M&A・事業承継の無料相談はコチラ

クロスボーダーM&Aとは?基本からメリット・やり方を徹底解説

「クロスボーダーM&Aって何なの?」
「クロスボーダーM&Aについて詳しく知りたい」

この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。

実際に現状「クロスボーダーM&A やり方」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。

そこで、今回はM&Aの専門企業であるM&A HACK」が、クロスボーダーM&Aのやり方について分かりやすく簡潔に解説します。

またクロスボーダーM&Aの意味やスキームについても詳しく解説するので、M&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。

目次

クロスボーダーM&Aとは

クロスボーダーM&Aとは、異なる国や地域に本社を持つ企業同士が行う合併や買収のことです。具体的には、企業の所有権が一国から別の国に移転することによって、国際的な事業統合が進められる取引を指します。

クロスボーダーM&Aは、新しい国や地域に進出するために、既存の企業を買収することによって、急速に市場シェアを拡大できることが大きなメリットです。特に新興市場や成長市場への参入を狙う場合に有効とされています。

ただしクロスボーダーM&Aは、異国間のM&A取引であるため、言語・文化・ビジネススタイルの違いによる様々な弊害が存在するのも事実です。ただでさえ複雑なプロセスを要するM&A取引ですが、クロスボーダーM&Aは更に高いレベルの取引が求められます。

クロスボーダーM&Aにおける売却側の目的

クロスボーダーM&Aでは、売却側と買収側の双方でそれぞれ異なった目的が存在します。クロスボーダーM&Aの売却を行う企業における、よくある目的は以下の通りです。

  • 資金調達・オーナーのEXIT
  • 借入における個人保証の解除
  • 戦略的パートナーシップの形成

それぞれ詳しく解説していきます。

資金調達・オーナーのEXIT

M&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。クロスボーダーM&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。

  • 残っている借入金の返済に充てる
  • オーナー自身の引退後の生活資金とする
  • 新規事業における資金源とする

一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりクロスボーダーM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。

借入における個人保証の解除

借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。業界・業種に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。

特に中小規模事業者の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。

クロスボーダーM&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。

戦略的パートナーシップの形成

クロスボーダーM&Aでは、異なる国や地域に拠点を置く企業が合併や買収(M&A)を通じて、互いの強みを活かし、競争力を高めることを目指す戦略的な提携を結ぶことができます。

例えば、売却側がターゲットとなる企業の買収を通じて、買収企業のグローバルな市場にアクセスすることができ、競争力を向上させることが可能です。特に、自社がまだ進出していない国や地域でのビジネス拡大を狙っている場合、買収先企業のインフラやブランドを活用することができます。

またクロスボーダーM&Aにより、売却側企業は、異なる国の企業文化や法規制に精通した買収企業と協力することが可能です。これにより、現地の商習慣や規制への対応がスムーズになり、新たな市場への適応が容易になることがあります。

クロスボーダーM&Aにおける買収側の目的

クロスボーダーM&Aをおこなうことで、買収側の企業は様々なメリットを得ることができます。M&Aにおける買収側のよくある目的は、以下の通りです。

  • 海外市場への進出
  • 事業の拡大
  • 技術や知的財産の獲得

それぞれ詳しく解説していきます。

海外市場への進出

クロスボーダーM&Aを行うことによって、買収側企業は海外市場への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として海外市場進出を目指すより、はるかに早期進出が可能となります。

景気の悪化により国内のみでの事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる海外市場への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からクロスボーダーM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。

また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、海外進出における投資額を削減することにも繋がるでしょう。海外市場参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。

事業の拡大

クロスボーダーM&Aにおいて買収側が得られる最大のメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。クロスボーダーM&Aによって買収側の企業は、業界における規模・シェアの拡大を狙うことができます。

M&Aにおいては、顧客・取引先・特殊情報などの無形資産に加え、店舗や工場・人材などの有形資産を手に入れることも可能です。無形資産と有形資産の獲得は、事業拡大に直結する要素となります。

また現代の日本においては、大手企業の市場シェア率が高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小企業がクロスボーダーM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を作ることにも繋がります。

技術や知的財産の獲得

クロスボーダーM&Aによって、他国の企業を買収することで、新しい技術や革新的な知識を獲得することが可能です。獲得した技術や知的財産は、市場における競争力を高める手段として利用されます。

