「地盤調査・地盤改良会社のM&Aにおける動向は?」
「地盤調査・地盤改良会社のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「地盤調査・地盤改良会社 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、地盤調査・地盤改良会社のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
地盤調査・地盤改良会社におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、地盤調査・地盤改良会社のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
地盤調査・地盤改良会社とは
地盤調査・地盤改良会社とは、計画する建物や土地の状況に応じて地盤の硬軟や土質構成などを調査し、地盤改良工事を行う会社です。地盤調査・地盤改良会社は、建設業界の一種に分類される業種でもあります。
地盤調査とは、スクリューウエイト貫入試験やボーリング調査、表面波探査法などの技法を用いて行われる建設前調査のことです。調査に対する費用は、調査方法や依頼する会社によって異なります。
また地盤改良工事は、住宅の基礎となる地盤を適切な状態にする工事です。地盤が弱いと地盤沈下が起こり、建物が倒壊する危険性が高まります。地盤改良工事の費用は、表層改良工法、柱状改良工法、鋼管杭工法など、工法によって異なります。
地盤調査・地盤改良会社の種類
地盤調査・地盤改良会社の種類について解説していきます。
柱状改良(表層混合処理法)
柱状改良とは、建物を建てる範囲にセメントの柱を打って地盤を強化する工法です。地盤が弱い場所や不安定な場所を補強することで、建物が傾いたり、地震などの自然災害に弱くなる危険性を減らします。柱状改良の仕組みは、以下の通りです。
- 地中に直径60cmほどの穴をあける
- 良好な地盤まで掘る
- 地盤を掘る過程で水を混ぜたセメントを注入して土と混ぜて撹拌する
- 円柱状の固い地盤を築くことで強化する
柱状改良法は地盤改良会社にとって一般的な技法ですが、土の地質によっては施工ができない場合もあります。砂土質や粘土質の土質が適しており、有機質土や火山灰質粘性土では固化不良が発生する可能性が高いです。
表層改良(表層混合処理法)
表層改良とは、地盤の浅い部分(通常は地表から2m以内)をセメントなどの特殊な材料で固め、地盤の強度を高める地盤改良工事です。地盤の安定性を高めることで、建物や道路などの基礎が安全に保たれるようにします。表層改良の手順は、以下の通りです。
- バックホーで基礎となる部分の地盤を改良深度まで掘り、底を均一にする
- 掘り起こした土にセメント系固化材を添加し、撹拌混合する
- バックホーで表面を締め固め、転圧機で十分に固める
- ローラーで表面を滑らかに仕上げる
表層改良は、地盤改良工事の中でも最も低コストで工期も短い工法です。1坪あたりの費用は1万円~3万円程度となっており、住宅建設に関連する地盤調査・地盤改良会社にてよく用いられる技法になります。
鋼管杭圧入法
鋼管杭圧入法とは、建物の基礎下を掘削して、地盤内の支持地盤まで小口径の鋼管を継ぎ足しながら圧入し、建物を持ち上げて沈下を修正する工法です。アンダーピニング法と呼ばれる技法でもあります。鋼管杭圧入法の主な特徴は、以下の通りです。
- 地表より作業スペースを人力掘削する。
- 掘削した底面に鋼管を建て込み、ジャッキで下方に押し下げる。
- 鋼管を継ぎ足し、支持地盤まで貫入させる。
- 貫入が止まったら、家屋が持ち上がるので、各所で準備をする。
- 各所の準備ができたら、家屋の水平を測量しながらジャッキで家屋の沈下修正を行う。
- 家屋が水平となったら、支持台を設置し、周囲を気泡モルタルで固定する。
- 地表部を埋め戻す。
鋼管杭圧入法は限られたスペースでも施工が可能であることが大きなメリットです。地震時の揺れを軽減できる技法でもあるため、災害多発国である日本でも多く用いられています。再沈下のリスクも少なく、建物内部に与える影響も少ない技法です。
地盤調査・地盤改良会社に必要な業許可・資格
地盤調査・地盤改良会社に必要な業許可と資格について解説していきます。
地盤調査・地盤改良会社に必要な業許可
地盤調査・地盤改良会社の運営においては、国土交通省が定める「建設業許可」の取得が必須です。また建設業許可は全29種類存在しますが、国土交通省では地盤改良工事について、以下のように定められています。
「地盤改良工事」とは、薬液注入工事、ウエルポイント工事等各種の地盤の改良を行う工事を総称したものである
地盤調査・地盤改良会社においては、建設業許可のうち「とび・土工工事業の許可」などが必要です。地下水調査ではさく井工事(井戸掘り)が行われますので「さく井工事業の許可」が必要になります。また地質調査でも、500万円以上の建設工事の場合には建設業許可の取得が求められることになります。
