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スーパーマーケットのM&A・事業承継の全知識!売却相場・事例・成功ポイントを徹底解説

「スーパーマーケット業界のM&Aの売却相場は?」
「スーパーマーケット業界のM&Aについて知りたい」

この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。

実際に現状「スーパーマーケット業界 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。

そこで、今回はM&Aの専門企業であるM&A HACK」が、この業界のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。

スーパーマーケット業界におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、この業界のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。

目次

スーパーマーケットとは

「小高ストアで食材を購入する男性」の写真

スーパーマーケットとは

スーパーマーケット(略してスーパー)とは、日常生活に必要な食料品や日用品などの様々な商品を取り扱う小売店のことです。店内はセルフサービス形式となっており、顧客自身が商品を選んだ上でレジで会計を行います。

主な販売形態は実店舗での販売で、インターネット販売や移動販売は補助的な役割です。食品のみを扱う食品スーパーと、食品に加えて衣料品や家電なども幅広く取り扱う総合スーパーがあり、いずれも日常的に必要な商品を一か所で手に入れられる利便性があります。

スーパーマーケットの起源

日本で最初のセルフサービス式スーパーマーケットは1953年に東京の青山に開業した「紀ノ国屋」であったとされています。従来の小売店とは異なり、顧客ご自身が商品を選び、レジまで運んで会計を行うスタイルが導入されました。このシステムにより従業員を削減できたため、多くの商品を陳列できるようになり、大量発注による仕入れコスト削減も実現しました。

現代では、専門店との競争に打ち勝つため、品揃えの多様化を図ったり、コンビニとの差別化のために都市部で24時間営業を行うなど、各スーパーマーケット企業はさまざまな工夫と対策を講じています。お客様のニーズに合わせて、常に新しいサービスを提供し続けることが重要となっているのです。

ドミナント戦略の重要化

スーパーマーケット各社は、主要商圏で圧倒的な存在感を確立することを目指し、同一商圏への出店集中と買収を進めている状況です。これを「ドミナント戦略」と言います。これがされている地域では、競合の新規参入を防ぎ、高い収益性が見込めます。さらに、密集した店舗網があれば、効率的な物流体制を構築でき、同一商圏内での大量発注で仕入れコストの大幅な削減が可能です。

そして現在ドミナント戦略を行うにあたって、単独の新規出店より、買収による既存店舗網の獲得が手っ取り早いため、M&Aが積極活用されています。同一資本の統合や地場チェーンの買収など、様々な形態のM&Aが活発です。短期的な統合コストはありますが、中長期的にはドミナント戦略の確立によるコスト削減ができます。

激しい価格競争が続く業界で勝ち残るには、ドミナント戦略の実現が不可欠であり、M&Aはその実現手段としてとても大切です。

スーパーマーケット業界の市場動向と市場規模

2022年4月 経済解析室「2021年 小売業販売を振り返る」より

経済産業省の2021年の小売業調査によると、スーパーマーケットの販売額は前年比で0.3%減少しました。一方で、事業所数自体は増加していますが、1事業所当たりの販売額が減少するなど、業界全体として伸び悩みの傾向が見られます。

このような状況を受けて、スーパーマーケット各社は売上げ向上に向けた様々な施策を講じている状況です。例えば、商品の品揃えを充実させたり、ネット通販の強化、デリバリーサービスの拡大など、お客様の利便性向上を図る取り組みが行われています。

また、値引きセールや会員向けポイント付与などの価格面でのアプローチもよくある方法です。厳しい経営環境の中で収益確保に努めながら、消費者ニーズに合った新しいサービスの提供を続けることが大事になっています。

スーパーマーケット業界が持つ課題

「小高ストアでカートに野菜をいれてお買い物」の写真

スーパーマーケット業界の市場規模は拡大傾向にありますが、この業界には様々な課題があります。この業界が持つ主な課題は、以下の通りです。

  • 深刻な人材不足
  • 高い競争率による存続の難化
  • デジタル化への対応の必須化

それぞれ詳しく解説していきます。

深刻な人材不足

スーパーマーケット業界が直面する最大の課題は、深刻な人手不足問題への対応です。この問題を根本から解決するには、単なる給与アップだけでは不十分となります。業界全体で、魅力的な職場環境づくりと従業員のキャリア形成支援に積極的に取り組むことが必要です。

具体的には、長時間働く労働者の軽減や休暇取得の促進、人事評価制度の透明化など、働きがいのある環境を整備することが欠かせません。さらに、スキルアップの機会を提供したり、管理職登用制度を充実させるなど、長期的なキャリアビジョンを描ける仕組みも重要です。魅力的な待遇と働きやすい環境があれば、有能な人材を確保しやすくなり、離職率の低下にもつながるでしょう。

高い競争率による存続の難化

スーパーマーケット業界は非常に競争率が高いという特徴があります。新商品の開発や新店舗のオープンなど、各社は常に競争を繰り広げています。これは、消費者の多様なニーズに対応し、他社と自社のサービスを差別化するための戦略です。

しかしその一方で、この高度な競争は、多大な投資と技術を必要とします。ですから、小規模なチェーン店や個人経営の店舗にとっては、大手チェーンとの競争を維持することが非常に困難であると言えるでしょう。

なので、現在はM&Aでスーパー事業を売却する事例も増えています。今後、さらなる競争の激化により売上高が減る可能性もあるため、今が事業売却のチャンスです。

デジタル化への対応の必須化

ここ最近はデジタル化の波がスーパーマーケット業界にも押し寄せています。スマートフォンやインターネットの普及に伴い、消費者の購買行動は変化中です。その結果、この変化に対応するためのデジタル化が求められています。例としては、QRコード決済に対する対応やセルフレジの設置などがあるでしょう。

