「M&Aってどうやってすればいいの?」
「M&Aについて一から知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「M&A やり方」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、M&Aのやり方について分かりやすく簡潔に解説します。
またM&Aの意味やスキームについても詳しく解説するので、M&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
M&Aとは
M&Aとは、Mergers and Acquisitions(合併・買収)の略で、企業が他の企業と合併したり、買収したりする取引のことを指す単語です。M&Aでは、買収もしくは合併、提携のいずれかが実施されます。
M&Aにおける買収とは、 1つの企業が他の企業を買い取り支配権を得ることです。買収される企業は買収者によって支配され、経営が一元化されます。一方の合併とは、2つ以上の企業が統合して1つの新しい企業を形成することです。合併には、対等な立場で統合するケースや、特定の企業が他の企業を吸収する形で行われることもあります。
M&Aは企業が更なる成長を遂げることはもちろんのこと、撤退や廃業を見越して実施されるケースも多いです。M&Aにおけるゴールは企業によって異なるため、プロセスをしっかりと組んだうえでM&Aを実施することが重要になります。
M&Aにおける売却側の目的
M&Aでは、売却側と買収側の双方でそれぞれ異なった目的が存在します。M&Aの売却を行う企業における、よくある目的は以下の通りです。
- 資金調達・オーナーのEXIT
- 借入における個人保証の解除
- 後継者問題や人手不足の解消
それぞれ詳しく解説していきます。
資金調達・オーナーのEXIT
M&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。
- 残っている借入金の返済に充てる
- オーナー自身の引退後の生活資金とする
- 新規事業における資金源とする
一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。
借入における個人保証の解除
借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。業界・業種に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。
特に中小規模事業者の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。
M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。
後継者問題の解消
現代に生きる多くの企業が抱えているのが、後継者不在による問題です。実際に後継者が不在であるため、経営状態が悪くないにも関わらず、やむなく事業廃止に追い込まれる会社も少なくありません。
特に地方の中小規模もしくは個人経営の企業は後継者不在問題を抱えているケースが多いです。日本は大都市集中型の人口構造であることも起因して、地方の中小規模以下の会社には人が集まりにくいという特徴があります。
後継者不在を抱える企業にとって、M&Aによる売却は後継者不在問題を解決できるチャンスです。また大手企業とのM&Aによる取引であれば、優秀な人材が後継者となり、これまでより更に事業が拡大される可能性もあります。
M&Aにおける買収側の目的
M&Aをおこなうことで、買収側の企業は様々なメリットを得ることができます。M&Aにおける買収側のよくある目的は、以下の通りです。
- 新規事業への進出
- ノウハウと人材の承継
- 事業の拡大
それぞれ詳しく解説していきます。
新規事業への進出
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに早期進出が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
ノウハウと人材の承継
企業経営において事業成功のカギを握るのは、自社が持つ「ノウハウ」と「人材」です。これら2つが揃っている企業は、市場において高い競争力を得ることができます。競争が激化している現代の市場において、競争力の獲得は重要な要素でしょう。
もしM&Aによって企業の買収もしくは合併を検討しているのであれば、まずは買収先(合併先)企業が持つノウハウと人材に目を向けることが先決です。買収(合併)によって現在の自社が持たないノウハウや人材が手に入るか否かをチェックしましょう。
またM&Aによる買収に関しては、買収先が持つ市場規模の如何によって、取引額に大きな差が生じます。より巨大な商圏エリアを所有している企業ほど、高値で取引されるケースが多いです。
