この記事は、杏林製薬が2026年9月30日に最終契約を締結した後発医薬品事業の承継を、発表当時の事例として整理します。契約は締結済みですが、事業の組み替えは2027年3月31日、株式譲渡は2027年4月1日の予定です。10月12日時点では承継完了前です。
後発医薬品事業を分けてから共同出資会社へ移す
杏林製薬は、キョーリン リメディオが行う後発医薬品事業と、高岡・井波両工場の事業を、ダイト、Meiji Seika ファルマ、日本政策投資銀行(DBJ)が出資する株式会社医薬品共創機構へ承継する最終契約を締結しました。共創機構の出資比率は、ダイト49.1%、Meiji Seika ファルマ36.0%、DBJ14.9%の予定です。
移転は二段階の吸収分割と株式譲渡で構成されます。2027年3月31日に、高岡・井波工場を構成する指定資産・負債・契約上の地位などをキョーリン リメディオへ移す一方、同社のオーソライズド・ジェネリック事業(一部販売事業を除く)はキョーリン製薬グループ工場へ戻す予定です。その後、4月1日にキョーリン リメディオの発行済み株式すべてを共創機構へ譲渡します。
会社全体ではなく、残す事業を切り分ける設計
今回のポイントは、対象会社をそのまま譲渡するのではなく、対象会社内の事業と工場側の機能を取引前に組み替える点です。譲渡後も残す事業と移す事業を分けることで、売り手の新薬事業への集中と、買い手側の後発医薬品の供給体制づくりを両立させる構成です。
製造業の事業承継では、製品・工場だけで範囲を決められません。設備の所有者、製造販売の許可、製造委託・原材料・販売契約、品質記録、従業員の配置を対応づけ、移転対象と残存側の責任を契約書と運用表で一致させる必要があります。境界が曖昧なままでは、取引後に製造・出荷や品質対応を続けるための承認・データ・人員が片側に欠けるおそれがあります。
非公表の譲渡価額と実行前の確認事項
株式譲渡価額は守秘義務を理由に公表されていません。株式価値を推定したり、事業の規模から金額を補ったりすることはできません。また、杏林製薬の開示では、第一の吸収分割における割当内容も両社協議で決めるため未定とされています。
譲渡側・譲受側の経営者は、最終契約の締結と実行日までに必要な手続きを分けて管理しましょう。特に、会社分割契約、債務の承継方法、契約相手の同意、許認可・品質管理、従業員の雇用条件、供給継続の責任者を確認し、未完了項目を実行条件と引継ぎ計画にひも付けることが実務上の要点です。
自社の事業承継を検討するとき
本件のように株式譲渡の前に事業範囲を組み替える取引では、譲渡対象と譲渡後に残る事業を並べて整理することが交渉の土台になります。事業譲渡と株式譲渡の違いは、事業譲渡の仕組みと株式譲渡との違いで確認できます。自社の事業・株式の譲渡や買収を具体的に検討する場合は、M&A HACKへご相談ください。
出典
- 杏林製薬「(開示事項の経過)後発医薬品事業の承継に関するお知らせ」(2026年9月30日)
- 杏林製薬「後発医薬品事業の承継に関するお知らせ」(2026年9月30日)
- 日本M&Aセンター「後発医薬品事業の承継に関する案件情報」(案件発見元)


