「バス企業のM&Aや事業承継の成功ポイントは?」
「バス会社のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
バス事業は交通インフラとして欠かせないものであり、そのM&Aや事業承継に関する情報は貴重です。しかし、これらの情報を探そうとすると、信頼性に欠ける記事や専門家向けの難解な情報ばかりが目につきます。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、バス会社のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
バス会社におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、バス会社のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 1 バス会社とは
- 2 バス会社業界の市場動向と市場規模
- 3 バス会社業の動向と今後
- 4 バス会社業界のM&Aの動向
- 5 バス会社のM&Aをするメリット
- 6 バス会社のM&Aの注意点
- 7 バス会社におけるM&Aを成功させるためのポイント
- 8 バス会社業のM&Aにおける成功事例
- 8.1 茨城交通株式会社によるなの花交通バス株式会社のM&A
- 8.2 ナオヨシ株式会社による海部観光株式会社のM&A
- 8.3 阪急バス株式会社による阪急田園バス株式会社のM&A
- 8.4 茨城交通株式会社による日立電鉄交通サービス株式会社のM&A
- 8.5 株式会社エイチ・アイ・エスによる九州産業交通ホールディングス株式会社
- 8.6 第一交通産業株式会社による有限会社広島合同タクシー
- 8.7 西日本鉄道によるGLOBAL STAR INTERNATIONAL SAS社のM&A
- 8.8 西日本鉄道株式会社によるGCS Logistics社のM&A
- 8.9 北海道中央バスに株式会社よるダイヤ冷暖工業株式会社のM&A
- 8.10 岩手県北自動車株式会社による南部バス株式会社のM&A
- 8.11 株式会社みちのりホールディングスによる東野交通株式会社のM&A
- 8.12 株式会社みちのりホールディングスによる湘南モノレール株式会社のM&A
- 9 まとめ
バス会社とは
このセクションでは、バス会社の具体的な定義から始め、バス会社の役割や重要性、主な技術や事業モデルなどについて解説していきます。
バス会社の定義
バス会社とは、路線バスや高速バス、貸切バスなどを運行し、旅客輸送サービスを提供する企業のことを指します。
バス会社は、地域の公共交通機関として重要な役割を担っており、通勤・通学や観光、イベントなどの移動手段として幅広く利用されています。
バス会社の役割と重要性
バス会社は、地域住民の日常生活を支える重要なインフラとして機能しています。特に、鉄道網が発達していない地方都市や過疎地域では、バスが唯一の公共交通機関であることも少なくありません。バス会社は、地域経済の活性化や住民の利便性向上に大きく貢献しているのです。
また、環境問題への関心が高まる中、バスは自家用車に比べて二酸化炭素の排出量が少なく、エコな移動手段としても注目されています。バス会社は、持続可能な社会の実現に向けて重要な役割を担っているといえるでしょう。
バス会社の事業モデルと特徴
バス会社の事業モデルと特徴をまとめると、以下のようになります。
事業モデル | 特徴 |
路線バス | 旅客輸送事業の中心・定期券や回数券の販売、バス停での乗車券販売が主な収入源・需要予測に基づいた運行ダイヤの設定が重要・コスト管理の徹底が求められる |
高速バス | 都市間の長距離輸送を担う・主要な収入源の一つ |
空港連絡バス | 空港と市内を結ぶ重要な交通手段・航空需要の影響を受けやすい |
貸切バス | 団体客の輸送を主な目的とする・イベントや観光シーズンの需要が収入に大きく影響 |
また、バス会社の経営の特徴は以下のとおりです。
- 外部要因の影響を受けやすい
- 利用者数の変動や燃料価格の高騰など、外部要因の影響を受けやすい
- 需要予測に基づいた運行ダイヤの設定やコスト管理の徹底が求められる
- 安全運行の確保
- 旅客輸送事業者として、安全運行の確保は最も重要な責務
- 運転手の教育・訓練や車両の整備、安全管理体制の構築が不可欠
- 利用者の満足度向上
- 利用者の満足度向上に向けたサービスの充実が重要
- 利便性の高いダイヤ設定、バス停の整備、車内設備の充実などが求められる
バス会社は、路線バスを中心とした事業モデルを基本としつつ、高速バスや空港連絡バス、貸切バスなど多角的な事業展開を図ることで、収益の安定化を目指しています。
