「調剤薬局のM&Aにおける動向は?」
「調剤薬局のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「調剤薬局 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、調剤薬局のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
調剤薬局におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、調剤薬局のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
調剤薬局とは
調剤薬局とは、「医師の診断に基づいた処方箋にしたがって薬を調合する薬局」のことです。保険適用外の一般用医薬品を扱うドラッグストアとは違い、保険調剤を取り扱える薬局(保険薬局)のことを調剤薬局と呼んでいます。
よく街中や駅前で見かける「保険薬局」や「処方箋薬局」と看板やのぼりを立てている薬局が調剤薬局にあたり、保険薬局に医療機関で交付された処方箋を提出すると、健康保険の療養の給付の一環として、患者は通常3割の自己負担で薬剤交付などのサービスを受けることが可能です。
また近年ではドラッグストア内でも処方箋受付業務を実施しています。またドラッグストア大手企業が調剤薬局店舗を運営しているケースも多いです。一般用医薬品に加え、保険適用の医療用医薬品を扱うドラッグストア企業も増えてきています。
調剤薬局のビジネスモデル
調剤薬局と一言に表しても、そのビジネスモデルには様々なものがあります。調剤薬局の主なビジネスモデルは、以下の通りです。
- 門前・門内薬局
- かかりつけ薬局
- ドラッグストア
それぞれ詳しく解説していきます。
門前・門内薬局
門前・門内薬局とは、特定の医療機関からの処方箋に対し主に対応する形態のビジネスモデルです。医療分業の推進により、文字通り医療機関の「門前(近隣)」もしくは「門内(敷地内)」に開設されています。
門前・門内薬局は、患病院やクリニックの近隣に開設されているため、病院を受診した直後に薬を受け取れることが患者にとって大きなメリットです。薬局側も診療科が決まっているため、薬の在庫管理がしやすくなります。
また門前・門内薬局は「クリニック」「総合病院」「医療モール」の3つに分類されるのが特徴です。分類によって取り扱う薬の種類・薬剤師の専門性・患者への対応方法などが異なります。門前・門内薬局の歴史は古く、業務体制が整っている薬局も多いです。
かかりつけ薬局
かかりつけ薬局は、医療機関を限定せず広く処方箋対応する(面分業)形態の調剤薬局になります。駅前・住宅街など、患者にとって利便性が高く、人口密度の高い場所に設置されているかかりつけ薬局が多いです。
かかりつけ薬局は、門前・門内薬局とは違い、患者さんがどの医療機関を受診しても同一の薬局で薬を受け取ることができます。またかかりつけ薬局は、医療分業の推進により以下のことが期待されています。
- 薬の重複投与による相互作用の有無の確認
- 薬の効果や副作用についての継続的な確認
- 薬の減量、残薬の解消
- 在宅医療での丁寧な薬学的管理
行政の方針とも相まって、今後かかりつけ薬局が果たす役割も注目されている状態です。そのため大手ドラッグストアもかかりつけ薬局の業務を担うケースが増えてきています。
ドラッグストア
近年ではドラッグストアが、調剤薬局のビジネスに参入するケースが増えてきています。元々は一般用医薬品のみを扱うビジネスモデルでしたが、最近ではドラッグストア店内に処方箋取り扱いブースを設けています。
ドラッグストアの調剤処方箋提供の最大のメリットは、多店舗運営であることです。店舗数が非常に多いため、仕事帰りやお出かけ時にも手軽に処方箋薬を受け取ることができます。利用者にとっては処方箋の受け取りのみならず、他医薬品や生活用品も購入できるので非常に便利です。
またドラッグストア側も処方箋薬サービスの導入により、来店数の増加を図ることができます。処方箋薬の提供のみならず、他医薬品や生活用品の販売を活性化することが可能です。ドラッグストアにとって処方箋薬のビジネスは、非常にメリットが大きいことになります。
調剤薬局に必要な業許可・資格・人材
調剤薬局に必要な業許可・人材・資格について解説していきます。
調剤薬局に必要な業許可
調剤薬局では、副作用のリスクがある「医薬品」を扱うため、運営には国が定める業許可を取得することが必須になります。調剤薬局に必要な業許可は「薬局開設許可」と「保険薬局指定申請」の2種類で、主な概要は以下の通りです。
- 薬局開設許可
