「倉庫業界のM&Aは今、どうなっているの?」
「倉庫業界のM&Aに関する情報を詳しく知りたい」
この記事を読んでいるあなたは、上記のような疑問を抱えているかもしれません。
実は、「倉庫業界 M&A」とインターネットで検索してみても、情報の質にばらつきがあり、実用的で信頼できる情報を見つけるのが難しいのが現状です。特に、この業界特有の事情や成功のためのポイントについて、明確に説明している記事は少ないです。
そこで本記事では、M&Aの専門家チーム「M&A HACK」が、倉庫業界のM&Aに関する情報を、分かりやすく丁寧に解説していきます。倉庫業界におけるM&Aの現状や、成功させるための具体的な戦略、注意点について深掘りしますので、倉庫業界のM&Aに興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 1 倉庫とは
- 2 倉庫業界の市場動向と市場規模
- 3 倉庫業の動向と今後
- 4 倉庫業界のM&Aの動向
- 5 倉庫のM&Aをするメリット
- 6 倉庫のM&Aの注意点
- 7 倉庫におけるM&Aを成功させるためのポイント
- 8 倉庫業のM&Aにおける成功事例
- 8.1 日本通運によるパナソニックロジスティクスのM&A
- 8.2 日本郵政株式会社による豪州トール・ホールディングスのM&A
- 8.3 日本通運株式会社による名鉄運輸株式会社のM&A
- 8.4 株式会社サカイ引越センターによる株式会社SDホールディングスのM&A
- 8.5 香港ヤマト運輸株式会社による広州威時這沛運集団有限公司のM&A
- 8.6 トナミホールディングスによる株式会社ケーワイケーのM&A
- 8.7 鴻池運輸によるBEL INTERNATIONAL LOGISTICS LTD.のM&A
- 8.8 SBSホールディングス株式会社によるリコーロジスティクス株式会社のM&A
- 8.9 岐阜プラスチック工業株式会社による橋爪運輸株式会社のM&A
- 8.10 ハマキョウレックスによる株式会社シティーラインのM&A
- 8.11 SBSホールディングスによる東洋運輸倉庫株式会社のM&A
- 8.12 東部ネットワークによる株式会社東北三光のM&A
- 8.13 セイノーホールディングスによる同社完全子会社のM&A
- 8.14 ニッポンエクスプレスによるcargo-partner GmbHのM&A
- 8.15 福山通運株式会社 によるGRAND EMPORIUM LOGISTICS CO., LTD.のM&A
- 9 まとめ
倉庫とは
倉庫業界は、商品の保管から流通まで、現代の消費社会を支える基盤と言えます。
ここからは、そんな物流の要である、倉庫業の基本的な役割、業務内容、そして物流業界との関係について、具体的な例を交えながら詳しく解説していきます。
倉庫業界の概要
倉庫業界は、IT技術と物理的なスペースの管理を組み合わせることで、効率的かつ素早い商品流通を支えており、消費者の需要に応えるための物流の仕組みを提供しています。近年では、EC市場(ネットショップなどのこと)の急成長に伴い、重要性も一層高まっている状況です。
また、環境配慮型の倉庫運営や、国際的な物流ネットワークの構築にも力を入れ、グローバルなビジネス環境の変化に柔軟に対応しています。
倉庫会社の業務内容
倉庫会社の業務内容を以下にまとめました。
- 商品の受領(商品の検品)
- 商品の保管(商品の分類と保管場所の割り当て)
- 商品の管理(在庫の監視と管理)
- 商品の出荷(ピッキング・梱包・配送準備)
また、倉庫会社は、顧客の供給チェーンの効率化を図るために、最適化された物流サービスの開発や、逆物流サービスの提供など、付加価値の高いサービスを提供することもあります。
最近では、IT技術の進展により、RFIDタグやバーコードシステムを使用した在庫管理、自動化されたピッキングシステム、オンラインでのリアルタイム在庫確認といったDX化の流れに合わせる企業も増加しています。
物流との関係
物流とは、商品が生産地から消費者の手元に届くまでの過程のことで、物流の中核をなすのが倉庫業界です。
倉庫では、商品の保管だけでなく、注文に応じたピッキング、梱包、そして配送準備が行われます。現代の物流システムでは、IT技術を駆使した在庫管理や、ロボティクスによる自動化が進んでおり、より迅速かつ正確な商品の流通が可能になっています。
また、グローバル化が進む中で、倉庫業界は国際物流の要としても機能し、世界中の市場と消費者を結びつける重要な役割を果たしています。
倉庫業界の市場動向と市場規模
倉庫業界は、EC市場の急速な拡大や国際貿易の増加に伴い、全体的な成長をあげています。
