「葬儀会社のM&Aにおける動向は?」
「葬儀会社のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「葬儀会社 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、葬儀会社のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
葬儀会社におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、葬儀会社のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
葬儀会社とは
葬儀会社とは、「人が亡くなった場合に執り行う葬儀全般をサポートしてくれる業者」のことです。近年では「セレモニースタッフ」と称されることもあります。
葬儀会社は、別名「葬儀屋(葬儀社」とも呼ばれていますが、元々日本には葬儀屋というものは存在せず、昔は町内会や自治会で葬儀を執り行うのが一般的でした。しかし、時代が進むにつれ、地域の輪が希薄になったことにより、町内会や自治会での葬儀を行う文化は無くなっていきました。
葬儀文化の変化により生まれた葬儀屋は、現代の葬儀において欠かせない存在です。親族が亡くなった場合には、ほとんどの人が葬儀屋に葬儀のサポートを依頼することが当たり前の風習となっているため、今後も需要が薄れることはないでしょう。
葬儀会社の種類・ビジネスモデル
葬儀会社の種類とビジネスモデルについて解説します。それぞれのビジネスモデルによって、サービスの提供方法やニーズ、収益方法も異なるので、葬儀会社の運営においては個々のビジネスモデルの特徴を理解しておくことが大切です。
葬儀会社の種類とビジネスモデルには、主に以下のようなものがあります。
- 葬儀専門業者
- 互助会
- 協同組合
- 葬儀仲介サービス業
それぞれ解説していきます。
葬儀専門業者
一般的に「葬儀会社」や「葬儀屋(葬儀社)」と呼ばれているのが、葬儀専門業者です。その名の通り、葬儀サービスの提供を専門的に行っている業者になります。
葬儀専門業者とその他葬儀関連業者との主な違いは、「葬儀を専門に行っているかどうか」です。当然ながら、葬儀以外にも結婚式やその他事業を行っている業者は、葬儀専門業者には分類されません。
また葬儀専門業者は、仕出し業者・ギフト会社・霊柩車手配業者など、葬儀に関連する他業者と連携し、すべてを統一のパッケージとして提供しているケースがほとんどです。葬儀に関わることは、葬儀専門業者に依頼すれば、全て一括で手配してくれるため、需要の高いビジネスモデルとなっています。
互助会
互助会(ごじょかい)とは、正式名称を「冠婚葬祭互助会」と言い、会員が将来の結婚式やお葬式といった冠婚葬祭に備えて共同で毎月掛け金を出し合って積み立てていく相互扶助の仕組みです。
互助会は、経済産業大臣の認可事業であるため、認可を受けた事業者のみが互助会のサービスを提供できるのが特徴です。また互助会は提供する業者によって、受けられるサービスや掛け率なども異なります。
互助会の持つ最大のメリットは、中長期的に冠婚葬祭にかかる費用をあらかじめ積み立てることで、急な高額出費を防げることでしょう。近年は特に冠婚葬祭における費用を抑える流れにあるため、互助会のサービスも再度注目し始められています。
協同組合
生協やJAといった協同組合が、組合員に対し葬祭事業を行うビジネスモデルです。協同組合による葬祭サービスを受けられるのは基本的に会員のみですが、事前相談や出資金を支払うなどの条件を満たしていれば、非会員でも協同組合の葬祭サービスを受けられることもあります。
協同組合の葬祭サービスは、葬儀専門業者への依頼よりも費用を抑えられるのがメリットです。組合によっては、あらかじめ積み立て式で費用を貯蓄することができるサービスも提供してるいるので、高額出費を抑えることもできます。
また協同組合は全国の式場と連携していることも多く、急な葬儀や地方からの依頼であっても、設備を抑えられる可能性が高いです。また設備の候補数も多いため、予算に合った式場を選択することができます。
葬儀仲介サービス業
葬儀仲介サービス業とは、提携葬儀者・葬儀屋を紹介するサービスを行っている業者のことです。あくまで仲介することが役目であるため、自社で葬儀は実施していません。
不動産仲介業など、その他業界の仲介業者と同じく、利用料は取らず成約のタイミングで紹介先の葬儀会社やその他関連会社から仲介手数料を徴収するシステムがほとんどです。そのため、利用者自身は完全無料で葬儀仲介サービス業者を利用することが出来ます。
