「タクシー業界のM&Aの売却相場は?」
「タクシー業界のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「タクシー業界 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、タクシー業界のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
タクシー業界におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、タクシー業界のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
タクシーとは
タクシーとは
タクシーとは、決められた路線がなく、利用者の指定する任意の出発地から目的地まで、有償で送迎を行う交通手段です。都市部においては根強い需要があり、目的地までスピーディーかつ安全に移動できることから、多くの市民に利用される公共交通機関の一種となっています。
なお、国土交通省の法令では、タクシー事業に関しては「1つの契約によって既定の乗車定員数未満の自動車を貸し切りで乗客を目的地まで運ぶ事業」との定義です。また、タクシーの容量は運転手を除くと乗客は10人までとなります。普通のタクシーは運転手を含めて5人乗りですが、10人まで乗れる自動車でもタクシーです。
利用者がタクシー会社に電話で連絡を入れたり、アプリを使ったりすると、すぐに車両が手配できます。他にも、通行中のタクシーを止めれば乗れる場合も多いです。運賃体系としては一般的に、初乗り料金に加え、走行距離に応じたメーター割り料金が適用されます。現在、タクシーは日々の生活に欠かせない移動手段として、重要な役割を担っているのです。
業界におけるIT化の加速
都市部においては長らく、タクシーが重要な移動手段としての役割を果たしてきました。しかしながら、ここ最近のスマートフォンの急速な普及やライフスタイルの多様化に伴い、既存のタクシーサービスにおいて、スマートフォンアプリを介して利用者とドライバーをマッチングさせる配車サービスが普及中です。
一方で、タクシー会社側でのIT活用も最近は広がっています。例えば、地域ごとにおける目的地や距離の調査を行い分析をしたり、沢山の車の状況をデータベースで把握したりなどがよくある事例です。
最近はこうしたタクシー事業のIT化によって、タクシー会社はIT技術などを開発する会社と様々な取引をしたり、M&Aをしたりしています。タクシー会社側からすれば既存の配車網と顧客層、IT企業側からすればアプリの技術力とユーザー基盤をそれぞれ使うことで、Win-Winの関係を構築できるでしょう。
法律の変化への対応が重要
タクシー業界を取り巻く法的環境は、この20年間で大きな変化を経てきました。2002年の規制緩和で、新規参入要件が大幅に緩和されたことから、新規事業者が続々と参入し一時は過当競争が生じました。このため2009年には再び規制が強化され、増車条件が厳しくなり、法令違反には厳しい罰則が設けられました。
その後、2020年2月からは25都道府県48地域で、運転手の労働条件改善と良質サービス維持を目的に、タクシー料金の変更がなされました。料金改定の内容は地域によって異なり、値上げや初乗り距離の短縮などがあります。
このように法的環境は大きく変遷し、事業者にはそれへの適応が求められてきました。さらに近年では、配車アプリの普及などでのユーザーニーズの変化への対応も課題となっており、今後の法整備の動向にも注視が必要とされています。
タクシー業界の市場動向と市場規模
国土交通省「タクシー業界の現状について」より
タクシー業界では、2009年に実施された再規制以降、利用者数や事業者数が減少傾向に転じています。この減少傾向が現在に至るまで続いており、業界を取り巻く環境は大きく変化しています。
近年、観光需要の回復によりタクシー利用者数は一時的に持ち直しの兆しが見られましたが、深刻な乗務員不足に直面しています。加えて、タクシー運転手の高齢化が進行し、後継者不足から深刻なドライバー不足に陥っている状況にあります。こういった人手不足が業界全体の縮小につながり、実際にタクシー車両数自体が減少の一途をたどっています。
国土交通省の統計でも、2002年の規制緩和以降は一時的に車両数が増加したものの、2008年以降は減少に転じており、輸送人員や運送収入も日本経済の低迷を受けて減少傾向が続いています。
このように、タクシー業界は観光需要の変動や人手不足など、様々な課題に直面しながら、全体としては縮小を余儀なくされている厳しい現状にあると言えます。
タクシー業界が持つ課題
タクシー業界には現在様々な課題があります。タクシー業界が持つ主な課題は、以下の通りです。
- 運転手不足の深刻化
- IT対応の必須化
- 赤字経営の会社の増加
それぞれ詳しく解説していきます。
運転手不足の深刻化
一部の観光地エリアでは、大手タクシー会社を中心に需要の回復が見られ、売上が増加中です。しかしながら、知名度の低い中小規模のタクシー会社においては、深刻な乗務員不足と既存乗務員の高齢化が大きな問題となっています。