薬局の許可を取得するために保健所に提出する書類。都道府県や薬局の種類によって求められる基準が異なるが、大きく「設備要件」「人的要件」「体制要件」という3要件を満たす必要がある。また都道府県や薬局の種類によって求められる基準が異なる。 - 保険薬局指定申請
公的医療保険の適用を受ける調剤を行う薬局として厚生局に指定されるために必要な手続き。定められた様式に基づき、管轄の厚生局に申請する。審査会を経て、指定を受けると、通知書の送付と指定が行われた旨の公示(厚生局のホームページ上)がなされる。
上記2種の申請・取得には、諸々の書類を揃えることはもちろん、「薬剤師の氏名・登録番号」なども必要です。申請には一定の時間と労力を費やすため、申請行為を外部に委託する企業もあります。
調剤薬局に必要な資格
調剤薬局を開業し運営するうえでは、「薬剤師」を雇用することが必須です。しかし必ずしもオーナー自身が薬剤師である必要はなく、店舗管理者に薬剤師をおくことで調剤薬局を開業・運営することが可能です。
調剤薬局において薬剤師の果たす役割は非常に大きく、薬剤師の働き方次第で調剤薬局のサービスレベルが決まるといっても過言ではありません。調剤薬局の薬剤師が担う主な役割は、以下の通りです。
- 調剤業務
医師の発行した処方箋をもとに薬の調剤を行う業務。処方箋どおりに間違いなく調剤するだけでなく、薬の有効性や安全性を確保して適正な使用を推進するための「処方鑑査」も重要。重複投与や相互作用などが疑われる場合には、処方医に対する疑義照会や処方提案が必要となる。 - 服薬指導
薬剤師が患者に対し、処方された薬の情報を提供する業務。薬剤師が一方的に薬の説明をするのではなく、患者が抱える悩みを聞き出し、症状を改善できるように適切なアドバイスを行う。「対人業務」の代表である服薬指導は、薬剤師の重要な役割を果たしている。 - 薬歴管理
患者に薬物治療を提供するためには、薬剤服用歴管理簿(以下、薬歴)の活用が必須。薬剤師は服薬指導を通して、患者の服薬状況・既往歴・副作用歴を聞き取り、薬歴として管理を行う。薬歴は、記入するだけでなく、自分以外の薬剤師が見たときにもわかりやすい内容になっていることが重要。「薬剤服用歴管理指導料」の算定要件でもあるため、重要な業務のひとつ。 - 在宅業務
超高齢社会を背景に、自宅療養をしたいと考える患者が増加。患者の自宅を訪問し、服薬指導や薬の管理指導などを行う在宅業務も、薬局薬剤師の役割として期待されている。地域医療で力を発揮する調剤薬局が求められる時勢において、今後とくに注目される業務。
調剤薬局で働く薬剤師は、上記の通り、患者にとって非常に重要な役割を担う存在です。そのため調剤薬局を雇用する側である企業も厳格な組織作りを求められることになります。
調剤薬局に必要な人材
調剤薬局で働く薬剤師が果たす役割は非常に大きく、患者の生命にも関わる仕事内容です。そのため、薬剤師を雇用する企業側も調剤薬局の薬剤師に適正のある人材を雇用する必要があります。調剤薬局の薬剤師に向いているとされる人材の特徴は、以下の通りです。
- コミュニケーションをとるのが得意
- 責任感が強い
- 几帳面で細かい作業が苦にならない
調剤薬局の薬剤師という仕事は、いわば「接客業」です。そのため高いコミュニケーションスキルが必要となります。薬剤師としての薬に関する知識だけでなく、コミュニケーションを通して患者に適切なヒアリングや服役指導を行える人材が求められます。
M&Aにて調剤薬局を買収し、さらに調剤薬局で働く薬剤師を雇用する場合には、明確な選定基準を設け厳格に薬剤師を雇用することが大切です。また雇用後の指導と統括における体制を整えておくことも重要になります。
調剤薬局の市場動向
現在の調剤薬局業界における市場動向を解説していきます。現在の調剤薬局業界の市場的特徴は、以下の通りです。
- 法人店が大部分を占める
- 在宅医療・在宅訪問の需要増大による影響
- ドラッグストア企業による業界参入
それぞれ詳しく解説していきます。
法人店が大部分を占める
調剤薬局には個人が経営する「個人経営店」と法人企業が運営する「法人経営店」の2種類が存在します。厚生労働省が行った「かかりつけ薬剤師・薬局機能調査・検討事業」によると、調査に回答した内の88.6%が法人であり、個人経営の調剤薬局はわずか11.0%という結果です。
また同じ会社・経営者による店舗の出店数調査では、全体の22.6%が50を超える調剤薬局を運営しています。一つの店舗を一人で経営している割合は24.5%です。つまり調剤薬局の半分近くがグループ経営の薬局、もしくは個人経営の薬局ということになります。