事業の拡大
M&Aにおいて買収側が得られる最大のメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。M&Aによって買収側の企業は、業界における規模・シェアの拡大を狙うことができます。
M&Aにおいては、顧客・取引先・特殊情報などの無形資産に加え、小売店舗や工場・人材などの有形資産を手に入れることも可能です。無形資産と有形資産の獲得は、事業拡大に直結する要素となります。
また現代の日本においては、大手企業の市場シェア率が高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小同士のM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を作ることにも繋がります。
M&のスキーム(手法)
M&Aでは、買収・合併・提携の種類によって、それぞれスキーム(手法)が存在します。目的に合わせてスキーム(手法)を選択することで、利益を最大化させることが可能です。
ここでは、買収・合併・提携のそれぞれのスキームについて詳細に解説します。これからM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
買収
買収とは、1つの企業が他の企業を買い取り、支配権を得ることです。買収される企業は買収者によって支配され、経営が一元化されます。
M&Aにおける買収の主なスキームは、「株式取得」「事業譲渡」「会社分割」の3種類です。それぞれのスキームについて詳しく解説していきます。
株式取得
株式取得とは、ある企業の株主が自分が所有する株式を、他の個人や法人に譲渡することです。M&Aにおいては、最も一般的なスキームのひとつでもあります。株式取得の主な目的は、以下の通りです。
- 資本間提携や支配権の移動
- 資金調達
- 株主の移動
株主取得は、特に企業の経営権に関連する場面で用いられやすいスキームです。株式取得によって3分の2以上の株式を取得すれば、反対する株主を「スクイーズアウト」により強制排除することもできます。
ただし株式取得では、対価として現金が必要であることに加えて、不要な資産や簿外債務・偶発債務などを引き継ぐリスクがあるので注意が必要です。M&Aのスキームとしては比較的簡単な手法ですが、実施には相応のリスクも伴います。
事業譲渡
事業譲渡とは、ある企業のすべての事業、あるいは一部の事業を買い手企業に譲渡するスキームです。事業譲渡では、事業そのものを譲渡するため、譲渡される対象には、通常、事業に関連する資産、負債、契約、従業員などが含まれます。事業譲渡の主な目的は、以下の通りです。
- 事業リスクの軽減
- 資金の調達
- 事業の集中と効率化
事業譲渡では、買い手側は特定の事業のみを引き継ぐことができるため、自社の事業成長に繋げやすいというメリットがあります。また株式取得や会社分割とは異なり、簿外債務などの不要な資産の承継を避けることが可能です。
ただし事業譲渡では、譲渡によって消費税が課されるなど税負担が大きくなります。また売り手企業は買い手企業の利益を保護するため、一定期間・範囲において譲渡した事業を行えない(競業避止義務)というデメリットも存在します。
会社分割
会社分割とは、ある企業のすべての事業または一部の事業を別会社に承継するスキームです。別会社が既存企業なら「吸収分割」、新設会社なら「新設分割」に分類されます。会社分割の主な目的は、以下の通りです。
- 事業の集中化と再編
- 経営の効率化と最適化
- 財務の健全化
会社分割では、一部の事業を承継する場合、買い手企業は関連のある企業だけを承継することができるため、シナジー効果を得やすいのがメリットです。同時に一部事業の承継により、売り手企業は事業のスリム化を図ることもできます。
ただし会社分割のスキームでは、買い手企業は、包括承継の仕組み上、会計帳簿に記載されていない簿外負債や、不要な資産なども引き継がなければなりません。また業種によっては、許認可の引継ぎができない場合もあるので注意が必要です。
合併
合併とは、複数の会社を1つの会社に統合するM&Aの手法です。合併は、複数の企業が互いに協力し、資産や負債を統合し、1つの企業として活動を開始することを目的としています。
合併の種類は「新設合併」と「吸収合併」の2つです。それぞれのスキームについて詳しく解説していきます。
新設合併
新設合併とは、合併対象となるすべての企業の権利や義務を、新しく設立した会社に引き継ぐスキームです。新設会社設立後は、対象となった企業は1社残らず消滅します。新設合併の主な目的は、以下の通りです。
- シナジー効果の最大化
- 経営戦略の統一
- 資本調達力の強化