運送業界全体としても、この人手不足は重要な課題です。日本が少子高齢化社会を迎える中で、今後さらにドライバー不足が加速すると予測されており、事業者間では人材確保に向けた取り組みが活発化すると見られています。
中小規模の事業者の場合、需要そのものは地元を中心に底堅く推移しているものの、乗務員が不足しているため、充分にその需要に応えきれていない状況です。労働環境の厳しさから、タクシー運転手のイメージが良くないため、人材の新規採用に四苦八苦している会社が多数あります。
現在は大手事業者と中小事業者の格差が非常に広がっている状況です。そのため、中小企業では差別化を図るために外国語対応スタッフの採用や教育制度の充実、キャッシュレス決済の導入など、様々な施策に積極的に取り組んでいます。
IT対応の必須化
一部の中小規模のタクシー会社は、IT活用が遅れていて利用者を新規獲得できずに経営が行き詰り、結果的に廃業に追い込まれている状況です。その一方で、積極的にITを導入し続けている大手タクシー事業者への売上が一極集中する傾向にあります。
近年はスマートフォンを活用した配車サービスアプリが都市部を中心に急速に普及しており、これらのITサービスに対応できずにユーザーを失うタクシー会社が多いです。タクシー業界においては、今後生き残りをかけてITへの対応が避けて通れない最重要課題となっています。
なので、タクシー会社が生き残るためにはIT会社と自発的に取引をして顧客のニーズを満たせるように努力をする必要があるでしょう。
赤字経営の会社の増加
タクシー事業者の約半数が、慢性的な赤字経営に陥っており、非常に厳しい経営環境に置かれています。この主な要因のひとつが、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行による移動制限とそれに伴う需要の落ち込みです。外出自粛や飲食店の営業時間短縮、酒類提供の停止などの影響で、夜間や観光地でのタクシー需要が大幅に減少しました。
現在はコロナ禍の影響は和らいでいるものの、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で原油価格が高騰し、タクシー事業者の大きな負担となる燃料費が急増している状態です。さらに、キャッシュレス決済の普及に伴い、事業者はQRコード決済や電子マネーなどの手数料負担が新たにかかるようになり、利益を圧迫する要因となっています。
この他にも、タクシー・ハイヤー運転手の減少と高齢化が進み、稼働率が低下して収益が落ち込むなど、経営を直撃するマイナス要因が重なっていることから、業界全体で深刻な赤字経営に陥っている事業者が半数近くにのぼっている状況です。
タクシー業の動向と今後
M&Aにおいて業界の現状とこれからを理解しておくことは非常に重要です。そこで、ここではタクシー業の動向と今後について解説していきます。ぜひ参考にしてください。
環境対策が当たり前に
タクシー業界では、地球環境保護が大きな問題となっており、従来の大気汚染対策に加え、地球温暖化防止に向けた本格的な取り組みが求められています。多くの事業者がガソリン車からハイブリッド車や電気自動車への切り替えを進めており、次世代の環境対応車両への置き換えが急がれている状況です。
環境に優しい新車導入にあたっては、高価格がネックとなりますが、環境省の補助金制度を活用するなどして、コスト面での課題を乗り越える動きも出てきました。
さらに、AIやIoTなどの先端技術を活用した効率的な車両運用にも注目です。過去の走行データとAIによる需要予測を組み合わせることで、無駄な準備台数や空車の走行を大幅に削減し、二酸化炭素排出量を抑制する試みが各社で行われています。渋滞回避ルート探索や速度の自動調整など、ドライバーの運転支援システムの導入も、環境負荷低減にとって有効です。
運転手の安全運転の徹底
事故防止と安全運転の徹底は、タクシー業界にとって最重要の課題です。重大な事故が起これば、企業の信頼性が一気に失墜し、存続さえ危ぶまれかねません。そのため、各社とも安全対策に最善を尽くしています。
まず運転手への徹底した安全教育が大切です。入社時の新人研修では、安全運転の基本から非常時の対応まで、緻密な指導が行われます。その後も定期的な再教育を経ることで、運転技術と安全意識の維持と向上が可能です。最近では、過去の事故事例や危険ドライブの映像を視聴するVR教育の導入なども進んでいます。
また、ドライブレコーダーの徹底的な車載と、AIによる危険運転検知・予防システムの導入も良い対策でしょう。運転状況を常にモニタリングし、危険な運転挙動があれば音声で警告を発したり、録画データを活用した指導を行ったりすることで、確実な事故防止が可能です。さらに先進的な事業者では、過去の事故データとAIを組み合わせ、事故の予測や再発防止に役立てる試みも始まっています。
防犯対策の強化が盛ん
タクシーは顧客と運転手だけの閉鎖的な空間です。そのため最近のタクシー業界では乗客や運転手に対する犯罪の危険性が指摘されるようになり、犯罪対策の強化も急務となっています。防犯カメラの設置や緊急通報システムの導入は一般化しつつありますが、それ以外にも様々な対策が行われている状況です。
