目次
レンタルスペースとは
「レンタルスペース(Rental Space)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
レンタル(Rental)は一定の代金と引き替えに商品を一定期間貸し出す事を言い、スペース(Space)は空間という英単語になります。レンタルスペースとは一定の代金で一定期間スペースを貸しだす事です。
よく使われているレンタルスペースは、会議室やセミナーを実施するためのルーム、撮影するためのスタジオや結婚式場、アート展示スペースやイベントホール、プライベートパーティ用の部屋やオフィススペース等の大きなスペースから小さなスペースまでの事を言います。
利用シーンの例を挙げると、ワークショップによる料理教室や芸術、ヨガなどの体操やダンススペースを提供します。
さらにはプライベートイベントでは、誕生日パーティのスペースとしても人気です。
現在はコストの面でも効率性が高いことから、多様な用途で活用され、ニーズに応じたカスタマイズが可能なサービスとして認知しております。
レンタルスペースを利用する利点
では、レンタルスペースを利用する事で何が利点なのでしょうか?
例えばオフィスや自宅は、スペースが限られているため、必要に応じてスペースを代金で拡張できるという利点があります。
使用率の低い会議室やセミナールームの維持費を、使った分だけ使った料金で使用できることは、余計なコストの削減につながります。
また、レンタルスペースは普段使わない撮影所や、ライブハウス等の特別な機材が必要になる場所に特化したスペースもあるため、それらの高品質な設備環境を使用できます。
時間的な柔軟性を持つレンタルスペースは短時間から長時間まで使用用途により使い分けができるほか、メンテナンスや清掃にも料金がかからないのも魅力的です。
利用シーンも様々で、会議室以外にもイベントスペースや、パーティ、その他利用したいシーンに応じたレンタルスペースを検索して利用する事が出来るため、大幅な管理費用の削減に繋がります。
また、各種勉強会の実施においては、コミュニティのネットワーク機会の構築にもつながる可能性があります。
レンタルスペースで考慮すべき事
レンタルスペースは自宅や自社の利用よりコストが大きくなってしまう場合もあります。
需要の高い施設、予約したいが予約できないといった状況も考慮しなければなりません。
希望日時はあるが、その日時に必ずしも利用できるとは限らず、またレンタルスペースに行く際の交通の便に一定の距離が発生してしまう場合があります。
設備の利用は用意する必要がない半面で、その設備自体を常に貸し出し続けなければならなかったり、故障させてしまった場合の賠償金の発生や、利用制限も考慮すべき点です。
さらには、機密情報の管理にも注意しなければなりません。
レンタルスペースの利用時間と料金
レンタルスペースの利用料金は使用する用途や、スペースの種類により様々ですが、1円から借りられるところもあり、その料金の柔軟性は様々あります。
一般的には時間貸しとなり、1分刻みのスタートから30分、1時間、1日の所もありその時間の範囲は様々あります。
料金も1円から1万円毎時間や、1日いくらといったそのレンタルスペースの設備状況や、使用用途によるため、明確にいくらといった基準は存在しません。
更には、個人で経営している方と、会社が経営している場合で分かれている為、その料金形態も様々な形態が存在します。
レンタルスペース業界の市場動向と市場規模
参考:レンタルスペースの運営代行サービスMETROMINUTES(2023年6月の利用推移)
レンタルスペース業界は、その時期による利用用途により売り上げの変動があります。
例えば、ハロウィンパーティが開催される10月は、月末にパーティールームの予約が上昇し、その他の月ではイベント関連が発生しない限り大きなパーティルームの予約は少ない傾向にあります。
逆に会議室は月に一度の定例会等で使用用途が発生し、継続して集客が見込める傾向にあります。
個室ブースの利用は、近年のコワーキングスペースの確保や、新たに利用形態が多様化していることにより一定以上の需要が見込めるシーンが増えています。
規模感はコワーキングスペースといった小さな個室から需要が発生するため、実際運営する際には、ターゲット層や運用形式を明確にしてあげることで一定の収益を得られる一方、競合するレンタルスペースの数が増えていることや、明確な市場の情報が正確な数値は得られていないため、少し未知数な部分がありますが、拡大傾向にあると言えます。
