「空調設備工事業界のM&Aの成功事例は?」
「空調設備工事業界のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
インターネットで「空調設備工事 M&A」と検索しても、専門用語が多く理解に苦しむ記事や、信頼性に欠ける情報ばかりで、なかなか有益な情報にたどり着けないのが実情です。
そこで今回、M&Aの専門企業「M&A HACK」が、空調設備工事業界のM&Aについて、わかりやすく解説します。
空調設備工事業界特有のM&Aの売却相場や成功事例、押さえておくべきポイントを詳しく紹介するので、業界のM&Aや事業承継に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
空調設備工事とは
このセクションでは、空調設備工事業界の具体的な種類や特徴から始め、空調設備工事業界の資格と技術などについて解説していきます。
空調設備工事の種類と特徴
空調設備工事は、建物の用途や規模、要求される空調性能などに応じて、様々な種類に分類されます。代表的な工事としては、新設工事、改修工事、メンテナンス工事などがあります。
新設工事は、新築建物に対して行う工事で、空調設備の設計から施工、試運転調整までを一貫して行います。改修工事は、既存建物の空調設備を更新・改修する工事で、省エネ性能の向上や機能の拡充などを目的に行われます。
メンテナンス工事は、既存設備の性能を維持・回復するための工事で、定期点検や部品交換、クリーニングなどが含まれます。
必要な資格と技術
空調設備工事に従事するには、法令で定められた資格が必要です。主な資格としては、「管工事施工管理技士」、「冷凍空調技士」、「電気工事士」などがあります。
これらの資格は、空調設備の施工や保守に関する専門知識と技術を有していることを証明するものです。また、現場での作業では、設計図書の読解力、配管・ダクトの加工・施工技術、電気配線・制御工事の知識、安全管理能力などが求められます。
加えて、省エネ性能の評価や、IoTを活用した運用・管理など、高度な技術への対応力も重要となっています。
空調設備工事の施工プロセス
空調設備工事の一般的な施工プロセスは、以下の通りです。
- 施主や設計者との協議により、工事の目的や要求性能、予算などを確認します。
- 現地調査を行い、建物の構造や他の設備との取り合い、搬入経路などを把握します。
- 施工図や工程表を作成し、必要な機器・材料の手配や人員配置を行います。
- 機器の搬入・据付、配管・ダクトの加工・施工、電気配線、制御工事などを行います。
- 試運転調整を行い、要求性能の達成を確認します。
- 施主への引渡しと、運用・保守に関する説明を行います。
各工程において、品質管理、工程管理、安全管理、コスト管理などが重要であり、円滑なコミュニケーションと適切な進捗管理が求められます。
空調設備工事業界の市場動向と市場規模
株式会社矢野経済研究所「空調衛生設備工事業に関する法人アンケート調査を実施(2022年)」より
M&Aにおいて業界の現状とこれからを理解しておくことは非常に重要です。そこで、ここでは、空調設備工事業界の動向と今後について解説していきます。ぜひ参考にしてください。
空調設備工事業界が持つ課題
空調設備工事業界が抱える主な課題は以下の通りです。
- 人材不足と技術継承の問題
- 熟練技術者の高齢化が進行
- 若手人材の確保・育成が困難
- 技術力の維持・向上が課題
- 工事の高度化・多様化への対応
- 従来の職人的技能だけでは不十分
- ICTを活用した施工管理が必要
- 省エネ・環境技術への対応力が求められる
- 人材教育・訓練システムの強化
- 新たな技術・スキルに対応した教育・訓練が必要
- 体系的な人材育成システムの構築が課題
- 工事コストの上昇と収益性の低下
- 資材価格や人件費の上昇によるコスト増加
- 競争激化による受注価格の下落
- 収益性の低下が業界全体の課題
これらの課題に対応するには、業界全体で取り組む必要があります。人材育成や技術継承のための仕組みづくり、ICTや環境技術の積極的な導入、コスト管理の徹底と生産性の向上などが求められています。業界団体や各企業が連携し、持続的な発展に向けた戦略的な取り組みが不可欠です。
