「空調機器製造会社のM&Aにおける動向は？」
「空調機器製造会社のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「空調機器製造会社 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、空調機器製造会社のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
空調機器製造会社におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、空調機器製造会社のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
空調機器製造会社とは
空調機器製造会社とは、その名の通り、エアコンやヒートポンプ給油機・除湿器・空気清浄機などの空調機器の製造・販売を行う企業のことです。日本を代表する空調機器製造会社には「ダイキン工業」「日立製作所」などが挙げられます。
また空調機器製造会社は空調機器の製造以外にも様々な事業を手掛けていることが多いです。空調機器以外の電化製品の開発・製造・販売、住宅リフォームなどを手掛けている空調機器製造会社も多く存在します。
空調機器製造会社の日本における歴史は非常に多く、これまで熾烈な市場競争が繰り広げられてきた業界です。そのため、結果的に資金力と人材に富んだ大手企業が現在の日本における空調機器製造業界をリードしている市場状態となっています。今後も大手企業による市場独占状態は続くことが予想されます。
空調機器製造会社の事業内容
空調機器製造会社といってもその事業内容には様々なものがあり、単なる製造業だけに留まらず、空調機器の設置・販売・メンテナンスも同時に手掛ける企業が多いです。
また国内の空調機器製造会社の大手メーカーは複合的にビジネスを展開しており、事業内容によって経営戦略も異なります。空調機器製造会社の主な事業内容は、以下の通りです。
- 空調機器の製造
- 空調機器の設置工事
- 空調機器の販売・メンテナンス
それぞれ詳しく解説していきます。
空調機器の製造
空調機器製造会社の主たる事業は、空調機器の製造です。一般的に「空調メーカー」と称されるのは、自社で空調機器の製造を行っている企業のことを指します。
空調機器の製造には自社で開発部門・品質管理部門・製造部門など複数の部門が必要であるため、国内の空調機器製造メーカー数は決して多くはありません。空調機器を自社で製造するには高いノウハウと豊富な人材・資金が必要となります。
そのため空調機器を自社で手掛けることが出来ない事業者は、他社に依頼（OEM）して空調機器製造を行うケースも多いです。また自社で製造可能であったとしても向上のキャパシティを考慮し、一部の空調機器のみ他社で製造を行ってもらうケースもあります。
空調機器の設置工事
空調機器製造会社の中には、空調機器の製造だけでなく、空調機器の設置工事事業を手掛けるメーカーが多いです。空調機器の設置工事とは、文字通り、自社で製造した空調機器を客先に設置する業務になります、
空調機器の設置工事事業は、主に大型エアコンやヒートポンプ給油機などの業務用空調機器の設置が多いです。設置に特別な技術や経験が必要である場合、ノウハウをもった空調機器製造会社の従業員が客先に直接設置を行います。
また小型エアコンや給湯器などの家庭向けの空調機器の設置は、家電量販店などが代行して行うケースが多いです。一定水準のノウハウや経験があれば、家電量販店の作業員や代行業者でも設置できるため、空調機器製造会社の作業員が個人宅に赴き設置するケースはあまり多くありません。
空調機器の販売
空調機器製造会社の多くは、自社で製造した空調機器の販売を行っています。特に大手空調機器製造メーカーのほとんどは、製造だけでなく自社で製造した空調機器の販売事業も手掛けています。
例えば、日本を代表する空調機器製造会社である「ダイキン」は、自社で大阪や東京などの都市部を中心に自社ショールームを構え、ショールームに来館した顧客へ直接自社製品の販売・紹介を行っています。
また自社ECサイトや「amazon」「楽天」などの通販サイトにて、自社製品を一般消費者へ直接販売する空調機器製造会社も多いです。これにより仲卸業者や販売業者にかかる間接費用をカットできるため、より利益率の高い事業を展開することができます。
空調機器製造会社に必要な業許可・資格・人材
空調機器製造会社に必要な業許可・資格・人材について解説していきます。
空調機器製造会社に必要な業許可
空調機器製造業を営むうえでは、いくつか取得すべき業許可が存在します。空調機器製造会社が一般的に必要とされている業許可は以下の通りです。
- 特定建設業許可
- 一般建設業許可
- 高圧ガス販売営業許可
- 冷凍空調施設工事事業所認定
- 冷媒回収事業所認定
