旅行会社・旅行代理店のM&A・事業承継の全知識！売却相場・事例・成功ポイントを徹底解説

「旅行会社・旅行代理店業界のM&A・事業承継の成功事例を知りたい」
「旅行会社・旅行代理店業界のM&A・事業承継の成功ポイントは？」

この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。

実際に現状「旅行会社 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。

そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、旅行会社・旅行代理店のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。

旅行会社・旅行代理店の売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、旅行業界のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。

旅行会社・旅行代理店とは

このセクションでは、旅行会社・旅行代理店の役割から始め、旅行会社・旅行代理店の種類や収益構造などについて解説していきます。

旅行会社・旅行代理店の役割

旅行会社・旅行代理店は、旅行者と運輸機関や宿泊施設などのサービス提供者の間に立ち、旅行に関する情報提供やサービスの手配を行う重要な役割を担っています。

旅行者のニーズに合わせて最適な旅行プランを提案し、交通手段の予約、宿泊先の手配、現地での活動の計画など、旅行に関するあらゆる面でサポートを提供します。

このような旅行会社・旅行代理店の働きにより、旅行者は安心かつスムーズに旅行を楽しむことができるのです。

旅行会社・旅行代理店の種類

旅行会社・旅行代理店は、以下のように分類することができます。

また、取り扱う旅行商品の種類によって、以下のような旅行会社・旅行代理店があります。

これらの旅行会社・旅行代理店は、それぞれの特徴を活かし、旅行者のニーズに合わせたサービスを提供しています。

旅行会社・旅行代理店の収益構造

旅行会社・旅行代理店の主な収益源は、旅行商品の販売手数料です。運輸機関や宿泊施設などのサービス提供者から、予約・手配に対する手数料を受け取ることで収益を得ています。

また、自社で企画した旅行商品を販売する場合は、商品の販売価格と仕入れ価格の差額が収益となります。

さらに、旅行者向けの各種保険の販売や、旅行関連グッズの販売なども収益源の一部となっています。旅行会社・旅行代理店は、これらの収益を組み合わせることで事業を成り立たせているのです。

旅行会社・旅行代理店業界の市場動向と市場規模

M&Aにおいて業界の現状とこれからを理解しておくことは非常に重要です。そこで、ここでは、旅行会社・旅行代理店業の動向と今後について解説していきます。ぜひ参考にしてください。

旅行会社・旅行代理店業界が持つ課題

旅行会社・旅行代理店業界は、以下のような課題を抱えています。

1. デジタル化の進展による業界の変革
   • オンライン旅行予約サイトの普及で、旅行者が直接サービス提供者と取引するケースが増加
   • 従来の旅行会社・旅行代理店の役割が変化しつつある
2. 旅行者ニーズの多様化
   • 画一的な旅行商品では満足度を得られにくくなっている
   • 個々の旅行者のニーズに合わせたカスタマイズが求められる
3. 付加価値の高いサービスの提供
   • 単なる予約代行だけでなく、専門性を活かしたアドバイスやサポートが必要
   • 現地での体験や、特別なアクティビティなどの提案が求められる
4. 専門性の追求
   • 特定の分野や地域に特化した知識と経験が必要
   • 専門性を活かした差別化が求められる
5. 新たな価値創造
   • 従来のビジネスモデルに捉われない発想が必要
   • テクノロジーを活用した革新的なサービスの開発が求められる

こうした課題に対応するためには、旅行会社・旅行代理店業界は、変化に適応し、新たな価値を創造していく必要があります。

コロナ禍による影響

2020年に世界的に拡大した新型コロナウイルス感染症（COVID-19）は、旅行業界に甚大な影響を及ぼしました。

各国での渡航制限や外出自粛の要請により、旅行需要が大幅に減少し、多くの旅行会社・旅行代理店が売上高の大幅な減少に見舞われています。

また、感染拡大防止のための衛生管理の徹底や、キャンセル対応など、これまでにない対応が求められることとなりました。

コロナ禍は、旅行会社・旅行代理店業界に大きな打撃を与えると同時に、業界のあり方そのものを見直す契機ともなっています。

旅行会社の市場動向と競合状況

旅行業界は、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の影響から徐々に回復しつつあります。観光庁の主要旅行会社の総取扱高（速報）によると、2023年10～12月期の総取扱高累計は9,767億円で、コロナ前の2019年同期と比べ23.1％減少しました。しかし、2023年7～9月期の減少率は30.3％で、前期に比べて7ポイント以上縮小しており、回復傾向が見られます。

