「貿易会社のM&Aにおける動向は?」
「貿易会社のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「貿易会社 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、貿易会社のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
貿易会社におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、貿易会社のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
貿易会社とは
貿易会社とは、国際間の商取引を専門とする企業のことです。他国と商品の輸出入を行い、国内外の顧客に向けて商品の調達や販売を行うことが主な役割になります。貿易会社の担う業務は、以下の通りです。
- 輸出: 国内の商品やサービスを海外の顧客に販売する。
- 輸入: 海外から商品や資源を調達し、国内市場に供給する。
- 仲介・取次: 国内外の企業や顧客の間に立ち、取引の交渉や調整を行う。
- 物流管理: 商品の輸送や倉庫管理を行い、スムーズな取引をサポートする。
貿易会社は、特定の商品や分野に特化している場合もあれば、幅広い商品を取り扱う総合商社のような形態をとることもあります。また、貿易会社は通貨の為替リスク、関税や規制対応、契約交渉、現地の法律や文化への対応など、複雑な国際業務も含まれるため、専門的な知識や経験が重要です。
貿易会社のビジネスモデル
貿易会社のビジネスモデルについて解説していきます。
総合商社
総合商社とは、幅広い商品分野にわたって国内外での取引や事業を行う貿易会社のことです。通常、単に「商社」と呼ばれることもありますが、特に「総合商社」と呼ばれる会社は、特定の分野に限らず、さまざまな分野に多角的に事業を展開します。
日本における大手総合商社は、「三菱商事」「三井物産」「伊藤忠商事」「住友商事」「丸紅」「豊田通商」などです。総合商社は、資源(石油、ガス、鉱物など)、エネルギー、食品、繊維、機械、化学品、金融、物流、不動産、IT、通信など幅広い分野で事業を展開しています。
また貿易会社は、グローバルにネットワークを持っているため、地域や国を超えたビジネスを行うことが可能です。また商品を売買するだけでなく、資源開発プロジェクトやインフラプロジェクトなど、長期的な投資や開発事業にも積極的に取り組んでいます。
特定商社
特定商社とは、特定の分野や商品に特化して事業を行う貿易会社のことです。総合商社が多岐にわたる分野で事業を展開するのに対し、特定商社は1つの業界や商品群に集中し、専門性の高いサービスを提供します。
特定商社は、取扱分野が限られているため、特定の産業や商品に関する深い知識や経験を活かして、顧客に対して専門性の高いサポートを提供できることが特徴です。たとえば、機械専門の商社は製造業のニーズに特化した調達や販売、技術サポートを提供します。
また特定分野における取引規模や実績があるため、その分野での調達・販売ルートが整備されており、効率的なサプライチェーン構築に強みがあることも特徴です。また、特定分野でのリーダーシップを持ちやすいことも特徴になります。
貿易代理店
貿易代理店とは、貿易取引において輸出者や輸入者に代わって、商品の取引を仲介する企業や事業者のことです。貿易代理店は、通常直接商品の所有権を持たず、手数料や報酬を受け取ることで、取引に関わる手続きをサポートする役割を担います。
貿易代理店は、輸出入取引の仲介を行うことが特徴です。取引先の紹介、契約の締結支援、価格や条件交渉などを代理して行います。相手国の商習慣や法規制に詳しいため、安心して取引を進めることが可能です。
また貿易代理店は、貿易における商取引だけでなく、貿易に伴うリスク(為替リスク、政治リスク、取引先リスクなど)への対策を提案します。また、支払いや回収の条件設定、保険手配などもサポートし、リスク軽減を図ることが重要です。
貿易会社に必要な業許可・資格・種類
貿易会社に必要な業許可・資格・種類について解説していきます。
貿易会社に必要な業許可
貿易会社を設立し、輸出入業務を行うには、取扱商品や業務内容に応じてさまざまな業許可や届出が必要です。貿易会社の運営に必要とされる業許可の中には、以下のようなものがあります。
- 輸入業者登録
輸出入の際に税関での手続きをスムーズに進めるため、税関に「輸出入者コード」を登録するもの。税関での手続きが迅速に行えるため、通常は取得しておくことが推奨されます。 - 輸出入申告
貿易業務の際に必ず必要となる手続き。輸入時には関税や消費税が課されるため、商品の価値や数量に関する正確な申告が必要。輸出時には、輸出に関する制限品目がないか確認が必要。 - 外国為替および外国貿易法(外為法)に基づく許可
輸出入する品目によっては、外為法によって輸出入が制限されているため、必要に応じて経済産業省などの関連機関に申請し、許可を得る必要がある。特に武器、軍用品、ハイテク機器、化学製品などが対象。
