「鉄筋工事会社のM&Aにおける動向は?」
「鉄筋工事会社のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「鉄筋工事会社 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、鉄筋工事会社のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
鉄筋工事会社におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、鉄筋工事会社のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
鉄筋工事会社とは
鉄筋工事会社とは、鉄筋コンクリート(RC)構造物の骨組みとなる鉄筋を加工・組立する仕事のことです。鉄筋工事業は、建設業許可の27種類の専門工事の1種である「鉄筋工事業」を請け負う事業者になります。
鉄筋工事業者の主な事業は、建設会社の設計図に基づいて鉄筋の配置や結束方法を決定し、建築・建設物の安全性・機能性・品質を保証することです。建物の設計・建築においては、なくてはならない存在でもあります。
現状、鉄筋工事業界では職人の高齢化による労働力の不足・市場競争の激化など、様々な課題を抱えているのが現状です。同時にM&A戦略の実施・テクロノジーによる新しいシステムの構築などを用いた業界編成が行われています。
鉄筋工事会社の事業内容
鉄筋工事会社の主な役割は、鉄筋コンクリート(RC)構造物の骨組みとなる鉄筋を加工・組立することです。鉄筋工事会社の主な事業内容には、具体的に以下のものがあります。
- 小型現場から大型建築まで、あらゆる鉄筋工事一式請負
- 鉄筋の切断、曲げ加工、配送運搬
- 工事の見積もり
- 鉄筋加工図の作成
- 鉄筋材の仕入
- 鉄筋加工材の搬出
- 鉄筋加工材の現場搬入
- 組み立て後の検査
鉄筋工事は、ビルやマンションなどの建築物、橋やトンネル、高速道路などの構造物など、さまざまな場所で行われます。鉄筋はコンクリートの強度を保つ重要な役割を果たしており、安全性に関する知識や高い技術力が求められます。
鉄筋工事会社に必要な業許可・資格
鉄筋工事会社に必要な業許可・資格について詳しく解説していきます。
鉄筋工事会社に必要な業許可
建設業許可の27種類の専門工事の1種である「鉄筋工事業」を請け負う事業者です。そのため、鉄筋工事会社の運営においては、建設業許可の取得が必須となります。鉄筋工事業の建設業許可を取得するには、次の要件を満たすことが必須です。
- 経営業務の管理責任者がいること
- 専任技術者が営業所ごとにいること
- 請負契約を履行するに足る財産的基礎または金銭的信用を有していること
- 請負契約に関して誠実性があること
- 欠格要件に該当しないこと
また、鉄筋工事業の実務経験が10年以上あれば「センギ」の要件を満たすことができますが、「特定」建設業許可を取得するには、実務経験に加えて「指導監督的実務経験」が2年以上必要です。
鉄筋工事会社に必要な資格
鉄筋工事会社会社の業務は誰でもこなせる訳ではありません。そのため、鉄筋工事会社で雇用する人材を選定する際には、取得している資格内容を把握することが必須です。鉄筋工事会社で役立つには以下のようなものがあります。
- 一級鉄筋施工技能士
鉄筋施工に関する技能を認定する国家資格。鉄筋施工図作成作業と鉄筋組立て作業の2種類の選択科目から選べるが、どちらも高度な技術が求められる。公共工事では一級技能士の常駐が必要とされる場合があり、かつ民間工事でも信頼性や収入が向上する可能性が高い。 - 玉掛け
クレーンを使った資材の吊り上げや固定に関する資格。とび工事会社の業務においては、資格取得が強く推奨される。玉掛け技能講習は受験資格に制限がなく、講習の受講と試験に合格するだけで資格が取得可能。とび職として基礎的な知識を身につけられる。 - 登録鉄筋基幹技能者
現場の鉄筋工をまとめる上長としての役割を担う。工事に直接関わるほかに、鉄筋工の指示や指導、安全管理や施工管理も行う。鉄筋工のゴール地点といえる強い資格。2日間講習を受け、3日目最終日の修了試験に合格する必要がある。
鉄筋工事会社の事業内容は多岐に渡るため、自社の事業内容に合った資格の取得が推奨されます。基本的に無資格であっても、業務は可能ですが、資格取得者を雇用しておくことは、自社の信頼性向上にもつながる要素です。
鉄筋工事会社の市場動向
鉄筋工事会社の市場動向について詳しく解説していきます。
市場は縮小傾向
鉄筋工事は、建設業の一種であるため、建設業界の市場動向に大きく影響を受けます。そして現在の建設業界では、新設住宅数の減少・公共工事の予算減少などで市場規模が減少しているのが現状です。
