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運送会社のM&A・事業承継の全知識!売却相場・事例・成功ポイントを徹底解説

「運送会社のM&Aにおける動向は?」
「運送会社のM&Aについて知りたい」

この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。

実際に現状「運送会社 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。

そこで、今回はM&Aの専門企業であるM&A HACK」が、運送会社のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。

運送会社におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、運送会社のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。

目次

運送会社とは

運送とは「人や物を目的地に運ぶ」ことを意味した言葉であり、運送会社とは人や物を目的地まで運ぶ事業を営む事業モデルのことです。運送会社は、一般的に「運輸業」に位置付けられることが多く、運輸業の分類には以下のようなものが挙げられます。

  • 道路運旅客運送業
  • 道路貨物運送業
  • 航空運輸業
  • 鉄道業
  • 水運業
  • 倉庫業
  • 運輸に付帯するサービス業
  • 郵便業

運送会社と聞くと一般的にイメージしやすいのが、「トラック運送業(道路貨物運送業)」です。しかし運輸業に位置付けられるビジネスモデルには様々なものが存在し、なかには「倉庫業」のような直接輸送が発生しないものも含まれるのが特徴です。

運送会社のビジネスモデル

運送会社のビジネスモデルについて解説していきます。

トラック運送業

運送会社において最もメジャーなビジネスモデルが、トラック運送業です。トラック運送業とは、荷主(法人企業)から荷物を受け取り、トラック等の自動車を使用して、荷主が指定した目的地まで荷物を届ける事業です。

物流業界では約7万5千の事業者が存在していると言われていますが、その約8割がトラック運送事業者となっています。またトラック運送事業者の売上規模は物流業界の約6割を占めると言われており、業界全体の市場規模としても非常に大きな割合を占めることが特徴です。

近年では「2024年問題」などの影響により、トラック運送業における事業の在り方が大きく変動する可能性が示唆されています。トラック運送業は典型的な「労働集約型」のビジネスモデルですが、今後は事業変革が起きる可能性が高いです。

宅配便業

運送会社の中には、トラック運送業のみならず、宅配便業を手掛ける会社も多いです。宅配便業とは、消費者や企業等の不特定多数の荷主から荷物を受け取り、利用しやすい料金設定で荷物を運送するビジネスモデルになります。

宅配便業の市場は、「佐川急便」「ヤマト運輸」「日本郵便」などの大手企業による独占市場です。宅配便業の市場にベンチャー企業や中小零細企業が割って入ることは容易ではなく、M&Aなどを用いて強力な事業基盤を築くことが必須です。

しかし近年ではECサイト市場の急激な活性化により、宅配便業も大きな変革を求められています。これまでは大手企業による独占市場でしたが、今後はベンチャー企業や個人事業主が新規参入を果たす可能性も示唆されています。

倉庫保管業

運送会社が手掛けるのは、トラック運送業や宅配便業だけではありません。荷主から預かった荷物を倉庫にて保管しておくことも、運送会社における重要な事業の一部です。

物流業務における「保管」とは、倉庫などで荷主から預かった商品や荷物を預かり、管理することです。商品や荷物が入庫してから所定のロケーションで在庫管理を行い、ニーズに応じて発送までの流れをスムーズに行うことが目的となります。

また近年では倉庫保管業の需要が加速度的に増加しているのが特徴です。大手運送会社を中心に巨大な自社倉庫を所有し、倉庫保管業を主軸としてビジネスを展開している企業も増えてきています。

運送会社に必要な業許可・資格・人材

運送会社に必要な業許可・資格・人材について解説していきます。

運送会社に必要な業許可

運送会社の運営においては、「運送業許可」の取得が必須です。運送業許可とは、他人から運賃を得て、トラックなどを使い貨物を運ぶための事業許可になります。原則として、自社以外の人から運賃をもらって荷物を運ぶ場合には、運送業許可を得ないと事業をスタートさせることができません。

運送業許可は地方運輸支局もしくは地方運輸局への申請が必須です。また運送業許可を得るためには、下記の条件を満たしておくことが必要になります。

  • 人員:運転者5人・運行代理者1人。最低でも6人の従業員が必須となる。
  • 営業所:「市街化調整区域」に該当しない地域に営業所を最低1箇所必須
  • 車両:軽自動車以外で、かつ車検証上で用途欄に「貨物」と記載されているトラックを最低5台以上保有すること。