ここからは、業界が直面している課題、市場規模の現状、そして大手企業と新規参入企業の動きについて分析し、市場動向の全体像を浮かび上がらせます。
倉庫業界が持つ課題
倉庫業界は多くの課題に直面しています。2024年問題からも分かる通り、労働力不足、特に物流分野での熟練労働者の不足は、業界全体の成長を阻害しています。
しかし、顧客の要求は高まり続けており、より迅速かつ正確なサービスが求められているため、技術革新への投資とそれを支える人材育成が求められているという現状です。
近年、ニュースで話題になっている女性ドライバーの採用拡大も、2024年問題を裏付ける証拠と言えるのかもしれません。
倉庫業界の市場規模
倉庫業界の市場規模は、EC市場の急速な拡大、グローバル化されたサプライチェーンの複雑化、および消費者の即時配送に対する需要増加によって、近年顕著な成長をとげています。特に、オンラインショッピングの普及が倉庫需要を押し上げ、物流センターの自動化や効率化への投資を促進しています。
さらに、コロナ禍により、オンラインでの商品購入という消費行動の変化を加速させ、倉庫業界の市場規模の拡大に影響しました。
国際物流の観点からも、各国間の貿易量の増加により倉庫サービスへの需要を高めており、特にアジア太平洋地域や新興国市場での成長が注目されています。
このような背景から、倉庫業界は今後も持続的な成長が見込まれ、新技術の導入やグリーン物流への移行など、業界内での革新も進んでいくと予測されます。
参考:倉庫業の動向と施策
大手企業と中小企業の動き
倉庫業界の大手企業と中小企業の動きは非常に対照的です。大手企業は、グローバルな拡張、先進的な物流技術の導入、およびeコマースとの統合を通じて市場支配力を強化。また、自動化された倉庫システムやAIによる効率的な在庫管理技術の導入に積極的であり、大規模な投資を行うことで競争上の優位性を確立しています。
一方、中小企業は、地域密着型のサービス提供や特定ニッチ市場への特化を通じて競争に挑んでおり、顧客との密接な関係や柔軟なサービス提供を強みとし、大手にはない最適化されたソリューションで市場に存在感を示しています。
しかし、資金調達や最新技術に関する課題も抱えており、パートナーシップや地元企業との協力による戦略的な動きも増えているため、一概に特化していればよいというわけではないようです。
全体として、倉庫業界は大手企業の技術革新と中小企業の市場適応能力の間でバランスを取りながら、市場規模は拡大を続けています。
新規参入企業の影響
倉庫業界における新規参入企業の影響は、市場のイノベーションと競争の活性化に貢献しており、特に、テクノロジーを駆使したスタートアップ企業の参入は、物流の自動化、効率化を推進し、業界全体のサービス品質の向上を促しています。
また、従来の物流モデルにから脱却し、AI、ロボティクス、IoTなどの先端技術を利用して、倉庫管理と配送プロセスを1から見直した結果、配送速度の加速、在庫管理の精度向上、コスト削減など、顧客に直接的なメリットを提供し、市場に新たな価値を生み出しています。
しかし、新規参入企業は市場の確立された規則や競争環境に適応するための挑戦にも直面しており、その中で生き残り、成長するためには、革新的なアプローチと戦略的なパートナーシップの構築がカギとなります。
倉庫業の動向と今後
技術革新とグローバル化は、倉庫業界に大きな影響を与えており、自動化技術の導入や国際物流の拡大は、業界の構造変化を促進しています。
そんな業界の変化がもたらす動向を以下3つにまとめました。
- 技術革新と倉庫業
- EC市場の拡大と倉庫業
- 国際化と倉庫業の将来
それぞれ詳しく解説していきます。
技術革新と倉庫業
倉庫業界は、AI、ロボティクス、IoTなどの技術革新によって大きな変化をとげています。これらのIT技術を活用することで、在庫管理や物流プロセスの自動化が可能となり、効率性と精度が大幅に向上。特に、人手不足が加速する地域において重要な役割を果たしています。
今後も、技術革新は倉庫業界の成長を支えるカギとなるでしょう。
EC市場の拡大と倉庫業
消費者のオンラインショッピングへの需要増加に伴い、世界規模でより多くの商品が保管・配送されるようになりました。
そのため、倉庫業界においても倉庫スペースへの需要が高まるとともに、より迅速な配送を実現するための物流システムの最適化が求められています。
具体的には、IoT化や新システムの導入によるIT化などがあげられます。今後も物流需要は増加していくことが考えられるため、サービスのIT化は市場に合わせていく際の大きな課題です。
倉庫業の国際化
グローバル化により、オンラインショップを通じて、日本から海外へ向けて商品を販売するクロスボーダーECの需要が増加しています。