特に新設住宅数の減少は、鉄筋工事会社にとって大きな痛手となっています。国内における新設住宅の主な要因は、少子高齢化による人口減少です。今後も少子高齢化現象は加速していくことが予測されており、同時に新設住宅建築における需要も減少していくことでしょう。
また日本では「大都市集中型」の人口構造が年々加速していることが、戸建て住宅減少の理由です。都心部で戸建て住宅を建築する人はごく僅かで、都心部に居住する多くの人は分譲もしくは賃貸物件を選択します。
大都市集中型の人口構造では、地方部の屋根工事会社が影響を受けます。地方部の戸建建設または公共施設等の建築案件が減少することにより、鉄筋工事会社の受注も減少していくでしょう。
テクロノジーによる生産性の向上
現在の建設業界では、生産性向上を目的としたテクノロジー化が進んでいるのが特徴です。ITを中心とした最新技術の導入により、人材不足解消や労働環境改善といった建設業界が抱える課題への解決が期待されています。
一例として挙げられるのが、建築関連大手の「清水建設株式会社」による次世代生産システム「Shimiz Smart Site」の構築です。本システムでは、作業を調整する水平スライドクレーンや、溶接トーチを操るロボット、建材を施工する多機能ロボットなどが実装されています。これにより、70〜75%の省人化に成功しており、大幅な生産性向上が期待される取り組みです。
他にも「3Dプリンタ導入」「点検や測量におけるドローン活用」など、様々な最新テクノロジーの導入が進んでいます。これからを生きる建築会社にとって、テクノロジーの導入は欠かせない要素のひとつです。
インフラ整備事業への期待
新設住宅数の減少・公共工事の予算削減など、建設業界全体にとって逆風となる要素が存在する一方で、インフラ整備事業の拡大が期待されています。鉄筋工事会社を含む建設業界にとって、インフラ整備事業への公共予算増加は追い風となる要素です。
「建設経済研究所」の10月発表データによれば、2024年度の建設投資については、72兆2,400億円と前年度比で微増(1.1%)となっています。政府分野投資である国の直轄・補助事業の 2024年度当初予算は、各省庁の概算要求額の公表では前年度並みの規模である約7兆円の公共事業関係費が確保される見通しとなっています。
2025年の大阪・関西万博開催、リニア中央新幹線開通など、インフラ整備に関する公共工事案件は、これから増加していく見通しです。莫大な公共投資が必要となる案件が複数存在するため、建設業界にとっては良い傾向を示す要素となっています。
鉄筋工事会社が抱える課題
鉄筋工事会社が抱えている課題について詳しく解説していきます。
資材高騰による影響
現在の鉄筋工事会社を含む建設業界全体が抱えている大きな課題のひとつが、資材高騰による利益圧迫です。2024年2月時点で、建設関連の資材価格は2021年1月以降、約30%上昇していると言われています。建設関連資材の価格が高騰している主な理由は、以下の通りです。
- ウッドショック
- アイアンショック
- 円安
- 原油価格の高騰
- ロシア・ウクライナ戦争
- コンテナ料金の高騰
中でも「アイアンショック」は建設業界に多大な影響を及ぼした要素のひとつです。アイアンショックとは、鉄の輸入価格が急上昇した現象を指します。アイアンショックの背景にはアメリカや中国での住宅需要が急増したことにより、鉄の価値が高まったことが主な要因です。今後もこの状況は暫く続くことが予測されています。
若手職人の不足
現在の鉄筋工事会社が抱えている代表的な課題が、人手不足です。特に若手の職人獲得に苦戦している鉄筋工事会社が多く存在します。新たな若手職人の獲得ができず、職人の高齢化が問題視されている状況です。
鉄筋工事会社における若手職人の雇用が難しい要因には、「きつい(休みが無い)」「汚い(土や砂ホコリ、汗臭いなど)」「危険(高所や危険な場所での作業、のこぎりなどの危険を伴う道具を使う」などの職業イメージがあります。さらに職人気質なイメージが強い業界だけに、年功序列な風潮がみられることも、現代の若者に受け入れられない理由のひとつです。
また若手の雇用に成功したとしても、定着しにくいという点も大きな課題となっています。若手職人を安定して雇用し定着させるためには、業界全体で「イメージアップ」・「労働環境の改善」・「業務の効率化」などへの取り組みが求めています。
市場競争の激化
鉄筋工事業界の歴史は古く、今でも多くの鉄筋工事会社が存在します。古くから存在する鉄筋工事業界ですが、現在の鉄筋工事市場における競争は激化している状況です。