2023年10～12月期の旅行種類別取扱高は、国内旅行が10.5％減、外国人旅行が15.1％減、海外旅行が42.4％減と、国内旅行の回復が先行しています。2024年の月別総取扱額（速報）は、1月が2,236億円でコロナ前比30.6％減、2月が2,867億円で同21.9％減でした。2月の旅行種類別では、国内旅行は12.3％減、海外旅行は34.2％減、外国人旅行は21.4％減となっています。

JTBは、2024年のゴールデンウィークの国内旅行者数が前年比1％増になると予測しています。物価高の影響はあるものの、旅行需要は着実に回復しつつあります。

旅行会社の競合状況については、日本経済新聞社の「サービス業調査」（2021年8月～2022年7月決算期対象）によると、取扱高ランキングは、1位がJTB、2位は日本旅行、以下、東武トップツアーズ、阪急交通社の順となっています。前回調査で2位のHISは6位に順位を下げました。

JTBは、体験型のアドベンチャーツーリズムを拡充し、訪日客向けに約20種のプランを用意しています。2023年3月期（連結）の売上高は9,779億7,700万円で前期比67.9％増、営業利益は336億3,600万円（前期は48億8,000万円の赤字）と業績を大きく回復させました。2023年4～9月期の売上高は5,100億6,000万円で前年同期比32.1％増、営業利益は87億2,300万円（前年同期は46億5,800万円の赤字）と、同期間として4年ぶりに黒字となっています。

旅行業界は、国内旅行を中心に回復傾向にありますが、海外旅行はまだコロナ前の水準には届いていません。各社とも、国内旅行の需要喚起と、海外旅行の復活に向けた取り組みを進めています。

参考：旅行会社業界 市場規模･動向や企業情報 | NIKKEI COMPASS

業界再編の必要性

コロナ禍で露呈した旅行会社・旅行代理店業界の脆弱性を克服し、持続的な成長を実現するためには、業界の再編が必要だと指摘されています。

事業規模の拡大によるスケールメリットの追求や、異業種との連携による新たな価値の創出など、単独での対応が難しい課題に対しては、M&Aを含めた業界再編が有効な手段となり得ます。

また、再編を通じて、経営資源の最適化や経営効率の改善を図ることも可能です。旅行会社・旅行代理店業界は、再編を通じて、より強固な経営基盤を構築していくことが求められています。

旅行会社・旅行代理店業の動向と今後

旅行会社・旅行代理店業界の動向と今後について解説します。これから旅行会社・旅行代理店業のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。

デジタル化の推進

旅行会社・旅行代理店業界は、デジタル技術の活用を加速させています。オンライン予約システムの導入や、AIを活用した旅行提案など、デジタル化による利便性の向上と業務効率化が進められています。また、VRやARなどの技術を活用した旅行体験の提供も見られるようになりました。

デジタル化の推進は、旅行者の利便性向上につながるだけでなく、旅行会社・旅行代理店の競争力強化にも寄与すると期待されています。今後も、デジタル技術の活用は、旅行業界の重要なテーマであり続けるでしょう。

新しい旅行スタイルの登場

旅行者のニーズが多様化する中で、新しい旅行スタイルが登場しています。例えば、「ワーケーション」は、仕事（ワーク）と休暇（バケーション）を組み合わせた旅行スタイルで、リモートワークの普及とともに注目を集めています。

また、「マイクロツーリズム」は、地元や近隣地域での短期間の旅行を指す言葉で、コロナ禍で見直された旅行スタイルの一つです。

旅行会社・旅行代理店は、こうした新しい旅行スタイルに対応した商品やサービスの開発が求められています。旅行者のニーズを的確に捉え、柔軟に対応していくことが、競争力維持につながるでしょう。

サステナビリティと旅行業界

持続可能な社会の実現に向けて、旅行業界でもサステナビリティへの取り組みが強化されています。

環境負荷の少ない交通手段の利用促進や、地域社会との共生を重視した旅行商品の開発など、様々な取り組みが見られます。また、責任ある観光（レスポンシブル・ツーリズム）の考え方も浸透しつつあります。