地盤調査・地盤改良会社に必要な資格
地盤調査・地盤改良会社の業務は誰でもこなせる訳ではありません。そのため、地盤調査・地盤改良会社で雇用する人材を選定する際には、取得している資格内容を把握することが必須です。しゅんせつ工事会社で役立つには以下のようなものがあります。
- 土木施工管理技士
土木工事に関する工程管理や安全管理、品質管理、予算管理など、工事全体のプロジェクトを監督するための国家資格。資格は1級と2級があり、建設コンサルタントとしての資格取得であれば、大規模土木工事の施工管理が行える1級資格が必要となる。 - 土木施工管理技士補
施工管理の担い手確保を主な目的として、令和3年4月から新たに設けられた資格。施工管理技術検定の第一次検定に合格した段階で取得でき、1級施工管理技士補は、監理技術者の補佐業務を行うことができる。 - 地質調査技師
ボーリング調査をはじめとする地質調査の知識と技術を認定する資格。民間資格だが、国土交通省により「公共工事に関する調査及び設計等の品質確保に資する技術者資格」に登録されている。「現場調査部門」と「現場技術・管理部門」があり、どちらも試験に合格すると取得できる。 - 住宅地盤技士
宅地盤の品質向上を目的とし、地盤調査のスキルを認定する民間資格。調査部門と設計施工部門があり、それぞれに実務者向けの「住宅地盤技士」と、指導・監督者向けの上位資格である「住宅地盤主任技士」があり、計4種類に分かれている。 - 地盤品質判定士
地盤の品質判定に関わる調査・試験の立案や、調査結果に基づく適切な評価と対策工事の提案を行うスキルを認定する民間資格(国土交通省登録資格)。宅地の造成業者、不動産業者・住宅メーカー、そして住宅や宅地の購入者のスムーズな仲立ちを目的としている。
他にも地盤調査・地盤改良の業務に関しては、様々な関連資格が存在します。事業内容によって取得すべき資格も異なるので、自社の事業にあった資格所有者を雇用することが必須です。
地盤調査・地盤改良会社の市場動向
地盤調査・地盤改良会社の市場動向について解説していきます。
市場は減少傾向
地盤調査・地盤改良業界における市場は、現在減少傾向にあります。地盤調査・地盤改良業界における市場規模は、1995年から2005年にかけて約4割の減少です。地盤調査・地盤改良会社の市場規模が減少している理由には、以下が挙げられます。
- 少子高齢化による人口減少
- 大都市人口集中による戸建て住宅需要の減少
- 建物の平均築年数の減少
- 自治体からの受注減少
上記の理由から地盤調査・地盤改良業界の市場規模は減少傾向です。一定の需要は見込める業界であるため、急激な減少幅ではありませんが、今後も緩やかに国内の市場規模は減少していくことでしょう。
新設住宅着工数の減少による影響
上記は、国土交通省による「建築着工統計調査」による統計結果です。上記の通り、新設住宅(持家=注文住宅と分譲戸建て)の着工数は平成8年度以降は概ね減少傾向にあります。また新設住宅に占める分譲戸建ての比率が年々上昇しているのも特徴です。
国内における新設住宅の主な要因は、少子高齢化による人口減少です。今後も少子高齢化現象は加速していくことが予測されており、同時に新設住宅建築における需要も減少していくことでしょう。
また日本では「大都市集中型」の人口構造が年々加速していることが、戸建て住宅減少の理由です。都心部で戸建て住宅を建築する人はごく僅かで、都心部に居住する多くの人は分譲もしくは賃貸物件を選択します。今後は更に都心部でのマンション建設が加速していく見通しです。
テクロノジーによる生産性の向上
現在の建設業界では、生産性向上を目的としたテクノロジー化が進んでいるのが特徴です。ITを中心とした最新技術の導入により、人材不足解消や労働環境改善といった建設業界が抱える課題への解決が期待されています。
一例として挙げられるのが、建築関連大手の「清水建設株式会社」による次世代生産システム「Shimiz Smart Site」の構築です。本システムでは、作業を調整する水平スライドクレーンや、溶接トーチを操るロボット、建材を施工する多機能ロボットなどが実装されています。これにより、70〜75%の省人化に成功しており、大幅な生産性向上が期待される取り組みです。
他にも「3Dプリンタ導入」「点検や測量におけるドローン活用」など、様々な最新テクノロジーの導入が進んでいます。これからを生きる建築会社にとって、テクノロジーの導入は欠かせない要素のひとつです。
地盤調査・地盤改良会社の抱える課題
地盤調査・地盤改良会社が抱える課題について解説していきます。
慢性的な人手不足と後継者不在問題
地盤調査・地盤改良会社が抱える最大の課題のひとつとして、人材・後継者不足があります。これは地盤調査・地盤改良会社を含む、建設業界全体が抱える最大の課題のひとつです。