新設合併では、合併対象企業が持つすべての権利義務を1社に集約させることができるため、合併によるシナジー効果を最大化させることが可能です。事業統合のスキームによって、ブランド力や資金調達力・開発力などのシナジー効果を得ることが出来るでしょう。
一方で、新設合併のスキームは、M&Aの実行までに時間とコストを要するため、スピード感がある取引を求める場合には不向きです。また新設合併では、吸収した企業の許認可を引き継ぐことができないため、許認可を取り直す必要があります。
吸収合併
吸収合併とは、既存の1社のみを存続させ、他の消滅企業が所有していた一切の権利義務を承継させるM&Aのスキームです。新設合併では、合併の対象企業は全て消滅しますが、吸収合併では1社のみ存続することになります。新設合併の主な目的は、以下の通りです。
- 規模の経済の実現
- 市場シェアの拡大
- 競争力の向上
吸収合併のスキームは、主に市場での規模や競争力を高める目的で行われることが一般的です。吸収合併によって、複数企業の機能がひとつの企業に集約されるため、高いシナジー効果を得ることができます。
ただし、吸収合併において、存続企業と消滅企業の取引先が重複している場合、トータルの収益・利益が減少するおそれがあるので注意が必要です。吸収合併のスキームで得られる権利内容をよく把握しておくことが重要になります。
提携
M&Aのスキームにおける提携とは、複数の会社が協力し合うことで、共通目的の達成を目指すM&Aの手法です。提携のスキームでは、企業が独自性を持ちながらも、互いに協力関係を結び、資源や能力を共有することを目的としています。
提携のスキームにおける種類は、主に「資本提携」と「合弁会社設立」の2種類です。それぞれのスキームについて詳しく解説していきます。
資本提携
資本提携とは、対象企業同士が出資を行い、株式を保有し合うことで、経済的・戦略的に協力する関係を結ぶことです。資本提携における主な目的には、以下のものが挙げられます。
- シナジー効果の発揮
- 共同戦略の立案と実行
- 資金調達の効率化
資本提携では、企業は外部から出資を受けることができるため、資金調達をより容易にすることが可能です。また資金だけでなく、技術力や開発力なども共有することができるため、高いシナジー効果を創出することができます。
ただし、資本提携は企業間同士で資本を共有することになるため、経営方針や戦略において提携先企業の意見や影響を受けやすくなるため注意が必要です。資金的・資源的優位性が得られるものの、経営方針の合致が困難となります。
合弁会社設立
合弁会社設立とは、2社以上の企業が協力し、新たな法人を設立するM&Aのスキームです。提携した企業が共同で出資し、その会社の経営権を分担して運営する形態になります。合弁会社設立における主な目的は、以下の通りです。
- 市場への新規参入
- リスク分散
- 規模の経済の実現
合弁会社設立は、互いの企業が出資をし合って新たな企業を創設するため、経営投資の目的が非常に大きいです。共同出資に近い形となるため、新規事業や市場への進出をリスク分散して行うことができます。
ただし、合弁企業を設立する際、提携する企業同士で目的や優先順位が異なることがあるため注意が必要です。特に、各企業が異なる市場戦略を持っていたり、異なる利益を追求している場合、利益相反が発生するリスクがあります。
M&Aのやり方
M&Aをこれから実施することを検討している人は、具体的な取引の流れが気になるはずです。そこで、ここでは、M&Aのやり方を、以下のフェーズ毎に解説していきます。
- 検討・準備
- 打診・交渉
- 最終契約
- 契約後
それぞれのフェーズに関して解説していくので、ぜひ参考にしてください。
検討・準備
M&Aにおける第一フェーズとして挙げられるのが、検討・準備のフェーズです。検討・準備のプロセスでは、M&A取引における成功に向けた基盤を築く役割を果たすことになります。検討・準備のフェーズでおこなう具体的な動きは、以下の通りです。
- 戦略的目標の明確化:企業の経営陣は、M&Aがどのように自社の戦略に適合するかを明確にし、その目的を達成するための方向性を決定する。
- ターゲット企業の選定:M&Aの目的に合致するターゲット企業を選定する。ターゲット企業は、規模や業界、地理的な位置、財務状況などを基に評価される。
- 財務状況の確認と評価:M&Aを実行するための資金調達方法(自己資本、借入、株式発行など)を決定する。ターゲット企業についても、財務諸表や過去の業績を詳細に分析し、買収後に予想されるシナジー効果やリスクを評価する。
- 法的・規制の確認:各国・地域の反トラスト法、競争法、外国投資規制などを確認し、M&Aが合法的に行えるかを評価する。
- デューデリジェンスの準備:ターゲット企業の詳細な調査(デューデリジェンス)を行う準備。財務、法務、税務、労務、契約などさまざまな側面の調査を行う。
