「化粧品業界のM&Aの売却相場は?」
「化粧品業界のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「化粧品業界 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、化粧品業界のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
化粧品業界におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、化粧品業界のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 1 化粧品とは
- 2 化粧品業界の市場動向と市場規模
- 3 化粧品業界が持つ課題
- 4 化粧品業の動向と今後
- 5 化粧品業界のM&Aの動向
- 6 化粧品のM&Aをするメリット
- 7 化粧品のM&Aの注意点
- 8 化粧品におけるM&Aを成功させるためのポイント
- 9 化粧品業のM&Aにおける成功事例
- 9.1 三井物産によるDermaceutical Laboratories, LLCの買収
- 9.2 資生堂による米国スキンケア企業(ガーウィッチプロダクツ社)のM&A
- 9.3 アリナミン製薬による悠香ホールディングスのM&A
- 9.4 住友商事によるSACI-CFPAのM&A
- 9.5 オリックスによるDHCのM&A
- 9.6 千趣会によるニッスイファルマ・コスメティックスのM&A
- 9.7 ピクセルカンパニーズによるbhのM&A
- 9.8 プライムダイレクトによるコンビのM&A
- 9.9 ロレアルによるイソップのM&A
- 9.10 ジョンソン・エンド・ジョンソンとシーズHDのM&A
- 9.11 花王による米国ヘアケア事業(Oribe Hair Care)のM&A
- 9.12 ヤーマンによるディーフィットのM&A
- 9.13 ポーラによるトリコとのM&A
- 9.14 パスによるマードゥレクスとジヴァスタジオのM&A
- 9.15 コーセーによるタルトとのM&A
- 9.16 コティによるGHD(Good Hair Day)とのM&A
- 10 まとめ
化粧品とは
まずは化粧品の定義、そして化粧品の特徴を分かりやすく簡潔にまとめていきます。
化粧品とは
化粧品は、肌や髪、爪などの身体の外見や健康を保護・改善・美化するために使用される製品の総称です。化粧水やクリーム、口紅、マスカラ、シャンプーなど、さまざまな形態や目的の製品があります。これらの製品は、美容成分や保湿成分などを含み、肌や髪の状態を改善し、外見を整えることができます。
化粧品は主に女性がターゲットです。しかし、人によってニーズが大きく異なるため、幅広い人々にアプローチができるように多種多様な商品を提供することがとても重要となります。
他には、この化粧品においては原材料の調達から販売まで一貫した生産プロセスを作ることがかなり重要です。それによってコスト効率と生産力面でのシナジー効果が期待できます。
二つの業態に分かれる
化粧品業界の業態は、主に一般消費者向けに販売する「リテール業態」と業務専用商品を扱う「プロフェッショナル業態」の二つです。
リテール業態においては、メーカーから直接消費者に販売すれば高い利益が見込めます。しかし、百貨店やドラッグストアなどの小売店に卸した場合は、化粧品会社の利益率は低くなる傾向です。
一方、プロフェッショナル業態では、販売業者が美容室やエステサロンなどの施設に商品を販売するのが一般的となります。大手化粧品会社は、自社工場を保有し、商品開発からマーケティング、販売、PRまで一貫した運営方法です。
海外展開が現在重要化している
M&Aは現在グローバル化してきており、各国での販路開拓を目的としたものも進んでいます。効率よく販売規模の拡大をするために、海外における事業の買収が重要です。
国内の化粧品においては、様々な業種の会社が参入しており現在かなり供給がある状態です。そのため、最近の化粧品に携わる業者は、海外に販売ルートを作ることも多く、また国内から海外に事業を拡大した企業も数多くあります。
特に化粧品市場においては、各国・各地域の文化や生活様式の違いから、それぞれのニーズに合わせた製品を展開することが必要です。なので、海外の会社を買収する動きもこの化粧品市場においては活発となっています。
化粧品業界の市場動向と市場規模
矢野経済研究所「化粧品市場に関する調査を実施(2023年)」より
注1:ブランドメーカーの出荷金額がベース
注2:2023年は予測値
注3:単位は億
上の資料は化粧品の市場動向となりますが、これを見ると2020年に新型コロナウイルスによる化粧用品の需要減退が起こり、市場が縮小したことがわかります。しかし、現在は徐々にまたそこから回復してきている状態です。2022年度の市場規模は23700億円(前年比3.4%増)となっています。
現在はSNSの普及により、スキンケアやヘアケアの方法が広がっています。ですので、美容感度が高めの層だけでなく一般の消費者の需要も上がってきており、今後はコロナ以前よりも市場が成長する可能性が高いです。
ちなみに2022年の市場の製品カテゴリーの構成比は、スキンケアが47.3%と大多数を占めており、他にもヘアケアが20.3%、メイクアップが17.6%となっています。
化粧品業界が持つ課題
化粧品業界の市場規模は拡大傾向にありますが、化粧品業界には様々な課題があります。化粧品業界が持つ主な課題は、以下の通りです。
- 少子高齢化に伴う需要構造の変化
- 低価格な商品による利益の低下
- 他の会社との競争が激しい