- 建築物環境衛生総合管理業
- 建築物空気環境測定業
- 建築物飲料水貯水槽清掃事業
空調機器製造会社は事業内容も製造・販売・メンテナンスなど多岐に渡るため、他事業者よりも多くの事業許可が必要となるケースもあります。但し、必ずしも上記全ての業許可を取得しなければならない訳ではなく、自社の事業内容に見合った業許可を取得することになります。
空調機器製造会社に必要な資格
空調機器製造会社では、特定の資格をもった人材が必要不可欠です。空調機器の製造に役立つとされる代表的な資格は、以下の通りになります。
- 電気主任技術者
発電所や変電所、ビル、工場などの業務用受電設備および配線の電気工事を行うための資格。建物内に電気を供給するための「電気工作物」の工事や保守点検に必要な国家資格のため、電気関係の業種で重宝される。 - 電気工事士
エアコンの取り付け工事に伴う配線作業などが行うための資格で、空調機器の設置・メンテナンスなどの業務を行うことができる。ただし、電気工事主任技術者とは違い、監督者にはなれない。 - 電気工事施工管理技士
建築物における電気工事の施工計画や工程、原価、安全、品質管理を行うことができる資格。電気工事施工管理技士には2種類があり、一級の方がより規模の大きい工事で専任技術者になることができる。 - 冷凍機械責任者
冷凍機械の高圧ガスを製造する施設において、保安業務を行う際に必要な資格。高圧ガス製造保安責任者の資格の一つで、種類によって従事できる施設の規模に違いがある。 - ボイラー技士
温水ボイラーの管理や点検、メンテナンス業務を行う際に必要な資格。労働安全衛生法により、ボイラーの操作や点検はボイラー技士にのみ認められているため、需要が高い。
他にも「管工事施工管理技士」や「冷媒フロン類取扱技術者」などの資格が空調機器製造会社では重宝されます。資格の種類も多岐に渡るため、自社の事業内容に見合った人材の獲得が必要です。
空調機器製造会社に必要な人材
空調機器製造会社では、様々な職種が存在し、自社の事業内容に合った人材を獲得することが必須です。空調機器製造会社に必要とされる人材は以下の通りです。
- 製造管理者：自社工場内の管理・監督・オペレートを行う。
- 製造作業員：製造ラインにて製造工程を担当するための人員。パートタイマーやアルバイトなどの雇用形態であることが一般的。
- メンテナンス作業員：客先にてメンテナンスおよび空調機器の設置などを行うための技術者。
- 一般事務員：会計処理・税処理などを行うための人員。空調機器製造会社は勤務する従業員数も多いため、事務員の作業量も必然的に多くなる。
- 営業員：自社で製造した空調機器を他者に販売するための人員。
空調機器製造業を営むためには、工場内で作業をする「製造員」を雇用する必要があります。アルバイトやパートなど複数人数を雇用する必要があるため、人件費が多額に発生しやすいビジネスモデルです。
空調機器製造会社の市場動向
空調機器製造会社の市場動向について解説していきます。現在の空調機器製造会社の市場動向は、以下の通りです。
- 大手企業による独占状態
- 新術の開発が加速度的に起こっている
- 国内市場停滞による海外進出
それぞれ詳しく解説していきます。
大手企業による市場独占状態
現在の空調機器製造業界は大手企業の市場占有率が非常に高いのが特徴です。以下は、大手メーカーによる「エアコン」の市場シェアを示したものになります。
| 順位 | 国内家庭用エアコン | 国内業務用エアコン |
| 1 | パナソニック 22% | ダイキン 40% |
| 2 | ダイキン 18% | 三菱電機 19 |
| 3 | 三菱電機 15% | 日立 10% |
| 4 | 日立アプライアンス 15% | 三菱重工 8%/東芝キャリア 8% |
| 5 | 富士通 10% | パナソニック 5% |
世界を代表する空調機器製造メーカーである「ダイキン」の国内業務用エアコンは、実に4もの市場占有率を誇ります。また1位～5位までで、およそ5割～6割もの市場を占有していることが特徴です。
空調機器製造業界の大手メーカーによる市場占有率が高い理由は、空調機器製造業界自体の歴史が古く、既に市場競争が停滞している状態にあるためと言われています。国内市場においては、現在の大手メーカーによる市場独占状態が暫く続く見通しです。
新技術の開発が加速度的に起こっている
国内の空調機器製造市場は飽和状態にあるものの、次々に新技術の開発が加速度的に発生している状態です。大手空調機器製造会社を中心に各社新技術の開発を行い、他社との製品差別化を図っています。
特に現在の空調機器製造業界では、「省エネ」「脱フロン」をキーワードとし、より快適で環境にやさしい空調機器の開発が求められている状況です。機能性が高いことはもちろん、環境に配慮したものでなければ、ユーザーや社会から高い評価を得ることが難しくなっています。