- 組織の統合計画の策定:統合計画(PMI:Post-Merger Integration)を事前に策定する。組織構造の統合、人事の取り決め、文化の統合、システムの統合、業務の流れの調整などが含まれる。
- ステークホルダーとのコミュニケーション計画:M&Aに関するステークホルダー(従業員、株主、取引先、顧客など)への情報提供とコミュニケーション計画を立てる。
- リスク管理の検討:M&Aにおけるリスク(財務リスク、法的リスク、文化的リスクなど)を予測し、リスク管理策を検討する。
- プロジェクトチームの編成:M&Aに関わる社内外のメンバー(経営陣、財務部門、法務部門、外部アドバイザーなど)をまとめたプロジェクトチームを編成する。
検討・準備のフェーズは、M&A取引における基盤づくりです。検討・準備フェーズの検討が不十分であると取引が失敗に終わる可能性もあるため、より慎重に行うことも重要になります。
打診・交渉
M&Aにおける第2のフェーズとして、打診・交渉が挙げられます。打診・交渉とは、その名の通り、第一フェーズで選定した取引先と具体的な交渉を行うことです。M&Aにおける打診・交渉のフェーズでは以下のようなことを行います。
- 対象企業へのアプローチ:直接的な接触(CEOや役員への手紙、電話、メールなど)や間接的な方法(仲介者やアドバイザーを通じて)で行われる。
- 秘密保持契約書の締結:渉が進展し、双方が情報を交換する段階になる前に、秘密保持契約(NDA)が結ばれる。
- 基本条件の合意:主に取引の条件(価格、支払い方法、スケジュール、役員体制、契約内容など)に関して合意を得る。
- 契約書の素案作成:交渉の終息を迎え、基本的な取引条件について合意が得られると、次に具体的な契約書の草案が作成される。
打診・交渉のフェーズでは、より具体的なM&A取引の内容に関して協議されます。M&A取引の全容を決定する非常に重要なフェーズです。
最終契約
M&Aにおける「最終契約」とは、買収プロセスの最後の段階で、両者が合意した条件に基づいて交わされる正式な法的契約です。この契約は、M&Aの取引を正式に成立させ、実行に移すために不可欠となります。最終契約のフェーズでは具体的に以下のことが行われます。
- 売主(ターゲット企業)と買主(買収側)の明記: 両者の法的名称、所在地、その他の基本情報を契約書に記載する。
- 株式の売買(または事業の譲渡): 売買対象となる株式や資産、負債を具体的に明記する。
- 価格設定: 取引の総額(価格)を明記する。価格は交渉を通じて決定され、場合によっては、金額が調整されるため、価格の調整方法(例えば、財務状況に基づく調整)を記載することがある。
- 支払い方法: 支払い方法(現金、一部株式での支払い、負債の引き受けなど)や支払い時期、分割払いの有無についても詳細に記載する。
最終契約のフェーズでは、M&A取引における最終決定事項が明記されます。本フェーズではより正確に両者間の取引内容が網羅されることが必須です。
契約後
M&Aの取引は、株式売買や企業間合併が実施されて終わりではありません。契約後に臨んだ結果を得ることがM&Aの最終ゴールとも言えます。M&A契約後のアフターケアでは、以下のようなことを行います。
- 統合計画の立案と実行: 組織構造、業務プロセス、ITシステム、ブランド、企業文化などの統合計画を立案し、実行する。
- 組織の再編成: 組織構造の変更や役員の再配置を行う。特に経営層や重要ポジションでの調整が求められることがある。
- 業務プロセスの統一: 販売戦略や製品開発、マーケティング活動などを統合し、重複や無駄を削減するためのプロセス改革を進める。
- ITシステムの統合: 会計システムや顧客管理システム、サプライチェーンの管理システムなどを統合し、効率化を図る。
第一フェーズで検討した目標や目的を実際に得ることができるかは、契約後のアフターケアにかかっています。契約後のアフターケアの仕方次第で明暗が分かれるといっても、過言ではありません。
M&Aを成功させるためのポイント
M&Aを成功させるためには、いくつかのポイントを抑えておくことが重要です。M&Aを成功させるためのポイントには、以下のものがあります。
- M&A戦略の立案
- 相場価格をよく理解しておく
- 統合後のプロセス確立
それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。
M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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相場価格をよく理解しておく
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
M&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。
