては、以下のような人材が必要とされています。
- 薬剤師:営業所管理者としての業務
- 営業員:病院やドラッグストアなどに対して営業活動を行う
- バイヤー:医薬品メーカーから医薬品の仕入れを行う
- 倉庫作業員:自社倉庫を保有・運営する場合に商品の受入・出荷を行うための人材
上記の通り、医薬品卸会社の業務は非常に多岐に渡るため、様々な職種に適した人材の雇用が必須です。特に複数個所の営業所を運営する企業では、より多くの人材を確保する必要があるため、人件費などの調整も細かく行うことが必要になります。
医薬品卸会社の市場動向
医薬品卸会社の市場動向について解説していきます。
市場規模は横ばい状態
「医薬品卸売行年鑑 2020年版」によれば、医薬品卸売業界における2020年度の市場規模は9兆1,046億円と前年比とほぼ横ばいの状態と報告されています。実際に医薬品卸売業界の年間売上は、毎年ほぼ横ばいもしくはやや減少している状態が続いています。
医薬品卸売業界の売上変動が少ない最も大きな理由のひとつは、医薬品卸売企業間の価格競争が激しいためです。企業間同士の価格競争が激しく、単一商品における顧客の取り合いが発生し、急激な売上増加が見込めない状態にあります。
しかし一方で、医薬品の需要が途絶えることはないため、売上変動が少なく安定した業界であることも事実です。既に医薬品卸会社としての基盤を築いた大手企業の経営状態は安定しており、今後も安定した経営状態は続くことが予測されます。
大手企業の占有市場
医薬品卸業界の最たる市場特性は、大手企業の占有市場であることです。医薬品卸業界では、上位4社が市場全体の売上のうち約90%を占めると言われています。医薬品卸業界における上位4社は以下の通りです。
- メディパルホールディングス
子会社27社と関連会社18社で構成された企業。医薬品・化粧品・日用品・動物用医薬品などの販売やサービスを提供する。全国各地に拠点を置いて、地域密着型の事業展開を行っている企業で、売上高は業界第1位を誇る。 - アルフレッサホールディングス
医薬品卸で国内第2位の売上高を誇る企業。医療用医薬品等卸売事業・セルフメディケーション卸売事業・医薬品等製造事業・医療関連事業などを展開。医療と健康に関するさまざまな事業を展開して「ヘルスケアコンソーシアムの実現」を目指し、人々の健康に貢献している企業。 - スズケン
医薬品卸業界で第3位の規模。1946年に設立された鈴謙洋行を源流に持つ医薬品卸会社。全国47都道府県に営業所を設置しており、卸売業者から商品を購入し、最終消費者に売る小売業に販売するビジネスを展開するナショナルホールセラーとしては、日本で唯一の医薬品卸企業。 - 東邦ホールディングス
医薬品卸業界で売上規模第4位の企業。製薬会社などから医薬品および医療関連商品を仕入れ、病院・診療所・調剤薬局などに販売している。子会社69社および関連会社10社により構成された持株企業で、医薬品の卸販売と、病院などの医療現場の業務を支援する事業の2本柱で成長を遂げている。
医薬品卸業界の市場シェアのほとんどを上位4社が占めており、残りの約10%を他企業が争っている状態です。上位4社に対抗するための戦略として、M&Aを有効活用する医薬品卸会社も存在します。
取り扱い商品の多様化
大手医薬品卸会社の売上における大部分を占めているのは、医療用医薬品の卸売における売上です。一方で、ドラッグストアへの商品供給を主とした一般用医薬品・日用品・食品などの卸売業を生業とする医薬品卸会社も存在します。
現在のドラッグストア市場は、一般用医薬品のみならず日用品や食品を取り扱うことで順調に市場規模を拡大させている状態です。そのため、これまでドラッグストアへ一般用医薬品を卸していた医薬品卸会社も必然的に日用品や食品の取り扱いが増加しています。
一般用医薬品以外の取り扱い商品の多様化により、医薬品卸会社のビジネスモデルも変化を遂げている状態です。大手企業の占有市場での競争力強化と差別化戦略の一環として、取り扱い商品の多様化を図る医薬品卸会社も存在します。
医薬品卸会社が抱える課題
医薬品卸会社が抱える課題について解説していきます。
慢性的な人手不足
医薬品卸会社を含む医薬品業界で大きな課題となっているのが、慢性的な人手不足です。少子高齢化問題により、若い働き手は年々減少しているだけでなく、大都市集中型人口による地方部の人手不足も課題となっています。