また新技術開発のためには高い開発能力を持った人材やノウハウが必要であり、これに伴う資金的投資も必須です。結果的に高い資金力と豊富な人材を持つ大手空調機器会社の市場占有率が高くなっています。
国内市場停滞による海外進出
日本国内における空調機器製造業界の歴史は古く、1930年代からスタートしたと言われています。当初は空調機器自体の価値が非常に高かったこともあり、業務用機器が中心でした。しかしその後1970年代以降は空調機器製造業界は目まぐるしい発展を遂げています。
特に2000年以降は家庭用エアコンの普及率が90%を超え、国内市場においては成長段階から成熟段階へとステージ意向が発生した状態です。既に国内市場は飽和状態にあり、暫くは大々的な業界変動は起きないとされています。
国内市場の成熟により、大手空調機器製造会社を中心に海外への事業進出が増加しているのが現在の空調機器製造業界の市場動向です。また単独での海外進出は非常にリスクが多きため、外国企業とのM&Aも増加していくことでしょう。
空調機器製造会社が抱える課題
空調機器製造会社が抱える課題について解説していきます。空調機器製造会社が抱える課題は、以下の通りです。
- 慢性的な人手不足
- 中小規模会社の弱体化
- 地球温暖化に対する配慮
それぞれ詳しく解説していきます。
慢性的な人手不足
現在の空調機器製造業界では、慢性的な人手不足が発生している状態です。空調機器製造業では機械による自動システム化が進んでいるものの、一定の領域においては人が持つ技術やノウハウが必要となるため、人手不足は業界全体にとって大きな問題となります。
空調機器製造業界が慢性的な人手不足に陥っている理由のひとつが、建設ラッシュを背景とした業務用空調の需要の高まりです。業務用空調の製造では熱交換器の銅管などを接合する「ロウ付け」と呼ばれる技術者が必要ですが、企業側が抱えているロウ付けの技能を有した技術者の人数が不足しています。
また空調機器製造における専門的な技術を要した人材の教育が十分に追いついていないことも、空調機器製造業界が人手不足を抱える理由です。大手空調機器製造会社であれば人材の雇用は行えても、技術者を育てるには一定の労力と時間が必要ですが、技能の伝承が十分に行えていません。
中小規模会社の弱体化
空調機器製造業界は成熟した市場であり、これまで熾烈な市場内競争が繰り広げられてきました。そういった背景もあり、現在の空調機器製造業界は、市場競争を勝ち抜いた大手空調機器製造メーカーが市場をほぼ独占している状態です。
大手メーカーが市場を占有することで与える最大の悪影響は、存続している中小規模会社の弱体化が進行することです。例えば大手空調機器メーカーが下請けの中小規模空調機器メーカーに対し単価に対する圧力をかければ、たちまち中小規模事業者の経営は圧迫され、結果として十分な量の空調機器が供給されなくなる可能性もあります。
また大手空調機器メーカーによる市場独占状態は、業界への新規参入に対し大きな障壁となるため、空調機器製造業界の更なる発展に悪影響を及ぼす可能性が高いです。空調機器製造業界全体で新規参入業者を許容する姿勢が求められています。
競合他社との差別化
多くの空調機器製造会社にとって大きな課題となっているのが、競合他社との差別化です。大手～中小規模すべての空調機器製造会社が、競合他社との差別化戦略に頭を悩ませている現状があります。
中でも中小規模の空調機器製造会社は、競合他社との差別化に必要な開発力が不足している傾向にあり、結果として大手空調機器メーカーから安価なOEM業務を引き受けることになるのです。安価なOEM案件を請けることで事業は継続されるものの、利益率が低く、結果として新規開発に必要な資金が溜まらなくなるという悪循環に陥ります。
また大手空調機器メーカーも次々と同規模の大手空調機器メーカーが新規開発品を販売してくるため、開発事業に多額の資金と人材を投与せざるを得ません。市場が飽和した空調機器製造業界では、新規開発における難易度も高いため、空調機器製造会社の経営を圧迫する要因となっています。
空調機器製造会社のM&Aの動向
空調機器製造会社のM&Aの動向について詳しく解説していきます。
M&Aの件数は他業界よりも少ない
空調機器製造会社は、他業界に比べてM&Aの件数自体は多くありません。M&Aの件数が少ないため、M&Aによる市場活性は起きにくいのが空調機器製造業界の現状です。
空調機器製造業界でM&Aが少ない最大の要因は、空調機器製造業界が大手メーカーによる市場独占状態であることが挙げられます。積極的にM&Aによる事業拡大が成される状態でなく、市場はある程度飽和している状態です。
また空調機器製造業界で起こるM&Aの中には、「大手メーカー同士」または「大手メーカーと外資系企業」による事例もあります。そのため、M&Aによる取引規模が非常に大きく、1件のM&Aで業界全体に大きな影響を与える程の事例もあるほどです。