- 有機美容品へのシフトで原料調達が困難に
それぞれ詳しく解説していきます。
少子高齢化に伴う需要構造の変化
最近は少子高齢化が深刻化しており、将来は若い人々向けの化粧品の需要が低下することが考えられます。ですから、少子高齢化による変化に柔軟に対応していくことがこの先重要となる傾向です。
具体的には、高齢者向けブランドの確立や、個人のニーズに合わせられる受注生産システムの提供、誰でも使いやすいバリアフリーな製品の開発などが挙げられるでしょう。
またそれに伴い、高齢者が使いやすいITシステムを整えることも必須となります。具体的には、直感的で分かりやすいショッピングサイトや、簡単な決済システムなどを作ることが一例です。
低価格な商品による利益の低下
化粧品自体の需要は増加していますが、最近はドラッグストアなどで売っている安いライバル商品の質が高くなっているため、それに伴い自分で売っている化粧品を安価にする必要があり利益が低下する可能性があります。それに伴い、経営が赤字になる場合も増えているのが課題です。
さらに、海外輸入の増加もあり、企業の収益も非常に苦しくなっています。海外人気の高い美容製品が国内に大量に出回っているため、国内製品は値下げをする必要があります。
この状況の中で利益をうまく作るには、ユニークな商品を開発したりターゲット層を一つに絞ったりすることにより差別化をすることが非常に重要となってきます。
他の会社との競争が激しい
この化粧品業界は、専用機器などへの事前投資があまり多くありません。なので、予算が少ない中小企業でも参入がしやすいです。つまり、他の企業に負けないための製品作りをしなければ生き残ることができません。
特に商品を高値で売る場合は、差別化戦略をすることが必須です。素材や機能、デザインなどでうまく差別化をしなければ商品を売って利益を上げることは難しいでしょう。またそれだけでなくECサイトやSNSなども使って情報を広範囲に広めることも大切です。
さらに、美容業界においてはトレンドに合わせた商品作りが必要なことがあります。流行に合わせたヒット製品をこまめに開発し続けなければ競争に勝つのは難しいかもしれません。
有機美容品へのシフトで原料調達が困難に
現在は健康的で安心できるオーガニック化粧品が注目されており、それによって有機化粧品のニーズが非常に増えている状態です。そのため、最近はそれらを中心に開発する企業も数多くあります。
しかし、有機美容品においては原材料の入手が困難になっているのが現状です。例えば有機植物由来の原料は天候や風土に強く依存しているため、安定供給が難しくなっています。さらに、有機植物を生産する農家は数少ないため、必要な量を調達するのが大変です。
また有機素材を調達しても一般的な素材よりも高価になってしまう他、有機原料の品質や規格の管理が難しく、一定の品質が保証されにくくなってしまう点が問題となっています。
化粧品業の動向と今後
M&Aにおいて業界の現状とこれからを理解しておくことは非常に重要です。そこで、ここでは化粧品業の動向と今後について解説していきます。ぜひ参考にしてください。
生産システムの効率化が必須に
今後この業界は安価な製品でも収益を得られるようにすることが必要となっています。なので、生産システムを強化し大量生産を効率的にすることが求められるでしょう。AIやIoTを活用した自動化、ロボットを使った人員削減などが例として挙げられます。この先労働力人口の減少も進んでいくので、一刻でも早く効果的な手を打っておきたいところです。
この他に、少量多品種の製品を生産するための設備の導入も重視する必要があります。今の業界は多岐にわたる化粧品が幅広く売れる代わりに、製品一種類の売れる量が少ないという傾向です。これにはニーズが多種多様になり、オンライン販売が広く普及したことが関係しています。
このような効率的な生産形態の確立と個々のニーズを満たせるような様々な化粧品を作ることで、大きな収益を得られる確率が上昇するはずです。
新しい化粧品ブランド・製品の増加
従来、化粧品ブランドは高級ブランドと低価格帯ブランドの2つに大別されていましたが、近年では中間に位置する「マステージブランド」が台頭しつつあります。マステージブランドは、高価格帯ながらも手頃な価格設定で、より多くの消費者が買い求めるでしょう。
また、特定の悩みに特化した商品や、個人の嗜好に合わせた商品、独自の天然由来成分を活用した商品なども発売されるようになり、ターゲット層に合わせたり多様なニーズに対応したりした多彩な市場が形成されている状況です。
さらに、従来は女性向けが中心でしたが、最近では男性向け化粧品の市場も拡大する傾向にあり、化粧品業界全体として多様化が進んでいます。
企業イメージの向上が必要
化粧品製造においては、企業の信頼性が必須となります。体に関係する商品なので、信頼できる会社が作っていないと商品はあまり売れません。
企業イメージを上げるために、会社は例として以下の点を気をつける必要があります。
- 衛生環境が整った生産環境の整備
- 積極的な社会貢献
- 広報活動の管理と強化
以下に軽く説明をしておきましょう。
衛生環境が整った生産環境の整備
この化粧品業界においては、安全な化粧品を安定的に供給する必要があります。そのためには、衛生環境を整えることが大切です。清潔な生産体制を作るための一例としては、無菌設備の導入、従業員への教育の徹底などがあります。
またそれだけでなく、何か顧客に問題が起きた時にきちんと原因などを模索する姿勢も重要です。原因究明を丁寧に行い、真摯に問題と向き合わなければ企業イメージが下がってしまいます。
積極的な社会貢献
現在、企業の社会的活動を指すフィランソロピー、芸術的、文化的支援を指すメセナが活発です。これらをすることにより、企業イメージの上昇が期待できます。実際、美容業界においては花王や資生堂などがとても有名です。