一方で、外部要因の影響を受けやすいという特徴があるため、需要予測に基づいた運行ダイヤの設定やコスト管理の徹底が求められます。
また、安全運行の確保と利用者の満足度向上に向けた取り組みも重要な課題といえるでしょう。
バス会社業界の市場動向と市場規模
M&Aにおいて業界の現状とこれからを理解しておくことは非常に重要です。そこで、ここでは、バス会社の動向と今後について解説していきます。ぜひ参考にしてください。
バス会社業界が持つ課題
バス会社業界が抱える主な課題は以下の通りです。
- 少子高齢化による利用者数の減少
- 人口減少と高齢化が進む中、バスの利用者数は減少傾向にあります。
- 特に地方では、利用者数の減少が深刻な問題となっています。
- 運転手不足
- バス業界では、運転手の高齢化と若手ドライバーの確保が困難な状況にあります。
- 人手不足は、バスの運行本数の減少や、サービスの質の低下につながる恐れがあります。
- 地方路線の採算性悪化
- 利用者数の減少により、地方のバス路線の採算性が悪化しています。
- 路線の廃止や減便を余儀なくされるケースが増えており、地域住民の移動手段の確保が困難になりつつあります。
- 新型コロナウイルスの影響
- 新型コロナウイルスの感染拡大により、バスの利用者数が大幅に減少しました。
- 経営に深刻な影響が出ており、感染防止対策の徹底や、新しい生活様式に対応したサービスの提供など、業界全体で対応が求められています。
バス会社業界は、これらの課題に直面しており、抜本的な対策が必要とされています。利用者数の確保や、運転手の確保・育成、地方路線の維持、感染症対策など、様々な取り組みを進めていくことが求められます。
市場規模と推移
バス業界の市場規模は、乗合バスと貸切バスに分けて考えることができます。
日本バス協会の「2022年度版(令和4年度)日本のバス」によると、事業乗合バスの輸送人員は、1960年代後半から減少傾向が続いていましたが、2007年度から新型コロナウイルス感染症の流行前までは下げ止まりの傾向がみられたとしています。
しかし、2020年度はコロナ禍の影響を受け、輸送人員が31億2,055万人となり、前年度比で26.7%減少しました。輸送人キロについても、1999年度を底に増加傾向にありましたが、2020年度は182億人キロと前年度比36.7%減となっています。
営業収入は、1992年度をピークに減収傾向が続いており、2020年度は5,758億5,600万円で、前年度比38.4%減となりました。
一方、貸切バスの輸送人員は、コロナ禍前までは長期的な増加傾向にありました。しかし、2020年度はコロナ禍の影響で1億4,129万人となり、前年度比48.5%減少しました。
輸送人キロも44億人キロと、前年度比83.9%減と大きく落ち込んでいます。営業収入についても、2,175億2,000万円で、前年度比58.8%減となっています。
以上のように、バス業界の市場規模は、乗合バスと貸切バスともに新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受け、輸送人員、輸送人キロ、営業収入のいずれも大幅な減少に見舞われました。
コロナ禍前までは、乗合バスは下げ止まり、貸切バスは増加傾向にありましたが、2020年度の市場規模は大きく縮小したといえます。バス事業者にとっては、極めて厳しい経営環境となっていることがうかがえます。
バス会社の新たなビジネスモデルの模索
バス会社は、従来の事業モデルの見直しを迫られています。路線バスの運行に加えて、オンデマンドバスやMaaS(Mobility as a Service)など、ITを活用した新しい移動サービスの導入が進められています。利用者のニーズに合わせて、きめ細やかな運行を実現する取り組みが各地で行われているのです。
また、バスの車内を活用した広告事業や、バス停を拠点とした宅配サービスなど、輸送以外の分野への進出も見られます。今後は、他の事業者との連携を深めながら、バス会社の強みを生かした新たなビジネスモデルが生まれてくることが期待されます。
バス会社業界の技術革新と未来展望
バス会社業界では、自動運転技術や電気バスの導入など、先進的な取り組みが進められています。自動運転は、運転手不足の解消や安全性の向上につながると期待されており、すでに一部の地域で実証実験が行われています。
また、電気バスは環境負荷の低減に寄与するだけでなく、維持コストの削減にもつながります。充電インフラの整備など、課題はありますが、将来的には主流になっていくことが予想されます。
