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家具会社のM&A・事業承継の全知識!売却相場・事例・成功ポイントを徹底解説

「少子化で家具が売れない」
「高齢化で後継者がいないので事業承継したい」
「ネットショッピングの対応がなかなかできない」

今後、ますます顕著になっていく人口減少や少子高齢化、そしてEC市場の拡大。

近年、このような社会環境の変化に伴い、家具業界は従来型の戦略ではなく、新しい戦略が求められています。

生き残りをかけて、家具業界の多くの企業がM&Aを積極的に活用し、事業規模の拡大や新たなビジネスモデルの創出など、従来型の家具経営からの脱却を図っています。

今回、M&Aの専門企業であるM&A HACKが、家具業界の最新のマーケット分析と家具業界におけるM&Aの動向や成功のポイントについて、わかりやすく解説します。

家具業界のM&Aを検討している方は必見です。

目次

家具業界の概況:市場規模・主要動向・課題

家庭用家具・オフィス用家具・インテリア雑貨など、様々な製品を扱う家具業界。

ここ10年ほどでこの業界を取り巻く環境は大きく変化しています。

家具業界は、消費者のライフスタイルや価値観の変化、経済状況・住宅事情などで、その規模や構造が変動します。

近年、都市部のワンルームマンションやコンパクトな住宅の増加に伴い、省スペース型の家具や多機能型家具の需要が高まっています。また、テレワークの普及により、自宅での仕事環境を整えるために購入するオフィス家具の需要も増加しています。

また、オンラインショッピングの普及で、インターネットを通じた家具の販売が一般化。消費者は自宅から多様な製品を比較してから購入することが可能になりました。

これらの市場動向を踏まえ、家具業界は新たなビジネスチャンスを見つけ出し、競争力を維持するために、製品開発やマーケティング戦略の見直しを行っています。

例えば、消費者の健康志向やエコ志向に対応した商品開発、デジタルマーケティングの活用、オムニチャネル戦略の推進などが行われています。

しかし、これらの取り組みには大きな投資や時間が必要であり、すべての企業が自社だけでこれらを実現することは難しいのが現状です。

そこで、M&Aが有効な戦略となります。

M&Aで、企業は新たな技術やノウハウを短期間で取得し、製品ラインナップの強化や新たな市場への進出、新たな顧客層の開拓が可能になります。

特に、海外企業とのM&Aは、グローバル市場での競争力強化につながります。海外企業の製品やブランドを取得することで、国内市場だけでなく、海外市場での販売チャネルや顧客基盤を拡大することができます。また、海外企業の生産設備や技術を活用することで、製品の品質向上やコスト削減を図ることも可能です。

もちろん、M&Aはリスクも伴います。

異なる企業文化の融合、経営資源の適切な配分、経営戦略の一致など、成功するためには慎重な計画と実行が求められます。そのため、M&Aは一時的な成長戦略ではなく、中長期的なビジネス戦略の一部として位置づけるべきです。

このように、家具業界は市場環境の変化に対応し、成長を続けるために、製品開発やマーケティング戦略の見直し、M&Aなど、様々な戦略を探求しています。これからも、消費者のニーズや社会の変化に敏感に対応し、持続可能な成長を目指すためには避けて通れない戦略です。

しかし、市場の急速な変化に対応できない企業も当然ながら、存在します。

そんな企業のためにも、時間を買うM&A戦略は、急速な変化に対応する有効な戦略の一つなのです。

この記事では、家具業界のM&Aについて様々な視点から詳しく紹介していきます。

それでは、まず家具市場の概況や直面している課題について説明していきます。

成長余地の限られた市場における戦略が必要

矢野経済研究所が行った国内の家庭用・オフィス用家具市場に関する調査結果のポイントは以下の通りです。

  • 市場規模
    2022年の家庭用・オフィス用家具市場は、メーカー出荷金額ベースで前年比103.8%の1兆1,330億円。コロナ禍の影響で住環境の見直しやオフィスの移転・改装需要が増加し、市場は微増した。
  • 環境への取り組み
    家具メーカーは、再生材や国産木材を活用した商品開発、家具の長寿命化設計、リサイクルしやすい設計などに取り組んでおり、環境問題への対応を重要視している。
  • 今後の予測
    家庭用家具市場は、長期間続いたインフレの影響やマインドで需要が低下すると予測。オフィス用家具市場は新築オフィスビルの供給増や企業の投資継続により活況を呈すると期待されている。