市場規模と成長率
空調衛生設備工事業界の市場規模と成長率について、矢野経済研究所が2022年に実施した法人アンケート調査の結果によると、調査対象の主要73社の2021年度工事売上高は、前年度比101.4%の1兆2,388億円でした。
コロナ禍での経済活動制限緩和が進み、都市部の再開発案件やリニューアル需要が回復傾向にあり、インバウンド需要も徐々に回復しつつあります。
宿泊施設案件もリニューアルを中心に需要が増える傾向にあるそうです。このような市場環境を受けて、2021年度は主要事業者の受注案件が増加したとみられますが、完成工事高としての計上は2022年度以降になる見通しであるため、2021年度の市場規模は前年度並みでの推移となっています。
空調設備工事業界の主要企業
空調設備工事業界の主要企業には、高砂熱学工業株式会社、三機工業株式会社、ダイダン株式会社などがあります。高砂熱学工業は1923年に設立され、空調設備工事において高い技術を持ち、東京ドームや日本武道館などの大規模工事を手掛けています。
三機工業は1925年に設立され、三井物産の機械部を前身とし、幅広い分野でエンジニアリングサービスを展開しています。
また、ダイダンは1933年に設立され、工業用機械や電気器具の販売業からスタートし、暖房工事業に進出しました。国内外の基盤を整備・強化し、新規事業の開拓に取り組んでいます。これらの企業は、長年にわたり空調設備工事業界をリードしてきました。
技術革新と市場への影響
空調設備工事の分野では、省エネ・環境技術や IoT・AI 技術の進歩が著しく、市場に大きな影響を及ぼしています。
例えば、高効率機器の開発や、自然エネルギーを活用した空調システムの普及が進んでおり、省エネ性能の向上と環境負荷の低減が実現しつつあります。
また、IoTを活用した遠隔監視・制御システムや、AIを用いた最適運転制御など、高度な技術も実用化されつつあるのです。
こうした技術革新は、空調設備の性能や機能を向上させるとともに、メンテナンスの効率化や運用コストの削減にも寄与します。
市場では、こうした付加価値の高い製品やサービスへのニーズが高まっており、技術力が競争力の源泉となっています。各社は、研究開発の強化や、他分野との連携などを通じて、技術革新への対応力を高めていくでしょう。
空調設備工事業の動向と今後
空調設備工事業界における動向について解説します。これから空調設備工事業界のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。
省エネ・環境対応技術の発展と普及
空調設備工事業界では、省エネ・環境対応技術の重要性がますます高まっています。インバータ制御、高効率熱源機器、全熱交換器などの技術は、エネルギー消費量の削減と CO2 排出量の抑制に大きく貢献しています。
また、自然冷媒を利用した空調システムや、太陽光発電や地中熱利用などの再生可能エネルギーを活用した技術にも注目です。
これらの技術は、建物の環境性能評価において高く評価されるだけでなく、運用コストの削減にもつながります。
今後は、こうした技術のさらなる発展と普及が期待されており、空調設備工事業界では、省エネ・環境対応技術を積極的に取り入れることが競争力の向上につながると考えられています。
IoTやAIを活用した空調設備の高度化
IoTやAIの活用は、空調設備の性能向上と効率的な運用管理を実現する上で、大きな役割を果たしています。
IoTセンサーを用いた室内環境のモニタリングや、クラウドを介した遠隔監視・制御システムの導入が進んでおり、快適性の向上と省エネ運転の最適化が可能となっています。
また、AIを活用した需要予測や最適運転制御、故障予兆診断などの技術も実用化されつつあります。これらの高度な技術を駆使することで、空調設備のきめ細やかな制御と、トラブルの未然防止、メンテナンス業務の効率化などが期待できます。
空調設備工事業界では、こうした技術を適切に導入・活用できる人材の育成と、システムインテグレーション力の強化が課題となっています。
空調設備工事業界における人材不足の現状と対策
