「熱絶縁工事会社のM&Aにおける動向は?」
「熱絶縁工事会社のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「熱絶縁工事会社 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、熱絶縁工事会社のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
熱絶縁工事会社におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、熱絶縁工事会社のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
熱絶縁工事会社とは
熱絶縁工事会社とは、工作物やその設備を熱から保護する工事を行う建設業の業種です。熱絶縁工事会社には、以下のような特徴があります。
- 冷たいものは冷たいまま、熱いものは熱いままを保つことで、無駄なエネルギー消費を防ぐことができる
- 空調設備の故障や破裂を防ぐことができる
- エネルギーの効率的な利用を促進し、環境への影響を最小限に抑えることができる
日本における建設業の一種である熱絶縁工事会社は、社会にとって重要な役割を担う業種のひとつです。限られたエネルギー資源をより効率よく使用するための高度な技術と知識を必要とします。
熱絶縁工事会社にとって重要なテーマとなるのが、「エネルギー効率の向上」と「環境への配慮」です。「エネルギー」と「環境」のキーワードは、世界で高い注目を集めるワードであるだけに、熱絶縁工事会社の需要は年々高まっています。
熱絶縁工事会社の種類
熱絶縁工事会社と一言に表しても、その業務には様々な種類があります。熱絶縁工事会社の主な種類は、以下の通りです。
- 保温工事
主に0~1,000度以下の配管やダクト、機器などの保温材を取り付ける工事です。
温度変化を減らすことで、結露、凍結、熱吸収を防ぐ目的で行われます。
ガラス繊維が使われたグラスウールなどが使われます。 - 保冷工事
冷凍冷蔵設備の冷媒管や流体配管、超低温設備などに保冷材を取り付ける工事です。
ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム、独立気泡ゴムなどが使用されます。 - 耐火工事
ビルやテナント、一般家屋などの排煙ダクトや厨房排気ダクトなどに、
耐火被覆材を取り付ける工事です。
火災時に排煙ダクトから火災を広げないためや、火災から守るために行われます。
耐火性のあるロックウールなどが使用されます。 - 板金工事
熱絶縁を施したものに板金処理を行う工事です。
保温・保冷性能の維持や耐食性、耐紫外線性のために行われます。
カラー亜鉛鉄板、ガルバリウム鋼鈑、アルミニウム板などが使用されます。 - 防音工事
排水管やコンプレッサー、消音ダクトなどを遮音するために行う工事です。
吸音材を取り付け、さらに遮音材で被覆することで、より防音効果を高められます。
グラスウール、ロックウール、鉛シート、遮音系シートなどが使用されます。 - 断熱工事
配管や機器などに断熱材や板金材を取り付ける工事です。
上記の工事はいずれも「エネルギーの保存と効率的な使用」を目的としたものです。また保冷工事に分類されやすい「冷暖房設備工事」という用語が「管工事」というコンテキストでも使用されることがあるので注意が必要になります。
熱絶縁工事会社に必要な業許可と資格
熱絶縁会社に必要な業許可と資格について解説していきます。
熱絶縁工事会社に必要な業許可
熱絶縁工事会社にとって必須となる資格が「熱絶縁工事業許可(建設業許可)」です。熱絶縁業許可とは、軽微な建設工事以外の熱絶縁工事を請け負う場合に適用され、公共工事か民間工事かを問わず取得する必要があります。また熱絶縁工事業の建設業許可を取得するには、次のような要件を満たすことが必須です。
- 所定の学科(土木工学、建築学、機械工学など)を卒業していること
- 一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(仕上)、熱絶縁施工の技能士のいずれかの資格を保有していること
- 10年以上熱絶縁工事に関わる工事に従事していること
- 「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」を自社内の人材で確保していること
上記4つを満たすことで、熱絶縁工事業許可を取得することができます。また建設業コンサルティング会社のなかには、業許可取得をサポートしてくれる企業も存在するため、M&Aによって熱絶縁工事業界に新規参入するのであれば、コンサル会社にサポートを依頼することも手段のひとつです。