今後はさらに調剤薬局の法人化が加速していく予測です。個人経営店が法人企業の傘下に入る形で吸収合併され、個人経営店の数は減少していくことでしょう。今よりも大手企業の市場占有率は高まっていくことが予測されます。
在宅医療・在宅訪問の需要増大による影響
現在の日本は世界的にも稀にみる「少子高齢化」状態です。高齢化による高齢者の増加に伴い、在宅での療養を希望する患者が増加することが予測されます。在宅医療の加速に伴い、調剤薬局も在宅訪問への対応を求められている市場状態です。
調剤薬局の在宅訪問では、店舗よりも患者に対してきめ細かい服薬指導を行えることがメリットでしょう。また残薬管理や処方提案などによって、適切な薬物療法を行うことができます。医師とのタイアップにより、調剤薬局が在宅医療で果たす役割は非常に大きいと言えるでしょう。
また在宅医療への対応には、患者宅への訪問だけでなく、オンライン服薬指導の導入も挙げられます。オンライン服薬指導とは、パソコンやスマートフォンを利用して、ビデオ通話により服薬指導を行うことです。調剤薬局は自社の薬剤師が、オンライン服薬指導を実践できる環境を作ることを求められています。
ドラッグストア企業による業界参入
最近の調剤薬局市場で特に大きな注目を集めている出来事が、ドラッグストア企業による調剤薬局市場への参入です。今までは一般用医薬品のみを取り扱っていたドラッグストアが処方箋薬の取り扱いをスタートし、調剤薬局の役割を担い始めています。
ドラッグストアが調剤薬局業界に参入することで、大きな業界変動が発生している状態です。普段から馴染みのある近隣のドラッグストアは患者にとっても立ち寄りやすく、調剤専門薬局からドラッグストアへ処方箋提出を切り替える患者も少なくありません。
また高い資金力と商圏エリアを持つ大手ドラッグストアは、自社で調剤薬局事業を立ち上げています。既に多店舗展開が全国規模で拡大しており、今後は調剤専門薬局との市場競争が激化する予測です。
調剤薬局が抱える課題
M&Aでは、対象の市場が抱える課題を把握したいうえで売買を行うことが鉄則です。そこで、ここでは、調剤薬局市場が抱える課題を解説していきます。調剤薬局市場が抱える課題は、以下の通りです。
- 後継者不在による廃業
- 地方郊外における薬剤師不足の深刻化
- 調剤報酬額の厳正化
それぞれ詳しく解説していきます。
後継者不在による廃業
調剤薬局の市場では、法人企業が市場規模の大半を占めますが、依然として個人経営の調剤薬局店も多いです。特に個人経営の調剤薬局では、後継者不在による廃業が発生し、調剤薬局全体としての課題となっています。
個人経営の調剤薬局は、1990年代からの医療分業により、当時40代~50代だった製薬会社社員や病院薬剤師が開業したケースが多いです。つまり調剤薬局の個人経営店のオーナー(社長)は、現在60代~70代の年齢層ということになります。既に定年(満65歳)を迎えている調剤薬局オーナーは非常に多く、後継者が不在のまま営業を継続している店舗も多いです。
運よくM&Aなどで買い手が見つかるケースが稀で、後継者不在の調剤薬局のほとんどは廃業を迎えることになります。調剤薬局の廃業は、人々の生活にも影響を与えることであるため、調剤薬局全体で看過できない課題です。
地方郊外における薬剤師不足の深刻化
調剤薬局業界が長年抱える課題の一つが、地方郊外地域における薬剤師不足です。東京や大阪などの都市部には多数の薬学部・薬科大学があり、そのまま都市部で勤務を希望する薬剤師は多くいます。
しかし一方で、郊外や地方、特に薬科大学の無い地域の薬剤師獲得は非常に困難な状況にあります。行政側も地方創生の一環として様々な取り組みを実施していますが、地方の調剤薬局の薬剤師不足問題は一向に解決していない状態です。
薬剤師が不足する調剤薬局では、目の前の処方箋を処理することに精一杯な状況となるため、的確な服薬指導や薬歴管理が出来ない状態に陥ってしまいます。また在宅医療や地域活動に時間を割けないため、調剤薬局全体の活性化にとってもマイナスとなる要素です。
調剤報酬額の厳正化
調剤薬局事業者の業績に大きく関わるのが、「調剤報酬」の要素です。日本では2年に1回の調剤報酬改定が行われていますが、調剤薬局側は厳正化される調剤報酬基準の改定に目を光らせておく必要があります。
特に現在の日本では「医療費の削減」が謡われているため、行政側も「薬局に対する報酬を減らす」という考え方を持っている状態です。実際に調剤基本料や技術料などをはじめ、薬局に対する報酬は年々減らされており、苦しい経営状態を続けている調剤薬局も少なくありません。
また調剤薬局の収益は、基本的に「受けた処方箋の数」で決まりますが、地方部のみならず都市部でも1店舗あたりの処方箋受取数は減少していると言われています。調剤報酬の厳正化に加え、1店舗あたりの処方箋数の減少は、経営状態に致命的な影響を与える要素です。