特に近年は人々の環境問題への関心が高まっています。そのため、プラスチックの利用削減やリサイクル、化学物質の厳重な管理などをすると良いでしょう。
広報活動の管理と強化
どんなに衛生管理や社会貢献をしても、それが顧客に伝わらなければ意味がありません。そのため、それらを伝えるための広報活動をする必要があります。例えば、サイトの設立やCMの配信、広報専門の部署の設置などが良い方法です。
またこのように広報活動をして企業の良いイメージをアピールすることにより、M&Aの成功確率も上がります。M&Aは信頼が重要です。ですので、このような広報活動をすることはM&Aをするにあたりとても良いでしょう。
化粧品業界のM&Aの動向
化粧品業界におけるM&Aの動向について解説します。これから化粧品企業のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。
研究開発の促進におけるM&Aが増加
現在、手頃な価格ながら高い機能性を備えた化粧品へのニーズが高まっている状況です。このニーズに応えるため、化粧品メーカーは積極的にM&Aを活用しています。具体的には、研究施設や製造工場を買収することで、自社グループ内での研究開発と製造が促進可能です。
また、研究開発と製造のプロセスをより効率化するという目的から、受託製造会社をM&Aで自社グループに編入するケースも増えてきました。こうしたM&A活用により、コストを抑えつつ高機能な化粧品を供給できるよう事業基盤を強化する動きが活発化しているのが最近の傾向です。
異業種からのM&Aが多い
化粧品業界では、他業種からの参入が活発化しており、異業種企業による化粧品会社の買収案件が増加しています。これらの買収は、本業とのシナジー効果を狙ったものです。自社の強みや技術を活かし、化粧品事業の強化や新規参入を図る動きが広がっています。
例えば、従来の主力事業で培った技術やノウハウを化粧品開発に生かそうとする企業が一例です。また、マーケティングなど自社の得意分野を化粧品事業に応用しようという企業もあります。このように、異業種参入企業は、既存事業とのシナジーを意識しながら、M&Aを通じて化粧品事業の拡大を図っている模様です。
海外企業の買収が増える動向
現在は国内に参入する海外企業も数多くある動向となっています。そのため、今後は海外企業に国内企業を売ることも出てくるでしょう。また現在は円安なことも海外企業による買収に拍車をかけています。
中でも化粧品業界のM&Aについては、中国と韓国企業の買収が多くなっています。中国は日本の技術や知的財産を確保するために買収をすることが多いです。韓国はK-Beautyが現在トレンド傾向にあり、グローバル化をしたい韓国の大手が日本企業を買収することがあります。
ただし、海外企業のM&Aにおいては、文化の違いによる経営統合の難しさや先端技術の流出が課題です。なので、今後のM&A動向が注目されます。
化粧品のM&Aをするメリット
化粧品のM&Aにおいてのメリットを売却側・買収側の両方から解説します。メリットを元にして化粧品のM&Aを検討してください。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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売却側のメリット
化粧品における売却側のメリットは、以下の通りです。
- 生産能力の向上
- 人材不足の解決
- 従業員の雇用先の確保
- スケール増大によるコスト減少
- 早期リタイアが可能
- 譲渡による利益の獲得
それぞれ詳しく解説していきます。
生産能力の向上
化粧品においては、いかに効率よく安価で生産をするかが重要となってきます。しかし、中小企業においては設備投資に限界がある状態です。なので、100円ショップやドラッグストアに勝てるような商品を作ることは困難でしょう。
しかし、大企業の傘下に入ることにより、大企業の豊富な資金や設備を使って自社を急成長させることが可能です。また、合併した大企業と競争の必要がなくなるのも良いといえます。
人材不足の解決
昔に創業をした化粧品を製造する企業は、現在後を継ぐ人がいない状態です。これには少子高齢化や都市部への人口集中などが関わっています。深刻な後継者不足によって廃業してしまうと、顧客や取引先に迷惑をかけてしまうでしょう。
M&Aをここですることにより、買い手に経営を任せることができます。それにより、会社は廃業を避けて存続することが可能です。買い手側の豊富な人材により、今までできなかったことができる可能性もあります。
従業員の雇用先の確保
先ほどの後継者問題とも関係しますが、会社が廃業となると従業員が全員失業してしまうこととなります。ここでM&Aを使うことにより従業員の雇用先を確保することが可能です。それによって、自身が従業員を解雇する必要もなくなり、従業員の暮らしが守られます。
従業員の雇用条件については買い手と売り手で詳しく相談する必要はありますが、買い手も従業員の確保は進めたいので、上手にいくケースが多いです。
M&Aに関しては黒字の会社の方が買われやすいのですが、赤字の会社でも何かユニークな商品やブランド力、優れた生産技術などがあれば売却できる可能性があります。
スケール増大によるコスト減少
M&Aで設備の整った大企業に買収されることにより、大量に原料などを仕入れることが可能となります。それによりスケールが増大することでコスト削減などが実現可能です。すると利益が増えて、自社単体でできないような事業拡大ができるようになります。