また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
統合後のプロセス確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新経営体制の構築
- 経営ビジョン実現のための計画策定
- 両社協業のための体制構築・業務オペレーション
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。
業界別・M&Aの成功事例
ここでは、M&Aが特に盛んにおこなわれている以下の業界におけるM&Aの成功事例を紹介していきます。
- IT・テクノロジー業界
- 金融業界
- 不動産業界
- 小売業界
- 製造業界
それぞれの業界における成功事例を紹介していくので、ぜひ参考にしてください。
IT・テクロノジー業界
IT・テクノロジー業界は日本における有数の成長市場です。そのため、IT・テクノロジー業界では盛んにM&Aが実施されています。
野村総合研究所とASG GRoup LimitedによるM&A
2016年12月に、野村総合研究所がASG Group Limited(オーストラリア)の全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引における取得金額は、269億2,500万円となっています。
譲り受け企業である「野村総合研究所」は、顧客企業の課題発見・戦略立案を行うコンサルティング業に加え、システム開発・運用までを手掛ける日本有数のITコンサルティング・システム開発会社です。
一方の「SG Group Limited」はオーストラリアのパースに拠点を置き、クラウド型の統合基幹業務システムや経営データ分析システムのマネージドサービスを展開している企業になります。
本件M&Aは、野村総合研究所がオーストラリアにおける顧客や事業基盤を獲得することが目的です。ASG Group Limitedも野村総合研究所の財政基盤や各種製品・ソリューションの活用による事業成長に期待しています。
エイム・ソフトとケア・ダイナミクスによるM&A
2020年5月に、エイム・ソフトがケア・ダイナミクスの全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引における取得金額は、7,200万円となっています。
譲り受け企業である「エイム・ソフト(現:クシムソフト)」は、高度IT人材の育成・派遣、システム開発、セキュリティコンサルティングなどを手掛ける企業です。一方の「ケア・ダイナミクス」は、介護事業者向けASPシステムの提供、介護ロボット・介護ICTシステム導入支援などを手掛けています。
本件M&Aは、利益率の高いシステム受託開発案件の獲得や非稼働エンジニアの有効活用などにより経営安定化を図ることが狙いです。システム開発企業と介護ICT企業によるM&Aの事例となります。
ネクスグループ、子会社で介護ロボット事業のケア・ダイナミクスの全保有株式をシステム開発事業のエイム・ソフトに譲渡
金融業界
銀行や保険会社、証券会社などの金融業界もM&Aが盛んです。規模の経済を目的としたM&Aが多く実施されています。
三菱UFJ銀行とPT Bank Danamon Indonesia,Tbk.によるM&A
2019年4月に、三菱UFJ銀行が、インドネシアのPT Bank Danamon Indonesia,Tbk.(バンクダナモン)の発行済株式総数の54.0%を追加取得し、同社株式の94%を取得することにより子会社化したM&Aの事例です。本取引による取得価額は約3,970億円となっています。
譲り受け企業である「三菱UFJ銀行」は、国内に565、海外に110の店舗を有する国内の大手銀行です。一方の譲渡企業である「PT Bank Danamon Indonesia,Tbk.」は、インドネシアにおける大手商業銀行になります。
本件M&Aは、ともに銀行業を手掛ける企業同士の取引事例です。本取引は、譲り受け企業である三菱UFJ銀行が、東南アジアでのビジネスプラットフォーム構築に向けた戦略出資を目的としたものとなっています。
インドネシア大手商業銀行バンクダナモンへの戦略出資について(第三段階)
Origamiと信金中央銀行によるM&A
2018年9月に、株式会社Origamiが信金中央銀行との間に、業務提携をおこなったM&Aの事例です。本取引は業務提携のスキームが用いられましたが、資本の移動は実施されていません。
「株式会社Origami」は、2016年から全国のコンビニやファストフード店など、幅広い業種に対してスマホ決済サービス「Origami Pay」を提供していた会社です。一方の「信金中央銀行」は信用金庫のセントラルバンクとして、全国261の信用金庫と連携し、地域社会の発展に注力する会社になります。