上記の通り、貿易会社には様々な業許可が必要です。特に外国との貿易が発生する場合には、対象国の法律に基づいた業許可の申請が必要です。特殊な契約書の締結等も必要となるケースがあるため、専門の弁護士等を経由する場合も多くあります。
貿易会社に必要な資格
貿易会社の業務は誰でもこなせる訳ではありません。そのため、貿易会社で雇用する人材を選定する際には、取得している資格内容を把握することが必須です。貿易会社で役立つ資格には以下のようなものがあります。
- 貿易実務検定
日本貿易実務検定協会が主催している資格で、貿易の基礎知識や実務スキルを学べる。貿易関連の基本を理解し、実務に対応できる能力が身につくため、初学者や基礎を固めたい場合に推奨される。 - 通関士
通関業務を行うための国家資格です。貿易に関する法律や税関手続きの知識が必要なため、輸入や輸出の際の通関処理を行うスキルが身につきます。通関業務に直接関わる場合や貿易会社で重宝される。 - 海外営業実務士
貿易業務に関連する営業スキルに特化した資格。特に海外営業の基礎的な知識や交渉スキルを取得していることを証明するため、海外貿易を執り行う貿易会社で重宝される。
貿易会社の事業内容は多岐に渡るため、自社の事業内容に合った資格の取得が推奨されます。また工事内容によっては、有資格者の在籍が義務付けられている場合もあるので、注意が必要です。
貿易会社に必要な職種
貿易会社の業務は、多岐に渡るため、様々な職種の人材を雇用することが必要です。貿易会社に必要とされる職種には、以下のものがあります。
- 営業・海外営業
取引先の新規開拓や関係強化、営業活動を行う職種。特に海外営業では、現地市場の調査や現地法人・代理店との交渉が重要。英語や他の外国語のスキルが求められることも多く、取引条件の調整や契約締結に関する知識も必要となる。 - 貿易事務
貿易に関連する書類の作成や管理を行う職種。インボイスやパッキングリスト、船積書類などを作成し、通関や輸送手配もサポートする。正確な事務処理能力と、貿易知識が求められる。 - 物流・サプライチェーン管理
貨物の輸送や在庫管理を担う職種で、輸出入に関する輸送手段の選定やスケジュール調整が主な業務。サプライチェーン全体の最適化を図ることでコスト削減と効率化を目指す。効率的な物流管理と貿易の流れに関する深い知識が必要。 - 通関士
通関に関する手続きを担当する職種で、輸出入に必要な申告業務や関税・税関手続きを行う。国家資格である「通関士」の資格が必要で、関税法や輸出入管理に関する知識が求められる。
上記の他にも、「マーケティング」や「法務人材」など、多種多様な職種の雇用が必要です。必要な職種は、自社のビジネスモデルに見合った人材の雇用が重要になります。
貿易会社の市場動向
貿易会社の市場動向について解説していきます。
輸出総額は増加傾向
現在の貿易業界においては、国外から国内における輸出総額が増加傾向です。国内から国外における2023年度の輸出総額は、前年度比1.9%増の101兆1,490億円と増加しています。輸出総額が増加している主な理由は、以下の通りです。
- 海外需要の増加
世界経済の回復や成長が進むと、海外での日本製品への需要が高まる。特に技術力のある製品や高品質な製品は、アジア諸国やアメリカ、ヨーロッパなどでの需要が顕著に増加する傾向がある。 - 為替レートの影響
円安になると、日本の製品が相対的に割安になり、海外市場で競争力が高まる。このため、外国のバイヤーが日本製品を購入しやすくなり、輸出が増加する。 - サプライチェーンの再編
世界的なサプライチェーンの再編により、海外での日本製部品や製品の需要が増えたケースも多い。特に、安定した品質と供給を求める先進国からの受注が増え、輸出が増加する要因になる。 - 新興市場の開拓
東南アジアやアフリカといった新興市場の経済成長により、これらの国々での日本製品に対する需要が高まっている。新たな市場での輸出が伸びていることも、輸出総額増加の一因。 - 自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の推進
日本が積極的にFTAやEPAを締結することで、関税が削減または撤廃され、輸出コストが下がる。これにより、日本企業が海外市場で競争しやすくなり、輸出の増加が促進される。 - 国内企業の国際展開の加速
日本企業が海外市場でのプレゼンスを拡大し、現地の需要に応じた製品やサービスを提供することも増加する。これにより、海外からの需要に応える形で輸出総額が増加する。
特に円安により、日本製品の競争力が海外市場で高まり、製造業を中心に輸出額が増加しています。今後は円安の動きがさらに強まることも予測されており、貿易会社は為替の影響をさらに大きく受けることになるでしょう。
輸入総額は減少傾向
輸出総額が円安の影響などにより増加している一方で、国外から国内における輸入総額は減少傾向です。国外から国内における輸入総額が減少している要因には、以下が挙げられます。
