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精密部品製造会社のM&A・事業承継の全知識!売却相場・事例・成功ポイントを徹底解説

「莫大な研究開発費が必要だ」
「高いスキルを持つ技術者が欲しい」
「技術革新のスピードが速い」

今後、ますます顕著になっていく精密部品製造会社の企業格差

この記事をご覧になっている方は、このような課題に直面されているのではないでしょうか。

精密部品製造業界は、自動車、電子機器、医療機器など、多岐にわたる分野でその技術が不可欠とされていますが、近年、企業をとりまく周辺環境の変化に伴い、従来型の戦略ではなく、日々、新しい戦略がほかの業界以上に求められています。

生き残りをかけて、精密部品製造業界の多くの企業がM&Aを積極的に活用し、事業規模の拡大や新たなビジネスモデルの創出など、従来型の経営からの脱却を図っています。

M&Aや事業承継は、単に企業の規模を拡大するだけでなく、新たな技術や市場へのアクセス、さらには経営資源の最適化を実現する手段です。

また、後継者不足や技術革新のスピードに追いつけない中小企業にとって、事業承継は存続のための重要な選択肢の一つなのです。

しかし、M&Aや事業承継は複雑でリスクも伴うため、成功には慎重な準備と戦略が必要です。

今回、M&Aの専門企業であるM&A HACKが、精密部品製造業界におけるM&Aと事業承継の全体像を明らかにし、成功のためのポイントを徹底的に解説します。

さらに、売却相場の理解から実際の成功事例までを幅広くカバーすることで、今後、直面する可能性がある課題への理解を深め、実際の取り組みに役立つ情報を提供していきます。

精密部品製造業界におけるM&Aや事業承継に興味を持つ企業経営者や関係者の皆様が、この記事を通じて、M&Aに対してさらに良い意思決定を行うきっかけとなることを期待しています。

目次

精密部品製造業界の概要と特徴

精密部品製造業界のM&A成功事例

精密部品製造業界は、高度な技術を様々に駆使した極めて高い精度を要求される部品や製品を製造する産業です。

この業界で製造される部品は、数ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリメートル)単位での精度が求められることも珍しくありません。

このような高精度な部品は、自動車・航空宇宙・医療機器・ロボティクス・電子機器など、現代社会を支える多岐にわたる産業で不可欠な要素となっています。

これらをふまえ、以下に、精密部品製造業界がもつ固有の特徴を紹介します。

精密部品製造業界の特徴

技術革新の最前線

精密部品製造業界は、技術革新の最前線に位置しています。例えば、ナノテクノロジーや3Dプリンティング技術の進化は、より小さく、より複雑な形状の部品を高精度で製造することを可能にしました。これらの技術革新は、製品の性能向上やコスト削減、新たな製品開発を可能にするなど、業界全体の発展に大きく貢献しています。

続出する新素材

新素材の開発とその対応も業界の成長を促進しています。従来の金属やプラスチックに加え、セラミックスや高分子複合材料など、特殊な物性を持つ素材が精密部品の製造に使われています。これらの素材は、軽量でありながら高い強度を持つなど、特定の用途において従来の素材を凌駕する性能を発揮するため、迅速な新素材への対応は不可欠な状況にあります。

激化するグローバル競争

精密部品製造業界は、グローバルな競争が激しい産業です。各国の企業が技術革新と市場拡大を目指し競い合っています。この競争環境は、大きな障壁ですが、同時に新しい市場への進出や技術の獲得といった大きな機会をもたらしています。

このように、精密部品製造業界では、急速な技術革新や素材の多様性、そして激しいグローバル競争に対応できる戦略を保有する企業だけが、日本国内だけでなく世界市場でも重要な地位を築き上げることが可能なのです。。