上記の通り、人・場所・車両の条件を満たすことが必須です。細かな条件については、運輸局や専門家に相談しておくことが推奨されます。

運送会社に必要な資格

運送会社の業務は誰でもこなせる訳ではありません。そのため、運送会社で雇用する人材を選定する際には、取得している資格内容を把握することが必須です。運送会社で役立つには以下のようなものがあります。

  • 自動車(大型、中型、大型特殊、けん引など)
    「大型」「中型」「大型特殊」「けん引」といった特殊車両の運転免許が必要なケースが多い。いずれの免許も、年齢に加えて他の自動車免許の有無や、免許取得後の経過年数などが受験資格として設けられている。
  • 衛生管理者
    安全衛生技術試験協会が発行する国家資格。50人以上の労働者がいる事業所では、必ず衛生管理者の選任が必須となる。主に倉庫や工場などにおける従業員の健康管理や作業環境の整備を担う。
  • 倉庫管理者
    倉庫内の火災防止や安全作業、作業員の労務管理業務に携わるための資格です。倉庫業法改正に伴って設けられ、事業登録が倉庫業の場合、倉庫管理主任者の選任と業務の遂行は営業上義務付けられている
  • 運行管理者
    安全に輸送することを目的とし、乗務割の作成・管理やドライバーの勤務指導などを行う国家資格。貨物と旅客の2種類がありますが、物流業では貨物の資格が必要。運行管理者制度では、車両数に応じた運行管理者を配置することが義務付けられている。
  • 物流経営士
    物流コンサルタントとして物流現場で働く際に役立つ資格です。トラック運送事業の経営者を中心に、経営の基礎から物流に関する幅広い知識を習得していることを示す。受講者同士が交流しやすく、ネットワーク構築や情報交換にも役立つ。

上記の他にも、「フォークリフト運転技能者」や「包装管理士」など、運送会社の運営に役立つ資格には様々なものが存在します。ビジネスモデルによって役立つ資格は異なっているので、自社にあった資格所有者を採用することが重要です。

運送会社に必要な人材

運送会社の運営においては、複数の職種が組み合わさることで事業運営が可能となります。運送会社の運営において必要とされる職種は、主に以下の通りです。

職種 業務内容
SD 生産者から受注した商品を実際に消費者に届ける仕事。輸送や配送の業務が運送業界のメイン業務であり、各企業でコスト削減や効率化が必須となる。
営業 主に法人営業が主流。物流会社のサービスを活かし、「輸送手段の提供」や「倉庫での保管」を行うことで、「輸送賃金の見直し」や「生鮮食品の保管」といった顧客の物流課題を解決する。
管理者 管理は、生産者から預かった商品を管理する職種。商品が生産者から消費者に渡るには様々な工程が存在する。
倉庫作業員 倉庫内における貨物の運搬やピッキング作業などを行うための職種。作業員だけでなく、倉庫管理者などのマネジメント人員も必要となる。
事務職 事務作業全般を担う。受付・会計・事務連絡などの業務を担当する

運送会社の運営には、上記のような人材を確保することが必須です。また運送業以外のビジネスも手掛ける場合には、他の職種人員の確保も必要となります。

運送会社の市場動向

運送会社の市場動向について詳しく解説していきます。

宅配事業は拡大傾向

出典:国土交通省「令和3年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法」

上記は、国土交通省による「令和3年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法」の集計結果です。本調査によれば、国内における宅配便取扱個数は、昭和60年から右肩上がりで増加していることが分かります。

特に近年では、EC市場により宅配便需要が急激に増加したことが特徴です。同調査によれば、2021年度の宅配便(トラック)取扱個数は約48億8206万個で、2020年度からは約2%増加したとされています。

今後もEC市場の発達と成長は続くと見込まれており、同時に宅配便の需要も増加していく見込みです。これにより、現在の大手独占市場が変革をもたらせられる可能性もあります。中小企業・個人事業主が宅配便業に新規参入される時代も予測されています。

新規参入が多い

運送会社における「トラック運送業」のビジネスモデルは、新規参入が非常に多いことが特徴です。物流二法の時代と比較すれば、現在は落ち着きを見せているものの、毎年約1,000以上が新規参入を果たしているとされています。