旅行会社・旅行代理店は、サステナビリティへの取り組みを通じて、社会的責任を果たすとともに、旅行者の共感を得ることができます。サステナビリティは、旅行業界の長期的な成長にとって欠かせない視点となっています。

ポストコロナ時代の旅行需要

新型コロナウイルス感染症の収束後、旅行需要は徐々に回復していくと予想されています。一方で、旅行者の意識や行動には変化が見られるでしょう。

例えば、衛生管理や感染症対策に対する意識の高まりから、それらを重視した旅行商品が求められるようになります。また、オーバーツーリズムの問題が顕在化したことで、混雑を避けた旅行先や、地域との交流を重視した旅行スタイルにも注目が集まるかもしれません。

旅行会社・旅行代理店は、ポストコロナ時代の旅行需要を的確に捉え、それに対応した商品やサービスを提供していくことが求められます。

旅行会社・旅行代理店業界のM&Aの動向

旅行会社・旅行代理店業界におけるM&Aの動向について解説します。これから旅行会社・旅行代理店のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。

旅行会社・旅行代理店業界におけるM&Aの目的

旅行会社・旅行代理店業界では、近年M&Aが活発化しています。M&Aの主な目的は、事業規模の拡大と競争力の強化です。

事業規模を拡大することで、スケールメリットを活かした効率的な経営が可能となります。また、競合他社を買収することで、市場シェアの拡大や、新たな事業領域への進出が可能となります。

さらに、M&Aを通じて、優秀な人材やノウハウを獲得することも重要な目的の一つです。旅行会社・旅行代理店業界では、M&Aが成長戦略の有力な選択肢となっています。

最近のM&Aの事例

近年、旅行業界ではM&Aが活発化しています。具体的な事例をいくつか紹介します。

1. 2023年4月：エスクリがAZITOの旅行事業を買収
   • ブライダル事業と旅行事業の融合を図る
2. 2023年7月：KNT-CTホールディングスがコスモポリタン・クリエイティブ・ラボを完全子会社化
   • 紙媒体の品質向上とデジタル化を推進
3. 2024年2月：エイチ・アイ・エスがデザイン アンド プラスを連結子会社化
   • 広告業務の効率化と内製化を進める

これらのM&Aを通じて、各社は自社の強みを活かしつつ、新たな事業領域の開拓や業務効率の改善を図っています。今後も、旅行業界ではM&Aを通じた事業拡大と効率化の動きが継続すると予想されます。

M&Aのトレンドと今後の予測

旅行会社・旅行代理店業界のM&Aでは、規模の拡大を目的とした同業者間の買収に加え、オンライン事業者による実店舗事業者の買収や、異業種からの参入など、多様化が進んでいます。

また、コロナ禍で経営環境が悪化したことで、業界再編の動きが加速すると予想されます。今後は、デジタル化や新しい旅行スタイルへの対応力を持つ企業が、M&Aの主要なプレーヤーになると考えられます。

さらに、海外企業による日本市場への参入も予想されます。旅行会社・旅行代理店業界は、M&Aを通じて、競争力の強化と事業基盤の拡大を進めていくことが求められています。

旅行会社・旅行代理店のM&Aをするメリット

旅行会社・旅行代理店のM&Aにおいてのメリットを売却側・買収側の両方から解説します。メリットを元にして旅行会社・旅行代理店のM&Aを検討してください。

売却側のメリット

旅行会社・旅行代理店業界における売却側のメリットは、以下の通りです。

• 経営資源の最適化
• 資金調達の迅速化
• 事業拡大の促進
• 競争力の強化
• 事業リスクの分散

それぞれ詳しく解説していきます。

経営資源の最適化

旅行会社・旅行代理店を売却することで、経営資源の最適化を図ることができます。事業の一部を売却することで、経営資源を成長分野に集中投資することが可能となり、効率的な事業運営につながります。

また、非中核事業を売却することで、経営の効率化を進めることもできるでしょう。経営資源の最適化は、売却側企業の競争力強化と、持続的な成長の実現に寄与します。

資金調達の迅速化

M&Aによる事業売却は、資金調達の手段としても有効です。事業売却によって得られた資金を、成長投資や財務体質の改善に活用することができます。

特に、株式市場からの資金調達が難しい非上場企業にとって、M&Aは重要な資金調達手段となります。また、事業売却による資金調達は、銀行借入などに比べて迅速に行うことができるため、機動的な経営判断が可能となります。

