「左官工事会社のM&Aにおける動向は?」
「左官工事会社のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「左官工事会社 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、左官工事会社のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
左官工事会社におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、左官工事会社のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
左官工事会社とは
左官工事会社とは、建物の壁や床などの下地や仕上げを行う事業者のことです。左官工事業界は建設業の一分野で、建物の外壁工事を手掛ける業者のひとつになります。
左官工事会社の主な仕事は、土や砂、モルタル、漆喰、プラスター、繊維などの材料をこて塗り、吹付け、はり付けることです。また、レンガやブロック塀を積み上げて壁をつくることも左官工事会社の役割になります。
左官工事会社の工事対象物は、住宅、事業所、店舗などの民間施設や公共施設などです。近年では、新築よりも保守・修理、リノベーション工事の需要が高まっており、マンションの大規模な修繕工事への対応が求められています。
また左官工事における作業は、主に職人の手仕事であり、繊細な技術が求めらることも特徴です。天候や湿度を読みながら作業を行うため、技術だけでなく五感も必要とされます。近年では、左官工事職人の数が減少し続けており、業界における大きな課題のひとつです。
左官工事会社の種類
左官工事会社には、主に「下地造り」と「仕上塗り」の2種類が存在し、それぞれで事業内容やビジネスモデルも異なります。それぞれの種類について解説していきます。
下地造り
左官工事会社における主な種類のひとつが、下地造りです。下地作業では、モルタルやプラスターを均一に塗り、滑らかで平滑な下地を作ります。仕上塗作業の前段階の作業で、非常に重要な作業です。
左官工事業における下地造りでは、建物の基礎(土台)となるコンクリート工事やブロック積工事などの工事にも左官の技術が必要です。下地造りにおける技術は奥が深く、熟練した技術と知見を持つ職人の確保が必要となります。
またコンクリート工事やブロック積工事以外に、サッシまわりやモルタル詰め、打ち放しコンクリート補修も下地造りの一種です。左官工事会社における下地造りには様々な業務があるため、下地造りを専門に手掛ける左官工事会社も存在します。
仕上塗り
左官工事会社における仕上塗りとは、壁などの表面を塗って仕上げる作業のひとつです。土壁や漆喰壁の場合には、下地を造った後で中塗りを重ね、最後に漆喰や珪藻土を使って上塗りを行い、表面全体を仕上げていきます。
仕上塗りは、塗り方によって耐久性にも影響が出るだけでなく、コテの動いた跡がそのまま壁の模様になることもあるため、職人には卓越した技術と芸術性が求められます。仕上げ塗でよく使われる上塗り材料は、以下の5つです。
- 土
種類によって壁の表面に個性が出る材料。基本的には、和室に多く用いられる。 - 砂
滑らかな仕上がりになるのが特徴。和室や茶室のほか、客間や洋室にも使われる。 - 漆喰
石灰石に砂や糊などを加えて水で練り上げたもの。呼吸する材料だともいわれ、湿度の高い時期は水分を吸収し、乾燥する時期は水分を放出して部屋の中を快適に保ってくれる。 - プラスター
鉱物質の粉末を水で練った石灰または石膏のこと。白く美しい輝きが特徴で、漆喰壁に似ていることから西洋漆喰とも呼ばれる。 - 珪藻土
海や湖、川の底に堆積して化石化した植物プランクトンの死骸が珪藻土。完全な自然素材で有害な化学物質を含まないため、アトピーやシックハウス症候群といったアレルギー症状を引き起こす心配がない吸水性、耐火性、断熱性に優れているので、暮らしを守るという意味でも注目されている素材。
それぞれの素材によって特徴が異なるため、職人の技術や知識はもちろんのこと、左官工事会社としての材料調達におけるルートの確保も重要な要素となります。
左官工事会社に必要な業許可・資格
左官工事会社に必要な業許可と資格について解説していきます。
左官工事会社に必要な業許可
日本には、左官工事事業のみを対象とした専門的な業許可はありません。しかし左官工事の請負総額が、税込500万円以上(建築一式にあたるなら税込み1500万円以上)になる場合には「建設業許可」が必須です。
建設業許可とは、国土交通省が発行する建設産業における許可制度で、基本的に建築・建設業の実施には建設業許可の取得が必要になります。但し一部例外があり、軽微な建設工事のみを請け負う場合に許可は必要ないとされています。
