「食品会社のM&Aにおける動向は?」
「食品会社のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「食品会社 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、食品会社のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
食品会社におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、食品会社のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
食品会社とは
食品会社とは、主に原料会社から原材料を仕入れ、食品を開発・製造・流通させ、法人や消費者へ届ける会社のことです。加工食品、飲料、調味料、清涼飲料水、アルコール類など、さまざまな食品を製造および販売しています。
食品会社のビジネスモデル
食品会社のビジネスモデルについて解説していきます。
食品メーカー
主に「食品会社」と表現されるのは、食品メーカーに該当することが多いです。食品メーカーは、第一次産業会社から商社を介して原材料を仕入れ、食品を製造することでユーザーに届けるビジネスモデルになります。
食品メーカーは、自社工場を持ち食品の生産・加工を行うため、比較的規模の大きい企業が多いです。食品を生産するうえでは厳しい審査をクリアしなければなりません。製造する食品によって事業許可の取得が必須であり、「食肉製品製造業」「乳製品製造業」「菓子製造業」など個々に事業許可取得が必須です。
また近年では中小規模の食品メーカーが大規模の食品メーカーに買収されるケースも増えてきました。資金不足・後継者不在等に悩む中小規模の食品メーカーが、大手企業の傘下に入るケースは多いです。
第一産業
第一次産業とは、農業・林業・漁業など食生活だけでなく、森林の保護や木材の提供までを担う産業の総称です。食品業界では、原材料を食品メーカーに提供する会社を第一次産業会社と分類します。
原材料を提供する第一次産業会社は、食品会社にとって欠かせない存在です。しかし第一次産業会社は少子高齢化のあおりを受け、深刻な人手不足と後継者不在に陥っていることが大きな課題となっています。
また第一次産業会社は、一般的に商社と取引を行うことが一般的でしたが、近年では商社を介さず直接的に食品会社(食品メーカー)と取引を行う会社も多いです。特に大手食品会社と直接取引を行う第一次産業会社は増加傾向にあります。
商社
食品業界における「商社」とは、第一次産業会社と食品会社(食品メーカー)を仲介している会社のことです。特に海外から原材料を仕入れる場合には、ほとんどが商社を通じて国内食品メーカーに原材料を供給しています。
これまで食品メーカーは商社を介して原材料を仕入れることが一般的でした。しかし近年は価格を抑えるため商社を介さずに原材料を直接仕入れたり小売店への卸までを担当したりといった食品メーカーも増えていることが課題です。
食品メーカーと小売業者との直接取引により、業績が悪化しつつある食品関連商社は、次の一手として海外旬出の動きも見せています。将来の人口減少によって国内需要が縮小するため、今後、経済成長が期待され、人口が増加する東南アジアなどに進出する動きがさらに進行する予測です。
食品会社に必要な業許可・資格・人材
食品会社に必要な業許可・資格・人材について解説していきます。
食品会社に必要な業許可
食品会社において食品の製造・加工を行うためには、製造・加工を行う食品の種類に応じた業許可の取得が必須です。業許可取得の対象は、以下のものがあります。
- 菓子製造業
- アイスクリーム類製造業
- 乳製品製造業
- 清涼飲料水製造業
- 食肉製品製造業
- 水産製品製造業
- 氷雪製造業
- 液卵製造業
- 食用油脂製造業
- みそ又はしょうゆ製造業
- 酒類製造業
- 豆腐製造業
- 納豆製造業
- 麺類製造業
- そうざい製造業(そうざい半製品を含む)
- 複合型そうざい製造業
- 冷凍食品製造業
- 複合型冷凍食品製造業
- 漬物製造業
- 密封包装食品製造業
- 食品の小分け業
- 添加物製造業
上記のように食品会社に必要な業許可は細かく分類されており、複数種類の食品製造に携わる場合には、該当の業許可を複数取得することが必須です。ただし「スナック菓子」や「カップ麺」など、常温で長期保存ができ、かつ食品衛生上問題がない食品の場合には業許可の取得が免除されるケースもあります。
食品会社に必要な資格
食品会社の主な業務は、食品の製造・加工です。食品の製造・加工を行ううえで必須となる資格がいくつかあります。また取得義務がない資格であっても、食品会社において重宝される資格が存在します。食品会社において必要な資格は以下の通りです。
- 衛生管理者
労働安全衛生法に基づく国家資格で、食品工場を含むあらゆる事業場での衛生管理に不可欠。主な仕事は、労働災害の予防、労働者の健康管理、衛生教育の実施、および衛生委員会の運営となる。また、常時50人以上の労働者を雇用する事業所では、衛生管理者を一定数選任することが義務付けられている。 - 食品衛生責任者