- エネルギー価格の低下
ウクライナ危機などで高騰していた原油やLNGの価格が2023年以降に安定・低下し、エネルギー関連の輸入費用が減少した。 - 円高の影響
2024年に入ってから円がドルに対して強くなり、輸入価格が円ベースで割安になったため、輸入総額の減少につながった。 - 国内外の需要減少
エレクトロニクスや化学製品などの需要が落ち込んだため、それらの輸入も減少。特に半導体関連製品は供給改善による需要の減少があり、これも輸入総額の減少に寄与している。
特に2023年から半導体関連部品の供給が改善しつつあるため、これに伴って製品需要も低下し、日本の輸入総額は減少傾向にあります。2024年度には引き続きエネルギー価格の影響が大きいものの、電気機器や一部の原材料の輸入が増加に転じる見通しです。
貿易DXの普及
日本の貿易業界に大きな変革をもたらしているのが、「貿易DX」の普及です。貿易DXとは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を貿易業務に適用し、効率化やコスト削減を目指す取り組みを指します。
現在の貿易業界では依然として多くの手続きが紙ベースで行われ、業務が煩雑で時間がかかることが大きな課題です。貿易会社が貿易DXを導入することにより、進捗管理の一元化・ヒューマンエラーの削減・情報共有の効率化が実現され、業務効率は大幅に改善されることになります。
既に「TradeWaltz」や「サイバーポート」などのプラットフォームが登場し、通関業務の効率化や取引の透明性を高めているのが現状です。今後さらに貿易業界全体でDX化が進むことが予測されており、大きく業界変動が起きることになるでしょう。
貿易会社が抱える課題
貿易会社が抱える課題について解説していきます。
慢性的な人手不足
貿易会社が抱える大きな課題として、慢性的な人手不足があります。日本の貿易業界では、近年特に人手不足が深刻化しており、中には人手不足により業務に支障をきたしている貿易会社も多いです。
貿易会社の人手不足が深刻化しておる最大の理由として、日本の少子高齢化と若年層の担い手不足が挙げられます。貿易業界では、働き手の年齢層が高い傾向にあり、特にドライバーの高齢化が顕著です。
また貿易会社の多くは業務にアナログな手法を用いているため、労働生産性が低く、人手に頼らざるを得ない体制になっています。また、デジタル化への投資不足や属人化した業務が多く、業務の効率化が遅れているのも要因の一つです
為替リスク
次代を問わず貿易会社は、常に為替リスクという重大な課題を抱えています。為替リスクとは、為替レートの変動が取引に及ぼす影響を指します。特に輸出入業務において、円やドルなどの通貨レートが大きく変動すると、売上やコストが予想外に増減するため、利益に大きな影響を与えるリスクが発生します。
例えば、円安が進むと輸出品の競争力が増し利益が増える反面、輸入コストが増大し利益を圧迫。逆に円高の場合、輸出では利益が減少しやすいですが、輸入品の仕入れコストが低くなることで利益が増える場合もあります。
競争の激化
現在の貿易業界においては、企業間の競争が激化しつつある状況です。貿易会社同士の競争が激化することで貿易会社自身はもちろんのこと、製品メーカーや卸売会社にも多大な影響を与えています。
貿易会社による競争激化の理由は、グローバル化や技術革新が進展したことが大きな要因です。特に、新興国の台頭が顕著であり、中国や韓国などの企業が日本市場でもシェアを拡大し、製造業からIT・バイオテクノロジーといった先端分野で急速に力を付けつつあります。この競争により、日本の企業は低価格・高品質の製品を求められ、価格競争が激化しています。
また、国際的な規制や貿易摩擦も影響し、日本企業にとって競争のハードルはより高くなっています。さらに、デジタル技術の進展や消費者の嗜好変化によって競争が加速しており、企業は迅速なデジタル化やコスト削減が不可欠となっています。こうした状況下で、日本企業が国際競争力を維持・向上するためには、イノベーションの促進や柔軟な市場適応が求められます。
貿易会社におけるM&Aの動向
貿易会社におけるM&Aの動向について解説していきます。
M&Aが活発化
現在の日本における貿易業界は、M&Aが活発化している状態です。M&Aの件数自体はさほど多くないものの、M&Aによる業界変動が活発化しています。貿易会社のM&Aが活発化している理由は、主に以下の通りです。
- 人材不足と事業承継の必要性
少子高齢化に伴い、貿易業界でも人材不足は深刻化している。特に、中小企業では後継者問題が顕著で、事業承継が難しくなるケースが増えている。このため、事業の存続や成長を目的として他企業に譲渡することで、貴重な人材や資源を確保する動きが増加している。 - デジタル技術の統合と業務効率化
デジタル技術(DX)を活用した効率化が貿易業界に求められていますが、導入コストや専門知識の不足が課題。そこで、デジタル化を推進している企業同士が統合することで、スムーズにDX化を進める戦略が注目されている。 - 競争力強化とグローバル市場への対応