こうした技術革新を取り入れながら、バス会社は地域の移動を支える重要な役割を果たし続けるでしょう。利用者の利便性を高め、持続可能な運営を実現していくことが、業界の発展につながるのです。
バス会社業の動向と今後
バス会社業界における動向について解説します。これからバス会社のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。
バス会社業界のデジタル化とICT技術の活用
バス会社業界では、デジタル化の波が押し寄せており、ICT技術を活用した新しいサービスが次々と登場しています。
例えば、スマートフォンアプリを使ったバスロケーションシステムは、利用者がバスの現在位置や到着予想時刻をリアルタイムで確認できる便利な機能です。
また、乗車券の電子化も進んでおり、交通系ICカードやQRコードを使ったキャッシュレス決済が普及しつつあります。
こうしたデジタル化の取り組みは、利用者の利便性向上だけでなく、バス会社の業務効率化にも寄与しているのです。
バス会社の環境負荷削減への取り組み
環境問題への関心が高まる中、バス会社は環境負荷削減に向けた取り組みを積極的に進めています。
電気バスやハイブリッドバスの導入は、その代表例といえるでしょう。走行時に二酸化炭素を排出しない電気バスは、大気汚染の防止に大きく貢献します。
また、バイオディーゼル燃料の使用や、エコドライブの推進など、地球にやさしい運行を目指す取り組みも行われています。
バス会社は、環境に配慮した事業活動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献しようとしているのです。
バス会社業界の効率化とサービス向上
バス会社は、経営効率の向上と、サービスの質の向上に力を入れています。運行ダイヤの見直しやルートの最適化により、無駄のない効率的な運行を実現する取り組みが進められています。AI技術を活用した需要予測システムの導入など、先進的な取り組みも見られます。
また、バリアフリー車両の導入や、運転手の接客教育の充実など、利用者の満足度向上に向けた施策も重要です。
高齢者や障がい者にもやさしい乗り物として、バスのあり方が問い直されているといえるでしょう。サービスの質を高めることで、利用者の信頼を獲得し、事業の継続性を高めていくことが求められます。
バス会社業界のM&Aの動向
バス会社業界におけるM&Aの動向について解説します。これからバス会社のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。
バス会社業界のM&Aの背景
近年、バス会社業界ではM&Aの動きが活発化しています。その背景には、業界を取り巻く厳しい経営環境があります。
少子高齢化による利用者数の減少や、運転手不足などの構造的な問題を抱える中で、事業の継続性を高めるためにM&Aが選択肢の一つとなっているのです。
また、規制緩和により、バス会社の新規参入が相次いでいることも、M&Aを後押ししています。競争が激化する中で、事業規模の拡大や競争力の強化を図るために、同業他社との統合が進められているのです。
バス会社のM&Aがもたらす影響
バス会社のM&Aは、事業の効率化やサービスの向上につながる可能性があります。事業拡大により、バス車両の共同購入やメンテナンスの一元化など、コストの削減が期待できます。また、ノウハウの共有や人材の有効活用により、サービスの質の向上も見込めるでしょう。
一方で、M&Aにはリスクも伴います。統合後の組織文化の融和や、従業員の処遇の問題など、乗り越えるべき課題は少なくありません。
利用者にとっても、運賃の値上げや路線の廃止など、サービスの低下につながる可能性があります。M&Aの是非については、慎重な判断が求められます。
M&Aによるバス会社業界の変化
M&Aの進展により、バス会社業界の構造は大きく変化しつつあります。大手企業による寡占化が進み、地域独占の状態が生まれつつあるのです。この流れは、サービスの均質化や、イノベーションの停滞を招く恐れがあります。
一方で、M&Aを機に、新しいサービスが生まれる可能性もあります。事業の多角化や、他業種との連携など、これまでにない取り組みが進められるかもしれません。バス会社業界の将来を見据えながら、M&Aの動向を注視していく必要があるでしょう。
バス会社のM&Aをするメリット
バス会社のM&Aにおいてのメリットを売却側・買収側の両方から解説します。メリットを元にしてバス会社のM&Aを検討してください。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
|
|
売却側のメリット
バス会社業界における売却側のメリットは、以下の通りです。
- 事業規模の拡大