葬儀仲介サービス業者は、自社のブランド力が売上に直結するビジネスモデルであるため、広告宣伝費や営業費などの経費が多く発生しやすいのが特徴です。利用者からの認知度向上のための施策はもちろんのこと、提携する葬儀社とのパイプ作りにも必要になります。
葬儀会社に必要な業許可・申請・資格
葬儀会社に必要な業許可・申請・資格について解説します。M&Aにおいても業許可や資格は重要な関連要素ですので、ぜひ参考にしてください。
葬儀会社に必要な業許可
葬儀会社の運営において、必要となる業許可は存在しません。そのため、資本金を用意し、開業届を提出すれば、誰でも葬儀会社を設立・運営することが可能です。
しかし葬儀会社が人々の生活で果たす役割は大きく、実際に大きなトラブルに発展するケースも珍しくありません。そのため「全日本葬祭業協同組合連合会」は以前から、厚労省などに対し、葬儀会社の届け出制を打診しており、現在も届け出制導入が進められています。
また葬儀会社の設立・運営に必要な業許可はありませんが、霊柩車を導入する場合には「貨物自動車運送事業法」で指定された基準を満たしておくことが必須です。葬儀会社が霊柩車の手配・使用を自社で実施するのであれば、貨物自動車運送事業法の確認が必須事項となります。
葬儀会社に必要な申請
葬儀会社の設立・運営において必要な業許可は存在しません。そのため、他の業種と同じく「開業届け」を提出することで、設立・運営を開始できます。開業届の分類は、主に以下の通りです。
- 個人事業主としての開業:個人事業の開業・廃業等届出書
- 法人としての開業:法人設立届出書
上記のいずれに該当するかで、届け出る書類も異なるので、注意が必要です。書類については税務署・市区町村役場で貰うか、国税庁のホームページでダウンロードすることができます。
もちろんM&Aで買収先企業から事業をそのまま承継すれば、一から開業届を提示する必要はありません。必要な手続きを踏むことで、比較的スムーズに葬儀事業をスタートさせることができます。
葬儀会社に必要な資格
葬儀会社に必要な業許可はありませんが、葬儀会社で働く従業員に取得が推奨される資格は存在します。葬儀会社において取得が推奨される資格は、以下の通りです。
- 葬祭ディレクター
葬祭ディレクター技能審査協会が実施している「葬祭ディレクター技能審査」に合格すると認定される資格です。葬祭ディレクター技能審査は、厚生労働省が認定している試験でもあります。本資格を所有することで、葬祭業界で働く上で知識や技術が一定レベル以上あると認められるため、葬儀屋などで重宝されます。 - 仏事コーディネーター
仏事コーディネーターとは、仏事コーディネーター資格審査協会が実施している民間の資格です。仏壇や仏具・法事といった仏教に関わる知識についてを認定する資格であり、取得することで、仏事のプロとして評価を受け、葬儀会社はもちろん、仏壇仏具店などで大いに活躍することが可能です。 - 就活カウンセラー
終活カウンセラー協会が実施する民間資格です。葬儀を含む終活を行う方に対しアドバイスできることを証明する資格になります。終活を行う上での悩み・疑問などをヒアリングし、それぞれの問題を解決するためにはどのような専門家に相談をすれば良いのかを的確にアドバイスします。 - お墓ディレクター
日本石材産業協会が実施している資格制度です。葬儀後に購入される「お墓」にまつわる知識や教養を認定する資格になります。お墓の種類や形状などのアドバイス、お墓に使用する石材や加工法などの提案、墓地や埋葬・改装に関する法律上の手続きといったものから、お墓の歴史や文化に至るまで、お墓にまつわる広い知識や教養を学ぶことができます。
上記の資格はどれも取得が必須な訳ではありません。しかし資格を取得しておくことで、葬儀会社における業務において大いに役立てることが出来るでしょう。M&Aの買収においても承継される人材に資格所有者がいるかは、重要なポイントです。
葬儀会社の市場動向
葬儀会社の市場動向について解説します。これから葬儀会社のM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
市場は拡大傾向にある
上記は、矢野経済研究所が行った葬祭ビジネスにおける市場規模推移と予測です。2020年に一時売上高は落ち込んだものの、2021年以降は右肩上がりに市場が推移しています。
2021年以降に売上が向上した主な理由は、コロナ禍による死亡者の増加です。一方で2024年以降はコロナの収縮に伴い、再び市場は緩やかに下降傾向に出るのではないかと予測されています。
しかし高齢者が人口の多くを占める日本では、必然的に高齢者の増加に伴い、死亡者も増加していく予想です。そのため、件数ベースで考えれば、少子高齢化が加速する程に葬儀会社の市場も拡大していくことでしょう。