一例として、この調査で示された、日本の家庭用家具市場の規模が以下のグラフとなります。

ご覧のように、日本の家庭用家具市場は、この20年間、6,800憶円から7,000億円の横ばいで推移しています。

家庭用家具市場規模推移・予測
家庭用家具市場規模推移・予測

出典:家庭用・オフィス用家具市場に関する調査を実施(2023年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

今後は、人口減少や少子高齢化の影響を受けて、家庭用家具市場の規模は現状維持か縮小する傾向にあります。

しかし、近年のEC市場の成長や、リフォーム需要の増加が、家具市場全体を支える大きな力になり得るとも期待されていますが、急激な市場の成長は見込めません。

このように、大きな成長余地は見込めない家具マーケット。この市場で勝ち抜くためには、柔軟で迅速な経営戦略が不可欠となっています。

家具業界の主要な動向と課題

家具業界は、市場の変化や社会的な動向によって、いくつかの問題点と課題に直面しています。ここでは、特に注目されている問題点と課題を紹介します。

  • 市場の縮小

近年、日本全体で深刻化している少子高齢化は、家具業界にとって大きな課題です。人口の減少に伴い、インテリア市場は縮小傾向にあります。家具やインテリアは頻繁に買い替えるものではないため、今後は需要の減少が懸念されます。

  • コストの増加

労働者や配送ドライバーの不足によって労働費用が上昇しています。建材や包装材料・物流などの価格上昇も、業界全体のコスト増につながっています。

  • 競争の激化

2023年の家具EC市場規模は約4,000億円と推計されており、今後も年平均5%ほどの成長率で成長していくと予想されています。オンラインショッピングの普及により、家具・インテリアのEC市場が急成長しており、EC市場と従来の実店舗を持つ家具店との間で競争が激化しています。EC市場の拡大は、顧客の購買行動に大きな変化をもたらし、価格競争や物流の変化など家具業界は新たな課題に直面しています。

このように、家具業界は、市場の縮小・コストの増加・競争の激化などの多くの課題に直面しています。これらの課題に対応するためには、業界全体での取り組みや、新しいビジネスモデルの探求が求められています。今後も、これらの課題にどのように対応していくかが、業界の未来を左右する重要なポイントになります。

次に、現在の家具業界が直面している主要な動向を紹介します。

リノベーション・リフォーム市場の拡大:
近年、中古住宅市場の活性化や、住まいの質の向上への意識の高まりによって、リノベーション・リフォーム市場が拡大傾向にあります。

家具のサブスクリプションサービス:
家具のサブスクリプションサービスが登場。新たな市場、ビジネスチャンスとして注目されています。

サステナビリティへの意識の高まり:
環境問題への意識の高まりから、FSC認証木材を使用した家具、リサイクル素材を使用した家具など、サステナブルな家具の需要が急増しています。

