「動物病院のM&Aにおける動向は?」
「動物病院のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「動物病院 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、動物病院のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
動物病院におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、動物病院のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
動物病院とは
動物病院とは、一般的に「動物が怪我や病気をした際に治療を行うための機関」と定義されます。しかし昨今の動物病院は、病気や怪我の治療以外にも様々なサービスを提供しています。動物病院の主なサービス内容は、以下の通りです。
- 病気・怪我の治療とリハビリ
動物が病気や怪我をした際に検査・診断を行い、投薬や手術・入院などで治療したり、健康を回復するためのリハビリテーションを行ったりする。 - 健康診断・検査・予防
定期的な身体検査や尿検査、血液検査などにより、飼い主が気づけないような体内の疾患を発見する。また細菌やウイルスによる感染症・伝染病に対するワクチンの予防接種なども行う。 - お手入れ(トリミングなど)
苦手な爪切りや歯みがき・耳掃除などのケア。施設によってはトリミングを提供している場合もある。トリマーや獣医師などのプロがお手入れを行うため、病気やケガの早期発見にも役立つ。
上記の通り、動物病院では病気や怪我の治療のみならず、予防接種・健康診断・歯磨きなどを提供しているケースも多いです。動物病院が多機能的になることで、飼い主の負担を減らすことにも繋がっています。
動物病院の種類とビジネスモデル
動物病院の種類とビジネスモデルについて解説していきます。
かかりつけ医院
かかりつけ医院とは、街中など身近な環境にある動物病院のことです。多くの人が通いやすい場所にあるだけでなく、ペットの健康状態や生活に関する相談事を気軽に相談することができます。
かかりつけ医院は大学病院など、郊外にある大型の病院とは違って小規模・少人数で運営されているケースが多いです。獣医師も数人のみの在籍となっており、医院によっては個人経営にて運営している場合もあります。
ペット需要が高まっていることもあり、かかりつけ医院の存在は、飼い主にとって非常に貴重なものです。健康診断や予防接種などの際にも気軽に訪れることが出来ることもあり、非常に高い業績を上げているかかりつけの動物病院も多くあります。
大学附属病院
動物病院の種類として挙げられるのが、「大学付属病院」です。大学付属病院とは、人間が通う大学付属病院と同じく、精密な検査や高度な獣医療を行う動物病院のことを指しています。診療科も多岐にわたり、必要に応じてそれぞれの科が協力しながら診察にあたります。
大学付属病院と一般の動物病院では、医療レベルが全く異なるのが大きな違いです。かかりつけの小規模な動物病院では治療が難しい病気や怪我であっても、大学付属病院では治療が可能となるケースもあります。
ただし大学付属病院を受診するためには、かかりつけの動物病院から「紹介状」が必須となるケースが多いです。もちろん集客活動も行っておらず、非営利的な側面も多いため、M&Aなどの事例はほとんどありません。
夜間・救急病院
夜間・救急病院とは、その名の通り「夜間や休日などにペットが急な病気や怪我をした際に対処してくれる緊急時利用の病院」のことです。かかりつけ病院や大学付属病院よりも、圧倒的に数は少ない傾向にあります。
近年では急増するペット需要の影響もあり、夜間・救急病院の需要も高まっているのが特徴です。深夜・早朝を問わず治療を行ってくれる夜間・救急病院は、飼い主にとって重要な存在となります。
しかし夜間・救急病院の需要が高まっている一方で、獣医師不足の問題などにより、夜間・救急病院の数は減少を続けています。今後のペット業界の動向によって、夜間・救急病院に対する施策が発せされる可能性も高まっています。
動物病院に必要な業許可・資格
動物病院に必要な業許可・資格について解説していきます。
動物病院に必要な業許可
動物病院の運営には所定の届け出を行政機関に提示し、認可を取得することが必須です。動物病院の開業・運営に必要な届け出は以下の通りです。
- 診療施設開設届
獣医師免許証を持っている人物が都道府県知事に対して「診療施設開設届」を10日以内に提出が必要。診療施設開設届には、「診療所の平面図」「獣医免許の写し」「法人の場合は約款の写し」が必要となる。 - 動物取扱業届出書
動物を入院させたり預かったりする場合は、都道府県へ「動物取扱業届出書」を提出し許可を得る必要がある。手続きは、保健所で行う。 - エックス線装置設置届