葬儀費用の縮小化
高齢化が進み、死亡者数は増えていく一方で、一件あたりに掛けられる葬儀費用は減少傾向にあるのが現状です。「第5回お葬式に関する全国調査」(2022年・鎌倉新書)によれば、葬儀にかかる費用の総額は約110.7万円となっており、この金額は過去最安となります。
葬儀費用の縮小化が起こった主な要因は、コロナ禍による「家族葬」の普及です。従来のような中~大ホールを貸切る葬儀は減少し、小規模・低予算で開催される家族葬の数が増加傾向にあります。
1件あたりに掛けられる葬儀費用が減少したことにより、葬儀会社同士の価格競争が激化しました。葬儀会社は、より小規模・低予算で実施できるパッケージを提供するため、戦略の見直しや提携業者との関係強化を図っています。
多様なニーズの発生と対応
葬儀会社に求められるニーズは、一昔前より大きく変化しています。これは「死」に対する人々の考え方や捉え方が変化していることを意味する要素です。
葬儀に関連するニーズの変化の代表的な例として、「就活」の取り組みが挙げられます。就活とは、人生の終わりに向けた活動のことですが、就活を実施することによって、葬儀に関しても建設的な捉え方をする人が増えてきているのが現状です。
大手から中小までの葬儀会社は、加速する就活のニーズに応えるため、営業方針や広告施策を変化させています。就活のための相談窓口や専門アドバイザーを設置する葬儀会社も多いです。変化するニーズに対し、確実に応えていくための企業姿勢が求められています。
葬儀会社のM&A動向
葬儀会社におけるM&Aの動向について解説します。これから葬儀会社のM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
競争率激化によりM&Aが増加
「低価格パッケージの提供」「ニーズの多様化」など、葬儀会社を取り巻く市場の競争率は年々激化の一途を辿っている状況です。市場競争率の激化は、結果的に葬儀会社のM&Aを増加させることに繋がっています。
葬儀会社のM&Aでは、競合他社との差別化戦略実行のための事例が多いのが特徴です。同業者同士はもちろんのこと、異業種との合併により、市場競争力を高める狙いがあります。
また葬儀業界には中小規模の事業者も多いため、中小企業同士または大手企業と中小企業間のM&A事例も多いです。いずれにせよM&Aによる合併や譲渡により、今までになかったノウハウや戦略を自社に取り入れ、市場競争力を高めることが出来ます。
異業種による新規参入
昨今では異業種事業者が葬儀業界に参入するための手段として、M&Aを活用するケースも多いです。葬儀業界におけるM&Aの事例では、以下のような業界からの参入例があります。
- ホテル業界
- 鉄道業界
- スーパー・コンビニ業界(小売業界)
- アミューズメント・レジャー業界
- ブライダル業界
以前からブライダル関連会社と葬儀会社のM&Aは多い傾向にありましたが、最近ではスーパー・コンビニなどの会社も葬儀会社とのM&Aを実行しているのが特徴です。
例えば、小売業界大手である「イオン」やコンビニ業界大手の「ファミリーマート」なども葬儀業界にM&Aによって参入しました。葬儀業界では、他業界からの参入が多いことが特徴です。
後継者不足解消のためのM&A
特に中小規模の葬儀会社で多発しているのが、後継者不足という問題です。実際に後継者不在による事業継続が難しく、別の葬儀会社にM&Aを依頼するケースも増えてきています。
経営者の周りに後継者候補がいない場合でも、M&Aによる事業承継であれば買い手企業が後継者(新たな経営者)となるため、自社の存続が可能だからです。M&Aをすることで廃業を免れることが出来るため、既存従業員の雇用継続をすることもできます。
また後継者不在によるM&Aにて事業規模が拡大した葬儀会社も多く存在します。特に葬儀会社では、M&A後に買い手が持つリソースを葬儀会社の戦略として取り入れ、売上が伸びたケースも多いです。
葬儀会社がM&Aをするメリット
葬儀会社がM&Aをするメリットを売却・買収側の双方から解説します。葬儀会社のM&Aにおける売却・買収のメリットは、以下の通りです。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
|
|
それぞれ詳しく解説していきます。
葬儀会社でM&Aの売却を行うことのメリット
葬儀会社でM&Aによる売却を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 後継者不足の解消
- 従業員の雇用継続
- 資金調達・オーナーのEXIT
- 事業の選択と集中
- 借入における個人保証の解除