レンタルスペース業界が持つ課題
レンタルスペース業界は、価格競争とニーズへの対応が目まぐるしく変わる業界となっています。
その時々で最適な価格を常に模索し続けること、時期によるニーズに対応する事を実施しなければ顧客需要は伸びないことや、設備投資が充実するとほかのレンタルスペースとの差別化が取れない事で、ただスペースを貸すだけの施設になるため顧客から見放されてしまう等、一定の需要を得るための投資が必要になる業界となりつつあります。
レンタルスペースは多様な顧客ニーズに対応した管理が必要になるため、スペースの維持から新しいニーズへの更新を柔軟に行わなければ競争では生き残れないという課題があります。
更には、近年IT化が進み、レンタルスペースを借りる際の検索サイトからの顧客も増えてきている為、顧客のレビューやそのレンタルスペースを透明化する必要があります。清掃が行き届いてない場合や、スペースが小さい等のネガティブな投稿等もあるため、競争はさらに激化しています。
需要と供給バランスが重要視される業界のため、需要が高まる時期にスペース不足となる一方、需要がない時期に対してスペースの有効活用しなければ、収益が一定数見込めない等、運用方法の課題が浮き彫りになっています。
レンタルスペースの競争率
近年レンタルスペースは増加傾向にあります。
価格競争とニーズに合ったスペースの提供しなければ、ライバルとなる他のレンタルスペースからは顧客を勝ち取れない場合や、類似スペース(カフェや自宅の空いたスペース)を利用してレンタルスペースの代替え手段ができている事で、ライバルが増加している傾向があり更なる価格競争の火種になってしまう事になります。
立地に関しても重要視され、交通の便で不憫なレンタルスペースは特に需要が伸びず、都市部等の企業が多い場所や、顧客のアクセスの点で有利に働く場所を提供できなければ淘汰されてしまいます。
さらには、消防法や、建築基準法に準拠してスペース提供しなければならず、敷居も上がっていることがネックとなっております。
レンタルスペースと一言で表すことはできますが、もちろん新興市場も数多く存在する可能性を秘めています。近年ではレンタル写真館等がニュースで取り上げられておりますが、スペースの差別化による新興市場も最初こそ競争は少なくとも、需要により供給力が増すのがどの市場でも一致していることでさらなる差別化を図らなければならない傾向にあります。
スペースの種類は明確に特化型スペースと汎用スペースで分かれている為、汎用スペースは一定の需要が見込めても特化型スペースは、他とのアプローチ方法を変えるなど工夫しなければ競争を生き残れない現状です。
コロナ過からの脱却
コロナ過で、レンタルスペース業界は大打撃を受けました。
レンタルスペースの需要は一時減少しており、ロックダウンや人々の外出自粛に伴う移動制限で、イベントのキャンセルやテレワークによる会議のキャンセルが相次ぎ、スペースの利用ができない事態が多くありました。
現在はコロナにおけるパンデミックの状況が大分改善され、イベントの開催や会議スペースの確保は再度需要が高まってきており、デジタル化の促進による、オフライン以外のオンラインイベント等のハイブリッドイベント向けにサービスを提供するようになってまいりました。
衛生対策における強化は必須となりましたが、ソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用で、安心してレンタルスペースを利用できる事も需要促進の一環となっています。
レンタルスペースとホテル業界
レンタルスペースとホテル業界は、似て非なる状況となります。
ホテルは宿泊施設としての利用が主で、宿泊サービスの収入のみでしたが、スペースの活用をおこなうホテルが近年増加傾向にあります。
静かなスペースにビジネスユーザーが、テレワークの利用をメインに訪れる事も増えており、宿泊サービスの分野でほかのレンタルスペースと異なるサービスを提供できる強みを活かし、新規顧客獲得に意欲的です。
一方のレンタルスペースは宿泊施設としての提供しないスタイルが一般的です。特定の用途に特化しておりますが、宿泊という点ではホテルと差別化が図られています。
もちろん、全く存在しないわけではなく、一部のレンタルスペースでは宿泊できる設備を備えている場合もありますが、ホテル業界と別のニーズで競っているのが一般的です。