しかし、既存の店舗運営体制やシステムに大きな変更を加えることは容易ではありません。また、デジタル化には大きな投資が必要であり、その投資を回収することが難しいという課題も存在します。これらの課題を克服するためには、新たな戦略と解決策が必要となるでしょう。

スーパーマーケット業の動向と今後

「パッケージデザインがポップな外国製ビール棚」の写真

M&Aにおいて業界の現状とこれからを理解しておくことは非常に重要です。そこで、ここではスーパーマーケット業の動向と今後について解説していきます。ぜひ参考にしてください。

生活インフラとしての価値向上

スーパーは、単なる食料品の販売店ではなく、国民生活に密着した重要なインフラとしての位置づけが高まりつつあります。一部のスーパーは衣服や玩具、靴など幅広いものを販売している状況です。規模が大きいスーパーの強みを生かし、様々なジャンルの商品を展開しています。他にも、駐車場ビジネスと併用し、駐車場をスーパーマーケットの近くに併設させるなどして顧客満足度を上げている企業も多いです。

また、食品分野では中食商品の品揃え強化に力を入れており、昼食や夕食の外食需要を取り込もうとしています。さらにインターネット販売など、販売の形も活発化しつつあり、従来のスーパーとは比べ物にならないほど進化が進んでいる状況です。

このように、スーパーマーケットは「売り場」から「生活インフラ」へと進化を遂げ、国民生活にとってなくてはならない存在になりつつあるのです。

食品ロス対応の重要化

食品ロス問題への関心の高まりから、スーパー業界でも食品ロス対策が重要な課題となっています。商品の過剰在庫や、賞味期限切れによる廃棄が多額に上ることから、各社で食品ロス削減に向けた取り組みが広がっている状態です。

食品ロスを放置していると、かなりの損失が発生することがあるので、何か対策を打つ必要があります。そのため最近では、AIを活用した需要予測による適正在庫管理や、まとめ買い割引の実施、賞味期限が近い商品の割引など、様々な施策が実施されています。

他にも、期限間近の商品を格安で販売する食品ロス削減コーナーの設置や、フードバンクへの食品寄付なども一つの手です。環境対応と経済合理性の両立を図りながら、食品ロスの最小化に取り組むのが大事だといえます。

外国人労働者の雇用の増加

スーパーマーケット業界では、日本人従業員の確保が困難なため、外国人労働者の受け入れによって人手を補おうという動きが広がっています。言語や文化の違いはあるものの、外国人労働者を積極的に雇用することで、人員の手当てを図る企業が増えてきました。

実際に外国人労働者を活用する際には、現場でのコミュニケーション円滑化や、作業上の安全確保、生活面での支援など、様々な課題に対応が求められます。外国人従業員への実務教育の徹底や、バイリンガル人材の活用なども重要です。

そして、将来の中心となる人材の確保と育成を見据え、外国人労働者の長期的な定着を狙う取り組みも行われるようになってきました。単なる人手補充にとどまらず、外国人従業員のキャリア形成支援にも力を入れる動きがあります。

スーパー業界は人手不足対策として外国人労働者活用が本格化しており、外国人従業員の育成と定着に注力することで、企業は長期的に役立つ人材を確保することが可能です。

スーパーマーケット業界のM&Aの動向

スーパーマーケット業界におけるM&Aの動向について解説します。これから企業のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。

人手不足対策のためのM&Aが増加

現在スーパーマーケット業界が慢性的な人材不足に直面する中、M&Aが有効な解決策の1つとして活用されています。M&Aによって買い取った企業の従業員を自社に入れることによって、人材を獲得することが可能です。

M&Aによって、作業員の人員を集約化し補完できるだけでなく、優秀な人材を確保し、彼らの持つノウハウやスキルを吸収することが可能になります。これにより自社の人材育成力を高め、長期的な視点から人員を確保・強化できるはずです。また、M&AでIT技術を買い取ることで、限られた人員での生産性を最大化し、人手不足を補う効果も期待できます。

さらにM&Aを契機に規模が拡大すれば、従業員の賃金アップなども実現しやすくなり、人材確保が一層しやすくなるでしょう。若手や未経験者の育成が重要課題となっているこの業界で、M&Aを通じた教育研修体制の強化により、人材育成面での大きな効果を挙げられる可能性もあります。

大企業の中小企業買収の増加

大手スーパーマーケットチェーンによる中小スーパーマーケットの買収が近年目立つようになってきました。規模の拡大とドミナント戦略の実現を図る大手側と、事業の継続が難しくなった中小側の思惑が一致した結果です。

そして、エリア別に有力な地場チェーンを次々と買収する動きがあります。地域に根ざした中小チェーンは立地や商圏の特性を熟知しており、そのノウハウを取り込めるのがメリットです。大手は中小企業を買収し、従来の営業エリアを大幅に拡大しています。

大手にとって中小チェーンの既存店舗網を買収することは、同一商圏へ店舗を集中展開し、その地域でトップの店の地位を確立するための最短ルートです。ドミナント戦略の早期実現と全国規模での勢力圏の拡大を図るために積極的な中小企業買収が展開されています。

異業種からの買収の増加

従来の食品スーパー事業に加え、最近では異業種からスーパーマーケット業界に参入する企業が多いです。異業種から参入する場合、自社の強みを生かしたビジネスモデルが展開されやすくなります。特に精肉・鮮魚・惣菜などの商品分野において、独自の専門知識と手腕を活かした差別化戦略がとられることが多いです。