それぞれ詳しく解説していきます。
後継者不足の解消
特に中小規模の葬儀会社における問題として、後継者不足による廃業が挙げられます。後継者不足に悩む葬儀会社が、M&Aの売却を進めることで後継者不足の解消に繋げることができます。
実際に後継者不足解消のため、中小規模の事業者が大手企業に買収されることで、後継者問題の解消に繋がるケースは多いです。M&Aでは、会社を譲渡することで譲受企業から経営陣を迎え、これまで通り会社を存続させる事ができます。
また大手企業の経営者クラスに位置する優秀な人物が経営者となるため、売却側の事業規模がこれまでより拡大される場合が多いです。後継者不足に悩んでいる企業にとって、M&Aを行うことは廃業を避けるための大きな手段のひとつです。
従業員の雇用継続
売却側の企業が廃業目前であった場合には、M&Aを実行することで、既存従業員の雇用を継続して守ることができます。実際にM&Aを行った場合、ほとんどのケースで譲受企業によって従業員の雇用が継続されます。
労働条件においても引き継がれるケースがほとんどなので、廃業に比べると既存従業員が被る影響を大きく抑えることに繋がるでしょう。給与待遇や労働条件が同じであれば、M&A後の離職率も低下させることができます。
また待遇面においては、M&A後に給与受験・労働時間・年間休日・福利厚生などの改善が行われるケースも多いです。M&A以前よりも好条件で雇用されるケースもあるので、既存従業員にとっては大きなメリットとなり得ます。
資金調達・オーナーのEXIT
M&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。
M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。
- 残っている借入金の返済に充てる
- オーナー自身の引退後の生活資金とする
- 新規事業における資金源とする
一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。
事業の選択と集中
景気悪化を辿る日本では、会社存続のために複数の事業を多角展開する企業も珍しくありません。しかし事業の多角化は一歩間違えれば、赤字を生み出し、廃業の原因とさえなり得ます。
M&Aのスキームの一つである「事業譲渡」を用いることで、不要となった事業やその関連資産だけを選別して売却することが可能です。実際に事業譲渡により、特定の事業のみを他者委に売却する企業は多くあります。
M&Aの事業譲渡によって事業を売却することで、事業の選択と集中が出来れば、経営状態を好転させられるかもしれません。得意分野に資金や人員を集中できるため、成功率も高まるはずです。
借入における個人保証の解除
借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。葬儀会社に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。
特に中小規模の葬儀会社の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。
M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。
葬儀会社でM&Aの買収を行うことのメリット
葬儀会社でM&Aによる買収を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 新規参入における優位性獲得
- 優秀で経験豊富な人材の確保
- 事業拡大のチャンス
それぞれ詳しく解説していきます。
新規参入における優位性獲得
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに葬儀業界への早期参入が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
優秀で経験豊富な人材の確保
少子高齢化が問題となっている現代では、優秀な人材の確保はどの業界においても必須の課題です。優秀な人材を確保することは、そのまま企業の行く末に作用します。
M&Aを行うことによって、売却側企業に所属する従業員をそのまま雇用すれば、優秀な人材をそのまま自社に引き入れることができます。もちろん業界におけるノウハウも既に所有しているため、研修を行う手間も省くことが可能です。
ただし売却側企業に所属する従業員全員が優秀であることの保証はないことに加え、M&A後の企業文化の変化に付いてこられず、離職する従業員が発生する可能性もあります。M&Aによって従業員を引き継ぐ場合には、非常に繊細な注意が必要です。
事業拡大のチャンス