鉄筋工事業界の市場競争が激化している背景には、住宅着工件数の減少・不動産市場の冷え込みなどの要因が挙げられます。着工件数の減少による需要減少は、鉄筋工事会社の業績に悪影響を与えるため、熾烈な価格競争を引き起こす要因となっているのです。
また鉄筋工事会社は中小規模事業者の数が多く、業界全体を見てもほとんどが中小規模事業者が占めている状態にあります。現代の日本における中小企業は人手不足や賃金上昇により、業績が悪化。結果として市場競争の激化を招いているのです。
鉄筋工事会社におけるM&Aの動向
鉄筋工事会社におけるM&Aの動向について解説していきます。
大手建設会社による中小規模事業者へのM&A
インフラ整備・災害対策工事の需要が高まっている一方、現在の鉄筋工事業界の市場規模は縮小傾向にあることのが現状です。市場衰退が進むなかで、鉄筋工事各社は様々な生存戦略を展開しています。
鉄筋工事業界におけるM&Aにおいて多いのが、大手建設会社による屋根工事専門会社の買収事例です。資金・人材ともに豊富な経営資源を持つ大手建設会社が、中小規模の鉄筋工事会社を買収し、規模の拡大を図っています。
また売却側である中小規模の鉄筋工事会社も、大手企業の傘下となることで、事業の存続や売却益の確保などのメリットを得ることが可能です。大手建設会社と中小規模の鉄筋工事会社のM&A事例は、今後も増えていくことでしょう。
中小規模企業同士のM&A
鉄筋工事会社のM&Aにおいて最も多発しているケースは、鉄筋工事会社同士の事例です。同業者同士がM&Aによって合併や事業譲渡をするケースが多くあります。
特に多いのが、中小規模の鉄筋工事会社同士のM&Aによる合併です。資金力が不足し、設備・人材投資が難しい場合には、鉄筋工事会社同士が合併し、経営基盤強化のための投資を共同で行うケースもあります。
また中小規模事業者同士のM&Aでは、双方の持つ建築業運営におけるノウハウを共有することによる、シナジー効果の発揮も狙いです。双方の持つノウハウを共有することで、資金力のある鉄筋工事会社に対抗することが目的となります。
後継者不在によるM&A
特に中小規模の鉄筋工事会社で多発しているのが、後継者不在という問題です。実際に後継者不在により事業継続が難しく、別の鉄筋工事会社にM&Aを依頼するケースも増えてきています。
経営者の周りに後継者候補がいない場合でも、M&Aによる事業承継であれば買い手企業が後継者(新たな経営者)となるため、自社の存続が可能だからです。M&Aをすることで廃業を免れることが出来るため、既存従業員の雇用継続をすることもできます。
また後継者不在によるM&Aにて事業規模が拡大した建築会社も多く存在します。特に鉄筋工事業界のM&Aでは、M&A後に買い手が持つ建築事業の戦略として取り入れ、売上が伸びたケースも多いです。
鉄筋工事会社のM&Aにおける成功事例
鉄筋工事会社のM&Aにおける成功事例を紹介していきます。
小野建と森田鋼材によるM&A
2019年10月に、小野建株式会社が森田鋼材株式会社の所有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「小野建株式会社」は、1949年にセメント・金物・土木建築資材の販売会社として設立して以来、鉄鋼・建材商品販売から請負工事まで行う専門商社として事業を展開している企業です。一方の譲渡企業である「森田鋼材株式会社」は、京阪神エリアを中心として、鉄筋丸棒の販売、切断、加工から鉄筋工事を行っている企業になります。
本件M&Aは、鉄鋼・建材流通会社と鉄筋工事会社によるM&Aです。本取引により、譲り受け企業である小野建は、森田鋼材株式会社の事業を核としながら、関西エリアでの鉄筋関連製品の取り扱いを増やし、さらに加工や施工などのより付加価値の高いサービスを地域へ提供することを目指しています。
森田鋼材株式会社の株式の取得(完全子会社化)に関するお知らせ
三和建設とコアー建築工房によるM&A
2020年6月に、三和建設がコアー建築工房の全株式を取得し、資本業務提携を締結したM&Aの事例です。本取引は資本業務提携のスキームが用いられましたが、取引金額は公開されていません。
譲り受け企業である「三和建設」は、1947年の創業以来、鉄筋・鉄骨を用いて工場・倉庫などの企業向け施設の建設を行ってきた企業です。一方の譲渡企業である「コアー建築工房」は、南大阪エリアで自然との共生をコンセプトに木造注文住宅事業を展開している企業になります。
本件M&Aは、総合建設企業と工務店による取引事例です。本取引により、譲り受け企業である三和建設は、木材を用いた施設建築に本格的に参入することを企図しています。情報共有や技術・営業基盤の相互活用、人材交流などを通して両社の事業を発展させていくことが主な目標です。
三和建設株式会社、本格木造建築事業へ参入 ~人と環境への配慮を主軸にさらなる事業領域の拡大へ~