本件M&Aは、電子マネー事業運営会社と銀行による取引事例です。本取引により、Origamiは、地域の小規模小売や飲食、サービス業へのキャッシュレス化を促進する目的で、地域顧客との強い関係性を持つ信金中央銀行との業務提携を行いました。
不動産業界
不動産業界は市場競争が激しく、大企業のみならず、中小規模企業もM&Aに積極的な業界です。
ハウスコムによる宅都とのM&A
2020年12月に「ハウスコム」と「宅都ホールディングス」にて業務提携契約が成されました。その後、「宅都」の不動産仲介以外の事業を宅都ホールディングスのグループ会社に会社分割により譲渡。さらに2021年3月にハウスコムが宅都の全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。
譲渡企業である「宅都」は「宅都ホールディングス」の子会社で、大阪市を中心に関西圏にて不動産仲介・売買・賃貸事業などを展開している企業です。一方の譲り受け企業である「ハウスコム」は全国188店舗にて不動産賃貸仲介業の展開、及び不動産売買仲介・リフォーム事業を展開しています。
ハウスコムの本M&Aの狙いは、関西圏への進出とシェア拡大、さらに不動産仲介業事業の競争力強化です。さらに宅都ホールディングスは不動産テック事業も展開していることから、次世代を見据えた不動産テック分野の強化を目的としています。
ハウスコム株式会社と株式会社宅都ホールディングスの業務提携並びに子会社である株式会社宅都の株式譲渡のお知らせ
ハウスドゥによる小山建設グループ3社のM&A
2019年8月、「ハウスドゥ」は、「小山建設」の全株式・「小山不動産」株式の55%・「草加松原住建」の全株式を取得し、3社を完全子会社化しました。本M&Aによる取得対価は26億5,000万円です。
「ハウスドゥ」は、全国に1,000店舗の不動産仲介フランチャイズチェーンを展開、さらに不動産売買・リースバック・リフォーム事業を展開しています。譲渡企業である「小山建設」「小山不動産」「草加松建設」の3社は、埼玉県草加市を拠点とし、小山建設を中核とするグループにて、不動産仲介業全般を展開しています。
このM&Aは、後継者問題・競争率激化などを抱える不動産業界で、自社とより親和性の高い企業同士が合併し、基盤強化を果たすことが出来た事例です。ハウスドゥによる事業承継プログラムの一環としてM&Aが実行されています。
ハウスドゥ(3457)、小山建設グループの全株式取得、子会社化
小売業界
スーパーマーケットやコンビニ、ドラッグストアなどの小売業界もM&Aが盛んです。
マツモトキヨシホールディングスとココカラファインによるM&A
2021年2月にマツモトキヨシホールディングスとココカラファインの間で経営統合契約が締結されたM&Aの事例です。本取引は、株式交換や会社分割などのスキームを用い、数段階のプロセスを経て実行されました。
「マツモトキヨシホールディングス」は、全国に調剤併設型ドラッグストアなど約1,750店舗を展開するマツモトキヨシグループの持株会社です。一方の「ココカラファイン」は調剤薬局・ドラッグストアを全国に約1440店舗を展開する企業になります。
本件M&Aは、加速するドラッグストア業界の市場競争激化に対する対抗戦略です。大手調剤薬局・ドラッグストア企業同士が合併することで、ヘルスビューティー分野での圧倒的なプレゼンスを獲得し、更なる事業基盤強化を図っています。
株式会社マツモトキヨシホールディングスとの経営統合に関するご案内
クスリのアオキホールディングとスーパーマルモによるM&A
2021年6月に、アオキホールディングスがスーパーマルモを分割会社とする会社分割により、アオキホールディングスの子会社であるナルックスにスーパーマルモのスーパーマーケット事業等に関する権利義務等を承継させる吸収分割契約を締結することを決定したM&Aの事例です。
譲り受け企業である「ナルックス」は、アオキホールディングスの子会社で、石川県金沢市にてスーパーマーケット事業を展開する企業です。一方の譲渡企業である「スーパーマルモ」は、スーパーマーケット事業および「うまいもん処」の看板にて飲食事業を手掛ける企業になります。
本件M&Aは、大手ドラッグストア企業とスーパーマーケット運営企業による取引事例です。譲り受け企業であるアオキホールディングスは、スーパーマルモの食品スーパー事業等を承継することにより、食品スーパーの持つ新鮮な食材の品揃えとドラッグストアの持つヘルス&ビューティーや日用品の品揃え、また処方箋を取り扱う調剤薬局を組み合わせることを狙いとしています。
当社子会社の会社分割(吸収分割)による株式会社スーパーマルモの一部事業承継に関するお知らせ
建築・建設業界
事業者数が多く、市場競争の激しい建築・建設業界もM&Aが盛んな業界のひとつです。
ヤマタホールディングとコナン住建によるM&A