このように異業種から参入することで、食品流通に関する新たな知見を吸収できるメリットがあります。さらに、自社の既存事業とスーパーを組み合わせたり、異なる小売業態を融合させたりすることで、事業ポートフォリオの拡大と収益基盤の多角化が可能です。

スーパーマーケットのM&Aをするメリット

スーパーマーケットのM&Aにおいてのメリットを売却側・買収側の両方から解説します。メリットを元にしてM&Aを検討してください。

売却側のメリット 買収側のメリット
  • 仕事効率の向上
  • 人材不足の解決
  • 従業員の雇用先の確保
  • 担保や個人保証の解決
  • 早期リタイアが可能
  • 譲渡による利益の獲得
  • 事業規模の迅速で効果的な拡大
  • 新規事業へのハードルの低下
  • 優秀な人材の確保が可能
  • シナジー効果の発揮
  • 優秀な技術や知的財産の獲得

売却側のメリット

スーパーマーケットにおける売却側のメリットは、以下の通りです。

  • 仕事効率の向上
  • 人材不足の解決
  • 従業員の雇用先の確保
  • 担保や個人保証の解決
  • 早期リタイアが可能
  • 譲渡による利益の獲得

それぞれ詳しく解説していきます。

仕事効率の向上

スーパーにおいては、仕事をどれだけ効率的に早く行えるかが大切です。しかし、中小企業においては設備や技術への投資に限界がある状態です。なので、大企業に勝てるようなサービスを行うことは困難でしょう。

しかし、大企業の傘下に入ることにより、大企業の豊富な資金や設備を使って自社を急成長させることが可能です。また、合併した大企業と競争の必要がなくなるのも良いといえます。

人材不足の解決

昔に創業をしたスーパー関係に携わる企業は、現在後を継ぐ人がいない状態です。これには少子高齢化や過酷な労働環境などが関わっています。深刻な後継者不足によって廃業してしまうと、顧客や取引先に迷惑をかけてしまうでしょう。

M&Aをここですることにより、買い手に経営を任せることができます。それにより、会社は廃業を避けて存続することが可能です。買い手側の豊富な人材により、今までできなかったことができる可能性もあります。

従業員の雇用先の確保

先ほどの後継者問題とも関係しますが、会社が廃業となると従業員が全員失業してしまうこととなります。ここでM&Aを使うことにより従業員の雇用先を確保することが可能です。それによって、自身が従業員を解雇する必要もなくなり、従業員の暮らしが守られます。

従業員の雇用条件については買い手と売り手で詳しく相談する必要はありますが、買い手も従業員の確保は進めたいので、上手くいくケースが多いです。

M&Aに関しては黒字の会社の方が買われやすいのですが、赤字の会社でも何かユニークな技術や顧客からの人気、信頼などがあれば売却できる可能性があります。

担保や個人保証の解決

中小の業者にとって、事業運営のために融資を受ける際に、経営者個人が保証や担保を差し入れることは一般的です。しかし、その個人保証や担保は、万が一の場合に経営者自身の私財を失う危険性があり、大きな心理的プレッシャーとなります。

そういった観点から、M&Aによって事業を売却することで、経営者は個人保証や担保に伴う個人的なリスクから解放されるメリットがあると言えるでしょう。つまり、M&Aを活用することで、経営者自身が破産の危機にさらされるリスクを回避できます。

早期リタイアが可能

事業の経営者は、後継者不足や赤字による借金など事業に対する悩みや不安を抱えています。M&Aで会社を売ることにより、経営者ではなくなり悩みや不安は無くなるでしょう。

会社を売却して得た収益を使えば、今後の生活資金も確保可能なので、老後までずっと金に困らずに生活が可能です。ですので、早期で仕事を辞めるためにM&Aをすることもよくあります。

譲渡による利益の獲得

M&Aで売却をすることにより、企業価値に応じて利益を得ることができます。中小企業においてはかなりの場合経営者とその周りが株式などを保有しているので、ほとんどの利益を独占し新たな事業に活用が可能です。さらに、エグジットのためにM&Aをすることもできます。

実際、新たな事業をするために既存の企業を売却する例も多いです。しかし、M&Aのプランにより課せられる税金や売却益の獲得者が変わる可能性もあるため、そこは注意が必要となります。

買収側のメリット

スーパーマーケットにおける買収側のメリットは、以下の通りです。

  • 事業規模の迅速で効果的な拡大
  • 新規事業へのハードルの低下
  • 優秀な人材の確保が可能
  • シナジー効果の発揮
  • 優秀な技術や知的財産の獲得

それぞれ詳しく解説していきます。

事業規模の迅速で効果的な拡大

M&Aにおいて買収側が得られる最大のメリットは、事業拡大ができることです。M&Aによって買収側の企業は事業規模や事業エリアの拡大などを狙うことができます。

スーパーマーケットのM&Aにおいては、商品や従業員といった有形資産と、地域からの信頼や商品開発技術などの無形資産を両方手に入れることが可能です。大きな信頼や独自の強みを持つ企業を買い取ることによって、円滑な事業を展開できます。スーパーマーケットにおいては競合他社に負けずに顧客のニーズに応えることが必須なので、それが円滑になるのは嬉しいことです。

新規事業へのハードルの低下

M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに早期進出が可能となります。

景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。

また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。

スーパーマーケット業界は、多くの従業員や良い設備などがなければ満足な利益を出すことができない業界です。なので、それらを持つ企業を買い取ることにより、有利な状態でビジネスを始めることができます。