特に医薬品業界では、薬剤師の不足が最も大きな課題です。薬剤師の数自体は1970年代頃から一貫して増加しているものの、一方で企業側が求める需要がそれを上回る勢いで増加しており、薬剤師が不足している状態にあります。以下は、「厚生労働省」による医師・薬剤師の有効求人倍率の測定結果です。
年 | 有効求人倍率 |
2016年 | 5.92 |
2017年 | 5.25 |
2018年 | 4.4 |
2019年 | 3.49 |
2020年 | 2.01 |
薬剤師の数自体が増加していることもあり、有効求人倍率も年々減少傾向にある状態です。しかし依然として有効求人倍率は高い状態にあり、薬剤師における求人は「売り手市場」であると言えます。
中小企業同士の市場競争が激化
医薬品卸業界は、歴とした大手企業による独占市場です。「メディパルHD」「アルフレッサHD」「スズケン」「東邦ホールディングス」の上位4社が市場シェアの90%を独占している市場特性となっています。
大手4社に対抗できる企業は現在のところ存在せず、同時に上位4社を除く企業で市場シェアの約10%を争っている状態です。なかでも中小規模の医薬品卸会社同士の市場競争が激化しており、商品の価格競争も同時に発生しています。
医薬品卸会社の競争激化により、商品の価格競争が発生するということは、医薬品卸会社だけでなく医薬品製造メーカーにとっても大きな悪影響要素です。商品価値が何の理由もなく低下してしまうため、製薬メーカーの利益圧迫に繋がってしまいます。医薬品関連業界全体においてマイナスの影響を与えてしまうのです。
新規顧客獲得への難易度
医薬品卸会社が抱える課題のひとつが、新規顧客獲得を行うことです。医薬品卸会社は病院・調剤薬局・ドラッグストアなどに医薬品を提供していますが、なかでも調剤薬局の新規開拓を積極化させる必要があると言われます。
現在の調剤薬局市場は、新規参入や既存調剤薬局大型化により、調剤薬局市場は拡大傾向にある状態です。調剤薬局の規模拡大が進めば、卸を中抜きしたビジネスモデルが完成する可能性が高まるため、医薬品卸会社にとっては大きなマイナス要素となります。
医薬品卸会社が付加価値の提供を高めるために最も重要とされているのが、営業機能の改革です。高度化する顧客ニーズに応えるための知見とノウハウを身に付け、より綿密な商品提案と配送などを提供する必要があります。
医薬品卸会社のM&A動向
医薬品卸会社のM&Aの動向について解説していきます。
大手企業による中小企業へのM&A
医薬品卸会社のM&Aで最も多いのが、大手医薬品卸会社による中小規模医薬品卸会社の買収です。大手医薬品卸会社が中小規模事業者を買収することで、勢力の拡大を狙っています。
大手企業と中小企業のM&Aでは、大手医薬品卸会社が中小規模の医薬品卸会社が持つ営業所・物流センター・薬剤師などの人材・商品販売件を獲得することが目的です。中小規模の医薬品卸会社を買収すれば、一度のM&Aで複数のメリットを獲得することが出来るので、効率よく規模の拡大を図ることができます。
また近年では大手企業による中小企業の買収だけでなく、中小規模の医薬品卸会社同士が合併するケースも多いです。勢力を拡大する大手医薬品卸会社に対し、中小企業同士が合併することで競争力を高めることを狙いとしています。
異業種からの新規参入が少ない
異業種からの新規参入が少ないことも医薬品卸業界におけるM&Aの特徴です。医薬品卸会社のM&Aに関連した事例では、以下のような同業者もしくは関連業者との取引が見られます。
- ドラッグストア
- 医薬品または化粧品製造メーカー
- 医療機器メーカー
- 調剤薬局運営会社
- 医療・ヘルスケア事業運営会社
いずれも医療・健康・医薬品などヘルスケアジャンルに関連した企業との取引が多いです。医療・医薬品関連業界は、薬機法などの規定により参入障壁が高いことが異業種の新規参入を阻む壁となっています。
ただし近年では事例数自体が少ないものの、異業種と医薬品卸会社によるM&Aも行われて初めているのが現状です。市場成長率が低く、価格競争が激しい市場における競争力獲得が目的とされています。
医薬品メーカーとのM&A
医薬品卸会社における近年のM&A事例として特に注目されているのが、医薬品製造会社(医薬品メーカー)との取引事例です。大手~中堅の医薬品卸会社が、中小規模の医薬品メーカーとのM&Aを行う事例が発生しています。