フジ住宅と雄健建設グループ3社によるM&A
2019年11月に、フジ住宅株式会社が雄健建設グループ3社(雄健建設株式会社、関西電設工業株式会社、日建設備工業株式会社)の発行済全株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。
譲り受け企業である「フジ住宅株式会社」は、地域に根付いた居住用不動産に関するワンストップサービス企業として、大阪府下を中心に阪神間、和歌山市内で分譲戸建住宅、分譲マンション、中古住宅再生、土地有効活用、賃貸及び管理事業を多角的に展開している企業です。
一方の譲渡企業である「雄健建設グループ(雄健建設株式会社、関西電設工業株式会社、日建設備工業株式会社)」は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建築工事で、大阪府下を中心に官公庁から民間企業まで幅広い施工実績を持つ企業になります。
本件M&Aは、建設・不動産関連多角化企業と鉄筋工事会社による取引事例です。本取引により、譲り受け企業であるフジ住宅は、土地有効活用事業の需要へのさらなる対応に向けて、木造以外の住宅を提供、事業のラインアップの充実を図り業績の安定拡大を目指しています。
コニシと近畿鉄筋コンクリートによるM&A
2013年11月に、株式会社コニシが近畿鉄筋コンクリート株式会社の所有する株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられ、コニシの所有割合は73.36%となります。
譲り受け企業である「株式会社コニシ」は、土木建築物の修復や改修に適応する接着剤やシーリング材の開発・供給、加えて、独特な外壁修復、耐震強化、表面防護等の施工技術を有した企業です。一方の譲渡企業である「近畿鉄筋コンクリート株式会社」は、橋梁工事のスペシャリストとして、橋梁工事による交通インフラの整備を行っている企業になります。
本件M&Aは、建築関連企業と鉄筋工事会社による取引事例です。本取引により、譲り受け企業であるコニシは、自社の商材を近畿鉄筋コンクリートの橋梁工事に活かすことで、グループとしての売上規模を伸ばすことを目的としています。
近畿鉄筋コンクリート株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
森田鋼材と三豊鋼業によるM&A
2024年2月に、森田鋼材株式会社が三豊鋼業株式会社の所有する全株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「森田鋼材株式会社」は、小野建株式会社の子会社で、、京阪神エリアを中心として、鉄筋丸棒の販売、切断、加工から鉄筋工事を行っている企業です。一方の譲渡企業である「三豊鋼業株式会社」は、兵庫県伊丹市に本社を置き、兵庫県及び大阪府北西部県を中心に、森田鋼材同様に主に鉄筋の販売、加工並びに施工事業を行う企業になります。
本件M&Aは、共に鉄筋工事会社同士の取引事例です。本取引により、小野建は子会社の森田鋼材が三豊鋼業の株式を取得することで、グループの京阪神エリアにおける鉄筋加工販売事業の営業強化、さらには商流の効率化によるお客様サービス向上、ひいてはグループとして企業価値の向上を図ることができると判断しています。
【小野建株式会社】子会社の森田鋼材株式会社にて三豊鋼業株式会社の株式譲受
鉄筋工事会社にてM&Aを行うことのメリット
鉄筋工事会社がM&Aをするメリットを売却・買収側の双方から解説します。鉄筋工事会社のM&Aにおける売却・買収のメリットは、以下の通りです。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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鉄筋工事会社でM&Aの売却を行うことのメリット
鉄筋工事会社でM&Aによる売却を行うことのメリットは、以下の通りです。
後継者不足の解消
特に中小規模の鉄筋工事会社における問題として、後継者不足による廃業が挙げられます。後継者不足に悩む鉄筋工事会社が、M&Aの売却を進めることで後継者不足の解消に繋げることができます。
実際に後継者不足解消のため、中小規模の事業者が大手企業に買収されることで、後継者問題の解消に繋がるケースは多いです。M&Aでは、会社を譲渡することで譲受企業から経営陣を迎え、これまで通り会社を存続させる事ができます。
また大手企業の経営者クラスに位置する優秀な人物が経営者となるため、売却側の事業規模がこれまでより拡大される場合が多いです。後継者不足に悩んでいる企業にとって、M&Aを行うことは廃業を避けるための大きな手段のひとつです。
資金調達・オーナーのEXIT