そのため、倉庫業界も海外の市場への進出や国際物流ネットワークの構築を通じて、各企業が成長を目指しており、企業の国際化は、倉庫業界に新たなビジネスの機会をもたらすと同時に、業界の競争構造をも変えることになりつつあります。
倉庫業界のM&Aの動向
倉庫業界では、戦略的なM&Aが活発に行われており、業界の再編が進んでいます。
ここからは最近のM&A事例を通じて以下を解説します。
- 倉庫業界のM&Aのトレンド
- M&Aによるシナジー効果
- 海外展開を目指すM&A
- M&Aの際の法的・文化的課題
M&Aが企業の成長戦略にどのように貢献しているのか、また、成功したM&Aの要因についても深堀りします。
倉庫業界のM&Aのトレンド
倉庫業界では、業務効率化や市場シェアの拡大、新技術へのアクセスなどを目的としたM&Aが活発に行われています。特に、EC市場の急成長や国際物流の需要増加を背景に、大手企業による中小企業の買収や、技術提携を目的としたM&Aが注目されています。
また、海外企業とのM&Aにより、グローバルなネットワーク拡大を狙う動きも見られ、業界のIT化の流れや人材不足の流れが影響していると考えられます。
M&Aによるシナジー効果
倉庫業界におけるM&Aは、シナジー効果を生み出すことが期待されています。
たとえば、異なる地域や業種で強みを持つ企業間の合併は、物流ネットワークの拡張やサービスの多様化につながり、最新技術を持つ企業の買収は、効率的な倉庫運営やコスト削減に大きく貢献する可能性があるため、自社の得意分野をサポートするような企業を上手く買収できると、相乗効果的に企業規模の拡大が可能です。
M&Aで海外展開を目指す
M&Aを通じて海外展開を目指す戦略は、国際的なビジネスの基盤を作る場合の最も手軽な手段です。企業はM&Aを通じて、現地の市場知識、ビジネスネットワーク、さらには必要な運営許可や規制への理解を持つ企業を獲得できます。
また、海外展開を成功させるには、文化的な違いへの適応や現地でのブランド価値の構築も重要であり、M&Aはこれらの課題をすべて克服し、海外市場での成長を加速させるための賢い戦略と言えます。
M&Aの際の法的・文化的課題
M&Aを成功させるには、法的・文化的な課題への対応が必要です。特に、国境を越えたM&Aでは、各国の法律や税制、ビジネス慣習の違いが大きな障壁となる場合があります。
また、企業文化の違いによる統合後の組織内摩擦も、成功のカギを握る要素です。国内外問わず、法的・文化的な課題に効果的に対処することが、M&Aの成功に直結します。
倉庫のM&Aをするメリット
倉庫業界におけるM&Aは、組織の成長、効率化、市場拡大など、多くのメリットをもたらします。ここからは、M&Aを通じた売却側のメリットと買収側のメリットに分けて詳細に解説します。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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売却側のメリット
倉庫業界のM&Aにおける売却側のメリットは、以下の通りです。
- 資本力の強化
- 事業リスクの軽減
- 事業承継問題の解決
- 新たな市場への進出
- ブランド価値の向上
それぞれ詳しく解説していきます。
資本力の強化
企業が所有する資産の売却を行うことで、直ちに資金を確保でき、資本力の強化につながるため、新規事業への投資や研究開発のための資金を支出できるようになります。
資本力の強化は企業の成長促進と競争力向上に直結する課題でもあるため、売却による資本確保は、より一点集中的な経営を可能にし、将来への投資の幅を広げるという意味でも有効な手段です。
事業リスクの軽減
単独で事業を運営するリスクから一定程度解放されるため、経済状況の変動や競争激化が見込まれる場合には、大きな安心材料となります。
特に市場の変動が大きい業界では、資産の売却を通じて安定した資金を手に入れることが、リスク管理の一環として非常に有効です。
事業承継問題の解決
M&Aによって後継者不在などによる事業承継問題を解決できるため、長年築き上げてきた事業を継続し、従業員の雇用を守ることが可能です。
さらに、企業文化の継承と地域社会への貢献も期待できます。黒字倒産が珍しくない日本の中小企業においては、お買い得な企業も少なくないため、お互いにメリットがある場合がありますよ。
新たな市場への進出
売却を通じて、売却側の企業は買収企業の既存のビジネスネットワークや市場知識を活用することが可能になります。特に、グローバル企業に売却する場合、その企業の国際的な販売チャネルや顧客基盤を通じて、自社製品やサービスを新たな地域や国際市場に紹介し、展開する機会を得られます。