500万円以下の左官工事には、建設業許可が必要ないため、案件の請負総額を絞り運営する左官工事専門業者も多いです。但し、請け負える案件の範囲・信用性・法違反のリスクなどを鑑み、中~大規模の左官工事関連業者のほとんどは建設業許可を取得しています。
左官工事会社に必要な資格
左官工事会社に必要もしくは推奨される資格を紹介します。左官工事会社に推奨される資格は、以下の通りです。
- 左官技能士
国家資格である技能検定制度の一種で、都道府県職業能力開発協会が実施する、左官に関する学科及び実技試験に合格した人のことを、「左官技能士」と呼ぶ。取得すると左官職人としてスキルが一定の水準に達していると社会的にも認められる資格。 - 登録左官基幹技能者
熟達した作業能力、現場を効率的にまとめるマネジメント能力と知識を備えた技能者。国土交通大臣の登録を受けた講習を修了することで認定を受けられる。企業としては、経営事項審査や総合評価落札方式でプラスの評価をされるため、依頼先から信頼を得て仕事を受けやすくなる。 - ブロック建築技能士
職業能力開発促進法により都道府県知事が実施しているブロック建築の学科及び実技の合格者。本資格を取得することにより、石工事業やタイル・れんが・ブロック工事業の一般建設業の専任技術者になることが可能。 - タイル張り技能士
ブロック建築士同様に、都道府県知事が実施するタイル張りに関する学科及び実技に合格したものを指す資格。本資格を取得することにより、タイル・れんが・ブロック工事の専任技術者となることが可能。
左官工事会社の運営においては、「左官技能士」の果たす役割が非常に大きくなります。いかに優秀で経験豊富な左官技能士を獲得するかが、左官工事会社としての事業運営において重要となるでしょう。
左官工事会社の市場動向
左官工事会社の市場動向について解説していきます。
リフォーム・リノベーションがトレンド
現在の左官工事業界では、主に建築物のリフォームやリノベーションがトレンドです。上記は、国土交通省が実施している「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(概要)」の調査結果になります。
同調査によれば、令和4年度第2四半期の受注高の合計は、2 兆 9,565 億円で、対前年同期比 2.3%減少。うち、住宅に係る工事の受注高は 1 兆 177 億円で、同2.8%増加という結果です。このことから、現在はリフォーム・リノベーションに関して、建築業界全体で需要が増加していることが分かります。
しかしリフォーム・リノベーション需要が増加しているものの、左官工事業界全体では、原材料の高騰や職人不足などの懸念が大きく、業界全体を見れば衰退傾向にあるとも見られています。
テクロノジーによる生産性の向上
現在の建設業界では、生産性向上を目的としたテクノロジー化が進んでいるのが特徴です。ITを中心とした最新技術の導入により、人材不足解消や労働環境改善といった建設業界が抱える課題への解決が期待されています。
一例として挙げられるのが、建築関連大手の「清水建設株式会社」による次世代生産システム「Shimiz Smart Site」の構築です。本システムでは、作業を調整する水平スライドクレーンや、溶接トーチを操るロボット、建材を施工する多機能ロボットなどが実装されています。これにより、70〜75%の省人化に成功しており、大幅な生産性向上が期待される取り組みです。
他にも「3Dプリンタ導入」「点検や測量におけるドローン活用」など、様々な最新テクノロジーの導入が進んでいます。これからを生きる建築会社にとって、テクノロジーの導入は欠かせない要素のひとつです。
新設住宅着工数の減少による影響
上記は、国土交通省による「建築着工統計調査」による統計結果です。上記の通り、新設住宅(持家=注文住宅と分譲戸建て)の着工数は平成8年度以降は概ね減少傾向にあります。また新設住宅に占める分譲戸建ての比率が年々上昇しているのも特徴です。
国内における新設住宅の主な要因は、少子高齢化による人口減少です。今後も少子高齢化現象は加速していくことが予測されており、同時に新設住宅建築における需要も減少していくことでしょう。また日本では「大都市集中型」の人口構造が年々加速していることが、戸建て住宅減少の理由です。都心部で戸建て住宅を建築する人はごく僅かで、都心部に居住する多くの人は分譲もしくは賃貸物件を選択します。
大都市集中型の人口構造では、地方部の左官工事会社が多大な影響を受けます。地方部の戸建建設または公共施設等の建築案件が減少することにより、左官工事会社の受注も減少していくでしょう。
左官工事会社の抱える課題
左官工事会社が抱える課題について、解説していきます。
市場競争の激化
左官工事業界の歴史は古く、今でも多くの左官工事会社が存在します。古くから存在する左官工事業界ですが、現在左官工事市場における競争は激化している状況です。