熱絶縁工事会社に必要な資格
熱絶縁工事会社の運営においては、「熱絶縁工事業許可(建設業許可)」の取得と併せて、「熱絶縁施工技能士」と「建築施工管理技士」の資格保有が必須です。熱絶縁施工技能士と建築施工管理技士の概要は、それぞれ以下の通りになります。
- 熱絶縁施工技能士
ビルやマンション、工場などの建物に断熱工事を施すために必要な知識や技術を認定する国家資格。資格には「保温保冷工事作業」と「硬質ウレタンフォーム断熱工事作業」があり、それぞれ1級と2級がある。資格を所有することで、一人親方として携わったり、キャリアアップシステムに表記されたりすることができ、仕事を受注できる可能性がある。 - 建築施工管理技士
建築現場で必要となる施工管理技士の国家資格。仮設工事や基礎工事から大工工事や左官工事といった、建築工事全般に関する知識や技術が必要。工事を発注した依頼主との打ち合わせや、設計者との打合せ、建設現場に出入りする職人の監督、指導が主な仕事内容となる。
一般的には上記2つの国家資格を保有することで、熱絶縁工事会社の運営は可能です。ただし熱絶縁工事の種類によって必須となる国家資格は異なるため、事業内容に見合った資格の取得が必要となります。
熱絶縁工事会社の市場動向
熱絶縁工事会社の市場動向について解説していきます。
需要は増加傾向にある
熱絶縁工事会社は、社会的な背景も伴い、現在需要が増加傾向にある状態です。熱絶縁工事会社の需要が増加傾向にある理由には、以下のような要因が考えられます。
- 高層ビル・ホテル・病院など大型施設の増加
- 既存建築物の老朽化に伴う改修やリノベーションの増加
- 化学工場・発電所・製造施設などでの機器劣化や故障を防ぐ
- 環境配慮に対する世界規模での関心の高まり
熱絶縁工事業は、建築業・製造業・化学関連業など様々な業界において需要がある事業です。そのため、今後も経済成長を目指す日本においては欠かせない存在となっています。
また世界的に地球環境への配慮に対する関心が高まっていることも、熱絶縁工事会社の需要を高めている大きな要因です。今後は行政からの業界に対するバックアップも期待されており、更なる市場規模拡大も予測されています。
テクノロジーによる生産性の向上
現在の熱絶縁工事業界では、生産性向上を目的としたテクノロジー化が進んでいるのが特徴です。ITを中心とした最新技術の導入により、人材不足解消や労働環境改善といった建設業界が抱える課題への解決が期待されています。
一例として挙げられるのが、建築関連大手の「清水建設株式会社」による次世代生産システム「Shimiz Smart Site」の構築です。本システムでは、作業を調整する水平スライドクレーンや、溶接トーチを操るロボット、建材を施工する多機能ロボットなどが実装されています。これにより、70〜75%の省人化に成功しており、大幅な生産性向上が期待される取り組みです。
他にも「3Dプリンタ導入」「点検や測量におけるドローン活用」など、様々な最新テクノロジーの導入が進んでいます。これからを生きる熱絶縁工事会社にとって、テクノロジーの導入は欠かせない要素のひとつです。
社会的存在価値の向上
現代における熱絶縁工事会社は、社会的に見ても非常に価値の高い業種であると言えます。特に「持続可能な社会への貢献」という点においては、非常に重要なポジションにあると言えるでしょう。
熱絶縁工事は、持続可能な社会への貢献ができる仕事です。断熱性の向上やエネルギー効率の改善により、建物の環境負荷を軽減し、地球温暖化対策に寄与します。熱絶縁工事の専門知識と技術を活かし、持続可能な社会の実現に向けて積極的な役割を果たすことが魅力です。
熱絶縁工事会社におけるノウハウや技術が高度化されていくほどに、持続可能な社会への貢献度は高まっていくでしょう。今後の熱絶縁工事会社は、社会的な存在意義を検討したうえで運営していくことが必須となります。
熱絶縁工事会社が抱える課題
熱絶縁工事会社が抱える課題について解説していきます。
多重下請け構造
現在の熱絶縁工事業界は、大手企業から中小事業者への下請け構造が出来上がっている市場状態です。そのため下請け側の中小事業者には利益があまり残らないという現象が発生しています。
現在の熱絶縁工事会社における顧客集客方法は、依頼を受けた業者がさらに別の業者に依頼をかけるケースであることが多いです。集客側である大手事業者が利益を抜いた後、残った利益で中小規模事業者へ下請け依頼を出すことになるため、中小規模事業者は利益が余り出ません。