売却側企業は自社のビジネススケールを拡大し、新規市場での収益機会を創出できるのです。また、この過程で得た資本は、さらなる事業拡大や新たな投資に活用することが可能となり、企業成長の基盤とできる点も大きな利点といえます。
ブランド価値の向上
M&Aにおける売却側の企業が受けられるメリットの1つに、ブランド価値の向上があります。
買収される企業は、買収する企業の資源、専門知識、市場での地位を活用することで、自社ブランドの認知度と評価を高められます。特に、業界内で高い評価を受けている企業や、グローバル市場での強固なプレゼンスを持つ企業による買収は、売却側企業のブランドを新たな顧客層に紹介する絶好の機会です。
新しい経営体制の中で上手に製品やサービスをアピールできれば、再評価される可能性が高まり、企業全体の価値が向上します。
買収側のメリット
倉庫業界のM&Aにおける買収側のメリットは、以下の通りです。
- 市場シェアの拡大
- 新技術の獲得
- 経営資源の効率的活用(人材・技術・顧客基盤など)
- グローバルなネットワークの拡張
- 競合他社との差別化
それぞれ詳しく解説していきます。
市場シェアの拡大
買収側の企業は、M&Aを行うことで、市場シェアの拡大というメリットがあります。
競合他社や補完的なビジネスを買収することで、買収側の企業はピンポイントで自社の足場を強化できます。新しい顧客層へアクセスも可能で、既存の製品やサービスの販売網を拡大できます。
また、市場シェアの拡大は、ブランド認知度の向上、業界内での交渉力の強化にもつながり、企業の成長戦略においても中核的な役割を果たします。そのため、企業の持続可能な競争優位を構築する上では避けては通れない道です。
新技術の獲得
買収を通じて新技術の獲得できる点もメリットの1つです。特に技術進化が激しいビジネス環境においては、先端技術や特許、専門知識を持つ企業を買収することで、研究開発の時間とコストを大幅に節約し、市場への製品導入を加速できます。
また、競合他社との差別化を図ることで、その分野を代表するような企業としての地位を確立も可能です。そして、新技術の導入は製品やサービスの質の向上に直結し、顧客満足度の向上、新たなビジネスモデルの創出にもつながります。
結果として、企業は持続可能な成長と長期的な競争優位を確保することができるのです。
経営資源の効率的活用
企業にとってM&Aは、買収を通じて、人的資源、技術、顧客基盤、さらにはブランドなどの価値ある資産を獲得し、自社の既存の資産と組み合わせてシナジー効果を生み出すことで、全体としての企業価値の向上が期待できます。
特に、異なる市場や業界で活躍している企業を買収することにより、新たな市場へのアクセスや事業領域の拡大も実現します。
また、買収によって得られるビジネスノウハウは、業務プロセスの効率化、コスト削減、製品・サービスの質の向上に影響し、結果として競争力の強化可能です。買収を戦略的に行うことで、競争力の強化は最大化され、企業の持続可能な成長が期待できます。
グローバルなネットワークの拡張
買収を通じてグローバルなネットワークを拡張することは、経営戦略上において大きな価値を持ちます。特に国際市場への進出を目指す企業にとっては、海外の企業を買収することで、現地でのビジネス基盤を素早く確立し、地域特有の市場知識やビジネス慣習を獲得できます。
また、新たな市場における販売チャネルを拡大することで、企業はグローバルな供給チェーンを強化可能です。さらに、グローバルネットワークの拡張は、多様な顧客ニーズに応えるための製品開発やイノベーションを加速できるため、企業の国際的な競争力を高められます。
競合他社との差別化
M&Aを通じて競合他社との差別化も可能です。独自の技術、特許、ブランド、または特定分野における専門知識を持つ企業を買収することで、自社の製品やサービスに統合し、市場における独自性を強化できます。
そのため、企業は顧客に対して他にはない価値を提供できるようになり、結果として顧客ロイヤルティの向上や新たな顧客層の獲得につながります。さらに、競合他社との差別化は、価格競争からの脱却や市場における優位性の確立を可能にし、長期的な事業の成長と収益性の向上を支えます。
M&Aは、企業が市場で際立つための戦略的な手段として重要な役割を果たしています。
倉庫のM&Aの注意点
倉庫業界のM&Aを行う際の注意点を解説します。倉庫業界のM&Aを行う際の注意点は、以下の通りです。
- 買収後の統合プロセス
- 財務面でのデューデリジェンス
- 法的規制とコンプライアンス
- 人材の流出リスク