レンタルスペース業の動向と今後
レンタルスペース業界は、ただスペースを提供するわけではなく、新しい需要に対応するために日々変化しています。例えば最近ニュースでは、レンタルスペースに韓国で流行している「セルフ写真館」を提供する施設が増えているといった情報がありました。
ビジネスユーザーは、テレワークを目的としてレンタルスペースを利用するシーンも多く見られます。リモートワークが普及してから働き方が変わっている業界もあり、レンタルスペースを利用して働き方を変えているユーザーもいます。
イベント施設や会議室
レンタルスペースといえば、元々イベント施設や会議室が主体となって提供している事が主でしたが、現在もその需要は一定数見込まれます。会議室は変わらず企業に提供され、イベントの規模に応じたスペースに対しての需要も見込まれてます。
この利用シーンではまだこの先もニーズがあり続けるため、引き続き主体となってレンタルスペース業界を支える利用シーンとなるでしょう。
ハイブリッドシーン
ハイブリッドと聞くと難しい表現に見えますが、現在はオンラインを融合したオフライン特化型ではないイベントの増加もあります。例えば遠隔地からの参加はリモートにしておき、メイン会場はレンタルスペースを利用するといったシーンも近年の働き方改革により誕生しているレンタルスペースのハイブリッド利用となっています。
新たなニーズ
テクノロジーの進化でオンライン予約、非対面形式でのセルフフロント利用といった、新しいレンタルスペースの在り方が注目されています。その時々でニーズが目まぐるしく変化している状況に対応する柔軟性が求められるレンタルスペース業界は、今後も成長すると予想されます。
H2:レンタルスペース業の動向と今後 ※レンタルスペース業界動向に関するh3を3つ以上作成
レンタルスペース業界のM&Aの動向
M&A動向をみると、レンタルスペース業界におけるM&AはコワーキングスペースのM&Aで競争が激化している傾向にあります。
大企業のレンタルスペース事業は、小規模のレンタルスペース事業と積極的にM&Aしていくことで新たな顧客需要の獲得を目指すなど、M&A市場は盛り上がりを見せています。
また、都市化の進行状況や、ワークスタイルが多様化している現在、商業スペースやオフィススペース、イベントスペースや短期的な居住スペース等のニーズがあり、市場追及が重要視されます。
既存利用シーンに特化したレンタルスペースのM&A動向
従来の会議室利用や、勉強会等のイベントのレンタルスペースは、専門的な知識提供や設備提供することで成り立つシーンが増えています。
ブランドとして確立され、大手企業との連携を図るM&Aや、顧客ロイヤルティの向上を目指してM&Aするレンタルスペースも増加傾向にあります。
業界自体の要求が多くなっていく一方で、既存のレンタルスペースがリーダーシップを発揮して、母体として成り立つうえで、新たなニーズに対応するレンタルスペースとのM&Aは競争激化している傾向にあります。
新たな市場進出
日本のみならず、海外の地域への参入が注目されています。アジア圏やラテンアメリカ地域は成長見込みがあるため、M&Aを通じて市場参入する事を追求します。
テクノロジーの進化もあり、レンタルスペースと連携するテクノロジー企業が、関連サービスとM&Aするシーンも見られています。
倉庫スペースや、写真館、新たなイベント形態に特化した施設の多様なサービスに対してのM&Aも拡大傾向にあります。
サービス強化における動向
レンタルスペースは一定サービスの提供をする目的で関連企業とM&Aする需要が増えています。家具や高速インターネットの接続環境を用意するなど、設備やインフラ強化する事でレンタルスペースの付加価値をあげ、M&Aにおいて有利な材料を用意し、競争力を高めていくことや、関連サービス企業との連携においてM&Aをして競争力を向上させている企業が増えています。
レンタルスペースのM&Aをするメリット
レンタルスペースのM&Aにおけるメリットは様々あります。市場の拡大が主な利点ですが、その他にもM&Aにより既存のレンタルスペース利用ユーザー情報を獲得する事で新たな顧客や取引先の情報を入手できる事等メリットは様々です。
ここでは売却側のメリットと、買収側のメリットを解説していきます。
売却側のメリット
レンタルスペース業界の売却側のメリットは以下があります。
企業価値をあげる