大手企業による中小企業へのM&A
空調機器製造業界のM&Aでは、大手メーカーが中小規模の空調機器製造会社に対しM&Aを実行する事例も見られます。これは大手独占市場によくある現象のひとつです。
大手独占状態である空調機器製造業界において中小規模の空調機器製造会社は、下請け製造業者であることがほとんどになります。そのため、利益率が低く、設備投資をして自社事業の規模を拡大することが容易でないことが事実です。
自社のみでの事業拡大が難しい中小規模の空調機器製造会社にとって、大手空調機器製造会社とのM&Aは自社の事業基盤を安定させるために非常に有効な戦略のひとつとなります。同時に後継者不足解消・人材の確保などにも繋がるため、大手企業とのM&Aは中小企業にとってメリットも大きいのです。
外国企業とのM&A
国内の空調機器製造会社にとって、現在注目を集めているのが海外のマーケットです。市場が飽和している国内市場ではなく、海外市場に目を向けることで更なる事業拡大を図れる可能性があります。
しかし国内の空調機器製造会社が単独で海外進出を果たすことは容易ではありません。実際に世界を代表する空調機器製造会社である「ダイキン」は、これまで2度単独でアメリカ進出を果たしましたが、いずれも業績が伴わず撤退しています。
しかしその後アメリカ企業をM&Aすることで、アメリカの空調機器製造業界でシェアを獲得することに成功しました。このように外国企業とのM&Aを実行することで、海外市場の拡大と基盤構築を成せる可能性を高めることができます。
空調機器製造会社でM&Aを行うことのメリット
空調機器製造会社がM&Aをするメリットを売却・買収側の双方から解説します。空調機器製造会社のM&Aにおける売却・買収のメリットは、以下の通りです。
| 売却側のメリット | 買収側のメリット |
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空調機器製造会社でM&Aの売却を行うことのメリット
空調機器製造会社でM&Aの売却を行うことのメリットは、以下の通りです。
- DX・IT化を加速させることができる
- 資金調達・オーナーのEXIT
- 借入における個人保証の解除
- 従業員の雇用維持
それぞれ詳しく解説していきます。
DX・IT化を加速させることができる
DX・IT化を加速させることが出来るのが、空調機器製造会社でM&Aの売却を行うことのメリットです。現在の空調機器製造会社では、DX・IT化が加速度的に進んでおり、空調機器製造会社の発展においては欠かせない要素となっています。
しかし中小規模の空調機器製造会社には、最先端のDX化・IT化を進める余裕がないことも実状です。DX・IT化には資金的・人材的な余裕が必要であるため、その両方に乏しい中小企業にとっては、非常にハードルが高い行いとなります。
M&Aによって大手空調機器製造会社からの売却を受け、大手メーカーの傘下となれば、資金的・人的援助により、DX・IT化を推し進めることが可能です。最先端技術の導入は事業規模拡大の大きな要因となることでしょう。
資金調達・オーナーのEXIT
M&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。
- 残っている借入金の返済に充てる
- オーナー自身の引退後の生活資金とする
- 新規事業における資金源とする
一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。
借入における個人保証の解除
借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。空調機器製造会社に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。
特に中小規模もしくは個人経営の空調機器製造会社の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。
M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。
従業員の雇用維持
売却側の企業が廃業目前であった場合には、M&Aを実行することで、既存従業員の雇用を継続して守ることができます。実際にM&Aを行った場合、ほとんどのケースで譲受企業によって従業員の雇用が継続されます。
労働条件においても引き継がれるケースがほとんどなので、廃業に比べると既存従業員が被る影響を大きく抑えることに繋がるでしょう。給与待遇や労働条件が同じであれば、M&A後の離職率も低下させることができます。
また待遇面においては、M&A後に給与受験・労働時間・年間休日・福利厚生などの改善が行われるケースも多いです。M&A以前よりも好条件で雇用されるケースもあるので、既存従業員にとっては大きなメリットとなり得ます。
