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ドラッグストアのM&A・事業承継の全知識!売却相場・事例・成功ポイントを徹底解説

「M&Aは難しそうだ・考えたことがない」という経営者の皆様、一度、この記事をご覧ください。

コンビニと共に地域社会に欠かせない存在であるドラッグストア。コンビニよりも雑貨や食品が安く、品ぞろえも豊富なため、ここ数年の勢いには目覚ましいものがあります。

しかし、コンビニと同様に大手ドラッグストアの寡占化が進みつつあります。特に、ウエルシアHDとツルハHDの経営統合など、大手と中小の差は拡大する一方です。

近年、経済や社会などの周辺環境の変化に伴い、あらゆる業界の企業は、従来型の戦略ではなく、日々、新しい戦略を遂行しています。

これらの課題に対応するため、生き残りをかけて、多くの企業がM&Aを積極的に活用し、事業規模の拡大や効率化、事業承継など、従来型の経営からの脱却を図っています。

ドラッグストア業界においても、大手に対抗するためには、中堅チェーン同士のM&Aなどを積極的に行う必要があります。

M&Aや事業承継は、単に企業の規模を拡大するだけでなく、新たな技術や市場へのアクセス、さらには経営資源の最適化を実現する手段です。

また、後継者不足や技術革新のスピードに追いつけない中小企業にとって、事業承継は存続のための重要な選択肢の一つなのです。

しかし、M&Aや事業承継は専門的かつ複雑でリスクも伴うため、成功には慎重な準備と戦略が必要です。

そこで、M&Aの専門企業であるM&A HACKが、ドラッグストア業界におけるM&Aと事業承継の全体像を3つのパートに分けて、以下の構成で解説していきます。

項 目 内 容
第一部:
中小企業のM&Aについて
  1. 中小企業にとってのM&Aのメリットについて、売り手側と買い手側両面から説明
  2. 実際の統計数値を見ながら、中小企業のM&Aの現状を把握
  3. 中小企業のM&Aで用いられる主な手法を知る
  4. M&Aの4つの主要パターン
  5. 中小企業のM&Aの工程・流れを知る
第二部:
ドラッグストアの概況と生き残り戦略
  1. ドラッグストア業界の概要
  2. ウエルシアHDとツルハHDの経営統合とは
  3. 中堅ドラッグストアの生き残り戦略
第三部:
中小企業のM&Aについて欠かせないこと・まとめ
  1. 中小企業のM&Aの注意点としての競業避止義務
  2. 中小企業のM&Aを成功させる3つのポイント
  3. 終わりに

このような流れで、ドラッグストアのM&Aを明らかにし、成功のためのポイントを徹底的に解説します。

また、売却相場の理解から実際の成功事例までを幅広くカバーしているため、今後、直面するであろう課題への理解を深め、実際の取り組みに役立つ情報を提供していきます。

ドラッグストアにおけるM&Aや事業承継に興味を持つ企業経営者や関係者の皆様が、この記事を通じて、M&Aに対してさらに良い意思決定を行うきっかけとなることを期待しています。(この部分のすぐ下に「目次」がありますので、お好きなところからお読みいただけます。)

目次

第一部:中小企業のM&Aについて

中小企業のM&Aの現状

中小企業にとって、M&Aのメリットは何か

まず、下の表のように中小企業のM&Aにおいてのメリットを売り手側・買い手側の両面から、くわしく説明していきます。

売り手側のメリット 買い手側のメリット
  • 後継者不足の解消
  • 従業員の雇用継続
  • 資金調達・オーナーのEXIT
  • 事業の選択と集中
  • 借入における個人保証の解除
  • 事業拡大のチャンスになる
  • 新規事業へのハードル削減
  • 優秀な人材の確保

 