優秀な人材の確保が可能

少子高齢化が問題となっている現代では、優秀な人材の確保はどの業界においても必須の課題です。優秀な人材を確保することは、そのまま企業の行く末に作用します。

M&Aを行うことによって、売却側企業に所属する従業員をそのまま雇用すれば、優秀な人材をそのまま自社に引き入れることができます。もちろん業界におけるノウハウも既に所有しているため、研修を行う手間も省くことが可能です。

ただし売却側企業に所属する従業員全員が優秀であることの保証はないことに加え、M&A後の企業文化の変化に付いてこられず、離職する従業員が発生する可能性もあります。M&Aによって従業員を引き継ぐ場合には、非常に繊細な注意が必要です。

さらに、スーパーマーケットは労働時間が長めになりやすくなります。そのため、従業員を前の会社よりも多く働かせると過労死などの問題が起こりかねません。従業員の心身のケアは常にする必要があります。

シナジー効果の発揮

他の企業を買収し二つの企業の経営資源や技術を融合することにより、相乗的な効果が生まれます。例えば企業が持っていた大量の商品ともう一つの企業が持っていた商品管理システムを組み合わせて、効率的な業務体制を作るなどが一例です。

さらに、二つの企業の従業員同士が交流しながら働くことにより、お互いで技術の向上ができるかもしれません。ただし、逆に二つの企業が合わさることにより悪い効果が生まれる可能性もあるので、工夫が必要です。

優秀な技術や知的財産の獲得

買収をするとできることの一つに、優秀な技術や知的財産の獲得が挙げられます。スーパーにおける作業の効率化に関するノウハウや、物流管理、顧客管理に関するシステム、さらには地域での知名度や顧客基盤といった無形の資産は、買収先企業から獲得できれば大きな強みとなるはずです。

例えば、商品の管理を自動で行う技術、販売工程の最適化手法などを取得できれば、業務効率の改善や生産性の向上が図れ、競争力を高められます。また、取引先、販売網、従業員などを管理するシステム、商品の在庫管理プログラムや顧客データベースなどのITツールを入手できれば、サービスの高付加価値化や収益性の向上にもつながるでしょう。

さらに、買収した企業が長年培ってきた地域における高い信頼と顧客基盤があれば、買収企業はその顧客を自社に取り込むことで、瞬時に売上を伸ばすチャンスを得られます。特に中小企業の買収では、そうした地場に根付いた技術やノウハウ、顧客の獲得が、大手企業にとって大きなメリットとなる場合が多いです。

スーパーマーケットのM&Aの注意点

スーパーマーケットのM&Aを行う際の注意点を解説します。M&Aを行う際の注意点は、以下の通りです。

  • M&A前の調査(デューデリジェンス)
  • 買収先の事前の情報確認
  • 従業員、取引先や情報の流出
  • M&Aの専門知識を持たない状態での引き継ぎ

それぞれ詳しく解説していきます。

M&A前の調査(デューデリジェンス)

M&Aにおいて、買収する企業のことを詳しく調査することは必須です。企業を買収した後に問題が発見されると非常に大きな負担がかかってしまいます。そのため現在のM&Aでは先にデューデリジェンスと呼ばれる調査をすることが主流です。

例を挙げると、薄外債務の発覚で思わぬ借金を抱えることがよく起こり得ます。そのため、財務に関する調査を事前にしておくことでそれを防ぐことが可能です。全ての問題を洗い出し解決することにより、買収後スムーズに事業を進められます。

これは買う側に限ったことではありません。売る側も社内調査をしておきそれを報告する義務があります。もしデューデリジェンスで問題が発覚した場合、相手の信頼を下げてしまうことがあり危険です。

買収先の事前の情報確認

これも事前調査と関係がありますが、買収した企業の資源や過去の情報をあらかじめ確認しなければなりません。もし買収した企業が想定より少ない商品の在庫を持っていた場合、大きな損害が生じてしまいます。

他にも、買収した企業が過去に問題を起こしていた場合も大変です。従業員の不祥事などが起こっていると、顧客の信頼度を大きく下げます。すると、サービスの利用者が減り想定よりも少ない利益を得ることになるでしょう。

売り手側もきちんとM&Aの前に情報の整理をする必要があります。もし相手側が自身の会社のことをよく理解していない場合、正しく情報を伝えることが大事です。それだけでなく、買い手が資源などを売り手と共有したくない場合もあります。それに関しても先に確認しておくことが重要です。

従業員、取引先や情報の流出

M&Aにて買収を行う企業は、売り手側の従業員や取引先を狙うことも数多くあります。しかし、環境と企業文化が変わることにより、従業員や取引先が流出してしまうかもしれません。

それを防ぐためには、従業員や取引先の事情やこだわりなどを丁寧に考えて、良い施策を打つことが大切です。

さらに、場合によってはM&Aの計画情報が交渉中に漏えいすることがあります。そうすると、従業員や取引先がM&Aの前に減少してしまい価値が下がってしまうかもしれません。そのためには、情報を明かさないために交渉相手と秘密保持契約を結び、情報の漏えい対策をすることが必須です。

M&Aの専門知識を持たない状態での引き継ぎ

スーパーマーケット業界に限らず、M&Aでは、買い手が売り手より知識や経験が豊富なことから情報格差があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。

買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手が有利になるような企業の低額買収が起こりかねません。最悪の場合には、M&Aで得をしようとしたはずが、不利な条件でM&Aをすることによって、巨大な損害を被るケースもあります。

そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのが定石です。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。

スーパーマーケットにおけるM&Aを成功させるためのポイント

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スーパーマーケットにおけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。M&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。