これらのように、他の業界と同様に、家具業界もEC市場の拡大や環境意識の高まりへの対応が求められているのです。

家具業界が抱える課題と解決策

ここまで紹介してきた家具業界の動向に並行して、家具業界では様々な課題に直面しています。

ここでは、家具業界が抱える「人口減少と少子高齢化」「原材料価格の高騰」「人手不足」という3つの課題への対応策について、以下に詳しく説明していきます。

課題:人口減少と少子高齢化による家具業界への影響

上述したように、人口減少や少子高齢化は、家具業界においても市場規模の縮小をもたらしています。当然ながら、需要の減少や競争の激化などが生じることになります。

対策:高齢者向けの家具やコンパクトな住空間に合わせた製品の開発

高齢者向けの家具やコンパクトな住空間に合わせた製品の開発への注力、新たな市場開拓などが有効な手段の一つです。

以下に、具体的な対策をいくつか紹介します。

  1. 高齢者向けの家具の開発:
    高齢者の身体的な制約や快適性を考慮した家具の開発。例えば、座りやすさや立ち上がりやすさを考慮した機能的な椅子やベッド、手すりや段差のないテーブルなどの需要があります。
  2. コンパクトな住空間に合わせた製品の開発:
    人口減少に伴い、住宅のスペースが限られていることが多くなっています。そのため、コンパクトなサイズでありながら、機能性や収納力を兼ね備えた家具の開発が求められています。例えば、折りたたみ式のテーブルやベッド、収納スペースのあるソファなどです。
  3. ユニバーサルデザインの導入:
    高齢者だけでなく、身体的な制約を持つ人々の全般に対応した家具の開発も重要です。ユニバーサルデザインは、誰もが利用しやすい製品を提供するための設計思想であり、バリアフリーな環境を実現するために不可欠となっています。
  4. 海外市場への進出:
    国内市場の縮小に対応するため、海外市場への進出も重要な戦略となります。海外の高齢者向け市場やコンパクトな住空間に適した市場を見つけ、製品の開発や販路の拡大を図ることで、新たな需要を開拓することができます。
  5. 新たな顧客層の開拓:
    高齢者向けの家具やコンパクトな住空間に合わせた製品だけでなく、新たな顧客層へのアプローチも重要です。例えば、若年層やシングル世帯など、スペースの制約や機能性を求めるターゲットにも対応した製品の開発やマーケティングを行うことで、需要の多様化に対応することができます。

課題:原材料価格の高騰による家具業界への影響

昨今の急激な円高による原材料価格の高騰は、家具の製造コストを増加させ、最終的には製品価格の上昇につながります。

これらが原因となる消費者の購買意欲の低下や、競争力の低下を防ぐために次のような解決策が考えられます。

対策:コスト削減と価値提供の強化

原材料価格の高騰への対応として、代替材料の利用・製造プロセスの強化・サプライチェーンの見直しなどが考えられます。

以下に具体的な対策をいくつか紹介します。

  1. 代替材料の検討:
    高価な原材料の代替品として、コストが低いが品質は劣らない代替材料の利用が有効です。例えば、従来の木材ではないリサイクル素材や新素材の導入などが考えられます。
  2. 製造プロセスの最適化:
    製造工程の見直しや最新の技術を導入することで、生産効率を上げます。省エネルギー型設備の導入、無駄を省く生産ラインの設計などが挙げられます。
  3. 付加価値提供の強化:
    価格の上昇が避けられない場合、製品の付加価値を高めることで、消費者の理解と受容を得ることも可能です。デザイン性・機能性・耐久性など、消費者が価格以上の価値を感じる要素を強化する必要があります。
  4. サプライチェーンの見直し:
    原材料の調達から製品の販売に至るまでのサプライチェーンを見直し、コスト削減の機会を探ります。長期契約による原材料コストの固定化や、効率的な物流ルートの確立などが有効です。
  5. 消費者とのコミュニケーション強化:
    価格上昇の理由や製品の価値を様々な媒体を使って消費者に正確に伝えることで、理解と信頼を築きます。マーケティングや販売戦略において、透明性や誠実さを持って接することが重要です。