空調機器製造会社でM&Aの買収を行うことのメリット
空調機器製造会社でM&Aの買収を行うことのメリットを解説していきます。空調機器製造会社でM&Aの買収を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 事業拡大のチャンス
- 新規事業への進出
- ノウハウと人材の継承
- 海外進出への可能性が高まる
それぞれ詳しく解説していきます。
事業拡大のチャンス
M&Aにおいて買収側が得られる最大のメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。M&Aによって買収側の企業は、空調機器製造業における規模・シェアの拡大を狙うことができます。
空調機器製造会社のM&Aにおいては、売手となる企業が持つ設備や建物事務所のような有形資産に加え、顧客・取引情報などの無形資産を手に入れることも可能です。空調機器製造会社にとって、既存顧客などの無形資産は実績に直結する要素であるため、M&Aによる早期事業拡大も視野に入れることができます。
また空調機器製造業界においては、競合他社が多く、市場競争率が非常に高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小同士のM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を付けることにも繋がります。
新規事業への進出
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに早期進出が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
ノウハウと人材の継承
空調機器製造会社のビジネスにおいて事業成功のカギを握るのは、自社が持つ「店舗運営ノウハウ」と薬剤師をはじめとした「人材」です。これら2つが揃っている空調機器製造会社は高い業績を上げることができます。
M&Aによって空調機器製造会社の買収を検討しているのであれば、まずは買収先企業が持つノウハウと人材に目を向けることが先決です。買収によって現在の自社が持たないノウハウや人材が手に入るか否かをチェックしましょう。
また空調機器製造会社の買収に関しては、買収先が持つノウハウ（プログラム）の如何によって、取引額に大きな差が生じます。特殊で価値のあるプログラムを所有している企業ほど、高値で取引されるケースが多いです。
海外進出への可能性が高まる
M&Aによって空調機器製造会社を買収することで、海外進出の可能性を高めることが可能です。国内の空調機器製造会社にとって海外進出は、確立した市場競争力と著しい成長を遂げるためには、海外市場での成功は外せない要素となります。
特に日本の空調機器製造会社は高い技術力を有しているにも関わらず、成熟したマーケットであるため、保有する技術力を十分に利益還元できていないケースが多いです。まさに「宝の持ち腐れ」の状態にある日本の空調機器製造会社も珍しくありません。
高い技術力を持つ日本の空調機器製造会社が、海外の気候や空調システムを理解し、海外の需要に合致した商品ラインナップを作ることで、より自社の企業価値を高めることができます。M&Aの買収によって海外マーケットの開拓に成功できれば、事業規模拡大の大きなチャンスを掴むことが出来るでしょう。
空調機器製造会社のM&Aにおける成功事例
空調機器製造会社のM&Aにおける成功事例を紹介します。
ダイキン工業とGoodmanによるM&A
2012年12月にダイキン工業が米国のGoodman Global,Inc.,の発行済み株式を100%取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引における取得対価は、2960億円となっています。
譲り受け企業である「ダイキン工業」は、環境対応・省エネや快適性を追求する独自の技術力を生かし、高品質・高付加価値の空調機開発を得意とし、欧州、中国、アジア、北米、新興国と幅広く事業を展開している世界屈指の総合空調機器製造会社です。
一方の「Goodman Global Group, Inc」は、アメリカ・テキサス州に本拠を置き、ダクト式の住宅用ユニタリ空調機・燃焼暖房機器や業務用空調機を強みとしている北米住宅用空調分野でトップシェアを誇る米国大手の空調機器製造会社になります。
本件M&Aは、世界を代表する空調メーカーであるダイキンが、世界市場においての先進的企業としての磐石なる地位の確立を目指すことが目的です。これまで2度アメリカに進出するも撤退した経験を持つダイキンが、米国の大手空調機器製造会社を買収したことで見事アメリカでの市場網を獲得した事例になります。
新日本空調と日宝工業によるM&A
2016年8月に、新日本空調が日宝工業の全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームによって実行されましたが、取得対価は一般公開されていません。