  • M&A戦略の立案
  • 相場価格をよく理解しておく
  • 統合後の事業計画の確立

それぞれ詳しく例を用いながら解説していきます。

M&A戦略の立案

M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化・明確化されます。

M&A戦略では、自社を分析するSWOT分析や市場調査・業界トレンドを調査して傾向の把握が必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収、売却先の選定や交渉を行っていくこととなります。

M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。

  • M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
  • 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
  • いつ・誰と・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
  • 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
  • M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)

上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が雑だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。

以下はスーパーマーケットにおける簡単な一例です。参考にしてみてください。

買収側

M&Aにより何を達成したいか

M&Aにより、スーパーマーケット事業の従業員を増やしたい。それにより売上高を大幅に増やしたい。

いつ・誰と・何を・いくらで・どのように買収するか

半年後にA社の開発した事業や資産の一部を相場にあった金額で銀行融資を使って買収する。

買収において障壁となる要素はあるか

現在まだA社の財務調査が済んでおらず、買収をした際損をしてしまうリスクがある。
M&Aに必要な予算はどのくらいか 〇〇億円での買収を予定。しかし、売り手の希望による少しの変更は可。

売却側

M&Aにより何を達成したいか M&AによりITに対応した設備やセルフレジを整えたい。また、売却時に手に入れた利益を使い新たに起業をしたい。
自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か 自社は地元に即したスーパーマーケット事業をしており、従業員の教育に力を入れている。多大な信頼と優秀な従業員を持っているので、それら全部をアピールすれば多大な収益が得られる。
いつ・誰と・何を・いくらで・どのように売却するか 利益が安定している時期にB社に対して自社の在庫、従業員を含めた全ての財産を時価に会う適正な価格でM&Aアドバイザーを通して譲渡する。
売却において障壁となる要素はあるか 現在従業員リストの整備ができていない。買収より前に従業員のデータを整理し、万全の状態にしておく必要がある。

(実際はこれよりもっと細かく正確に計画を練る必要があります)

しかし、この例を見ると「相場にあった金額」や「時価に会う適正な価格」など、どう決めれば良いかわからないものが複数あると思います。これらを決めるのに大抵の企業は専門業者に依頼や相談をするのが定石です。素人が一人でM&Aをするのは大変危険なので絶対にやってはいけません。

そこで、自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。

当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。

無料相談のご予約:
https://sfs-inc.jp/ma/contact

相場価格をよく理解しておく

M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。

スーパーマーケット業界のM&Aでは、例として株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることがあります。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。

  • 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
  • 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分

当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を簡単に計算してみましょう。

場合によっては相手側との相談により予算が変わることがあります。なので、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。

統合後の事業計画の確立

M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた目標を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMIという考え方が重要になります。

PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後にどうすれば良いか」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。

  • 新たな経営体制の構築
  • 経営における目標実現のための計画作成
  • 両社協業のための体制構築・業務システムの強化

上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。

またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきものです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行なわなければなりません。

スーパーマーケット業界のM&Aにおける成功事例

スーパーマーケット業界に関係するM&Aにおける成功事例を紹介します。これからこの業界におけるM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。

アークスによる伊藤チェーンとの経営統合

2019年9月、北海道および東北地方でスーパーマーケットチェーンを展開するアークスは、東北地方に店舗網を持つ伊藤チェーンを株式交換により完全子会社化しました。

この買収の背景には、アークスが東北地方における自社の事業基盤の拡大・強化を狙っていたことがあります。伊藤チェーンの店舗網を取り込むことで、東北地区での店舗網とマーケットシェアを大幅に拡充することが可能です。

これにより、アークスは東北地方においてスケールメリットが働く規模の経済を実現できます。仕入れや物流、マーケティングなどのコスト削減が期待できるほか、人員配置の最適化や業務の標準化・システム統合による効率化も可能です。

さらにアークスは、こうした東北地方での基盤強化を通じて、同地域を本拠とする大手小売企業に対抗できる受け皿を整備することを意図しています。地域を代表する有力小売業態への成長を目指す戦略であり、今後のさらなる規模拡大へとつながる買収であったと言えるでしょう。

参考:株式会社アークスと株式会社伊藤チェーンの経営統合完了に関するお知らせ

マックスバリュ西日本による広電ストアの事業取得

2018年10月、マックスバリュ西日本は、広島県を拠点とする小売業のグループ企業「広電ストア」から、同社が運営していたスーパーマーケット「マダムジョイ」の事業を譲り受けました。事業譲渡の対価については非公開となっています。

広電ストア側は、厳しい経営環境に直面し、マダムジョイ事業からの撤退を決定。一方のマックスバリュ西日本は、この事業譲り受けを機に、広島県内におけるスーパーマーケット事業のシェア拡大を図ろうとしていました。

マックスバリュ西日本はグループ全体の競争力強化を経営課題に掲げており、今回のマダムジョイ事業の取得はその一環です。広島県内に新たな店舗網を獲得することで、同地域におけるスーパー事業の基盤が大きく強化されることになります。

具体的なメリットとしては、仕入れや物流、人員配置など様々な側面で規模の経済が働くことが一つです。また、マーケティング費用の最適化や、業務の標準化・システム統合によるコスト削減も可能となります。

参考:子会社の解散に関するお知らせ

オイシックス・ラ・大地とウェルカムでの資本業務提携

2019年2月、食品宅配大手のオイシックス・ラ・大地は、輸入食品販売のウェルカムに対して約11億円を出資しました。そして同年5月、両社は業務提携契約を正式に締結しています。オイシックス・ラ・大地とウェルカムは、実は2013年から協業関係にありましたが、今回の資本提携と業務提携によって、両社の関係をより一層強固なものとすることとなりました。