例えば、深夜時の不審者の乗車を防ぐため、アプリなどで事前に本人確認を行う取り組みを一部の事業者が開始しました。また、携帯電話の位置情報と連動して、危険時の通報や警備員の手配を自動的に行うシステムの導入も進められています。
運転手への危機管理教育の徹底も欠かせません。防犯術はもちろん、暴力的な客への対処法、緊急時の適切な通報ルートなどが一例です。一部の事業者では、専門の指導員による実践的な教育も実施されるなど、万全の体制が整えられつつあります。
加えて、タクシー車両自体の防犯性能も強化されてきました。運転手室と客室の間に強化ガラス製の仕切りを設置したり、運転席から出入り口をロックできる機能を備えたりするなど、犯罪から乗客と運転手の双方を守る工夫がなされています。
タクシー業界のM&Aの動向
タクシー業界におけるM&Aの動向について解説します。これから企業のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。
人手不足対策のためのM&Aが増加
現在タクシー業界が慢性的な人材不足に直面する中、M&Aが有効な解決策の1つとして活用されています。M&Aによって買い取った企業の従業員を自社に入れることによって、人材を獲得することが可能です。
M&Aによって、作業員の人員を集約化し補完できるだけでなく、優秀な人材を確保し、彼らの持つノウハウやスキルを吸収することが可能になります。これにより自社の人材育成力を高め、長期的な視点から人員を確保・強化できるはずです。また、M&AでIT技術を買い取ることで、限られた人員での生産性を最大化し、人手不足を補う効果も期待できます。
さらにM&Aを契機に規模が拡大すれば、従業員の賃金アップなども実現しやすくなり、人材確保が一層しやすくなるでしょう。若手や未経験者の育成が重要課題となっているタクシー業界で、M&Aを通じた教育研修体制の強化により、人材育成面での大きな効果を挙げられる可能性もあります。
車両獲得のためのM&Aの増加
タクシー事業における近年のM&A活発化の背景には、2009年以降の規制強化の影響が大きく作用しています。この規制改革により、新たな車両の増加には厳しい条件が課されるとともに、法令違反に対する制裁措置も強化されました。結果として、既存のタクシー事業者にとって自社の車両台数を拡大することは極めて困難になりました。
このような状況下、タクシー会社は事業規模の拡大を図るためにM&Aを活用する動きが活発化していいる傾向です。大手企業に限らず、中小規模の事業者も積極的にM&Aを行い、買収によって確保した車両とライセンスを武器にさらなる利益を追求しようとしています。企業の生き残りをかけた熾烈な事業拡大競争が繰り広げられており、今後もM&A市場の活性化が予想されるでしょう。
このM&A動向は、2009年の規制強化がタクシー業界に与えた構造的な影響の表れであり、業界再編を促進する大きな原動力となっているのです。
地方への事業拡大のためのM&Aも多数
タクシーへのニーズには地域による偏在があるため、各地域への対応力がタクシー業界にとって重要な課題となっています。このため、M&Aを活用して積極的に地域展開を図る動きも現在活発です。
新規で拠点を設置するよりも、M&Aで地元に強い優良な中小タクシー業者を取り込む方が、スピーディーかつ低コストのエリア展開が可能になります。タクシー事業においては拠点の周辺地域が主な活動場所です。そのため、その人々をターゲットにした地元企業や営業網、人脈を広く獲得できれば、大きな利益の向上が見込めます。
それだけでなく、エリア外への事業進出の足がかりを得られることもメリットです。未展開エリアの近くに根を張る企業を買収すれば、そこを拠点に円滑な事業展開ができます。事業展開のコストも最小限に抑えられるでしょう。
タクシーのM&Aをするメリット
タクシーのM&Aにおいてのメリットを売却側・買収側の両方から解説します。メリットを元にしてM&Aを検討してください。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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売却側のメリット
タクシー業界における売却側のメリットは、以下の通りです。
- 仕事効率の向上
- 人材不足の解決
- 従業員の雇用先の確保
- 担保や個人保証の解決
- 早期リタイアが可能
- 譲渡による利益の獲得
それぞれ詳しく解説していきます。
仕事効率の向上
タクシー事業においては、仕事をどれだけ効率的に早く行えるかが大切です。しかし、中小企業においては設備や技術への投資に限界がある状態です。なので、大企業に勝てるようなサービスを行うことは困難でしょう。
しかし、大企業の傘下に入ることにより、大企業の豊富な資金や設備を使って自社を急成長させることが可能です。また、合併した大企業と競争の必要がなくなるのも良いといえます。
人材不足の解決
昔に創業をしたタクシー関係に携わる企業は、現在後を継ぐ人がいない状態です。これには少子高齢化や過酷な労働環境などが関わっています。深刻な後継者不足によって廃業してしまうと、顧客や取引先に迷惑をかけてしまうでしょう。
M&Aをここですることにより、買い手に経営を任せることができます。それにより、会社は廃業を避けて存続することが可能です。買い手側の豊富な人材により、今までできなかったことができる可能性もあります。