課題:人手不足による家具業界への影響

人手不足は、家具業界における生産性の低下や、納期遅延などの問題を引き起こしています。また、労働力不足は、賃金の上昇圧力となり、製造コストの増加にもつながります。

対策:効率化と人材確保のための戦略

人手不足への対応として、「自動化」「労働環境改善」「外国人労働者の利用」などが考えられます。

以下に具体的な対策をいくつか紹介します。

  1. 自動化・ロボット技術の導入:
    製造プロセスにおける自動化やロボット技術の導入で、労働力に依存しない生産体制を構築します。例えば、CNC(コンピュータ数値制御)機械の使用や、塗装や組み立て工程の自動化が挙げられます。
  2. 労働環境の改善と働き方改革:
    従業員の働きがいや満足度の向上を目指し、労働環境の改善に取り組みます。フレキシブルな勤務体系や、適切な休息時間の確保、キャリアアップの機会提供などが有効です。
  3. 人材育成と教育プログラムの強化:
    若手や未経験者を対象とした研修プログラムや、技能習得のための教育制度を充実させます。業界への新たな人材の流入を促進させ、長期的な人材確保が狙いです。
  4. 外国人労働力の活用:
    法令に基づき、外国人労働力の受け入れを検討します。特に、技能実習生や特定技能外国人など、業務に必要な技能を有する人材の採用は検討すべき対策です。
  5. パートナーシップの構築:
    他の企業や業界との連携による共同生産やアウトソーシングの活用で、生産能力の拡張と労働力不足の解消を図ります。また、地方自治体や教育機関などとの連携による人材育成も有効です。

これらの様々な対策を通じて、家具業界は直面している課題に対応し、持続可能な成長を目指すことができます。

しかし、これらの従来型の解決策は、かなり時間を要するものであることは確かです。

今後はM&Aが主要な戦略に

家具業界は、ここまで紹介してきたような、消費者のライフスタイルの変化、環境保全への関心の高まり、そしてグローバル市場における競争の激化など、さまざまな周辺環境の変化や課題に直面しています。

これらの課題に対応するため、これからはさらに先を見据えた戦略が求められます。周辺環境の変化や課題への対応だけでなく、今後のさらなる競争激化に準備する必要があるのです。

国内外の競合企業との差別化戦略や、独自のブランド力や技術力の強化がさらに必要です。

例えば、国内外の競合他社との明確な差別化戦略は不可欠です。製品のデザイン性や機能性を高めることによる独自のブランド力の強化、最先端技術の導入による技術力の向上も避けては通れない戦略です。

また、環境に優しい素材の使用や、スマート家具に代表されるIoT技術の組み込みなども検討すべき戦略でしょう。

同時に、業界内での競争激化に対応するためには、M&Aによる事業拡大や、M&Aによる新規事業への参入といったM&A戦略は今後、早急に検討すべき戦略になります。

M&Aによる事業拡大は、企業規模の増大と一層の市場シェア獲得への近道です。また、全く新しい事業領域への進出を可能にするM&Aもあり、この結果、新たな収益源を確保し、さらなる成長を目指すことができるのです。

M&A戦略は、既存の事業を強化するだけでなく、将来の不確実性に対応するための柔軟性も企業にもたらします。

M&A戦略を進めることで、家具業界は今後も変化し続ける市場環境に適応し、持続可能な成長を実現していくことができるでしょう。

ここからは、家具業界のM&Aについて、メリット・注意点を詳しく紹介し、次に具体的なM&A事例を紹介していきます。

家具業界のM&Aを実行するメリット

家具業界のM&A事例家具業界のM&Aにおいてのメリットを売却側・買収側の両方から解説します。

参家具業界のM&Aを検討する際の参考になるはずです。

売却側のメリット 買収側のメリット
  • 後継者不足の解消
  • 従業員の雇用継続
  • 資金調達・オーナーのEXIT
  • 事業の選択と集中
  • 借入における個人保証の解除
  • 事業拡大のチャンスになる
  • 新規事業へのハードル削減
  • 優秀な人材の確保

売却側のメリット

家具業界における売却側のメリットは、以下のとおりです。

  • 後継者不足の解消
  • 従業員の雇用継続
  • 資金調達・オーナーのEXIT
  • 事業の選択と集中
  • 借入における個人保証の解除

それぞれ詳しく解説していきます。

後継者不足の解消

中小規模の家具関連企業にある問題として、後継者不足による廃業が挙げられますが、M&Aを進めることで後継者不足の解消に繋げることができます。

実際に後継者不足解消のため、中小規模の事業者が大手企業に会社を譲渡をすることで、後継者問題の解消に繋げるケースがあります。

M&Aでは、会社を譲渡することで譲受企業から経営陣を迎え、これまで通り会社を存続させることが可能になります。

また大手企業の経営者クラスに位置する優秀な人物が譲渡先の経営者となるため、譲渡した企業の事業規模はこれまでより拡大される可能性が高くなります。

後継者不足に悩んでいる企業にとって、会社の譲渡・M&Aを行うことは廃業を避けるための大きな手段のひとつです。

従業員の雇用継続

売却側の企業が廃業目前であった場合、M&Aを実行することで、既存従業員の雇用を継続して守ることができます。実際にM&Aを行った場合、ほとんどのケースで譲受企業によって従業員の雇用が継続されます。