建設会社が人材不足にある理由のひとつが、「職業イメージ」にあるとされています。建設会社での仕事は、建設現場での施工作業がクローズアップされやすいため、肉体労働を避ける傾向にある現代人にとっては積極的な就職先候補とはなり得ないのです。
また建設業界の中核を担うのが、中小規模事業者ですが、その多くが後継者不足の課題を抱えています。経営者自身も高齢化しており、経営手腕を持った後継者を育成することも困難な状況です。
大都市集中の人口構造による影響
日本における人口構造の変化も建築会社にとって大きな影響を与えています。少子高齢化の進展により、65歳以上の人口が増える一方、生産年齢人口(15歳~64歳)の数は減少し続けている状態です。
特に地盤調査・地盤改良業界における新設住宅着工案件の主な顧客は、生産年齢人口に属する人達です。収入が安定しやすい生産年齢人口が減少することで、新築物件の購入率は低下、結果として新設住宅・建物の需要が減少していくことも予測されます。
また地方では少子高齢化に加え、人口流出と過疎化が進行しており、同時に地盤調査・地盤改良業界の需要も低迷しているのが現状です。地方の地盤調査・地盤改良会社は戸建て受託の注文獲得に苦労する一方、人口が集中する都市部では、マンション建設需要が加速しており、地盤調査・地盤改良会社同士の顧客獲得競争が激化しています。
多重下請け構造
現在の地盤調査・地盤改良会社を含む建設業界は、歴とした大手企業から中小事業者への下請け構造が出来上がっている市場状態です。そのため下請け側の中小事業者には利益があまり残らないという現象が発生しています。
現在の地盤調査・地盤改良会社における顧客集客方法は、大手事業者からの紹介案件であることが多いです。集客側である大手事業者が利益を抜いた後、残った利益で中小規模事業者へ下請け依頼を出すことになるため、中小規模事業者は利益が余り出ません。
また中小規模事業者は低利益率で運営をし続けることになるため、必然的に従業員の給料も薄給になってしまいがちです。結果として人材不足に悩む中小規模事業者が多くなってしまいます。中小規模事業者が高い利益を得るためには、自社で集客から施工完了を完結させる仕組み作りが必要となります。
地盤調査・地盤改良会社におけるM&Aの動向
地盤調査・地盤改良会社におけるM&Aの動向について解説していきます。
M&Aの件数は増加傾向にある
現在、地盤調査・地盤改良業界におけるM&A件数は増加傾向です。下記は2015年から2022年までに発生した地盤調査・地盤改良業界におけるM&Aの事例数になります。
年度 | M&Aの件数 |
2015 | 1 |
2016 | 1 |
2017 | 0 |
2018 | 3 |
2019 | 2 |
2020 | 5 |
2021 | 3 |
2022 | 4 |
2015年から2017年は、地盤調査・地盤改良業界におけるM&Aはほとんど発生していませんでした。しかし2018年以降は安定して大型のM&A取引が発生しています。まだまだM&Aが活性化しているとは言えませんが、今後も更にM&Aの件数は増えていく見込みです。
中小企業同士のM&A
地盤調査・地盤改良業界のM&Aにおいて最も多発しているケースは、地盤調査・地盤改良会社同士の事例です。同業者同士がM&Aによって合併や事業譲渡をするケースが多くあります。
特に多いのが、中小規模の地盤調査・地盤改良会社同士のM&Aによる合併です。資金力が不足し、設備・人材投資が難しい場合には、地盤調査・地盤改良会社同士が合併し、経営基盤強化のための投資を共同で行うケースもあります。
また中小規模事業者同士のM&Aでは、双方の持つ地盤調査・地盤改良会社の運営におけるノウハウを共有することによる、シナジー効果の発揮も狙いです。双方の持つノウハウを共有することで、資金力のある地盤調査・地盤改良会社に対抗することが目的となります。
後継者問題解決のためのM&A
特に中小規模の地盤調査・地盤改良会社で多発しているのが、後継者不在という問題です。実際に後継者不在により事業継続が難しく、別の地盤調査・地盤改良会社にM&Aを依頼するケースも増えてきています。
経営者の周りに後継者候補がいない場合でも、M&Aによる事業承継であれば買い手企業が後継者(新たな経営者)となるため、自社の存続が可能だからです。M&Aをすることで廃業を免れることが出来るため、既存従業員の雇用継続をすることもできます。
また後継者不在によるM&Aにて事業規模が拡大した建築会社も多く存在します。特に地盤調査・地盤改良業界のM&Aでは、M&A後に買い手が持つ地盤調査・地盤改良事業の戦略として取り入れ、売上が伸びたケースも多いです。
地盤調査・地盤改良会社のM&Aにおける成功事例
地盤調査・地盤改良会社のM&Aにおける成功事例を紹介していきます。