国家資格の一つで、飲食店、スーパー、コンビニや、食品工場では、少なくとも一人を配置することが法律で義務付けられている。安全な食品の提供を目指し、食品の製造、加工、調理、販売における衛生管理を適切に行うことが役割。設備の衛生状態のチェック、従業員の健康管理、手洗いや清掃の徹底、衛生管理表の作成と管理、食材の保管方法や加熱処理の確認などが含まれる。 - 食品衛生管理者
食品衛生法に基づき、食品の「製造・加工施設」に配置が必要な国家資格。食肉、乳、魚などを別のものへ加工する工場に必要。また事業所ごとに食品衛生管理者を設置する必要がある。
上記の他にも「製菓衛生師」や「菓子製造技能士」などの資格があります。また工場業においては「電気工事士」などの国家資格所有者が重宝される場合が多いです。
食品会社に必要な人材
食品会社の主な業務は、食品の製造・加工業を行うことです。そのため一般的に食品製造業において必要となる以下の人材の雇用が求められています。
- 生産ライン工場員:生産ラインに入り工場内業務を遂行するための人材
- 衛生管理者・食品衛生責任者・食品衛生管理者:食品の加工・製造において必須
- 開発・研究員:自社製造品の開発・研究を担う
- 営業員:自社で製造した食品の営業活動を行う
食品会社においては、他業務種を含む一般的な「製造業者」が必要とする職種を雇用することが必須です。工場員や開発・研究員だけでなく新規顧客を獲得するための営業員なども必要となります。
食品会社の市場動向
食品会社の市場動向について解説していきます。
市場の成長は鈍化傾向
上記は農林水産省による「令和3年度食品産業動態調査」の調査結果です。本調査によれば、食品製造業全体の生産額は近年増加傾向にありましたが、2018年頃から減少傾向に転じています。
また2020年に発生した「新型コロナウィルス」の巣ごもりによる外食産業の低迷を受け、食品会社の市場規模も減少しました。ただし食品製造業のうち飲料・酒類を除いた加工型製造業では、2018年以降も生産指数がほぼ横ばいの状態です。
これからの日本は少子高齢化による人口減少が進むことが予測されており、これに伴って食品需要全体も縮小されていく見通しがあります。既に食品の分野においては影響が表れはじめている状態です。
新しいニーズの発生
食品関連業界は少子高齢化の影響を受け、市場規模の成長は鈍化している状況です。しかし一方で、少子高齢化委による健康意識の高まりのあおりを受け、「健康食品」を中心とした新しいニーズが発生しています。
新しいニーズの発生を受け、食品会社各社は新商品の開発に加え、販売中の商品のブラッシュアップなども積極的に行われています。市場規模全体は成長鈍化傾向にあるものの、健康食品を中心とした新ジャンルでは市場成長が期待されるでしょう。
また今後需要が拡大されると予測されるジャンルへの新規参入を果たす企業が増えていくことも予測されています。近年では健康食品と同様に付加価値を持つ食品が好まれており、高品質・高い安全性にフォーカスした商品の需要増加が予測されます。
海外市場への新規参入
日本の食品市場の成長が鈍化していることもあり、大手食品会社を中心に海外市場への積極参入が加速しています。海外では年々日本食ブームが高まっていることも、国内の食品会社が海外市場に目を向ける要因のひとつです。
また2020年に開催された東京オリンピックでは、多くの外国人が日本の食文化に触れる機会となりました。諸外国からの注目を集めたことにより、海外での日本食需要は今後さらに高まる予測です。
既に大手食品会社は海外市場への参入を果たしており、海外に自社工業を設置している企業も多く存在します。今後は日本の食品会社と海外食品会社とのM&Aも加速していくことが予測されています。
食品会社が抱える課題
食品会社が抱える課題について解説していきます。
原材料の高騰
以前より日本は海外諸国と比べ物価が上がりにくいと言われてきました。しかし近年では食品関連の価格高騰が続いています。食品の価格が高騰している最たる理由は、食品製造に使用する原材料の高騰が発端です。
帝国データバンクの「食品主要195社 価格改定動向調査」によれば、2023年10月の値上品目数は3万1,000品目を超えており、平均値上げ率は15%となる見込みです。前年の2022年が2万5,768品目で平均値上げ率が14%であったことからも、値上げされた食品が大幅に増えたことが伺えます。
原材料の高騰による食品価格の値上げは、消費者の購買行動にも変化を及ぼしており、低価格帯商品やプライベートブランドの需要が高まっている状態です。高単価食品の需要が低迷することにより、薄利市場になることが懸念視されています。
慢性的な人手不足
食品会社のみならず多くの国内企業が抱える課題のひとつが、慢性的な人手不足です。少子高齢化により労働人口が減少し、人手不足が深刻な問題となっています。特に食品業界は人手不足が深刻な業界のひとつです。