空調設備工事業界では、少子高齢化に伴う人材不足が深刻な問題となっています。特に、熟練技術者の高齢化と引退が進む一方で、若手人材の確保と育成が困難な状況にあります。
技術継承の断絶や、現場の施工品質の低下が懸念されており、業界全体で人材の確保・育成に取り組む必要性が高まっています。
対策としては、工業高校や専門学校との連携強化、インターンシップの充実、社内教育・訓練システムの整備などが挙げられます。
また、ICTの活用による生産性の向上や、外国人労働者の受け入れ拡大なども選択肢の一つとなっています。人材不足の解消には、業界のイメージアップや働き方改革も重要であり、若者にとって魅力ある職場環境の整備が求められています。
空調設備工事業界のM&Aの動向
空調設備工事業界におけるM&Aの動向について解説します。これから空調設備工事業界のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。
M&Aの事例と特徴
M&Aの事例として、2024年4月に三菱電機がフランスのAIRCALOを買収したケースがあります。
三菱電機は空調冷熱システム事業を重点成長事業と位置づけ、AIRCALOの幅広い製品ラインアップと高いカスタマイズ力を獲得することで、欧州市場での水空調事業を強化し、環境に配慮した製品提供を目指しています。
また、2021年12月には株式会社四電工が株式会社ベルテックを子会社化しました。四電工は中期経営指針に基づき、M&Aを通じた収益力強化を図っており、ベルテックとの協力関係構築により岡山・香川地域での営業面・施工面での強化が目的です。
これらの事例から、M&Aは事業拡大や市場シェア獲得、技術力向上などを目的に行われ、企業の成長戦略の一環として活用されている傾向がうかがえます。
海外企業の参入状況
空調設備工事業界では、海外企業の参入も増加しています。特に、中国や東南アジアの企業が、日本市場への進出を活発化させています。
海外企業は、コスト競争力を武器に、大型案件の受注を狙っており、国内企業にとっては脅威となっています。一方で、海外企業との協業や提携を通じて、新たな市場開拓や技術革新を図る動きもあります。
グローバル化の進展に伴い、国内企業は、海外企業との競争と協調のバランスを取りながら、事業展開を進めていく必要があります。
M&Aにおけるリスク管理と対策
M&Aは、企業の成長戦略の有効な手段ですが、同時にリスクも伴います。買収先企業の財務状況や契約関係、技術力などの適切な評価と、買収価格の妥当性の検証が重要です。
また、買収後の統合プロセスにおいては、企業文化の違いや従業員の融和、システムの統合などに課題が生じることがあります。
リスク管理の対策としては、デューデリジェンスの徹底、専門家の活用、統合計画の綿密な策定などが挙げられます。
特に、PMIと呼ばれる統合後のプロセス管理は、M&Aの成否を左右する重要な要素です。人材の融和や組織文化の醸成、業務プロセスの標準化などに計画的に取り組むことが求められます。
M&Aを成功に導くには、リスクを適切に管理し、シナジー効果を最大限に引き出す戦略的な取り組みが不可欠です。
空調設備工事のM&Aをするメリット
空調設備工事業界のM&Aにおいてのメリットを売却側・買収側の両方から解説します。メリットを元にして空調設備工事業界のM&Aを検討してください。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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売却側のメリット
空調設備工事業界における売却側のメリットは、以下の通りです。
- 事業の継続と発展
- 経営資源の有効活用
- 財務状況の改善
- 従業員の雇用の維持
- 経営者の引退や世代交代の円滑化
それぞれ詳しく解説していきます。
事業の継続と発展
空調設備工事会社がM&Aによって事業を売却する場合、事業の継続と発展が図れるメリットがあります。
買収先企業の経営資源を活用することで、技術力の向上や営業エリアの拡大、大型案件の受注などが可能となり、事業の成長を加速させることができます。
特に、後継者不在や経営難に陥った企業にとって、M&Aは事業を存続させる有効な手段となります。