また中小規模事業者は低利益率で運営をし続けることになるため、必然的に従業員の給料も薄給になってしまいがちです。結果として人材不足に悩む中小規模事業者が多くなってしまいます。中小規模事業者が高い利益を得るためには、自社で受注から施工完了を完結させる仕組み作りが必要となります。
慢性的な人手不足と後継者不在
熱絶縁工事会社が抱える最大の課題のひとつとして、人材・後継者不足があります。これは熱絶縁工事会社会社を含む、建設業界全体が抱える最大の課題のひとつです。
熱絶縁工事会社が人材不足にある理由のひとつが、「職業イメージ」にあるとされています。熱絶縁工事会社での仕事は、建設現場での施工作業がクローズアップされやすいため、肉体労働を避ける傾向にある現代人にとっては積極的な就職先候補とはなり得ないのです。
また熱絶縁工事業界の中核を担うのが、中小規模事業者ですが、その多くが後継者不足の課題を抱えています。経営者自身も高齢化しており、経営手腕を持った後継者を育成することも困難な状況です。
市場競争の激化
熱絶縁工事業界は市場成長率が高く、かつ社会的な存在価値も大きい業種のひとつです。そのため、不景気と呼ばれる現代の日本においても成長が期待されている希少な業種のひとつといえます。
しかし市場成長率が高いということは、市場競争が高いということでもあるのです。実際にM&Aを通して熱絶縁工事業界に新規参入を果たす企業は増加しており、なかには高い資金力を持つ大手企業がM&Aを通じて熱絶縁工事業界に新規参入を果たした事例も見受けられます。
また前述した通り、熱絶縁工事会社の多くは人材不足に悩んでいる状況です。そのため、増加する依頼に対して、人的リソースから十分な価値を提供出来ないケースもあります。成長産業であるがゆえに、市場競争が激化し、より市場で生き残ることは難しくなっていくことでしょう。
熱絶縁工事会社におけるM&Aの動向
熱絶縁工事会社におけるM&Aの動向について解説していきます。
M&Aの活動は激化
現在の熱絶縁工事業界は、社会的な背景も伴い、市場規模は拡大が予測されています。同時に熱絶縁工事業界におけるM&Aの活動は激化している状況です。熱絶縁工事業界でM&Aの活動が激化している理由には、以下の要因が挙げられます。
- 成長市場における新規参入
- 規模の拡大
- 新しいノウハウと技術的能力の獲得
- マーケットの調査とノウハウの蓄積
今後はM&Aの活性化により、さらに熱絶縁工事業界のマーケットは拡大していく予測です。M&Aの活性は、業界の健康な成長と持続可能性を促進し、熱絶縁工事業界に好影響を与えることでしょう。
大手建設関連会社からの参入
近年の熱絶縁工事業界では、M&Aが非常に盛んです。熱絶縁工事業界でM&Aが活性化している理由のひとつに、大手建設会社の積極参入があります。
大手建設工事会社が積極的に熱絶縁工事業界に参入している最たる理由は、新たな収益源の確保が狙いです。これまでの建設工事業に熱絶縁工事業を組み合わせることで、新たな収益源の確保を目的としています。
また大手建設工事会社は、地方部の中小熱絶縁工事会社の買収に対し特に積極的です。人手不足や後継者不在に悩む地方の中小規模の熱絶縁工事会社を買収することで、規模の拡大を図っています。
中小企業同士のM&A
熱絶縁工事業界のM&Aにおいて最も多発しているケースは、熱絶縁工事会社同士の事例です。同業者同士がM&Aによって合併や事業譲渡をするケースが多くあります。
特に多いのが、中小規模の熱絶縁工事会社同士のM&Aによる合併です。資金力が不足し、設備・人材投資が難しい場合には、熱絶縁工事会社同士が合併し、経営基盤強化のための投資を共同で行うケースもあります。
また中小規模事業者同士のM&Aでは、双方の持つ浚渫工事業におけるノウハウを共有することによる、シナジー効果の発揮も狙いです。双方の持つノウハウを共有することで、資金力のある熱絶縁工事会社に対抗することが目的となります。
熱絶縁工事会社のM&Aにおける成功事例
熱絶縁工事会社のM&Aにおける成功じれいを解説していきます。
中電工とホライズン1によるM&A
2019年12月に株式会社中電工がホライズン1株式会社の全株式を取得し、ホライズン1の子会社である株式会社昭和コーポレーションを孫会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「株式会社中電工」は、電気・空調・給排水設備をはじめ、情報通信・環境分野などさまざまな快適設備を提供する、総合設備エンジニアリング企業です。一方の譲渡企業である「昭和コーポレーション株式会社」は、建築設備・公害対策・電力などの設備の熱絶縁工事等の設計・施工・管理と断熱配管支持金具等の製造・販売などの事業を展開している企業になります。