- 経営リスクの分散
- 競争力の強化
- 資金調達の効率化
- 事業の多角化
それぞれ詳しく解説していきます。
事業規模の拡大
バス会社が他社にM&Aされることで、事業規模を一気に拡大できるメリットがあります。単独での路線拡大や車両の増備には多額の投資が必要ですが、M&Aにより、相手先の経営資源を活用することで、短期間で事業規模を拡げることが可能となります。
規模の拡大は、コストの削減や収益の向上につながり、経営の安定化に寄与するでしょう。
経営リスクの分散
バス会社の経営は、利用者数の減少や燃料価格の高騰など、様々なリスクにさらされています。M&Aにより、他社と経営を統合することで、リスクを分散させることができます。
例えば、特定の地域で利用者数が減少しても他の地域でカバーできるため、経営への影響を最小限に抑えられます。M&Aを行うことで、事業の安定性を高められるのです。
競争力の強化
バス会社間の競争が激化する中で、M&Aは競争力を強化する有効な手段となります。事業規模の拡大により、運賃の値下げやサービスの拡充が可能となるからです。
また、M&Aを通じて、ノウハウの共有や優秀な人材の獲得ができれば、競合他社に差をつけられるでしょう。厳しい競争を勝ち抜くために、M&Aは重要な選択肢の一つといえます。
資金調達の効率化
バス会社の設備投資には、多額の資金が必要となります。車両の購入や、バス停の整備など、継続的な投資が欠かせません。M&Aにより他社の資金力を活用できれば、設備投資の負担を軽減できます。
また、金融機関からの借り入れも事業規模の拡大により、より有利な条件で行えるようになるでしょう。M&Aは、資金調達の効率化に役立つのです。
事業の多角化
バス会社が他社にM&Aされることで、事業の多角化を図れるメリットがあります。例えば、路線バスを中心としていた会社が、高速バスや貸切バスの事業を手がける会社とM&Aをすれば、事業の幅を広げられます。
事業の多角化は、収益源の分散につながり、経営の安定性を高めることができるのです。
買収側のメリット
バス会社業界における買収側のメリットは、以下の通りです。
- 新規市場への参入
- 既存顧客の獲得
- リソースや技術の獲得
- 競合他社の排除
- 事業の効率化と合理化
それぞれ詳しく解説していきます。
新規市場への参入
バス会社がM&Aを行う大きなメリットの一つは、新規市場への参入が容易になることです。例えば、地方都市を中心に事業を展開してきた会社が、大都市圏の会社のM&Aをすれば、新たな市場を獲得できます。
単独で路線を拡大するには時間とコストがかかりますが、M&Aを活用すれば、短期間で新規市場に参入できるのです。
既存顧客の獲得
M&Aにより、相手先企業の顧客を獲得できるメリットがあります。バス会社にとって、利用者は何よりも重要な経営資源です。
M&Aを通じて、一定の利用者を確保できれば、収益の安定化につながります。また、相手先企業の顧客データを活用することで、マーケティング活動の精度を高められる可能性もあるでしょう。
リソースや技術の獲得
M&Aは、他社の持つリソースや技術を獲得する絶好の機会となります。例えば、バリアフリー車両やICカード乗車システムなど、自社に不足する設備を持つ会社をM&Aすれば、短期間でサービスの向上が図れます。
また、優秀な人材の獲得も期待できるでしょう。M&Aを通じて、自社の弱みを補強することができるのです。
競合他社の排除
バス会社がM&Aを行う目的の一つは、競合他社を排除することです。同じ地域で路線バスを運行する会社を買収することで、競争を回避できます。
これにより、利用者の奪い合いを防ぎ、収益の安定化を図ることができるのです。ただし、独占禁止法など、法規制には十分な注意が必要です。
事業の効率化と合理化
M&Aにより、事業の効率化と合理化を推進できます。統合によりバス車両の共同運行や営業所の集約など、業務の無駄を省くことができるからです。
コストの削減は、利用者へのサービス向上や、運賃の値下げにつながります。効率的な事業運営は、バス会社の収益力を高め、経営の安定化に寄与するでしょう。
バス会社のM&Aの注意点
バス会社のM&Aを行う際の注意点を解説します。バス会社のM&Aを行う際の注意点は、以下の通りです。
M&Aに伴う組織文化の統合
バス会社がM&Aを行う際、最も注意すべき点の一つが組織文化の統合です。企業風土や価値観の違いは、統合後の組織運営に大きな影響を及ぼすからです。
異なる文化を持つ組織を一つにまとめるには、トップのリーダーシップの下、綿密なコミュニケーションと相互理解の促進が不可欠です。
統合後の組織は、一つの目標に向かって協力し合う必要がありますが、文化の違いから摩擦が生じることも少なくありません。