M&Aにおいて買収側が得られる大きなメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。M&Aによって買収側の企業は規模やシェアの拡大を狙うことができます。
葬儀会社のM&Aにおいては、売手となる企業が持つ設備や建物のような有形資産に加え、顧客・取引先情報などの無形資産を手に入れることも可能です。特に葬儀会社においては、「取引先」「顧客情報」などの無形資産は実績に直結する要素であるため、M&Aによる早期事業拡大も視野に入れることができます。
また葬儀会社においては、大手企業の市場シェア率が高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小同士のM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を付けることにも繋がります。
葬儀会社のM&Aにおける成功事例
葬儀会社のM&Aにおける成功事例を紹介します。これから葬儀会社のM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
こころネットと喜月堂ホールディングスによるM&A
2023年7月に、こころネットが喜月堂ホールディングの全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。取得金額は一般公開されていません。
譲り受け企業である「こころネット」は、葬祭・石材・婚礼・生花・互助会など葬儀関連全般のビジネスを展開する企業です。一方の「喜月堂ホールディング」は、山梨県韮崎市を拠点として、葬祭会館の運営・葬儀に関連する料理提供・仏壇仏具の販売などを手掛けている企業になります。
本件M&Aは、葬儀関連企業同士の事例となっており、「こころネット」の県外進出による事業拡大が主な狙いです。また営業エリア拡大だけでなく、喜月堂ホールディングスが持つ多角的な葬祭関連事業のリソースを取得することも大きな目的のひとつでしょう。
きずなホールディングスと備前屋によるM&A
2021年1月、きずなホールディングスは備前屋の全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。取得金額は2億8,000万円となっています。
譲り受け企業である「きずなホールディングス」は、全国7都道府県にてグループ90店舗体制で葬儀葬祭全般における事業を手掛ける企業です。一方の「備前屋」は、岡山県で家族葬・一般葬を手掛けている企業になります。
本件M&Aでは、きずなホールディングスが備前屋を完全子会社化することにより、初の中国エリア進出を果たすことが狙いです。同業者同士の合併により、シナジー効果を得ることに成功しています。
ティアとNSSK-VV3、NSSK-TTによるM&A
2023年10月にティアは、NSSK-VV3、NSSK-TTの全株式を取得し、2社をティアの完全子会社としたM&Aの事例です。取得金額は73億400万円となっています。
譲り受け企業である「ティア」は、葬儀施行全般や各種法要の請負、中部・関東・関西に直営・FCで葬儀会館を運営等を行っている企業です。一方の「NSSK-VV3」「NSSK-TT」である八光殿と東海典礼は地域密着型の企業で、大阪府八尾エリアと愛知県東三河エリアにそれぞれ葬祭会館を運営している企業になります。
本件M&Aでは、NSSK-VV3とNSSK-TTが加わることで、ティアグループにおける質量両面に亘る事業基盤の強化に加え、各エリアにおける認知度向上および事業規模拡大が狙いです。
株式会社NSSK-VV3及び株式会社NSSK-TTの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
平安レイサービスとさがみライフサービス、シンエイ・クリエート・サービスによるM&A
2019年11月に平安レイサービスが、さがみライフサービスとシンエイ・クリエート・サービスの全株式全を取得し、2社を完全子会社化したM&Aの事例です。取得金額は一般公開されていません。
譲り受け企業である「平安レイサービス」は、神奈川県平塚市を拠点に冠婚葬祭業・介護・互助会・物流事業などを手掛ける企業です。一方の「ライフ・サービス」は葬祭業を、「シンエイ・クリエート・サービス」はビジネスホテルの経営をそれぞれ手掛けています。
本件M&Aの主な目的は、平安レイサービスによる新規営業エリア拡大を狙いとしたものです。神奈川県小田原エリアにおける営業力拡大を目指し、さらなる経営基盤強化を目的としています。
さがみライフサービス株式会社及び株式会社シンエイ・クリエート・サービスの