売り手・売却側のメリット:廃業よりもM&Aを選ぶべき

M&Aにおける売り手・売却側のメリットについて、それぞれ説明していきます。

後継者不在が解消できる

中小企業にとって後継者不足・不在による休廃業は大きな問題です。しかし、M&Aを実施することで休廃業を回避できる可能性があります。

また、会社を譲渡することで譲受企業から経営陣を迎え、これまで通り会社を存続できる可能性も高くなります。

多くの場合、大手企業の経営者クラスに位置する優秀な人物が売り手側の経営者となるため、譲渡した企業の事業規模はこれまでより拡大される場合もあります。

後継者不足に悩んでいる企業にとって、会社の譲渡・M&Aを行うことは廃業を避けるためにも大きな手段のひとつなのです。

従業員の雇用を継続できる

売り手側の企業が廃業目前であった場合、M&Aを実行することで既存従業員の雇用を継続して守ることができます。

実際にM&Aを行った場合、ほとんどのケースで買い手企業によって従業員の雇用が継続されています。

労働条件においても引き継がれるケースがほとんどなので、既存従業員が被る影響は、廃業と比較してかなり大きく抑えることができます。

給与待遇や労働条件が同じであれば、M&A後の離職率も低い水準のままとなります。

また、M&A後に給与・労働時間・年間休日・福利厚生などの改善が行われるケースも多くみられます。

このように、M&A後にさらなる好条件で雇用されるケースもあるため、既存従業員にとっては大きなメリットとなります。

資金調達・オーナーのEXIT

当然ながらM&Aによって売却された企業は、買収側の企業から金銭的収入を得ることができます。

この点は、売り手・売却側のオーナーにとっては大きなメリットです。

M&Aによって獲得した現金の使い道としては、以下が考えられます。

  • 残っている借入金の返済
  • オーナー自身の引退後の生活資金
  • 新規事業における資金源

もし、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。

このように、オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、はるかにメリットは大きいでしょう。

事業の選択と集中

景気悪化が続いてきた日本では、生き残りのために複数以上の事業を多角展開する企業も珍しくありません。

しかし、事業の多角化は一歩間違えれば、赤字を生み出し、不安定な経営の原因になる可能性があります。

M&Aのスキームの一つである事業譲渡」では、不要となった事業やその関連資産だけを選別して売却することが可能です。

実際に、事業譲渡で、特定の事業だけを他社に売却する企業は数多くあります。

このように、M&Aの事業譲渡によって事業を売却し、得意分野に資金や人員を集中することで、経営状態の好転にもつながる事例も多くあります。

借入における個人保証の解除

借入での資金調達では、当然ながら返済義務が生じ、返済ができない場合は個人資産を失うことになります。これは、経営者にとって大きな精神的負担となります。

特に中小企業の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者の個人保証や個人資産を担保に入れることがほとんどのはずです。

倒産や廃業に陥った場合、オーナー個人の損害は甚大なものとなります。

M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、債権債務も買い手に引き継がれることが多いため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。

このようにM&Aを行うことは、オーナーが持っていた大きな悩みの種をすべて解消することに繋がるのです。

中小企業のM&Aのポイント

買い手・買収側のメリット:事業拡大はM&Aで

M&Aにおける買い手・買収側のメリットも数多くあります。

事業拡大のチャンス

M&Aにおいて買い手・買収側が得られる最大のメリットは、事業拡大のチャンスを得られることです。

M&Aによって、買収側の企業は規模やシェアの拡大を達成することができます。

これは、M&Aにおいては、売り手企業が持つ設備や不動産のような有形資産に加え、顧客・取引先・各種情報などの無形資産を手に入れることも可能だからです。

特に、中小企業双方のM&Aは、現在の市場シェアを拡大させ、ライバルに圧倒的な差を付けることにも繋がります。

新規事業参入へのハードル削減

買い手・買収側企業にとって、新規事業や新規分野への参入を迅速に行うための有効な手段の一つとしてM&Aがあります。M&Aによって、自社の経営資源だけでは難しい新規分野への進出がスピーディーに実現できるようになります。