調剤薬局のM&Aの動向
調剤薬局のM&Aにおける動向を解説していきます。これから調剤薬局のM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
M&A増加による市場活性化
調剤薬局市場はM&A件数の増加により活性化している状態です。調剤薬局市場においてM&Aが活性化している理由は、以下の通りになります。
- 買い手(譲受企業)
調剤薬局のM&Aにおいては、譲受企業の多くが「調剤関連法人」となっている。厚生労働省は「かかりつけ薬局」への切り替えを要望していることもあり、調剤関連法人による個人経営または小規模のかかりつけ薬局買収事例が多い。 - 売り手(譲渡企業)
後継者不在・人手不足などに悩む「個人経営店」もしくは「小規模調剤法人」が多い。大手グループの傘下に入ることで、後継者と人手不足の両方を解決することが目的。
調剤薬局市場は行政の方針に伴って市場変動が起こるため、十分な資金と人材を確保しておくことが重要です。よって調剤薬局市場は、資金力と人材を確保できるM&A戦略が実行されやすい市場となっています。
大手企業による中小・個人経営店の買収
調剤薬局業界のM&Aでは、大手企業による中小・個人経営型の調剤薬局買収が多くみられます。現在の調剤薬局市場の大部分を法人企業が占めることから、これまでも法人企業が個人経営店を買収してきたことが読み取れます。
特に最近注目を集めているのが、大手ドラッグチェーンによる中小・個人経営調剤薬局の買収です。豊富な資金力と影響力を持つドラッグチェーンが積極的にM&Aを実行し調剤薬局店舗を買収しています。
またドラッグチェーンの業界参入に影響を受け、大手調剤薬局チェーンも経営基盤強化のためのM&Aを実行している市場状態です。今後は中小事業者および個人経営の調剤薬局は大手グループの傘下に入り、業界全体の大手事業者の割合が増えることが予測されます。
異業種によるM&Aが少ない
調剤薬局のM&Aの市場特性の一つは、異業種からのM&Aによる参入が少ないことです。調剤薬局のM&Aに関連する多くの事例が、調剤薬局同士またはドラッグストアと調剤薬局による事例となっています。
調剤薬局業界において異業種企業の参入が少ない最大の理由は、業許可取得および必要人材確保のハードルが高いためです。事業許可の取得には一定の条件を満たす必要があるため、M&Aを実行し調剤薬局市場に新規参入するためには相応の知見が必要となります。
また調剤薬局市場は行政による方針に影響を受けやすいことも、異業種からのM&Aによる新規参入が少ない理由です。調剤薬局事業は営利事業であるものの、行政の方針ひとつで業績が大きく変動するため、異業種からの積極的な新規参入は少ない傾向にあります。
調剤薬局でM&Aを行うことのメリット
調剤薬局がM&Aをするメリットを売却・買収側の双方から解説します。調剤薬局のM&Aにおける売却・買収のメリットは、以下の通りです。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
|
|
それぞれ詳しく解説していきます。
調剤薬局でM&Aの売却を行うことのメリット
調剤薬局でM&Aの売却を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 後継者不足の解消
- 事業規模拡大の可能性
- 資金調達・オーナーのEXIT
- 借入における個人保証の解除
- 従業員の雇用維持
それぞれ詳しく解説していきます。
後継者不足の解消
特に個人経営または中小規模の調剤薬局における問題として、後継者不足による廃業が挙げられます。後継者不足に悩む調剤薬局が、M&Aの売却を進めることで後継者不足の解消に繋げることができます。
実際に後継者不足解消のため、中小規模の事業者が大手企業に買収されることで、後継者問題の解消に繋がるケースは多いです。M&Aでは、会社を譲渡することで譲受企業から経営陣を迎え、これまで通り会社を存続させる事ができます。
また大手企業の経営者クラスに位置する優秀な人物が経営者となるため、売却側の事業規模がこれまでより拡大される場合が多いです。後継者不足に悩んでいる企業にとって、M&Aを行うことは廃業を避けるための大きな手段のひとつです。
事業規模拡大の可能性
調剤薬局が自社の事業を売却し、大手企業もしくは自社より規模の大きい企業の傘下に入ることで、事業規模拡大の可能性を見出すことが可能です。実際にM&Aの売却により、事業拡大に成功した調剤薬局は複数存在します。