動物病院でエックス線装置を取り扱う場合、「エックス線装置備付届」を提出する。設置届の書類にはエックス線装置の製作者名と型式、使用する台数や使用用途を記載して提出が必要
動物病院の開業・運営には、主に上記3つの書類の提出が必要です。また開業後も保健所や各種行政機関とのやり取りを継続して行うことになります。
動物病院に必要な資格
動物病院の運営において欠かせない存在が獣医師です。獣医師国家資格を受験するには6年制の獣医専門の大学を卒業する必要があります。獣医師を含む動物病院に関連する資格は、以下の通りです。
- 獣医師
獣医師国家試験に合格すると農林水産大臣から与えられる国家資格。動物病院やペット医院への就職が一般的だが、獣医師資格を持つ人材を確保できれば実務経験がなくとも「動物取扱責任者」に任命することが可能。 - 愛玩動物看護師
農林水産大臣及び環境大臣の免許を受けて、愛玩動物看護師の名称を用いて、愛玩動物の診療の補助や、疾病・負傷した愛玩動物の世話や看護、愛玩動物の飼育者に対する愛護や適正な飼育に関する助言等を業とする者。実務経験がなくとも「動物取扱責任者」に任命することが可能。 - 愛玩動物飼養管理士
公益社団法人日本愛玩動物協会が認定するペットの飼養のスペシャリストになるための民間資格。動物の疾病予防や各種動物の飼養管理、犬猫のしつけ等の知識から、動物関係の法令や管理士の社会活動など人と動物が豊かに暮らしていくために必要な知識や技能を身につけたことを証明する資格。
上記の他にも「JKC公認トリマー」や「ペット販売士」などの民間資格を取得した人材を確保することが推奨されます。M&Aにて動物病院を買収する際には、譲り受けした企業の従業員がどのような資格を有しているのか把握しておくことも大切です。
動物病院の市場動向
動物病院の市場動向について解説していきます。
業界全体は拡大傾向
ペット業界においては、犬や猫の飼育数自体は減少傾向にあるものの、ペットフード・ペット用品の充実、老犬ホーム、ペット保険などの新規サービス普及の影響もあり、市場規模は拡大傾向です。
また2020年に発生したコロナ禍による巣ごもり需要により、ペット飼育に関心を持つ人が増えたことで、今後はペット業界の市場規模が伸びていくことが予測されています。ペット飼育数が増えれば、動物病院の利用者数も比例して伸びていくことは間違いありません。
なお2020年の飼育頭数は、犬が848万匹に対して猫が964万匹と猫が上回りました。また、ペットの高齢化が進んでおり、平均寿命は犬が14.4歳、猫が15.4歳となっています。平均寿命が延びていくことで、動物病院の利用率も高まっていくことでしょう。
医療技術の進歩
ペット業界の市場規模拡大が予測されている昨今では、動物医療に関する技術の進歩が顕著です。ペットの平均寿命が延びている背景には、医療技術が確実に進歩しているという背景もあります。
特に首都圏を中心とした大学付属病院では、最先端の医療機器を使用した高度医療を提供されています。これまでに治療が不可能だった病気や重大な怪我も、最先端の医療技術を使うことで治療が可能となりました。
しかし一方で地方部では、動物病院そのものの数が少なく、かつ高度な医療技術が浸透していないことも事実です。そのため、現在の動物医療では都市部と地方部で提供できる医療レベルに格差が生まれています。これは動物医療における大きな課題のひとつです。
ペットにかけるお金の増加
2020年の新型コロナウィルス発生により、ペットの需要は高まりを見せています。しかし一方で、ペットの飼育数自体はやや減少傾向にあるのも事実です。ペットの飼育数が減っているにも関わらず、ペットの需要が高まっている背景には、1匹あたりにかける金額が高騰しているということが挙げられます。
ペット1匹あたりにかける金額が増加している理由は、ペットの家族化が進んでいるためです。1匹のペットに対して投資する金額がこれまでより増えており、より高額なサービスを利用する飼い主が増加しました。
そのため動物医療の分野においても、より高額で高度な医療サービスの提供が求められています。こうしたニーズに応えるためには、高性能な医療設備の導入や高い医療技術の提供が求められています。
動物病院の抱える課題
動物病院の抱える課題を解説していきます。
慢性的な人手不足
ペットショップを含むペット業界の市場は、ペットブームのあおりを受け、右肩上がりに成長している状況です。しかし市場の成長に対し、人材の確保が追い付いていない状況にあります。
また獣医師には3K(きつい・汚い・危険)のイメージを持つ人も多く、優秀な人材が集まりにくいのも事実です。一方でペットショップ市場は拡大しているため、病院側はより多くの獣医師・動物看護師を求めており、人材の確保と経営陣の意図が噛み合っていない状況と言えるでしょう。
今後のペットショップ業界では、慢性的な人手不足を解消するために、労働環境の改善や賃金の見直しが必要とされています。実際に大手動物病院などでは、福利厚生の見直しや労働環境の改善を図る取り組みを実施している企業も多いです。