経営戦略において企業価値は変動します。ある程度の企業へ売却することで、さらなる企業価値をあげ、一定の収益が確約されているレンタルスペースの買取価格の増加が見込めます。買取価格の増加はそのまま売却時の利益となります。
後継者をみつける
後継者はどの業界でも見つける負担がかかってしまいます。M&Aする事で、事業を継続する事を目的として、経営者の変化に伴い新たな後継者としての活動者を募れます。後継者になって頂けることが高齢化では難題となる現在の状況ではM&Aはとても大事な選択となります。
資金調達
売却時の利益はそのまま資金に活用できます。新しい事業への立ち上げ資金にするのもよし、マーケティング活動費として充てるのも売却時の資金次第ですが、新しい一歩へのスタートを切れます。
リスクマネージメント
レンタルスペースがリスクマネジメントの管理を徹底して行う必要がある事業のため、リスクを切り離すという点では売却側にメリットとなります。リスクマネジメントはどの事業も必ず行わなければいけない点ですが、管理費用に充てた資金はそのまま売却することで利益として計上できるわけです。
経営の方針転換
売却側は、購入側に経営方針を背負っていただく事が出来るため、新たな経営戦略を得られる可能性があります。財務の健全化や、経営の安定化は事業モデルの確立に繋がり経営環境に大きなメリットを得る事が出来ます。
買収側のメリット
レンタルスペース業界の買収側のメリットは以下があります。
事業の多角化
別業界から新たにレンタルスペース業界の参入を目的とした回収は、事業が多角化するメリットにより、リスク分散が出来ます。一方の業界の利益が得られなくなる等一定の落ち込みを見せた際にレンタルスペース事業で巻き返しを図るなど多角化は事業を安定的な収益に導くカギとなるでしょう。
運営コストの削減
運営費用のやりくりは、元々のレンタルスペースから改善を実施出来ます。新たに弱点を補うコストカットを導入することや、仕入れコストの削減を目的としたテコ入れにより更なる収益が見込める事業として成立します。IT企業と連携することでオンライン予約システムを導入する事も可能です。
新規顧客獲得
レンタルスペース事業は、新たな顧客の獲得に繋がります。例えばビジネスシーンでよく利用される会議室は、そのままビジネス提携につながる新たな営業先としても設定できる可能性もあり、提携を結ぶ等のメリット交換を実施することで安定した経営戦略を目指す事が出来ます。
競争力の上昇
多角化した事業を持つことは、自社が持つブランド力を強め、さらなる成長に繋がります。ライバル企業にない事業を得ることで新たな競争上の優位性を持つことができ、資産にもつながり競合他社にはない武器を手に入れることに繋がります。
新たな知識の獲得
買収のスキルが身につく事や、新規事業の参入におけるノウハウを得ることで、新たな知識や経験を獲得することに繋がります。得た知識は企業のスキルとして共有することでリソースの強化にもつながります。さらには、運営の効率化や、企業戦略に幅が広がります。
レンタルスペースのM&Aの注意点
レンタルスペースのM&Aを実施する際に、メリットだけに目が行きがちですが、注意すべき点も多々あります。ここではその注意点について詳しく解説します。
何を目的にM&Aをするか明確にする
どの事業でもそうですが、ただ漠然とレンタルスペース事業に参入するだけでは、成功は得られないと考えましょう。その土地や立地条件からどういったレンタルスペースを運用していくことが大事なのか事前に調査することがマストとなります。
例えば、ビジネスシーンの利用に特化した立地条件では、会議室の運用はかかせません。ライバルのレンタルスペースがどれだけ居て、供給過多に陥っていないか調査する必要があります。
同じ立地で複数のレンタルスペースがある場合は、どれだけ他と差別化を図れるか、有利な条件を提示できるかが成功のカギとなります。
実際には、別の視野に目を向けてそこでは休養スペースとしての提供を実施するなど、新たな戦略を目指すのもよいでしょう。
認可の問題がクリアかどうか
建築基準法に基づいてるかどうかはレンタルスペースの重要な部分となります。買収したレンタルスペースが建築基準法に違反していないか、またその用途において部分貸しの管理者がいるビルのスペースを利用する場合は、管理人の許可が必須となります。
勝手な事業展開してしまうと、建物の契約における契約違反が発生してしまう場合もあるため、こちらについても、買収するレンタルスペースが、問題なく運営できていることが重要な調査事項となります。