経営資源の有効活用
M&Aによる事業売却は、保有する経営資源を有効に活用できるメリットがあります。自社の技術力や人材、顧客基盤などの資源を、買収先企業の経営資源と組み合わせることで、より大きな価値を生み出すことができます。
また、自社単独では活用が難しかった資源も、買収先企業との協業によって、新たな活用の道が開けるでしょう。
財務状況の改善
事業売却による資金調達は、売却側企業の財務状況を改善するメリットがあります。売却代金を借入金の返済や設備投資、研究開発などに充当することで、財務体質の強化が図れます。
また、不採算事業や余剰資産の売却により、経営の効率化やキャッシュフローの改善も期待できます。
従業員の雇用の維持
M&Aによる事業売却は、従業員の雇用を維持できるメリットがあります。事業の存続が困難な状況でも、買収先企業への事業譲渡により、従業員の雇用を守ることができます。
特に、技術力や専門性を持つ従業員の雇用維持は、事業の競争力を維持する上で重要な意味を持ちます。
経営者の引退や世代交代の円滑化
M&Aは、経営者の引退や世代交代を円滑に進めるメリットがあります。後継者不在の企業では、M&Aによる事業売却が有力な選択肢となります。
経営者が引退後も、事業を存続させ、従業員の雇用を守ることができます。また、経営者の世代交代時には、M&Aを通じて新たな経営体制を構築し、事業の発展を図ることもできるでしょう。
買収側のメリット
空調設備工事業界における買収側のメリットは、以下の通りです。
- 事業規模の拡大と市場シェアの獲得
- 技術力や知的財産の獲得
- 人材の確保と活用
- シナジー効果による収益性の向上
- 新規事業領域への進出
それぞれ詳しく解説していきます。
事業規模の拡大と市場シェアの獲得
空調設備工事会社がM&Aによって他社を買収する場合、事業規模の拡大と市場シェアの獲得が図れるメリットがあります。買収先企業の顧客基盤や営業エリアを取り込むことで、自社の事業領域を広げ、売上高の増加を実現できます。
技術力や知的財産の獲得
M&Aは、買収先企業が保有する技術力や知的財産を獲得できます。特許や専門技術、ノウハウなどの知的資産を取り込むことで、自社の技術力を向上させ、競争力を高めることができるでしょう。
人材の確保と活用
買収先企業が保有する優秀な人材を確保し、活用できるのもM&Aのメリットです。技術者や営業担当者、管理職などの即戦力を獲得することで、自社の人材基盤を強化できます。
シナジー効果による収益性の向上
M&Aによるシナジー効果は、買収側企業の収益性を向上させるメリットがあります。事業規模の拡大による規模の経済や、重複業務の削減による効率化、クロスセリングによる売上増加などが実現できます。
新規事業領域への進出
M&Aは、新規事業領域への進出を容易にするメリットがあります。買収先企業が保有する事業基盤や顧客ネットワークを活用することで、自社単独では参入が難しい市場に進出できます。
空調設備工事のM&Aの注意点
空調設備工事業界のM&Aを行う際の注意点を解説します。空調設備工事業界のM&Aを行う際の注意点は、以下の通りです。
買収価格の適正な評価と交渉
M&Aを成功に導くには、買収価格の適正な評価と交渉が重要です。買収先企業の財務内容や事業価値を精査し、適切な価格を算定する必要があります。
買収価格の交渉では、売却側との利害調整を図りながら、最適な条件を引き出すことが肝要です。交渉力や説得力が問われる局面であり、経験豊富な専門家の助言を得ることも有効でしょう。
買収価格の適正化は、M&Aの成否を左右する重要な要素であり、慎重な検討と対応が必要です。
デューデリジェンスの重要性と実施方法
M&Aにおいて、デューデリジェンス(買収監査)の実施は欠かせません。財務、法務、税務、事業、人事など、多岐にわたる分野で、買収先企業の情報を収集・分析し、リスクや課題を洗い出します。
特に、契約関係や訴訟リスク、法令遵守状況などの確認は重要です。デューデリジェンスには、専門家の活用や十分な時間の確保が必要であり、買収意思決定の判断材料として活用します。
また、デューデリジェンスの結果を踏まえ、買収条件の再交渉や契約内容の修正などを行うことも検討すべきでしょう。適切なデューデリジェンスの実施は、M&Aのリスク管理に直結する重要な注意点です。