例えば、医薬品卸業界1位の規模を誇る「メディパルホールディングス」が、兵庫県の医薬品メーカーである「JCRファーマ」と業務提携をした事例です。本事例は、メディパルホールディングスが医薬品メーカーの持つ製品開発力を獲得することを目的として実施されました。
医薬品卸会社にとって大きな懸念点となるのが、医薬品メーカーと病院やドラッグストアなどの顧客が直接取引を実施することです。医薬品メーカーの規模が拡大すれば、自社で物流および販売網を組み立てられるため、医薬品卸会社を介さずとも取引が可能となります。
医薬品卸会社にとって大きな影響をもたらす医薬メーカーと病院やドラッグストアとの直接取引を阻止するためには、より付加価値を高めるしかありません。医薬品メーカーとの業務提携によって、医薬品の開発・製造能力を身に付けることで、医薬品メーカーによる直接取引への対抗策としています。
医薬品卸会社でM&Aを行うことのメリット
医薬品卸会社でM&Aを行うことのメリットを売却側と買収側の両方から解説していきます。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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医薬品卸会社でM&Aの売却を行うことのメリット
医薬品卸会社でM&Aの売却を行うことのメリットは、以下の通りです。
資金調達・オーナーのEXIT
M&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。
- 残っている借入金の返済に充てる
- オーナー自身の引退後の生活資金とする
- 新規事業における資金源とする
一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。
借入における個人保証の解除
借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。医薬品卸会社に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。
特に中小規模の医薬品卸会社の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。
M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。
従業員の雇用維持
売却側の企業が廃業目前であった場合には、M&Aを実行することで、既存従業員の雇用を継続して守ることができます。実際にM&Aを行った場合、ほとんどのケースで譲受企業によって従業員の雇用が継続されます。
労働条件においても引き継がれるケースがほとんどなので、廃業に比べると既存従業員が被る影響を大きく抑えることに繋がるでしょう。給与待遇や労働条件が同じであれば、M&A後の離職率も低下させることができます。
また待遇面においては、M&A後に給与受験・労働時間・年間休日・福利厚生などの改善が行われるケースも多いです。M&A以前よりも好条件で雇用されるケースもあるので、既存従業員にとっては大きなメリットとなり得ます。
大手傘下による安定した経営
医薬品卸業界は代表的な大手企業独占市場です。「メディパルホールディングス」「アルフレッサホールディングス」「スズケン」「東邦ホールディングス」の上位4社が市場シェアの90%を占めています。
圧倒的に大手医薬品卸会社が占める市場シェアが大きいため、中小規模の医薬品卸会社が単独で市場競争を勝ち残ることは容易ではありません。実際に大手企業が持つブランド力のみによって、商品の取り扱いが決まることも多いです。
M&Aによって中小企業が大手企業の傘下に入ることは、大手独占市場において中小規模の企業が取れる立派な生存戦略のひとつです。大手企業の傘下に入ることができれば、資金的な援助はもちろん、大手ブランドを掲げることにより新規顧客を獲得できる可能性も高まることでしょう。
医薬品卸会社でM&Aの売却を行うことのメリット
医薬品卸会社でM&Aによる買収を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 事業拡大のチャンス
- 新規事業への進出
- ノウハウと人材の継承
- 事業許可の獲得
それぞれ詳しく解説していきます。
事業拡大のチャンス
M&Aにおいて買収側が得られる最大のメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。M&Aによって買収側の企業は、医薬品卸業界における規模・シェアの拡大を狙うことができます。