譲り受け企業である「新日本空調」は、空調機器製造業を核として電気、衛生、自動計装、防災等設備全般にワンストップで取り組む総合エンジニアリング企業です。一方の「日宝工業」は、大手自動車会社や大手食品メーカーを中心とした工場の電気設備および産業施設設備の工事に強みを持つ会社になります。
本件M&Aは、新日本空調が両社の持つ強みを活かした新たなサービスを行うとともに、両社の技術力共有による高いシナジー効果の創出を目的としたものです。産業施設設備会社同士のM&A事例となっています。
長府製作所と大阪テクノクラートによるM&A
2017年3月に、長府製作所が大阪テクノクラートの全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引における取得対価は、一般公開されていません。
譲り受け企業である「長府製作所」は、高効率給湯機器・冷暖房機器・ソーラー機器に強みをもつ大手の空調機器製造会社です。一方の「大阪テクノクラート」は、セントラルヒーティングシステムや高度排水処理システムを構築するための技術コンサルティング・設計・施工・メンテナンスなどを行う企業になります。
本件M&Aは、長府製作所の得意とする高効率給湯機器や冷暖房機器、ソーラー機器は大阪テクノクラートが提供するシステムと密接な関係があり、互いの技術・ノウハウを連携させることで、顧客に快適な住環境を提供する事業の更なる拡大を図ることが目的です。
デンソーとDJ COOL社によるM&A
2014年10月に、デンソーがDJ COOL社（トルコ）へ50%の株式出資を行ったM&Aの事例です。本件取引における取得対価は、一般公開されていません。
譲り受け企業である「デンソー」は、愛知県刈谷市に本拠を置き、先進的な自動車技術、システム・製品を提供する自動車部品メーカーです。一方の「DJ COOL社」は、中近東で車両販売を行う「Abdul Latif Jameel社」がトルコに設立した会社で、トルコでバス・農建機エアコンおよび冷凍機の設計・製造・販売を行っています。
デンソーは2002年にカーエアコン・ヒーターのメーカーを設立してトルコの空調機器製造業界に進出していました。そこで、DJ COOL社を獲得することでトルコにおける空調機器製造でさらにシェアを伸ばせるよう事業拡大を進めています。
デンソー､トルコの空調・冷凍機メーカーに出資～欧州でのバス・農建機用エアコン、冷凍機事業を強化～
三菱電機とデルクリマ社によるM&A
2016年2月に、三菱電機がデルクリマ社の全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡や公開買い付けのスキームによって実行され、取引対価は902億円となっています。
譲り受け企業である「三菱電機」は、重電システム、産業メカトロニクス、情報通信システム、電子デバイス、家庭電器などの製造・販売を事業を手掛ける日本の大手総合電機メーカーです。一方の「デルクリマ社」は、高い技術力とブランド力を武器に、業務用空調機器をヨーロッパやアジアへグローバル展開している企業になります。
本件M&Aは、三菱電機がヨーロッパやアジア圏に市場を持つデルクリマ社を買収することで、更なる海外進出を果たすことを目的としたものです。日本の老舗電機メーカーである三菱電機にとっては、過去最高額のM&A取引となりました。
イタリア業務用空調事業会社DeLclima(デルクリマ)社買収について
空調機器製造会社のM&Aにおける注意点
空調機器製造会社のM&Aにおける注意点を解説します。空調機器製造会社のM&Aにおいて、注意すべき事項は以下の通りです。
- M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
- 避止義務に関して
- 既存従業員の離職対策
それぞれ解説していきます。
M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
M&Aでは、買い手と売り手の情報格差（買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富）があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件（買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう）という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
避止義務に関して
M&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。