例えば、特定の技術に強みを持つ企業を買収することで、その技術を自社の製品やサービスに組み込むことが可能です。これにより、自社の製品やサービスの品質や機能性が向上し、競争力が強化されるでしょう。

またノウハウや商標などの知的財産は、企業の競争力を支える重要な資産です。クロスボーダーM&Aにより、他国の企業が保有する特許や商標、技術ノウハウなどの知的財産を取得することができます。これにより、独自の技術や製品を市場に投入する際の障壁を減らし、競争優位性を確立することが可能です。

クロスボーダーM&Aのスキーム

クロスボーダーM&Aでは、目的に合わせてスキーム(手法)を選択することで、利益を最大化させることが可能です。ここでは、クロスボーダM&Aにおけるスキームについて詳細に解説します。

株式取得

株式取得とは、ある企業の株主が自分が所有する株式を、他の個人や法人に譲渡することです。M&Aにおいては、最も一般的なスキームのひとつでもあります。株式取得の主な目的は、以下の通りです。

  • 資本間提携や支配権の移動
  • 資金調達
  • 株主の移動

株主取得は、特に企業の経営権に関連する場面で用いられやすいスキームです。株式取得によって3分の2以上の株式を取得すれば、反対する株主を「スクイーズアウト」により強制排除することもできます。

ただし株式取得では、対価として現金が必要であることに加えて、不要な資産や簿外債務・偶発債務などを引き継ぐリスクがあるので注意が必要です。M&Aのスキームとしては比較的簡単な手法ですが、実施には相応のリスクも伴います。

事業譲渡

事業譲渡とは、ある企業のすべての事業、あるいは一部の事業を買い手企業に譲渡するスキームです。事業譲渡では、事業そのものを譲渡するため、譲渡される対象には、通常、事業に関連する資産、負債、契約、従業員などが含まれます。事業譲渡の主な目的は、以下の通りです。

  • 事業リスクの軽減
  • 資金の調達
  • 事業の集中と効率化

事業譲渡では、買い手側は特定の事業のみを引き継ぐことができるため、自社の事業成長に繋げやすいというメリットがあります。また株式取得や会社分割とは異なり、簿外債務などの不要な資産の承継を避けることが可能です。

ただし事業譲渡では、譲渡によって消費税が課されるなど税負担が大きくなります。また売り手企業は買い手企業の利益を保護するため、一定期間・範囲において譲渡した事業を行えない(競業避止義務)というデメリットも存在します。

ジョイントベンチャー

クロスボーダーM&Aにおけるジョイントベンチャーは、異なる国や地域の企業が協力して新しい事業体を設立するスキームです。双方の企業がリスクを共有し、資源を結集して、特定の市場や事業に参入したり、既存の事業を拡大したりする際に用いられます。

クロスボーダーM&Aにおけるジョイントベンチャーは、特に異国の市場に進出する際に重要です。現地の企業とパートナーシップを結ぶことで、現地の規制や文化に適応しやすくなります。地元企業のネットワークやマーケティングのノウハウを活かすことも可能です。

またジョイントベンチャーは、単なる資本の結集ではなく、戦略的な提携を意味することが多いです。特定の技術、製品開発、市場へのアクセスを強化するためにジョイントベンチャーのスキームが利用されることが多いです。

三角合併

三角合併とは、合併の形態の一つで、異なる国同士の企業が合併する場合に用いられるスキームです。三角合併は、買収側の企業(親会社)が、合併対象企業(被買収企業)を直接ではなく、子会社(特別目的会社)を通じて合併するという形になります。

特に、異なる国同士の企業が関わるクロスボーダーM&Aにおいて、三角合併は税制上のメリットが大きいです。たとえば、買収側の企業は、被買収企業を直接合併するよりも、税負担が軽減されることがあります。

また国によっては、特定の合併が厳しく規制されている場合がありますが、三角合併を使用することで規制を回避できる可能性も高いです。直接の株式交換や現金での買収よりも、三角合併を通じて、買収コストを低く抑えることができることがあります。

LBO(レバレッジバイアウト)