また、この業界においてさらなる持続的な成長を続けるためには、これらの対応だけにとどまらず、企業間の戦略的な提携やM&Aが不可欠なのです。

M&A戦略の詳細を紹介する前に、まず、常に進化し続け、新しい産業の可能性を開拓している精密部品製造業界の概況や市場規模などについて説明していきます。

精密部品製造業界の市場概況と課題

精密部品製造業界のM&A成功事例

精密部品製造業界は、世界経済の発展と共に、その需要は増加する一方です。

ここからは、この業界の市場規模と成長予測、主要プレーヤーやこの業界が持つ課題について詳しく説明していきます。

精密部品製造業界の市場規模・成長予測

市場規模

精密部品製造業界は、世界中で着実に成長しています。2022年の市場規模は約1,423.6億米ドル(約2兆円)と推計され、2035年には約1,702億米ドルまでに達すると予測されています。

この成長は、主に産業オートメーション・医療機器・持続可能エネルギーなどの分野における技術革新と需要増加に支えられています。

精密部品製造業界のM&A

出典:精密部品市場調査の発展、傾向、需要、成長分析および予測2023―2035年 | NEWSCAST

市場成長予測

地域によって市場の成長は異なり、北米が2035年までに最大46%の市場シェアを獲得し、最大の成長地域になると予測されています。欧州も、持続可能性とグリーンテクノロジーへの重点が高いため、大幅な市場成長が見込まれます。日本を含むアジア太平洋地域は、今後10年間、最も高い成長率が見込まれます。

精密部品製造業界の主要プレーヤー

精密部品製造業界には、多数の企業が参入しており、激しい競争が展開されています。以下に、日本に関連する主要プレーヤーを紹介します。

まず、総投資額3兆円を予定し、すでに熊本に進出している台湾積体電路製造股份有限公司 (TSMC)は記憶に新しいところです。TSMCは、世界最大の独立型半導体製造企業で、高度な製造技術で知られ、世界の電子機器産業に欠かせない半導体部品を供給しています。

日本の主要プレイヤーとしては、以下の企業が該当します。

THK株式会社
THKは、直線運動システム分野で世界シェアトップで1972年創業。リニアベアリング、ボールねじ、アクチュエータなどの製品を製造・販売しスマートフォン・自動車・半導体製造装置など、幅広い分野で活用されている。高い精度と信頼性、豊富なバリエーションが特徴。

NTN株式会社
NTNは、ベアリング分野の世界トップシェア企業で1916年創業。自動車用ベアリング、精密機械用ベアリング、産業機械用ベアリングなど、幅広い種類のベアリングを製造・販売。高い技術力とグローバルな生産・販売体制が強み。

日本精工株式会社
日本精工は、精密加工技術に特化した企業で1939年創業。歯車、ギヤボックス、カム、精密軸受などの製品を製造・販売。自動車、オートバイ、航空宇宙、ロボットなどの多様な分野で採用されている。高い加工精度と品質管理体制が特徴。

このほかに、精密部品製造業界を支える企業として、工作機械やロボットの制御システムで世界をリードするファナックがあります。ファナックは、精密部品の加工技術においても高い評価を受けており、自動化技術の進展に貢献しています。

また、キーエンスは、センサ、測定器、ビジョンシステム、高精度の検査・測定機器など、製造業の品質向上と効率化に貢献する製品を多く展開しています。

日本の精密部品製造業界は、このような世界規模のメーカーだけではありません。特定のニッチ市場に特化した中小企業まで様々に存在しています。

精密部品製造業界が抱える課題

精密部品製造業界は、技術革新が非常に活発な業界の一つです。

特に、IoT(モノのインターネット)の普及、自動運転技術の進展、医療機器の高度化など、新しい技術の発展が、精密部品の需要を拡大しています。これらの技術革新によって、より小型で高性能かつ低コストの部品が求められるようになっており、企業間の技術競争は一層激しくなっています。

また、市場ニーズとしての環境保護や持続可能な開発への関心の高まりも、エコフレンドリーな製品や製造プロセスへの需要を促進しています。

このように、精密部品製造業界は、技術革新と市場拡大によって大きな成長を遂げていますが、一方で様々な課題にも直面しています。以下に、主要な課題について説明します。

急速な技術革新への対応

精密部品製造業界は、技術革新が非常に速いペースで進むため、常に最新の技術を取り入れ、製品を開発する必要があります。これには莫大な研究開発費用がかかるため、特に中小企業にとっては大きな負担となります。