世界的な競争の激化に対処するため、国内外でのM&Aが活発化している。これにより、貿易企業は新しい市場にアクセスし、顧客基盤を拡大しやすくなる。グローバル市場における影響力を高めるためにも、戦略的なM&Aが多く見られる。
貿易会社の事業戦略における手法としてM&Aは非常に有効な手段です。今後も貿易業界におけるM&Aの動向は、活発化していくことが予想されています。
異業種とのM&A
貿易業界では、異業種とのM&Aも活発です。貿易会社と異業種企業がM&Aにより取引関係を築くことで、様々なシナジー効果を得ることができます。貿易会社とM&Aが多い異業種には、以下のものが挙げられます。
- 物流・運送業
物流業界は貿易に密接に関連しており、流通インフラの拡大や効率化を図るため、物流会社とのM&Aが特に多く行われている。これにより、貿易会社は輸送効率の向上や配送網の拡大を実現しやすくなる。 - 製造業
一部の製造業、特に食品や化学製品などの特殊な商品を扱う業界では、貿易会社が製造企業を買収することで、製造から販売までの垂直統合が図られ、取引の安定性や供給能力を強化できる。 - IT・テクノロジー関連業
近年では貿易デジタル化の流れもあり、IT業界の企業を買収してシステムやデータ管理を強化する例も見られる。特に、貿易プロセスの自動化やデータ分析を行うためのソフトウェア企業との提携が増えている。 - 卸売業
貿易会社が新しい市場や地域で流通網を強化したい場合、現地で既に展開している卸売会社とのM&Aも有効。これにより、迅速に販路拡大が可能になり、競争力を向上させることができる。
これらの業種とM&Aを行うことで、貿易会社は自社の事業基盤を拡大し、競争優位を確立しやすくなります。今後も貿易会社と異業種企業がM&A取引を実施する事例は増えていくことでしょう。
クロスボーダーM&Aの活発化
貿易会社におけるM&Aの動向として挙げられるのが、クロスボーダーM&Aの活性化です。クロスボーダーM&Aとは、譲渡企業または譲受企業のいずれかが海外企業であることを指すものになります。
貿易業界においては、国内における同業者間競争の激化が大きな課題です。この課題の対策として、大手貿易会社を筆頭に、海外企業とのM&Aを実施する企業が増えてきています。
国内の貿易会社がクロスボーダーM&Aを実施し、海外企業とのタイアップを行うことで、海外市場における早期進出を図ることが可能です。今後は貿易会社のみならず、生き残りのために中小規模の貿易会社も積極的に海外市場へ参入していくことでしょう。
貿易会社のM&Aにおける成功事例
貿易会社のM&Aにおける成功事例を紹介していきます。
三洋貿易と古江サイエンスによるM&A
2017年2月に、三洋貿易株式会社が子会社である三洋テクノス株式会社を通じて、古江サイエンス株式会社の所有する全株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「三洋貿易株式会社」は、東京都千代田区に本社を構え、合成ゴムや化学品などの原材料、副資材をはじめ、機械や各種測定装置などの輸出入事業を展開する企業です。一方の譲渡企業である「古江サイエンス株式会社」は、ローラーポンプとマイクロフィーダーの開発および製造と販売に携わっている企業になります。
本件M&Aは、貿易会社と理化学機器会社の取引事例です。本取引により、譲り受け企業である三洋貿易は、三洋テクノスと古江サイエンスの合併によるシナジー効果により、三洋グループ全体の企業価値の上昇に貢献し、科学機器事業部としての本格的なスタートとなると位置づけています。
アサヒ衛陶と友琪貿易によるM&A
2022年3月に、アサヒ衛陶株式会社が友琪貿易株式会社の所有する株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「アサヒ衛陶株式会社」は、住宅設備である衛生機器の製造、仕入、販売を行う衛陶業を展開している企業です。一方の譲渡企業である「友琪貿易株式会社」は、古物営業法による古物商および輸出入ならびにその受託販売、その他多岐にわたり事業を行っている企業になります。
本件M&Aは、住宅関連衛陶業運営会社と貿易会社による取引事例です。アサヒ衛陶は、友琪社の実績と保有する古物商許可、海外における商取引のネットワークといった営業面での資産が今後の事業展開上で活用できるとの判断から、本出資および子会社化を決定しました。
友琪貿易株式会社への出資による子会社化及び新たな事業の開始に関するお知らせ
メニコンと板橋貿易によるM&A
2021円1月に、株式会社メニコンが板橋貿易株式会社の所有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられ、取得価額は3,560百万円となっています。
譲り受け企業である「株式会社メニコン」は、コンタクトレンズ・ケア用品事業などを展開。またオルソケラトロジーレンズ事業を、中国子会社であるアルファコーポレーション社の「アルファオルソ K」レンズや自社製ケア用品の販売を展開しています。