LBO(レバレッジアウト)とは、買収側企業が、借入金(レバレッジ)を活用して、被買収企業の資産や収益を元にして、最終的に投資家や買収側に利益を戻す手法です。特に企業買収後に企業の価値を高め、一定期間後にその企業を売却して利益を得る過程でよく見られます。

LBOによる高いレバレッジを利用することで、少ない自己資本で大きな企業買収を行い、企業価値を向上させた後に売却またはIPOを通じて高いリターンを得ることが可能です。複数の国や地域で資金を調達できるため、より有利な条件で資金を調達することができます

ただしレバレッジを高くすることで、返済が滞った場合のリスクが増加するので注意が必要です。特に、クロスボーダーで異なる通貨や金利の環境で運営する場合、外部要因(為替リスク、金利変動など)の影響を受けやすくなります

クロスボーダーM&Aのやり方

クロスボーダーM&Aをこれから実施することを検討している人は、具体的な取引の流れが気になるはずです。そこで、ここでは、クロスボーダーM&Aのやり方を、以下のフェーズ毎に解説していきます。

  1. 検討・準備
  2. 打診・交渉
  3. 最終契約
  4. 契約後

それぞれのフェーズに関して解説していくので、ぜひ参考にしてください。

検討・準備

クロスボーダーM&Aにおける第一フェーズとして挙げられるのが、検討・準備のフェーズです。検討・準備のプロセスでは、M&A取引における成功に向けた基盤を築く役割を果たすことになります。検討・準備のフェーズでおこなう具体的な動きは、以下の通りです。

  • 戦略的目標の明確化:企業の経営陣は、M&Aがどのように自社の戦略に適合するかを明確にし、その目的を達成するための方向性を決定する。
  • ターゲット企業の選定:M&Aの目的に合致するターゲット企業を選定する。ターゲット企業は、規模や業界、地理的な位置、財務状況などを基に評価される。
  • 財務状況の確認と評価:M&Aを実行するための資金調達方法(自己資本、借入、株式発行など)を決定する。ターゲット企業についても、財務諸表や過去の業績を詳細に分析し、買収後に予想されるシナジー効果やリスクを評価する。
  • 法的・規制の確認:各国・地域の反トラスト法、競争法、外国投資規制などを確認し、M&Aが合法的に行えるかを評価する。
  • デューデリジェンスの準備:ターゲット企業の詳細な調査(デューデリジェンス)を行う準備。財務、法務、税務、労務、契約などさまざまな側面の調査を行う。
  • 組織の統合計画の策定:統合計画(PMI:Post-Merger Integration)を事前に策定する。組織構造の統合、人事の取り決め、文化の統合、システムの統合、業務の流れの調整などが含まれる。
  • ステークホルダーとのコミュニケーション計画:M&Aに関するステークホルダー(従業員、株主、取引先、顧客など)への情報提供とコミュニケーション計画を立てる。
  • リスク管理の検討:M&Aにおけるリスク(財務リスク、法的リスク、文化的リスクなど)を予測し、リスク管理策を検討する。
  • プロジェクトチームの編成:M&Aに関わる社内外のメンバー(経営陣、財務部門、法務部門、外部アドバイザーなど)をまとめたプロジェクトチームを編成する。

検討・準備のフェーズは、M&A取引における基盤づくりです。検討・準備フェーズの検討が不十分であると取引が失敗に終わる可能性もあるため、より慎重に行うことも重要になります。

打診・交渉

クロスボーダーM&Aにおける第2のフェーズとして、打診・交渉が挙げられます。打診・交渉とは、その名の通り、第一フェーズで選定した取引先と具体的な交渉を行うことです。M&Aにおける打診・交渉のフェーズでは以下のようなことを行います。

  • 対象企業へのアプローチ:直接的な接触(CEOや役員への手紙、電話、メールなど)や間接的な方法(仲介者やアドバイザーを通じて)で行われる。
  • 秘密保持契約書の締結:渉が進展し、双方が情報を交換する段階になる前に、秘密保持契約(NDA)が結ばれる。
  • 基本条件の合意:主に取引の条件(価格、支払い方法、スケジュール、役員体制、契約内容など)に関して合意を得る。
  • 契約書の素案作成:交渉の終息を迎え、基本的な取引条件について合意が得られると、次に具体的な契約書の草案が作成される。