左官工事業界の市場競争が激化している背景には、住宅着工件数の減少・不動産市場の冷え込みなどの要因が挙げられます。着工件数の減少による需要減少は、左官工事会社の業績に悪影響を与えるため、熾烈な価格競争を引き起こす要因となっているのです。
また左官工事会社は中小規模事業者の数が多く、業界全体を見てもほとんどが中小規模事業者が占めている状態にあります。現代の日本における中小企業は人手不足や賃金上昇により、業績が悪化。結果として市場競争の激化を招いているのです。
多重下請け構造
現在の左官工事会社を含む建設業界は、歴とした大手企業から中小事業者への下請け構造が出来上がっている市場状態です。そのため下請け側の中小事業者には利益があまり残らないという現象が発生しています。
現在の左官工事会社における顧客集客方法は、大手事業者からの紹介案件であることが多いです。集客側である大手事業者が利益を抜いた後、残った利益で中小規模事業者へ下請け依頼を出すことになるため、中小規模事業者は利益が余り出ません。
また中小規模事業者は低利益率で運営をし続けることになるため、必然的に従業員の給料も薄給になってしまいがちです。結果として人材不足に悩む中小規模事業者が多くなってしまいます。中小規模事業者が高い利益を得るためには、自社で集客から施工完了を完結させる仕組み作りが必要となります。
慢性的な人手不足と後継者不在
左官工事会社が抱える最大の課題のひとつとして、人材・後継者不足があります。これは地左官工事会社を含む、建設業界全体が抱える最大の課題のひとつです。
左官工事会社が人材不足にある理由のひとつが、「職業イメージ」にあるとされています。建設会社での仕事は、建設現場での施工作業がクローズアップされやすいため、肉体労働を避ける傾向にある現代人にとっては積極的な就職先候補とはなり得ないのです。
また建設業界の中核を担うのが、中小規模事業者ですが、その多くが後継者不足の課題を抱えています。経営者自身も高齢化しており、経営手腕を持った後継者を育成することも困難な状況です。
左官工事会社におけるM&Aの動向
左官工事会社におけるM&Aの動向について解説していきます。
大手建設会社によるM&A
リフォーム・リノベーションのトレンド需要が高まっている一方、現在の左官工事業界全体は市場縮小傾向にあることも現状です。市場衰退が進むなかで、左官工事各社は様々な生存戦略を展開しています。
左官工事業界におけるM&Aにおいて最も多いのが、大手建設会社による左官工事専門会社の買収事例です。資金・人材ともに豊富な経営資源を持つ大手建設会社が、中小規模の左官工事会社を買収し、規模の拡大を図っています。
また売却側である中小規模の左官工事会社も、大手企業の傘下となることで、事業の存続や売却益の確保などのメリットを得ることが可能です。大手建設会社と中小規模の左官工事会社のM&A事例は、今後も増えていくことでしょう。
中小企業同士のM&A
内装・外壁工事会社のM&Aにおいて多発しているケースは、左官工事会社同士の事例です。同業者同士がM&Aによって合併や事業譲渡をするケースが多くあります。
特に多いのが、中小規模の左官工事会社同士のM&Aによる合併です。資金力が不足し、設備・人材投資が難しい場合には、左官工事会社同士が合併し、経営基盤強化のための投資を共同で行うケースもあります。
また中小規模事業者同士のM&Aでは、双方の持つ左官工事業におけるノウハウを共有することによる、シナジー効果の発揮も狙いです。双方の持つノウハウを共有することで、資金力のある大手建設会社に対抗することが目的となります。
後継者問題解決のためのM&A
特に中小規模の左官工事会社で多発しているのが、後継者不在という問題です。実際に後継者不在により事業継続が難しく、別の左官工事会社にM&Aを依頼するケースも増えてきています。
経営者の周りに後継者候補がいない場合でも、M&Aによる事業承継であれば買い手企業が後継者(新たな経営者)となるため、自社の存続が可能だからです。M&Aをすることで廃業を免れることが出来るため、既存従業員の雇用継続をすることもできます。
また後継者不在によるM&Aにて事業規模が拡大した左官工事会社も多く存在します。特に左官工事会社では、M&A後に買い手が持つリソースを左官工事事業の戦略として取り入れ、売上が伸びたケースも多いです。
左官工事会社のM&Aにおける成功事例
左官工事会社のM&Aにおける成功事例を紹介していきます。
ハウスドゥによる小山建設グループ3社のM&A
2019年8月、「ハウスドゥ」は、「小山建設」の全株式・「小山不動産」株式の55%・「草加松原住建」の全株式を取得し、3社を完全子会社化しました。本M&Aによる取得対価は26億5,000万円です。
「ハウスドゥ」は、全国に1,000店舗の不動産仲介フランチャイズチェーンを展開、さらに不動産売買・リースバック・リフォーム事業を展開しています。譲渡企業である「小山建設」「小山不動産」「草加松建設」の3社は、埼玉県草加市を拠点とし、小山建設を中核とするグループにて、不動産仲介・内装・外装工事業を含む建築業全般を展開しています。