特に中小規模もしくは個人経営の調剤薬局が大手企業とのM&Aを行うことが有効です。M&Aにより大手企業の傘下に加入することが出来れば、人材不足・後継者不在・資金力不足などの解消に繋げることができます。
M&Aによる人と金の問題解決は、企業規模拡大の如何に大きく影響する要素です。資金繰りが改善されることで、より前向きな企業戦略を展開することが出来るでしょう。譲受企業の経営基盤を得ることで、事業そのものを広げていく足掛かりができるのです。
資金調達・オーナーのEXIT
M&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。
- 残っている借入金の返済に充てる
- オーナー自身の引退後の生活資金とする
- 新規事業における資金源とする
一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。
借入における個人保証の解除
借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。調剤薬局に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。
特に中小規模もしくは個人経営の調剤薬局の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。
M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。
従業員の雇用維持
売却側の企業が廃業目前であった場合には、M&Aを実行することで、既存従業員の雇用を継続して守ることができます。実際にM&Aを行った場合、ほとんどのケースで譲受企業によって従業員の雇用が継続されます。
労働条件においても引き継がれるケースがほとんどなので、廃業に比べると既存従業員が被る影響を大きく抑えることに繋がるでしょう。給与待遇や労働条件が同じであれば、M&A後の離職率も低下させることができます。
また待遇面においては、M&A後に給与受験・労働時間・年間休日・福利厚生などの改善が行われるケースも多いです。M&A以前よりも好条件で雇用されるケースもあるので、既存従業員にとっては大きなメリットとなり得ます。
調剤薬局でM&Aの買収を行うことのメリット
調剤薬局でM&Aによる買収を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 事業拡大のチャンス
- 新規事業への進出
- ノウハウと人材の獲得
それぞれ詳しく解説していきます。
事業拡大のチャンス
M&Aにおいて買収側が得られる最大のメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。M&Aによって買収側の企業は、システム開発業における規模・シェアの拡大を狙うことができます。
調剤薬局のM&Aにおいては、売手となる企業が持つ設備や建物事務所のような有形資産に加え、顧客・取引情報などの無形資産を手に入れることも可能です。調剤薬局にとって、既存顧客などの無形資産は実績に直結する要素であるため、M&Aによる早期事業拡大も視野に入れることができます。
また調剤薬局業界においては、競合他社が多く、市場競争率が非常に高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小同士のM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を付けることにも繋がります。
新規事業への進出
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに早期進出が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
ノウハウと人材の獲得
調剤薬局のビジネスにおいて事業成功のカギを握るのは、自社が持つ「店舗運営ノウハウ」と薬剤師をはじめとした「人材」です。これら2つが揃っている調剤薬局は高い業績を上げることができます。
M&Aによって調剤薬局の買収を検討しているのであれば、まずは買収先企業が持つノウハウと人材に目を向けることが先決です。買収によって現在の自社が持たないノウハウや人材が手に入るか否かをチェックしましょう。
また調剤薬局の買収に関しては、買収先が持つノウハウ(プログラム)の如何によって、取引額に大きな差が生じます。特殊で価値のあるプログラムを所有している企業ほど、高値で取引されるケースが多いです。
調剤薬局のM&Aにおける成功事例
調剤薬局のM&Aにおける成功事例を紹介していきます。
アインホールディングスとエス・ケー・ファーマシーによるM&A