また立地によっては隣人トラブルや別テナントに対しての配慮が必要になりますので、現地調査も大事な調査内容になります。
コンプライアンス問題も重要です。その業界では特有の規制がある場合、法的な問題が降りかかってくる場合がリスクとして発生するため、特に注意が必要です。
デューデリジェンス(Due Diligence)
聞きなれないかもしれませんが、デューデリジェンスとは、契約前の買収企業が売り手の企業に対して徹底して調査する事です。
デューデリジェンスには取引する際に、潜在的にリスクが存在しているのかどうかを調査したり、取引価格は正常かどうかも踏まえて確認します。
デューデリジェンスには様々な種類があり下記のようにデューデリジェンスが存在します。
財務デューデリジェンス
企業の財務情報。経営状態を調査分析するプロセスの事を指します。このプロセスでは主にM&Aに合併、投資、ビジネス契約する際に実施されますが、買収者側の企業としての財務健全性、リスクを明確に理解する事を目的として使用されるデューデリジェンスとなります。
法務デューデリジェンス
企業の法的側面におけるリスクや何かの問題を抱えていないかを評価し、リスクを抑えるために必要となるデューデリジェンスとなります。ここで法的コンプライアンスや訴訟リスクなどは近年ではとても重要なファクターとなっておりますので、より慎重に行わなければならない要素となります。
人的デューデリジェンス
企業の買収や合併において人的リソースや組織文化、人材の適合性と能力を評価するプロセスとなります。この評価も財務、法務同様にとても大事なデューデリジェンスとなります。
人的デューデリジェンスは、適切に人材管理戦略を策定する事が必須となりますので、その専門家となるコンサルタント等が存在します。
セルサイドデューデリジェンス
M&Aにおける売却側の正当評価を受けるために行うプロセスとなり、売却企業の価値を正しく受けるために必要なデューデリジェンスとなります。このセルサイドデューデリジェンスはほかの財務、法務、商業や税務に関する現状の調査、人的な能力評価する事で、自社としてどれくらいの価値があるのかを正確に把握するために必要なプロセスです。
事業・運用デューデリジェンス
買収、合併の際に実施されるプロセスの一つで、企業の運用面に焦点を当てます。運営効率やリスク管理、成長潜在能力が詳細に評価されることで買収においてシナジー効果を円滑にもたらしたり、改善点を特定することが目的となります。
主要な要素としては、ビジネスモデル、企業運用、技術力、インフラ、人的リソース、リスクマネジメントという要素が挙げられます。
技術デューデリジェンス
技術を核とする企業に対してのデューデリジェンスですが、レンタルスペース事業においてはレンタルスペースの運営や検索システムなどの運営における技術力を評価する事を目的とする事項です。
既存の技術インフラから、今後の市場動向を踏まえてどれだけ革新的に伸びるかを評価したり、特許や、著作権などの知的財産権の状況を明確にし、競合他社との侵害リスクはないかを評価することも目的の一つとなります。
ITデューデリジェンス
買収における対象企業の情報技術、システム、運用状態の評価を目的としています。人材の能力評価にもつながります。レンタルスペース事業においては、管理するためのソフトウェアの評価や、ポリシーやガバナンス構造のレビューに役立つデューデリジェンスとなります。
ビジネスデューデリジェンス
買収する際に行うビジネス全体を包括した評価プロセスとなります。対象企業の商業的な側面、運営の実態、対象企業の市場での地位、競争環境や将来に向けてのビジネスモデルの状態を評価する大事なプロセスとなります。特に市場分析や、競争分析は、今後買収する際には、利益に直結する事項であるため慎重な評価が必要となります。
参考:船井総研 M&A レンタルスペースをM&Aする際の注意点
レンタルスペースにおけるM&Aを成功させるためのポイント
レンタルスペースにおけるM&A成功のポイントは以下の三つに分かれます。
- M&A戦略の立案
- 相場価格をよく理解しておく
- PMI(統合後プロセス)の確立
それぞれについて細かく見ていきましょう。
戦略の立案
まずは企業の成長と競争力を生み出すための戦略を建てる必要があります。M&Aをするうえで市場の理解や長期的な収益モデルの確立をイメージできるかどうかが問題です。