労働条件においても引き継がれるケースがほとんどなので、既存従業員が被る影響は、廃業と比較してかなり大きく抑えることができます。

給与待遇や労働条件が同じであれば、M&A後の離職率も低い水準のままだと考えられます。

待遇面においては、M&A後に給与受験・労働時間・年間休日・福利厚生などの改善が行われるケースも多くみられます。

M&A以前よりも好条件で雇用されるケースもあるため、既存従業員にとっては大きなメリットとなり得ます。

資金調達・オーナーのEXIT

当然ながらM&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなります。

M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。

  • 残っている借入金の返済に充てる
  • オーナー自身の引退後の生活資金とする
  • 新規事業における資金源とする

もし、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、はるかにメリットは大きいでしょう。

事業の選択と集中

景気悪化が続いてきた日本では、生き残りのために複数以上の事業を多角展開する企業も珍しくありません。しかし事業の多角化は一歩間違えれば、赤字を生み出し、廃業の原因になる可能性があります。

M&Aのスキームの一つである「事業譲渡」によって、不要となった事業やその関連資産だけを選別して売却することが可能です。実際に事業譲渡で、特定の事業だけを他社に売却する企業は多くあります。

M&Aの事業譲渡によって事業を売却し、得意分野に資金や人員を集中することで経営状態の好転につながります。

借入における個人保証の解除

借入による資金調達では、当然ながら返済義務が生じ、返済ができない場合は個人資産を失うことになります。家具業界だけでなく、全ての経営者にとって大きな精神的負担となります。

特に中小規模の家具関連会社の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。倒産や廃業でのオーナー個人の損害は計り知れないものです。

M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。

オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。

買収側のメリット

M&Aにおける買収側のメリットは、以下の通りです。

  • 事業拡大のチャンスになる
  • 新規事業へのハードル削減
  • 優秀な人材の確保

それぞれ詳しく解説していきます。

事業拡大のチャンス

M&Aにおいて買収側が得られる最大のメリットは、事業拡大のチャンスを得ることです。M&Aによって買収側の企業は規模やシェアの拡大を達成することができます。

家具業界のM&Aにおいては、売手となる企業が持つ設備や不動産のような有形資産に加え、顧客・取引先・各種情報などの無形資産を手に入れることも可能です。

特に家具関連企業にとって工場や設備などの固定資産は製造に直結する要素であるため、M&A実行が早期の事業拡大につながります。

また、中小企業双方のM&Aは市場シェアを拡大させ、ライバルに圧倒的な差を付けることにも繋がります。

新規事業参入へのハードル削減

買収側企業は新規事業への参入を迅速に行うためにM&Aを実行することもあります。

ゼロから内部の資源だけで新規事業を構築するよりも、買収によって事業そのものを買うことのほうが、はるかに早期の進出が可能となります。

単一分野だけに頼った事業展開は、企業にとって大きなリスクになります。

独自に新規事業を展開するのではなく、M&Aによって新しい事業を買収することで、リスクが分散されます。

この観点からのM&Aは、大手企業を中心に、ここ数年で一気に増加しています。

売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができます。

結果として、新規事業への投資額は減少し、参入コストと時間が削減されることで、早期の段階で利益を確保できると言えます。

優秀な人材の確保

少子高齢化が問題となっている現代では、優秀な人材の確保がどの業界においても必須の課題です。

M&Aを行うことによって、売却側企業に所属する従業員をそのまま雇用すれば、優秀な人材をそのまま自社に引き入れることができます。業界におけるノウハウも既に所有しているため、研修を行う手間も省くことが可能です。