このような資本・業務両面での関係強化の背景には、両社が有するリソースを最大限に活用し合い、より大きなシナジー効果を生み出そうという狙いがあります。

具体的には、オイシックス・ラ・大地の食品宅配ノウハウやインフラと、ウェルカムの輸入食品の調達力や商品力を相互に提供し合うことが想定です。お互いの強みを融合させることで、新規顧客の開拓や商品・サービスの高付加価値化などが期待できます。

また、Eコマースシステムの共同活用や、在庫・物流の相互連携など、バックオフィス領域でのコスト削減効果も見込まるでしょう。つまり、食品宅配と輸入食品の2大フードビジネスプレーヤーが手を組むことで、新たな成長の糸口を見出し、お互いの企業価値向上を実現しようとしているのです。

参考:DEAN & DELUCAを運営するウェルカム社とオイシックス・ラ・大地が資本業務提携契約を締結 ~関連会社となり、シナジーを推進~

ローソンによる成城石井とのM&A

ローソンは、2014年9月30日に成城石井の全株式を取得することを決定し、株式譲渡契約を締結しました。この買収の背景は、ローソンがコンビニとしてさまざまな付加価値を追求してきた中で、成城石井は高い商品計画力で高付加価値を追求し、ブランド力を構築してきたことにあります。両社とも製造小売という共通点があり、協業による大きな可能性があるとのことです。

成城石井は、1933年創業の食品スーパーで、高価値の食品を販売し、おいしさを売りにする企業です。ローソンは成城石井の経営理念を尊重し、ブランド等の事業基盤を活かしながら、自社のノウハウを提供することで、大都市圏市場における競争力を高めていく考えです。

具体的には、店舗開発や物流、データ活用などでサポートし、成城石井の進化を後押しする方針となっています。ちなみに、今回の買収が2014年度のローソンの連結業績に与える影響は軽微とのことです。

参考:株式会社成城石井の株式取得に関するお知らせ

ハークスレイからの万代への事業譲渡

2021年2月、外食・流通大手のハークスレイは、グループ内の生鮮食品スーパー事業を手掛けるアルヘイムの事業全てを、スーパーマーケットチェーン万代に譲渡することを発表しました。譲渡価額は非公開です。

ハークスレイは、ほっかほっか亭やアサヒL&C等の外食・流通企業の持株会社となります。一方の万代は、近畿地方を中心に155店舗のスーパーマーケットチェーンを展開する企業です。

この事業譲渡の背景には、ハークスレイ側の経営合理化の狙いがあります。新型コロナウイルス禍の影響を最小限に抑え、財務基盤を安定させるとともに、コロナ収束後を見据えた成長事業への経営資源の集中化を図る計画です。

具体的には、生鮮食品スーパー事業から撤退し、コア事業の競争力強化に注力します。外食事業や物流事業などグループの主力事業に経営リソースを重点配分することで、全体の収益力向上を目指す予定です。

一方の買収側の万代は、この買収によりスーパー事業の規模とシェア拡大を実現できます。両社の思惑が合致した結果、今回の事業譲渡が行われたのです。ハークスレイはグループ経営の選択と集中を、万代はスーパー事業の成長機会の確保を、それぞれ狙った戦略的なM&Aであったと位置付けられます。

参考:連結子会社(孫会社)の異動を伴う株式譲渡に関するお知らせ

イオンによるいなげやの買収

2023年10月、イオン株式会社が株式会社いなげやを買収することを決定しました。この買収により、いなげやはイオン株式会社の連結子会社となり、イオンとともに事業を運営することとなります。

いなげやは、スーパーマーケット等の小売業、食品卸売業、農業経営などを行う会社で、本社の所在地は東京都立川市です。資本金は89億円余り、従業員数は約7,500人となる大きめの企業となります。イオンはすでにいなげや株式の17.01%を所有していましたが、今回の買収によりいなげやを完全子会社化しました。

イオンは、いなげやを子会社化することで小売事業の強化や経営の効率化を図り、食品スーパー事業における収益力の向上を目指しています。また、イオン側の人材や物流・IT等のインフラを活用することで、いなげやの店舗運営の更なる改善にも取り組む考えです。今後は、イオンといなげやの経営資源を最大限に活用し、それぞれの企業価値向上をしていきます。

参考:株式会社いなげや株式に対する 公開買付けの結果及び子会社の異動に関するお知らせ 

PPIHによるGRCY Holdingsの買収

2021年2月、ディスカウントストアチェーン「ドン・キホーテ」などを展開するPPIH(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)は、米国のプレミアムスーパーマーケットチェーン運営会社GRCY Holdingsの全株式を取得すると発表しました。買収金額については非公開です。

PPIHは東京を本社とする持株会社で、連結子会社にドン・キホーテやユニー、長崎屋などの小売チェーンを抱えています。一方、GRCY Holdingsは米国カリフォルニア州を拠点に、高級スーパーマーケットチェーンの経営を手掛ける企業グループです。

今回の買収を通じて、PPIHは自らのグループ事業のさらなる多角化を図ります。これまでのディスカウントストア事業や総合スーパー事業に加え、GRCY Holdingsの経営を引き継ぐことで、海外における食品小売事業への本格参入を実現する方針です。

PPIHは本件M&Aについて「海外事業をグループの新たな収益の柱にする」と位置付けています。米国有力スーパーチェーンの経営ノウハウを取り込むことで、グローバル展開の大きな足掛かりを得たと評価可能です。今後は国内外の既存事業とのシナジー創出を狙いながら、海外食品小売事業の拡大を目指します。