従業員の雇用先の確保
先ほどの後継者問題とも関係しますが、会社が廃業となると従業員が全員失業してしまうこととなります。ここでM&Aを使うことにより従業員の雇用先を確保することが可能です。それによって、自身が従業員を解雇する必要もなくなり、従業員の暮らしが守られます。
従業員の雇用条件については買い手と売り手で詳しく相談する必要はありますが、買い手も従業員の確保は進めたいので、上手くいくケースが多いです。
M&Aに関しては黒字の会社の方が買われやすいのですが、赤字の会社でも何か優秀な従業員や顧客からの人気、信頼などがあれば売却できる可能性があります。
担保や個人保証の解決
中小の業者にとって、事業運営のために融資を受ける際に、経営者個人が保証や担保を差し入れることは一般的です。しかし、その個人保証や担保は、万が一の場合に経営者自身の私財を失う危険性があり、大きな心理的プレッシャーとなります。
そういった観点から、M&Aによって事業を売却することで、経営者は個人保証や担保に伴う個人的なリスクから解放されるメリットがあると言えるでしょう。つまり、M&Aを活用することで、経営者自身が破産の危機にさらされるリスクを回避できます。
早期リタイアが可能
事業の経営者は、後継者不足や赤字による借金など事業に対する悩みや不安を抱えています。M&Aで会社を売ることにより、経営者ではなくなり悩みや不安は無くなるでしょう。
会社を売却して得た収益を使えば、今後の生活資金も確保可能なので、老後までずっと金に困らずに生活が可能です。ですので、早期で仕事を辞めるためにタクシー企業におけるM&Aをすることもよくあります。
譲渡による利益の獲得
M&Aで売却をすることにより、企業価値に応じて利益を得ることができます。中小企業においてはかなりの場合経営者とその周りが株式などを保有しているので、ほとんどの利益を独占し新たな事業に活用が可能です。さらに、エグジットのためにM&Aをすることもできます。
実際、新たな事業をするために既存の企業を売却する例も多いです。しかし、M&Aのプランにより課せられる税金や売却益の獲得者が変わる可能性もあるため、そこは注意が必要となります。
買収側のメリット
タクシー業界における買収側のメリットは、以下の通りです。
- 事業規模の迅速で効果的な拡大
- 新規事業へのハードルの低下
- 優秀な人材の確保が可能
- シナジー効果の発揮
- 優秀な技術や知的財産の獲得
それぞれ詳しく解説していきます。
事業規模の迅速で効果的な拡大
M&Aにおいて買収側が得られる最大のメリットは、事業拡大ができることです。M&Aによって買収側の企業は事業規模や事業エリアの拡大などを狙うことができます。
タクシーのM&Aにおいては、車や従業員といった有形資産と、地域からの信頼や教育ノウハウなどの無形資産を両方手に入れることが可能です。大きな信頼や独自の強みを持つ企業を買い取ることによって、円滑な事業を展開できます。タクシー業界においては競合他社に負けずに顧客のニーズに応えることが必須なので、それが円滑になるのは嬉しいことです。
新規事業へのハードルの低下
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに早期進出が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
タクシー業界は、多くの従業員や車などがなければ満足な利益を出すことができない業界です。なので、それらを持つ企業を買い取ることにより、有利な状態でビジネスを始めることができます。
優秀な人材の確保が可能
少子高齢化が問題となっている現代では、優秀な人材の確保はどの業界においても必須の課題です。優秀な人材を確保することは、そのまま企業の行く末に作用します。
M&Aを行うことによって、売却側企業に所属する従業員をそのまま雇用すれば、優秀な人材をそのまま自社に引き入れることができます。もちろん業界におけるノウハウも既に所有しているため、研修を行う手間も省くことが可能です。
ただし売却側企業に所属する従業員全員が優秀であることの保証はないことに加え、M&A後の企業文化の変化に付いてこられず、離職する従業員が発生する可能性もあります。M&Aによって従業員を引き継ぐ場合には、非常に繊細な注意が必要です。
さらに、いくつかの従業員は夜中も勤務することになります。そのため、従業員を前の会社よりも多く働かせると過労死などの問題が起こりかねません。従業員の心身のケアは常にする必要があります。
シナジー効果の発揮
他の企業を買収し二つの企業の経営資源や技術を融合することにより、相乗的な効果が生まれます。例えば企業が持っていた大量の従業員ともう一つの企業が持っていた車両管理システムを組み合わせて、効率的な業務体制を作るなどが一例です。
さらに、二つの企業の従業員同士が交流しながら働くことにより、お互いで技術の向上ができるかもしれません。ただし、逆に二つの企業が合わさることにより悪い効果が生まれる可能性もあるので、工夫が必要です。
優秀な技術や知的財産の獲得