例えば、意思決定のスピードや、リスクに対する考え方の相違などです。こうした課題を解決するには、双方の文化を尊重しつつ、新たな組織文化を創り上げていく努力が求められます。
組織文化の統合には時間がかかります。トップ自らが率先して、コミュニケーションを図り、従業員の不安や疑問に耳を傾けることが重要です。
また、統合後の組織のビジョンや価値観を明確に示し、浸透させていく取り組みも欠かせません。組織文化の融和なくして、M&Aの成功はありえないのです。
法規制や規制当局との調整
バス会社のM&Aを進める上で、法規制や規制当局との調整は極めて重要な課題です。M&Aは、事業環境に大きな変化をもたらすため、様々な法律が関係してきます。
例えば、独占禁止法は、M&Aによる競争の制限を防ぐために設けられた法律です。バス会社同士のM&Aにより、特定の地域で独占状態が生まれると、利用者の利便性が損なわれる恐れがあります。
また、道路運送法は、バス事業の許可や運賃の認可などを規定しています。M&Aにより、路線の統廃合や運賃の改定が行われる場合、国土交通省など規制当局の承認が必要となります。M&Aの是非や統合後の事業計画について、当局の理解を得ることが不可欠なのです。
法規制や規制当局との調整を円滑に進めるには、専門家の助言を仰ぐことが有効です。弁護士や会計士など、M&Aに精通した専門家のサポートを得ることで、適切な対応が可能となります。
また、規制当局とのコミュニケーションを密に図り、M&Aの目的や、統合後の事業計画について、丁寧に説明することも重要です。
事業統合に伴うリスク管理
バス会社のM&Aは、事業統合に伴う様々なリスクを適切に管理することが求められます。リスクには、財務面のリスクと業務上のリスクがあります。
財務的なリスクとは、M&Aに伴う資金調達や、のれんの償却などに関するリスクです。M&Aには多額の資金が必要となるため、資金調達の方法や、返済計画を綿密に立てる必要があります。
業務上のリスクとは、事業運営に関するリスクです。例えば、統合後の路線再編により、利用者の利便性が損なわれるリスクがあります。
また、システムの統合や業務プロセスの変更に伴い、一時的なサービスの低下が起こる可能性もあります。こうしたリスクを事前に想定し、対策を講じることが肝要です。
リスク管理を適切に行うには、デューデリジェンスが重要です。財務や法務、事業など、様々な角度から、相手先企業の実態を詳細に調査することで、リスクを把握し、対策を講じることができます。
また、PMIの計画を綿密に立て、統合後の事業運営を円滑に進められるよう、入念な準備を行うことも欠かせません。
バス会社におけるM&Aを成功させるためのポイント
バス会社におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。バス会社におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格の把握
- PMI(統合後プロセス)の確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
バス会社がM&Aを成功させるには、明確な戦略の立案が不可欠です。M&Aは、単なる企業の買収ではなく、自社の事業戦略を実現するための手段です。そのため、M&Aの目的を明確に定め、それを達成するための計画を綿密に立てる必要があります。
M&A戦略の立案に当たっては、自社の強みと弱みを冷静に分析することが重要です。自社の競争優位性や、経営資源の状況を把握した上で、M&Aによって実現したい事業モデルを描く必要があります。
例えば、事業規模の拡大を目指すのであれば、買収対象企業の選定や、統合後の組織体制を入念に検討しなければなりません。
また、M&A戦略は、自社の経営理念や価値観とも整合性を保つ必要があります。M&Aによって、自社の理念が損なわれるようでは本末転倒です。M&Aを通じて、自社の理念をさらに高めていくことができるよう、戦略を練ることが肝要です。
相場価格をよく理解しておく
M&Aを行う際には、相手先企業の価値を適切に評価することが重要です。買収価格が高すぎれば、のれんの償却負担が重くなり、統合後の収益性が損なわれます。逆に、安すぎれば、相手先企業の協力が得られず、統合がスムーズに進まない可能性があります。
バス会社の価値は、路線や車両、人材など様々な要素によって決まります。例えば、採算性の高い路線を多く持つ会社は、高い価値を持つと言えるでしょう。また、優秀な運転手や整備士など、人的資産も重要な評価対象です。
M&Aの交渉に臨む前に、こうした要素を総合的に分析し、業界の相場価格を把握しておく必要があります。相場価格は、業界の動向や、M&Aの事例などから推測することができます。