打診・交渉のフェーズでは、より具体的なM&A取引の内容に関して協議されます。M&A取引の全容を決定する非常に重要なフェーズです。

最終契約

クロスボーダーM&Aにおける「最終契約」とは、買収プロセスの最後の段階で、両者が合意した条件に基づいて交わされる正式な法的契約です。この契約は、M&Aの取引を正式に成立させ、実行に移すために不可欠となります。最終契約のフェーズでは具体的に以下のことが行われます。

  • 売主(ターゲット企業)と買主(買収側)の明記: 両者の法的名称、所在地、その他の基本情報を契約書に記載する。
  • 株式の売買(または事業の譲渡): 売買対象となる株式や資産、負債を具体的に明記する。
  • 価格設定: 取引の総額(価格)を明記する。価格は交渉を通じて決定され、場合によっては、金額が調整されるため、価格の調整方法(例えば、財務状況に基づく調整)を記載することがある。
  • 支払い方法: 支払い方法(現金、一部株式での支払い、負債の引き受けなど)や支払い時期、分割払いの有無についても詳細に記載する。

最終契約のフェーズでは、M&A取引における最終決定事項が明記されます。本フェーズではより正確に両者間の取引内容が網羅されることが必須です。

契約後

クロスボーダーM&Aの取引は、株式売買や企業間合併が実施されて終わりではありません。契約後に臨んだ結果を得ることがM&Aの最終ゴールとも言えます。M&A契約後のアフターケアでは、以下のようなことを行います。

  • 統合計画の立案と実行: 組織構造、業務プロセス、ITシステム、ブランド、企業文化などの統合計画を立案し、実行する。
  • 組織の再編成: 組織構造の変更や役員の再配置を行う。特に経営層や重要ポジションでの調整が求められることがある。
  • 業務プロセスの統一: 販売戦略や製品開発、マーケティング活動などを統合し、重複や無駄を削減するためのプロセス改革を進める。
  • ITシステムの統合: 会計システムや顧客管理システム、サプライチェーンの管理システムなどを統合し、効率化を図る。

第一フェーズで検討した目標や目的を実際に得ることができるかは、契約後のアフターケアにかかっています。契約後のアフターケアの仕方次第で明暗が分かれるといっても、過言ではありません。

クロスボーダーM&Aを成功させるためのポイント

クロスボーダーM&Aを成功させるためには、いくつかのポイントを抑えておくことが重要です。クロスボーダーM&Aを成功させるためのポイントには、以下のものがあります。

  • M&A戦略の立案
  • 相場価格をよく理解しておく
  • 統合後のプロセス確立

それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。

M&A戦略の立案

M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。

M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。

M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。

  • M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
  • 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
  • いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
  • 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
  • M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)

上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。

また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。

当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。

無料相談のご予約:
https://sfs-inc.jp/ma/contact

相場価格をよく理解しておく

M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。

M&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。

  • 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
  • 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分

当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。

また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。

統合後のプロセス確立

M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。

PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。

  • 新経営体制の構築
  • 経営ビジョン実現のための計画策定
  • 両社協業のための体制構築・業務オペレーション

上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。

またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。

クロスボーダーM&Aの成功事例

クロスボーダーM&Aの成功事例を紹介していきます。ぜひ事例を参考に、クロスボーダーM&Aへの理解を深めてみてください。

JトラストとPT. OLYMPINDO MULTI FINANCEによるM&A

2018年4月に、Jトラスト株式会社が連結子会社であるJトラストアジアを通して、PT. OLYMPINDO MULTI FINANCEを連結子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。

譲り受け企業である「Jトラスト株式会社」は、日本金融事業、韓国およびモンゴル金融事業、東南アジア金融事業、投資事業等を行うグループの持株会社です。一方の譲渡企業である「PT Fliptech Lentera Inspirasi Pertiwi:は、インドネシア共和国で中古車向けローンのマルチファイナンス事業を行っており、特にオートローンの老舗としてディーラー業界で高い知名度を誇ります

本件M&Aは、日本の大手金融企業と外資系中古車販売会社による取引事例です。本取引により、譲り受け企業であるJトラストは、インドネシアにおける金融基盤の確立ができるとしています。