応用地質とGeosmart International Pte. Ltd.によるM&A
2022年10月に、応用地質株式会社がシンガポールのGeosmart International Pte. Ltd.の所有する株式を取得し、同社を連結子会社化したM&Aの事例です。本取引における議決権所有権は、60%となっています。
譲り受け企業である「応用地質株式会社」は、建設コンサルタント業、地質調査業などを主軸に、インフラ・メンテナンス、防災、環境、エネルギーなどの各分野に事業を展開している企業です。
一方の譲渡企業である「Geosmart International Pte. Ltd.」はシンガポールに本拠を置き、インフラモニタリングおよびモニタリング機器設置、地盤調査、地盤改良、井戸の腹水処理などのシンガポールの公共事業をメインに据えサービスを提供している企業になります。
本件M&Aは、国内地盤調査・地盤改良会社と海外の地盤調査・地盤改良会社による取引事例です。本取引により、譲り受け企業である応用地質は、設計や施工管理、インフラ点検を行っているシンガポールの子会社との連携を進め、建設市場でのワンストップサービスの提供を目指しています。
Geosmart International Pte. Ltd.の株式の取得(子会社化)に向けた基本合意書締結に関するお知らせ
ライト工業株式会社とFecon Underground Construction Joint Stock CompanyによるM&A
2022年10月に、ライト工業株式会社が、持分法適用関連会社のFecon Underground Construction Joint Stock Company(以下FCU社)による第三者割当増資を引き受け、同社を連結子会社化したM&Aの事例です。
譲り受け企業である「ライト工業株式会社」は、法面保護工事、斜面安定・防災工事、地盤改良工事などを行う、土木関連事業に強い工事会社です。一方の譲渡企業である「FCU社」は、ベトナム・ハノイに本拠を置き、ライト工業が36%出資する地下関連工事会社で、深層混合処理等の地盤改良工事や、トンネル・シールド工事、推進工事を担っています。
本件M&Aは、国内土木関連建設会社と海外地盤改良会社による取引事例です。譲り受け企業であるライト工業は、今後のベトナム事業の成長と拡大を目指しています。
当社持分法適用関連会社である Fecon Underground Construction Joint Stock Company(ベトナム)の第三者割当増資引受(連結子会社化)に関するお知らせ
戸田建設と日新ライフおよび櫻橋商会とのM&A
2020年6月に、戸田建設株式会社が、株式会社日新ライフおよびその子会社である株式会社櫻橋商会の所有する全株式取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本株式は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「戸田建設株式会社」は、建築・土木の一式工事に関する調査から施工までを総合的に手がける準大手ゼネコン企業です。一方の譲渡企業である「株式会社日新ライフ」は、東京都中央区に本社を置く不動産管理会社で、ビルメンテナンス事業や不動産賃貸事業を行っている企業。その子会社の「株式会社櫻橋商会」は、ビルの清掃管理や設備管理などを手がける会社になります。
本件M&Aは、地盤調査も手掛ける大手ゼネコン企業と不動産関連企業による取引事例です。株式取得により、戸田建設は建設からメンテナンスまでをグループ内で一気通貫で提供できる体制を構築し、ビル管理の分野で事業基盤を強化しています。
不動テトラと愛知ベース工業によるM&A
2020年1月に、株式会社不動テトラと愛知ベース工業グループ3社の所有する全株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの取引事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「株式会社不動テトラ」は、土木事業、地盤事業、ブロック事業を主業として行っている企業です。一方の譲渡企業である「愛知ベース工業」は、地盤改良工事、地盤調査などの事業を行っている企業になります。
本件M&Aは、国内地盤調査・地盤改良会社同士の取引事例です。本取引により、不動テトラは、愛知ベース工業グループを迎えることで、技術力や資金面での支援をおこない中小規模の建築構造物基礎の地盤改良工事への参入を加速させることで、不動テトラグループは戸建住宅基礎から大規模土木・建築構造物基礎までの幅広い地盤改良工事を手掛けることが可能となることで、収益基盤の多様化を目指しています。
テノックスと広島組および亀竹産業とのM&A