本件M&Aは、総合設備エンジニアリング企業と熱絶縁工事会社による取引事例です。本取引により、譲り受け企業である中電工は、昭和コーポレーションをグループに加わることで営業基盤の拡充に取り組んでいる各都市圏での工事施工や営業活動における連携・補完が可能となり、グループの更なる発展を目指しています。
参考:ホライズン1株式会社の株式取得(子会社化)および孫会社の異動に関するお知らせ
株式会社ダイサンによるMiradorグループのM&A
2019年4月に、株式会社ダイサンがシンガポールに拠点を置くMiradorグループの株式を取得し、子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「株式会社ダイサン」は、建設現場において最上級のサービスを提供することを目指し、新しい市場への挑戦を含む中期経営計画を進行中です。特に、海外市場とインフラメンテナンス市場への進出を重点戦略としています。
一方の譲渡企業である「Miradorグループ」は、主にシンガポールでプラントメンテナンスを対象とした足場工事や熱絶縁工事、電気設備工事などの付帯工事を行っている企業です。顧客満足度100%を目標に掲げ、高い安全性と品質の提供を使命としています。
本件M&Aの主な目的は、新たな市場への展開と、安全文化及び足場文化の国際的な展開を通じて、双方の企業価値を高めるシナジー効果を期待することとしています。株式会社ダイサンは、Miradorグループの持つ技術力と国際的な経験を生かして、より広い市場での成長を目指しています。
参考:Mirador グループの株式取得(子会社化)に関するお知らせ
スパイダープラスとArmacell JapanによるM&A
2021年11月に、スパイダープラス株式会社がArmacell Japan株式会社に自社の所有するエンジニアリング事業を譲渡することを決定した取引事例です。本取引は、事業譲渡のスキームが用いられましたが、取引価額は公開されていません。
譲り受け企業である「Armacell Japan株式会社」は、ルクセンブルクに本拠を置く最先端の弾性発泡断熱材とエンジニア発泡材の2つの主流製品を製造、販売、サポートしているArmacell Inter national S.A.グループの日本法人で、断熱材料・建築材料の販売などの事業を展開している企業です。
一方の譲渡企業である「スパイダープラス株式会社」は、建設業およびメンテナンス業の現場業務をDXする建築図面・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」の開発・販売を主力サービスとするICT事業、断熱材「アーマフレックス」などを使用した熱絶縁工事を中心に行うエンジニアリング事業を行っている企業になります。
本件M&Aは、熱絶縁工事会社とICT関連事業者による取引事例です。本件により、スパイダープラスは、今後高い成長率が見込まれるICT事業に経営資源をより一層集中し、「SPIDERPLUS」を中心とした建設業およびメンテナンス業のDXサービスの拡大に注力することから、中長期的な企業価値向上を目指しています。
参考:事業譲渡に関するお知らせ
熱絶縁工事会社にてM&Aを行うことのメリット
熱絶縁工事会社にてM&Aを行うことのメリットについて解説していきます。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
|
|
熱絶縁工事会社でM&Aの売却を行うことのメリット
熱絶縁工事会社でM&Aによる売却を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 資金調達・オーナーのEXIT
- 事業の選択と集中
- 借入における個人保証の解除
- 後継者不足の解消
それぞれ詳しく解説していきます。
資金調達・オーナーのEXIT
M&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。
- 残っている借入金の返済に充てる
- オーナー自身の引退後の生活資金とする
- 新規事業における資金源とする
一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。
事業の選択と集中
景気悪化を辿る日本では、会社存続のために複数の事業を多角展開する企業も珍しくありません。しかし事業の多角化は一歩間違えれば、赤字を生み出し、廃業の原因とさえなり得ます。
M&Aのスキームの一つである「事業譲渡」を用いることで、不要となった事業やその関連資産だけを選別して売却することが可能です。実際に事業譲渡により、特定の事業のみを他者に売却する企業は多くあります。