株式取得(子会社化)に関する基本合意書締結のお知らせ
こころネットと北関東互助センターのM&A
2018年9月に、こころネットが北関東互助センターの全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。M&Aによる取得金額は、一般公開されていません。
譲り受け企業である「こころネット」は、福岡県福島市に拠点を置き、葬祭・婚礼・互助会・石材関連事業などを手掛ける企業です。一方の「北関東互助センター」は、栃木県宇都宮市を拠点に葬祭・互助会事業を手掛ける企業になります。
本件M&Aでは、こころネットが北関東互助センターを買収することにより、営業エリアを拡大することが狙いです。また同業者同士のM&Aであることから、双方が持つノウハウを活かし、シナジー効果をもたらすことに期待していると考えられます。
株式会社北関東互助センターの株式取得(子会社化)に関する株式譲渡契約書締結のお知らせ
木下とアイセレモニーによるM&A
2019年9月に、木下はアイ・ケイ・ケイより同社の連結子会社である「アイセレモニー」の株式95%を取得し、自社の子会社としました。本件M&Aによる取得金額は3億7,700万円となっています。
譲り受け企業である「木下」は、福岡県久留米市に拠点を置き、冠婚葬祭の旅行業務・文化事業などを手掛ける企業です。一方の「アイセレモニー」は、佐賀県伊万里市にて葬儀事業を展開している企業になります。
本件は、葬儀関連業者同士のM&Aとなっており、両者の経営資源を有効に活用することが狙いです。ノウハウ・経営資源などを双方が活用し、さらなる経営基盤強化を目指しています。
サン・ライフとペットセレモニーによるM&A
2017年9月に、サン・ライフが自社連結子会社である「ペットセレモニーウェイビー」を通じて、ペットセレモニーWAVYが運営するペット葬事業を譲り受けたM&Aの事例です。取得金額は公表されていません。
譲り受け企業である「サン・ライフ」は、葬儀・ブライダル・式典など冠婚葬祭に関連する事業を中心に展開する企業です。一方のペットセレモニーWAVYは、ペットの葬儀を専門に手掛ける企業になります。
本件M&Aでは、冠婚葬祭全般を手掛けるサン・ライフが、近年需要の高まるペット葬儀事業に新規参入することが目的です。多様化する顧客ニーズに応えるための施策の一環となっています。
IBJとDiverseによるM&A
2022年4月、IBJはDiverseの株式を譲渡することを決定したM&Aの事例です。このM&Aにて議決権所有割合は19.95%となり、Diverseは持分法も含めIBJの連結対象から除外されました。
譲り受け企業である「IBJ」は、結婚相談所などの婚活サービスを提供している企業です。一方の「Diverse」は、友人・恋人探しのマッチングアプリを中心にサービスを提供している企業になります。
本件M&Aは、IBJがDiverseの株式を譲渡することにより、経営基盤の強化を図ることが主な狙いです。婚活事業において、より結婚を意識した事業に経営資源を集中することが目的とされています。
ハラダ製茶とすどうによるM&A
2020年10月に、ハラダ製茶がすどうを第三者承継による株式譲渡で買収したM&Aの事例です。本取引における取得金額は一般公開されていません。
譲り受け企業である「ハラダ製茶」は、静岡県島田市に拠点を置く大手製茶メーカーでありながら、葬儀サービスも手掛ける企業です。一方の「すどう」は、栃木県さくら市に本拠を構える葬儀会社になります。
本件M&Aの主な目的は、香典返し用の茶製品と葬儀事業のシナジー効果の創出することです。製茶メーカーと葬儀会社という異業種同士のM&Aであり、シナジー効果による市場競争力を高めることが目的となります。
ライフアンドデザイン・グループとセレサによるM&A
2019年4月に、ライフアンドデザイン・グループがセレサを吸収分割のスキームにより買収したM&Aの事例です。取得金額は一般公開されていません。
譲り受け企業である「ライフアンドデザイン・グループ」は、情報提供サービス業・冠婚情報の提供、仲介及び斡旋業・職業紹介事業などを手掛ける企業です。一方の「セレサ」は、葬祭セレモニー企画・運営事業・介護関連事業を運営する企業になります。
本件M&Aは、共に葬祭事業を手掛ける企業同士の売買となっており、ノウハウや技術の共有と販売力・サービス提供力強化が主な目的です。双方のノウハウを共有することにより、葬祭業における経営基盤の強化を図ったものと予測されます。
葬儀会社のM&Aにおける注意点
葬儀会社のM&Aにおける注意点を解説します。葬儀会社のM&Aにおいて、注意すべき事項は以下の通りです。