医薬品卸会社業界のM&Aにおいては、顧客・取引先・特殊情報などの無形資産に加え、営業所・物流倉庫・薬剤師などの有形資産を手に入れることも可能です。特に医薬品卸会社にとって営業所や物流倉庫などの有形資産は実績に直結する要素であるため、M&Aによる早期事業拡大も視野に入れることができます。
また医薬品卸業界においては、大手企業の市場シェア率が高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小同士のM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を付けることにも繋がります。
新規事業への進出
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに早期進出が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
ノウハウと人材の継承
医薬品卸会社において事業成功のカギを握るのは、自社が持つ「運営ノウハウ(物流機能や顧客とのコンタクト機能)」と「営業力(医薬品の新規提案など)」です。これら2つが揃っている医薬品卸会社は、市場において高い競争力を得ることができます。
もしM&Aによって医薬品卸会社の買収を検討しているのであれば、まずは買収先企業が持つノウハウと営業力に目を向けることが先決です。買収によって現在の自社が持たないノウハウや営業力が手に入るか否かをチェックしましょう。
また医薬品卸会社の買収に関しては、買収先が持つ営業所や物流センターの如何によって、取引額に大きな差が生じます。より多くの営業所や物流センターを所有している企業ほど、高値で取引されるケースが多いです。
事業許可の獲得
医薬品卸事業は、様々なカテゴリーの商品を扱う卸売業です。そのため販売する商品のカテゴリーに応じた事業許可を取得する必要があります。しかし医薬品卸会社としてのノウハウや知見のある人材を持たずして、多くの事業許可を一から取得することは容易ではありません。
医薬品卸会社に関連する事業許可の中でも「医薬品卸売販売業」は取得難易度がやや高く、知見やノウハウがあった場合でも取得までには2~3ヶ月間の期間を有します。事業許可と併せて薬剤師も雇用する必要があるので、医薬品卸事業を運営するためのハードルは高いです。
M&Aによって医薬品卸会社を買収することで、医薬品の卸売において必要となる事業許可を買収先の企業から承継することが可能です。営業所や物流センターと合わせて事業許可や薬剤師も承継すれば、すぐにでも医薬品卸事業をスタートすることができます。
医薬品卸会社のM&Aにおける成功事例
医薬品卸会社のM&Aにおける成功事例を紹介していきます。
メディパルホールディングスとJCRファーマによるM&A
2017年9月に、メディパルホールディングスとJCRファーマが、業務資本提携契約を締結したM&Aの事例です。本取引の発行済株式総数割合は22.46%となり、JCRファーマはメディパルホールディングスの持分法適用会社となります。
譲り受け企業である「メディパルホールディングス」は、子会社27社と関連会社18社で構成され、医薬品・化粧品・日用品・動物用医薬品などの販売やサービスを提供する業界最大手の医薬品卸会社です。一方の譲渡企業である「JCRファーマ」は、バイオ医薬品の研究から製造まで一貫対応できる製薬企業になります。
本件M&Aは、業界最大手の医薬品卸会社と製薬メーカーによる取引事例です。本取引により、メディパルホールディングスは、製薬メーカーとしての機能を獲得。一方のJCRファーマもメディパルホールディングスの持つ物流機能と販売力の獲得に成功しています。
アルフレッサホールディングスとしんようフォレストホールディングスによるM&A
2022年3月に、アルフレッサホールディングスがしんようフォレストホールディングスの子会社である「宮崎温仙堂商店」の全株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引の譲渡金額は公開されていません。