M&Aの事業譲渡によって事業を売却することで、事業の選択と集中が出来れば、経営状態を好転させられるかもしれません。得意分野に資金や人員を集中できるため、成功率も高まるはずです。
借入における個人保証の解除
借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。熱絶縁工事会社に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。
特に中小規模の熱絶縁工事会社の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。
M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。
後継者不足の解消
特に中小規模の熱絶縁工事会社における問題として、後継者不足による廃業が挙げられます。後継者不足に悩む熱絶縁工事会社が、M&Aの売却を進めることで後継者不足の解消に繋げることができます。
実際に中小規模の事業者が大手企業に買収されることで、後継者問題の解消に繋がるケースは多いです。M&Aでは、会社を譲渡することで譲受企業から経営陣を迎え、これまで通り会社を存続させる事ができます。
また大手企業の経営者クラスに位置する優秀な人物が経営者となるため、売却側の事業規模がこれまでより拡大される場合が多いです。後継者不足に悩んでいる企業にとって、M&Aを行うことは廃業を避けるための大きな手段のひとつです。
熱絶縁工事会社でM&Aの買収を行うことのメリット
熱絶縁工事会社でM&Aによる買収を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 事業拡大のチャンス
- 新規事業への進出
- 安定した受注確保
- 従業員の確保
それぞれ詳しく解説していきます。
事業拡大のチャンス
M&Aにおいて買収側が得られる大きなメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。M&Aによって買収側の企業は規模やシェアの拡大を狙うことができます。
熱絶縁工事会社のM&Aにおいては、売手となる企業が持つ設備や建物のような有形資産に加え、顧客・取引先情報などの無形資産を手に入れることも可能です。特に熱絶縁工事会社の運営においては、「取引先」「顧客情報」などの無形資産は実績に直結する要素であるため、M&Aによる早期事業拡大も視野に入れることができます。
また熱絶縁工事業界においては、大手企業の市場シェア率が高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小同士のM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を付けることにも繋がります。
新規事業への進出
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに建築業界への早期参入が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
安定した受注確保
現在の熱絶縁工事会社が抱える課題として、安定した受注の確保が困難であるという点が挙げられます。これは特に中小規模の熱絶縁工事会社によくある課題のひとつです。
熱絶縁工事業界においては、大手企業から中小規模事業者への案件紹介が一般的となっています。そのため大手企業からの案件紹介がなければ、案件受注が止まってしまい事業が立ち行かない状態になりかねません。
M&Aによって大手企業の傘下に入る、もしくは吸収合併を受けることで、安定した案件確保が可能です。親会社である大手企業の持つブランド力と資金力を活用できるので、受注は非常に安定したものになることでしょう。
従業員の確保
熱絶縁工事会社は専門職の一種であるため、専門技術を要した職人の確保が必須です。M&Aによって熱絶縁工事会社を買収することで、熱絶縁工事のノウハウを持った従業員を確保することができます。
熱絶縁工事会社の運営において特に必要となる人材は、「熱絶縁施工技能士」や「建築施工管理技士」などの人材です。これらの人材を一から採用するのは非常にハードルが高いですが、M&Aによって国家資格を保有する人材を引き継ぐことができれば、採用コストを削減することもできます。
またM&Aによって人材を引き継ぐことは、熱絶縁工事業界におけるノウハウをそのまま獲得することも意味します。承継される人材が持つノウハウを活かせば、熱絶縁工事会社のビジネスもより優位に進めることが出来るでしょう。
熱絶縁工事会社のM&Aにおける注意点
熱絶縁工事会社のM&Aにおける注意点を解説します。熱絶縁工事会社のM&Aにおいて、注意すべき事項は以下の通りです。
