「電気通信工事会社を売却するときの相場が知りたい」
「電気通信工事会社のM&Aを成功させるコツは?」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
しかし、ネットで「電気通信工事 M&A」などと検索しても、信頼性に欠ける情報や難解な専門用語が並んでいる記事が多いのが現状です。
そこで今回は、M&Aの専門企業である「M&A HACK」が、電気通信工事業界のM&Aについて分かりやすく解説します。
電気通信工事会社の売却相場や、M&A事例、成功のポイントなどを簡潔に紹介していきますので、電気通信工事会社のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 1 電気通信工事とは
- 2 電気通信工事業界の市場動向と市場規模
- 3 電気通信工事業の動向と今後
- 4 電気通信工事業界のM&Aの動向
- 5 電気通信工事のM&Aをするメリット
- 6 電気通信工事のM&Aの注意点
- 7 電気通信工事におけるM&Aを成功させるためのポイント
- 8 電気通信工事業のM&Aにおける成功事例
- 8.1 JESCOホールディングス株式会社による阿久澤電機株式会社のM&A
- 8.2 株式会社中電工による杉山管工設備株式会社のM&A
- 8.3 株式会社アウトソーシングによるIntegrity Networks, Inc.のM&A
- 8.4 株式会社アウトソーシングによるCalifornia Pacific Technical Services LLCのM&A
- 8.5 株式会社ミライト・ホールディングスによる西日本電工株式会社のM&A
- 8.6 株式会社アウトソーシングによる株式会社アイテックのM&A
- 8.7 コムシスホールディングス株式会社によるNDS株式会社のM&A
- 8.8 株式会社協和日成によるガイアテック株式会社のM&A
- 8.9 エア・ウォーター株式会社による株式会社丸電三浦電機のM&A
- 8.10 コムシスホールディングス株式会社による朝日設備工業株式会社のM&A
- 8.11 四電工株式会社によるアイ電気通信株式会社のM&A
- 8.12 株式会社協和エクシオによるLeng Aik Engineering Pte LtdグループのM&A
- 8.13 株式会社ミライト・ホールディングスによる塚田電気工事株式会社のM&A
- 9 まとめ
電気通信工事とは
このセクションでは、電気通信工事業界の主な業務内容から始め、電気通信工事業界の資格と技術などについて解説していきます。
電気通信工事の主な業務内容
電気通信工事は、情報通信ネットワークの構築・維持・管理に不可欠な工事です。主な業務内容は、通信ケーブルの敷設や通信設備の設置、光ファイバーの融着、無線通信設備の設置などです。
これらの工事は、通信事業者やインターネットサービスプロバイダー(ISP)、企業や公共機関などから受注し、通信インフラの整備・拡張・メンテナンスを行います。
具体的には、電柱や地下埋設管へのケーブル敷設、通信機器の据え付け、光ファイバーの接続・融着、無線基地局の設置・調整などが含まれます。
また、老朽化した設備の更新や災害対策工事、通信ネットワークの性能測定・評価なども電気通信工事の重要な業務です。これらの工事を通じて、高品質で安定的な通信サービスの提供を支えています。
電気通信工事に必要な資格と技術
電気通信工事は、高度な専門知識と技術が要求される分野です。工事に携わる技術者は、国家資格である電気通信主任技術者や工事担任者などを取得している必要があります。
これらの資格は、電気通信工事の設計・施工・維持管理に関する知識と技術を有していることを証明するものです。
また、光ファイバー工事、LANケーブル工事、ネットワーク構築など、各分野の専門的な技術を身につけていることが重要です。これには、ケーブルの種類や特性、接続方法、測定機器の使用法など、幅広い知識と実践的な技能が含まれます。
さらに、技術者は常に最新の通信技術や機器に関する知識をアップデートし、変化する市場のニーズに対応できるようにしなければなりません。
安全管理や品質管理、工程管理などの能力も求められます。このように、電気通信工事には多岐にわたる専門性と高い技術力が必要とされています。
電気通信工事に関わる主要な技術と材料
電気通信工事では、様々な技術と材料が駆使されています。以下の表は、主要な技術とその概要をまとめたものです。
技術名 | 概要 |
光ファイバー融着 | 光ファイバーケーブルを接続する技術。専用の融着機を用いて、ファイバーの端面を高精度に接合することで、信号の損失を最小限に抑えます。 |
ケーブル接続 | 銅線ケーブルや同軸ケーブルを接続する技術。確実な電気的接触と信号の伝送品質を確保します。 |
ネットワーク設計 | 通信ネットワークの構成や機器の配置を最適化し、効率的で信頼性の高いシステムを構築するための技術。 |
無線通信設備の設置 | アンテナの選定や方向調整、無線機器の設定などを行う技術。 |
また、電気通信工事で使用される主な材料は以下の通りです。
- 光ファイバーケーブル
- 同軸ケーブル
- LANケーブル
- 通信用ラック・ボックス
- アンテナ
- 無線機器
これらの材料は、信号の伝送特性や耐久性、施工性などを考慮して選定されます。
電気通信工事は、上記の技術と材料を適切に組み合わせ、高品質な通信インフラの構築を実現しています。これらの技術と材料の進歩に伴い、より高速、大容量、低遅延の通信サービスが可能となっています。