譲り受け企業である「アルフレッサホールディングス」は、医薬品卸で国内第2位の売上高を誇り、医療用医薬品等卸売事業・セルフメディケーション卸売事業・医薬品等製造事業・医療関連事業などを展開する企業です。一方の譲渡企業である「しんようフォレストホールディングス」は、長崎県・佐賀県・熊本県天草地方で医療用医薬品・検査用試薬・機器などの卸売事業を行っている企業になります。
本件M&Aは、ともに医薬品卸会社同士による取引事例です。譲り受け企業であるアルフレッサホールディングスは、同じ医薬品卸会社を買収することで、更なる事業基盤強化と地域特性に合わせた営業戦略の展開を目指しています。
スズケンとドクターズによるM&A
2020年11月に、スズケンとドクターズが資本業務提携を締結したM&Aの事例です。スズケンは本取引前にも既に、「Dr.JOY」「Welby」「エンブレース」「Ubie」「サスメド」と資本業務提携を行っています。
譲り受け企業である「スズケン」は、全国47都道府県に営業所を設置しており、医薬品卸業界で第3位の規模を誇る大手企業です。一方の譲渡企業である「ドクターズ」は、400名超のエキスパート医師と医療・ヘルスケア事業に精通したコンサルタントが、デジタルヘルスケアサービスの企画・開発から医療機関への流通・販売までをワンストップで支援し、出口戦略のある本格的なデジタルヘルスケアサービスの事業化と持続性のあるデジタルヘルスビジネスを実現してきた企業になります。
本件M&Aは、大手医薬品卸会社とデジタルヘルスケアサービス提供会社による取引事例です。本取引により、譲り受け企業であるスズケンは、総合的なデジタルヘルスケアサービスの普及推進と全国展開を目指しています。
デジタルヘルスにおける医療DXプラットフォーム推進に向けてスズケンとドクターズが資本業務提携を締結
東邦ホールディングスとセルージョンによるM&A
2022年1月に、東邦ホールディングスがセルージョンとの間で資本業務提携を締結したM&Aの事例です。本取引は、資本業務提携のスキームが用いられましたが、取引金額は公開されていません。
譲り受け企業である「東邦ホールディングス」は、医薬品卸業界で売上規模第4位の規模を誇り、子会社69社および関連会社10社により構成された持株企業で、医薬品の卸販売と、病院などの医療現場の業務を支援する事業の2本柱で成長を遂げた企業です。一方の譲渡企業である「セルージョン」は、水疱性角膜症の治療を目的とするiPS細胞を利用した角膜内皮再生医療を手掛けている企業になります。
本件M&Aは、業界4位の大手医薬品卸会社と再生医療ベンチャー企業による取引事例です。本取引により、東邦ホールディングスは、角膜内皮再生医療の社会実装へ向けた事業開発を支援するとともに、遺伝子治療医薬品や再生医療等製品をはじめとするスペシャリティ医薬品への取り組み強化を図っています。
東邦ホールディングス社と資本業務提携 水疱性角膜症に対する再生医療等製品CLS001の社会実装を加速
スズケンとUbieによるM&A
2020年4月に、スズケンがUbieとの間で資本業務提携の契約を締結した事例です。本取引は、資本業務提携のスキームが用いられましたが、取引金額は公開されていません。
譲り受け企業である「スズケン」は、全国47都道府県に営業所を設置しており、医薬品卸業界で第3位の規模を誇る大手企業です。一方の譲渡企業である「Ubie」は、医療AI分野におけるスタートアップ企業になります。
本件M&Aは、大手医薬品卸会社と医療AI分野のスタートアップ企業による取引事例です。本譲り受け企業であるスズケンは、環境変化を見据えて既存事業の利益体質への強化とともに、グループ各事業の機能融合を図るなどグループ構造改革に取り組んでいます。
アルフレッサホールディングスとサンノーバによるM&A
2016年4月に、アルフレッサホールディングスがエーザイの連結子会社であるサンノーバの吸収分割承継会社の所有する株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は吸収分割のスキームが用いられましたが、取引金額は公開されていません。
譲り受け企業である「アルフレッサホールディングス」は、医薬品卸で国内第2位の売上高を誇り、医療用医薬品等卸売事業・セルフメディケーション卸売事業・医薬品等製造事業・医療関連事業などを展開する企業です。一方の譲渡企業である「サンノーバ」は、高度な生産体制および品質管理体制のもと、エーザイグループ各社の医薬品の製造受託などを行っている企業になります。