動物福祉における問題
ペット業界における「生体販売」は、いかに早くケージに入っているペットを販売し、空いたケージにすぐに新たな犬猫を供給するという命の大量生産・大量消費のビジネスモデルです。
特にペットショップでは、生後2~3ヶ月が「売れ時」とされており、少しでもこの期間を超えると売れ残りが発生する可能性が非常に高くなります。売れ残った犬や猫を保健所へ持ち込むことは法律で禁止されていますが、売れ残った動物の処遇に関しては不透明な部分が多いのが現実です。
実際に売れ残ったペットを秘密裏に殺処分し、処分を受けたペットショップ事業者も存在します。こうした動物福祉における問題は、ペットショップが抱える最大の課題であり、今後は倫理観の変化に併せ、法的規制がさらに強まることも予測されています。
集客力不足
現在のペット業界は右肩上がりの成長を見せており、同時に動物病院における需要も拡大傾向にあります。しかし一方で、集客に悩む動物病院も少なくありません。特に地方部の動物病院は集客力に不足しているのが現状です。
地方部の動物病院が集客に悩んでいる最大の理由は、日本における大都市集中型の人口構造にあります。ペットの需要が高いのは主に都市部となっており、必然的に都市部の動物病院の需要が高くなるのです。
一方の地方部では少子高齢化による過疎化で人口が減少し、ペットの飼育数も年々減っていきます。動物病院の需要も減少するため、資金力が不足し、高度な医療機器を手に入れることも困難です。現在、地方部の動物病院では、いかにして集客を成功させるかが目下の課題となっています。
動物病院におけるM&Aの動向
動物病院におけるM&Aの動向を解説していきます。
差別化戦略としてのM&A
動物病院はペット業界の動向に大きく影響を受ける業界です。右肩上がりの成長が期待されるペット業界では、市場競争の激化が発生しており、激化する市場競争のための戦略としてM&Aを実施する動物病院は多いです。
動物病院の中でも特にM&Aに積極的なのは、法人経営の「かかりつけ病院」に分類される動物病院になります。集客のためのマーケティングが必須であるかかりつけ動物病院は、他動物病院との差別化のためにM&Aを実施するケースは多いです。
動物病院が他社との差別化を成功させるためには、「サービス体制の許可」「事業エリアの拡大」「優秀な獣医師の確保」などが必須となります。これらの要素を満たせると判断した場合に、取引を行うのが近年の動物病院におけるM&Aの動向です。
後継者不在問題によるM&A
動物病院のM&Aで多いのが、後継者問題解消を目的とした取引事例です。次代の後継者がいない動物病院を別の動物病院もしくは、異業種企業が買収するケースになります。
動物病院のなかでも、特に後継者不足に悩んでいるのが個人経営の動物病院です。なかには、動物病院としての業績は好調であるにも関わらず、後継者がいないことにより、事業撤退においこまれる個人経営の動物病院は多いです。
また後継者不在によるM&Aにて事業規模が拡大した動物病院も多く存在します。特に動物病院のM&Aでは、M&A後に買い手が持つ集客戦略を取り入れ、業績が伸びたケースも多いです。
中小規模の動物病院同士のM&A
動物病院のM&Aにおいて最も多発しているケースは、動物病院同士のM&A事例です。同業者同士がM&Aによって合併や事業譲渡をするケースが多くあります。
特に多いのが、中小規模の動物病院同士のM&Aによる合併です。獣医師の確保が困難・集客力が不足しているなどの課題を抱えている動物病院同士が合併し、経営基盤強化のための投資を共同で行うケースもあります。
また中小規模の動物病院同士のM&Aでは、双方の持つ病院運営におけるノウハウを共有することによる、シナジー効果の発揮も狙いです。双方の持つ運営ノウハウを共有することで、資金力のある大手動物病院に対抗することが目的となります。
動物病院のM&Aにおける成功事例
動物病院のM&Aにおける成功事例を紹介していきます。
YCP Lifemateと山口医科病院によるM&A
2018年5月に、YCP Lifemateが山口医科病院を事業譲渡により、承継したM&Aの事例です。本取引は事業譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「YCP Lifemate」は、YCPグループ傘下でライフメイト動物病院グループの運営など手掛けている企業です。一方の譲渡企業である「山口医科病院」は、神奈川県で40年以上動物病院を経営して地域に根差した診療を行っている動物病院になります。
本件M&Aは、動物病院グループ会社とかかりつけ動物病院による取引事例です。本取引により、譲り受け企業であるYCP Lifemateは、予防医療や高度医療を充実させる見込みです。
子会社(孫会社)の設立及び当該子会社(孫会社)による吸収分割に関するお知らせ
JVCCとFORPETSによるM&A