大企業が買収をしていなくても、同じような製品を作っている会社同士が合併をした場合、資本連携などで協力してスケールメリットを得られるかもしれません。
早期リタイアが可能
化粧品業における経営者は、後継者不足や赤字による借金など事業に対する悩みや不安を抱えています。M&Aで会社を売ることにより、経営者ではなくなり悩みや不安は無くなるでしょう。
会社を売却して得た収益を使えば、今後の生活資金も確保可能なので、老後までずっと金に困らずに生活が可能です。ですので、早期で仕事を辞めるために化粧品業におけるM&Aをすることもよくあります。
譲渡による利益の獲得
M&Aで売却をすることにより、企業価値に応じて利益を得ることができます。中小企業においてはかなりの場合経営者とその周りが株式などを保有しているので、ほとんどの利益を独占し新たな事業に活用が可能です。さらに、エグジットのためにM&Aをすることもできます。
実際、新たな事業をするために既存の企業を売却する例も多いです。しかし、M&Aのプランにより課せられる税金や売却益の獲得者が変わる可能性もあるため、そこは注意が必要となります。
買収側のメリット
化粧品における買収側のメリットは、以下の通りです。
- 事業規模の迅速で効果的な拡大
- 新規事業参入へのハードル削減
- 優秀な人材の確保
- シナジー効果の発揮
- ブランド価値の向上
それぞれ詳しく解説していきます。
事業規模の迅速で効果的な拡大
M&Aにおいて買収側が得られる最大のメリットは、事業拡大をできることとなります。M&Aによって買収側の企業は事業規模や商品の種類の拡大などを狙うことができます。
化粧品のM&Aにおいては、商品の生産設備や従業員といった有形資産と、開発技術や販売網などの無形資産を両方手に入れることが可能です。独自の技術や商品を持つ企業を買い取ることによって、幅広い事業を展開できます。化粧品製造においては多種多様な製品を作ることが必須なので、多彩な事業が展開できるのは嬉しいことです。
また海外企業を買収すると、ライバルが少ない地域に自身の商品を繰り出せたり、リスクを分散したりできます。それによって成長余地があり安定的な事業ができるのは良い点です。
新規事業参入へのハードル削減
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに早期進出が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
化粧品業界は、強い開発力やブランド力などがなければ生き残れない業界です。なので、それらを持つ企業を買い取ることにより、有利な状態でビジネスを始めることができます。
優秀な人材の確保
少子高齢化が問題となっている現代では、優秀な人材の確保はどの業界においても必須の課題です。優秀な人材を確保することは、そのまま企業の行く末に作用します。
M&Aを行うことによって、売却側企業に所属する従業員をそのまま雇用すれば、優秀な人材をそのまま自社に引き入れることができます。もちろん業界におけるノウハウも既に所有しているため、研修を行う手間も省くことが可能です。
ただし売却側企業に所属する従業員全員が優秀であることの保証はないことに加え、M&A後の企業文化の変化に付いてこられず、離職する従業員が発生する可能性もあります。M&Aによって従業員を引き継ぐ場合には、非常に繊細な注意が必要です。
また、海外企業を買い取り外国人の労働者を取り入れるのも良いかもしれません。ただし、言語や文化の違いがあるので、その点は気にする必要があります。
シナジー効果の発揮
他の企業を買収し二つの企業の経営資源や技術を融合することにより、相乗的な効果が生まれます。例えば企業が持っていた販売網ともう一つの企業が持っていた開発技術を組み合わせて、効率的な生産体制を作るなどが一例です。
さらに、二つの企業の従業員同士が交流しながら働くことにより、独自の新たな製品が生まれるかもしれません。ただし、逆に二つの企業が合わさることにより悪い効果が生まれる可能性もあるので、工夫が必要です。
ブランド価値の向上
事業拡大とも関係しますが、会社を買収することによりその会社の商標権や著作権などのブランド資産を獲得できます。さらに、すでに浸透しているブランドを買い取った場合、それのイメージや雰囲気などを自社ブランドに転用することも可能です。
場合によってはそのブランドに愛着を持つ顧客基盤を引き継げます。優良な顧客を自社に取り入れることにより、高い収益を得られるでしょう。
化粧品のM&Aの注意点
化粧品のM&Aを行う際の注意点を解説します。化粧品のM&Aを行う際の注意点は、以下の通りです。
- M&A前の調査(デューデリジェンス)
- 事業の資源の数量確認
- 従業員、取引先や情報の流出
- M&Aの専門知識を持たない状態での引き継ぎ
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A前の調査(デューデリジェンス)
M&Aにおいて、買収する企業のことを詳しく調査することは必須です。企業を買収した後に問題が発見されると非常に大きな負担がかかってしまいます。そのため現在のM&Aでは先にデューデリジェンスと呼ばれる調査をすることが主流です。
例を挙げると、薄外債務の発覚で思わぬ借金を抱えることがよく起こり得ます。そのため、財務に関する調査を事前にしておくことでそれを防ぐことが可能です。全ての問題を洗い出し解決することにより、買収後スムーズに事業を進められます。
これは買う側に限ったことではありません。売る側も社内調査をしておきそれを報告する義務があります。もしデューデリジェンスで問題が発覚した場合、相手の信頼を下げてしまうことがあり危険です。