当社連結子会社によるPT. OLYMPINDO MULTI FINANCEの株式取得並びに第三者割当増資引受に関するお知らせ

電通グループとShift7 Digital, LLC.によるM&A

2023年3月に、株式会社電通グループが、アメリカのShift7 Digital, LLC.の所有する全株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。

譲り受け企業である「株式会社電通グループ」は、日本を代表する大手広告代理店です。一方の譲渡企業である「Shift7 Digital, LLC.」は、アメリカに本拠を置き、B2B企業のマーケティングと販売プロセスの支援を行っています。

本件M&Aは、国内大手広告代理店と海外マーケティング会社による取引事例です。譲り受け企業である電通グループは、B2B企業のエクスペリエンス領域のリーディングパートナーとしてのマーケティング業界での地位を更に高めることができるとしています。

電通グループ、米国のB2Bエクスペリエンス&コマース・エージェンシー「シフトセブン社」を買収し、顧客体験マネジメント事業を強化

三井物産とAWE LimitedによるM&A

2018年2月に、三井物産がオーストラリアのAWE Limitedの所有する全株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式公開買い付け(TOB)のスキームが用いられ、取得価額は約512億円となっています。

譲り受け企業である「三井物産」は、エネルギーや資源開発分野での強みを持つ企業で、特に海外の石油やガス関連企業のM&Aを積極的に行っている企業です。一方の譲渡企業である「AWE Limited」は、オーストラリアを本拠とし、原油・ガス生産を主とするエネルギー事業を行っている企業になります。

本件M&Aは、貿易事業も手掛ける日本の大手総合商社と海外のエネルギー関連会社による取引事例です。本取引により、三井物産は、豪州国内の優良原油・ガス資産のポートフォリオの拡充を図るとともに、豪州石油・ガス生産事業においてより活動領域を広めるためのオペレーター機能の獲得を目指しています。

豪州石油ガス資源開発会社AWE Limitedの公開買付け終了に関するお知らせ

旭化成ホームズ株式会社とErickson Framing Operations LLCによるM&A

2018年11月に、旭化成ホームズ株式会社がErickson Framing Operations LLCを買収したM&Aの事例です。本取引は、Erickson社を100%保有するErickson Framing Holdings LLCとの間で締結しました。

譲り受け企業である「旭化成ホームズ株式会社」は、日本国内で「ヘーベルハウス」の建築請負事業を主体に、高品質で高付加価値な住宅の提供を行っている企業です。一方の譲渡企業である「Erickson Framing Operations LLC」は、アリゾナ州チャンドラー市に本社を置き、アリゾナ州、カリフォルニア州、ネバダ州で壁や屋根のパネルなどの工業化製品の製造、販売、施工を行っています。

本件M&Aは、国内大手総合建設会社と米国の工業化製品関連会社による取引事例です。本取引は、旭化成ホームズが持つ工業化ノウハウを活かして、Erickson社の製造・施工プロセスをさらに合理化し、米国住宅市場での建設コスト削減と効率化を図ることを目的としています。

米国Erickson Framing Operations LLCの買収について

応用地質とGeosmart International Pte. Ltd.によるM&A

2022年10月に、応用地質株式会社がシンガポールのGeosmart International Pte. Ltd.の所有する株式を取得し、同社を連結子会社化したM&Aの事例です。本取引における議決権所有権は、60%となっています。

譲り受け企業である「応用地質株式会社」は、建設コンサルタント業、地質調査業などを主軸に、インフラ・メンテナンス、防災、環境、エネルギーなどの各分野に事業を展開している企業です。

一方の譲渡企業である「Geosmart International Pte. Ltd.」はシンガポールに本拠を置き、インフラモニタリングおよびモニタリング機器設置、地盤調査、地盤改良、井戸の腹水処理などのシンガポールの公共事業をメインに据えサービスを提供している企業になります。

本件M&Aは、国内地盤調査・地盤改良会社と海外の地盤調査・地盤改良会社による取引事例です。本取引により、譲り受け企業である応用地質は、設計や施工管理、インフラ点検を行っているシンガポールの子会社との連携を進め、建設市場でのワンストップサービスの提供を目指しています。