電気通信工事業界の市場動向と市場規模
M&Aにおいて業界の現状とこれからを理解しておくことは非常に重要です。そこで、ここでは、電気通信工事業界の動向と今後について解説していきます。ぜひ参考にしてください。
電気通信工事業界が持つ課題
電気通信工事業界は、常に技術革新と市場の変化に対応していく必要があります。業界が直面する主な課題は以下の通りです。
- 5Gなどの新技術への対応
- 5Gの高周波数帯域や新たな通信方式に対応するための技術者のスキルアップ
- 新技術に対応するための設備投資
- 人材の確保と育成
- 熟練技術者の高齢化と技術継承の課題
- 次世代を担う若手人材の確保と育成の必要性
- コスト競争力の強化
- 工事の効率化によるコストダウン
- 資材調達の最適化によるコスト削減
- 通信インフラの老朽化対策
- 設備の計画的な更新
- 老朽化した設備の維持管理
- 災害対策
- 災害時の迅速な復旧体制の整備
- 災害に強い通信インフラの構築
電気通信工事業界は、これらの課題に適切に対処しながら、安定的で高品質な通信サービスの提供を続けていく必要があります。技術革新への対応、人材育成、コスト管理、インフラ維持、災害対策など、多面的な取り組みが求められています。
市場規模の推移と成長率
電気通信工事業界の市場規模は、設備工事全体の受注高と密接に関連しています。2022年度の設備工事全体の受注高は、前年度比10.6%増の3兆7120億円で、2年連続の増加となりました。
民間向け工事は同12.8%増の3兆4119億円、官公庁向け工事は同9.9%減の3000億円でした。電気通信工事業界は、5Gの普及やデジタルトランスフォーメーションの加速を背景に、通信インフラへの投資が増加傾向にあり、需要の拡大が予想されます。
ただし、企業の設備投資の動向や政府の通信行政の政策の影響を受けやすいため、外部要因を注視しながら市場動向を見極める必要があります。
今後、5Gの本格的な展開やIoTの普及などを追い風に、電気通信工事の市場規模は着実に拡大していくことが期待されます。
参考:日本経済新聞社「設備工事(通信)業界 市場規模・動向や企業情報」
主要企業とその市場シェア
電気通信工事業界には、大手企業が寡占状態で存在しています。主要企業としては、コムシスホールディングス、エクシオグループ、ミライト・ワンの3社が挙げられます。これらの企業は、業界の3強と呼ばれ、市場の大部分を占めています。
コムシスホールディングスは、2023年3月期の連結売上高が5,632億9,500万円、営業利益が321億400万円となりました。前期比では売上高が4.4%減、営業利益が25.3%減と減収・減益となりましたが、2023年4〜12月期では売上高が前年同期比7.2%増の3,837億5,300万円、営業利益が同43.2%増の242億9,200万円と増収・営業増益に転じています。
エクシオグループは、2023年4〜12月期の受注高が前年同期比3.4%増の4,785億4,200万円となりましたが、同期間の業績については減収・営業減益となっています。
ミライト・ワンは、2023年4〜12月期の受注高が前年同期比7.2%増の4,135億1,200万円と堅調に推移しています。
国内の通信工事需要の縮小が見込まれる中、各社は工事原価の低減や新規事業の開拓に注力しています。今後も、これらの主要企業が業界をリードしていくことが予想されますが、市場環境の変化に適応しながら、競争優位性を維持していくことが求められます。
参考:日本経済新聞社「設備工事(通信)業界 市場規模・動向や企業情報」
新技術の影響
電気通信工事業界は、新技術の登場によって大きな影響を受けます。現在、最も注目されているのは5G通信技術です。
5Gは、高速・大容量・低遅延の通信を実現し、これまでにない革新的なサービスを可能にします。5Gの普及に伴い、基地局の増設や通信設備の高度化など、大規模な工事需要が見込まれています。
これは、電気通信工事業界にとって大きなビジネスチャンスであると同時に、技術的な課題でもあります。高周波数帯域や新たな通信方式に対応するため、技術者のスキルアップや設備投資が必要となります。
また、IoTの普及も工事業界に影響を与えています。センサーやデバイスの設置、ネットワークの構築など、IoT関連の工事需要が拡大しています。これは、従来の通信インフラ工事とは異なる新たな市場であり、専門性の高い技術が求められます。
さらに、AI やビッグデータ、クラウドなどのデジタル技術も、工事の効率化や品質向上に活用されつつあります。電気通信工事業界は、これらの新技術を積極的に取り入れ、事業機会を拡大していく必要があります。同時に、技術革新のスピードに対応し、柔軟に変化していくことが求められています。
電気通信工事業の動向と今後
電気通信工事業界における動向について解説します。これから電気通信工事業界のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。
5G時代における電気通信工事業の役割
5G時代の到来により、電気通信工事業は新たな役割を担うことになります。超高速・大容量・低遅延の5Gネットワークを構築するためには、基地局の増設や光ファイバーの敷設など、大規模な工事が必要です。
電気通信工事業者は、5G関連工事の中核を担い、次世代通信インフラの整備を推進していくことが求められます。また、5Gの特性を活かした新たなサービスやアプリケーションの登場に伴い、通信設備の高度化や最適化も重要な役割となります。