専門家の助言を仰ぐことも有効でしょう。適正な価格での買収は、M&A後の事業運営を左右する重要な要素なのです。
PMI(統合後プロセス)の確立
M&Aを成功させるには、PMIが極めて重要ですが、多くの企業がM&Aを単独で行おうとする傾向があり、大きなデメリットがあります。
M&Aは複雑で専門的な分野であり、経験や知識が不足していると、組織体制の再編や業務プロセスの統一、人事制度の統合、統合シナジーの実現など、様々な課題に適切に取り組むことが難しいのです。
こうした課題を解決し、PMIを円滑に進めるには、M&A仲介会社の力を借りることが有効です。M&A仲介会社は豊富な経験と専門知識を持ち、PMIの細部まで適切にサポートしてくれます。
M&Aを成功させ、統合後の事業運営を軌道に乗せるには、M&A仲介会社の専門性を活用することが不可欠と言えるでしょう。
「M&A HACK」は、戦略策定から買い手の紹介まで、M&A取引を完全成功報酬制でサポートする仲介サービスです。当サービスでは、リスクを気にすることなく、一貫した支援を提供しています。初めてのご相談は無料ですので、ご興味のある方はぜひ下記からお問い合わせください。
無料相談のご予約:
https://sfs-inc.jp/ma/contact
バス会社業のM&Aにおける成功事例
バス会社業界におけるM&Aの成功事例を紹介します。これからバス会社業界におけるM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
茨城交通株式会社によるなの花交通バス株式会社のM&A
2021年8月に、茨城交通株式会社がなの花交通バス株式会社の全株式を取得し、みちのりグループに加えた事例です。
茨城交通株式会社は、茨城県を中心にバス事業、旅行業、タクシー事業、自家用自動車管理事業などを手掛ける交通事業者です。同社は、地域内での移動サービスの提供を通じて地域社会の発展に寄与しています。
なの花交通バス株式会社は、佐倉市に本社を置くバス事業者で、成田空港からのインバウンド旅客の送迎や、東京営業所を通じた都市間のバス運行を行っています。この会社は地域内の移動ニーズに応えることで地域社会に貢献しています。
このM&Aの主な目的は、茨城交通株式会社がなの花交通バス株式会社をグループに加えることで、事業の地理的拡張とサービス提供エリアの拡大を目指しています。
また、茨城交通となの花交通バスとの事業連携により、効率的な運行管理と顧客サービスの向上が期待されています。さらに、みちのりホールディングスのグループ企業として、他のグループ企業との連携を強化し、全体のサービス品質向上を図ることもこのM&Aの目的です。
参考:なの花交通バス(株)のみちのりグループ入りに関するお知らせ
ナオヨシ株式会社による海部観光株式会社のM&A
2020年10月に、海部観光株式会社がナオヨシ株式会社の傘下に入った事例です。
ナオヨシ株式会社は、東京都中央区に本社を置く経営コンサルティング会社です。さまざまな企業の経営戦略策定や事業拡大の支援を手掛けており、特に経営環境の改善と事業拡張に強みを持っています。
海部観光株式会社は、徳島県美波町に本社を置き、大阪、京都、東京と徳島を結ぶ高速バスを運行する企業です。新型コロナウイルス感染拡大の影響でバス需要が急減し、経営環境が悪化していました。
このM&Aの主な目的は、海部観光株式会社がナオヨシ株式会社の傘下に入ることで、新たな経営基盤の下で観光や物流などの新事業を拡大し、収益改善を目指すとしています。
具体的には、関西圏からの観光客を呼び込むためのツアー造成や、徳島県産品を扱う「客貨混載」事業の新設を計画しています。この経営戦略は、事業の多角化と収益基盤の強化を図ることを目的としています。
阪急バス株式会社による阪急田園バス株式会社のM&A
2019年7月に、阪急バス株式会社が阪急田園バス株式会社を吸収合併した事例です。
阪急バス株式会社は、大阪府豊中市に本社を置き、自動車運送事業を主な業務としています。また、一般旅客自動車運送事業の管理の受託事業や貸ビル経営も行っており、多様な事業を展開しています。
阪急田園バス株式会社は、兵庫県宝塚市に本社を置き、自動車運送事業および一般旅客自動車運送事業の管理の受託事業を行っています。阪急バス株式会社の完全子会社として運営されていました。
このM&Aの主な目的は、経営資源を一元化し、安定的な人材確保と柔軟な人員配置を図ることです。また、輸送の安全性向上とお客様へのサービス向上を図るために行われました。この合併により、一般乗合バスの管理の受委託契約も解消され、より効率的な事業運営が可能になることが期待されています。