「富士電機株式会社」が行った調査によれば、人手不足を感じる食品製造企業は75%を超えています。さらに食品製造業界のみならず、飲食店においても人手不足が深刻であり、特に非正規雇用の人手不足が顕著な状況です。
食品業界が慢性的な人手不足に陥っている理由のひとつは、アルバイトなどの非正規雇用が多いことが挙げられます。非正規雇用者は短期間で離職するケースも多く、採用した人材が企業に根付かない点が課題です。加えて、賃金が比較的低く廃業率が高い傾向のため、業界を避ける求職者も多いと考えられます。
安全性担保のための規制強化
食品会社が製造・加工する食品は、出荷後に人々の口に運ばれる商品です。人々が口にするものを取り扱っていることから、品質などに対して厳しい基準が設けられるなど、より高い安全性が求められています。
安全性担保のための規制が強化されている最たる理由のひとつは、これまで発生してきた「異物混入」や「産地偽装」などが要因のひとつです。消費者からの信頼性が低下したことから、行政側も信頼性回復のための安全性に対する規制を強化することになりました。
これからは更に食品に対する規制は強化されていく見通しです。食品会社は高い安全性を担保するために多くの企業努力を求められています。生産から販売にいたるまでのプロセスを一元的に管理する仕組みづくりなどが必要となるでしょう。
食品会社におけるM&Aの動向
食品会社におけるM&Aの動向について解説していきます。
大手企業による中小企業の買収
食品業界のM&Aで多いのが、大手食品会社による中小規模食品会社の買収です。食品会社が中小規模の食品会社を買収することで、勢力の拡大を狙っています。
大手企業と中小企業のM&Aでは、大手食品会社が中小規模の食品会社が持つ人材・ノウハウ・顧客などを獲得することが目的です。中小規模の食品会社を買収すれば、一度のM&Aで複数のメリットを獲得することが出来るので、効率よく規模の拡大を図ることができます。
また近年では大手企業による中小企業の買収だけでなく、中小規模の食品会社同士が合併するケースも多いです。勢力を拡大する大手食品会社に対し、中小企業同士が合併することで競争力を高めることを狙いとしています。
後継者問題解決のためのM&A
食品会社のM&Aで多いのが、後継者問題解消を目的とした取引事例です。次代の後継者がいない食品会社を別の食品会社もしくは、異業種企業が買収するケースになります。
食品会社のなかでも、特に後継者不足に悩んでいるのが中小規模の食品会社です。なかには、食品会社としての業績は好調であるにも関わらず、後継者がいないことにより、事業撤退においこまれる中小規模の食品会社は多いです。
また後継者不在によるM&Aにて事業規模が拡大した食品会社も多く存在します。特に食品業界のM&Aでは、M&A後に買い手が持つ食品製造事業の戦略として取り入れ、売上が伸びたケースも多いです。
異業種企業とのM&A
近年における食品会社のM&A事例では、異業種への新規参入を目的とした事例も多いです。食品会社の新規参入が目立つ業種には以下のものがあります。
- 卸売会社
- スーパーマーケット
- 不動産・物流会社
- EC・DXソリューション関連会社
- 医療・健康関連会社
既に食品業界に属している卸売会社やスーパーマーケットをはじめとした食品小売会社が食品製造会社を買収する事例は多いです。また健康関連会社などは、健康食品の需要増加に伴い食品会社を買収するケースも増えています。
食品会社が異業種会社とのM&Aを有効活用することで、新規事業参入による規模の拡大を図ることが可能です。食品製造業への投資資金を稼ぐことを目的として、異業種とのM&Aを図る食品会社もあります。
食品会社のM&Aにおける成功事例
食品会社のM&Aにおける成功事例を紹介していきます。
エバラ食品工業子会社とヤマキンによるM&A
2022年5月に、エバラ食品工業の子会社であるエバラビジネス・マネジメントがヤマキンの所有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「エバラビジネス・マネジメント」は、食品業界大手であるエバラ食品工業の子会社で、国内外グループ会社の経営戦略立案・経営管理などを担う中間持株会社です。一方の譲渡企業である「ヤマキン」は、小袋製品を中心に液体調味料などを製造している会社になります。
本件M&Aは、ともに調味料製造業を手掛ける食品会社同士の取引事例です。譲り受け企業であるエバラ食品工業は、高齢化・世帯人数減少などを背景に今後需要拡大が見込まれる小容量製品の製造・供給体制強化を図っています。
当社子会社によるヤマキン株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
サントリーホールディングスとダイナックホールディングスによるM&A
2021年6月に、サントリーホールディングスがダイナックホールディングスをTOBやその後の手続きを経て、完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は、株式公開買付け(TOB)の手法が用いられ、取得価額は約29億円となっています。