M&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。
- 残っている借入金の返済に充てる
- オーナー自身の引退後の生活資金とする
- 新規事業における資金源とする
一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。
借入における個人保証の解除
借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。鉄筋工事会社に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。
特に中小規模の鉄筋工事会社の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。
M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。
事業の選択と集中
景気悪化を辿る日本では、会社存続のために複数の事業を多角展開する企業も珍しくありません。しかし事業の多角化は一歩間違えれば、赤字を生み出し、廃業の原因とさえなり得ます。
M&Aのスキームの一つである「事業譲渡」を用いることで、不要となった事業やその関連資産だけを選別して売却することが可能です。実際に事業譲渡により、特定の事業のみを他者委に売却する企業は多くあります。
M&Aの事業譲渡によって事業を売却することで、事業の選択と集中が出来れば、経営状態を好転させられるかもしれません。得意分野に資金や人員を集中できるため、成功率も高まるはずです。
鉄筋工事会社でM&Aの買収を行うことのメリット
鉄筋工事会社でM&Aによる買収を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 事業拡大のチャンス
- 新規事業への進出
- 従業員の確保
- 安定した受注確保
それぞれ詳しく解説していきます。
事業拡大のチャンス
M&Aにおいて買収側が得られる大きなメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。M&Aによって買収側の企業は規模やシェアの拡大を狙うことができます。
鉄筋工事会社のM&Aにおいては、売手となる企業が持つ設備や建物のような有形資産に加え、顧客・取引先情報などの無形資産を手に入れることも可能です。特に鉄筋工事会社においては、「取引先」「顧客情報」などの無形資産は実績に直結する要素であるため、M&Aによる早期事業拡大も視野に入れることができます。
また鉄筋工事会社においては、大手企業の市場シェア率が高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小同士のM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を付けることにも繋がります。
新規事業への進出
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに建設業界への早期参入が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
従業員の確保
鉄筋工事会社は専門職の一種であるため、専門技術を要した職人の確保が必須です。M&Aによって鉄筋工事会社を買収することで、鉄筋工事業のノウハウを持った従業員を確保することができます。
鉄筋工事会社の運営において特に必要となる人材は、「鉄筋施工技能士」などの人材です。これらの人材を一から採用するのは非常にハードルが高いですが、M&Aによって国家資格を保有する人材を引き継ぐことができれば、採用コストを削減することもできます。
またM&Aによって人材を引き継ぐことは、鉄筋工事業界におけるノウハウをそのまま獲得することも意味します。承継される人材が持つノウハウを活かせば、鉄筋工事会社のビジネスもより優位に進めることが出来るでしょう。
安定した受注確保
現在の鉄筋工事会社が抱える課題として、安定した受注の確保が困難であるという点が挙げられます。これは特に中小規模の事業者によくある課題のひとつです。
鉄筋工事業界においては、大手企業から中小規模事業者への案件紹介が一般的となっています。そのため大手企業からの案件紹介がなければ、案件受注が止まってしまい事業が立ち行かない状態になりかねません。
M&Aによって大手企業の傘下に入る、もしくは吸収合併を受けることで、安定した案件確保が可能です。親会社である大手企業の持つブランド力と資金力を活用できるので、受注は非常に安定したものになることでしょう。
鉄筋工事会社のM&Aにおける注意点