トラック運送業への新規参入事業者が多い理由は、ビジネスモデルの関係上、新規参入のハードルが低いためです。車両やドライバーの確保など一定のハードルはあるものの、特別な知見や技術がなくとも事業をスタートできるため、新規参入する企業が多くなっています。

また近年ではEC市場の進展と併行して、運送業の需要が高まっていることも、新規参入を促す要因のひとつです。今後も需要は高騰していくことがほぼ間違いないため、新規参入参入者も増加し続けていくことでしょう。

テクロノジーの導入

近年は、日本を含め全世界で「DX化」「IoT」「AI」などのテクロノジーの進化が発生している時代です。日本国内の運送業界においてもIoTやAIシステムを活用した最先端テクロノジーの導入がはじまっています。

運送業界において、特に注目を集めているテクロノジーが、「トラックの自動運転化」です。米国では既に一部商業運用もされており、日本においても平成30年に北関東道でトラック隊列走行の実証がおこなわれています。

ただし現段階のテクロノジーレベルだと完全無人での実用化は難しく、トラックドライバーの搭載は必須です。しかし今後さらにテクロノジーが進化すれば、「完全無人」での運送が可能となる可能性もあるため、運輸・物流業界において大きな変革をもたらすことでしょう。

運送会社が抱える課題

運送会社が抱えている課題について解説していきます。

人手不足と後継者不在

運送会社が抱える最大の課題のひとつとして、人材・後継者不足があります。これは運送会社を含む、運輸・物流業界全体が抱える最大の課題のひとつです。

運送会社が人材不足にある理由のひとつが、「職業イメージ」にあるとされています。運送会社での仕事は、「長時間労働」「高度な運転技術が必要」などのイメージがクローズアップされやすいため、肉体労働を避ける傾向にある現代人にとっては積極的な就職先候補とはなり得ないのです。

また運送業界の中核を担うのが、中小規模事業者ですが、その多くが後継者不足の課題を抱えています。経営者自身も高齢化しており、経営手腕を持った後継者を育成することも困難な状況です。

2024年問題への対応

運送会社に大きな影響を与えているのが、働き方改革関連法による通称「物流の2024年問題」です。2024年4月1日からは、自動車運転業務の時間外労働が年に960時間の上限が設けられることになりました。

ドライバーの運転時間に制限が設けられるということは、ドライバー1人あたりの走行距離が短くなることを意味します。つまり走行距離が短くなることで、遠隔地まで荷物を運べなくなるのです。

2024年問題が起こることで、運送会社の売上・利益が減少し、結果として荷主企業の運賃上昇やドライバーの収入減少などが懸念されています。これからの運送会社は、2024年問題への対応策と対策が業績を左右すると言っても過言ではありません。

価格競争の激化

運送会社が抱えている課題のひとつに、価格競争の激化があります。運送業界の価格競争が激化している理由のひとつは、中小規模を中心とした事業者数が非常に多いためです。競合他社が複数存在するため、価格競争が発生しています。

公益社団法人全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業ー現状と課題 ー2022」によると、トラック運送業者662,844社(令和3年3月末現在)のうち9割以上を占めるのは従業員300名以下の中小企業です。

事業者数が多いことで、トラック運送会社同士の市場競争が発生。結果として1件当たりの運送単価が安くなるといった現象が発生しています。価格競争による単価引き下げにより、業績赤字を抱える運送会社も少なくありません。

運送会社におけるM&Aの動向

運送会社におけるM&Aの動向について解説していきます。

DX化に向けたM&A

現在の日本国内における全業界では、DX化に向けた取り組みが加速度的に発生しています。運送業界も類にもれず、DX化に向けた取り組みの強化を図っている業界のひとつです。そのため運送会社におけるM&Aにおいても、DX化に向けた事例が多く発生しています。

運送会社におけるDX化で注目されているのが、「運送車両の自動運転」や「倉庫管理におけるシステムの機械化」などです。大手運送会社を中心に、運送業に関連するテクロノジーのノウハウを所有しているIT・ベンチャー企業とのM&Aが発生しています。

一方で、運送業界における大部分のシェアを占める中小規模事業者は、システムがあっても十分な活用ができなかったり、システムが複雑すぎると使いこなすことができないケースも多いです。システムの導入前にテクロノジーに関する知見を得ることが目下の課題となっています。