このM&Aは、後継者問題・競争率激化などを抱える不動産業界で、自社とより親和性の高い企業同士が合併し、基盤強化を果たすことが出来た事例です。ハウスドゥによる事業承継プログラムの一環としてM&Aが実行されています。
三幸と都市総合サービスによるM&A
2019年6月に、三幸が都市総合サービスの全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引における譲渡金額は、一般公開されていません。
譲り受け企業である「三幸」は、建物及び店舗の内外装工事と清掃業 · 建物設備機器・建材の販売と保守管理 · 建物設備機器の修理・修繕・施工 · 賃貸建物・不動産管理全般などを手掛ける企業です。一方の「都市総合サービス」は、設備管理業務、環境管理業務、警備・保安業務、清掃業務、特定信書事業、ビジネスサポート等などを手掛ける企業になります。
本件M&Aよりも以前に三幸は、都市総合サービスの株式を8.87%保有しており、既に両者事業に関しての関心を持っていたことが特徴です。今回のM&Aでは、単なる設備補修や保守管理などのメンテナンスにとどまらず、総合的なマネジメントによって、ビルの資産価値・付加価値を高める狙いがあると思われます。
都市総合サービス株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
AVANTIAによるドリームホームグループのM&A
2020年12月、「AVANTIA」と「ドリームホームグループ」3社の間にて資本業務提携に向けた基本合意が締結。さらに2021年4月にAVANTIAがドリームホームグループ3社の全株式を取得し、完全子会社化したM&A事例です。
「AVANTIA」は名古屋市に本社を置き、関東~関西圏にて注文住宅販売・戸建分譲・リフォーム事業などを展開。一方の「ドリームホームグループ」は京都府内にて戸建住宅の販売・施工、不動産仲介などの事業を展開している企業です。
AVANTIAは、ドリームホームグループを完全子会社化することで、中期経営計画の重要戦略として関西地区における営業基盤を強化。関西圏における拡充とシェア拡大に成功しています。
株式会社AVANTIAとの資本提携に向けた最終契約締結のお知らせ
あなぶき建設工業と日装によるM&A
2022年3月に、あなぶき建設工業が日装の全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引における譲渡金額は一般公開されていません。
譲り受け企業である「あなぶき建設工業」は、西日本を中心に各種施設・マンションの建築工事やリニューアル・大規模修繕工事などを展開する建設・修繕企業です。一方の「日装」は、首都圏内を中心にマンション・ビルの大規模修繕工事・耐震工事・設備工事などの事業を運営していた企業になります。
本件は、建築物における修繕事業を手掛ける企業同士のM&A事例です。譲り受け企業側は本取引によって、東日本エリアにおけるサービス提供体制の強化と建設請負事業の基盤強化を果たしています。
TOKAIとマリコオ・ポーロ化工によるM&A
2021年4月に、TOKAIがマルコオ・ポーロ化工の株式を取得し、同社を子会社化したM&Aです。株式譲渡のスキームが用いられましたが、譲渡金額は一般公開されていません。
譲り受け企業である「TOKAI」は、全国におけるLPガス・宅配水事業、静岡・愛知・神奈川エリアを対象とした設備工事・リフォーム工事・リニューアル工事・不動産売買事業を運営する企業です。一方の「マルコオ・ポーロ化工」は、愛知県豊田市を拠点とし、官公庁・マンション管理組合・マンション管理会社などを顧客として大規模修繕工事業を手掛ける企業になります。
本件M&Aは、LPガス・設備工事事業者と大規模修繕業者(リフォーム会社)間での取引事例です。双方の持つリソースを共有し、譲渡企業は営業エリアの拡大を。譲り受け企業は、中京エリアにおける設備工事業の対応分野拡大とリニューアル工事のさらなる成長を果たしています。
株式会社マルコオ・ポーロ化工の株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ
左官工事会社にてM&Aを行うことのメリット
左官工事会社がM&Aをするメリットを売却・買収側の双方から解説します。左官工事会社のM&Aにおける売却・買収のメリットは、以下の通りです。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
|
|
左官工事会社でM&Aの売却を行うことのメリット
左官工事会社でM&Aによる売却を行うことのメリットは、以下の通りです。
事業の選択と集中
景気悪化を辿る日本では、会社存続のために複数の事業を多角展開する企業も珍しくありません。しかし事業の多角化は一歩間違えれば、赤字を生み出し、廃業の原因とさえなり得ます。