- 文化的違いへの対応
それぞれ詳しく解説していきます。
買収後の統合プロセス
M&Aを成功に導くためには、買収後の統合プロセスが非常に重要です。異なる企業文化の融合、業務の統合、そして従業員のモチベーション管理には細心の注意を払う必要があります。
買収後の統合が不十分だと、予想されたシナジー効果が得られないだけでなく、組織内の混乱を招く可能性があるため、事前のリサーチは徹底して行いましょう。
財務面でのデューデリジェンス
M&Aの過程で、財務面でのデューデリジェンスは極めて重要な注意点です。買収対象となる企業の財務状況、資産の実態、負債の規模、そして過去数年間の財務実績を徹底的に分析しましょう。
特に倉庫業界では、不動産や物流設備などの資産価値を評価し、隠れた負債や将来にわたる財務リスクの存在を見極めることも必要です。財務デューデリジェンスを怠ると、過大評価による過剰な買収価格の支払いや、予期せぬ財務負担に直面するリスクがあり、M&Aの失敗につながります。
法的規制とコンプライアンス
倉庫業界におけるM&Aを成功に導く上で、法的規制とコンプライアンスに注意しましょう。
物流関連の規制や習慣、倉庫運営に関わる安全基準、環境規制など、多岐にわたる法的要件を正確に理解しておく必要があります。
特に、国際的なM&Aの場合、企業が活動するすべての国の法律や業界固有の規制に精通していることが求められます。法的規制への違反は、罰金や事業活動の制限といった直接的な損害だけでなく、企業の評判にも深刻な影響を及ぼすため、法律専門家と密接に協力し、コンプライアンスを遵守しましょう。
人材の流出リスク
倉庫業界のM&Aにおいて、人材の流出リスクは重要な注意点です。買収や統合の過程で生じる不確実性や組織文化の違いは、従業員の不安を引き起こし、結果としてキーパーソンや重要なスキルを持つ従業員の退職につながることがあります。特に、倉庫業界では、物流管理や倉庫運営に特化した技術や知識を持つ人材は貴重であり、これらの人材の流出は業務の効率性やサービス品質に直接影響を及ぼします。M&Aを進めるにあたり、従業員へのコミュニケーションを重視し、組織文化の融合に努め、従業員の不安を和らげる施策を講じることが重要です。また、インセンティブの提供やキャリアアップの機会を明確にすることで、人材の定着を促し、企業の長期的な競争力の維持に貢献します。
文化的違いへの対応
異なる企業文化や働き方の違いはM&Aの障壁になりえます。買収や合併によって1つの組織になった後も、内部構造の違いが原因で業務に摩擦が生じることがあるため、企業文化の違いを認識し尊重しながら共通の価値観を構築していく努力が求められます。
主に、従業員間のワークショップや合同研修を実施し、異なる背景を持つメンバー同士のコミュニケーションを促進することが有効です。
また、トップダウンではなく、従業員自身が新しい企業文化の形成に参加できるようにすることで、組織内の一体感を高め、統合後のスムーズな移行を見込めます。
倉庫におけるM&Aを成功させるためのポイント
倉庫業界におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。倉庫業界におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格をよく理解しておく
- PMI(統合後プロセス)の確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略を立案する際には、自社の長期的なビジョンと市場環境を綿密に分析し、M&Aによって達成したい具体的な目標を明確に定義しましょう。
M&A戦略のポイントは以下の通りです。
- M&Aの目的(具体的なメリット)
- 自社の長期戦略とどのように整合するかを検討(シナジー効果の最大化など)
- リスクの特定(市場リスク・財務状況など)
- M&Aに必要な予算と買収方法(買収する資産について)
上記のポイントを押さえたM&A戦略を立案しましょう。戦略的なM&Aは企業成長を加速させるための投資です。詳細な市場分析と丁寧な計画がM&A成功のカギとなります。
また、M&Aの知識や計画が不十分な状況で交渉を進めてしまうとM&A失敗のリスクがあるため、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼できると安心です。有料ですがスムーズにM&Aを成功に導いてくれますよ。分析時間の短縮にもつながります。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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相場価格をよく理解しておく