異業種からの新規参入

運輸・物流業界は、異業種からのM&Aによる新規参入が盛んであることが特徴です。運輸・物流業界に新規参入することが多い異業種には、以下のものがあります。

  • EC関連会社
  • 自動車関連会社
  • IT関連会社

急激な成長を見せるEC関連会社のなかには、自社物流網を構築する目的で、M&Aによる運輸・物流業界への新規参入を果たすケースも存在します。他には、自動車関連会社やIT関連会社など、相互にシナジーを創出しやすい業界の新規参入が多いです。

運輸・物流業界への新規参入が多い理由は、市場成長率が他業界に比べ高いからです。競争率が高い業界ではあるものの、資金力やノウハウに自信のある企業は、例え新規参入であっても、利益を上げられる見込みがあれば、積極的にM&Aを用いて参入を果たしてきます。

後継者不足によるM&A

特に中小規模の運送会社で多発しているのが、後継者不在という問題です。実際に後継者不在により事業継続が難しく、別の運送会社にM&Aを依頼するケースも増えてきています。

経営者の周りに後継者候補がいない場合でも、M&Aによる事業承継であれば買い手企業が後継者(新たな経営者)となるため、自社の存続が可能です。M&Aをすることで廃業を免れることが出来るため、既存従業員の雇用継続をすることもできます。

また後継者不在によるM&Aにて事業規模が拡大した運送会社も多く存在します。特に運送業界のM&Aでは、M&A後に買い手が持つ運送事業におけるノウハウと戦略を取り入れ、売上が伸びたケースも多いです。

運送会社のM&Aにおける成功事例

運送会社のM&Aにおける成功事例を紹介します。

東洋運輸倉庫とSBSホールディングスによるM&A

2021年1月に、SBSホールディングスが東洋運輸倉庫の保有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられ、取得価額は72億円にのぼっています。

譲り受け企業である「SBSホールディングス」は、運輸業を主体とした総合的な物流サービスを手掛ける大手運送会社です。一方の譲渡企業である「東洋運輸倉庫」は、通関業・倉庫業・貨物運送取扱業などを手掛ける企業になります。

本件M&Aは、運送会社同士の取引事例です。譲り受け企業であるSBSホールディングスは、東京臨海エリアにおける最先端倉庫への投資を積極的に進めており、東京臨海部の東大荻島と若洲に大型倉庫を保有する東洋運輸倉庫の買収が実施されました。

SBSロジコム/SBSロジコムと東洋運輸倉庫が合併

フジトランスポートとFLPによるM&A

2021年2月に、フジトランスポートがFLPの株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられましたが、譲渡金額は公開されていません。

譲り受け企業である「フジトランスポート」は、グループ会社によるトラック販売・システム開発・自動車整備事業・長距離輸送業を展開する企業です。一方の譲渡企業である「FLP」は、埼玉県でトラックの修理・整備・販売などの事業を手掛けています。

本件M&Aは、自動車整備会社と物流企業による事例です。譲り受け企業であるフジトランスポートは、全国的な事業拠点拡大戦略の一環として取引を施行しています。譲渡企業であるFLPもフジトランスポートの傘下となることで、後継者不在問題を解説しました。

フジトランスポート株式会社

ケーワイケーとトナミホールディングスによるM&A

2018年6月に、トナミホールディングスがケーワイケーの保有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。

譲り受け企業である「トナミホールディングス」は、運送や倉庫事業を始めとした総合的な物流サービスを手掛ける大手運送会社です。一方の譲渡企業である「ケーワイケー」は、電子顕微鏡などの精密機械や建設機器などの工業製品、化粧品・医薬品といった幅広い製品の運送を主力事業としていた企業になります。

本件M&Aは、総合運送事業を手掛ける会社同士の取引事例です。譲り受け企業であるトナミホールディングスは、ケーワイケーが有していた運送力や地域密着型の配送サービスに関するノウハウを自社事業に活用することを目的としています。

「株式会社ケーワイケー」の株式取得のお知らせ

リコーロジスティックスとSBSホールディングスによるM&A

2018年8月に、SBSホールディングスがリコーロジスティックスの保有する発行済株式66.6%を取得したM&Aの事例です。本件取引は、株式譲渡のスキームが用いられ、取得価額は180億円となっています。