一方の譲渡企業である「板橋貿易株式会社」は、医療用機械器具の販売および輸出入業務とコンサルティング業務、医薬品、医療器械の中国国家薬品監督管理局[NMPA]への登録代行、治験・臨床試験の受託、および農水産物の販売並びに輸出入業務を行っている企業です。
本件M&Aは、国内大手コンタクトレンズ事業運営会社と貿易会社による取引事例です。本件によりメニコンは、オルソケラトロジーレンズ事業分野のさらなる強化を図っています。また、今後成長著しい中国市場への本格進出により、コンタクトレンズおよび関連製品等の更なる事業拡大を見込むと同時に、海外事業拡大を加速させることが目的です。
三井物産とAWE LimitedによるM&A
2018年2月に、三井物産がオーストラリアのAWE Limitedの所有する全株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式公開買い付け(TOB)のスキームが用いられ、取得価額は約512億円となっています。
譲り受け企業である「三井物産」は、エネルギーや資源開発分野での強みを持つ企業で、特に海外の石油やガス関連企業のM&Aを積極的に行っている企業です。一方の譲渡企業である「AWE Limited」は、オーストラリアを本拠とし、原油・ガス生産を主とするエネルギー事業を行っている企業になります。
本件M&Aは、貿易事業も手掛ける日本の大手総合商社と海外のエネルギー関連会社による取引事例です。本取引により、三井物産は、豪州国内の優良原油・ガス資産のポートフォリオの拡充を図るとともに、豪州石油・ガス生産事業においてより活動領域を広めるためのオペレーター機能の獲得を目指しています。
豪州石油ガス資源開発会社AWE Limitedの公開買付け終了に関するお知らせ
三洋貿易とコスモ・コンピューティングシステムによるM&A
2022年10月に、三洋貿易株式会社が株式会社コスモ・コンピューターシステムの所有する全株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「三洋貿易株式会社」は、東京都千代田区に本社を構え、合成ゴムや化学品などの原材料、副資材をはじめ、機械や各種測定装置などの輸出入事業を展開する企業です。
一方の譲渡企業である「コスモ・コンピューティングシステムは、ソフトウェア受託開発、システム開発・販売・運用および関連事業。加えて、大手通信会社や大学など産学官と共同で画像処理に関する研究も行っている企業になります。
本件M&Aは、貿易会社とIT・ソフトウェア関連企業による取引事例です。本取引により、三洋貿易は、システム開発を内製化することで、ビジネスにより近いところで俊敏にシステム開発し、デジタルサービスを提供する体制を構築していくことを目的としています。
極東貿易と三幸商会によるM&A
2020年11月に、極東貿易株式会社が株式会社三幸商会の所有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「極東貿易株式会社」は、械関連を中心に、鉄鋼、化学、自動車、電機、電力などを始めとする様々な分野の産業に関連する製品の輸出入などを手掛けている企業です。一方の譲渡企業である「株式会社三幸商会」は、汎用プラスチック・エンジニアリングプラスチック・溶射材及び関連する成形機、高周波・超音波機器などの国内販売、輸出事業等を行っている企業になります。
本件M&Aは、ともに貿易関連事業を営む会社同士の取引事例です。本取引により、両社が保有する国内外のネットワークを活用、技術的な知識と経験を有する人材や取引先など、様々な経営資源を共有し、取扱い商材及び商圏の拡大、新たな商流の構築やシナジーの創出を図っていくことを目的としています。
貿易会社にてM&Aを行うことのメリット
貿易会社にてM&Aを行うことのメリットを売却側と買収側の双方から解説していきます。それぞれのメリットは、以下の通りです。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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貿易会社でM&Aの売却を行うことのメリット
貿易会社でM&Aによる売却を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 資金調達・オーナーのEXIT
- 借入における個人保証の解除
- 事業の選択と集中
- 競争力の獲得
それぞれ詳しく解説していきます。
資金調達・オーナーのEXIT
M&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。
- 残っている借入金の返済に充てる
- オーナー自身の引退後の生活資金とする
- 新規事業における資金源とする
一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。
借入における個人保証の解除