倉庫業界におけるM&Aを成功させるためには、対象企業の相場価格を正確に理解しておきましょう。相場価格の把握は、過剰な買収価格の支払いを避けると同時に、交渉においてリアルな価値評価に基づいた適切な提案を行うために必要です。
市場価値の評価には、業績、資産価値、市場内でのポジション、将来の成長見込みなど、多角的な分析が必要とされます。特に倉庫業界では、不動産価値や物流インフラの品質が重要な評価ポイントです。
適切な相場価格を明確にする際は、財務専門家やM&Aの専門家の意見を取り入れましょう。価格に関する交渉で有利な立場を確保できます。
また、適切な相場価格を知っておくことで、M&Aの戦略的な意思決定を統一し、投資のリターンの最大化が可能です。
PMI(統合後プロセス)の確立
買収完了後、異なる企業文化、システム、業務プロセスの統合は、予期せぬ課題を引き起こす可能性があります。PMI(統合後プロセス)における重要な要素は以下の通りです。
- ステークホルダーとのコミュニケーション
- 組織文化の融合
- ITシステムの統合・オペレーションの効率化
- スムーズな統合を実現するための具体的な計画
M&A成功するためには、事前に明確な統合計画を立案し、段階的かつ計画的に進めることで、シナジー効果の最大化を目指しましょう。M&Aの成約には1年以上時間が掛かる場合が多いため、長期的な計画を用意しておく必要があります。
また、PMIの成功は、統合後の業務効率の向上、コスト削減、そして最終的には企業価値の最大化に直結します。買収(売却)した資産を十分に活かし、企業成長を加速させましょう。
倉庫業のM&Aにおける成功事例
日本通運によるパナソニックロジスティクスのM&A
2013年3月に「日本通運株式会社(以下日本通運)」はパナソニックの連結子会社である「パナソニック ロジスティクス株式会社(以下パナソニック ロジスティクス)」の普通株式の一部を日本通運に譲渡する株式譲渡契約を締結したM&Aの事例です。
日本通運は電子機器物流分野におけるサービスを強化し、パナソニックロジスティクスの持つ高度な物流技術と経験を活用することができるようになりました。これにより、高価値商品の安全な輸送と効率的な物流プロセスの提供が可能となり、顧客サービスのさらなる向上が期待されます。
参考:パナソニック ロジスティクス株式会社の株式の一部譲渡に関する基本合意について
日本郵政株式会社による豪州トール・ホールディングスのM&A
2015年5月に「日本郵政株式会社」は、「豪州トール・ホールディングス」の株式を買収し子会社化したと発表されています。
日本郵政によるトール・ホールディングスの買収は、国際物流ネットワークの拡大とグローバルなビジネスチャンスを目的としており、トール・ホールディングスが持つ豊富な物流基盤と国際的なネットワークを活用することが可能となったため、アジア太平洋地域をはじめとする世界各国でのサービス提供能力が飛躍的に向上しました。
特に、EC市場の拡大に伴う物流需要の増加に効果的に対応できるようになり、顧客サービスの質の向上に大きく影響しています。
参考:日本郵便による豪州物流企業Toll Holdings Limitedの株式の取得(子会社化)について
日本通運株式会社による名鉄運輸株式会社のM&A
2016年4月に「日本通運」が「名鉄運輸株式会社」の株式の20%を取得し、資本業務提携を結んだM&Aの事例です。
日本通運が名鉄運輸と資本業務提携を行ったのは、双方の物流ネットワークと資源を最大限に活用する戦略狙ったためです。また、国内外の物流サービスの質を一層高め、顧客満足度を向上させる目的があり、名鉄運輸の強固な地域ネットワークと日本通運の広範な物流サービスが組み合わさることで、より迅速で柔軟な物流連携の強化が可能になり、業界内での競争力を高めました。
参考:名鉄運輸株式会社と日本通運株式会社の特別積合せ運送事業における事業統合(子会社が当事会社となる会社分割)に関する基本合意書締結のお知らせ
株式会社サカイ引越センターによる株式会社SDホールディングスのM&A
2016年4月に引越運送業の株式会社サカイ引越センターは、クリーニングサービスを手掛ける株式会社SDホールディングスの株式を取得し、子会社化したと発表されています。
サカイ引越センターがSDホールディングスを子会社化した背景には、引越し業務とクリーンサービスのシナジーを最大化する戦略があり、サカイ引越センターは引越しサービスに加え、クリーニングサービスを提供することで、顧客への付加価値を高めることに成功しました。