事業の資源の数量確認
これも事前調査と関係がありますが、買収した企業がどのくらい資源を持っているかあらかじめ確認しなければなりません。もし買収した企業が大量の在庫を持っていた場合、それの管理コストが大幅にかかったり、倉庫が混雑したりと問題が起こります。
逆に、もし買収した企業がほとんど在庫を持っていなかった場合も問題です。買収したにも関わらず在庫が想定外に少ないと損害が生じてしまいます。またあまり大きな倉庫を持っていないと大規模な生産をした際に商品があふれることもあり大変です。
売り手側もきちんとM&Aの前に在庫管理をする必要があります。もしクレームによる返品などで無駄に在庫が増えている場合、先にそれを解決することが大事です。それだけでなく、買い手が資源を売り手と共有したくない場合もあります。それに関しても先に確認しておくことが重要です。
従業員、取引先や情報の流出
M&Aにて買収を行う企業は、売り手側の従業員や取引先を狙うことも数多くあります。しかし、環境と企業文化が変わることにより、従業員や取引先が流出してしまうかもしれません。
それを防ぐためには、従業員や取引先の事情やこだわりなどを丁寧に考えて、良い施策を打つことが大切です。
さらに、場合によってはM&Aの計画情報が交渉中に漏えいすることがあります。そうすると、従業員や取引先がM&Aの前に減少してしまい価値が下がってしまうかもしれません。そのためには、情報を明かさないために交渉相手と秘密保持契約を結び、情報の漏えい対策をすることが必須です。
M&Aの専門知識を持たない状態での引き継ぎ
化粧品業界に限らず、M&Aでは、買い手が売り手より知識や経験が豊富なことから情報格差があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手が有利になるような企業の低額買収が起こりかねません。最悪の場合には、M&Aで得をしようとしたはずが、不利な条件でM&Aをすることによって、巨大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのが定石です。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
化粧品におけるM&Aを成功させるためのポイント
化粧品におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。化粧品におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格をよく理解しておく
- 統合後の事業計画の確立
それぞれ詳しく例を用いながら解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化・明確化されます。
M&A戦略では、自社を分析するSWOT分析や市場調査・業界トレンドを調査して傾向の把握が必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収、売却先の選定や交渉を行っていくこととなります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰と・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が雑だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
以下は化粧品における簡単な一例です。参考にしてみてください。
買収側
M&Aにより何を達成したいか |
M&Aにより、性能がより上がった化粧品をリリースし、優秀な従業員を増やしたい。それにより売上高を大幅に増やしたい。 |
いつ・誰と・何を・いくらで・どのように買収するか |
半年後にA社の開発した事業や資産の一部を相場にあった金額で銀行融資を使って買収する。 |
買収において障壁となる要素はあるか |
現在まだA社の財務調査が済んでおらず、買収をした際損をしてしまうリスクがある。 |
M&Aに必要な予算はどのくらいか | 〇〇億円での買収を予定。しかし、売り手の希望による少しの変更は可。 |
売却側
M&Aにより何を達成したいか | M&Aにより従業員の雇用先を確保したい。また、売却時に手に入れた利益を使い新たに起業をしたい。 |
自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か | 自社は高い開発力を活かし良い化粧品を作っている。独自の販売網と優秀な従業員を使っているので、それら全部を売れば多大な収益が得られる。 |
いつ・誰と・何を・いくらで・どのように売却するか | 利益が安定している時期にB社に対して自社の在庫、従業員を含めた全ての財産を時価に会う適正な価格でM&Aアドバイザーを通して譲渡する。 |
売却において障壁となる要素はあるか | 現在製品の在庫が全体的に少し減り気味。そのため、売却金額が減らないように生産量を増加させるための対策をする必要がある。 |
(実際はこれよりもっと細かく正確に計画を練る必要があります)
しかし、この例を見ると「相場にあった金額」や「時価に会う適正な価格」、「生産量を増加させるための対策」など、どう決めれば良いかわからないものが複数あると思います。これらを決めるのに大抵の企業は専門業者に依頼や相談をするのが定石です。素人が一人でM&Aをするのは大変危険なので絶対にやってはいけません。
そこで、自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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相場価格をよく理解しておく