M&Aにおける競業避止義務とは、M&Aの成約後に譲渡企業に課される義務です。譲渡した事業に対して、譲渡企業が競合するような事業を再度行い、譲受企業に不利益を与えることを避けることが目的となります。
会社法の規定により、事業譲渡を実施した会社は、競業避止義務を負うことになるので注意が必要です。ただし、買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることはできます。将来的に空調機器製造会社を再度手掛ける可能性があれば、買収側と交渉しましょう。
既存従業員の離職対策
M&Aにおいては、譲り受け企業・譲渡企業ともに既存従業員の離職に関して、細心の注意を払うことが必須です。特に空調機器製造会社のような人材の確保が困難な業界であれば、尚更注意を払いましょう。
M&Aでは譲り受け企業・譲渡企業ともに組織変動が生じるケースがほとんどです。組織内における経営方針・人員変更は、既存従業員の離職を促すきっかけになりかねません。実際にM&Aによって、経営者側が意図しない程に多くの人材が離職するケースは多いです。
既存従業員の離職を防ぐためには、M&Aにおける今後の方針をより簡潔に既存従業員に通達することが重要になります。専門家の意見も取り入れながら、既存従業員が離職しない対策を立てましょう。
空調機器製造会社のM&Aを成功させるためのポイント
空調機器製造会社におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。空調機器製造会社におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格をよく理解しておく
- 統合後のプロセス確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。
M&A戦略では、自社の分析（SWOT分析）や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収（売却）先選定や交渉を行なっていくことになります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか（売却・売却後まで視野に入れたもの）
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か（事業の一部または全部）
- いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却（買収）するか
- 買収（売却）において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか（買収側のみ）
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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相場価格をよく理解しておく
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
空調機器製造会社のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡：時価純資産額＋営業利益×2年～5年分
- 事業譲渡：時価事業純資産額＋事業利益×2年～5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。
また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
PMI（統合後プロセス）確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI（Post Merger Integration）の考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新経営体制の構築
- 経営ビジョン実現のための計画策定
- 両社協業のための体制構築・業務オペレーション
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。
空調機器製造会社のM&Aについてのまとめ
今回は空調機器製造会社におけるM&Aについて、空調機器製造会社の現状や特徴、市場動向やM&A事例を踏まえて解説しました。
空調機器製造会社市場は、成熟したマーケットであるものの、M&Aを実施することで市場競争力を高めたり、海外進出の足掛かりを築くことに繋がります。空調機器製造事業者にとってM&Aは非常に有効な戦略と言えるでしょう。
M&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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