2020年10月に、株式会社テノックスが株式会社広島組および同社子会社である亀竹産業の所有する全株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「株式会社テノックス」は、コンクリートパイル、鋼管パイルの販売およびその杭打工事の請負および地盤改良工事の請負を行っている企業です。一方の譲渡企業である「株式会社広島組」は、杭工事・地盤改良工事・土留工事を主業を。子会社である「亀竹産業」は、土木建築用機械及び工具の販売、修理、リースを行っている企業になります。
本件M&Aは、地盤調査・地盤改良会社同士による取引事例です。本取引により、テノックスは、グループにおいて杭抜工事への参入や今後インフラ整備等の需要増が見込まれる関西地区での施工体制及び営業力の強化を図り、事業の発展拡大を目指しています。
サムシングと東名によるM&A
2022年2月に、ITbookホールディングス株式会社の連結子会社である株式会社サムシングが、株式会社東名の発行済株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引により、議決権所有割合は約80%となります。
譲り受け企業である「株式会社サムシング」は、ITbookホールディングスの連結子会社で、地盤調査、地盤改良、地盤保証、液状化判定、沈下修正、土壌汚染調査、残土調査、事業子会社の経営管理・企画・財務・新規事業開発などを行っている企業になります。一方の譲渡企業である「株式会社東名」は、主に鉄道関連施工工事(地盤改良工事、土木造成工事、基礎杭工事等)を行っています。
本件M&Aは、ともに国内にて地盤調査・地盤改良事業を手掛ける会社同士の取引事例です。本取引により、サムシングの親会社であるITbookホールディングスは、地盤関連サービスの拡充と事業規模および営業・技術面などの融合による事業機会拡大を図っています。
日本乾溜工業とニチボーによるM&A
2020年8月に、日本乾溜工業株式会社が株式会社ニチボーの発行済全株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「日本乾溜工業株式会社」は、建設事業や防災安全事業、化学品事業を手掛ける企業です。一方の譲渡企業である「株式会社ニチボー」は、地盤改良や地滑り対策、法面保護などの土木工事を手掛けている企業になります。
本件M&Aは、建設関連多角化企業と地盤調査・地盤改良会社による取引事例です。今回のM&Aにより、日本乾溜工業はグループの主力事業である建設、その中でも法面工事において、九州一円のネットワークがあるグループの営業力と2社の技術力が合わさり、受注機会の拡大や更なるシナジー効果創出を目指しています。
株式取得(子会社化)に関する株式譲渡契約書締結に関するお知らせ
ジェコスとオトワコーエイによるM&A
2022年4月に、ジェコス株式会社が株式会社オトワコーエイの所有する全株式を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「ジェコス株式会社」は、建設業界の総合的な支援を重仮設工事の領域から行っている企業です。一方の譲渡企業である「株式会社オトワコーエイ」は、静岡県沼津市を中心に地盤改良、本杭工事などの基礎工事や仮設工事、障害物撤去工事などの施工工事を手掛けています。
本件M&Aは、建設コンサルティング会社と地盤調査・地盤改良会社による取引事例です。本取引により、ジェコスのグループの営業力と、オトワコーエイの特殊環境下における高い施工技術力を組み合わせ、シナジー効果創出を目指しています。
地盤調査・地盤改良会社にてM&Aを行うことのメリット
地盤調査・地盤改良会社がM&Aをするメリットを売却・買収側の双方から解説します。建設会社のM&Aにおける売却・買収のメリットは、以下の通りです。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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地盤調査・地盤改良会社でM&Aの売却を行うことのメリット
地盤調査・地盤改良会社でM&Aによる売却を行うことのメリットは、以下の通りです。
後継者不足の解消
特に中小規模の地盤調査・地盤改良会社における問題として、後継者不足による廃業が挙げられます。後継者不足に悩む地盤調査・地盤改良会社が、M&Aの売却を進めることで後継者不足の解消に繋げることができます。
実際に後継者不足解消のため、中小規模の事業者が大手企業に買収されることで、後継者問題の解消に繋がるケースは多いです。M&Aでは、会社を譲渡することで譲受企業から経営陣を迎え、これまで通り会社を存続させる事ができます。
また大手企業の経営者クラスに位置する優秀な人物が経営者となるため、売却側の事業規模がこれまでより拡大される場合が多いです。後継者不足に悩んでいる企業にとって、M&Aを行うことは廃業を避けるための大きな手段のひとつです。