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
化粧品業界のM&Aでは、例として株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることがあります。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を簡単に計算してみましょう。
場合によっては相手側との相談により予算が変わることがあります。なので、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
統合後の事業計画の確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた目標を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMIという考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後にどうすれば良いか」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新たな経営体制の構築
- 経営における目標実現のための計画作成
- 両社協業のための体制構築・業務システムの強化
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきものです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行なわなければなりません。
化粧品業のM&Aにおける成功事例
化粧品業に関係するM&Aにおける成功事例を紹介します。これからこの業界におけるM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
三井物産によるDermaceutical Laboratories, LLCの買収
2023年8月、三井物産株式会社は米国化粧品販売企業のDermaceutical Laboratories, LLC(D-LAB)の全株式を取得しました。
三井物産は、金属、エネルギー資源、機械、化学品などさまざまな分野で国内外で事業を展開する総合商社となります。一方D-LABは、米国及びグローバル市場向けにスキンケア製品やカラーコスメ製品、一般用医薬品などのBPC製品の企画・設計・製造を行っている事業者です。
この買収を通じて、三井物産はD-LABを美容事業における米州の中核事業会社と位置づけています。具体的には、三井物産が強みを持つ日本発の機能性素材や新技術の提案力、グローバルな素材調達力、既存美容ビジネスとの事業シナジーを最大限活かすことで、D-LABを基盤とした規模感のある事業群の形成を目指していく方針です。
資生堂による米国スキンケア企業(ガーウィッチプロダクツ社)のM&A
2016年6月に資生堂のアメリカ会社であるShiseido Americas Corporationは高級なスキンケアブランドをグローバルで展開するGurwitch Products, LLCを買収しました。買収した会社の全持分を資生堂が取得することにより、高級スキンケアブランドの「リヴィーブ(RéVive®)」などを取得しました。
この買収の目的は、高価格帯の美容ブランドを自社に入れることにより、資生堂のブランド力を強化し、確固たる地位を築くことです。そして、それらのブランドのファンを引き入れることにより、さらなる売り上げの向上が期待できます。
そしてこの買収により、資生堂はグローバルな市場にさらに多くの商品を売り出すことが可能となりました。それにより、競争が激しくない地域に安定的に商品を供給させることが期待できます。
参考:資生堂がアメリカ地域本社を通じてガーウィッチ プロダクツ社を買収
アリナミン製薬による悠香ホールディングスのM&A
2022年11月に医薬品を製造・販売するアリナミン製薬株式会社は、スキンケア製品を手掛ける悠香ホールディングス株式会社を買収しました。この悠香ホールディングスは、人々の良い肌のための「薬用 悠香の石鹸」などを発売し、人気を得ています。
悠香ホールディングスは「茶のしずく」ブランドという鹿児島県産の有機栽培茶葉を使ったスキンケア製品をグループ会社を通じてオンラインで販売していました。これにおいて、アリナミン製薬が買収をすることにより今まで作ってきた通信販売ノウハウを取り込み、近年の多様化するニーズに対応できるとしています。
今後は両社で協力してヘルスケア事業を進めていくことによって、会社の価値最大化を目指すとのことです。
参考:悠香ホールディングス株式会社の株式取得に関するお知らせ
住友商事によるSACI-CFPAのM&A
2019年4月、住友商事株式会社は、化粧品素材のディストリビューター事業を行うSACI-CFPA社の株90%を所有することに同意しました。このSACI-CFPAは化粧品メーカーに対して素材の販売や処方の提案、開発などをしており、欧州トップの規模となっています。さらに、人気の高い天然素材を扱っていることも特徴の一つです。
今回の買収により、住友商事はSACI-CFPAが持つ商品ラインアップや開発技術などを活用し、さらなる世界展開をしていくとしています。現在事業はさらに成長をしており、今後の展開が見逃せないところです。
住友商事は他にもプレスパース社やコスモテック社といった外国企業を多数買収しており、欧州の事業基盤を強化し拡大を行っている状態となっています。欧州の化粧品メーカーとどのように繋がるかも知っておきたいものです。
オリックスによるDHCのM&A