鉄筋工事会社のM&Aにおける注意点を解説します。鉄筋工事会社のM&Aにおいて、注意すべき事項は以下の通りです。
- M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
- 避止義務に関して
- 事業許可や人材の引継ぎ
それぞれ詳しく解説していきます。
M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
M&Aでは、買い手と売り手の情報格差(買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富)があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件(買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう)という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
避止義務に関して
M&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。
M&Aにおける競業避止義務とは、M&Aの成約後に譲渡企業に課される義務です。譲渡した事業に対して、譲渡企業が競合するような事業を再度行い、譲受企業に不利益を与えることを避けることが目的となります。
会社法の規定により、事業譲渡を実施した会社は、競業避止義務を負うことになるので注意が必要です。ただし、買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることはできます。将来的に鉄筋工事会社を再度手掛ける可能性があれば、買収側と交渉しましょう。
事業許可や人材の引継ぎ
鉄筋工事会社を運営するうえで重要なのが「建設業許可」です。500万円以上の鉄筋工事案件を請け負うためには、建設業許可の取得が欠かせません。
もし事業譲渡をする際に買収側の企業が建設業許可を有していなければ、500万円以上の鉄筋工事案件を請け負うことは不可能です。ただし、株式譲渡の場合は建設業許可を引き継げるためM&A後も継続して事業を行えます。
許可を取得している同業他社と事業譲渡を実施すれば、鉄筋工事会社の売却がスムーズに進みます。なお、買い手が許可を持っていれば新しく許可を申請する必要はありませんが、法人の名称など変更にかかわる届出は必要です。
鉄筋工事会社のM&Aを成功させるためのポイント
鉄筋工事会社におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。鉄筋工事会社におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格をよく理解しておく
- 統合後のプロセス確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。
M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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相場価格をよく理解しておく
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
鉄筋工事会社のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。
また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
統合後のプロセス確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新経営体制の構築
- 経営ビジョン実現のための計画策定
- 両社協業のための体制構築・業務オペレーション
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。
鉄筋工事会社におけるM&Aのまとめ
今回は鉄筋工事会社におけるM&Aについて、鉄筋工事業界の現状や特徴、市場動向やM&A事例を踏まえて解説しました。
鉄筋工事業界は事業者の数が非常に多いこともあり、M&Aが盛んに実行されている業界です。M&Aによる経営統合によって事業拡大に成功している鉄筋工事会社も数多く存在することから、鉄筋工事会社にとってM&Aは有効な経営戦略の一つと言えるでしょう。
しかしM&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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