M&Aのスキームの一つである「事業譲渡」を用いることで、不要となった事業やその関連資産だけを選別して売却することが可能です。実際に事業譲渡により、特定の事業のみを他者委に売却する企業は多くあります。
M&Aの事業譲渡によって事業を売却することで、事業の選択と集中が出来れば、経営状態を好転させられるかもしれません。得意分野に資金や人員を集中できるため、成功率も高まるはずです。
後継者不足の解消
特に中小規模の左官工事会社における問題として、後継者不足による廃業が挙げられます。後継者不足に悩む左官工事会社が、M&Aの売却を進めることで後継者不足の解消に繋げることができます。
実際に後継者不足解消のため、中小規模の事業者が大手企業に買収されることで、後継者問題の解消に繋がるケースは多いです。M&Aでは、会社を譲渡することで譲受企業から経営陣を迎え、これまで通り会社を存続させる事ができます。
また大手企業の経営者クラスに位置する優秀な人物が経営者となるため、売却側の事業規模がこれまでより拡大される場合が多いです。後継者不足に悩んでいる企業にとって、M&Aを行うことは廃業を避けるための大きな手段のひとつです。
資金調達・オーナーのEXIT
M&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。
- 残っている借入金の返済に充てる
- オーナー自身の引退後の生活資金とする
- 新規事業における資金源とする
一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。
借入における個人保証の解除
借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。左官工事会社に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。
特に中小規模の左官工事会社の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。
M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。
左官工事会社でM&Aの買収を行うことのメリット
左官工事会社でM&Aによる買収を行うことのメリットは、以下の通りです。
新規事業への進出
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに左官工事業界への早期参入が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
従業員の確保
左官工事会社は専門職の一種であるため、専門技術を要した職人の確保が必須です。M&Aによって左官工事会社を買収することで、左官工事業のノウハウを持った従業員を確保することができます。
左官工事会社の運営において特に必要となる人材は、「左官技能士」などの人材です。これらの人材を一から採用するのは非常にハードルが高いですが、M&Aによって国家資格を保有する人材を引き継ぐことができれば、採用コストを削減することもできます。
またM&Aによって人材を引き継ぐことは、左官工事業界におけるノウハウをそのまま獲得することも意味します。承継される人材が持つノウハウを活かせば、左官工事会社のビジネスもより優位に進めることが出来るでしょう。
事業拡大のチャンス
M&Aにおいて買収側が得られる大きなメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。M&Aによって買収側の企業は規模やシェアの拡大を狙うことができます。
左官工事会社のM&Aにおいては、売手となる企業が持つ設備や建物のような有形資産に加え、顧客・取引先情報などの無形資産を手に入れることも可能です。特に左官工事会社の運営においては、「取引先」「顧客情報」などの無形資産は実績に直結する要素であるため、M&Aによる早期事業拡大も視野に入れることができます。
また左官工事を含む建設業界においては、大手企業の市場シェア率が高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小同士のM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を付けることにも繋がります。
安定した受注確保
現在の左官工事会社が抱える課題として、安定した受注の確保が困難であるという点が挙げられます。これは特に中小規模の事業者によくある課題のひとつです。
左官工事業界においては、大手企業から中小規模事業者への案件紹介が一般的となっています。そのため大手企業からの案件紹介がなければ、案件受注が止まってしまい事業が立ち行かない状態になりかねません。