参考:米国 GRCY Holdings, Inc.の株式取得に関するお知らせ

セブン&アイ・ホールディングスのエービーシー・マートとのM&A

2022年3月、セブン&アイ・ホールディングスは、完全子会社であるスポーツ用品販売のオッシュマンズ・ジャパンの全株式を、靴・衣料品販売のエービーシー・マートに譲渡しました。譲渡価額については非公開となっています。

セブン&アイ・ホールディングスは、コンビニ、スーパー、百貨店など小売業が中心の持株会社です。一方のエービーシー・マートは、主に靴や衣料の小売事業を手掛けていました。

この株式譲渡の背景には、両社の事業ポートフォリオ再編の狙いがありました。セブン&アイ側は、コア事業に経営資源を集中させるため、スポーツ用品事業から撤退することを決定。その一環でオッシュマンズ・ジャパンの譲渡を選択したものです。

一方のエービーシー・マートは、新規事業の柱としてスポーツグッズ分野への進出を模索していました。そこで両社の思惑が一致し、オッシュマンズ・ジャパンの買収に合意しました。

つまり、セブン&アイ・ホールディングスがグループ経営の選択と集中を図る中で、エービーシー・マートがスポーツ用品事業への参入機会を求めていたという事業戦略上のニーズが合致した結果、この株式譲渡が実現したと言えます。

参考:当社子会社の株式譲渡及びそれに伴う子会社異動のお知らせ

丸の内キャピタルにおけるいなげやとのM&A

2021年6月、丸の内キャピタル(三菱商事グループ、三菱UFJフィナンシャル・グループに関連する会社)は、同社が運営する投資ファンドを通じて、スーパーマーケットチェーン「いなげや」の親会社である三浦屋の全株式を取得することを発表しました。買収金額は非公開となっています。

売却側のいなげやは、中央線や西武新宿線沿線を中心に高級スーパーマーケット事業と食品の外販事業を展開する企業です。一方の丸の内キャピタルは、投資ファンドの運用を通じて企業の経営改革や事業再編などのノウハウを蓄積してきました。

この買収を通じて、丸の内キャピタルは、自らが持つ経営改善の知見やノウハウを生かし、いなげやの企業価値と従業員の潜在力を最大化させることを目指しています。具体的には、組織のガバナンス強化や業務プロセスの見直し、新規事業の立ち上げ支援など、いなげやのさらなる成長に向けた経営支援を提供する計画です。

つまり、投資ファンドの出資者である丸の内キャピタルが、いなげやの経営陣・従業員と一体となって事業の変革に取り組むことで、企業価値の向上を目指す資本と経営の一体型買収であると位置付けられます。

参考:子会社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ

オイシックス・ラ・大地によるとくし丸の買収

2016年5月、食品宅配大手のオイシックス・ラ・大地は、移動スーパー事業を全国展開していた「とくし丸」の全株式を取得し、自社グループに編入しました。買収金額については非開示となっています。

「とくし丸」は、高齢者向けの移動販売サービスを特徴としており、買い物難民と呼ばれる層をターゲットに急成長を遂げていた企業です。一方のオイシックス・ラ・大地は、食品宅配事業が主力でした。

今回の買収を通じて、オイシックス・ラ・大地は自社が培ってきた宅配ノウハウやインフラを「とくし丸」事業に投入し、同社の販路拡大を積極的に支援していく考えです。具体的には、商品調達や物流システム、人材育成などの面で協力を行います。

オイシックス・ラ・大地にとって、「とくし丸」買収は新規事業領域の開拓にあたります。高齢者層をターゲットとした移動スーパー事業への進出により、これまでの宅配事業とは別の顧客基盤の確保が可能です。一方の「とくし丸」は、オイシックス・ラ・大地からの経営支援を受けることで、事業の効率化と販路網の更なる拡大が期待できます。

つまり、両社の強みを掛け合わせることで、高齢者向け移動スーパー事業の発展と、お互いの企業価値の向上を目指す、Win-Winを実現する資本提携であったのです。

参考:オイシックス、とくし丸を買収 移動スーパーを強化

エイチ・ツー・オー リテイリングとSRSホールディングスによる資本業務提携

2019年5月、関西を中心にスーパーマーケットチェーンを展開するエイチ・ツー・オー リテイリンググループと、同地域で外食チェーン事業を手掛けるSRSホールディングスは、業務提携契約を締結しました。

両社はこの資本業務提携を通じて、今後の協業関係をより強固なものとすることを狙っています。具体的には、エイチ・ツー・オー リテイリンググループが持つ小売インフラや商品調達力と、SRSホールディングスの外食事業のノウハウを相互に活用し合うことで、シナジー効果を最大化していく考えです。

例えば、スーパーとレストランの複合店舗の展開や、スーパーの食品と外食メニューの相互供給など、お互いの強みを掛け合わせた新しいサービスの開発が期待できます。また、商品の共同開発や人材交流、物流の相互利用なども計画の一つです。

つまり、関西圏に根ざす小売と外食の2大業界プレーヤーが手を組むことで、新たな相乗効果を生み出し、両社の成長戦略を加速させていこうとしています。

参考:エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社との資本業務提携の基本合意に関するお知らせ

カメイによるDaiei Trading Co., Inc.の子会社化

2021年12月、日本の総合商社カメイは、米国における食料事業の拡大を目的として、同国の日本食品卸売大手Daiei Trading Co., Inc.の全株式を取得し、完全子会社化しました。取得価額については非公開となっています。