買収をするとできることの一つに、優秀な技術や知的財産の獲得が挙げられます。タクシーにおける作業の効率化に関するノウハウや、車両管理、顧客管理に関するシステム、さらには地域での知名度や顧客基盤といった無形の資産は、買収先企業から獲得できれば大きな強みとなるはずです。
例えば、車両の管理を自動で行う技術、効果的な運転の教育方法などを取得できれば、業務効率の改善や生産性の向上が図れ、競争力を高められます。また、取引先、路線、従業員などを管理するシステム、ガソリンの残量管理プログラムや顧客データベースなどのITツールを入手できれば、サービスの高付加価値化や収益性の向上にもつながるでしょう。
さらに、買収した企業が長年培ってきた地域における高い信頼と顧客基盤があれば、買収企業はその顧客を自社に取り込むことで、瞬時に売上を伸ばすチャンスを得られます。特に中小企業の買収では、そうした地場に根付いた技術やノウハウ、顧客の獲得が、大手企業にとって大きなメリットとなる場合が多いです。
タクシーのM&Aの注意点
タクシーのM&Aを行う際の注意点を解説します。M&Aを行う際の注意点は、以下の通りです。
- M&A前の調査(デューデリジェンス)
- 買収先の事前の情報確認
- 従業員、取引先や情報の流出
- M&Aの専門知識を持たない状態での引き継ぎ
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A前の調査(デューデリジェンス)
M&Aにおいて、買収する企業のことを詳しく調査することは必須です。企業を買収した後に問題が発見されると非常に大きな負担がかかってしまいます。そのため現在のM&Aでは先にデューデリジェンスと呼ばれる調査をすることが主流です。
例を挙げると、薄外債務の発覚で思わぬ借金を抱えることがよく起こり得ます。そのため、財務に関する調査を事前にしておくことでそれを防ぐことが可能です。全ての問題を洗い出し解決することにより、買収後スムーズに事業を進められます。
これは買う側に限ったことではありません。売る側も社内調査をしておきそれを報告する義務があります。もしデューデリジェンスで問題が発覚した場合、相手の信頼を下げてしまうことがあり危険です。
買収先の事前の情報確認
これも事前調査と関係がありますが、買収した企業の資源や過去の情報をあらかじめ確認しなければなりません。もし買収した企業が想定より少ない車両を持っていた場合、大きな損害が生じてしまいます。
他にも、買収した企業が過去に問題を起こしていた場合も大変です。従業員の不祥事などが起こっていると、顧客の信頼度を大きく下げます。すると、サービスの利用者が減り想定よりも少ない利益を得ることになるでしょう。
売り手側もきちんとM&Aの前に情報の整理をする必要があります。もし相手側が自身の会社のことをよく理解していない場合、正しく情報を伝えることが大事です。それだけでなく、買い手が資源などを売り手と共有したくない場合もあります。それに関しても先に確認しておくことが重要です。
従業員、取引先や情報の流出
M&Aにて買収を行う企業は、売り手側の従業員や取引先を狙うことも数多くあります。しかし、環境と企業文化が変わることにより、従業員や取引先が流出してしまうかもしれません。
それを防ぐためには、従業員や取引先の事情やこだわりなどを丁寧に考えて、良い施策を打つことが大切です。
さらに、場合によってはM&Aの計画情報が交渉中に漏えいすることがあります。そうすると、従業員や取引先がM&Aの前に減少してしまい価値が下がってしまうかもしれません。そのためには、情報を明かさないために交渉相手と秘密保持契約を結び、情報の漏えい対策をすることが必須です。
M&Aの専門知識を持たない状態での引き継ぎ
この業界に限らず、M&Aでは、買い手が売り手より知識や経験が豊富なことから情報格差があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手が有利になるような企業の低額買収が起こりかねません。最悪の場合には、M&Aで得をしようとしたはずが、不利な条件でM&Aをすることによって、巨大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのが定石です。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
タクシーにおけるM&Aを成功させるためのポイント
タクシー業界におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。M&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格をよく理解しておく
- 統合後の事業計画の確立
それぞれ詳しく例を用いながら解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化・明確化されます。
M&A戦略では、自社を分析するSWOT分析や市場調査・業界トレンドを調査して傾向の把握が必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収、売却先の選定や交渉を行っていくこととなります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰と・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が雑だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