本件M&Aは、大手医薬品卸会社と大手医薬品会社を親会社に持つ医薬品メーカーによるM&Aです。アルフレッサグループは、医薬品製造販売事業を承継し、子会社の医薬品、診断薬、医療機器、医薬品原材料等の製造・輸出入・販売を行う「アルフレッサ ファーマ」の生産力と合わせて製造受託事業の生産能力を拡充し、医薬品等製造事業の基盤を一層強化していく方針を掲げています。
医薬品製造・販売連結子会社 サンノーバの事業承継に関するお知らせ
スズケンとヤマト科学によるM&A
2017年9月に、スズケンとヤマト科学が資本業務提携による契約を締結したM&Aの事例です。本取引は資本業務提携のスキームが用いられ、スズケンはヤマト科学の発行済株式の2.7%を取得しています。
譲り受け企業である「スズケン」は、全国47都道府県に営業所を設置しており、医薬品卸業界で第3位の規模を誇る大手企業です。一方の譲渡企業である「ヤマト科学」は、理科学機器・試験研究設備・分析計測機器・産業試験検査機器・医療機器などの製造メーカーになります。
本件M&Aは、大手医薬品卸会社と医療機器製造メーカーによる取引事例です。本取引により、スズケンは両社の相互の信頼関係を基盤とし、革新的な製品とサービスの開発を協力して推進することで、新たなソリューションの創出を図っています。
PALTACと伊藤秀商事によるM&A
2015年8月に、PALTACと伊藤秀商事が、伊東秀商事を合併消滅会社・PALTACを合併存続会社とする吸収合併の契約を締結したM&A事例です。
譲り受け企業である「PALTAC」は、メディパルホールディングスの連結子会社で、化粧品・日用品、一般用医薬品をフルラインで取り扱う中間流通企業です。一方の譲渡企業である「伊藤秀商事」は、マツモトキヨシホールディングスの連結子会社で化粧品・日用品の卸売事業を手掛ける企業になります。
本件M&Aは、共に大手医薬品卸会社と大手ドラッグストア企業の子会社同士による取引事例です。譲り受け企業であるPALTACは、両社の事業資産及びノウハウの集約、中間流通段階における取扱高の増加により、さらなる生産性向上を目指しています。
ニュートリーと三和化学研究所によるM&A
2016年9月に、三井製糖の連結子会社であるニュートリーが、スズケンの連結子会社である三和化学研究所の事業を一部譲渡することを決定したM&Aの事例です。本取引は事業譲渡のスキームが用いられ、三和化学研究所のニュートリション事業が承継されることになります。
譲り受け企業である「ニュートリー」は、三井製糖の連結子会社で、栄養療法食品や嚥下障害対応食品の開発・生産を行っている企業です。一方の「三和化学研究所」は、スズケンの連結子会社で、医薬品・介護用食品、ヘルスケア製品などの研究開発と製造販売、医薬品の受託製造を手掛けている企業になります。
本件M&Aは、食品メーカーと医薬品卸会社による本取引事例です。譲り受け企業であるニュートリーは、営業基盤の拡大や開発力の強化などの実現や、市場要望に応えた製品のタイムリーな供給を目指しています。
メディカルネット、オカムラとノーエチ薬品によるM&A
2021年4月に、メディカルネットが同社の完全子会社である「オカムラ」を通じて、ノーエチ薬品の所有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得金額は公開されていません。
譲り受け企業である「メディカルネット」は、インターネットを活用した医療・生活関連情報サービスの提供を行っている企業。「オカムラ」は、歯科医院に関する器材ほか器具・薬品一式の販売を行っている企業です。一方の「ノーエチ薬品」は、医薬品・医薬部外品の薬局薬店向け販売事業を手掛ける企業になります。
本件M&Aは、医薬品卸会社と医薬品販売会社による取引事例です。本取引により、譲り受け企業であるメディカルネットは、製薬事業を新たに加えることで、歯科医療のプラットフォーマーとしての機能を強化することを目的としています。
医薬品卸会社のM&Aにおける注意点
医薬品卸会社のM&Aにおける注意点を解説します。医薬品卸会社のM&Aにおいて、注意すべき事項は以下の通りです。
- M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
- 競業避止義務に関して
- 既存従業員の離職対策
それぞれ解説していきます。
M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
M&Aで