2021年3月にアインホールディングスがエス・ケー・ファーマシーの発行済株式20%を所有する株主となったM&Aの事例です。本取引は業務提携関係を強化することが目的で、出資額などの詳細は公開されていません。
譲り受け企業である「アインホールディングス」は、全国に調剤薬局を1,065店舗・ドラッグストアを69店舗を展開する大手調剤薬局企業です。一方の譲渡企業である「エス・ケー・ファーマシー」は、大分県大分市を中心に調剤薬局13店舗を展開している企業になります。
本件M&Aは、アインホールディングスがエス・ケー・ファーマシーと業務提携をすることで、運営ノウハウ共有・薬機法改正への対応・災害時の運営協力支援などが目的です。アインホールディングスはこれまで調剤薬局企業の子会社化を積極的に行っていましたが、本件は業務提携という穏やかな形での取引となっています。
アインHD、大分市を中心に医薬品事業を展開するSKファーマシーと資本業務提携
クオールホールディングスと勝原薬局によるM&A
2021年1月に、クオールホールディングスが勝原薬局の全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引における取得対価は、一般公開されていません。
譲り受け企業である「クオールホールディングス」は、全国に調剤薬局796店舗・医療機関内売店21店舗を運営する「クオールグループ」の持株会社です。一方の譲渡企業である「勝原薬局」は、創業大正4年の老舗調剤薬局で、兵庫県姫路市を拠点に薬局11店舗を運営しています。
本件M&Aの目的は、勝原薬局が持つ11店舗を合併することによる、積極的な事業規模拡大です。行政による「かかりつけ薬局」推進化への対策の一環として行われた大企業と中小企業のM&A事例になります。
調剤薬局 11 店舗を運営する株式会社勝原薬局の株式取得に関するお知らせ
ウェルシアホールディングスとネオファルマー&サミットによるM&A
2020年7月にウェルシアホールディングスがネオファルマーとサミットの発行株式100%を取得し、同2社を完全子会社化したM&Aの事例です。さらに2021年7月にウェルシア薬局を存続会社、ネオファルマーとサミットを消滅会社とする吸収合併が実行されています。
譲り受け企業である「ウェルシアホールディングス」は、薬局併設型を含むドラッグストア約2,200店舗を全国展開し、デイサービスや訪問介護などの事業も行っている企業グループです。一方の譲渡企業である「ネオファルマー」と「サミット」は、愛媛県を中心に地域密着型の調剤薬局を両社合計13店舗(ネオファルマー:10店舗・サミット:3店舗)展開している企業になります。
本件M&Aの目的は、ネオファルマーとサミットが持つ四国地域での店舗網を活用することです。さらにウェルシアホールディングスは、調剤薬局2社を子会社化することで、調剤事業推進と共同仕入れによるコスト削減を成し得ています。
株式会社ネオファルマー及び株式会社サミットの株式取得に関するお知らせ
中部薬品とアオイ薬局によるM&A
2020年10月に中部薬品がアオイ薬局の発行済み株式の100%を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引における取得対価は一般公開されていません。
譲り受け企業である「中部薬品」は、岐阜県・愛知県を中心にドラッグストア・調剤薬局を449店舗展開している企業です。一方の「アオイ薬局」は、岐阜県羽島郡と賀茂郡で調剤薬局2店舗を運営している企業になります。
本件M&Aは、中部薬品が岐阜県周辺地域で推し進める「ドミナント出展を通じたヘルスケアネットワークの構築」を強化することが目的です。中規模薬局事業者と小規模薬局事業者のM&A事例になります。
ツルハホールディングスとJR九州ドラッグイレブンによるM&A
2020年5月に、ツルハホールディングスがJR九州ドラッグイレブンの発行済み株式51%を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引における取得対価は140億円となっています。
譲り受け企業である「ツルハホールディングス」は、薬局併設型ドラッグストアや介護ショップなど約2,400店舗を全国展開しているツルハグループの持株会社です。一方の譲渡企業である「JR九州ドラッグイレブン」は、JR九州グループに属し、九州地方でドラッグストア・調剤薬局を228店舗を運営している企業になります。
本件M&Aは、ツルハホールディングスが推し進める「地域集中出店(ドミナント出店)」の事業強化と新規地域への進出・販売網獲得が目的です。ドラッグイレブンも巨大組織の傘下となることで、ドラッグストア市場における競争力強化を図っています。