ローカル5Gなど、企業や自治体による独自の5Gネットワーク構築の需要も高まると予想され、電気通信工事業者はその実現に向けて技術支援を提供していく必要があります。
5G時代において、電気通信工事業は通信インフラの構築と進化を支える重要な役割を担っており、その責任はますます大きくなっていくでしょう。
IoTの普及が電気通信工事業に与える影響
IoT(モノのインターネット)の普及は、電気通信工事業に大きな影響を与えています。IoTデバイスの増加に伴い、それらを接続するための通信ネットワークの整備や拡張が必要となります。
特に、産業分野でのIoT活用が進むにつれ、工場や倉庫、オフィスなどへの通信設備の設置工事が増加しています。また、スマートシティやスマートホームの実現に向けて、都市インフラや住宅への IoT 関連機器の設置も進んでいます。
これらの IoT 関連工事では、通信ケーブルの敷設だけでなく、センサーやゲートウェイ、アンテナなどの設置も必要となり、電気通信工事業者には多様な技術対応が求められます。
さらに、IoTの普及は、通信ネットワークの安定性や信頼性、セキュリティにも高い要求をもたらします。電気通信工事業者は、これらの要求に応えるため、高品質な工事と的確なメンテナンスを提供していく必要があります。
電気通信工事業の人材不足と対策
電気通信工事業界は、深刻な人材不足に直面しています。熟練技術者の高齢化が進む一方で、若手人材の確保が難しくなっており、技術力の継承が大きな課題となっています。
人材不足は、工事の遅延や品質の低下につながりかねません。この問題に対処するため、電気通信工事業界では様々な対策が講じられています。
まず、若手人材の育成と定着が重要です。業界団体や企業が連携して、学校への出前講座や インターンシップ、資格取得支援などを行い、電気通信工事の魅力を伝えています。
また、工事の効率化や省力化を図るため、ICTツールの活用や作業の標準化、自動化などにも取り組んでいます。ベテラン技術者の知見をデジタル化し、次世代に引き継ぐナレッジマネジメントも進められています。
さらに、多様な人材の活用も検討されています。女性や外国人材の採用・育成、他業種からの人材受け入れなどです。電気通信工事業界が持続的に発展するためには、人材確保と育成が不可欠です。業界をあげての継続的な取り組みが求められています。
電気通信工事業界のM&Aの動向
電気通信工事業界におけるM&Aの動向について解説します。これから電気通信工事業界のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。
近年のM&A事例
電気通信工事業界では、近年のM&A事例として、2021年7月のアメリカンエンジニアコーポレイションによるIntegrity Networks, Inc.の子会社化や、2022年9月のJESCOホールディングス株式会社による阿久澤電機株式会社の完全子会社化が挙げられます。
アメリカンエンジニアコーポレイションは、米国での公共系アウトソーシング事業の拡大と弱電設備事業の優位性強化を目的としており、一方、JESCOホールディングスは、群馬県および近隣県での営業展開強化と北関東地方における経営基盤の強化を目指しています。
両社ともに、M&Aを通じて事業基盤の拡大と市場競争力の向上を図っており、電気通信工事業界におけるM&Aの活発化が伺えます。
M&Aによる市場競争の変化
電気通信工事業界におけるM&Aは、市場競争に大きな変化をもたらしています。M&Aによって企業規模が拡大し、大手企業の市場支配力がさらに強まる傾向にあります。
大手企業は、全国的な事業展開や大規模プロジェクトへの対応力を高め、競争優位性を確保しています。一方、中小企業は生き残りをかけてM&Aに乗り出すケースが増えています。M&Aを通じて規模の経済を追求し、コスト競争力を高めることで、大手企業に対抗しようとしています。
また、特定の地域や分野に強みを持つ企業同士のM&Aも行われ、差別化を図る動きもあります。M&Aによって業界の寡占化が進む一方で、ニッチ市場での専門性を武器とする企業も存在感を示しています。M&Aは、電気通信工事業界の動向を左右することが予想されます。
M&Aの特徴と傾向
電気通信工事業界のM&Aには、いくつかの特徴と傾向があります。まず、事業承継問題の解決を目的とするM&Aが多いことです。
業界では高齢化が進んでおり、後継者不在の中小企業が増加しています。M&Aによって、事業の継続と雇用の維持が図られています。次に、大手企業による中小企業の買収が活発化していることです。
大手企業は、地域密着型の営業力や特定分野の技術力を持つ中小企業を買収することで、事業基盤の強化を図っています。また、同業者間の経営統合も増えています。規模の拡大やコスト削減、技術力の向上などを目的に、対等な立場でのM&Aが行われるようになりました。
さらに、異業種からの参入を目的とするM&Aも見られます。通信事業者やIT企業が、電気通信工事会社を買収するケースがあります。
通信インフラの構築で連携を深めることで、新たなビジネス機会を創出しようとしているのです。M&Aは、電気通信工事業界の構造変化を加速させる重要な手段となっています。
電気通信工事のM&Aをするメリット
電気通信工事業界のM&Aにおいてのメリットを売却側・買収側の両方から解説します。メリットを元にして電気通信工事業界のM&Aを検討してください。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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売却側のメリット