事業拡大の促進

事業売却によって得られた資金や経営資源を、新たな事業領域への進出に活用することで、事業拡大を促進することができます。

例えば、旅行業界における新たなビジネスモデルへの参入や、海外市場への展開などが考えられます。事業売却によって得られた資金や経営資源を活用することで、これまで以上のスピードと規模で事業拡大を進めることが可能となるでしょう。

競争力の強化

事業売却を通じて、競争力の強化を図ることができます。事業売却先との提携により、互いの強みを活かした事業展開が可能となります。

例えば、オンライン事業に強みを持つ企業と、実店舗事業に強みを持つ企業が提携することで、オンラインと実店舗の融合による新たな価値創造が期待できます。また、事業売却先のブランド力やノウハウを活用することで、自社の競争力を高めることもできるでしょう。

事業リスクの分散

特定の事業への依存度が高い企業にとって、事業売却はリスク分散の手段となります。事業売却によって、特定の事業に関するリスクを軽減することができます。

例えば、自然災害や感染症の影響を受けやすい事業を売却することで、リスクの分散を図ることができるでしょう。また、事業売却によって得られた資金を、新たな事業領域に投資することで、事業ポートフォリオのバランスを改善することも可能です。

買収側のメリット

旅行会社・旅行代理店業界における買収側のメリットは、以下の通りです。

• 市場シェアの拡大
• 新規顧客の獲得
• サービスラインの多様化
• ブランド力の向上
• 経済規模の拡大

それぞれ詳しく解説していきます。

市場シェアの拡大

買収により、市場シェアを拡大することができます。競合他社を買収することで、自社の市場シェアを高めることが可能となります。

市場シェアの拡大は、スケールメリットの追求につながり、効率的な事業運営を実現することができます。また、市場シェア拡大による交渉力の向上は、仕入れコストの削減などにも寄与するでしょう。

新規顧客の獲得

買収先企業の顧客基盤を獲得することで、新規顧客の開拓が可能となります。特に、自社にない顧客セグメントを持つ企業を買収することで、効果的に顧客基盤を拡大することができます。

新規顧客の獲得は、収益拡大につながるだけでなく、事業の安定性を高めることにも寄与します。

サービスラインの多様化

買収により、自社にないサービスラインを獲得することができます。例えば、法人向け旅行事業に強みを持つ企業と、個人向け旅行事業に強みを持つ企業が、互いの事業を買収することで、サービスラインの多様化を図ることができます。

サービスラインの多様化は、収益源の分散につながり、事業の安定性を高めることができるでしょう。

ブランド力の向上

買収先企業のブランド力を活用することで、自社のブランド力を高めることができます。特に、認知度の高いブランドを持つ企業を買収することで、自社の知名度や信頼性を効果的に高めることが可能となります。

ブランド力の向上は、顧客獲得や販売価格の向上などにつながり、収益拡大に寄与するでしょう。

経済規模の拡大

買収により、事業規模を拡大することで、経済規模の拡大を図ることができます。経済規模の拡大は、スケールメリットの追求につながり、効率的な事業運営を可能にします。

また、経済規模の拡大によって、投資余力の向上や、人材獲得力の強化なども期待できます。経済規模の拡大は、企業の成長と競争力強化に不可欠な要素と言えるでしょう。

旅行会社・旅行代理店のM&Aの注意点

旅行会社・旅行代理店のM&Aを行う際の注意点を解説します。旅行会社・旅行代理店のM&Aを行う際の注意点は、以下の通りです。

デューデリジェンスの重要性

M&Aを成功させるためには、デューデリジェンスが非常に重要です。財務状況や法的リスクだけでなく、事業の将来性や競争環境なども詳細に調査する必要があります。

特に、旅行業界特有の商品構成や販売チャネル、顧客基盤などは、慎重に評価することが求められます。デューデリジェンスを徹底することで、買収後のリスクを最小限に抑えることができるでしょう。

企業文化の違いへの配慮

M&Aを行う際には、企業文化の違いにも十分な配慮が必要です。買収先企業との企業文化の違いが大きい場合、統合後の組織運営に支障をきたす可能性があります。

特に、旅行業界では、顧客サービスや従業員の価値観が重要な要素となるため、企業文化の違いには細心の注意を払う必要があります。買収前から、両社の企業文化を十分に理解し、統合後の文化形成に向けた準備を進めることが重要です。