資金調達・オーナーのEXIT
M&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。
- 残っている借入金の返済に充てる
- オーナー自身の引退後の生活資金とする
- 新規事業における資金源とする
一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。
借入における個人保証の解除
借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。地盤調査・地盤改良会社に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。
特に中小規模の地盤調査・地盤改良会社の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。
M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。
事業の選択と集中
景気悪化を辿る日本では、会社存続のために複数の事業を多角展開する企業も珍しくありません。しかし事業の多角化は一歩間違えれば、赤字を生み出し、廃業の原因とさえなり得ます。
M&Aのスキームの一つである「事業譲渡」を用いることで、不要となった事業やその関連資産だけを選別して売却することが可能です。実際に事業譲渡により、特定の事業のみを他者委に売却する企業は多くあります。
M&Aの事業譲渡によって事業を売却することで、事業の選択と集中が出来れば、経営状態を好転させられるかもしれません。得意分野に資金や人員を集中できるため、成功率も高まるはずです。
地盤調査・地盤改良会社でM&Aの買収を行うことのメリット
地盤調査・地盤改良会社でM&Aによる買収を行うことのメリットは、以下の通りです。
事業拡大のチャンス
M&Aにおいて買収側が得られる大きなメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。M&Aによって買収側の企業は規模やシェアの拡大を狙うことができます。
地盤調査・地盤改良会社のM&Aにおいては、売手となる企業が持つ設備や建物のような有形資産に加え、顧客・取引先情報などの無形資産を手に入れることも可能です。特に地盤調査・地盤調査会社の運営においては、「取引先」「顧客情報」などの無形資産は実績に直結する要素であるため、M&Aによる早期事業拡大も視野に入れることができます。
また地盤調査・地盤改良業界においては、大手企業の市場シェア率が高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小同士のM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を付けることにも繋がります。
新規事業への進出
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに地盤調査・地盤改良業界への早期参入が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
従業員の確保
地盤調査・地盤改良会社は専門職の一種であるため、専門技術を要した職人の確保が必須です。M&Aによって建築業者を買収することで、地盤調査・地盤改良工事のノウハウを持った従業員を確保することができます。
地盤調査・地盤改良会社の運営において特に必要となる人材は、「土木施工管理技士」や「」など「地質調査技師」などの人材です。これらの人材を一から採用するのは非常にハードルが高いですが、M&Aによって国家資格を保有する人材を引き継ぐことができれば、採用コストを削減することもできます。
またM&Aによって人材を引き継ぐことは、地盤調査・地盤改良業界におけるノウハウをそのまま獲得することも意味します。承継される人材が持つノウハウを活かせば、建築会社のビジネスもより優位に進めることが出来るでしょう。
安定した受注確保
現在の地盤調査・地盤改良会社が抱える課題として、安定した受注の確保が困難であるという点が挙げられます。これは特に中小規模の建築会社によくある課題のひとつです。
地盤調査・地盤改良業界においては、大手企業から中小規模事業者への案件紹介が一般的となっています。そのため大手企業からの案件紹介がなければ、案件受注が止まってしまい事業が立ち行かない状態になりかねません。
M&Aによって大手企業の傘下に入る、もしくは吸収合併を受けることで、安定した案件確保が可能です。親会社である大手企業の持つブランド力と資金力を活用できるので、受注は非常に安定したものになることでしょう。
地盤調査・地盤改良会社のM&Aにおける注意点