2017年10月に、JVCCがFORPETSの所有する発行済株式の全てを取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「JVCC」は、動物病院やトリミングサロンの運営を手掛ける企業です。JVCCは、「日本の獣医師にとって最も働きやすく、かつ、飼い主に最も信頼される動物病院グループの確立」といった事業構想のもとで設立されました。一方の譲渡企業である「FORPETS」は、東京都で2つの動物病院と1つのペットサロンを運営し、東京都23区を中心に予防医療から高度な専門医療まで幅広く診察を行っています。
本件M&Aは、動物病院兼トリミングサロンを手掛ける会社と動物病院兼ペットサロン運営会社による取引事例です。FORPETSの参画で、JVCCは12の動物病院(3カ所はペットサロン併設型動物病院)と7つのペットサロンを運営する形となり、これにより動物病院グループ化を進めています。
イオンペットとニチイ学館によるM&A
2022年7月に、イオンペット株式会社が株式会社ニチイ学館が手掛けるグルーミング事業を買収したM&Aの事例です。ニチイ学館が運営するグルーミングサロン「A-LOVE」の全20店舗の内、19店舗をイオンペットが取得しています。
譲り受け企業である「イオンペット株式会社」は、ペット関連商品の販売、グルーミングサロンやペットホテル、動物病院、しつけ教室や保護犬猫の譲渡施設の運営など、ペットのトータルケアをサポートする多角的な事業を展開している企業です。一方の「ニチイ学館」は、医療・介護・教育関連企業ですが、一部ペット関連事業も手掛けています。
本件M&Aは、犬種ごとの特徴に合わせたグルーミングを可能にする高い専門性・技術を強みとする「A-LOVE」を取得することで、グルーミング事業の基盤強化を図ったものです。ノウハウの承継だけでなく、店舗増加による地域性強化にも成功しています。
株式会社ニチイ学館のグルーミング事業「A-LOVE」の 事業譲受に関するお知らせ
エルムスユナイテッド動物病院グループとタイグリスによるM&A
2017年8月に、エルムスユナイテッド動物病院グループがタイグリスの所有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「エルムスユナイテッド動物病院」は、高度獣医療センター・一次動物病院の運営、再生医療や先端獣医療、動物iPS細胞の研究、AIを活用した獣医療などを行い、動物病院関連事業・ペット関連事業まで幅広い事業を展開している企業です。一方の譲渡企業である「タイグリス」は、動物病院業界向けIoT事業を運営する会社になります。
本取引は、動物病院運営企業と動物関連IoT企業による取引事例です。。動物病院売上管理システム・動物病院顧客管理システム・電子カルテ・遠隔診療などの開発・販売を行っています。
AI、VR/AR、遠隔治療等による獣医療技術の向上を目指してのタイグリス社の100%子会社化のお知らせ
JVCCとフジフィールドによるM&A
2017年4月に、JVCCがフジフィールドの所有する株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「JVCC」は、動物病院やトリミングサロンの運営を手掛ける企業です。一方の譲渡企業である「フジフィールド」は、東京都と神奈川県で3つのペットサロン併設型動物病院と7つのペットサロンを運営する企業になります。
本件M&Aは、ともに動物病院を運営する会社同士の取引事例です。本件M&Aに伴い、JVCCの代表取締役には、フジフィールドの創業者である藤野洋獣医師が就任しています。JVCCは企業組織による病院経営モデルを構築して事業構想に賛同する病院のグループに対する参画を促進すると発表しました。
株式会社フジフィールドの株式取得とJVCC株式会社による動物病院のグループ化推進について
WithmalとLキャルタルトンによるM&A
2023年9月に、WithmalがLキャルタルトン(L Catterton)のアジアファンドであるLキャルタルトン・アジア(L Catterton Asia)と資本提携を実施した取引事例です。本取引は資本業務提携のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「Withmal」は、動物病院経営、動物病院向けホームページ制作、動物病院向けWeb/SNSマーケティング、獣医業界メディア、ペットメディア等の事業を行う企業です。一方の譲渡企業である「Lキャルタルトン」は、グローバルに展開するコンシューマ業界特化の投資会社になります。
本取引は動物動物関連多角企業と投資ファンド会社による取引事例です。Withmalは、グループ入りした病院にて業務負担を減らすための継続的な取り組みを通じ、獣医師が診察に専念できる環境の醸成に注力しており、獣医師と顧客双方の満足度向上を推進しており、この取り組みを進めるため本資本提携を実施しています。