譲り受け企業である「SBSホールディングス」は、運輸業を主体とした総合的な物流サービスを手掛ける大手運送会社です。一方の譲渡企業である「リコーロジスティックス」は、リコーグループの物流子会社として、複写機などの精密機器や機械部品、オフィス向け消耗品などのトラック配送事業を行っています。

本取引では、2024年問題を中心とした物流業界における様々な課題を互いに解決するためのシナジー効果の創出が目的です。また譲り受け企業であるSBSホールディングスは、M&Aを実施することで、資本や人的リソース、ノウハウの導入による成長スピードの加速や競争力強化を実現することも狙いとしています。

すぐわかるSBSグループ

桂通商とエア・ウォーターによるM&A

2020年4月に、エア・ウォーターが桂通商の所有する発行済株式の90%を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引により、桂通商はエア・ウォーターの連結子会社となっています。

譲り受け企業である「エア・ウォーター」は、産業ガスや医療、エネルギー、食品、物流、エアゾールなど、幅広く事業を展開している多角化企業です。一方の譲渡企業である「桂通商」は、青果や一般貨物の運送事業を手掛けています。

本取引は、ドライバー不足や法規制強化などにより、厳しさを増している運送業界で生き残る目的で実施されました。エア・ウォーター社が保有するインフラや経営資源を効果的に活用することで、事業の領域拡大を目指しています。

株式会社桂通商の株式取得について

パナソニックロジスティクスと日本通運によるM&A

2014年1月に、日本通運がパナソニックロジスティクスの保有する発行済株式の66.6%を売却し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。

譲り受け企業である「日本通運」は、陸・海・空すべての手段を柔軟に組み合わせ、国内・国際運送を手掛ける大手運送会社です。一方の譲渡企業である「パナソニックロジスティクス」は、貨物の運送をはじめとした物流の業務を総合的に行う会社になります。

本件M&Aは、ともに大手総合運送会社同士の取引事例です。総合物流企業である日本通運の国際的なネットワーク、および物流の最適化につながるさまざまなノウハウを取得することで、成長性と収益性の向上を目的としています。

パナソニック ロジスティクス株式会社の株式の一部譲渡に関する基本合意について

北区小型運送とHINODE&SONSによるM&A

2019年9月に、HINODE&SONSが北区小型運送の保有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&A事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。

譲り受け企業である「HINODE&SONS」は、総車両数1,000台を超える車両を抱える総合的な物流サービス会社です。一方の譲渡企業である「北区小型運送」は、危険物や石油化学製品の貨物輸送において豊富な実績を持つ運送会社になります。

本件M&Aは、運輸・物流会社同士の取引事例です。HINODE&SONSのプレリリースにおいては、、M&Aによって新しい会社を迎えることで、グループ会社間による協力体制について一層の強化を図り、シナジー効果を創出することが目的とされています。

子会社の合併について(株式会社日之出運輸(東日本))

千葉三港運輸とハマキョウレックスによるM&A

2015年10月に、ハマキョウレックスが千葉三港運輸の所有する全株式を取得し、同社を連結子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。

譲り受け企業である「ハマキョウレックス」は、アパレル・医薬品・食品のジャンルを中心に、貨物自動車運送業や物流センター業を手掛ける企業です。譲り受け企業である「千葉三港運輸」は、千葉県を中心にトラックによる石油化学製品等の運送や保管・管理を行う企業になります。

本件M&Aは、運輸・物流会社同士の取引事例です。譲り受け企業であるハマキョウレックスは、千葉三港運輸が有する石油化学製品に関する物流ノウハウ、新規顧客、首都圏における拠点の獲得を目的としています。

千葉三港運輸株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

タカラ物流システムと両備ホールディングスによるM&A

2016年3月に、両備ホールディングスがタカラ物流システムの保有する水宅配事業を買収したM&Aの事例です。本取引は事業譲渡のスキームが用いられ、売却対象となった事業の年間売上高はおよそ4億円を見込めるとされています。

譲り受け企業である「両備ホールディングス」は、物流や交通、観光、ITなどの事業を展開する多角化企業です。一方の譲渡企業である「タカラ物流システム」は、宝ホールディングスの物流子会社で、宝グループの酒類や食品を中心に運送事業を行うだけでなく、流通加工や通販など幅広く事業を行っています。