は、買い手と売り手の情報格差(買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富)があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件(買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう)という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
競業避止義務に関して
M&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。
M&Aにおける競業避止義務とは、M&Aの成約後に譲渡企業に課される義務です。譲渡した事業に対して、譲渡企業が競合するような事業を再度行い、譲受企業に不利益を与えることを避けることが目的となります。
会社法の規定により、事業譲渡を実施した会社は、競業避止義務を負うことになるので注意が必要です。ただし、買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることはできます。将来的に医薬品卸事業を再度手掛ける可能性があれば、買収側と交渉しましょう。
既存従業員の離職対策
買収先の既存従業員による離職対策は、M&Aを成功させるために留意すべきポイントのひとつです。既存従業員の離職を防ぎ、優秀な人材を雇用し続けることが重要になります。
経営者視点から見ればM&Aは立派な経営戦略であり、大きなシナジー効果を生むものです。しかし従業員にとっては、今後の働き方や会社との雇用関係に大きな変化をもたらす為、M&Aによって雇用条件や働き方が悪化すると離職を招きます。
M&Aによる離職を防ぐためには、従業員の働き方や雇用関係の変化に対し、敏感に配慮することが重要です。既存従業員が不安となる要素はあらかじめ取り除いておくことが、M&Aによる離職を防ぐ手段として有効になります。
医薬品卸会社のM&Aを成功させるためのポイント
医薬品卸会社のM&Aを成功させるためのポイントについて解説します。医薬品卸会社のM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格への理解
- PMI(統合後プロセス)の確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。
M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。M&A専門業者に委託することで、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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相場価格への理解
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
医薬品卸会社のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。
また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
PMI(統合後プロセス)の確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新経営体制の構築
- 経営ビジョン実現のための計画策定
- 両社協業のための体制構築・業務オペレーション
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。
医薬品卸会社のM&Aについてのまとめ
今回は医薬品卸会社におけるM&Aについて、医薬品卸業界の現状や特徴、市場動向やM&A事例を踏まえて解説しました。
医薬品卸業界は事業者の数が非常に多いこともあり、M&Aが盛んに実行されている業界です。M&Aによる経営統合によって事業拡大に成功している医薬品卸会社も数多く存在することから、医薬品卸会社の運営にとってM&Aは有効な経営戦略の一つと言えるでしょう。
しかしM&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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