SDホールディングスの専門知識とノウハウを活用することで、サービス品質の向上はもちろん、新たな顧客層の獲得にも繋がり、事業の多角化と収益性の向上を実現しました。
参考:サカイ引越センター/SD ホールディングスの株式を取得
香港ヤマト運輸株式会社による広州威時這沛運集団有限公司のM&A
2016年11月に「香港ヤマト運輸株式会社」は、樟樹威馳及び広州威馳から「広州威時這沛運集団有限公司」の持分を4割弱取得し、3年以内にヤマトグループが経営権を保有するということで合意したM&Aの事例です。
香港ヤマト運輸は、中国の物流市場拡大に伴い、広州威時這沛運集団への出資を決定したことにより、香港ヤマトは中国国内での配送ネットワークを大幅に強化し、アジア太平洋地域におけるビジネス展開を加速させました。
また、出資により得た地理的利点と物流インフラを活用して、香港ヤマトは中国内外での顧客ニーズに迅速に対応できる体制を築き上げ、業務効率とサービスの質を高められました。
参考:広州市に本拠地をおく国際物流事業者 広州威時沛運集団有限公司に出資
トナミホールディングスによる株式会社ケーワイケーのM&A
2018年4月に「トナミホールディングス」は、地域密着型の配送サービスを提供する「株式会社ケーワイケー」と株式譲渡契約を締結したM&Aの事例です。トナミホールディングスが株式会社ケーワイケーの全株式を取得し同社を完全子会社化しました。
株式会社ケーワイケーが持つ独自の物流ネットワークと配送技術は、トナミホールディングスの物流サービスの質を一層向上させるものであったため、同社は国内物流市場におけるサービス提供範囲を拡大しました。
また、株式会社ケーワイケーの完全子会社化は、顧客に対してより広範囲で高品質な物流ソリューションを提供するための戦略的な一環であり、両社の相乗効果により、新たな物流サービスの開発と市場での競争力の強化が期待されます。
鴻池運輸によるBEL INTERNATIONAL LOGISTICS LTD.のM&A
2018年10月に鴻池運輸株式会社は、香港の国際航空貨物会社BEL INTERNATIONAL LOGISTICS LTD.(以下、BEL社)の株式を取得し、子会社化したと発表されています。
鴻池運輸は、グローバル物流市場でのプレゼンス強化を目指し、BEL社の完全子会社化を行った結果、鴻池運輸は特に欧州とアジア間の物流サービスにおいて、能力を大幅に拡張しました。
BEL社の持つ豊富な国際物流ネットワークと専門知識を組み合わせることで、顧客に対する一層の付加価値提供が可能になり、ビジネスチャンスをさらに拡大。鴻池運輸が目指すグローバルな物流サービスプロバイダーとしての地位を固める重要な一歩となりました。
SBSホールディングス株式会社によるリコーロジスティクス株式会社のM&A
2018年8月に「SBSホールディングス株式会社」は、「リコーロジスティクス株式会社」の株式66.6%を取得し、連結子会社化したと発表されています。
SBSホールディングスは、リコーロジスティクス株式会社の株式の大半を取得し、連結子会社化を実現。リコーロジスティクス株式会社が有する物流ネットワーク及び先進的な物流技術を取り入れることに成功した結果、顧客へのサービス提供範囲を拡大し、高い付加価値を求める市場での競争力を強化しました。
参考:リコーロジスティクス株式会社株式の一部取得に関するお知らせ
岐阜プラスチック工業株式会社による橋爪運輸株式会社のM&A
2018年12月に岐阜プラスチック工業株式会社は、運送事業を手掛ける「橋爪運輸株式会社(以下橋爪運輸)」の株式を取得し、子会社化したと発表されています。
荷物量の急増によって物流のキャパシティーを上回り、これまでと同じサービスの維持が困難な状況に直面する中、岐阜プラスチック工業は、橋爪運輸の関東一円における運輸業務の実績とノウハウを生かし、統合管理システム導入によるデータ一元管理をはじめとするIT技術の充実や、デポ倉庫の効率化を通じて、より迅速かつ効率的な物流サービスの提供を目指して将来全国一円に拡充していくことを狙いとしています。
ハマキョウレックスによる株式会社シティーラインのM&A
2019年12月に「ハマキョウレックス」は、「株式会社シティーライン(以下シティーライン)」と株式譲渡契約を締結したM&Aの事例です。ハマキョウレックスがシティーラインの全株式を取得し同社を完全子会社化しました。
ハマキョウレックスは九州地域における物流ネットワークを大幅に強化し、福岡県を中心としたシティーラインのラストワンマイル配送やメディカル物流の専門性を活かした新たなサービス展開が可能になります。
九州圏内での事業拡大に向けて、ハマキョウレックスのサービス提供能力の向上と市場競争力に影響することが期待されます。