本件M&Aは、物流関連多角化企業と運送会社による取引事例です。譲渡側であるタカラ物流システムは、本業である宝酒造の物流に特化する目的で水宅配の事業を売却しています。深刻化するドライバー不足などの問題に着手するための戦略の一環です。

タカラ物流システムから水宅配事業を譲受

東京特殊電線と司企業によるM&A

2016年3月に、司企業が東京特殊電線の子会社である東特運輸の保有する株式のうち55%を取得し、同社を自社グループ傘下としたM&A事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられ、取得価額は約1億9,980万円となっています。

譲り受け企業である「司企業」は、全国に70営業拠点を持つ総合物流企業です。一方の譲渡企業である「東特運輸」は、東京特殊電線の子会社で、東京特殊電線における運送や貨物保管などを手掛けています。

本件M&Aは、総合物流会社と運送会社による取引事例です。譲渡企業である東京特殊電線が本業とは異なる事業を買収することで、事業の効率化を図ることを目的としています。

TTC ホールディングス株式会社による東京特殊電線株式会社(証券コード:5807)の普通株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ

運送会社にてM&Aを行うことのメリット

運送会社がM&Aをするメリットを売却・買収側の双方から解説します。運送会社のM&Aにおける売却・買収のメリットは、以下の通りです。

売却側のメリット 買収側のメリット
  • 従業員の待遇改善
  • 後継者不足の解消
  • 資金調達・オーナーのEXIT
  • 借入における個人保証の解除
  • 事業拡大のチャンス
  • 新規事業への進出
  • シナジー効果の創出

運送会社でM&Aの売却を行うことのメリット

運送会社でM&Aによる売却を行うことのメリットは、以下の通りです。

  • 従業員の待遇改善
  • 後継者不足の解消
  • 資金調達・オーナーのEXIT
  • 借入における個人保証の解除

それぞれ詳しく解説していきます。

従業員の待遇改善

M&Aによる会社売却では、従業員の待遇改善を図れるケースも多いです。これまでの組織体制が見直され、資金的・人的な余剰が発生すれば、既存従業員の働き方も見直されることでしょう。

特に運送会社においては、長時間労働が発生しやすいドライバーの労働環境が問題視されやすいです。働き方改革による「2024年問題」も含め、運送業各社がドライバーの働き方改善に尽力を求められています。

特に資金力・人員に乏しい中小規模の運送会社は、一人のドライバーに係る負担も大きくなりがちです。規定の時間を大きく超えた労働時間を一人のドライバーに課さなければ、事業が成り立たないケースも実際には珍しくありません。

M&Aによる自社の売却にて、大手企業もしくは人員資源に富んだ運送会社の傘下に入ることで、ドライバー不足の解消に繋がる可能性は高いです。オーナー側はもちろんのこと、既存従業員自身も大きなメリットを得ることができます。

後継者不足の解消

特に中小規模の運送会社における問題として、後継者不足による廃業が挙げられます。後継者不足に悩む運送会社が、M&Aの売却を進めることで後継者不足の解消に繋げることができます。

実際に後継者不足解消のため、中小規模の事業者が大手企業に買収されることで、後継者問題の解消に繋がるケースは多いです。M&Aでは、会社を譲渡することで譲受企業から経営陣を迎え、これまで通り会社を存続させる事ができます。

また大手企業の経営者クラスに位置する優秀な人物が経営者となるため、売却側の事業規模がこれまでより拡大される場合が多いです。後継者不足に悩んでいる企業にとって、M&Aを行うことは廃業を避けるための大きな手段のひとつです。

資金調達・オーナーのEXIT

M&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。

  • 残っている借入金の返済に充てる
  • オーナー自身の引退後の生活資金とする
  • 新規事業における資金源とする

一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。

借入における個人保証の解除

借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。運送会社に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。

特に中小規模の運送会社の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。

M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。

運送会社でM&Aの買収を行うことのメリット

運送会社でM&Aによる買収を行うことのメリットは、以下の通りです。

  • 事業拡大のチャンス
  • 新規事業への進出
  • シナジー効果の創出

それぞれ詳しく解説していきます。

事業拡大のチャンス

M&Aにおいて買収側が得られる大きなメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。M&Aによって買収側の企業は規模やシェアの拡大を狙うことができます。