茨城交通株式会社による日立電鉄交通サービス株式会社のM&A
2019年5月に、茨城交通株式会社が日立電鉄交通サービス株式会社を吸収合併した事例です。
茨城交通株式会社は、茨城県を中心にバス事業(路線バス、高速バス、貸切バス、特定バス)、タクシー業、旅行業、自動車整備業、広告・保険代理業、不動産業などを展開しています。同社は、地域の公共交通としての役割を果たしながら、地域社会の活性化に貢献しています。
日立電鉄交通サービス株式会社は、路線バス、高速バス、貸切バス、特定バスの運行、旅行業、サービス事業(運行請負、レンタカー)、広告代理業、不動産業、タクシー業を手掛けていました。この会社もまた、茨城県の公共交通として地域に貢献しています。
このM&Aの主な目的は、経営資源の最適活用とノウハウの共有、組織運営上の効率化を目的としています。特に、運転士や車両などの資源を効率的に活用し、より一層の地域への貢献と公共交通ネットワークの発展を図るために実施されました。また、観光振興にも積極的に寄与することを目指しています。
参考:[お知らせ] 茨城交通株式会社と日立電鉄交通サービス株式会社の経営統合(合併)に関するお知らせ
株式会社エイチ・アイ・エスによる九州産業交通ホールディングス株式会社
2019年3月に、株式会社エイチ・アイ・エスが九州産業交通ホールディングス株式会社の株式公開買付けを実施した事例です。
株式会社エイチ・アイ・エスは、観光と旅行サービスを提供する大手企業で、国内外に広範なネットワークを持ちます。
九州産業交通ホールディングス株式会社は熊本市を拠点とし、地域の交通サービスを提供している会社です。
このM&Aの主な目的は、九州産業交通ホールディングス株式会社が進めている桜町再開発事業のマーケティングとプロモーション活動を強化し、信用力の向上を図ることとしています。
参考:九州産業交通ホールディングス株式会社株券に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
第一交通産業株式会社による有限会社広島合同タクシー
2019年2月に、第一交通産業株式会社が連結子会社である第一交通サービス株式会社を通じて、有限会社広島合同タクシーの全発行済株式を取得した事例です。
第一交通サービス株式会社は、北九州市に本社を置くタクシー事業者であり、第一交通産業株式会社の完全子会社です。
有限会社広島合同タクシーは広島市に本社を持ち、18台のタクシーを運営しており、29名の従業員が働いています。
このM&Aの主な目的は、広島県内でのタクシー事業の拡大とグループ全体の事業基盤の強化を図ることとしています。
西日本鉄道によるGLOBAL STAR INTERNATIONAL SAS社のM&A
2018年10月に、西日本鉄道株式会社がフランスの物流企業GLOBAL STAR INTERNATIONAL SASを買収した事例です。
西日本鉄道株式会社は、日本国内における多岐にわたる交通サービスを提供する企業で、国際物流事業の拡大を重点戦略としています。
GLOBAL STAR INTERNATIONAL SAS社は、1998年に設立されたフランスの物流企業で、主に航空輸送や海上輸送を行っており、パリのシャルル・ド・ゴール空港近くに本社を置いています。
このM&Aの主な目的は、国際物流ネットワークを強化し、特に欧州市場でのサービス拡大と収益性向上を図ることとしています。
参考:国際物流事業の拡大のためフランス地場物流企業を買収し、ネットワークを強化します
西日本鉄道株式会社によるGCS Logistics社のM&A
2018年4月に、西日本鉄道株式会社がニュージーランドのGCS Logistics社を子会社化した事例です。
西日本鉄道株式会社は、日本国内外で国際物流事業を展開しており、国際貨物の混載事業や通関業など多岐にわたる業務を手掛けています。今回の買収により、オセアニア地域における事業基盤の強化を図りました。
GCS Logistics社は、2010年に設立され、オークランドに本社を構える物流企業です。海上輸入を主力とし、安定的な収益を確保している企業です。従業員数は17名で、航空・海上貨物の運送事業と通関業を手がけています。
このM&Aの主な目的は、西日本鉄道の国際物流ネットワークの拡大と、特にオセアニア地域における事業強化としています。将来的には「にしてつグループまち夢ビジョン 2025」の目標として、世界35カ国・地域130都市への拡大を目指しています。
参考:国際物流事業のさらなるネットワーク強化を目指してニュージーランド物流企業を買収し、拠点を拡大
北海道中央バスに株式会社よるダイヤ冷暖工業株式会社のM&A