プライベートエクイティ投資会社Lキャタルトンとの資本提携について
楽天ともっとぎゅっと少額短期保険によるM&A
2018年3月に、楽天(楽天グループ)がもっとぎゅっと少額短期保険の保有する全株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「楽天(現:楽天グループ)」は、国内大手の通販関連企業です。一方の譲渡企業である「もっとぎゅっと少額短期保険」は、ペット(犬・猫)が動物病院で治療や手術を受けた際の費用補償を提供する少額短期保険会社になります。
本件M&Aは、日本の大手通販関連企業と動物関連保険の少額保険会社による取引事例です。楽天はもっとぎゅっと少額短期保険を子会社化することにより、9500万人を超える楽天の会員基盤にアプローチすることが可能になり、同社が保有するペットの医療・通院データと、楽天グループが蓄積してきたEコマースの知見を活用して、楽天会員の要望に合致した商品・サービスを開発しています。
マースとVCAによるM&A
2017年1月に、アメリカ企業であるマースが同じくアメリカのVCAの所有する株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられ、取得価額は当時の為替レートで約1兆600億円に及びました。
譲り受け企業である「マース」は、「エム・アンド・エムズ」などの製造を手掛けるアメリカの大手菓子製造会社です。一方の「VCA」は、同じくアメリカに籍を置く大手動物病院運営企業になります。
本件M&Aは、大手菓子製造会社と大手動物病院運営会社による取引事例です。譲り受け企業であるマースは、傘下のペットケア事業にVCAを取り込み、動物向け医療サービスの提供を拡大することを目的としています。
富士フイルムとモノリスによるM&A
2016年8月に、富士フイルムがモノリスの所有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「富士フイルム」は、富士フイルムホールディングスの傘下で、医薬品、化粧品やサプリメント、医療機器、再生医療、バイオ医薬品開発事業などを手掛ける会社です。一方の譲渡企業である「モノリス」は、動物の検体検査受託サービスで国内トップシェアを持つ会社になります。
本件M&Aは、国内大手の多角化企業と動物関連医療会社による取引事例です。譲り受け企業である富士フイルムは、近年需要が高まっているペットの健康診断サービスなどに参入しています。
富士フイルムHD傘下の富士フイルム、動物の検体検査受託サービスのモノリス社を買収
ソフィアホールディングスとオルタエンターテイメントによるM&A
2012年11月に、ソフィアホールディングスがオルタエンターテイメントの保有する株式を所有し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「ソフィアホールディングス」は、調剤薬局事業・インターネット関連事業・通信事業などを手掛ける会社です。一方の譲渡企業である「オルタエンターテイメント」は、ペットショップ、ペット用品及び動物病院等、ペットに関する総合情報サイト「MOBAPE」等のWEBサイト開発・運営などを手掛ける会社になります。
本件M&Aは、調剤・インターネット事業などを手掛ける多角化企業と動物病院・ペット肝炎運営会社による取引事例です。ソフィア総合研究所の、Eコマースや情報ポータルサイトの企画・構築・運営支援サービス等で培った独自のノウハウ等を組み合わせ、ソフィアグループとして様々な分野のWEBサイト運営等の新サービス開発を行っていくことを目的としています。
動物病院のM&Aを行うことのメリット
動物病院がM&Aをするメリットを売却・買収側の双方から解説します。動物病院のM&Aにおける売却・買収のメリットは、以下の通りです。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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動物病院でM&Aの売却を行うことのメリット
動物病院でM&Aによる売却を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 後継者不足の解消
- 資金調達・オーナーのEXIT
- 借入における個人保証の解除
- 市場競争力が高まる
それぞれ詳しく解説していきます。
後継者不足の解消
特に中小規模の動物病院における問題として、後継者不足による廃業が挙げられます。後継者不足に悩む動物病院が、M&Aの売却を進めることで後継者不足の解消に繋げることができます。
実際に後継者不足解消のため、中小規模の事業者が大手企業に買収されることで、後継者問題の解消に繋がるケースは多いです。M&Aでは、会社を譲渡することで譲受企業から経営陣を迎え、これまで通り会社を存続させる事ができます。