Geosmart International Pte. Ltd.の株式の取得(子会社化)に向けた基本合意書締結に関するお知らせ

ライト工業株式会社とFecon Underground Construction Joint Stock CompanyによるM&A

2022年10月に、ライト工業株式会社が、持分法適用関連会社のFecon Underground Construction Joint Stock Company(以下FCU社)による第三者割当増資を引き受け、同社を連結子会社化したM&Aの事例です。

譲り受け企業である「ライト工業株式会社」は、法面保護工事、斜面安定・防災工事、地盤改良工事などを行う、土木関連事業に強い工事会社です。一方の譲渡企業である「FCU社」は、ベトナム・ハノイに本拠を置き、ライト工業が36%出資する地下関連工事会社で、深層混合処理等の地盤改良工事や、トンネル・シールド工事、推進工事を担っています。

本件M&Aは、国内土木関連建設会社と海外地盤改良会社による取引事例です。譲り受け企業であるライト工業は、今後のベトナム事業の成長と拡大を目指しています。

当社持分法適用関連会社である Fecon Underground Construction Joint Stock Company(ベトナム)の第三者割当増資引受(連結子会社化)に関するお知らせ

イトーキとTarkus Interior社によるM&A

2016年2月に、株式会社イトーキがシンガポールのTarkus Interior社の所有する株式の内、過半数を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引による議決権所有割合は80.0%となっています。

譲り受け企業である「株式会社イトーキ」は、オフィス家具の製造・販売などを手掛ける国内企業です。一方の譲渡企業である「Tarkus Interior社」は、シンガポールにおいてオフィス施設、商業施設等の内装工事を手掛けている企業になります。

本件取引は、国内オフィス家具関連企業とシンガポールの内装工事会社によるクロスボーダーM&Aの事例です。本件により、イトーキは、Tarkus Interior社においてISS社が有するビジネスチャネルを活用して日系ゼネコンの大型案件の受注を実現し、さらなる事業拡大を図っています。

イトーキ、シンガポール内装工事会社Tarkus Interiorを子会社化

WithmalとLキャルタルトンによるM&A

2023年9月に、WithmalがLキャルタルトン(L Catterton)のアジアファンドであるLキャルタルトン・アジア(L Catterton Asia)と資本提携を実施した取引事例です。本取引は資本業務提携のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。

譲り受け企業である「Withmal」は、動物病院経営、動物病院向けホームページ制作、動物病院向けWeb/SNSマーケティング、獣医業界メディア、ペットメディア等の事業を行う企業です。一方の譲渡企業である「Lキャルタルトン」は、グローバルに展開するコンシューマ業界特化の投資会社になります。

本取引は動物動物関連多角企業と投資ファンド会社による取引事例です。Withmalは、グループ入りした病院にて業務負担を減らすための継続的な取り組みを通じ、獣医師が診察に専念できる環境の醸成に注力しており、獣医師と顧客双方の満足度向上を推進しており、この取り組みを進めるため本資本提携を実施しています。

プライベートエクイティ投資会社Lキャタルトンとの資本提携について

武田薬品工業とAdaptate BiotherapeuticsによるM&A

2022年1月に、武田薬品工業がAdaptate Biotherapeuticsを買収するオプション権を行使したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。

譲り受け企業である「武田薬品工業」は、国内トップシェアの規模を誇る医療用医薬品の大手製薬企業です。一方の譲り受け企業である「Adaptate Biotherapeutics」は、英国に本拠を置き、可変デルタ1(Vδ1)ガンマデルタ(γδ)T細胞を修飾し抗体ベースの治療薬の開発を進めている企業になります。

本件M&Aは、日本の大手製薬会社と海外の医薬品開発企業による取引事例です。本取引により、譲り受け企業である武田薬品工業は、革新的なγδT細胞ベースの治療薬の開発をさらに加速させることを目的としています。

武田薬品、Adaptate Biotherapeutics社を買収し、固形がんを標的とする新規ガンマデルタ(γδ)T細胞エンゲージャー療法の開発を推進

武田薬品工業とシャイアーによるM&A

2018年5月に、武田薬品工業がシャイアーの所有する株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられ、取得価額は7兆円に及ぶとされています。

譲り受け企業である「武田薬品工業」は、国内トップシェアの規模を誇る医療用医薬品の大手製薬企業です。一方の譲渡企業である「シャイアー」は、アイルランドに本拠を置く、医療用医薬品の製薬会社になります。