電気通信工事業界における売却側のメリットは、以下の通りです。
- 事業承継問題の解決
- 経営資源の有効活用
- 財務状況の改善
- リスクの分散
- 従業員の雇用維持
- オペレーショナルリスクの分散
それぞれ詳しく解説していきます。
事業承継問題の解決
電気通信工事業界における事業承継の困難さは、経営者の高齢化と後継者不足が主な原因です。M&Aは、この問題を解決する有力な選択肢の一つとなっています。
会社を売却することで、後継者探しの負担から解放され、事業の存続と発展を図ることができます。M&Aによる事業承継は、経営者の引退プランにもスムーズに対応でき、円滑な事業の引き継ぎを可能にします。
経営資源の有効活用
中小電気通信工事会社が持つ優れた技術力や顧客基盤は、大きな強みであるにもかかわらず、経営資源の制約からその価値を十分に発揮できないことがあります。
M&Aを通じて、自社の経営資源を買収企業の資源と融合させることで、より効果的な活用が可能となります。例えば、買収企業の全国的な営業ネットワークを活用することで、自社の優れた技術力を広く展開できるようになります。
財務状況の改善
電気通信工事業を営む上で、設備投資や人材育成に多額の資金が必要となることは避けられません。中小企業では、資金調達力が限られているため、財務的な制約が成長の妨げとなることがあります。
M&Aを活用することで、買収企業の資金力を背景に、設備投資や技術開発、人材育成などに必要な資金を確保できます。また、売却益を得ることで、債務の削減や財務体質の改善も可能です。
リスクの分散
電気通信工事業界は、通信技術の進歩や市場環境の変化に大きく左右される業界です。特定の事業分野や顧客に依存している中小企業では、これらの変化がリスクとなることがあります。
M&Aを通じて、事業ポートフォリオを多様化し、リスクを分散することができます。買収企業の事業基盤を活用することで、新たな市場や顧客を開拓し、事業の安定性を高めることが可能です。
従業員の雇用維持
中小電気通信工事会社にとって、事業承継問題や経営環境の悪化は、従業員の雇用維持を脅かす大きな要因となります。M&Aは、従業員の雇用を守る有効な手段の一つです。
買収企業の事業基盤を活用することで、安定的な雇用を確保できます。また、買収企業の人材育成プログラムや福利厚生制度を利用できるようになり、従業員のモチベーションアップにもつながります。
新たな成長機会の獲得
5Gや IoTなどの新技術の登場は、電気通信工事業界に新たな成長機会をもたらしています。しかし、中小企業では、これらの成長機会を単独で捉えることが難しいこともあります。
M&Aを活用することで、買収企業の技術力や営業力、ブランド力などを活用し、新たな成長機会を獲得できます。共同でのプロジェクト受注や新サービスの開発など、シナジー効果による事業拡大が可能となります。
事業運営リスクの分散
工事の遅延や事故、品質問題などの事業運営リスクは、電気通信工事業に付きものです。中小企業では、これらのリスクが経営に大きな影響を与えることがあります。
M&Aを通じて、買収企業の品質管理体制や安全管理体制を活用することで、事業運営リスクを分散できます。また、買収企業との共同プロジェクトにおいて、リスク分担を図ることも可能です。
買収側のメリット
空調設備工事業界における買収側のメリットは、以下の通りです。
- 事業拡大と市場シェアの拡大
- 技術力と専門性の獲得
- 人材の確保
- シナジー効果による競争力強化
- 新規事業への参入
- 投資利益の獲得
それぞれ詳しく解説していきます。
事業拡大と市場シェアの拡大
大手電気通信工事企業にとって、中小企業の買収は事業拡大と市場シェア拡大の有効な手段です。買収企業は、中小企業の顧客基盤や営業力を獲得することで、事業拡大と市場シェアの拡大を図ることができます。
特に、地域密着型の中小企業を買収することで、地域市場への参入や深耕が可能となります。また、中小企業の技術力を活用することで、新たな事業分野への進出も期待できます。
技術力と専門性の獲得
電気通信工事業界には、特定分野に特化した高い技術力や専門性を持つ中小企業が多数存在します。買収企業は、これらの中小企業を買収することで、自社に不足している技術力や専門性を獲得できます。
例えば、5G関連工事や IoT 関連工事など、新たな技術分野への対応力を強化することができます。また、中小企業の現場ノウハウを吸収することで、工事品質の向上やコスト削減も期待できます。
人材の確保
熟練技術者の高齢化と若手人材の不足は、電気通信工事業界が抱える深刻な問題です。買収企業は、中小企業の優秀な人材を獲得することで、この問題に対処できます。
特に、技術継承が困難な分野での人材確保は、買収の大きな目的の一つです。また、中小企業の人材を活用することで、工事の効率化や品質向上、新たな事業展開などにつなげることも可能です。
シナジー効果による競争力強化
M&Aは、買収企業と被買収企業の経営資源を統合することで、シナジー効果を生み出す有効な手段です。例えば、営業ネットワークの統合による受注拡大、技術力の融合による新サービスの開発、スケールメリットによるコスト削減などです。
これらのシナジー効果によって、買収企業の競争力を強化することができます。特に、大手企業と中小企業のM&Aでは、規模の経済を活かした競争優位性の確立が期待されます。
新規事業への参入