マツモトキヨシホールディングスとココカラファインによるM&A
2021年2月にマツモトキヨシホールディングスとココカラファインの間で経営統合契約が締結されたM&Aの事例です。本取引は、株式交換や会社分割などのスキームを用い、数段階のプロセスを経て実行されました。
「マツモトキヨシホールディングス」は、全国に調剤併設型ドラッグストアなど約1,750店舗を展開するマツモトキヨシグループの持株会社です。一方の「ココカラファイン」は調剤薬局・ドラッグストアを全国に約1440店舗を展開する企業になります。
本件M&Aは、加速するドラッグストア業界の市場競争激化に対する対抗戦略です。大手調剤薬局・ドラッグストア企業同士が合併することで、ヘルスビューティー分野での圧倒的なプレゼンスを獲得し、更なる事業基盤強化を図っています。
株式会社マツモトキヨシホールディングスとの経営統合に関するご案内
ゆい沖縄と東医堂によるM&A
2021年2月に、ゆい沖縄が東医堂の発行済み株式の100%を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引における取得対価は、一般公開されていません。
譲り受け企業である「ゆい沖縄」は、沖縄県内で調剤薬局3店舗と訪問看護ステーション運営に加え、医業経営相談や医療施設開設サポートなども行っている企業です。一方の譲渡企業である「東医堂」は、沖縄県那覇市で薬局1店舗を運営している企業になります。
本件M&Aは、東医堂が後継者不在問題を抱えており、商圏エリア拡大を模索していたゆい沖縄が事業承継を受け入れる形で成された事例です。沖縄銀行と沖縄県事業引継ぎ支援センターの連携で両社のマッチングが成立し、ゆい沖縄による東医堂の事業承継が実現しました。
寛一商店と共生商会によるM&A
2020年12月に、寛一商店が共生商会の株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引における取得対価は、一般公開されていません。
譲り受け企業である「寛一商店」は、京都府京都市に拠点を置き、関西・中部・関東・信越・東北・北海道エリアに薬局48店舗を展開している企業です。一方の譲渡企業である「共生商会」は、青森県青森市で調剤薬局4店舗を運営している企業になります。
寛一商店は関西・中部・関東・信越・北海道の各エリアでの事業基盤強化のためのM&Aを積極的に実行しており、本件M&Aもその一環です。一方の共生商会も寛一商店グループの既存店舗がある函館市からアクセスしやすい地域に位置していることから、東北エリア進出の拠点となり得ると判断し、子会社化にいたりました。
地域ヘルスケア連携基盤とベストシステムによるM&A
2021年7月に、地域ヘルスケア連携基盤が自社グループ会社を通じベストシステムの株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引における取得対価は、一般公開されていません。
譲り受け企業である「地域ヘルスケア連携基盤」は、病院・薬局訪問看護などのヘルスケア分野の企業に対し、医療現場の視点に立った経営支援を提供している企業です。一方の「ベストシステム」は、静岡県浜松市を拠点とし、調剤薬局9店舗を運営している企業になります。
本件M&Aは、地域ヘルスケア連携基盤が中小規模の企業を子会社化したうえで、地域包括ケアシステムの担い手として十分な条件を備えた企業グループへと発展させるための支援を行うことが目的です。ベストシステムの子会社化も同戦略の一環として実行されました。
SBI地方創生融資とI&HによるM&A
2021年4月に、SBI地方創生融資が第1号投資案件としてI&Hへの融資を行ったM&Aの事例です。7つの銀行を含む投資によりファンドが設立され、第三者割当増資を通して総額50億円の投資が行われます。
譲り受け企業である「SBI地方創生融資」は、SBIホールディングスが「コンコルディア・フィナンシャルグループ」「新生銀行」「日本政策投資銀行」「山口フィナンシャルグループ」との共同出資をもとに設立した会社です。地方企業への投資・融資を通して地方創生を支援し地域金融機関に投資機会を提供する事業を展開しています。
一方の譲渡企業である「I&H」は全国に薬局599店舗を展開する大手薬局グループです。SBI地方創生融資は、中堅・中小薬局の受け皿となるような大手薬局グループに投資することによる地方薬局の事業承継を推進し、地方創生を実現することができるという考えのもとI&Hを投資先として選定しました。
SBI地方創生投融資による第1号投資案件決定に関するお知らせ
調剤薬局における注意点