参考:株式会社シティーラインの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
SBSホールディングスによる東洋運輸倉庫株式会社のM&A
2020年12月に「SBSホールディングス」は東洋運輸倉庫株式会社(以下東洋運輸倉庫)普通株式取得によりM&Aした事例です。SBSホールディングスが東洋運輸倉庫を連結子会社化しました。
東洋運輸倉庫が持つ豊富な物流ノウハウと倉庫管理技術は、SBSホールディングスの物流オペレーションを効率化し、顧客ニーズに対する柔軟な対応が可能になりました。
両社の強みを生かしたサービスの拡充が期待され、特に倉庫管理と在庫最適化の分野で新たなビジネスチャンスの創出が見込まれます。
東部ネットワークによる株式会社東北三光のM&A
2022年3月 に「東部ネットワーク」は、全国物流ネットワークを構築している「株式会社東北三光」と株式譲渡契約を締結したM&Aの事例です。東部ネットワークが株式会社東北三光の全株式を取得し同社を完全子会社化しました。
東部ネットワークの東北地方でのビジネス拡大と顧客基盤の確固たる構築が目的です。
また、株式会社東北三光がこれまで培ってきた物流サービスのノウハウを最大限に活かすことにより、東部ネットワークのサービス範囲を拡大し、顧客への迅速な配送ニーズに対応しました。
参考:株式会社東北三光の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
セイノーホールディングスによる同社完全子会社のM&A
2023年4月「セイノーホールディングス」は、同社完全子会社の「西濃運輸」「関東西濃運輸」「濃飛西濃運輸」「東海西濃運輸」が西濃運輸を存続会社として統合したM&Aの事例です。
セイノーホールディングスは最新のIT技術を物流オペレーションに統合し、顧客に対する追跡と配送サービスの質を向上させました。
また、データ分析に基づく最適な物流ルートの選定や、配送効率の向上が実現し、コスト削減とサービス向上の両面で大きな成果を得ました。
ニッポンエクスプレスによるcargo-partner GmbHのM&A
2023年5月に「ニッポンエクスプレス」は、「cargo-partner GmbH(対象会社63社中の代表)」の株式譲渡契約を締結したM&Aの事例です。ニッポンエクスプレスがcargo-partner GmbHの全株式を取得し同社を完全子会社化しました。
ニッポンエクスプレスが中東欧地域に強固な物流事業基盤を持つ企業の買収に成功したことで、中東欧地域において配送ネットワークを大幅に拡大し、現地顧客に対してより迅速なロジスティクスサービスの提供が可能になりました。
また、中東欧地域に深い理解と豊富な経験を持つ現地スタッフの知識を活用することで、顧客満足度の向上にもつながりました。
参考:cargo-partner の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
福山通運株式会社 によるGRAND EMPORIUM LOGISTICS CO., LTD.のM&A
2023年6月に「福山通運株式会社 」はタイ王国の物流会社「GRAND EMPORIUM LOGISTICS CO., LTD.(以下GL社)」を子会社化することを目的として GL 社の発行済み株式の 47.75%を取得する株式譲渡契約を締結したM&Aの事例です。
福山通運がGL 社を買収したことで、国際物流サービスが大幅に強化され、海外での物流基盤を確立し、国際貿易の増加に伴う物流需要に効果的に応えることが可能となりました。
特に、アジアと欧米を結ぶ国際輸送ルートの充実により、顧客企業のグローバルなビジネス展開をサポートし、物流業界における競争力のさらなる強化を実現しています。
参考:GRAND EMPORIUM LOGISTICS 社(タイ王国)の株式取得に関するお知らせ
まとめ
本記事では、成長著しい倉庫業界の概要とM&Aについての、メリット・注意点・成功のためのポイント・具体的事例を詳しく解説しました。
倉庫業界は、EC市場の急成長に伴い、市場拡大が続いており、大手から中堅・中小企業に至るまで、M&A活動が活発に行われています。業界外からの新規参入によるM&Aも頻繁に見られ、業界の構造自体が変化している状況です。
M&Aは、倉庫業界における重要な成長戦略の一環であり、市場シェアの拡大、新技術の獲得、グローバルなネットワークの構築など、多岐にわたる目的で実施されています。しかし、成功には戦略的な計画と周到な準備が必要です。ぜひ今回の記事を参考に倉庫業界におけるM&Aを検討してみてください。