譲り受け企業である「サントリーホールディングス」は、飲料・食品・酒類事業、兼職食品・外食事業などを手掛ける大手グループ会社です。一方の譲渡企業である「ダイナックホールディングス」は、「パパミラノ」など、全国で235店舗のレストランを運営する会社になります。
本取引は、大手持株会社とレストラン運営会社による取引事例です。本取引により譲り受け企業であるサントリーホールディングスは、グループ全体における意思決定の迅速化、経営資源・ノウハウの相互活用を通じた協業体制の強化を目指しています。
支配株主であるサントリーホールディングス株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ
スターゼンと大商金山牧場によるM&A
2022年4月に、スターゼンが大商金山牧場の所有する株式のうち34.0%を取得し、両者間で資本業務提携を結んだM&Aの事例です。本取引は資本業務提携のスキームが用いられましたが、譲渡金額は公開されていません。
譲り受け企業である「スターゼン」は、牛肉・豚肉の国内調達・輸出入、食肉処理・加工、食肉加工品製造などの事業を展開している企業です。一方の譲渡企業である「大商金山牧場」は、東北地方において豚の生産飼育、豚肉カット・部分肉製造・アウトパック、食肉加工食品製造・卸売などの事業を行っています。
本件M&Aは、食肉調理加工会社と食肉生産加工会社による取引事例です。同業者同士が業務提携を行うことにより、食肉加工品などの相互供給や拠点・機能・人的資源の相互補完を可能としました。
日清製粉と熊本製粉によるM&A
2022年6月に、日清製粉が熊本製粉の保有する株式のうち85%を取得し、同社を子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「日清製粉」は、日清製粉の中核グループ会社であり、小麦粉製造を初めとした製粉事業を手掛ける企業です。一方の譲渡企業である「熊本製粉」は、熊本市に本社を置き、九州地方を主なマーケットとして小麦粉・そば粉・米粉の製造や加工食品製造などの事業を展開しています。
本件M&Aは、ともに製粉事業を手掛ける食品会社同士の取引事例です。譲渡企業である熊本製粉は独自技術や得意分野(小麦粉に加え、米粉・そば粉・焙煎粉など)を活かし、譲り受け企業グループの一員としてシナジー効果を発揮しながら、持続的な成長と企業価値向上を図っています。
日清製粉株式会社による熊本製粉株式会社の株式取得に関するお知らせ
日清食品ホールディングスとDAIZによるM&A
2022年1月に、日清食品ホールディングスがDAIZに出資し、同社と資本業務提携を開始した取引事例です。本取引は資本業務提携のスキームが用いられましたが、増資金額は公開されていません。
譲り受け企業である「日清食品ホールディングス」は、即席麺、チルド食品、冷凍食品、菓子・シリアル食品、乳製品・清涼飲料・チルドデザートなどの製造販売事業を展開する企業グループの持株会社です。一方の譲渡企業である「DAIZ」は、独自技術による次世代型商品「ミラクルミート」を開発・製造し、大手のハンバーガーチェンやスーパー、飲食店などに提供している会社になります。
本件M&Aは、国内大手食品会社とフードテック企業による取引事例です。本取引により、譲り受け企業である日清ホールディングスは、サステイナブルかつ味わい・栄養バランスにも優れた植物性タンパク質食材の共同開発を推進させています。
植物肉「ミラクルミート」のDAIZと日清食品ホールディングスが資本提携 “新たな食の創造”と“環境問題の解決”を目指し、共同開発等に取り組む。
不二製油とcottaによるM&A
2022年5月に、市場外取引によって、不二製油がcottaの所有する株式のうち5%を取得し、両社間で資本業務提携を締結したM&Aの事例です。本取引は資本業務提携のスキームが用いられ、増資金額は約2億8,800万円となっています。
譲り受け企業である「不二製油」は、植物性素材を主原料とした食品素材(植物性油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材)を製造している企業です。一方の譲渡企業である「cotta」は、製菓製パン材料のECポータルサイトを運営し、3万点に及ぶ商品の販売に加え、有名パティシエ・お菓子研究家・インスタグラマーなどを起用したコンテンツの配信とSNSマーケティングを展開している会社になります。
本件M&Aは、製菓製パンの食品会社とEC関連会社による取引事例です。本取引により、レシピなどの情報発信による製菓製パン市場活性化・インフルエンサーの開拓やコミュニティ作りなどを図っています。
国内No.1製菓製パンのECサイトcottaと資本業務提携を締結
ヨシムラ・フード・ホールディングスとヤマニ野口水産によるM&A