以下はタクシーにおける簡単な一例です。参考にしてみてください。
買収側
M&Aにより何を達成したいか |
M&Aにより、タクシー事業をさらに拡大したい。それにより売上高を大幅に増やしたい。 |
いつ・誰と・何を・いくらで・どのように買収するか |
半年後にA社の開発した事業や資産の一部を相場にあった金額で銀行融資を使って買収する。 |
買収において障壁となる要素はあるか |
現在まだA社の財務調査が済んでおらず、買収をした際損をしてしまうリスクがある。 |
M&Aに必要な予算はどのくらいか | 〇〇億円での買収を予定。しかし、売り手の希望による少しの変更は可。 |
売却側
M&Aにより何を達成したいか | M&Aにより従業員の雇用先を確保したい。また、売却時に手に入れた利益を使い新たに起業をしたい。 |
自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か | 自社は大量の車を所有しており、従業員の教育に力を入れている。多大な信頼と優秀な従業員を持っているので、それら全部をアピールすれば多大な収益が得られる。 |
いつ・誰と・何を・いくらで・どのように売却するか | 利益が安定している時期にB社に対して自社の車両、従業員を含めた全ての財産を時価に会う適正な価格でM&Aアドバイザーを通して譲渡する。 |
売却において障壁となる要素はあるか | 現在防犯システムが十分に設置されていない。買収より前に本格的な防犯設備の導入を行い、万全の状態にしておく必要がある。 |
(実際はこれよりもっと細かく正確に計画を練る必要があります)
しかし、この例を見ると「相場にあった金額」や「時価に会う適正な価格」など、どう決めれば良いかわからないものが複数あると思います。これらを決めるのに大抵の企業は専門業者に依頼や相談をするのが定石です。素人が一人でM&Aをするのは大変危険なので絶対にやってはいけません。
そこで、自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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相場価格をよく理解しておく
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
M&Aでは、例として株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることがあります。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を簡単に計算してみましょう。
場合によっては相手側との相談により予算が変わることがあります。なので、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
統合後の事業計画の確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた目標を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMIという考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後にどうすれば良いか」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新たな経営体制の構築
- 経営における目標実現のための計画作成
- 両社協業のための体制構築・業務システムの強化
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきものです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行なわなければなりません。
タクシー業界のM&Aにおける成功事例
タクシー業界に関係するM&Aにおける成功事例を紹介します。これからタクシー業界におけるM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
東野タクシーから西日本通商ネクストへの企業譲渡
栃木県でタクシー事業を営む老舗の東野タクシーは、創業から半世紀以上が経過し、事業承継の課題に直面していました。同社は県内に複数の営業所を構えており、一定の知名度と実績を持つ地場企業でしたが、後継者不足などの理由から経営の将来を見据えた抜本的な対策が必要な状況にありました。
そうした中で、福岡に本社を置く西日本通商ネクストが東野タクシーの全株式を取得し、2021年4月に完全子会社化することになりました。西日本通商ネクストは本業の経営コンサルティング事業のほか、M&Aを積極的に活用してタクシー事業の全国展開を推進してきた会社です。