ただ、売却側企業の従業員がすべて優秀であるとは限りません。また、M&A後の企業文化の変化に追いつかず、離職する従業員が発生する可能性もあります。

M&Aによって従業員を引き継ぐ場合、これらの点に繊細な注意が必要です。

家具業界のM&Aの注意点

家具業界のM&A

家具業界のM&Aを行う際の注意点として、競業避止義務について説明していきます。

家具業界のM&Aにおける競業避止義務

家具業界のM&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。

以下が留意すべき点です。

  1. 情報の非公開化:
    M&Aに関わる企業は、取引の過程で得た相手方の機密情報や営業上の秘密を外部に漏らさない義務があります。これには、製品開発や戦略・顧客リストなどが含まれます。
  2. 事業活動の制限:
    M&A後、特に買収された側の企業の経営者や重要な従業員は、一定期間、同業他社で働くことや新たに競合する事業を立ち上げることが制限される場合があります。買収した企業の投資価値保護のためです。
  3. 顧客やサプライヤーとの関係:
    M&Aを通じて得た顧客やサプライヤーとの関係を利用して、不当な競争優位を得る行為を避ける義務があります。これには、不公正な価格設定や市場独占の形成を防ぐことが含まれます。
  4. 市場への影響:
    M&Aによって既存市場の様相が大きく変化し市場の競争が不当に制限される可能性があります。これは消費者の利益を毀損することにつながるため、適切な市場分析と関係者間や監督官庁と調整を行う必要があります。
  5. 従業員の扱い:M&Aで発生する可能性がある従業員の解雇や職務の変更に際して、公平な手続きを行う義務があります。これには、適切な通知期間の提供や、必要に応じた再教育・再配置の支援が含まれます。

家具業界に限らず、M&Aを行う際は、これらの競業避止義務に留意し、適切な契約内容を定めることが重要です。

家具業界におけるM&Aを成功させるためのポイント

家具業界のM&A成功のポイント

家具業界でのM&Aを成功させるためのポイントを解説します。

  • M&A戦略の立案
  • 相場価格をよく理解しておく
  • 統合後のプロセス確立

それぞれ詳しく解説していきます。

M&A戦略の立案

M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。

M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。

M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。

  • M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
  • 自身の企業は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
  • いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
  • 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
  • M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側)

上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになります。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。

M&Aについて自社に詳しい人物がいない場合、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。

当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫で対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。

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相場価格をよく理解しておく

M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、相手先の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。

家具業界のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。

  • 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
  • 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分

当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。

また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することは、あらかじめ考慮しておく必要があります。

PMI(統合後プロセス)の確立

M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。

PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。

  • 新経営体制の構築
  • 経営ビジョン実現のための計画策定
  • 両社協業のための体制構築・業務オペレーション

上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させます。

また、PMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間を要することがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。

家具業界のM&Aの類型と事例:4つのパターンと成功事例

家具業界のM&Aの成功事例

ここまで紹介してきたように、家具業界におけるM&Aは、企業の成長戦略や市場競争力の強化を目的として幅広く行われています。

まず、M&Aの主なパターンを4つ紹介し、その後、具体的な事例を紹介していきます。

M&Aの4つの主要なパターン

  1. 水平統合:競合する同業他社を買収し、事業規模の拡大や市場シェアの高める戦略。
  2. 垂直統合:製造・販売・流通など、異なるバリューチェーン上の企業を買収し、事業の効率化を図る戦略。
  3. 異業種買収:家具以外の事業を展開する企業を買収し、新規事業への参入や顧客層の拡大を図る戦略。
  4. 部分買収:
    特定の事業部門やブランドのみを買収し、必要な機能や資源だけを取り込む戦略。

M&A成功事例(水平統合):ニトリによる島忠の買収

  • 概要

ニトリは、DCMホールディングスが島忠を買収しようとした動きに対抗し、より高い買収価格を提示し、島忠の株式公開買い付け(TOB)を成功させ、完全子会社化を実現。

以前から飽和状態にあったホームセンター業界。家具大手のニトリによる島忠の買収は、家具とホームセンター業界における競争構造に大きな影響を与え、市場の再編を促進させるなど、ホームセンター業界の市場構造を大きく変化させる可能性がある。