PMI(統合後プロセス)の計画と実行
M&Aの成否は、PMIと呼ばれる統合後のプロセス管理によって大きく左右されます。買収後の組織体制や業務プロセス、システムの統合などを計画的に進める必要があります。
特に、企業文化の融和や人材の融合には、細心の注意が求められます。PMIの実行では、統合マネジメントチームを立ち上げ、具体的なアクションプランを策定・遂行することが重要です。
また、従業員とのコミュニケーションを重視し、不安や抵抗感の払拭に努めることも欠かせません。PMIの適切な計画と実行は、M&Aの目的を達成する上で極めて重要な注意点と言えます。
建設業許可の引継ぎにおける留意点
空調工事・衛生工事会社を引き継ぐ際、建設業許可の引継ぎのために買い手側が満たすべき主な要件は以下の通りです。
- 経営業務管理能力の要件: 建設業で5年以上の経営業務管理責任者としての経験を有するなど、適正な管理能力を有すること。
- 専任技術者の要件: 一般建設業許可の場合は10年以上の実務経験または関連資格を有する者、特定建設業許可の場合は一級の関連資格を有する者を専任で置くこと。
- 請負契約における誠実性、財産的基礎・金銭的信用の要件を満たすこと。
- 欠格要件に該当しないこと。
これらの要件を満たすことが、建設業許可の引継ぎを円滑に進める上で重要となります。
空調設備工事におけるM&Aを成功させるためのポイント
空調設備工事業界におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。空調設備工事業界におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立
- 相場価格の把握
- PMI(統合後プロセス)の確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
空調設備工事会社がM&Aを成功させるには、明確な戦略の立案が欠かせません。自社の経営課題や事業環境を分析し、M&Aの目的や対象企業の選定基準を明確にする必要があります。
シナジー効果の検証や統合後の事業計画の策定も重要です。また、M&A戦略は、自社の経営戦略と整合性を取ることが求められます。
M&Aを単発の取り組みとするのではなく、中長期的な視点から、事業ポートフォリオの最適化や競争力強化につなげていくことが肝要です。M&A戦略の立案には、経営陣の強いリーダーシップと、社内外の関係者との緊密な連携が不可欠です。
相場価格をよく理解しておく
空調設備工事業界のM&Aにおいて、適正な価格を把握するためには、相場価格をよく理解しておく必要があります。一般的な価格算定方法としては、以下の3つのアプローチがあります。
- インカム・アプローチ
- 将来のキャッシュフローを割り引いて現在価値を算出するDCF法が代表的
- 事業計画の作成、フリーキャッシュフローの算定、割引率の決定が必要
- マーケット・アプローチ
- 類似企業の株価収益率等を用いる類似会社比較法が一般的
- 類似企業の選定、マルチプルの算定が必要
- アセット・アプローチ
- 資産と負債の時価評価に基づく時価純資産法が主に用いられる
- 資産と負債の時価評価、純資産の算定、のれん代の加算が必要
これらの方法を適切に組み合わせることで、M&Aにおける適正価格の算定が可能となります。ただし、各アプローチにはメリットとデメリットがあるため、以下の点に注意が必要です。
- 対象企業の特性や市場環境を考慮して最適な方法を選択する
- 複数の方法を用いて価格を検証し、妥当性を確認する
- 価格算定の前提条件や計算過程を明確にし、透明性を確保する
適正な相場価格の理解は、M&Aの交渉を有利に進める上で重要な要素となります。
PMI(統合後プロセス)の確立
M&Aの成功には、PMIの確立が不可欠ですが、単独でPMIを進めることには大きなリスクが伴います。統合プロセスは複雑で、専門的な知識と経験が求められるため、社内リソースだけでは対応が難しいケースが多いです。