東野タクシーは同社の先進的な経営ノウハウと人材育成力、そしてグループ全体でのスケールメリットを期待して、経営権を譲渡することを決断しました。西日本通商ネクストとしても、栃木県内に傘下にタクシー事業を加えることで、関東地方への事業拡大の足がかりを得られることになります。
熊本県のタクシー会社10社の合併
熊本県内のタクシー事業者は、利用者減少やコロナ禍の影響、人手不足などの経営危機に見舞われていました。この打開策として、肥後交通グループ7社とミハナグループ3社の計10社が経営統合に踏み切りました。
2021年1月、10社は共同で地域交通ホールディングスを設立しました。その後、同年4月1日にはこの10社が合併し、新会社「TaKuRoo(タクルー)」が発足することになりました。
TaKuRooが保有するタクシー車両は合計330台で、熊本県内最大の規模となります。経営統合によりコスト削減を図る一方、設備投資や労働環境改善にも注力する方針です。具体的には、重複路線の整理などで3年間で5億円のコスト圧縮を目指す一方、従業員満足度向上に向け、5億円を投資します。
需要予測にAIを活用したり、最新の配車アプリを導入したりと、IT技術の活用でサービス向上と生産性向上の両立を目指す予定です。今回の10社統合は、単独では立ち行かない厳しい経営環境を乗り越えるための決断であり、将来的には他社との連携で県内の空白地域解消も視野に入れています。
参考:熊本のタクシー10社合併、保有台数 県内最大330台に
第一交通産業子会社による苫小牧観光ハイヤーの買収
2022年7月、九州地方に本拠を置く大手総合交通事業会社である第一交通産業株式会社の完全子会社、第一交通サービス株式会社は、北海道苫小牧市で営業するタクシー会社である苫小牧観光ハイヤー株式会社を自社の100%子会社としたことを発表しました。
苫小牧観光ハイヤー株式会社は、同市内においてタクシー事業を営む中堅企業で、その保有車両数は30台に上ります。一方の買収企業である第一交通サービス株式会社も、福岡県を中心に九州各地でタクシー事業を手掛けている会社です。
第一交通産業グループは、本業のタクシーやハイヤー、バス事業に加えて、不動産の賃貸や介護施設の運営など、多角的な事業を全国で展開する総合企業集団です。今回の苫小牧観光ハイヤーの買収により、同グループの北海道内におけるタクシー保有台数は529台に拡大しました。
第一交通産業は、この大型買収を機に、より充実した車両網と人員体制を北海道に整備することで、地域住民や観光客のニーズにより適切に応えていく方針です。タクシー事業の拡大と高品質なサービス提供を両立させながら、北海道における事業基盤のさらなる強化を目指しているということです。
参考:苫小牧観光ハイヤー株式会社(北海道)の株式取得に関するお知らせ
第一交通産業子会社によるタカモリタクシーの買収
2020年3月、九州を本拠地とする総合交通事業大手の第一交通産業株式会社の完全子会社である第一交通サービス株式会社は、三重県でタクシー事業を営むタカモリタクシー株式会社を取得し、同社を自社グループの一員に迎え入れました。
買収の対象となったタカモリタクシーは、1970年の設立以来50年近くに渡り、三重県を中心に地域住民の足として大きな役割を果たしてきた老舗タクシー会社です。保有するタクシー車両は27台に上ります。
この経営統合により、第一交通産業グループは三重県内での自社とグループ会社の保有タクシー台数を従来の15台から42台に拡大することができました。また同時に、グループ全体でのタクシー保有台数は8,422台へと増強されることとなりました。
第一交通産業は今回のタカモリタクシー買収を起点に、三重県を含む関西でのタクシーネットワークの充実を図り、利用者へのより質の高いサービス提供を実現していく構えです。地域に密着した事業運営を続ける中で、エリアを拡大しつつ永年培ったノウハウを最大限活かします。
参考:タカモリタクシー株式会社(三重)の株式取得に関するお知らせ
日本交通によるナショナルタクシーとのM&A
2021年9月、東京を本拠地とする老舗タクシー大手の日本交通株式会社は、大阪を中心に事業展開するナショナルタクシー株式会社の全発行済株式を取得し、完全子会社化する買収を実施しました。
ナショナルタクシーは1951年創業の歴史ある企業で、「安全・快適・迅速」を合言葉に、地元大阪府民の足として親しまれてきました。一方、日本交通は創業93年の老舗で、「桜にN」のブランドが全国的に知られています。両社とも「選ばれるタクシー」を目指す企業理念を共有しており、この経営統合によって相乗効果が生まれるとの期待です。
このナショナルタクシー買収により、日本交通グループの大阪府内における保有車両台数は744台に拡大しました。さらに関西圏(大阪府・兵庫県)全体では846台体制となり、日本交通グループ全国での運行車両数は8,601台(2021年9月時点)と、国内最大級の規模を誇ることになりました。
日本交通は、地域に密着したサービスを提供してきたナショナルタクシーのノウハウを取り入れつつ、全国共通のおもてなし精神を融合させることで、大阪を中心に関西での高品質なタクシーサービスの提供体制を一層強化する方針です。両社の強みを生かしながら、移動の利便性向上と業界発展に貢献していきます。
三福タクシーによる共栄タクシーとのM&A
