マテリアルグループ株式会社は2026年10月14日、シンガポールのVero Marketing Services Pte. Ltd.(VMS社)の発行済株式80%を取得する基本合意書の締結を決議しました。発表時点ではデューデリジェンス(DD)と最終契約に向けた協議中で、株式譲渡の実行日は未定です。合意の発表と買収完了は区別して確認する必要があります。
取引の概要
| 項目 | 発表内容 |
|---|---|
| 買い手 | マテリアルグループ株式会社 |
| 対象 | Vero Marketing Services Pte. Ltd.および同社グループ |
| 取得予定割合 | 発行済株式の80% |
| 譲渡予定相手 | Studio T Inc.、Ny Mora氏 |
| 取得価額 | 株式分2,287百万円、アドバイザリー費用概算50百万円、合計概算2,337百万円 |
| 進捗 | 2026年10月14日に基本合意。DD中。最終契約は同年12月14日予定、株式譲渡実行日は未定 |
取得後はマテリアルグループが80%、Studio T Inc.が20%を保有する予定です。マテリアルグループは最終契約の条件に従い、残る20%も将来取得する予定としていますが、現時点で完全子会社化が完了したわけではありません。Veroの子会社9社のうち一部は連結子会社、一部は持分法適用関連会社となる見込みです。
Veroグループはタイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、シンガポール、マレーシアの6か国に拠点を持ち、200人超のコンサルタントを擁する独立系コミュニケーション・コンサルティング会社です。PR、インフルエンサーマーケティング、政府渉外を手がけています。マテリアルグループは国内顧客基盤とVeroの地域実行体制を組み合わせ、日系企業の進出支援やVero既存顧客へのサービス提供機会を広げる考えです。
取得価額と対象会社の業績
発表資料に記載された取得対価は、VMS社株式80%分が2,287百万円、アドバイザリー費用の概算が50百万円で、合計2,337百万円です。金額はVeroグループの正常化EBITDAや現預金・有利子負債などを踏まえた試算であり、DDや最終契約の協議により変わる可能性があります。確定した売買価格として扱うべきではありません。
対象会社から提供された2025年12月期の連結数値は、売上高2,379百万円、営業利益306百万円、純資産1,001百万円です。米ドル建ての数値を2026年10月13日時点の為替レートで円換算したもので、監査対象外と開示されています。Veroグループの決算期は12月で、マテリアルグループの決算期とは異なる点も、連結後の業績把握で確認事項になります。
この基本合意から読み取れること
今回の狙いは、海外拠点をゼロから構築するのではなく、現地の人員・顧客・運営基盤を持つ会社を通じて、東南アジアでの案件獲得とサービス提供を広げることにあります。一方、対象はシンガポールの一社だけでなく複数国の子会社を含むグループです。国ごとの法人関係や連結範囲、既存事業との顧客重複、経営人材の継続、為替・資金調達も、実行後の成果を左右する論点です。
開示時点ではDDを実施中で、取得実行はDD完了と最終契約締結などが前提です。業績への影響、連結への取り込み時期、のれんの金額も未確定です。したがって、合意発表だけから買収後の利益寄与や統合効果を断定することはできません。
海外企業の株式取得で確認したいポイント
- 合意の拘束力と前提条件: 基本合意、最終契約、クロージングの各段階と、DD・許認可などの条件を分ける。
- 取得対象の範囲: 親会社の株式だけでなく、子会社・持分法会社、重要契約、知的財産、債務や保証の範囲を法人単位で確認する。
- 価格調整: 財務数値の基準日、現預金・有利子負債、運転資本、為替換算、正常化利益の前提を確認し、概算価格と確定価格を混同しない。
- 経営の継続性: 創業者・主要人材の役割、少数株主との意思決定、残株取得の条件と時期を契約に落とし込む。
- 統合後の実行計画: 顧客紹介や共同営業を誰が担い、どのサービスをどの国で提供するか、責任者と進捗指標を決める。
株式譲渡を含むM&Aの手法や、各スキームで確認する事項はM&Aの種類とメリット・デメリットも参考になります。自社の買収・売却を検討している場合は、条件整理の段階からM&Aの相談窓口へご相談ください。