2021年7月に、ヤマタホールディングがコナン住建の所有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「ヤマタホールディングス」は、注文住宅・不動産売買・カフェレンタルスペースの運営・アパレル雑貨販売などの事業を展開している企業です。一方の譲渡企業である「コナン住建」は、建築資材販売や内装工事などの直接施工などを行っている企業になります。
本件M&Aは、建築関連会社と内装・リフォーム会社による取引事例です。譲り受け企業であるヤマタホールディングは、業多角化と顧客生涯価値(LTV)の向上を図る戦略の一環としてリフォーム事業の強化を目指しており、建築資材の仕入れ力強化と施工力の確保を目的としてコナン住建の買収を行いました。
高松建設とタミツプランニングによるM&A
2019年5月に、高松建設がタミツプランニングの所有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられ、取得価額は約14億円となっています。
譲り受け企業である「高松建設」は、土地活用提案事業をベースとし、賃貸マンションや工場・物流施設・ホテル・医療施設などの建設を請け負っている企業です。一方の譲渡企業である「タミツプランニング」は、横浜エリアを中心に注文住宅とリフォームを手がけ、不動産開発事業やメガソーラー事業にも進出していた企業で、2016年からRIZAPグループの子会社となっていました。
本件M&Aは、総合建設会社と工務店による取引事例です。譲り受け企業である高松建設は、2018年に買収した不動産会社ミブコーポレーションとの連携も図りながら戸建て住宅事業を本格的に展開することを目的として本取引を実施しました。
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M&Aにおける注意点
M&Aは当然ながらリスクも伴う行為であるため、より慎重に行うことが大切です。ここでは、M&Aにおける注意点を解説していきます。M&Aにおける注意点は、以下の通りです。
- M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
- 避止義務に関して
- 事業許可や人材の引継ぎ
それぞれ詳しく解説していきます。
M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
M&Aでは、買い手と売り手の情報格差(買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富)があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件(買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう)という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
避止義務に関して
M&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。
M&Aにおける競業避止義務とは、M&Aの成約後に譲渡企業に課される義務です。譲渡した事業に対して、譲渡企業が競合するような事業を再度行い、譲受企業に不利益を与えることを避けることが目的となります。
会社法の規定により、事業譲渡を実施した会社は、競業避止義務を負うことになるので注意が必要です。ただし、買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることはできます。将来的に同じ事業を再度手掛ける可能性があれば、買収側と交渉しましょう。
事業許可や人材の引継ぎ
事業運営行ううえで重要なのが、事業許可(許認可)です。事業許可の承認なしでの事業運営は法律で禁止されており、事業許可無しでの運営は罰則を受けることになります。
もし事業譲渡をする際に買収側の企業が許可を有していなければ、事業を営むことは不可能です。ただし、株式譲渡の場合は事業許可を引き継げるためM&A後も継続して事業を行えます。
許可を取得している同業他社と事業譲渡を実施すれば、事業の売却がスムーズに進みます。なお、買い手が許可を持っていれば新しく許可を申請する必要はありませんが、法人の名称など変更にかかわる届出は必要です。
M&Aのやり方についてのまとめ
今回は、M&Aのやり方やスキーム、意味などについて解説しました。
M&Aは経営戦略として非常に有効な手段であり、実際にM&Aを実施することによって、大きく事業を発展させたり、経営を立ち直らせた企業は多く存在します。
しかしM&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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