三菱電機が米Coherentに750億円出資！SiC事業強化へ

三菱電機がSiC市場に巨額投資、その背景と期待

三菱電機株式会社（6503）は、米国ペンシルベニア州に本拠を置くCoherent Corp.と合意し、新たに設立されるシリコンカーバイド（SiC）専門の新会社に対して5億米ドル（約750億円）という巨額の出資を決定しました。この出資は、2023年9月末のTTMレート（1米ドル=149.6円）を基に算出されています。SiCパワーモジュールは、従来のシリコンベースのパワー半導体に比べて省エネルギー性能が高く、特に電気自動車（EV）市場を中心に需要が急速に拡大しています。三菱電機はこの分野でのシェア拡大を目指し、戦略的に投資を進めています。この動きは、世界的なエネルギー効率の向上や、EV市場の成長を背景にしたものであり、業界全体に大きな影響を与える可能性があります。

シリコンカーバイド（SiC）とは何か？

シリコンカーバイド（SiC）は、化学式SiCで表される化合物で、硬度と耐熱性に優れた特性を持ちます。これらの特性は、特に高温や高電圧の環境で使用されるパワー半導体において非常に重要です。従来のシリコン（Si）に比べ、SiCは以下の点で優れています：

• 高い電圧耐性：SiCは高電圧に耐えることができるため、より効率的な電力変換が可能です。
• 高温動作：SiCは高温下でも動作が可能なため、冷却装置の小型化が可能となります。
• エネルギー損失の低減：SiCはエネルギー損失が少ないため、システム全体の効率が向上します。

このような特性から、SiCは電気自動車や再生可能エネルギー分野での利用が期待されています。

三菱電機の戦略的投資とその狙い

三菱電機は、大手総合電機メーカーとして知られ、重電システム、産業メカトロニクス、情報通信システム、電子デバイス、家庭電器など多岐にわたる製品を開発・製造・販売しています。今回の投資は、特にパワーデバイス事業を重点成長事業の一つとして位置づける中での戦略的な一環です。

SiCパワーモジュールの市場は、特に電気自動車（EV）や再生可能エネルギーの普及に伴い、今後数年間で急成長が予測されています。三菱電機は、この市場の成長を取り込み、自社の技術力と製品ポートフォリオを強化することで、業界内での競争力を高めることを狙っています。

Coherent Corp.との提携がもたらすシナジー効果

Coherent Corp.は、先進的な光学材料や半導体材料の開発、製造、販売において高い技術力を誇る企業です。三菱電機がこの企業と提携することで、SiC技術の開発や製造においても大きなシナジーが期待できます。具体的には、以下のような効果が見込まれます：

• 技術革新の加速：両社の技術力を結集することで、より効率的で高性能なSiCパワーモジュールの開発が可能になります。
• 市場拡大戦略の推進：共同で市場開拓を進めることで、より広範な顧客層へのアプローチが可能となります。
• コスト競争力の強化：製造プロセスの最適化により、コスト削減が図られ、競争力が向上します。

SiC市場の将来展望と課題

SiC技術は、電気自動車や再生可能エネルギー分野での活用を通じて、今後も大きな成長が見込まれています。市場調査によれば、SiCパワーデバイス市場は年平均成長率（CAGR）約20%で成長することが予測されています。しかし、その一方で課題も存在します。

• 製造コストの高さ：SiCの製造には高度な技術と設備が必要であり、製造コストが高いことが課題です。
• 市場競争の激化：多くの企業がSiC市場に参入しており、競争が激化しています。
• 技術標準の確立：業界全体での技術標準の確立が求められています。

これらの課題を克服するためには、継続的な技術開発と業界全体での協力が不可欠です。