調剤薬局のM&Aにおける注意点を解説します。調剤薬局のM&Aにおいて、注意すべき事項は以下の通りです。
- M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
- 避止義務に関して
- 既存従業員の離職対策
それぞれ解説していきます。
M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
M&Aでは、買い手と売り手の情報格差(買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富)があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件(買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう)という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
避止義務に関して
M&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。
M&Aにおける競業避止義務とは、M&Aの成約後に譲渡企業に課される義務です。譲渡した事業に対して、譲渡企業が競合するような事業を再度行い、譲受企業に不利益を与えることを避けることが目的となります。
会社法の規定により、事業譲渡を実施した会社は、競業避止義務を負うことになるので注意が必要です。ただし、買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることはできます。将来的に調剤薬局を再度手掛ける可能性があれば、買収側と交渉しましょう。
既存従業員の離職対策
M&Aにおいては、譲り受け企業・譲渡企業ともに既存従業員の離職に関して、細心の注意を払うことが必須です。特に調剤薬局のような人材の確保が困難な業界であれば、尚更注意を払いましょう。
M&Aでは譲り受け企業・譲渡企業ともに組織変動が生じるケースがほとんどです。組織内における経営方針・人員変更は、既存従業員の離職を促すきっかけになりかねません。実際にM&Aによって、経営者側が意図しない程に多くの人材が離職するケースは多いです。
既存従業員の離職を防ぐためには、M&Aにおける今後の方針をより簡潔に既存従業員に通達することが重要になります。専門家の意見も取り入れながら、既存従業員が離職しない対策を立てましょう。
調剤薬局のM&Aを成功させるためのポイント
調剤薬局におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。調剤薬局におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格をよく理解しておく
- 統合後のプロセス確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。
M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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相場価格をよく理解しておく
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
調剤薬局のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。
また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
PMI(統合後プロセス)の確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新経営体制の構築
- 経営ビジョン実現のための計画策定
- 両社協業のための体制構築・業務オペレーション
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。
調剤薬局のM&Aについてのまとめ
今回は調剤薬局におけるM&Aについて、調剤薬局の現状や特徴、市場動向やM&A事例を踏まえて解説しました。
調剤薬局市場は、M&Aによる市場活性が発生しており、今後はM&Aによって更なる業界変動が起こることが予測されます。調剤薬局事業者にとってM&Aは非常に有効な戦略と言えるでしょう。
M&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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