  • 水平統合の事例として

ニトリの島忠の買収事例は「水平統合」のパターンです。首都圏を中心に家具専門店とホームセンターを運営する島忠、家具大手のニトリの両社は同じ市場での競合相手で、ニトリが競合の島忠を買収したことになります。

近年、業績が悪化していた島忠、首都圏にさらなる足掛かりを得たいニトリ。同業他社としてお互いの利益が合致した事例と言えます。

  • 参考

株式会社島忠(8184)に対する公開買付けの開始及び同社との間の経営統合契約の締結に関するお知らせ
株式会社ニトリホールディングスによる当社株式に対する公開買付けに関する意見表明及び同社との間の経営統合契約の締結に関するお知らせ

M&A成功事例(垂直統合):積水ハウスによるアイダの全株式取得

  • 概要

積水ハウスは、オーダーメイド木製家具メーカー「株式会社アイダ」の全株式を2023年12月25日付で取得。

積水ハウスは自社の住宅事業とアイダの家具製造能力を組み合わせ、住宅購入者に対して、住宅とよりパーソナライズされたオーダーメイド家具の一体的な提案が可能となった。

  • 垂直統合の事例として

積水ハウスによるアイダの全株式取得は、「垂直統合」の戦略に該当します。積水ハウスは住宅事業を展開しており、アイダはオーダーメイド木製家具を製造する企業です。

積水ハウスは、この買収で住と家具の一体的な提案が可能になり、顧客満足度の向上が可能となりました。

積水ハウスが自社で家具を作るのではなく、ノウハウも人員も現存しているアイダを買収することで、新たなサービスを迅速に提供可能となった事例として評価されています。

  • 参考

オーダーメイド木製家具メーカー「株式会社アイダ」の普通株式を全株取得 | 積水ハウス
積水ハウス、木製家具メーカーのアイダを買収 インテリア強化 – 日本経済新聞

M&A成功事例(異業種買収):ヤマダ電機による大塚家具の買収と合併

  • 概要

ヤマダ電機は、2021年9月1日を効力発生日として、大塚家具を完全子会社化。その後、2022年5月1日付で、ヤマダ電機の連結子会社であるヤマダデンキと大塚家具が合併し、ヤマダデンキが存続会社となった。

ヤマダ電機は家具・インテリアと家電の一体的な提案が可能となり、ヤマダ電機の市場における競争力の強化が狙い。

大塚家具は、ヤマダデンキとの合併後も、「大塚家具(IDC OTSUKA)」のブランド名で事業を継続。顧客サービスの向上に努めるとともに、商品の修理・メンテナンスも引き続き行う。

  • 異業種買収の事例として

ヤマダ電機による大塚家具の買収と合併の事例は、「異業種買収」のパターンです。ヤマダ電機は家電を中心に事業を展開している企業であり、大塚家具は家具・インテリアを扱う企業です。

このような異業種間の買収は、企業が新たな市場に進出するための有効な手段となり、顧客に対してより幅広いサービスや商品を提供することが可能になります。

ヤマダ電機はこの買収で、家電と家具・インテリアの融合が実現し、顧客に対するサービスの提供範囲が大きく拡大できた成功例です。

  • 参考

ヤマダHD、ヤマダデンキの大塚家具吸収合併を発表 – 日本経済新聞
吸収合併及び社名変更のお知らせ|ニュース・特集|コントラクト事業|家具・インテリアの大塚家具

M&A成功事例(異業種買収):フォーバルによる三知の買収

  • 概要

2023年5月1日に株式会社フォーバルは、株式会社三知の全株式を取得し、完全子会社化したことを発表。フォーバルは、次世代の経営コンサルタントグループとして、様々なセクターで企業の利益貢献を目指す企業。三知の主力事業はOA機器・オフィス家具等の卸売であり、フォーバルはこの買収の目的を中国地方での顧客基盤の拡大とDX推進としている。