特に、組織文化の融和やシナジー効果の実現には、高度なノウハウが必要とされます。こうした課題を解決するには、M&A仲介会社の活用が有効です。M&A仲介会社は、豊富な経験と専門知識を持ち、PMIの計画から実行までを一貫してサポートしてくれます。
また、客観的な立場から、公平な調整役を務めることができるため、円滑な統合プロセスが期待できます。M&Aの成功を確実なものにするには、M&A仲介会社の力を借りることが賢明な選択と言えるでしょう。
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空調設備工事業のM&Aにおける成功事例
空調設備工事業界におけるM&Aの成功事例を紹介します。これから空調設備工事業界におけるM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
株式会社九電工による中央理化工業株式会社のM&A
2021年8月に、株式会社九電工が中央理化工業株式会社の株式を取得した事例です。
株式会社九電工は、建設業を中心に幅広い事業を展開している企業で、特に電気工事や通信工事において確固たる地位を築いています。全国的な営業ネットワークと技術力を有し、持続的な成長を目指した経営戦略を実施しています。
中央理化工業株式会社は、防災・消防設備工事を専門とする企業で、関東エリアを中心に全国展開しています。100年の歴史を持ち、強固な営業基盤と多数の優秀な社員を有し、「安心と安全」を提供する事業で高い信頼を得ています。
このM&Aの主な目的は、株式会社九電工が中央理化工業株式会社を傘下に収めることで、防災・消防分野での事業基盤を強化し、新たな事業領域の開拓や業容のさらなる拡大を図ることとしています。
参考:中央理化工業株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
株式会社四電工による横山工業株式会社のM&A
2021年4月に、株式会社四電工が横山工業株式会社の全株式を取得した事例です。
株式会社四電工は、主に設備工事を手掛ける企業で、特に首都圏近郊での空調・管工事において高い実績を持っています。成長戦略の一環として、M&Aを通じた事業エリアの拡大と施工力の強化に積極的に取り組んでいます。
横山工業株式会社は、栃木県内を中心に空調・管工事、機械器具設置工事を行っている企業で、50年以上の歴史を持ち、病院や教育施設などの設備工事において確固たる地位を築いています。若い専門技術者が多数在籍し、安定した事業運営と今後の成長が期待される企業です。
このM&Aの主な目的は、株式会社四電工が横山工業株式会社との資本提携を通じて、営業面・施工面での協力関係を構築し、首都圏近郊のエリアにおいて総合設備企業としての収益基盤をさらに拡充することとしています。
参考:横山工業株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
橋本総業株式会社による若松物産株式会社のM&A
2013年9月に、橋本総業株式会社が若松物産株式会社の株式を取得した事例です。
橋本総業株式会社は、建設設備資材の卸売業を展開しており、「環境、設備商品の流通とサービスを通じて快適な暮らしを提供する」という経営理念のもと、全国対応の体制を構築しています。JASDAQ上場企業で、設備業界において確固たる地位を築いています。
若松物産株式会社は、中部地区において空調設備の販売および施工を行っている企業です。1952年に設立され、長年にわたり地域密着型のサービスを提供し、信頼を築いてきました。代表取締役社長である若松信氏が全株式を保有していました。
このM&Aの主な目的は、橋本総業株式会社が若松物産株式会社をグループに加えることで、中部地区における営業基盤を強化し、経営理念の実現を図ることとしています。株式取得後、中部地区での事業展開をさらに推進し、持続的な成長を目指します。
参考:若松物産株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
株式会社インターセントラルによる紘永工業株式会社のM&A
2014年3月に、株式会社インターセントラルが紘永工業株式会社の株式を取得した事例です。