成長する市場かどうかの見極めも大事です。自社ブランディングによるシェアの拡大が果たしてうまくいくのか?何を目標にしてM&Aを執り行うかを明確にしておくと、戦略が建てやすくなります。
分析も大事な戦略です。一般的にはSWOT分析することが大事だと言われています。
SWOT分析とは「強み(Strength)」、「弱み(Weakness)」、「機会(Opportunity)」、「脅威(Threat)」の4つの要素で分析し、既存業務からの改善点と新規事業における将来に向けてのリスクを見つけるフレームワークの事をいいます。
自社における財務状況、技術力や市場動向、競合企業の分析がSWOT分析として挙げられる事になります。
相場価格の把握
M&Aをするうえで重要視されるのは相場価格とよばれるその市場における対象企業の適正な評価額になります。この評価額を誤ってしまうと、余計な出費に繋がってしまったり、業界の動向を見誤ってしまう事に繋がります。
業界において取引事例を比較することは必ず必要な作業となりますので、まずは関連業界におけるM&A事例を参考に、どのような動向があったか、どのように成功を収めているのか等、確認することが大事です。
DCF(ディスカウントキャッシュフロー:Discounted Cash Flow)法と呼ばれるキャッシュフロー予測する手法があり、企業価値を算出するためのキャッシュフロー予測ができます。簡単には会社の事業計画書から、その会社のキャッシュフローを導き出すために計算し、その結果に基づいて企業価値を見いだす方法です。
また、M&Aを専門にする専門アドバイザーの意見を聞くことがひとつの指標となりますので「M&A HACK」において、M&Aにおける仲介を担っているため、M&Aでお困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。
無料相談のご予約は:https://sfs-inc.jp/ma/contact
PMI(統合後プロセス)の確立
PMIはM&Aを成功に導くために必要なステップです。下記の3つのステップをもとに統合リスクを最小限に抑え明確な目標をもって取り組むことで確立させます。両社のシステム、プロセス、文化を統合することで新たなシナジーを生み出し、M&A後に価値を最大限引き出すためのプロセスとなります。
- 経営統合
- 業務統合
- 意識統合
経営統合
経営統合とは、M&A事業において両社の企業が経営をともにして機能するように合併する事を指します。企業の成長戦略として、M&A事業の買収企業が主な経営母体となるのが主流ですが、その経営統合において、文化の違いを共通認識にすることや、従業員に対する待遇の調整、効率化した運用形態を模索するためのプロセス統合となります。
業務統合
業務統合とは、効率化と生産性向上を目的として、業務プロセスや統合合併によるシステムの統合を指します。業務統合により更なる効率化を目指し、コストの最適化や、顧客満足度の向上、品質の向上や意思決定の流れを迅速化する事が目的となります。
業務統合は従業員のトレーニングが必要となりますので、まずは異なる企業間の文化のすり合わせと新たなプロセスの改善と標準化する事でコミュニケーションの円滑化を図るとともに、問題点の改善に努めます。
業務統合は複雑になってしまう傾向がありますが、時間をかけて適切に管理すれば、組織の効率化、市場の成功を大幅に向上させることが可能になります。
意識統合
PMIにおける意識統合は異なる企業文化で意識を統一させるために必要な過程を指します。企業文化を評価し現状を理解しあうところからスタートして、企業間の差異を特定することで衝突を防ぎます。
共通のゴールに向かうために意識改革する必要があり、中長期的に組織の目標を明確にして全従業員で共有しあいます。コミュニケーションについても強化が必要であり、従業員の不満点、不安点、改善点の洗い出しする事で更なるコミュニケーションの円滑化を図ります。
組織の一貫性を育てることが合併、買収の成功を決めうる大事な作業となります。
レンタルスペース業のM&Aにおける成功事例
レンタルスペース業界におけるM&Aの成功事例を紹介します。これからレンタルスペース業界へのM&Aの検討している人は、ぜひ参考にしてください。
三菱地所による日本リージャスホールディングスのM&A
2022年12月に三菱地所株式会社が、株式会社ティーケーピー傘下の日本リージャスホールディングス株式会社を買収した事例を紹介します。