人材の確保と育成

高度な技術力を要する業界であるため、高いスキルを持つ技術者や研究者の確保が重要です。しかし、技術革新の速度に対応するための専門知識を持つ人材は限られており、優秀な人材を確保し育成する必要が常にあります。

厳しい品質管理の要求

精密部品は、文字通り極めて高い精度が求められます。そのため、製造プロセスにおける厳しい品質管理が必須となりますが、この水準の維持のためにも多大なコストと労力が必要になります。

グローバル競争の激化

世界各国の企業が市場拡大を目指しており、国際的な競争は日々激化しています。価格競争だけでなく、技術革新や市場開拓の速度でも競争が行われており、競争力を維持するために常に企業としての体力が必要となります。

環境規制への対応

製造プロセスや使用する素材に対して、環境への影響を最小限に抑えることが求められています。このため環境規制への対応や持続可能な製造方法への転換が必要ですが、追加のコストや技術開発は避けて通れません。

サプライチェーンの安定性

原材料の調達や製品の供給におけるサプライチェーンは、自然災害や政治的リスクによって脆弱性の露呈につながります。サプライチェーンの安定性の確保は、業界全体の課題となっています。

このように、技術革新・人材育成・環境への配慮など、多方面での戦略立案と対応が常に求められています。

ここまで説明してきた精密部品製造業界を取り巻く環境を考えると、時間を買うM&A戦略は避けては通れない必須の戦略であることはおわかりいただけたと思います。。

次からは、この業界における具体的なM&A戦略についてのメリットやデメリット、注意点などについて説明していきます。

精密部品製造業界でM&Aをするメリット

精密部品製造業界のM&A

精密部品製造業界のM&Aにおいてのメリットを売却側・買収側の両方から解説します。

精密部品製造業界のM&Aを検討する際の参考になるはずです。

売却側のメリット 買収側のメリット
  • 後継者不足の解消
  • 従業員の雇用継続
  • 資金調達・オーナーのEXIT
  • 事業の選択と集中
  • 借入における個人保証の解除
  • 事業拡大のチャンスになる
  • 新規事業へのハードル削減
  • 優秀な人材の確保

売却側のメリット

精密部品製造業界における売却側のメリットは、以下のとおりです。

  • 後継者不足の解消
  • 従業員の雇用継続
  • 資金調達・オーナーのEXIT
  • 事業の選択と集中
  • 借入における個人保証の解除

それぞれ詳しく解説していきます。

後継者不足の解消

中小規模の精密部品製造関連企業にある問題として、後継者不足による廃業が挙げられますが、M&Aを進めることで後継者不足の解消に繋げることができます。

実際に後継者不足解消のため、中小規模の事業者が大手企業に会社を譲渡をすることで、後継者問題の解消に繋げるケースがあります。

M&Aでは、会社を譲渡することで譲受企業から経営陣を迎え、これまで通り会社を存続させることが可能となります。

また、大手企業の経営者クラスに位置する優秀な人物が譲渡先の経営者となるため、譲渡した企業の事業規模はこれまでより拡大される可能性が高くなります。

後継者不足に悩んでいる企業にとって、会社の譲渡・M&Aを行うことは廃業を避けるための大きな手段のひとつです。

従業員の雇用継続

売却側の企業が廃業目前であった場合、M&Aを実行することで、既存従業員の雇用を継続して守ることができます。実際にM&Aを行った場合、ほとんどのケースで譲受企業によって従業員の雇用が継続されています。