株式会社インターセントラルは、暖房機器の製造および販売、空調システムの設計および施工を行っている企業で、アサヒホールディングス株式会社の連結子会社として事業を展開しています。インターセントラルは、空調設備事業の拡大を目指し、高い技術力と施工実績を有しています。
紘永工業株式会社は、防災、空調および衛生設備の設計、施工、保守を行っている企業です。神奈川県横浜市に本社を構え、公共施設や病院、文化施設、商業施設など多くの施工実績を持ち、高い専門技術とエンジニアリングノウハウを有しています。
このM&Aの主な目的は、株式会社インターセントラルが紘永工業株式会社をグループに加えることで、空調設備事業における補完関係を強化し、一体となって事業を展開することで成長性と収益性を高めることとしています。
参考:当社子会社による紘永工業株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
日立コンシューマ・マーケティング株式会社と日立アプライアンス株式会社のM&A
2019年4月に、日立コンシューマ・マーケティング株式会社と日立アプライアンス株式会社が合併した事例です。
日立コンシューマ・マーケティング株式会社は、家電品、照明・住宅設備機器の販売、エンジニアリング、および保守サービスを行っている企業です。2003年に設立され、約3,000名の従業員を有し、日立製作所の完全子会社です。
日立アプライアンス株式会社は、キッチン・家事製品、照明・住宅設備機器の開発、製造、販売、および冷凍・空調機器の販売・保守サービスを行っている企業です。2006年に設立され、約8,300名の従業員を有し、こちらも日立製作所の完全子会社です。
このM&Aの主な目的は、日立コンシューマ・マーケティング株式会社と日立アプライアンス株式会社の合併により、家電・空調事業の販売から製造までのバリューチェーンを統合し、変化に即応できる事業体へ進化することで、生活課題の解決を通じて世界中の人々の生活の質を向上させることとしています。
参考:日立製作所による日立コンシューマ・マーケティングと日立アプライアンス
三菱電機株式会社によるDeLclima S.p.A.のM&A
2015年8月に、三菱電機株式会社がイタリアの業務用空調事業会社であるDeLclima S.p.A.の株式を取得した事例です。
三菱電機株式会社は、空調冷熱システム事業をグローバルに展開しており、特に欧州市場を重点戦略地域としています。同社はルームエアコン、パッケージエアコン、ビル用マルチエアコンを中心に事業を拡大してきました。
DeLclima S.p.A.は、イタリアに本社を持ち、Climaveneta S.p.A.(クリマベネタ社)およびRC Group S.p.A.(RCグループ社)を傘下に持つ企業です。クリマベネタ社はチラー事業で欧州トップクラスのシェアを誇り、省エネ・低騒音技術や製品のカスタマイズ能力が強みです。RCグループ社はサーバー室向け空調など特殊空調に強みを持っています。
このM&Aの主な目的は、三菱電機株式会社がDeLclima S.p.A.を買収することで、欧州市場における継続的な成長と市場プレゼンスの強化を図り、チラー事業に本格参入することです。これにより事業領域を拡大し、環境規制にも対応することで、家庭用から大型業務用までの総合的な空調冷熱システムを提供することを目指しています。
参考:イタリア業務用空調事業会社 DeLclima(デルクリマ)社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
株式会社四電工による株式会社ベルテックのM&A
2021年12月に、株式会社四電工が株式会社ベルテックの全株式を取得した事例です。
株式会社四電工は、2021年7月に策定した「中期経営指針 2025」に基づき、将来を見据えた100億円投資枠を設定し、M&Aなどを通じた収益力強化を図っています。
株式会社ベルテックは、岡山県内を中心に電気設備工事の設計・施工を行っている企業で、介護施設や教育施設、マンションなど幅広い施設の電気設備工事を手掛けています。若い技術者が多数在籍し、今後の成長が期待されています。