カメイは国内外で多角的な事業を展開する総合商社です。米国においては、連結子会社のKamei North America Co., Ltd.を通じて、日系スーパーマーケット「Mitsuwa Marketplace」のチェーン展開を行っています。一方、Daiei Trading Co., Inc.とその子会社Daiei Trading-Chicago-Co., Inc.は、米国での日本食品輸入卸売事業で主要な地位を占めていました。

今回の全株取得により、カメイはDaiei Trading両社を自らのグループに編入しました。その背景には、米国における食料事業の成長機会をより確実に捉えるという経営戦略があります。Daiei Trading両社が有する食品調達力と流通ネットワークを活用することで、「Mitsuwa Marketplace」チェーンの商品力と収益力の更なる強化が期待できるためです。

カメイは本件を「当社子会社によるDaiei Trading Co., Inc.の株式取得」と位置付けており、米国での食品流通事業の拡大とバリューチェーン強化を狙った戦略的買収であったと言えます。

参考:当社子会社による Daiei Trading Co., Inc.の株式取得に関するお知らせ

クスリのアオキとホーマス・キリンヤ、フードパワーセンター・バリューの合併

2022年3月、ドラッグストア大手のクスリのアオキは、食品スーパー事業を手掛けるホーマス・キリンヤおよびその仕入れ会社のフードパワーセンター・バリューの2社を吸収合併しました。クスリのアオキが存続会社となり、ホーマス・キリンヤとフードパワーセンター・バリューは消滅会社となりました。合併の対価は現金によるものの、具体的な金額は非開示となっています。

クスリのアオキは、クスリのアオキホールディングスの完全子会社として、主に北信越から関西にかけての地域でドラッグストアと調剤薬局を展開する企業です。一方の被合併会社は、岩手県と宮城県を中心に食品スーパーと衣料品店を運営するホーマス・キリンヤと、その仕入れ会社のフードパワーセンター・バリューの2社でした。

この合併により、クスリのアオキホールディングスは、岩手県と宮城県エリアにおいて、これまでのドラッグストア事業に加えて、食品スーパー事業への進出を狙っています。具体的には、ホーマス・キリンヤが持つ新鮮食品の品揃え力をドラッグストアに取り込むことで、新たな価値提供と収益機会の拡大を目指すものです。ドラッグストアと食品スーパーの事業融合によるシナジー効果を狙った戦略的合併であると言えます。

参考:株式会社ホーマス・キリンヤ及び株式会社フードパワーセンター・バリューの吸収合併に関するお知らせ

ダイユー・リックホールディングスによるホームセンターバローの子会社化

2019年4月、ホームセンター大手のダイユー・リック(現アレンザ)ホールディングスは、スーパーマーケットチェーンを展開するバローホールディングスとの間で、資本業務提携に合意しました。

両社は、この資本業務提携を通じて、小売業界におけるシナジー効果を最大限に発揮し、持続的な成長を実現することを目指しています。具体的には、ダイユー・リックのホームセンター事業とバローのスーパーマーケット事業を相互に補完し合うことによる、新たな付加価値の創出と収益力の向上が狙いです。

例えば、ホームセンターとスーパーを併設した複合店舗の展開や、店舗間の共同調達・物流の実現、ポイントサービスの相互利用など、様々な施策が期待できます。また、人材交流や事業ノウハウの共有を図ることで、両社の経営力強化も図られる方針です。

つまり、ホームセンター業界とスーパーマーケット業界の大手企業が手を組むことで、「攻めの経営戦略」を共に構築し、業績の向上と持続的成長の実現を目指すものだと言えるでしょう。

参考:ダイユー・リックホールディングス株式会社による株式会社ホームセンターバローの 株式交換を通じた完全子会社化及び 株式会社バローホールディングスによるダイユー・リックホールディングス株式会社の 連結子会社化(資本上及び業務上の提携)に関するお知らせ

アルビスによるオレンジマートの買収

2019年4月、北陸地方でスーパーマーケットチェーンを展開するアルビスは、富山県内に店舗網を持つオレンジマートの全株式を取得し、自社グループに編入しました。買収金額は非公開となっています。

この買収の狙いは、富山県におけるアルビスのスーパーマーケット事業基盤の強化です。オレンジマートの店舗網を自社に加えることで、同県内での自社店舗シェアを大幅に拡大することができます。

これにより、アルビスは富山県内での規模の経済を実現し、スケールメリットの獲得を図ることが可能です。具体的には、店舗運営における仕入れや物流、人員配置など様々な側面で効率化が期待できます。

また、富山県全域でのドミナント体制の構築により、マーケティングの効率性向上や、業務の標準化・システム統合などのコスト削減施策も講じやすくなるでしょう。

つまり、アルビスはこのM&Aを通じて、富山県における小売事業の基盤をより強固なものとし、規模の利益を最大化することを狙っているわけです。地域に根差した事業の存続と、収益力向上の両立を目指す戦略的な買収であったと言えます。

参考:アルビス、オレンジマートの全株式取得(子会社化)で基本合意書を締結

まとめ

「小高ストアのレジと商品棚」の写真

今回はスーパーマーケットのM&A・事業承継の全知識ということで、この業界のM&Aにおける売却相場・事例・成功ポイントを解説しました。

スーパーマーケット業界は、現在人手不足が慢性的に続いている状態です。そのため、今後M&Aでの人員拡大が必要になってくる企業もあるでしょう。それだけでなく、IT設備を導入して効率的な事業体制を整えることも欠かせません。

M&Aは企業の存続や成長のための戦略としてとても効果があります。ですが、生半可にできるものではありません。ぜひ今回の記事を参考にスーパーマーケットにおけるM&Aを検討してみてください。

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