2017年9月に、北海道中央バス株式会社がダイヤ冷暖工業株式会社を子会社化した事例です。
北海道中央バス株式会社は地域社会への貢献を目指す企業集団で、経営資源を活用し事業の多角化を進めています。
ダイヤ冷暖工業株式会社は冷暖房機器や空調製品の卸売り、設置工事、メンテナンスを行う企業で、三菱重工冷熱株式会社の北海道地区総代理店として技術力と提案力を持っています。
このM&Aの主な目的は、建設業や清掃・警備業を含む他事業との相乗効果を生み出し、収益拡大を図ることとしています。
参考:ダイヤ冷暖工業株式会社の株式の取得(子会社化)及び同社の役員の異動に関するお知らせ
岩手県北自動車株式会社による南部バス株式会社のM&A
2017年3月に、岩手県北自動車株式会社が南部バス株式会社の事業を譲受した事例です。
岩手県北自動車株式会社は、岩手県を中心にバス事業を展開する企業で、みちのりホールディングスのグループ企業です。乗合バスや高速バス、貸切バスなど幅広い事業を手がけています。
南部バス株式会社は、青森県八戸市を中心にバス事業を行っていましたが、経営が悪化し窮地に陥っていました。
このM&Aの主な目的は、南部バス株式会社の事業を維持し、八戸圏域の公共交通ネットワークを確保・充実させることです。岩手県北バスは南部バスを傘下に収めることで、事業エリアを青森県にも拡大するとしています。
そして、運行ダイヤの見直しや車両の更新、ICカードの導入などを通じて、利便性の向上を図っていく方針です。また、高速バスや貸切バス、旅行事業などにおいても、岩手県北バスとの連携によって、八戸圏域や青森県への誘客に貢献することを目指しています。
株式会社みちのりホールディングスによる東野交通株式会社のM&A
2016年12月に、株式会社みちのりホールディングスが東野交通株式会社の株式を取得した事例です。
株式会社みちのりホールディングスは、東北・北関東地域を中心に交通・観光事業会社を傘下に持つ持株会社です。岩手県北バスや福島交通、茨城交通などのグループ企業を通じて、広域的な事業展開を行っています。
東野交通株式会社は、栃木県を営業エリアとするバス会社で、乗合バスや高速バス、貸切バス、ロープウェイ、旅行業など幅広い事業を手がけています。100年以上の歴史を持ち、地域に根ざした交通・観光サービスを提供してきました。
このM&Aの主な目的は、株式会社みちのりホールディングスが東野交通株式会社を傘下に収めることで、栃木県を含む北関東エリアでの事業基盤を強化することとしています。
東野交通と、みちのりグループに属する福島交通や茨城交通、関東自動車などが連携することで、北関東地域の交通ネットワークの充実や、観光誘客の促進を図っていく方針です。具体的には、各社の路線バスや高速バス、企画乗車券などを組み合わせた周遊ルートの設定などを計画しているとしています。
株式会社みちのりホールディングスによる湘南モノレール株式会社のM&A
2015年5月に、株式会社みちのりホールディングスが湘南モノレール株式会社の株式を取得した事例です。
株式会社みちのりホールディングスは、東北から関東にかけての地域で交通・観光事業を展開する企業グループの持株会社です。福島交通や茨城交通、岩手県北バスなどを傘下に収め、広域的な事業運営を行っているのが特徴です。
湘南モノレール株式会社は、神奈川県の大船駅と湘南江の島駅を結ぶ懸垂式モノレールを運営する会社です。1970年の開業以来、地域住民の通勤・通学や観光客の移動手段として親しまれてきました。
このM&Aの主な目的は、株式会社みちのりホールディングスが湘南モノレール株式会社を傘下に収めることで、事業エリアを関東圏にも拡大し、さらなる成長を目指すこととしています。
湘南モノレールの安全運行の継続に加え、バリアフリー化などの利便性向上、沿線地域の活性化に取り組んでいく方針です。みちのりグループのノウハウを活かし、湘南モノレールの利用者増加を図ることで、事業の発展を目指しているようです。
まとめ
バス会社業界では、M&Aが活発化しています。M&Aには、事業規模の拡大や、競争力の強化など、様々なメリットがあります。
一方で、組織文化の融和や、法規制への対応など、注意すべき点も少なくありません。M&Aを成功させるには、明確な戦略と、綿密な準備が欠かせません。PMIの確立にも力を注ぐ必要があるでしょう。
バス会社は、地域の公共交通を支える重要な役割を担っています。M&Aを通じて、サービスの向上と、利用者の利便性の向上を図ることが期待されます。
M&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある戦略です。ぜひ今回の記事を参考にバス会社におけるM&Aを検討してみてください。