また大手企業の経営者クラスに位置する優秀な人物が経営者となるため、売却側の事業規模がこれまでより拡大される場合が多いです。後継者不足に悩んでいる企業にとって、M&Aを行うことは廃業を避けるための大きな手段のひとつです。
資金調達・オーナーのEXIT
M&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。
- 残っている借入金の返済に充てる
- オーナー自身の引退後の生活資金とする
- 新規事業における資金源とする
一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。
借入における個人保証の解除
借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。動物病院に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。
特に中小規模の動物病院の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。
M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。
市場競争力が高まる
ペット業界は、右肩上がりの成長産業だけに市場競争率が非常に高いのが特徴です。競争力の高い市場で利益を上げるのは決して容易ではありません。
M&Aの自社譲渡によって、資金力のある大手企業の傘下に入れば、それだけで一気に市場競争力を高めることが可能です。また大手企業は資金力だけでなく、動物病院の運営ノウハウにも優れているため、競争が激化した市場でも有効な戦略を立案・実行できることでしょう。
実際にペット業界のM&Aは、市場競争力を高めるための事例がほとんどです。大手企業の傘下に入る事例はもちろんのこと、シナジー効果を得るための企業合併事例も多くあります。
動物病院でM&Aの買収を行うことのメリット
動物病院でM&Aによる買収を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 事業拡大のチャンス
- 新規事業への進出
- 人材の確保
- ノウハウの共有
それぞれ詳しく解説していきます。
事業拡大のチャンス
M&Aにおいて買収側が得られる大きなメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。M&Aによって買収側の企業は規模やシェアの拡大を狙うことができます。
動物病院のM&Aにおいては、売手となる企業が持つ商品や店舗建物のような有形資産に加え、顧客・運営ノウハウなどの無形資産を手に入れることも可能です。特に動物病院においては、「運営ノウハウ」などの無形資産は実績に直結する要素であるため、M&Aによる早期事業拡大も視野に入れることができます。
また動物病院においては、大手企業の市場シェア率が高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小規模の動物病院同士がM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を付けることにも繋がります。
新規事業への進出
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかにペット業界への早期参入が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
人材の確保
動物病院の運営においては、動物医療における専門性を有した人材の確保が必須です。M&Aによって動物病院を買収することで、獣医師や動物看護師など、動物医療に特化した人材を確保することができます。
動物病院の運営においては、獣医師や動物看護師の存在が不可欠です。同時に獣医師や動物看護師の新規雇用は非常にハードルが高いため、M&Aによって獣医師や動物看護師などの人材を引き継ぐことは採用面のコストカットにも直結します。
またM&Aによって人材を引き継ぐことは、動物病院の運営におけるノウハウをそのまま獲得することも意味します。承継される人材が持つノウハウを活かせば、動物病院の運営をより優位に進めることが出来るでしょう。
ノウハウの共有
動物病院の運営において欠かせないのが、確立した運営ノウハウを所有していることです。運営ノウハウを確立することができれば、高い集客力とスムーズなサービス提供を行うことができます。
特に右肩上がりの成長が期待されているペット業界は、今まさに市場競争力が激化の一途を辿りつつある状況です。市場競争が激化している市場においては、いかに確立したノウハウを所有しているかが業績においても多大な影響を及ぼします。
M&Aの買収によって動物病院を譲受することで、譲渡企業がもっている運営ノウハウをそのまま活かすことが可能です。既に自社にて所有しているノウハウを組み合わせることで、さらなるシナジー効果の創出にも期待できるでしょう。