労働条件においても引き継がれるケースがほとんどなので、既存従業員が被る影響は、廃業と比較してかなり大きく抑えることができます。

給与待遇や労働条件が同じであれば、M&A後の離職率も低い水準のままだと考えられます。

待遇面においては、M&A後に給与受験・労働時間・年間休日・福利厚生などの改善が行われるケースも多くみられます。

M&A以前よりも好条件で雇用されるケースもあるため、既存従業員にとっては大きなメリットとなり得ます。

資金調達・オーナーのEXIT

当然ながらM&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなります。

M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。

  • 残っている借入金の返済に充てる
  • オーナー自身の引退後の生活資金とする
  • 新規事業における資金源とする

もし、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、はるかにメリットは大きいでしょう。

事業の選択と集中

景気悪化が続いてきた日本では、生き残りのために複数以上の事業を多角展開する企業も珍しくありません。しかし事業の多角化は一歩間違えれば、赤字を生み出し、廃業の原因になる可能性があります。

M&Aのスキームの一つである「事業譲渡」によって、不要となった事業やその関連資産だけを選別して売却することが可能です。実際に事業譲渡で、特定の事業だけを他社に売却する企業は数多くあります。

M&Aの事業譲渡によって事業を売却し、得意分野に資金や人員を集中することで、経営状態の好転にもつながる可能性もあります。

借入における個人保証の解除

借入による資金調達では、当然ながら返済義務が生じ、返済ができない場合は個人資産を失うことになります。精密部品製造業界だけでなく、全ての経営者にとって大きな精神的負担となります。

特に中小規模の精密部品製造会社の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはずです。倒産や廃業に陥った場合、オーナー個人の損害は甚大なものとなります。

M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。

オーナーが持っていた大きな悩みの種をすべて解消することに繋がるのです。

買収側のメリット

M&Aにおける買収側のメリットは、以下の通りです。

  • 事業拡大のチャンスになる
  • 新規事業へのハードル削減
  • 優秀な人材の確保

それぞれ詳しく解説していきます。

事業拡大のチャンス

M&Aにおいて買収側が得られる最大のメリットは、事業拡大のチャンスを得ることです。M&Aによって買収側の企業は規模やシェアの拡大を達成することができます。

精密部品製造業界のM&Aにおいては、売手となる企業が持つ設備や不動産のような有形資産に加え、顧客・取引先・各種情報などの無形資産を手に入れることも可能です。

特に精密部品製造関連企業にとって工場や設備などの固定資産は製造に直結する要素であるため、M&A実行が早期の事業拡大につながります。

また、中小企業双方のM&Aは市場シェアを拡大させ、ライバルに圧倒的な差を付けることにも繋がります。

新規事業参入へのハードル削減

買収側企業は新規事業への参入を迅速に行うためにM&Aを実行することもあります。

ゼロから内部の資源だけで新規事業を構築するよりも、買収によって事業そのものを買うことのほうが、はるかに早期の進出が可能となります。さらに、M&Aによって新しい事業を買収し、複数以上の事業展開によるリスク分散も可能となります。

このように、売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができる利点を持ったM&Aも、ここ数年で一気に増加しており、結果として、新規事業への投資額は減少し、参入コストと時間が削減されることで、早期の段階で利益を確保できる結果を生んでいます。

優秀な人材の確保

少子高齢化が問題となっている現代では、優秀な人材の確保がどの業界においても必須の課題です。

M&Aを行うことによって、売却側企業に所属する従業員をそのまま雇用すれば、優秀な人材をそのまま自社に引き入れることができます。業界におけるノウハウも既に所有しているため、研修を行う手間も省くことが可能です。