2017年10月に、ヨシムラ・フード・ホールディングスがヤマニ野口水産を株式譲渡(全株式の売却)によるスキームにより、子会社化したM&Aの事例です。取得金額は7,000万円となっています。
譲り受け企業である「ヨシムラ・フード・ホールディングス」は、グループ企業28社を抱え、後継者不足などの問題を抱える中小食品企業のグループ化を進める東京証券取引所の上場企業です。一方の「ヤマニ野口水産」は、北海道で漁獲された新鮮な海産物を使った、燻製・珍味などを製造する事業を展開する企業になります。
譲り受け企業であるヨシムラ・フード・ホールディングスは、高品質な商品の販売による収益拡大を。譲渡企業であるヤマニ野口水産は、大手企業であるヨシムラ・フード・ホールディングスの傘下になることで、事業のさらなる成長を目的としています。
ヨシムラ・フード・ホールディングスがヤマニ野口水産を子会社化
アルプロンとDNAファクターによるM&A
2020年8月に、アルプロンが既存保有分と合わせてDNAファクターの所有する全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。本取引は株式譲渡のスキームが用いられましたが、取得価額は公開されていません。
譲り受け企業である「アルプロン」は、プロテインを中心とする健康補助食品の企画・開発・製造・販売・OEMなどの事業を展開している会社です。一方の譲渡企業である「DNAファクター」は、郵送検査キットによる遺伝子検査を初めとする各種検査サービスを展開している会社になります。
本件M&Aは、プロテイン製造を手掛ける食品会社と遺伝子検査会社による取引事例です。本取引によって両社は、従来の出資・協業関係(アルプロンによる一部出資、遺伝子検査商品の販売代理)を強化し、アルプロン製品ユーザーに対する検査商品のプロモーション拡大、OEMサービスの拡充、検査サービスをベースとしたパーソナライズ商品の展開などを通して両社のさらなる成長を図っています。
医師と取り組む遺伝子解析検査サービス、ドクターオンライン診療サポート付きコロナウイルス抗体検査キットサービスなどを提供する株式会社DNAファクター社の完全子会社化に関するお知らせ
ラックランド子会社とマルセ秋山商店によるM&A
2020年6月にラックランドの子会社である「ハイブリッドラボ」が、マルセ秋山商店の工場・建物・従業員を事業承継したM&Aの事例です。本取引における取得金額は、一般公開されていません。
譲り受け企業である「ハイブリッドラボ」は、ラックランドの子会社として、食品加工製造ラインの研究・開発・設計・製造事業を手掛ける企業です。一方の「マルセ秋山商店」は、宮城県石巻市で水産加工事業を運営する企業になります。
本件M&Aは、食品加工の研究開発企業(ハイブリッドラボ)と水産加工業者(マルセ秋山商店)による事例です。ハイブリッドラボは、マルセ秋山商店の持つ資産を譲り受けることで、事業規模の拡大とグループ全体のシナジー効果創出を果たしています。
サントリーホールディングスとシナモンによるM&A
2021年8月に、サントリーホールディングスがシナモンに出資し、同社と資本業務提携を結んだ取引事例です。本取引は資本業務提携のスキームが用いらましたが、譲渡金額は公開されていません。
譲り受け企業である「サントリーホールディングス」は、スピリッツ・ビール・ワイン・健康食品製造などの事業を展開する企業グループの持株会社です。一方の譲渡企業である「シナモン」は、AI関連製品・サービスの開発、AIソリューション提供などの事業を展開している会社になります。
本件M&Aは、国内大手飲料メーカーとAIソリューション企業による取引事例です。譲り受け企業であるサントリーホールディングスは、スタートアップ企業への投資を通したオープンイノベーション推進(具体的には、顧客体験向上のためのDX加速、ビジネスプロセスの抜本的再構築の推進、オンライン販売手法開発など)の一環として取引実施に至っています。
人工知能テクノロジー・スタートアップのシナモンAI、第三者割当増資によりサントリーホールディングスから資金調達を実施
食品会社でM&Aを行うことのメリット
食品会社がM&Aをするメリットを売却・買収側の双方から解説します。食品会社のM&Aにおける売却・買収のメリットは、以下の通りです。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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食品会社でM&Aの売却を行うことのメリット
食品会社でM&Aによる売却を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 借入における個人保証の解除
- 従業員の雇用維持
- 事業の選択と集中
- 資金調達・オーナーのEXIT
それぞれ詳しく解説していきます。
借入における個人保証の解除
借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。食品会社に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。