M&Aによって大手企業の傘下に入る、もしくは吸収合併を受けることで、安定した案件確保が可能です。親会社である大手企業の持つブランド力と資金力を活用できるので、受注は非常に安定したものになることでしょう。
左官工事会社のM&Aにおける注意点
左官工事会社のM&Aにおける注意点を解説します。左官工事会社のM&Aにおいて、注意すべき事項は以下の通りです。
- M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
- 避止義務に関して
- 事業許可や人材の引継ぎ
それぞれ詳しく解説していきます。
M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
M&Aでは、買い手と売り手の情報格差(買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富)があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件(買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう)という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
避止義務に関して
M&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。
M&Aにおける競業避止義務とは、M&Aの成約後に譲渡企業に課される義務です。譲渡した事業に対して、譲渡企業が競合するような事業を再度行い、譲受企業に不利益を与えることを避けることが目的となります。
会社法の規定により、事業譲渡を実施した会社は、競業避止義務を負うことになるので注意が必要です。ただし、買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることはできます。将来的に左官工事会社を再度手掛ける可能性があれば、買収側と交渉しましょう。
事業許可や人材の引継ぎ
左官工事会社を運営するうえで重要なのが「建設業許可」です。500万円以上の左官工事案件を請け負うためには、建設業許可の取得が欠かせません。
もし事業譲渡をする際に買収側の企業が建設業許可を有していなければ、500万円以上の左官工事案件を請け負うことは不可能です。ただし、株式譲渡の場合は建設業許可を引き継げるためM&A後も継続して事業を行えます。
許可を取得している同業他社と事業譲渡を実施すれば、左官工事会社の売却がスムーズに進みます。なお、買い手が許可を持っていれば新しく許可を申請する必要はありませんが、法人の名称など変更にかかわる届出は必要です。
左官工事会社のM&Aを成功させるためのポイント
左官工事会社におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。左官工事会社におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格をよく理解しておく
- 統合後のプロセス確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。
M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
無料相談のご予約:
https://sfs-inc.jp/ma/contact
相場価格をよく理解しておく
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
左官工事会社のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。
また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
統合後のプロセス確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新経営体制の構築
- 経営ビジョン実現のための計画策定
- 両社協業のための体制構築・業務オペレーション
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。
左官工事会社におけるM&Aのまとめ
今回は左官工事会社におけるM&Aについて、左官工事業界の現状や特徴、市場動向やM&A事例を踏まえて解説しました。
左官工事業界は事業者の数が非常に多いこともあり、M&Aが盛んに実行されている業界です。M&Aによる経営統合によって事業拡大に成功している左官工事会社も数多く存在することから、左官工事会社にとってM&Aは有効な経営戦略の一つと言えるでしょう。
しかしM&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
無料相談のご予約:
https://sfs-inc.jp/ma/contact