通信技術の進歩やデジタル化の進展は、電気通信工事業界に新たな事業機会をもたらしています。買収企業は、中小企業の技術力や顧客基盤を活用することで、新規事業への参入を図ることができます。
例えば、IoTソリューションの提供や、通信インフラの保守・運用サービスなど、付加価値の高いビジネスへの展開が可能となります。M&Aは、新規事業への参入障壁を低減する有効な手段の一つです。
投資利益の獲得
買収企業にとって、M&Aは投資利益を獲得する絶好の機会でもあります。電気通信工事業界には、技術力や顧客基盤を持つ優良な中小企業が数多く存在します。
これらの企業を適正な価格で買収し、事業の成長を促進することで、将来的な企業価値の向上と投資利益の獲得が期待できます。また、買収後の事業再編やコスト削減によって、収益性を改善することも可能です。M&Aは、買収企業の成長戦略の重要な一角を担っています。
電気通信工事のM&Aの注意点
電気通信工事業界のM&Aを行う際の注意点を解説します。電気通信工事業界のM&Aを行う際の注意点は、以下の通りです。
適切な企業価値評価の重要性
電気通信工事会社のM&Aにおいて、適切な企業価値評価は非常に重要です。企業価値を正確に評価することは、M&Aの成否を左右する大きな要因となります。
電気通信工事業界特有の技術力や顧客基盤、市場動向などを考慮し、将来のキャッシュフローを適切に予測することが求められます。
また、類似企業との比較や、資産価値、収益価値などの多面的な評価も必要です。企業価値評価を誤ると、買収価格の設定を見誤り、M&A後の収益性に大きな影響を与える可能性があります。
デューデリジェンスの徹底
M&Aを成功させるためには、デューデリジェンス(買収対象企業の詳細調査)を徹底的に行うことが不可欠です。
電気通信工事会社の場合、技術力や工事実績、顧客基盤、財務状況などを入念にチェックする必要があります。特に、工事の品質や安全管理体制、従業員のスキルなどは重要な調査項目です。
また、法的なリスクや税務上の問題点なども見落とさないようにしなければなりません。デューデリジェンスを怠ると、買収後に予期せぬ問題が発生し、M&Aの目的を達成できなくなる恐れがあります。
統合後の組織文化の違いへの対応
M&A後の企業統合において、組織文化の違いは大きな課題となります。買収企業と被買収企業では、業務プロセスや意思決定方法、従業員の価値観などが異なることが多いからです。
電気通信工事会社の場合、現場の ワークスタイルや安全管理に対する考え方の違いなどが、統合後の組織運営に影響を与える可能性があります。
組織文化の違いを放置すると、従業員の士気低下やコミュニケーション不全を引き起こし、M&Aのシナジー効果を損なう恐れがあります。統合後は、組織文化の差異を積極的にマネジメントし、新たな企業文化の構築を図ることが重要です。
法的・税務的な問題への対処
M&Aには、さまざまな法的・税務的な問題が伴います。電気通信工事会社の場合、事業許可や工事業登録、技術者資格などの法規制への対応が必要です。
また、買収に伴う契約書の作成や、合併手続き、労働関連の調整なども重要な課題となります。税務面では、買収価格の設定や、のれんの償却、繰越欠損金の引継ぎなどに注意が必要です。
これらの法的・税務的な問題に適切に対処しないと、M&A後のスムーズな事業運営が困難になる恐れがあります。専門家の助言を得ながら、関連する法規制や税制への対応を万全にすることが求められます。
電気通信工事におけるM&Aを成功させるためのポイント
電気通信工事業界におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。電気通信工事業界におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立
- 相場価格の把握
- PMI(統合後プロセス)の確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
電気通信工事会社がM&Aを成功させるためには、明確なM&A戦略の立案が不可欠です。自社の強みや弱み、市場環境などを分析し、M&Aの目的を明確にすることが重要です。
例えば、事業拡大、技術力の獲得、人材の確保など、M&Aによって達成したい目標を具体的に設定します。また、買収対象企業の選定基準や、買収後の統合プロセスなども戦略に盛り込む必要があります。
M&A戦略を明確にすることで、適切な買収対象の選定や、スムーズな統合の実現につなげることができます。
相場価格をよく理解しておく
M&Aを検討する際は、電気通信工事業界における企業価値の相場をよく理解しておくことが重要です。業界の平均的なM&A価格や、類似企業のM&A事例などを調査し、適正な買収価格の目安を把握しておく必要があります。
また、企業価値の評価方法やM&Aの手法についても理解を深めておくことが望ましいでしょう。相場価格を適切に把握することで、買収価格の交渉を有利に進めることができます。また、適正な価格での買収は、M&A後の収益性にも大きな影響を与えます。
PMI(統合後プロセス)の確立
M&Aを成功させるためには、PMIの確立が重要です。しかし、企業が単独でPMIを進めようとすると、多くの困難に直面することがあります。
特に、電気通信工事会社の場合、工事管理体制の統合や、技術者の再配置などの複雑な課題があります。これらの課題に独力で対処しようとすると、時間とコストがかかるだけでなく、統合効果も限定的になりがちです。