特に中小規模の食品会社の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。
M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。
従業員の雇用維持
売却側の企業が廃業目前であった場合には、M&Aを実行することで、既存従業員の雇用を継続して守ることができます。実際にM&Aを行った場合、ほとんどのケースで譲受企業によって従業員の雇用が継続されます。
労働条件においても引き継がれるケースがほとんどなので、廃業に比べると既存従業員が被る影響を大きく抑えることに繋がるでしょう。給与待遇や労働条件が同じであれば、M&A後の離職率も低下させることができます。
また待遇面においては、M&A後に給与受験・労働時間・年間休日・福利厚生などの改善が行われるケースも多いです。M&A以前よりも好条件で雇用されるケースもあるので、既存従業員にとっては大きなメリットとなり得ます。
事業の選択と集中
景気悪化を辿る日本では、会社存続のために複数の事業を多角展開する企業も珍しくありません。しかし事業の多角化は一歩間違えれば、赤字を生み出し、廃業の原因とさえなり得ます。
M&Aのスキームの一つである「事業譲渡」を用いることで、不要となった事業やその関連資産だけを選別して売却することが可能です。実際に事業譲渡により、特定の事業のみを他者委に売却する企業は多くあります。
M&Aの事業譲渡によって事業を売却することで、事業の選択と集中が出来れば、経営状態を好転させられるかもしれません。得意分野に資金や人員を集中できるため、成功率も高まるはずです。
資金調達・オーナーのEXIT
M&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。
- 残っている借入金の返済に充てる
- オーナー自身の引退後の生活資金とする
- 新規事業における資金源とする
一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。
食品会社でM&Aの売却を行うことのメリット
食品会社でM&Aによる買収を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 事業拡大のチャンス
- 新規事業への進出
- 人材とノウハウの共有
- 開発力・製造力の強化
それぞれ詳しく解説していきます。
事業拡大のチャンス
M&Aにおいて買収側が得られる大きなメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。M&Aによって買収側の企業は規模やシェアの拡大を狙うことができます。
食品会社のM&Aにおいては、売手となる企業が持つ設備や建物のような有形資産に加え、顧客・取引先情報などの無形資産を手に入れることも可能です。特に食品会社の運営においては、「製造ノウハウ」「取引先情報」などの有形資産は実績に直結する要素であるため、M&Aによる早期事業拡大も視野に入れることができます。
また食品業界においては、大手企業の市場シェア率が高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小同士のM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を付けることにも繋がります。
新規事業への進出
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに食品業界への早期参入が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
人材とノウハウの共有
食品会社の運営において事業成功のカギを握るのは、自社が持つ「ノウハウ」と開発研究員・工場管理者をはじめとした「人材」です。これら2つが揃っている食品会社は、市場において高い競争力を得ることができます。
もしM&Aによって食品会社の買収を検討しているのであれば、まずは買収先企業が持つノウハウと人材に目を向けることが先決です。買収によって現在の自社が持たないノウハウや人材が手に入るか否かをチェックしましょう。
食品会社の買収に関しては、買収先が持つ工場の規模や人材などによって、取引額に大きな差が生じます。価値のある資産を所有している企業ほど、高値で取引されるケースが多いです。
開発力・製造力の強化
昨今の食品会社では、食に対する需要の変化から「健康食品」をはじめとした新しいニーズの発掘が必須となっています。M&Aによって食品会社を買収することで、譲渡企業が持つ開発力を手に入れることが可能です。
さらに食品会社同士のM&Aであれば、自社と買収先企業の開発研究員が知見を併せることで、シナジー効果を創出することも期待できます。これまでになかったノウハウを組み合わせることで、新しい商品の開発に成功できる可能性は高まるでしょう。