三知は山口県光市を中心に事業を展開しており、フォーバルはこの買収により、中小・小規模企業向けのコンサルティングサービスの展開の強化を目指す。

  • 水平統合の事例として

フォーバルによる三知の買収は、経営コンサルタントとしての事業領域を拡大し、新たな市場への進出と顧客層の拡大を目指す「異業種買収」のパターンに分類されます。経営コンサルタント企業が家具企業を買収・子会社化した注目すべき事例といえます。

  • 参考

株式会社フォーバル OA機器・オフィス用品等の販売を主軸とした株式会社三知をグループ化! | 株式会社フォーバルのプレスリリース

 

M&A成功事例(その他):ウェブシャークによるYogiboの買収

概要

ウェブシャークは、米国ビーズソファブランド「Yogibo」を世界に展開する Yogiboを買収することを決定し、持分譲渡契約を 2021 年 12 月 11 日に締結し、2021 年 12 月 30 日に 100% 取得した。

日本総代理店契約を締結してYogibo Japanの運営を開始していたウェブシャークは、2019年8月にYogibo Japanを吸収合併。その後、米国Yogiboからの打診を受け、買収したもの。

ウェブシャークは2022年8月に株式会社Yogiboに商号変更した。

  • 参考

米国「Yogibo」本体、Yogibo LLC 社の買収について – 株式会社Yogibo米国「Yogibo」本体、Yogibo LLC 社の買収について – 株式会社Yogibo

M&A成功事例(その他):オカムラとTelexistence株式会社の資本業務

  • 概要

オフィス家具、商業施設用家具、医療・福祉用家具などの製造・販売を行っているオカムラ。遠隔操作可能なロボットの設計、製造、運用を行っているTelexistence。

オカムラは、小売店の店舗設計から、陳列什器の製造、施工、メンテナンスまで、店づくりをトータルにサポートしているが、人手不足や店舗スタッフの高齢化・多様化に対応すための解決策の一つとして、Telexistenceの遠隔操作ロボットが商品陳列などの作業に従事するサービスを展開できると考え、両社は、2023年3月に資本業務提携を行った。

この提携で、オカムラとはTelexistenceは、量販店向け遠隔操作ロボットに最適化された店舗用什器・備品の研究・開発から、このロボットの小売店への導入を目指す。

  • 参考

ニュースリリース | オカムラとTelexistenceが資本業務提携 遠隔操作ロボットによる陳列関連業務に最適化された什器・備品の共同研究・開発 | 株式会社オカムラ

まとめ

今まで紹介してきたように、家具業界におけるM&Aは、業界全体の成長を促す重要な手段としてかなり、注目を集めています。

特に、市場の成熟度が高く、既存のビジネスモデルでは新たな成長を見込みにくい家具業界にとって大手企業から中小企業まで、多くの企業がM&Aを活用しています。

この記事では、家具業界のM&Aにおける売却相場、事例、そして成功のポイントについて詳しく解説しました。

具体的な事例としては紹介していませんが、デザイン性と機能性を兼ね備えた家具を提供する企業が、大手家具メーカーに買収されるケースや、技術力の高い中小企業が、新しい市場を開拓するために大手企業によって買収される例などがあります。

これらの事例からは、家具業界におけるM&Aの成功には、買収される側の独自性や競争力が重要であることが分かります。

M&A成功のポイントは、明確な成長戦略を持つことがまず必要です。

M&Aを単なる拡大戦略と捉えるのではなく、企業の長期的な目標達成にどのように貢献するかを考えることが重要です。

また、M&A後の統合プロセスにおいて、企業文化の融合や従業員のモチベーション維持に注意を払うことも、成功への鍵となります。さらに、事前のデューデリジェンス(買収前調査)を徹底することで、リスクを最小限に抑えることが求められます。

このように、家具業界におけるM&Aは、企業にとって大きなチャンスであると同時に、慎重な準備と戦略的なアプローチが必要な取り組みです。

ぜひ今回の記事を参考に家具業界におけるM&Aを検討してみてください。

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