動物病院のM&Aにおける注意点
動物病院のM&Aにおける注意点を解説します。動物病院のM&Aにおいて、注意すべき事項は以下の通りです。
- M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
- 避止義務に関して
- 既存従業員の離職対策
それぞれ解説していきます。
M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
M&Aでは、買い手と売り手の情報格差(買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富)があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件(買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう)という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
避止義務に関して
M&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。
M&Aにおける競業避止義務とは、M&Aの成約後に譲渡企業に課される義務です。譲渡した事業に対して、譲渡企業が競合するような事業を再度行い、譲受企業に不利益を与えることを避けることが目的となります。
会社法の規定により、事業譲渡を実施した会社は、競業避止義務を負うことになるので注意が必要です。ただし、買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることはできます。将来的に動物病院を再度手掛ける可能性があれば、買収側と交渉しましょう。
既存従業員の離職対策
M&Aにおいては、譲り受け企業・譲渡企業ともに既存従業員の離職に関して、細心の注意を払うことが必須です。特にペット業界のような人材の確保が困難な業界であれば、尚更注意を払いましょう。
M&Aでは譲り受け企業・譲渡企業ともに組織変動が生じるケースがほとんどです。組織内における経営方針・人員変更は、既存従業員の離職を促すきっかけになりかねません。実際にM&Aによって、経営者側が意図しない程に多くの人材が離職するケースは多いです。
既存従業員の離職を防ぐためには、M&Aにおける今後の方針をより簡潔に既存従業員に通達することが重要になります。専門家の意見も取り入れながら、既存従業員が離職しない対策を立てましょう。
動物病院のM&Aを成功させるためのポイント
動物病院におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。動物病院におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格をよく理解しておく
- PMI(統合後プロセス)の確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。
M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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相場価格をよく理解しておく
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
動物病院のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。
また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
PMI(統合後プロセス)の確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新経営体制の構築
- 経営ビジョン実現のための計画策定
- 両社協業のための体制構築・業務オペレーション
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。
動物病院におけるM&Aのまとめ
今回は動物病院におけるM&Aについて、ペット業界の現状や特徴、市場動向やM&A事例を踏まえて解説しました。
ペット業界は、市場成長率が高いこともあり、M&Aが盛んに実行されている業界です。M&Aによる経営統合によって事業拡大に成功している動物病院も数多く存在することから、動物病院の運営にとってM&Aは有効な経営戦略の一つと言えるでしょう。
しかしM&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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