運送会社のM&Aにおいては、売手となる企業が持つ車両や倉庫のような有形資産に加え、顧客・取引先情報などの無形資産を手に入れることも可能です。特に運送会社の運営においては、「車両」「倉庫」「ドライバー」などの有形資産は実績に直結する要素であるため、M&Aによる早期事業拡大も視野に入れることができます。

また運送業界においては、競合他社が多く、市場競争率が非常に高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小同士のM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を付けることにも繋がります。

新規事業への進出

M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに運送業界への早期参入が可能となります。

景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。

また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。

シナジー効果の創出

M&Aによる企業間取引において最も着目すべきポイントが、シナジー効果の創出です。取引によって如何なるシナジーを創出できるかが、M&Aを実施するポイントとなります。運送会社におけるM&Aでは、以下のようなシナジーを期待することが可能です。

  • ドライバーの確保
  • 集荷拠点の獲得
  • 取引先の獲得
  • 運営ノウハウの共有
  • コスト削減
  • 価格交渉力の向上

「ドライバーの確保」や「取引先の獲得」など目に見える形での効果はもちろんのこと、「コスト削減」や「価格交渉力の向上」など無形のメリットを得ることも可能です。また、どのようなシナジー効果を創出できるかは、取引先企業によっても異なります。

運送会社のM&Aにおける注意点

運送会社のM&Aにおける注意点を解説します。運送会社のM&Aにおいて、注意すべき事項は以下の通りです。

  • M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
  • 避止義務に関して
  • 既存従業員の離職対策

それぞれ解説していきます。

M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ

M&Aでは、買い手と売り手の情報格差(買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富)があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。

買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件(買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう)という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。

そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。

避止義務に関して

M&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。

M&Aにおける競業避止義務とは、M&Aの成約後に譲渡企業に課される義務です。譲渡した事業に対して、譲渡企業が競合するような事業を再度行い、譲受企業に不利益を与えることを避けることが目的となります。

会社法の規定により、事業譲渡を実施した会社は、競業避止義務を負うことになるので注意が必要です。ただし、買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることはできます。将来的に運送会社を再度手掛ける可能性があれば、買収側と交渉しましょう。

既存従業員の離職対策

買収先の既存従業員による離職対策は、M&Aを成功させるために留意すべきポイントのひとつです。既存従業員の離職を防ぎ、優秀な人材を雇用し続けることが重要になります。

経営者視点から見ればM&Aは立派な経営戦略であり、大きなシナジー効果を生むものです。しかし従業員にとっては、今後の働き方や会社との雇用関係に大きな変化をもたらす為、M&Aによって雇用条件や働き方が悪化すると離職を招きます

M&Aによる離職を防ぐためには、従業員の働き方や雇用関係の変化に対し、敏感に配慮することが重要です。既存従業員が不安となる要素はあらかじめ取り除いておくことが、M&Aによる離職を防ぐ手段として有効になります。

運送会社のM&Aを成功させるためのポイント

運送会社のM&Aを成功させるためのポイントについて解説します。運送会社のM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。

  • M&A戦略の立案
  • PMI(統合後プロセス)の確立
  • 相場価格への理解

それぞれ詳しく解説していきます。

M&A戦略の立案

M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。

M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。

M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。

  • M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
  • 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
  • いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
  • 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
  • M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)

上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。

また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。M&A専門業者に委託することで、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。

当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。

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相場価格をよく理解しておく

M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。

運送会社のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。

  • 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
  • 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分

当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。

また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。

統合後のプロセス確立

M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。

PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。

  • 新経営体制の構築
  • 経営ビジョン実現のための計画策定
  • 両社協業のための体制構築・業務オペレーション

上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。

またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。

運送会社におけるM&Aのまとめ

今回は運送会社におけるM&Aについて、運輸・物流業界の現状や特徴、市場動向やM&A事例を踏まえて解説しました。

運輸・物流業界は事業者の数が非常に多いこともあり、M&Aが盛んに実行されている業界です。M&Aによる経営統合によって事業拡大に成功している運送会社も数多く存在することから、運送会社にとってM&Aは有効な経営戦略の一つと言えるでしょう。

しかしM&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。

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