統合後の組織体制の構築

M&Aを成功させるためには、統合後の組織体制の構築が不可欠です。買収先企業との事業統合や、人事制度の統一など、様々な課題に取り組む必要があります。

特に、旅行業界では、顧客対応や商品販売の仕組みが重要なため、円滑な統合が求められます。統合後の組織体制の構築に向けて、早期からプロジェクトチームを立ち上げ、綿密な計画を立てることが重要です。

旅行会社・旅行代理店におけるM&Aを成功させるためのポイント

旅行会社・旅行代理店におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。旅行会社・旅行代理店におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。

• M&A戦略の立案
• 相場価格の把握
• PMI（統合後プロセス）の確立

それぞれ詳しく解説していきます。

M&A戦略の立案

M&Aを成功させるためには、明確なM&A戦略の立案が不可欠です。自社の強みと弱み、競争環境などを踏まえた上で、M&Aの目的や対象企業の選定基準を明確にする必要があります。

また、M&A実行後の事業計画や統合プロセスについても、詳細に検討しておくことが重要です。M&A戦略の立案に当たっては、経営陣の強いリーダーシップと、社内外の専門家の知見を活用することが求められます。

相場価格をよく理解しておく

M&Aを行う際には、買収対象企業の適正な価格を見極めることが重要です。業界の相場価格を十分に理解した上で、買収対象企業の価値を適切に評価する必要があります。旅行業界では、顧客基盤や販売チャネル、ブランド力などが重要な評価要素となります。

旅行会社・旅行代理店のM&A相場は、買収される企業の規模によって大きく異なります。旅行会社・旅行代理店のM&Aの場合、取得価格が1億円を超えることは珍しくありません。

ただし、これらの数字はあくまで目安であり、個々の企業の状況によって大きく変動します。例えば、独自の強みを持つ企業や、高い成長性が見込まれる企業の場合、相場よりも高い価格で取引される可能性があります。

M&Aの相場価格を理解するためには、業界動向や競合企業の状況など、幅広い情報収集が必要です。自社の強みや目的に合わせて、適切な買収対象を見極め、適正な価格で取引を行うことが重要です。必要に応じて、M&Aアドバイザーなどの専門家の助言を求めることも検討すべきでしょう。

PMI（統合後プロセス）の確立

PMIの確立は、M&Aを成功に導く上で重要ですが、自社単独でのM&A実行には潜在的なリスクが伴います。特に、旅行業界特有の顧客対応や商品販売の仕組みの統合は、専門的な知見と経験が求められる複雑な課題です。

M&A仲介会社を活用することで、これらの課題に効果的に対処できます。M&A仲介会社は、豊富な経験と専門知識を持ち、統合プロセスの計画立案から実行まで、円滑なPMIの実現をサポートしてくれます。

また、従業員とのコミュニケーションや、不安・抵抗感の払拭にも助言を提供してくれるでしょう。M&Aの成功には、専門家の力を借りることが有効です。

「M&A HACK」は、戦略策定から買い手の紹介まで、M&A取引を完全成功報酬制でサポートする仲介サービスです。当サービスでは、リスクを気にすることなく、一貫した支援を提供しています。初めてのご相談は無料ですので、ご興味のある方はぜひ下記からお問い合わせください。

無料相談のご予約：
https://sfs-inc.jp/ma/contact

旅行会社・旅行代理店業のM&Aにおける成功事例

旅行会社・旅行代理店業界におけるM&Aの成功事例を紹介します。これから旅行会社・旅行代理店業界におけるM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。

株式会社エスクリによる株式会社AZITOの旅行事業のM&A

2023年4月に、株式会社エスクリが株式会社AZITOの旅行事業を譲り受けた事例です。

株式会社エスクリは、東京都中央区に本社を構え、挙式・披露宴の企画・運営を主要事業とする企業です。多くのブライダル施設を運営し、結婚式に関連するサービスを幅広く提供しています。

株式会社AZITOは、紹介制旅行手配事業「AZITOトラベル」や、海外旅行カタログギフト事業「ギフトラ」を展開する企業です。これらの事業は、法人出張や個人旅行の手配を効率化し、特別なギフトとしての旅行を提供することで知られています。