2023年1月に様々な事業を営む株式会社オリックスは化粧品等の販売をしている株式会社DHCを子会社化しました。それに伴い社長も変わり、新体制に移行をしていくとのことです。
オリックスはDHCの主力の化粧品、健康用品だけでなく衣料品やペット用品なども受け継ぐといいます。DHCの多くの顧客を基盤として、様々な事業を強化し展開の積極化を図っていくとのことです。
DHCは売り上げ高がある程度伸びている状態でした。DHCの子会社化によって、2024年の3月ごろから収益に貢献してくるといいます。
参考:オリックス、DHC買収完了を発表 新社長に宮﨑副社長が就任
千趣会によるニッスイファルマ・コスメティックスのM&A
2017年5月、通販サイトを営む株式会社千趣会は、化粧品製造、販売を手掛けるニッスイファルマ・コスメティック社(NPC社)の株式を全て取得することを発表しました。このNPC社は健康と美しさをサポートする化粧品ブランドである「リスブラン」を中心に多彩な販売ルートで事業拡大をしています。
千趣会は、価値が高い商材を導入し事業の強化と拡大をするためにNPCを子会社化しました。今後はシナジー効果を狙いながら、販売プロモーション技術やインフラを使って事業を進めていく予定です。
なお、このNPCはもともと日水製薬株式会社の完全子会社であり、それが千趣会と共有されます。そのため、NPCの資産を日水製薬と千趣会で分かち合いながら協業等を行っていくといいます。
参考:ニッスイファルマ・コスメティックス株式会社の株式取得の基本合意書締結に関するお知らせ
ピクセルカンパニーズによるbhのM&A
2016年3月、多様な事業を手掛けるピクセルカンパニーズ株式会社が株式会社bhを買収しました。このビー・エイチは化粧品や美容製品、エステサロンで使用する消耗品などを生産している会社です。この会社はECサイトやカタログなどの会員を着々と増やしており、成長途上にあります。
bhはエステサロン業界において非常に高い評価を得ているため、それに応じたエステサロンの新事業の積極的展開のための買収です。それにより、収益基盤を拡張し、高品質のサービスをコストを減らして提供できます。
bhはあまり大きくない中小企業です。しかし、製品は衛生面に秀でており、そこを見込んでピクセルカンパニーズが買収を行いました。様々な業界にて製品とそれの技術を活用することにより、さらなるシェア拡大が期待されます。
参考:株式会社ビー・エイチの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
プライムダイレクトによるコンビのM&A
2022年6月、通販サイトを営む株式会社プライムダイレクトはコンビ株式会社の化粧品事業を譲り受けることとなりました。プライムダイレクトは2021年7月公表した中期計画である「IK Way to 2024」を基本として事業をしており、それの一つとしてコンビを譲受しました。
理由としては、コンビが営む化粧品事業の中に貴重な価値が高いツバメの巣由来の成分である「コロカリア」を使った商品をいくつか取り扱っており、それがプライムダイレクトにとって魅力的だからというものです。
事業の販路にとってのこれらの商品は企業価値を大きく上げるものとなり、高いシナジー効果を受けることができると言います。
ロレアルによるイソップのM&A
2023年1月、化粧品会社であるロレアル社は、高級美容ブランドであるイソップの買収をしたことを発表しました。イソップは非常に現代的な雰囲気を持ちながら高級感を兼ね備えたブランドであり、あらゆるトレンドに重なるといいます。
また、イソップの従業員もロレアルに加入し、中国などの潜在市場を見据えた上での大きな成長が見込める状態です。グローバル市場での精力的な活動と事業拡大により、この先ロレアルは飛躍的成長が期待できます。
イソップは世界中にその存在を示してきました。それを買収し顧客を引き入れることで、ロレアルは持続可能で成長できる事業体制を整えています。今後の動向も把握しておきたいところです。
ジョンソン・エンド・ジョンソンとシーズHDのM&A
米国の大手医療・化粧品メーカー、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が、日本の化粧品メーカー、シーズ・ホールディングス(シーズHD)を買収すると発表しました。
J&Jは世界中に多くの事業会社を持つ大企業で、化粧品事業も手掛けています。一方のシーズHDは、「ドクターシーラボ」などの人気スキンケア商品を販売する日本の化粧品メーカーです。
この買収によって、J&Jはシーズの優れた技術と商品ラインナップを手に入れ、アジア市場での化粧品事業を広げられると期待されています。逆にシーズHDは、J&Jの世界中にある販売網に自社商品を乗せることで、海外市場への進出が一気に広がるとの見込みです。
つまり、お互いの強みを生かし合いシナジー効果を作り出すことで、よりビジネスを発展させられるという狙いがあります。J&Jは一連の手続きを経て、最終的にシーズHDを完全に自社の一部門に編入させる計画です。
参考:ジョンソン・エンド・ジョンソンによる株式会社シーズ・ホールディングス株式(証券コード 4924)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
花王による米国ヘアケア事業(Oribe Hair Care)のM&A
2017年の12月に、花王株式会社は米国の子会社を通じ米国のヘアケア事業を展開するOribe Hair Care社を買収しました。ヘアサロン業界において超高級ブランドとそれの商品を獲得することで、事業の大きな拡充と顧客の拡大を実現することが狙いです。