借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。貿易会社に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。
特に中小規模の貿易会社の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。
M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。
事業の選択と集中
景気悪化を辿る日本では、会社存続のために複数の事業を多角展開する企業も珍しくありません。しかし事業の多角化は一歩間違えれば、赤字を生み出し、廃業の原因とさえなり得ます。
M&Aのスキームの一つである「事業譲渡」を用いることで、不要となった事業やその関連資産だけを選別して売却することが可能です。実際に事業譲渡により、特定の事業のみを他者委に売却する企業は多くあります。
M&Aの事業譲渡によって事業を売却することで、事業の選択と集中が出来れば、経営状態を好転させられるかもしれません。得意分野に資金や人員を集中できるため、成功率も高まるはずです。
競争力の獲得
現在の貿易業界は、市場競争が激化している状況です。市場競争が激化する市場において、M&Aを活用することは、市場での競争力を高めることに直結します。下記は、M&Aによって得られる効果の一部です。
- スケールメリットによるコストの削減:M&Aにより企業規模が拡大すると、大量仕入れや一括調達が可能となり、コストの削減が図れる。
- 技術やノウハウの獲得:社にない技術やノウハウを持つ企業を買収することで、短期間でその技術を取り込み、商品・サービスの品質向上や差別化を図れる。
- 市場シェアの拡大:同業他社や関連企業とのM&Aは、既存市場でのシェア拡大に直結します。市場シェアが拡大することで、顧客基盤も広がり、企業のブランド力や交渉力が強化される。
他にも、様々な競争力獲得のための要素を得ることが可能です。M&Aによって市場競争力を高めることが出来れば、自社の経営基盤を確固たるものにすることが出来るでしょう。
貿易会社でM&Aの買収を行うことのメリット
貿易会社でM&Aによる買収を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 事業拡大のチャンス
- サプライチェーンの自社完結
- 新規事業への進出
- 従業員の確保
それぞれ詳しく解説していきます。
事業拡大のチャンス
M&Aにおいて買収側が得られる大きなメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。M&Aによって買収側の企業は規模やシェアの拡大を狙うことができます。
貿易会社のM&Aにおいては、売手となる企業が持つ設備や建物のような有形資産に加え、顧客・取引先情報などの無形資産を手に入れることも可能です。特に貿易会社においては、「取引先」「顧客情報」などの無形資産は実績に直結する要素であるため、M&Aによる早期事業拡大も視野に入れることができます。
また貿易会社においては、大手企業の市場シェア率が高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小同士のM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を付けることにも繋がります。
サプライチェーンの自社完結
M&Aによって貿易会社を買収することで、サプライチェーンの自社完結を成すことが可能です。M&Aにおけるサプライチェーンの自社完結とは、必要な製品やサービスを一貫して自社で供給できるようにすることを指します。
サプライチェーンの自社完結を成すことで、コスト削減・品質と供給の安定・スピーディーな市場対応などが可能です。買収先の貿易会社が持っていた流通ルートを活用することで、自社事業の市場性を高めることにも繋がります。
自社でサプライチェーンを完結することで、外部企業の経済的リスク(原材料費の高騰、供給停止、海外の政治的影響など)に左右されにくくなることもメリットです。供給元の経済不調や規制の変更によって供給に問題が生じるリスクを回避することができます。
新規事業への進出
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに貿易業界への早期参入が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
従業員の確保
貿易会社は専門職の一種であるため、専門技術を要した職人の確保が必須です。M&Aによって貿易会社を買収することで、貿易事業のノウハウを持った従業員を確保することができます。
貿易会社の運営において特に必要となる人材は、「貿易事務」や「通関士」などの人材です。これらの人材を一から採用するのは非常にハードルが高いですが、M&Aによって専門スキルを保有する人材を引き継ぐことができれば、採用コストを削減することもできます。