このM&Aの主な目的は、エスクリが持つブライダル事業とAZITOの旅行事業を融合することで、ハネムーン手配やゲストの移動・宿泊手配をスムーズにし、さらには法人顧客への出張手配や個人旅行手配を強化することにあります。このシナジー効果により、エスクリの顧客サービスが向上し、企業価値のさらなる向上が見込まれます。

参考：エスクリ　旅行事業をスタート！ハネムーン・ゲスト移動手配、法人出張・個人旅行をLINEで完結！

三越伊勢丹ホールディングスによるニッコウトラベルのM&A

2017年2月に、三越伊勢丹ホールディングスが旅行会社のニッコウトラベルを完全子会社化した事例です。

三越伊勢丹ホールディングスは、日本国内で広範な百貨店事業を展開し、高品質な商品とサービスを提供する企業です。主力顧客層は熟年世代であり、彼らの多様なニーズに応えるためのサービスを充実させています。

ニッコウトラベルは、東証2部に上場している旅行会社で、欧州や南米への自主企画旅行を主力商品としています。特にライン川クルーズなど、徒歩移動が少なく長めの日程でゆっくり観光するツアーに強みを持ち、顧客の95%が60歳以上、平均旅行代金は80万～100万円と高価格帯の旅行商品を提供しています。

このM&Aの主な目的は、三越伊勢丹ホールディングスがニッコウトラベルの熟年世代向け旅行企画のノウハウを取り入れ、自主企画商品の充実を図ることで、シルバーマーケットと呼ばれる50兆円規模の市場をターゲットにした「コト消費」を促進することにあります。これにより、同社の旅行事業の収益拡大と顧客基盤の強化を目指しています。

参考：三越伊勢丹、旅行会社買収で狙う熟年市場50兆円

アソビュー株式会社による株式会社そとあそびのM&A

2021年1月に、アソビュー株式会社が株式会社そとあそびの全株式を取得し、完全子会社化した事例です。

アソビュー株式会社は、東京都渋谷区に本社を置き、休日の便利でお得な遊び予約サイト「アソビュー！」を運営する企業です。レジャー業界向けのDX推進や国・自治体向けの観光ソリューション事業も手がけています。

株式会社そとあそびは、アウトドアレジャー専門予約サイト「SOTOASOBI」を運営し、長年のノウハウとアウトドアレジャー事業者との強固なネットワークを活かした企画力を持つ企業です。新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、アウトドアレジャーの人気が高まり、事業は順調に成長しています。

このM&Aの主な目的は、アカツキがゲーム事業に集中する方針を受けて、そとあそびの強みを持つアウトドアレジャー事業をアソビューに譲渡することで、各社の強みを最大限に活かしさらなる発展を目指すことです。アソビューは、そとあそびのノウハウを取り入れることで、レジャー予約サイト「アソビュー！」のサービス向上と事業拡大を図ります。

参考：子会社（株式会社そとあそび）株式の譲渡に関するお知らせ

株式会社エボラブルアジアによる株式会社セブンフォーセブンエンタープライズのM&A

2019年5月に、株式会社エボラブルアジアが株式会社セブンフォーセブンエンタープライズを子会社化した事例です。

株式会社エボラブルアジアは、東京都港区に本社を構え、オンライン旅行事業、訪日旅行事業、ITオフショア開発事業、投資事業を手掛ける企業です。特にオンライン旅行事業において「エアトリ」ブランドでの展開を強化しています。

株式会社セブンフォーセブンエンタープライズは、30年以上の実績を持ち、ハワイ旅行専門ブランド「ファーストワイズ」を展開する旅行代理店です。オンライン販売に特化し、ハワイ旅行の企画から手配までを提供し、現地法人を通じて日本語での旅行サポートを行っています。

このM&Aの主な目的は、エボラブルアジアが取り扱う海外ツアー商品の中長距離ツアーを強化することです。セブンフォーセブンエンタープライズのハワイツアーのノウハウを取り入れ、ハワイにおけるラウンジ運営などの多角的な事業展開を目指すことで、エアトリブランドの認知度向上と事業拡大を図ります。これにより、エボラブルアジアの連結業績に対する貢献が期待されます。

