旭硝子とADEKAの戦略的合意の背景
旭硝子株式会社は、株式会社ADEKAが保有する鹿島ケミカル株式会社の普通株式をすべて取得することで合意しました。この動きは、旭硝子が鹿島ケミカルを78.75%出資する子会社とするもので、エポキシ樹脂の重要な原料であるエピクロルヒドリンの安定供給を確保する狙いがあります。エポキシ樹脂は多岐にわたる産業で使用されるため、その原料供給の安定化は重要です。この合意により、旭硝子は鹿島工場電解ラインの安定稼働を実現し、コスト競争力を高めることが期待されます。
エピクロルヒドリンとは何か？
エピクロルヒドリンは、エポキシ樹脂の製造に欠かせない化学物質です。この物質は、塩素とプロピレンを主原料として生成されます。エポキシ樹脂はその高い接着力と耐薬品性から、自動車、航空、電子機器、建築など幅広い分野で使用されています。エピクロルヒドリンの市場は年々拡大していますが、環境への影響も考慮されるべきです。近年では、より環境に優しい製造方法の開発も進められています。
旭硝子の戦略的メリット
この子会社化により、旭硝子は以下のようなメリットを享受します。
- 原料調達の安定化：エピクロルヒドリンの供給元を自社化することで、供給の安定性を確保。
- コスト削減：自社内での供給チェーンを完結させることで、物流費用や調達コストを削減。
- 競争力の強化：安定供給とコスト削減により、製品の価格競争力を強化。
これらのメリットにより、旭硝子は市場でのポジションをさらに強固なものにすると見込まれます。
業界動向と市場背景
エポキシ樹脂市場は、特にアジア太平洋地域での需要増加により成長を続けています。成長の背景には、インフラ整備の進展や、自動車産業の成長、電子機器の高度化があります。世界市場の規模は2023年までに年率6%を超える成長が予測されています。しかし、エピクロルヒドリンの製造プロセスは環境負荷が高く、各国政府の規制も強化されています。旭硝子のような企業は、環境に配慮した製造技術の開発を進める必要があります。
製造プロセスと環境への配慮
エピクロルヒドリンの製造は、従来のプロセスでは塩素やプロピレンを使用しますが、これらは環境に対する影響が懸念されます。そのため、旭硝子を含む業界各社は、バイオベースの原料を使用した新しい製造方法の研究を進めています。バイオベース製造は、温室効果ガスの排出削減だけでなく、持続可能な資源利用を可能にします。このような取り組みは、企業の社会的責任（CSR）としても重要であり、今後の競争優位性を左右する要因となるでしょう。