地盤調査・地盤改良会社のM&Aにおける注意点を解説します。地盤調査・地盤改良会社のM&Aにおいて、注意すべき事項は以下の通りです。
- M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
- 避止義務に関して
- 事業許可や人材の引継ぎ
それぞれ詳しく解説していきます。
M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
M&Aでは、買い手と売り手の情報格差(買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富)があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件(買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう)という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
避止義務に関して
M&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。
M&Aにおける競業避止義務とは、M&Aの成約後に譲渡企業に課される義務です。譲渡した事業に対して、譲渡企業が競合するような事業を再度行い、譲受企業に不利益を与えることを避けることが目的となります。
会社法の規定により、事業譲渡を実施した会社は、競業避止義務を負うことになるので注意が必要です。ただし、買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることはできます。将来的に地盤調査・地盤改良会社を再度手掛ける可能性があれば、買収側と交渉しましょう。
事業許可や人材の引継ぎ
地盤調査・地盤改良会社を運営するうえで重要なのが「建設業許可」です。500万円以上の建築工事案件を請け負うためには、建設業許可の取得が欠かせません。
もし事業譲渡をする際に買収側の企業が建設業許可を有していなければ、500万円以上の建築工事案件を請け負うことは不可能です。ただし、株式譲渡の場合は建設業許可を引き継げるためM&A後も継続して事業を行えます。
許可を取得している同業他社と事業譲渡を実施すれば、地盤調査・地盤改良会社の売却がスムーズに進みます。なお、買い手が許可を持っていれば新しく許可を申請する必要はありませんが、法人の名称など変更にかかわる届出は必要です。
地盤調査・地盤改良会社のM&Aを成功させるためのポイント
地盤調査・地盤改良会社におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。地盤調査・地盤改良会社におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格をよく理解しておく
- 統合後のプロセス確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。
M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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相場価格をよく理解しておく
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
地盤調査・地盤改良会社のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。
また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
統合後のプロセス確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新経営体制の構築
- 経営ビジョン実現のための計画策定
- 両社協業のための体制構築・業務オペレーション
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。
地盤調査・地盤改良会社におけるM&Aのまとめ
今回は地盤調査・地盤改良会社におけるM&Aについて、地盤調査・地盤改良業界の現状や特徴、市場動向やM&A事例を踏まえて解説しました。
地盤調査・地盤改良業界は事業者の数が非常に多いこともあり、M&Aが盛んに実行されている業界です。M&Aによる経営統合によって事業拡大に成功している地盤調査・地盤改良会社も数多く存在することから、地盤調査・地盤改良会社にとってM&Aは有効な経営戦略の一つと言えるでしょう。
しかしM&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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