ただ、売却側企業の従業員がすべて優秀であるとは限りません。また、M&A後の企業文化の変化に追いつかず、離職する従業員が発生する可能性もあります。

M&Aによって従業員を引き継ぐ場合、これらの点に繊細な注意が必要です。

精密部品製造業界におけるM&Aの注意点

精密部品製造業界のM&A

精密部品製造業界のM&Aを行う際の注意点として、競業避止義務について説明していきます。

精密部品製造業界のM&Aにおける競業避止義務

精密部品製造業界のM&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。

以下が留意すべき点です。

  1. 情報の非公開化:
    M&Aに関わる企業は、取引の過程で得た相手方の機密情報や営業上の秘密を外部に漏らさない義務があります。これには、製品開発や戦略・顧客リストなどが含まれます。
  2. 事業活動の制限:
    M&A後、特に買収された側の企業の経営者や重要な従業員は、一定期間、同業他社で働くことや新たに競合する事業を立ち上げることが制限される場合があります。買収した企業の投資価値保護のためです。
  3. 顧客やサプライヤーとの関係:
    M&Aを通じて得た顧客やサプライヤーとの関係を利用して、不当な競争優位を得る行為を避ける義務があります。これには、不公正な価格設定や市場独占の形成を防ぐことが含まれます。
  4. 市場への影響:
    M&Aによって既存市場の様相が大きく変化し市場の競争が不当に制限される可能性があります。これは消費者の利益を毀損することにつながるため、適切な市場分析と関係者間や監督官庁と調整を行う必要があります。
  5. 従業員の扱い:M&Aで発生する可能性がある従業員の解雇や職務の変更に際して、公平な手続きを行う義務があります。これには、適切な通知期間の提供や、必要に応じた再教育・再配置の支援が含まれます。

精密部品製造業界に限らず、M&Aを行う際は、これらの競業避止義務に留意し、適切な契約内容を定めることが重要です。

精密部品製造業界におけるM&Aを成功させるためのポイント

精密部品製造業界でのM&Aを成功させるためのポイントを解説します。

  • M&A戦略の立案
  • 相場価格をよく理解しておく
  • 統合後のプロセス確立

それぞれ詳しく解説していきます。

M&A戦略の立案

M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。

M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。

M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。

  • M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
  • 自身の企業は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
  • いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
  • 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
  • M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側)

上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになります。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。

M&Aについて自社に詳しい人物がいない場合、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。

当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫で対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。

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相場価格をよく理解しておく

M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、相手先の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。

精密部品製造業界のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。

  • 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
  • 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分

当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。

また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することは、あらかじめ考慮しておく必要があります。

PMI(統合後プロセス)の確立

M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。

PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。

  • 新経営体制の構築
  • 経営ビジョン実現のための計画策定
  • 両社協業のための体制構築・業務オペレーション

上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させます。

また、PMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間を要することがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。

精密部品製造業界のM&A成功事例とその戦略

精密部品製造業界のM&A

ここまで紹介してきたように、精密部品製造業界におけるM&Aは、企業の成長戦略や市場競争力の強化を目的として幅広く行われています。

まず、M&Aの主なパターンを4つ紹介し、その後、具体的な事例を紹介していきます。

M&Aの4つの主要なパターン

  1. 水平統合:競合する同業他社を買収し、事業規模の拡大や市場シェアの高める戦略。
  2. 垂直統合:製造・販売・流通など、異なるバリューチェーン上の企業を買収し、事業の効率化を図る戦略。
  3. 異業種買収:精密部品製造以外の事業を展開する企業を買収し、新規事業への参入や顧客層の拡大を図る戦略。
  4. 部分買収:特定の事業部門やブランドのみを買収し、必要な機能や資源だけを取り込む戦略。

ここまで説明してきたように、精密部品製造業界におけるM&Aは、技術革新や市場拡大のために、すでに不可欠な存在となっています。

次からは、当該企業のプレスリリースを参考に、成功したM&A事例とその戦略を紹介します。

M&A成功事例(水平統合):新日本無線とリコー電子デバイスの統合

  • 概要

2022年1月1日、新日本無線株式会社とリコー電子デバイス株式会社が統合し、新たに「日清紡マイクロデバイス株式会社」が誕生。この統合は、同業界内での強固なポジション確立と技術力の向上を目指すもの。

  • 水平統合の事例として

新日本無線とリコー電子デバイスは、いずれも半導体デバイスの開発・製造に関わる企業であり、その活動領域が重なっていました。両社の技術力や販売網を組み合わせることで、競争優位性を高め、市場での地位をさらに強化できる統合です。