花王グループは2017年から中期経営企画である「K20」を作り、様々な成長戦略を設計しました。その中の一つとしてあるのが欧州の事業の高利益化です。この買収はそのような計画を進め、さらなる企業成長に繋がるでしょう。
そしてこの買収された企業は従業員数が約50名の小さめの企業です。しかし、企業は外国にユニークな高級ブランドを展開していました。そのため、独自のブランドや資産を目的に大企業が中小企業を買収した例の一つといえます。
参考:花王、サロン向けヘアケアの米Oribe Hair Care社を買収
ヤーマンによるディーフィットのM&A
2018年8月、美容製品を開発し販売をするヤーマン株式会社は、「まかないこすめ」ブランドを展開する株式会社ディーフィットを子会社化しました。ディーフィットは、スカイツリーや空港などに数多くの店舗を設置しており、様々な美容商品を売っていました。
ヤーマンとディーフィットには「美容健康」という共通カテゴリーがあり、販売方法や販売経路等の得意分野を互いに生かします。協業により新規事業、既存事業において大きな事業拡大が可能です。
ディーフィットは「和」を持ち味にすることにより個性を発揮してきました。ディーフィットは観光客向けの商品を販売しており、今後観光客が増加すると売り上げも上昇すると示唆されます。この二社が今後どうシナジー効果を発揮するのか、見どころです。
参考:株式会社ディーフィットの株式の取得による子会社化及び 当該株式取得の一部対価としての第三者割当による自己株式の処分に関するお知らせ
ポーラによるトリコとのM&A
2021年2月、様々な美容事業に取り組む株式会社ポーラ・オルビスホールディングスは健康食品・スキンケア事業を行うトリコ株式会社を買収しました。トリコはカスタマイズした製品をサブスクリプションを使って提供する「FUJIMI」ブランドを展開しているのが強みです。
トリコは優れたサービスや、価値観の変化をうまく捉えたブランドや製品、強い対応力とスピードなどを持っており、急速な事業成長を遂げました。またそれだけでなく、目標に対する高い責任感なども持っており、そういった起業家精神が高く評価されたため買収が行われたとされています。
トリコはベンチャー企業となっていましたが、今回ポーラに買収されることで大企業の資産を生かした大規模な事業が可能です。今後は両社で生産・物流面で高いシナジーを発揮し、企業価値向上および成長ができると期待されています。
参考:トリコ株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
パスによるマードゥレクスとジヴァスタジオのM&A
2015年7月、パス株式会社は美容製品の事業に取り組む株式会社マードゥレクスおよび株式会社シヴァスタジオの買収を発表しました。これは2014年6月から始まった新たな経営体制における事業戦略の一つです。
この二つの会社の買収により、両社が持つ通信販売分野と化粧品分野のノウハウなどを生かして事業に取り組むことが可能となります。それにより、今までできなかった新製品の企画と制作、さらなる顧客満足度の上昇などが可能です。
さらに、パスのメディア事業における月刊ファッション雑誌「DRESS」と通信販売サイト「DRESS CLOSET」が連携し、シナジー効果を図っていくとしています。
参考:当社投資先企業であるパス株式会社(東証M 3840)が実施するM&Aならびに通販事業開始に関するお知らせ
コーセーによるタルトとのM&A
2014年3月、美容事業を手掛ける株式会社コーセーは、米国でスキンケアやメイクアップに関する事業を展開するタルト社を買収しました。このタルトは自社インターネットサイトや、テレビ通販での販売を通じ、米国の若い女性に大きな支持を得ている状況です。
タルトは天然由来成分を使っていることを売りにして、メイクアップとスキンケア製品を多数展開し、それにより順調に売り上げを伸ばしています。そのため、今後のさらなる成長が期待できる企業です。
コーセーはタルトを買収することにより、北米における事業の拡大をしました。今後もさらに海外事業を広げ、新たな販売路と顧客獲得を目指していく予定です。
参考:米国「Tarte, Inc.」の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
コティによるGHD(Good Hair Day)とのM&A
2016年11月、美容会社である株式会社コティは高級ヘアスタイリング器具の巨大ブランドであるGHD(Good Hair Day)を買収しました。これにより、コティのヘアケア事業をさらに拡大し、競争力が増加するとされています。
このGHDはヘアケアをするための多様で革命的な美容機器を生み出し、すぐに消費者、有名人、専門家の間で人気となりました。そしてそれに基づいて世界中に事業を展開中です。またGHDはサロンや小売店、オンライン取引など多様な販売形態を整えています。
GHDを買収したことにより、コティの収益は直ちに増加するとの予想です。この買収でコティは基盤を強化し、業界ナンバーワンの世界的リーダーになることを目指して成長し続けていきます。
まとめ
今回は、化粧品会社のM&A・事業承継の全知識ということで、化粧品業界のM&Aにおける売却相場・事例・成功ポイントを解説しました。
化粧品の業界は、現在異業種からの参入が非常に多い状態です。そのため、今後競争が激化することが予想できます。そのため、競争力を上げるためのM&Aが今後はとても重要です。
M&Aは企業の存続や成長のための戦略としてとても効果があります。ですが、生半可にできるものではありません。ぜひ今回の記事を参考に化粧品会社におけるM&Aを検討してみてください。