本件M&Aは、国内最大手の医療用医薬品製造会社と海外医療用医薬品製造会社による取引事例です。本取引により、ガン領域やワクチンにおける、それぞれの会社の強みの補完と各社の販路を活用した新興国への事業拡大を目指しています。

武田薬品によるシャイアー社買収の申出について

クロスボーダーM&Aにおける注意点

クロスボーダーM&Aは当然ながらリスクも伴う行為であるため、より慎重に行うことが大切です。ここでは、クロスボーダーM&Aにおける注意点を解説していきます。クロスボーダーM&Aにおける注意点は、以下の通りです。

  • コミュニケーションの問題
  • 法的・規制面の確認
  • 税制と財務構造の違い

それぞれの注意点について詳しく解説していきます。

コミュニケーションの問題

クロスボーダーM&Aにおいて、コミュニケーションの問題はしばしば大きな課題となる事柄です。異なる文化、言語、ビジネス慣習、管理スタイルが交錯するため、適切なコミュニケーション戦略が欠かせません。

異なる言語を話す企業同士でM&Aを行う場合、言語の違いは最も基本的かつ重大な障害となります。契約書や財務資料、内部報告書、メールのやり取りなど、すべてのコミュニケーションが正確に理解されなければなりません

クロスボーダーM&Aでは、 重要な書類や会話には専門的な通訳や翻訳サービスを活用し、意味が正確に伝わるようにすることが大切です。ビジネスの現場で使用する共通の言語(多くの場合、英語)を選定し、全員がその言語を理解できるようにすることが必要になります。。

法的・規制面の確認

クロスボーダーM&Aにおいて、法的および規制面の確認は非常に重要です。異なる国々で異なる法制度が適用されるため、M&Aの実施過程で直面する法的・規制面の問題をしっかりと理解し、適切な対策を講じる必要があります。

例えば、取引が各国の競争法(独占禁止法)に抵触しないかを確認することが必須です。特に、買収対象企業が市場で支配的な立場にある場合、M&Aが市場競争を不当に制限する可能性があると見なされ、規制当局の承認が得られない場合があります。

また知的財産権に関する法制度は国によって異なり、特にクロスボーダーM&Aでは、買収対象企業の知的財産権がどのように管理されているかを確認することが重要です。特許や商標の有効性、侵害のリスクなどが関わる可能性があります。

税制と財務構造の違い

クロスボーダーM&Aを行ううえでは、税制と財務構造の違いに留意しておくことが大切です。クロスボーダーM&Aでは、異国間のM&A取引が発生するため、それぞれの国で税制が大きく異なります。

買収の構造が税金にどのような影響を与えるか(二重課税、移転価格、税優遇措置など)を十分に理解することが重要です。税制の違いによって、買収の全体的なコストや利益が大きく変動する可能性があります。

またM&Aの前に、税務上の最適化を行うために専門家と相談し、税制のリスクを最小限に抑える戦略を立てることが必要です。特に、税制上の優遇措置や控除、クロスボーダーでの利益移転に関する規制に注意が必要となります。

クロスボーダーM&Aのまとめ

今回は、クロスボーダーM&Aのやり方やスキーム、意味などについて解説しました。クロスボーダーM&Aは経営戦略として非常に有効な手段であり、実際にクロスボーダーM&Aを実施することによって、大きく事業を発展させたり、経営を立ち直らせた企業は多く存在します。

しかしクロスボーダーM&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。クロスボーダーM&Aは有効な戦略であると同時に、抱えるリスクも大きい戦略でもあります。

当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。

無料相談のご予約:
https://sfs-inc.jp/ma/contact

M&A・事業承継するなら完全成功報酬制のM&A HACK

【スピード対応】【完全成功報酬】【リスクなし】のM&A HACKにお任せください。M&A HACKが選ばれる理由は大きく3つです。

  • ① 企業価値向上へのコミット
  • ② M&A負担を極限まで最小化
  • ③ 完全成功報酬でリスクなし

いかにM&Aの負担を減らし、スピード感を持ち、企業価値の向上をできるかが重要だと考えております。相談は無料のため、お気軽にご相談ください。