三菱地所株式会社は、人、モノ、情報、時間を共有する組織のハブ拠点として「センターオフィス」とサービスオフィス「xLINK」、個室型ワークブース「テレキューブ」、リゾート地へのわーケーション施設「WORK × ation Site」などのレンタルスペース事業を手掛ける会社となります。
一方の日本リージャスホールディングス株式会社は、120カ国超、1100都市超、3400拠点超、ユーザー800万人越えのネットワークを持つ世界最大のワークスペースプロバイダーのIWG plc(本社:スイス)からプロダクト提供を受けて、日本で「Regus」「SPACES」等のブランドを国内約172施設で展開するフレキシブルワークスペース事業領域における国内企業です。
今回のM&Aの目的は、IWGの日本国内の独占的パートナーとしての権利・運営開発権を取得してIWGのブランドポートフォリオやグローバルネットワーク、海外セールスマーケティング、インフラやバックオフィスのサポートを活用してワークスペースの拡大を目指すためとしています。今後のグローバルな展開を見据えてのM&Aとなるため、顧客を日本から世界に向けたという明確な目的がある買収となります。
株式会社スペースマーケットによる株式会社スペースモールのM&A
2021年6月に株式会社スペースモールがレンタルスペースの仲介プラットフォーム「スペースマーケット」を運営する「株式会社スペースマーケット」へ株式譲渡をしたことによるM&Aの事例を紹介します。
スペースマーケット社はあらゆるスペースの貸し借りするためのプラットフォーム「スペースマーケット」と呼ばれるシステムを運営する会社で、掲載スペースが1万5000件を突破する規模の遊休スペースの活用を促進するプラットフォームの運営している企業です。
一方のスペースモール社は、遊休資産価値を最大限引き出すことを目的に、空き家、空きテナント等の遊休不動産を対象にしたレンタルスペースの設計企画、運営事業や運営代行事業する企業で、実績としてはこれまでに120件のスペースを運営する為のノウハウの蓄積がある企業です。
今回のM&Aの目的は、「スペースシェアをあたりまえに」という一致したミッションに向けて、企画開発、運営、清掃、トラブル対応、備品補充、レビューマネジメントをすべてスペースモール社が請け負い「スペースマーケット」プラットフォームと連携してスペースの運営全般に規模を拡大したM&Aとなります。
参考:スペースマーケット社への株式譲渡のお知らせ
参考:遊休不動産の運営代行を手掛ける、株式会社スペースモールのグループ参画に関するお知らせ
エリアリンク株式会社による株式会社LIFULL SPACEのM&A
2023年9月にエリアリンク株式会社が株式会社LIFULL SPACEの株式取得によるM&Aの事例を紹介します。
エリアリンク株式会社はトランクルーム「ハローストレージ」を2108物件、99970室展開するトランクルーム提供企業となり、「ハローストレージ」の新規出店の加速を実施しています。
一方の株式会社LIFULL SPACEはトランクルーム検索サイト「LIFULL トランクルーム」を運営している企業です。
今回のM&Aの目的は、検索サイト「LIFULL トランクルーム」のとIT企業としてのLIFULL SPACEのシステム開発力、技術力を活用するITデジタル経営への経営基盤強化、「ハローストレージ」に関するシステムをさらに効率化する事を目的にM&Aが実施されました。2024年の12月期の業績予想についてはまだ明らかになっておりませんが、検索サイトと提供サイトの連携は大きなレンタルスペース「ハローストレージ」の追い風となるM&Aと予想できます。
参考:株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
参考:連結子会社の異動(株式譲渡)及び2024年9月期における関係会社株式売却益の発生に関するお知らせ
ビジョンによる株式会社アドバルのM&A
2021年10月に株式会社ビジョンが株式会社あどばるを株式交付子会社とするM&Aの事例を紹介します。
株式会社ビジョンはインターネット環境を構築するWifi事業(海外用のWi-Fiルーターレンタルサービス)の企業で、通信インフラも提供するITインフラに特化した企業となり、レンタルスペースの企業ではありません。そこに株式会社あどばるのスペースマネジメント事業として、月額定額制の会議室「Office Ticket(オフィスチケット)」を運営するフレキシブルオフィス事業を展開しているレンタルスペース事業を手掛ける企業を取り込むM&Aを実施したというわけです。