また食品会社の運営においては、製造する食品の種類によって製造方法や工程などの「製造ノウハウ」は異なります。M&Aによって食品会社を買収することで、買収先が持つ製造ノウハウをそのまま取り入れることができるため、早期に新規ジャンルへの参入を果たすことが出来るでしょう。
食品会社のM&Aにおける注意点
食品会社のM&Aにおける注意点を解説します。食品会社のM&Aにおいて、注意すべき事項は以下の通りです。
- M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
- 避止義務に関して
- 既存従業員の離職対策
それぞれ解説していきます。
M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
M&Aでは、買い手と売り手の情報格差(買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富)があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件(買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう)という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
避止義務に関して
M&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。
M&Aにおける競業避止義務とは、M&Aの成約後に譲渡企業に課される義務です。譲渡した事業に対して、譲渡企業が競合するような事業を再度行い、譲受企業に不利益を与えることを避けることが目的となります。
会社法の規定により、事業譲渡を実施した会社は、競業避止義務を負うことになるので注意が必要です。ただし、買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることはできます。将来的に食品会社を再度手掛ける可能性があれば、買収側と交渉しましょう。
既存従業員の離職対策
買収先の既存従業員による離職対策は、M&Aを成功させるために留意すべきポイントのひとつです。既存従業員の離職を防ぎ、優秀な人材を雇用し続けることが重要になります。
経営者視点から見ればM&Aは立派な経営戦略であり、大きなシナジー効果を生むものです。しかし従業員にとっては、今後の働き方や会社との雇用関係に大きな変化をもたらす為、M&Aによって雇用条件や働き方が悪化すると離職を招きます。
M&Aによる離職を防ぐためには、従業員の働き方や雇用関係の変化に対し、敏感に配慮することが重要です。既存従業員が不安となる要素はあらかじめ取り除いておくことが、M&Aによる離職を防ぐ手段として有効になります。
食品会社のM&Aを成功させるためのポイント
食品会社のM&Aを成功させるためのポイントについて解説します。食品会社のM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- PMI(統合後プロセス)の確立
- 相場価格への理解
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。
M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。M&A専門業者に委託することで、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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PMI(統合後プロセス)の確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新経営体制の構築
- 経営ビジョン実現のための計画策定
- 両社協業のための体制構築・業務オペレーション
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。
相場価格への理解
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
食品会社のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。
また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
食品会社におけるM&Aのまとめ
今回は食品会社におけるM&Aについて、食品業界の現状や特徴、市場動向やM&A事例を踏まえて解説しました。
食品業界は、M&Aが盛んに実行されている業界です。M&Aによる経営統合によって事業拡大に成功している食品会社も数多く存在することから、食品会社にとってM&Aは有効な経営戦略の一つと言えるでしょう。
しかしM&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。