参考：エボラブルアジア、セブンフォーセブンエンタープライズ社を子会社化

株式会社IBJによる株式会社かもめのM&A

2016年12月に、株式会社IBJが株式会社かもめをグループ化した事例です。

株式会社IBJは、東京都新宿区に本社を構え、日本No.1の総合婚活サービスを提供する企業です。多岐にわたる婚活支援サービスを展開しています。

株式会社かもめは、創業33年の旅行会社で、中南米、北米、北欧、フィリピン、パプアニューギニアなどのパッケージツアーを企画・提供しています。特に20代～40代の働く女性をメインターゲットとし、オーダーメイド旅行のアレンジを得意としています。

このM&Aの主な目的は、旅行と婚活の相性の良さを活かし、IBJの婚活サービスに旅行を取り入れることで、新たな収益源を確保することです。IBJのイベント運営ノウハウやカウンセリングメソッドを活用した旅行企画を展開し、働く女性向けの旅行企画やシニア層の出会いを促進する旅行企画を計画的に推進していく予定です。これにより、両社のシナジー効果を最大限に引き出し、新規需要の創出と満足度の向上を図ります。

参考：株式会社かもめのグループ化について。

株式会社MILE SHAREによる株式会社PINKのM&A

2021年4月に、株式会社MILE SHAREが株式会社PINKの全株式を取得し、子会社化した事例です。

株式会社MILE SHAREは、北海道札幌市に本社を構え、ポイントやマイルをシェア可能なプラットフォームサービスを提供する企業です。

株式会社PINKは、東京都港区に本社を置き、南アジアエリアへのリトリートツアーや体験型のカスタマイズツアーを提供する旅行会社です。2008年の創業以来、「ココロとカラダにいい旅」をテーマに、ヨガ講師や起業家と行くスタディツアーなども企画しています。

このM&Aの主な目的は、株式会社MILE SHAREがPINK社の旅行事業を取り込むことで、国内外の航空券提供サービスを強化し、ハイブリッド型の航空券提供を実現することです。これにより、PINK社の豊富な経験とノウハウを活かし、ユーザーにとって利便性の高い旅行サービスを提供し、さらなる事業拡大を目指します。

参考：株式会社MILE SHAREは、株式会社PINKとの間に株式譲渡契約を締結したことをお知らせいたします。

株式会社エボラブルアジアによるFAST JAPAN株式会社の資本参加

株式会社エボラブルアジアが訪日外国人向けチャットコンシェルジュを運営するFAST JAPAN株式会社に資本参加した事例です。

株式会社エボラブルアジアは、東京都港区に本社を構え、オンライン旅行事業、訪日旅行事業、ITオフショア開発事業、投資事業を手掛ける企業です。アジアを舞台にしたOne Asiaビジョンを掲げ、幅広い事業展開を行っています。

FAST JAPAN株式会社は、訪日外国人観光客向けのチャットコンシェルジュアプリ「Tabiko」を英語と中国語（繁体字）の2言語で運営するスタートアップ企業です。訪日外国人の質問や依頼に対して、日本の旅行に精通するコンシェルジュが迅速に対応し、安心の訪日体験を提供しています。2

このM&Aの主な目的は、エボラブルアジアの投資事業の一環として、FAST JAPAN社の成長によるリターンを期待すると共に、エボラブルアジアの訪日旅行事業における連携を図ることです。具体的には、FAST JAPAN社のユーザーに対して、日本国内旅行商品の提案・販売を行うことで、事業の拡大と発展を目指します。

参考：訪日外国人向けチャットコンシェルジュを運営するFAST JAPAN社への資本参加

株式会社HBDによるHTBエナジー株式会社のM&A

2022年5月に、株式会社HBDがHTBエナジー株式会社の全株式を取得し、子会社化した事例です。

株式会社HBDは、東京都豊島区に本社を置き、販路開拓支援、ファイナンス支援、商品開発支援を行う企業です。光通信グループの一員であり、広範な事業ネットワークを持っています。

株式会社エイチ・アイ・エス（HIS）は、東京都港区に本社を構え、旅行業を主力とする企業です。HTBエナジー株式会社は、福岡県福岡市に本社を置き、電力小売事業を営むHISの100%子会社です。

このM&Aの主な目的は、HTBエナジーが直面している電力調達価格の高騰やインバランス料金の負担から来る経営難を解消し、電力事業の安定運営を図ることです。HISは、コロナ禍で主力の旅行業などの事業回復を図るため、HTBエナジーの全株式をHBDに譲渡し、財務体質の強化を進めるとしています。また、HBDとの業務提携により、通信事業や保険事業などの事業領域で連携し、顧客満足度の向上を目指ています。