- M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
- 避止義務に関して
- 既存従業員への離職対策
それぞれ解説していきます。
M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
M&Aでは、買い手と売り手の情報格差(買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富)があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件(買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう)という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
避止義務に関して
M&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。
M&Aにおける競業避止義務とは、M&Aの成約後に譲渡企業に課される義務です。譲渡した事業に対して、譲渡企業が競合するような事業を再度行い、譲受企業に不利益を与えることを避けることが目的となります。
会社法の規定により、事業譲渡を実施した会社は、競業避止義務を負うことになるので注意が必要です。ただし、買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることはできます。将来、葬儀会社事業を再度、手掛ける可能性があれば、買収側と交渉しましょう。
既存従業員への離職対策
買収先の既存従業員による離職対策は、M&Aを成功させるために必要なポイントのひとつです。既存従業員の離職を防ぎ、優秀な人材を雇用し続けることが重要になります。
経営者視点から見ればM&Aは立派な経営戦略であり、大きなシナジー効果を生むものです。しかし従業員にとっては、今後の働き方や会社との雇用関係に大きな変化をもたらす為、M&Aによって雇用条件や働き方が悪化すると離職を招きます。
M&Aによる離職を防ぐためには、従業員の働き方や雇用関係の変化に対し、敏感に配慮することが重要です。既存従業員が不安となる要素はあらかじめ取り除いておくことが、M&Aによる離職を防ぐ手段として有効になります。
葬儀会社のM&Aを成功させるためのポイント
葬儀会社のM&Aを成功させるためのポイントについて解説します。葬儀会社のM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- PMI(統合後プロセス)の確立
- 相場価格への理解
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。
M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。M&A専門業者に委託することで、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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PMI(統合後プロセス)の確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新経営体制の構築
- 経営ビジョン実現のための計画策定
- 両社協業のための体制構築・業務オペレーション
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。
相場価格への理解
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
葬儀会社のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。
また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
葬儀会社におけるM&Aのまとめ
今回は葬儀会社におけるM&Aについて、葬儀業界の現状や特徴、市場動向やM&A事例を踏まえて解説しました。
葬儀会社は事業者の数が非常に多いこともあり、M&Aが盛んに実行されている業界です。M&Aによる経営統合によって事業拡大に成功している葬儀会社も数多く存在することから、葬儀会社にとってM&Aは有効な経営戦略の一つと言えるでしょう。
しかしM&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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