- M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
- 避止義務に関して
- 事業許可や人材の引継ぎ
それぞれ解説していきます。
M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
M&Aでは、買い手と売り手の情報格差(買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富)があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件(買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう)という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
避止義務に関して
M&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。
M&Aにおける競業避止義務とは、M&Aの成約後に譲渡企業に課される義務です。譲渡した事業に対して、譲渡企業が競合するような事業を再度行い、譲受企業に不利益を与えることを避けることが目的となります。
会社法の規定により、事業譲渡を実施した会社は、競業避止義務を負うことになるので注意が必要です。ただし、買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることはできます。将来的に熱絶縁工事会社を再度手掛ける可能性があれば、買収側と交渉しましょう。
事業許可や人材の引継ぎ
熱絶縁工事会社を運営するうえで重要なのが「建設業許可(熱絶縁工事業許可)」です。500万円以上の熱絶縁工事案件を請け負うためには、建設業許可の取得が欠かせません。
もし事業譲渡をする際に買収側の企業が建設業許可を有していなければ、500万円以上の熱絶縁工事案件を請け負うことは不可能です。ただし、株式譲渡の場合は建設業許可を引き継げるためM&A後も継続して事業を行えます。
許可を取得している同業他社と事業譲渡を実施すれば、熱絶縁工事会社の売却がスムーズに進みます。なお、買い手が許可を持っていれば新しく許可を申請する必要はありませんが、法人の名称など変更にかかわる届出は必要です。
熱絶縁工事会社のM&Aを成功させるためのポイント
熱絶縁工事会社におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。熱絶縁工事会社におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格をよく理解しておく
- 統合後のプロセス確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。
M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
無料相談のご予約:
https://sfs-inc.jp/ma/contact
相場価格をよく理解しておく
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
熱絶縁工事会社のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。
また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
統合後のプロセス確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新経営体制の構築
- 経営ビジョン実現のための計画策定
- 両社協業のための体制構築・業務オペレーション
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。
熱絶縁工事会社におけるM&Aのまとめ
今回は熱絶縁工事会社におけるM&Aについて、熱絶縁工事業界の現状や特徴、市場動向やM&A事例を踏まえて解説しました。
熱絶縁工事業界は事業者の数が非常に多いこともあり、M&Aが盛んに実行されている業界です。M&Aによる経営統合によって事業拡大に成功している熱絶縁工事会社も数多く存在することから、熱絶縁工事会社にとってM&Aは有効な経営戦略の一つと言えるでしょう。
しかしM&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
無料相談のご予約:
https://sfs-inc.jp/ma/contact