株式会社ビジョンの情報通信サービス事業と、株式会社あどばるのスペースマネジメント事業の顧客基盤を拡大させ、情報通信サービスをレンタルスペースに加える戦略であるということが予想できるM&Aとなります。異なる企業のシナジー効果が果たしてどういった業績につながるか、今後も目が離せません。
参考:株式会社あどばるの株式交付(簡易株式交付)による子会社化に関するお知らせ
参考:株式会社ビジョンが株式会社あどばるを子会社化
三協フロンテアによるフロンテア流通のM&A
2021年3月に三協フロンテア株式会社が子会社のフロンテア流通株式会社との会社分割における吸収分割のM&Aに関する事例を紹介します。
三協フロンテアはフロンテア流通のユニットハウスレンタルに関する事業において承継させるための会社分割実施に伴う一部M&Aを実施し、三協フロンテアがユニットハウスレンタル事業のサービス、生産、整備、営業の集約、一元化によって高いサービス力を提供できるような目的を持ち、原価低減を進めることで事業全体の効率化と競争力の向上を担うといった目的があるようです。
こちらは、三協フロンテアがユニットハウス等を製造、販売、レンタル、またトランクルームのレンタル、立体駐車装置レンタル事業に、フロンテア流通のユニットハウス等の出荷整備、配送、建方、解体工事を合わせてサービスを提供していくように今後の展開を見据えているようです。
サービスの一元化は、効率性、コスト削減、および顧客サービスの向上を目指す際に非常に有効です。またリスク管理しやすくなることや、一連の流れを一定の料金で統一できるメリットもあるM&Aとなります。
東急コミュニティーによる株式会社TCフォーラムおよび株式会社INFIELDのM&A
東急コミュニティーが2000年にまず貸会議室事業を展開する株式会社TCフォーラムとのM&Aを実施後、さらに2015年には株式会社インフィールドとのM&Aを実施し、レンタルスペース事業を拡大していく事例について紹介していきます。
東急コミュニティは、マンション事業やビル事業を主な事業として展開する企業ですが、そこに今回のM&AでまずTCフォーラムの貸し会議室事業を得る事が出来てます。さらには株式会社インフィールドのスペース運営コンサルティングとマネジメント事業を吸収して、レンタルスペースにおけるモデルケースとして、マネジメントからスペース運営まで実施するケースを確立したといってもいいと思います。IRこそ古い為かございませんが沿革から現在までの経営状況を踏まえると成功したM&Aといえるのではないでしょうか。
TKPによるTKPメディカリンクの吸収合併化
2023年10月に株式会社TKPがグループ会社となる株式会社TKPメディカリンクを吸収してM&Aを実施した事例を紹介します。
株式会社TKPはフレキシブルオフィス事業、ホテル宿泊研修事業、イベントのプロデュース事業、料飲・バンケット事業、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を手掛ける企業となり、一方の株式会社TKPメディカリンクは医療分野に特化した会員管理システム運営や学会・研究会の事務局受託、学会専用レンタルオフィス提供、セミナー運営等を実施している企業です。
今回のM&Aの目的は、経営資源の集約、経営効率化を目的としているという点になります。レンタルオフィスを手掛けるTKPメディカリンクを吸収し、その経営資源の集約と効率化を図るということは、レンタルオフィス事業も収益が見込めるという事がうかがえるため、この吸収合併を選択したとみて間違いないでしょう。
まとめ
今回は、レンタルスペースとは何か、レンタルスペースの市場動向と市場規模からM&Aの動向、メリット、デメリット、成功の為のポイントについて解説いたしました。
レンタルスペース業界はコロナ過からの脱却により、働き方がテレワークに移行している現在、市場規模としては拡大傾向にあります。M&Aによるレンタルスペース事業は今後も競争が激化することが予想されるため、市場動向は今後も目が離せません。
M&Aをすることで、企業として成長が見込めますが、時期や買収規模、財務との相談、いろいろと検討すべきであり、戦略として大事になります。今回の記事により色々な情報収集をもとにレンタルスペース業界のM&Aを是非検討してみてください。