このM&Aの主な目的は、株式会社四電工が株式会社ベルテックを子会社化することで、岡山・香川地域における営業面・施工面での協力関係を構築し、収益力や施工力をより一層強化することとしています。
参考:株式会社ベルテックの株式取得(子会社化)に関するお知らせ
株式会社四電工による株式会社関西設備のM&A
2019年8月に、株式会社四電工が株式会社関西設備の全株式を取得した事例です。
株式会社四電工は、2016年10月に策定した「中期経営指針2020」に基づき、100億円規模の成長投資枠を設定し、総合設備企業としての基盤強化を進めています。
株式会社関西設備は、高知県内で空調設備工事、給排水・衛生設備工事を手掛ける老舗企業で、多数の工事実績を持っています。株式会社四電工の完全子会社である株式会社高知クリエイトとも密接な関係があり、施工協力を行っています。
このM&Aの主な目的は、株式会社関西設備をグループに迎え入れ、営業面・施工面での協業を進めることで、四国における総合設備企業としての基盤をさらに充実・強化することとしています。
参考:株式会社関西設備の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
株式会社ラックランドによる光立興業株式会社のM&A
2017年7月に、株式会社ラックランドが光立興業株式会社の全株式を取得した事例です。
株式会社ラックランドは、店舗施設や商業施設、食品工場、物流倉庫の企画・制作、メンテナンス、省エネ・CO2削減事業などを手掛ける企業です。設備・建築・内装・冷蔵・厨房技術を組み合わせた独自のサービスを提供しています。
光立興業株式会社は、千葉県松戸市に本社を置き、工場、ビル、スーパー、飲食店、病院、学校、公共施設などへの業務用ガス空調機器の設置工事および保守メンテナンスを主要業務としています。昭和63年の設立以来、ガスヒートポンプの設置工事や修理において高い技術力を有しています。
このM&Aの主な目的は、光立興業株式会社を子会社化することで、ラックランドのガス・空調設備部門を強化し、首都圏での営業・サービス網を拡充することです。これにより、シナジー効果を見込み、両社の収益力や技術力を高めることを狙いとしています。
参考:ガス・空調設備部門の強化に向け、光立興業株式会社 光立興業株式会社を子会社化
三菱電機株式会社によるAIRCALOのM&A
2024年4月に、三菱電機株式会社がフランスの水空調事業会社であるAIRCALOの全株式を取得した事例です。
三菱電機株式会社は、空調機器製造・販売を手掛ける子会社Mitsubishi Electric Hydronics & IT Cooling Systems S.p.A.およびMitsubishi Electric Europe B.V.を通じて、AIRCALOを買収しました。三菱電機は空調冷熱システム事業を重点成長事業の一つとし、特に欧州市場での事業拡大を目指しています。
AIRCALOはフランス・ボルドー市に本社を構え、Fan Coil Unit(FCU)やAir Handling Unit(AHU)などの空調製品の製造販売を行っています。1958年に設立され、長年にわたり高いカスタマイズ力と市場シェアを誇ります。
このM&Aの主な目的は、AIRCALOの幅広い製品ラインアップと高いカスタマイズ力を獲得し、欧州市場における水空調事業を強化することです。特に、環境意識が高まる欧州市場で、低GWP冷媒への転換や水空調方式の拡大が見込まれており、AIRCALOの強みを活かして市場ニーズに対応します。これにより、三菱電機は環境に配慮した製品を提供し、カーボンニュートラルの実現に貢献することを目指しています。
まとめ
空調設備工事業界におけるM&Aは、事業の成長戦略としての重要性を増しています。売却側、買収側双方にメリットがある一方で、買収価格の評価や統合後のプロセス管理など、様々な注意点があります。
M&Aを成功させるには、明確な戦略の立案と、PMIの適切な実行が欠かせません。法的・税務的な手続きにも十分な配慮が必要です。
M&Aは、リスクを伴う取り組みですが、適切なプロセスを踏むことで、大きな成果を得ることができるでしょう。空調設備工事会社がM&Aを活用し、事業の発展を図ることが期待されます。