そこで、M&A仲介会社の活用をおすすめします。M&A仲介会社は、豊富な経験と専門知識を持ち、PMIの各段階で的確なサポートを提供してくれます。
彼らの助言を受けることで、スムーズな統合と早期のシナジー効果実現が可能となります。M&Aを検討する際は、単独で進めるのではなく、専門家の力を借りることが成功への近道です。
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電気通信工事業のM&Aにおける成功事例
電気通信工事業界におけるM&Aの成功事例を紹介します。これから電気通信工事業界におけるM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
JESCOホールディングス株式会社による阿久澤電機株式会社のM&A
2022年9月に、JESCOホールディングス株式会社が阿久澤電機株式会社の株式を取得し、完全子会社化した事例です。
JESCOホールディングス株式会社は、国内およびアセアン地域において、脱炭素社会や高度情報化社会の実現を目指した電気・無線通信工事等を手掛けるEPC企業です。
阿久澤電機株式会社は、群馬県高崎市を拠点とした電気・電気通信工事会社で、官公庁および上場企業からの受注実績を多く持ち、高崎市からの不法投棄防止監視カメラの賃貸借業にも強みがあります。
このM&Aの主な目的は、JESCOホールディングス株式会社が阿久澤電機株式会社を傘下に収めることで、群馬県全体および近隣県での営業展開を強化し、北関東地方における経営基盤を強化することです。また、資格保有者との人材交流によるシナジー効果も期待しています。
参考:阿久澤電機株式会社の株式の取得(完全子会社化)に関するお知らせ
株式会社中電工による杉山管工設備株式会社のM&A
2016年7月に、株式会社中電工が杉山管工設備株式会社の全株式を取得し、子会社化した事例です。
株式会社中電工は、広島県に本社を置き、電気工事や通信工事、太陽光発電設備の設置などを手掛ける企業です。国内外で幅広い事業展開を行っており、高い技術力と信頼性を誇ります。
杉山管工設備株式会社は、神奈川県横浜市を拠点とし、ビル・工場・公共施設の空調管工事や産業配管プラント工事、防災設備工事を主に行っています。空調管工事において高い専門性と技術力を持ち、地域社会に貢献しています。
このM&Aの主な目的は、株式会社中電工が杉山管工設備株式会社を傘下に収めることで、首都圏における電気工事および空調管工事の事業拡大を図ることです。同社の優秀な人材と協力会社の確保や優良顧客の獲得により、事業基盤の強化が期待されています。
参考:杉山管工設備株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
株式会社アウトソーシングによるIntegrity Networks, Inc.のM&A
2021年7月に、株式会社アウトソーシングの子会社であるアメリカンエンジニアコーポレイションがIntegrity Networks, Inc.の全株式を取得し、子会社化した事例です。
株式会社アウトソーシングは、国内外で多岐にわたるアウトソーシング事業を展開している企業で、特に製造系アウトソーシング事業や公共系アウトソーシング分野に強みを持っています。
Integrity Networks, Inc.は、アメリカ合衆国ワシントン州に拠点を置き、ITおよび弱電設備のシステム構築を行う企業です。米国内の民間企業や公共企業、米国政府機関に対して豊富なサービス提供実績を有しており、防犯システムやネットワークセキュリティ、入退管理、監視などのセキュリティサービスにおいて高い知見を持っています。
このM&Aの主な目的は、株式会社アウトソーシングがIntegrity Networks, Inc.を傘下に収めることで、公共系アウトソーシング事業の拡大を図ることです。特に米国本土や環太平洋地区でのプロジェクト入札に参加しやすくなり、事業基盤の強化と市場拡大が期待されています。また、Integrity Networksのノウハウを活用し、既存の弱電設備事業の優位性をさらに高めることを目指しています。
参考:米国 Integrity Networks, Inc.の子会社化に関するお知らせ
株式会社アウトソーシングによるCalifornia Pacific Technical Services LLCのM&A
2021年4月に、株式会社アウトソーシングの子会社であるアメリカンエンジニアコーポレイションがCalifornia Pacific Technical Services LLCの持分を取得し、子会社化した事例です。
株式会社アウトソーシングは、国内外で多岐にわたるアウトソーシング事業を展開する企業で、特に製造系および公共系アウトソーシング分野に強みを持ち、事業の多角化と安定化を図っています。
California Pacific Technical Services LLCは、米国グアムに拠点を置き、米軍や米国地方政府、通信業界向けにITおよび弱電設備のシステム構築を行う企業です。地域のITインフラ事業のマーケットリーダーとして、高い成長性を誇っています。
このM&Aの主な目的は、株式会社アウトソーシングがCalifornia Pacific Technical Services LLCを傘下に収めることで、グアムおよび米国本土におけるITおよび弱電設備市場への参入を強化し、事業基盤を拡大することです。また、環太平洋地区での事業拡大や米軍施設向け事業の成長を加速させることにより、当社グループの事業安定化と業容拡大の両立を図ることを目指しています。