参考：当社連結子会社の株式譲渡に関する契約締結のお知らせ

PAG HTB Holdings株式会社によるハウステンボス株式会社のM&A

2022年8月に、PAG HTB Holdings株式会社が株式会社エイチ・アイ・エス（HIS）の連結子会社であるハウステンボス株式会社の全株式を取得し、子会社化した事例です。

PAG HTB Holdings株式会社は、PAG Asia Capital Limitedが運用するプライベート・エクイティ・ファンドが管理する特別目的会社で、東京都港区に本社を置き、株式の取得・保有・管理・売買を行っています。

株式会社エイチ・アイ・エス（HIS）は、東京都港区に本社を構え、旅行業を主力とする企業です。ハウステンボス株式会社は、長崎県佐世保市に位置し、テーマパークやホテルの運営を行っています。

このM&Aの主な目的は、HISが2010年から取り組んできたハウステンボスの経営再建が成功し、さらなる成長と競争力強化を図るため、PAGのテーマパーク事業に関する知見を活用し、資金供給の下で事業を拡大することです。これにより、ハウステンボスの中長期的な企業価値向上が期待されます。

参考：当社連結子会社の株式譲渡に関する契約締結のお知らせ

株式会社エイチ・アイ・エスによる株式会社エイチ・アイ・エス デザイン アンド プラスのM&A

2024年2月に、株式会社エイチ・アイ・エスが非連結子会社である株式会社エイチ・アイ・エス デザイン アンド プラスを連結子会社化した事例です。

株式会社エイチ・アイ・エス（HIS）は、東京都港区に本社を構え、旅行業を主力とする企業です。デザイン＆プラスは、東京都新宿区に本社を置き、広告代理店業および広告制作業を行っています。

デザイン＆プラスは、2023年6月30日にHISによって子会社化されましたが、連結財務諸表に与える影響が軽微であったため非連結子会社として扱われていました。しかし、広告媒体への出稿業務推進や旅行パンフレット・広告等の制作物の内製化を図るために、デザインに関わるナレッジをHISグループ内に蓄積する方針となり、2024年10月期第1四半期より連結子会社に含めることとなりました。

このM&Aの主な目的は、デザイン＆プラスを連結子会社化することで、HISのハウスエージェンシーとしての位置づけを明確にし、広告業務の効率化と内製化を進めることです。これにより、HISグループ全体の業績向上とコスト削減を図ります。

参考：子会社の異動（非連結子会社の連結子会社化）に関するお知らせ

KNT-CTホールディングス株式会社による株式会社コスモポリタン・クリエイティブ・ラボのM&A

2023年7月に、KNT-CTホールディングス株式会社が株式会社コスモポリタン・クリエイティブ・ラボの全株式を取得し、完全子会社化した事例です。

KNT-CTホールディングス株式会社は、旅行関連事業を中心に幅広いサービスを提供する企業です。今回のM&Aにより、広告・カタログ・書籍の企画、制作を専門とするコスモポリタン・クリエイティブ・ラボのノウハウを取り入れることで、紙媒体の品質向上とデジタル化を推進し、シナジー効果を高めることを目指しています。

株式会社コスモポリタン・クリエイティブ・ラボは、株式会社SICの会社分割（新設分割）により設立された新設会社で、広告・カタログ・書籍の企画、制作、印刷、配送及び販売を主な事業としています。

このM&Aの主な目的は、長年蓄積された媒体の企画・制作・編集ノウハウをグループに迎え入れることで、紙媒体の品質の安定的な保持、向上を図り、Webサイトや動画等の制作物全般においても強化することです。これにより、KNT-CTホールディングスの全体的なサービスの向上と成長が期待されます。

参考：子会社の異動（株式取得）に関するお知らせ

まとめ

旅行会社・旅行代理店業界は、デジタル化の進展や顧客ニーズの多様化など、大きな変革期を迎えています。こうした中で、M&Aは業界再編と競争力強化の有力な手段となっています。

M&Aを成功させるためには、デューデリジェンスの徹底や企業文化の違いへの配慮、PMIの確立など、様々な課題に適切に対処する必要があります。また、明確なM&A戦略の立案と、相場価格の理解も重要なポイントです。

M&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある戦略です。ぜひ今回の記事を参考に旅行会社・旅行代理店におけるM&Aを検討してみてください。