コロナ禍において経営環境が一転して苦しくなる中、福井県の老舗タクシー会社である三福タクシーと共栄タクシーは、事業の継続と発展を図るためにM&Aによる経営統合に踏み切りました。
三福タクシーは1957年創業の同県小浜市の会社で、従業員約50人を抱えています。コロナ禍で観光需要が失われる中、GoToキャンペーン期間には観光地を回る「レストランバス」の運行など、柔軟な事業展開により業績を上向きに保つことができました。
一方、共栄タクシーは1962年創業で、主に福井赤十字病院への送迎を中心に事業を行ってきました。しかし、コロナ禍で病院の見舞客が激減し、経営が悪化。社長は後継者不在のためこの会社の存続が今後出来なくなるとも考えました。
この経営統合によって、三福タクシーは福井県内での事業基盤を大幅に強化することが可能です。一方の共栄タクシーは、従業員の雇用確保などを実現できます。両社は業界の再編に前向きに取り組むことで、経営資源の有効活用と福井県内でのサービス向上を図れるでしょう。
参考:タクシー会社5代目が同業をM&A 地域の足を守りながら事業拡大へ
戸畑タクシーから戸畑第一交通への事業の譲渡
第一交通とユナイテッドキャブでのM&A
2017年12月、九州を本拠地とする総合交通グループの第一交通産業株式会社は、東京都内でのタクシー事業強化を目的に、連結孫会社である第一交通株式会社を通じてM&A(企業買収)を実施しました。
買収の対象となったのは、台東区に本社を置くユナイテッドキャブ株式会社で、第一交通がその発行済株式の100%を取得し、完全子会社化を果たしました。株式取得価額は非公開とされています。
この経営統合によって、第一交通産業グループが保有するタクシー車両台数は20台増え、東京都内での運行台数は既存グループ会社分と合わせて502台、さらにグループ全体では8,425台にまで拡大しました。
第一交通産業グループは今回のM&Aを、長年の課題であった東京圏でのタクシー事業基盤の拡充とサービス向上に向けた、重要な一手と位置付けています。経営資源の再配分を図り、タクシー台数と運行管理体制の強化を通じて、都内の利用者ニーズにより的確に応えていく方針です。今後は引き続き東京を中心に首都圏での規模拡大に注力していくといいます。
参考:四半期報告書
ワイエム交通への互助交通の譲渡
2021年5月、東京都江東区に拠点を置く一般タクシー運送会社のワイエム交通株式会社は、同区内で営業を行っていた互助交通株式会社の営業権を譲り受けるM&A(事業譲渡)を実施しました。取得価額については非公開となっています。
ワイエム交通は、首都圏を中心に事業展開する大手タクシー会社の日本交通株式会社の完全子会社です。一方、互助交通は1955年の創業以来、地域に根差した営業スタイルで知られるタクシー会社でした。若手社員の斬新なアイデアを生かした企画を打ち出すなど、単なる移動手段に留まらない新しいタクシーの形を追求してきた会社です。
今回のM&Aによって、ワイエム交通は互助交通で長年培われてきた”おもてなしの心”を継承しつつ、日本交通グループの一員として高品質なサービスを提供することになります。互助交通のこれまでの取り組みを礎に、よりタクシー業界の進化と利用者満足度の向上を積極的に目指していく方針です。
業界を代表する大手と、地域に密着した個性的な会社の強みを融合させることで、タクシーサービスの更なる進化が期待されています。
参考:都内タクシー最大手・日本交通グループ 「互助交通」80台の営業譲受申請を行いました
スイトトラベルによるタクシー企業の複数買収
2023年5月、岐阜県大垣市に本社を置くセイノーホールディングスグループの関連会社であるスイトトラベル株式会社は、同県内の3つのタクシー会社の経営統合を実施しました。
具体的には、スイトトラベルが新太田タクシー株式会社の発行済株式の100%と、多治見タクシー株式会社の発行済株式の100%をそれぞれ取得しました。新太田タクシーが100%子会社化している可児タクシーとともに、3社一体経営に踏み切ります。
新太田タクシー、可児タクシー、多治見タクシーの3社は、美濃加茂市、可児市、多治見市を中心に営業基盤を持ち、周辺4町村も含めた広範囲をカバーするタクシー事業者です。長年の実績から地域に深く根付いた存在感があり、特に美濃加茂市と可児市では約8割、多治見市でも約3割の高いシェアを誇っています。
スイトトラベルは今回の3社統合により、経営資源の集中と効率化を図るとともに、高齢化対策などの新規事業開拓もする予定です。また、譲渡元の日本タクシー株式会社とも事業連携を強化し、災害時の相互支援や人材育成、サービス向上などを通じて地域社会に貢献していくとしています。
まとめ
今回は、タクシーM&A・事業承継の全知識ということで、タクシー業界のM&Aにおける売却相場・事例・成功ポイントを解説しました。
タクシー業界は、現在人手不足が慢性的に続いている状態です。そのため、今後M&Aでの人員拡大が必要になってくる企業もあるでしょう。それだけでなく、地球温暖化などのために環境にやさしい事業作りも欠かせません。
M&Aは企業の存続や成長のための戦略としてとても効果があります。ですが、生半可にできるものではありません。ぜひ今回の記事を参考にタクシーにおけるM&Aを検討してみてください。