参考:米国グアム California Pacific Technical Services LLC の子会社化に関するお知らせ
株式会社ミライト・ホールディングスによる西日本電工株式会社のM&A
2017年8月に、株式会社ミライト・ホールディングスの子会社である株式会社ミライト・テクノロジーズが西日本電工株式会社の株式を取得し、子会社化した事例です。
株式会社ミライト・ホールディングスは、情報通信エンジニアリング技術を基軸に、電気設備やビル付帯設備、環境、エネルギー関連事業など、総合的なサービスを提供する「総合エンジニアリング&サービス会社」を目指しています。
西日本電工株式会社は、熊本県熊本市に拠点を置き、電気設備工事や空調設備工事、太陽光発電設備工事を中心に事業を展開している企業です。長年の業歴と技術力の高さが特徴です。
このM&Aの主な目的は、株式会社ミライト・ホールディングスが西日本電工株式会社を傘下に収めることで、施工体制の強化およびビル・エネルギー分野の事業拡大を図ることです。これにより、両社の技術力とサービス提供能力が向上し、総合的なエンジニアリングサービスの展開が期待されています。
参考:西日本電工株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
株式会社アウトソーシングによる株式会社アイテックのM&A
2021年1月に、株式会社アウトソーシングの子会社である株式会社アウトソーシングテクノロジーが株式会社アイテックの全株式を取得し、子会社化した事例です。
株式会社アウトソーシングは、多岐にわたるアウトソーシング事業を展開しており、特に技術系アウトソーシングに強みを持っています。グループ内の教育機関であるKENスクールを活用し、技術力のある人材を育成しています。
株式会社アイテックは、千葉県野田市に拠点を置き、移動体通信工事や電気工事を柱とした事業を展開している企業です。特に移動体通信の基地局建設における実績があり、建柱工事の機動力も高く、顧客からの高い満足度を得ています。
このM&Aの主な目的は、株式会社アウトソーシングテクノロジーの技術者や教育リソースと、アイテックが持つ顧客基盤のシナジー効果により、グループ全体の事業成長および事業ポートフォリオの拡大を図ることです。これにより、技術力の向上とともに、付加価値の高いサービス提供が期待されています。
参考:株式会社アイテックの株式取得(子会社化)に関するお知らせ
コムシスホールディングス株式会社によるNDS株式会社のM&A
2018年5月に、コムシスホールディングス株式会社(以下、CHD)がNDS株式会社の株式を取得し、完全子会社化した事例です。
コムシスホールディングス株式会社は、NTTグループをはじめとする通信事業者向けに通信インフラネットワーク構築を全国規模で行うリーディングカンパニーであり、ICT事業やエネルギー関連事業にも注力しています。
NDS株式会社は、東海・北陸圏を中心にNTTグループ向けの通信インフラネットワーク構築を行い、官公庁および一般企業向けの通信設備工事、ICT関連事業、半導体製造装置設置・保守事業などを展開しています。
このM&Aの主な目的は、CHDがNDSを傘下に収めることで、両社の技術力を相互補完し、インフラ設備建設のサービスラインナップの拡充や施工体制の強化を図ることです。また、広範囲にわたる事業展開と経営資源の連携を通じて、シナジーの最大化と企業価値の向上を目指しています。
参考:コムシスホールディングス株式会社とNDS株式会社の経営統合に関する株式交換契約締結のお知らせ
株式会社協和日成によるガイアテック株式会社のM&A
2021年3月に、株式会社協和日成がガイアテック株式会社の株式を取得し、子会社化した事例です。
株式会社協和日成は、1948年の創業以来、ガス・電気・水道などのライフラインを支える総合設備工事会社です。首都圏を中心に静岡県や北海道にも拠点を持ち、高品質な施工サービスを提供しています。
ガイアテック株式会社は、1996年設立以来、ガス工事を中心に冷暖房・給排水衛生設備工事を手がけています。新規得意先の開拓や多能工作業員によるCS向上・コストダウン対応に強みがあります。
このM&Aの主な目的は、株式会社協和日成がガイアテック株式会社を傘下に収めることで、中期経営計画「エボリューションプラン21」の成長戦略にある「戸建住宅の総合設備一括受注体制の拡大」を実現することです。経営資源の共有と事業連携の強化による高いシナジー効果が期待されています。
参考:ガイアテック株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
エア・ウォーター株式会社による株式会社丸電三浦電機のM&A
2018年7月に、エア・ウォーター株式会社のグループ会社である北海道エア・ウォーター株式会社が株式会社丸電三浦電機の全株式を取得し、完全子会社化した事例です。
エア・ウォーター株式会社は、産業ガス関連、医療関連、LPガス・灯油の販売などを中心としたエネルギー関連事業を展開しています。特に病院設備にかかる電気設備工事や住宅リフォーム事業に強みを持っています。
株式会社丸電三浦電機は、札幌地区を中心に電気設備工事や情報通信工事、電気通信関連のメンテナンスやリフォーム工事を行う電気工事専門会社です。高度化する情報社会に対応できる最新技術の導入と専門技術者の育成を進めています。