このように、両社が統合した日清紡マイクロデバイスは、市場シェアの拡大(統合2社のシェアが合算される)、全体のコスト削減(製造プロセスや研究開発、物流などの分野でのシナジー効果による)、技術力の向上(両社の技術やノウハウの統合による製品開発の速度と品質向上)、競争力の強化(さらなる多様な製品ラインナップと技術力を持つことによる競争優位性の確立)といった強固な地盤を築き上げることができます。まさに、水平統合の典型的な事例といえます。

出典・参考:
日清紡マイクロデバイス株式会社ティザーサイト
会社概要 | 企業情報| 日清紡マイクロデバイス

M&A成功事例(垂直統合):湖北工業によるエピフォトニクスの子会社化

  • 概要

湖北工業は、2024年3月にエピフォトニクスの株式を取得し、同社を子会社化することを発表。エピフォトニクスが持つ「PLZT薄膜形成技術」は、光通信市場において省電力かつ高速通信を実現する上で有望な技術。湖北工業は、光アイソレータ市場で高い市場シェアを保有しており、新技術の獲得でさらなる事業拡大を図る。

  • 垂直統合の事例として

エピフォトニクスが持つ技術を湖北工業が採用することで、技術力の強化だけでなく、製品開発から製造、さらには販売・流通に至るまでのバリューチェーンを内部化し、事業の効率化や競争力の強化を図ることが可能になる垂直統合の戦略の一環として捉えることができます。

特に、エピフォトニクス米国シリコンバレーに開発拠点を持つことから、国際的な技術開発の強化も期待されます。

この買収によって、湖北工業は光通信市場での技術向上と市場シェアの拡大という二重の利点を獲得したといえます。

出典:湖北工業[6524]:エピフォトニクス株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ 2024年3月28日(適時開示) :日経会社情報DIGITAL:日本経済新聞

M&A成功事例(事業承継):若狭ハイテックの増錬工業への事業承継

  • 概要

代表者が70歳を超えており、後継者不足に悩んでいた若狭ハイテックは、増錬工業に事業を譲渡。事業承継の結果、雇用継続だけでなく、両社の技術力と市場ポジションは一層、強化されました。

  • 事業承継の事例として

この買収事例は「事業承継」の成功事例の一つです。後継者不足に悩む若狭ハイテック、さらなる事業拡大を進めたい増錬工業の思惑が一致したパターンです。

増錬工業は若狭ハイテックの生産設備製造・保全業務を引き継ぐだけでなく、若狭ハイテックの技術力を活用し、自社製品ラインナップを強化。また、若狭ハイテックの既存顧客へのアプローチも容易になりました。この事業承継によって、若狭ハイテックは最大の懸念材料だった従業員の雇用継続とビジネスパートナーとの関係維持を達成したこととなります。

出典:創業20年、福井の製造業が叶えたM&A。シナジーある企業と出会い、未来に繋がる事業承継

まとめ

今まで紹介してきたように、精密部品製造業界におけるM&Aは、自社だけでなく業界全体の成長を促す重要な手段です。

特に、この業界は、極めて速い技術革新など最先端分野に属しており、効率化や規模の最大化を目的としたM&A戦略は不可欠といっても過言ではありません。

まとめとして、ここでお伝えしたいことは、M&A成功のポイントは、明確な成長戦略を持つことがまず必要であるということです。

M&Aを単なる拡大戦略と捉えるのではなく、企業の長期的な目標達成にどのように貢献するかを考え、戦略を立案しなければなりません。

また、M&A後の統合プロセスにおいて、企業文化の融合や従業員のモチベーション維持に注意を払うことも、成功への鍵となります。さらに、事前のデューデリジェンス(買収前調査)を徹底することで、リスクを最小限に抑えることが求められます。

このように、精密部品製造業界におけるM&Aは、企業にとって大きなチャンスであると同時に、専門性のある慎重な準備と戦略的なアプローチが必要な取り組みです。

そのためにも、専門的な知見と経験を持つM&Aアドバイザリー企業である「M&A HACK」などの専門家と協力し、適切なサポートを受けながらM&A戦略を立案することが重要であることを最後にお伝えいたします。

精密部品製造業界におけるM&Aの可能性の検討に、この記事が少しでもお役に立てればと考えております。

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