またM&Aによって人材を引き継ぐことは、貿易業界におけるノウハウをそのまま獲得することも意味します。承継される人材が持つノウハウを活かせば、貿易会社のビジネスもより優位に進めることが出来るでしょう。
貿易会社のM&Aにおける注意点
貿易会社のM&Aにおける注意点を解説します。貿易会社のM&Aにおいて、注意すべき事項は以下の通りです。
- M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
- 避止義務に関して
- 事業許可や人材の引継ぎ
それぞれ詳しく解説していきます。
M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
M&Aでは、買い手と売り手の情報格差(買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富)があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件(買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう)という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
避止義務に関して
M&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。
M&Aにおける競業避止義務とは、M&Aの成約後に譲渡企業に課される義務です。譲渡した事業に対して、譲渡企業が競合するような事業を再度行い、譲受企業に不利益を与えることを避けることが目的となります。
会社法の規定により、事業譲渡を実施した会社は、競業避止義務を負うことになるので注意が必要です。ただし、買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることはできます。将来的に貿易会社を再度手掛ける可能性があれば、買収側と交渉しましょう。
事業許可や人材の引継ぎ
貿易会社を運営するうえで重要なのが、輸出入事業許可です。事業許可の承認なしでの輸出入業の運営は法律で禁止されており、事業許可無しでの運営は罰則を受けることになります。
もし事業譲渡をする際に買収側の企業が輸出入許可を有していなければ、国際間における貿易事業を営むことは不可能です。ただし、株式譲渡の場合は輸出入許可を引き継げるためM&A後も継続して事業を行えます。
許可を取得している同業他社と事業譲渡を実施すれば、貿易会社の売却がスムーズに進みます。なお、買い手が許可を持っていれば新しく許可を申請する必要はありませんが、法人の名称など変更にかかわる届出は必要です。
貿易会社のM&Aを成功させるためのポイント
貿易会社におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。貿易会社におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格をよく理解しておく
- 統合後のプロセス確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。
M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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相場価格をよく理解しておく
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
貿易会社のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。
また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
統合後のプロセス確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新経営体制の構築
- 経営ビジョン実現のための計画策定
- 両社協業のための体制構築・業務オペレーション
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。
貿易会社におけるM&Aのまとめ
今回は貿易会社におけるM&Aについて、貿易業界の現状や特徴、市場動向やM&A事例を踏まえて解説しました。
貿易業界は事業者の数が非常に多いこともあり、M&Aが盛んに実行されている業界です。M&Aによる経営統合によって事業拡大に成功している貿易会社も数多く存在することから、貿易会社にとってM&Aは有効な経営戦略の一つと言えるでしょう。
しかしM&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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