このM&Aの主な目的は、エア・ウォーターグループが丸電三浦電機を傘下に収めることで、病院設備にかかる総合監視業務や住宅リフォーム事業など、広範囲な設備工事の受注を拡大することです。また、相互のシナジー効果を最大限に活用し、エア・ウォーターグループの事業展開を強化することを目指しています。
参考;株式会社丸電三浦電機の株式取得について~病院設備や住宅リフォームでの電気設備工事の受注拡大を目指します~
コムシスホールディングス株式会社による朝日設備工業株式会社のM&A
2020年8月に、コムシスホールディングス株式会社が朝日設備工業株式会社の株式を取得し、完全子会社化した事例です。
コムシスホールディングス株式会社は、情報通信工事、電気通信設備工事、情報処理関連事業などを手がける企業で、NTTグループをはじめとする通信事業者の通信インフラネットワーク構築を行っています。
朝日設備工業株式会社は、岐阜県を拠点に管工事および水道施設工事を中心に事業を営んでおり、地域のトップクラスの実績と知名度を持っています。官公庁や大手企業から厚い信頼を得ています。
このM&Aの主な目的は、コムシスホールディングスが朝日設備工業を傘下に収めることで、東海エリアを中心に事業分野や対象地域での事業展開を強化し、経営資源の連携によるシナジーの最大化を図ることです。これにより、グループとしての成長戦略を強力に推進し、企業価値の一層の向上を目指しています。
参考:簡易株式交換による朝日設備工業株式会社の完全子会社化に関するお知らせ
四電工株式会社によるアイ電気通信株式会社のM&A
2018年7月に、四電工株式会社がアイ電気通信株式会社の全株式を取得し、子会社化した事例です。
四電工株式会社は、「中期経営指針2020」に基づき、総合設備企業としての基盤強化を進めています。四国域外では電気設備工事を主体に事業展開してきました。
アイ電気通信株式会社は、大阪市に本社を置き、高速道路交通情報システムや駅構内の通信ネットワーク設備工事、工場の電気通信設備工事を手掛ける企業です。関西圏と首都圏に安定した収益基盤を有しています。
このM&Aの主な目的は、アイ電気通信株式会社をグループに迎えることで、四電工株式会社の総合的な技術力と施工力を高め、多様なニーズに対応する付加価値の高いサービスを提供することです。また、関西圏・首都圏において業容拡大を図ることを目指しています。
参考:アイ電気通信株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
株式会社協和エクシオによるLeng Aik Engineering Pte LtdグループのM&A
2018年10月に、株式会社協和エクシオがシンガポールの電気・総合設備工事会社であるLeng Aik Engineering Pte Ltdグループの全株式を取得し、完全子会社化した事例です。
株式会社協和エクシオは、情報通信インフラの構築や通信インフラ事業を展開し、東南アジアを中心にグローバル事業の拡大を目指しています。既にフィリピンとタイ王国で事業を展開しており、シンガポール市場への参入を果たしました。
Leng Aik Engineering Pte Ltdグループは、電気設備工事に加え、空調・換気・防火・防災などの総合設備工事を手掛けています。シンガポール国内で多数の地下鉄工事や公共工事の施工実績があり、その技術力と工事品質が評価されています。
このM&Aの主な目的は、協和エクシオグループとLeng Aik Engineeringグループの技術力を融合させることで、顧客基盤やビジネスセグメント、ならびに市場の拡大を図ることです。これにより、アジア地域での都市インフラとシステムソリューション事業の拡大を加速させることを目指しています。
参考:協和エクシオ、シンガポールの電気・総合設備工事会社Leng Aik Engineering Pte Ltd グループの全株式を取得~海外の都市インフラ事業における電気・総合設備分野を強化~
株式会社ミライト・ホールディングスによる塚田電気工事株式会社のM&A
2018年10月に、株式会社ミライト・ホールディングスの連結子会社である株式会社TTKが塚田電気工事株式会社の株式を取得し、完全子会社化した事例です。
株式会社ミライト・ホールディングスは、情報通信設備工事を中心に、環境土木工事や電気工事事業などを展開しています。成長戦略として、事業領域の拡大に取り組んでいます。
塚田電気工事株式会社は、宮城県を中心に東北6県および東京都近郊で一般電気工事や電気通信工事の設計・施工・管理、電気工事関連資機材の卸売事業を展開しています。
このM&Aの主な目的は、TTKグループが推進する「第5次中期経営計画」の成長戦略に沿って、電気工事分野での事業領域の拡大を図ることです。両社の技術力と事業分野の強みを活かし、さらなる成長を目指しています。
参考:塚田電気工事株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
まとめ
電気通信工事業界におけるM&Aは、事業拡大や技術力の向上、人材確保などの面で大きなメリットがあります。一方で、企業価値評価の難しさや、統合後の組織文化の違いなど、注意すべき点も多くあります。
M&Aを成功させるためには、明確な戦略の立案と、適切な買収対象の選定、入念なデューデリジェンスが不可欠です。また、PMIを確実に進め、シナジー効果を早期に実現することが重要です。
M&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある戦略です。ぜひ今回の記事を参考に電気通信工事業界におけるM&Aを検討してみてください。