このように、内部の資源だけで、ゼロから新規事業を構築するよりも、買収によって事業そのものを買うことのほうが、はるかに早期の進出が可能となります。

さらに、M&Aによって新しい事業を買収し、一つだけの事業展開で生じるリスクを回避することも可能になります。

このように、売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるM&Aは、ここ数年で一気に増加しています。

M&Aを行うことで、新規事業への投資額は減少し、参入コストと時間が削減されることで、結果として、早期の段階で利益を確保できるといえます。

優秀な人材の確保

少子高齢化が問題となっている現代では、優秀な人材の確保がどの業界においても必須の課題です。

M&Aを行うことによって、売り手・売却側企業に所属する従業員をそのまま雇用すれば、優秀な人材をそのまま自社に引き入れることができます。

業界におけるノウハウも既に所有しているため、研修を行う手間も省くことが可能なのです。

中小企業のM&Aの現状

このように中小企業のM&Aは、売り手も買い手もそれぞれ大きなメリットを得ることができます。

この記事をご覧の多くの方が中小企業のオーナーです。そこで、ここからは、実際の統計数値を見ながら、中小企業のM&Aの現状を説明していきます。

数字で見る中小企業のM&Aの現状

2024年現在の最新データである2023年版「中小企業白書」全文 | 中小企業」(以下、白書という)の中で、中小企業の事業承継やM&Aに関する部分について、M&Aの専門企業であるM&A HACKの視点から独自に説明していきます。

事業継承が進み、後継者不足は減少傾向に

第2-2-3図(白書)のように、後継者不在率は、2017年の66.5%をピークに減少傾向にあり、2022年は57.2%と、2011年以降初めて60%を下回っています。

これは、後継者不在の課題が改善されつつあることを示しています。

中小企業のM&Aの現状
出典:中小企業白書 2023 Ⅱ-117

なぜ、後継者不在率は減少傾向にあるのか。

その答えは、2021年以降の50歳代と60歳代における後継者不在率の低下にあります。

第2-2-4図(白書)を見ると、50代(緑色)と60代(水色)の後継者不在率が2021年から低下していることがわかります。

これは、休廃業する50代から60代の経営者が減少していることを意味します。

中小企業のM&Aの現状
出典:中小企業白書 2023 Ⅱ-118

その一因として、白書では、以下のように述べています(太字は「M&A HACK」による)

今回の調査だけでは一概にいえないものの、50 歳代・60 歳代における後継者不在率が低下した要因の一つとして、同年代において事業承継が進み、後継者不在による休廃業の動きを鈍らせた可能性が考えられる。

引用:中小企業白書 2023 Ⅱ-118

このように、年齢的に次の10年を考える50代から60代の経営者層が、実際に事業継承を行っているために後継者不在率は低下傾向にあるわけです。

事業承継の類型と現状

このように、増加傾向にある事業承継ですが、ここでは、その類型と現状を説明します。

まず、以下の表(「中小企業白書 2023 Ⅱ-127 第2-2-10図 事業承継の類型」を一部変更を加えて引用)のように、白書が示している事業承継の類型は3つあります。

類 型 概 要
親族内承継
  • 現経営者の子をはじめとした親族に承継
  • メリット:1)内外の関係者から心情的に受け入れられやすい。2)後継者の早期決定で十分な準備期間が確保できる。3)相続等で財産や株式を後継者に移転できるため、所有と経営の一体的な承継が期待できる。
従業員承継
  • 「親族以外」の役員・従業員に承継させる方法
  • メリット:1)経営能力のある人材を見極めて承継できる。2)長期間働いた従業員の承継は、経営方針等の一貫性を保ちやすい。
社外への引継ぎ(M&A)
  • 株式譲渡や事業譲渡等により社外の第三者に承継(M&A)
  • メリット:1)親族や社内に適任者がいない場合でも、事業継承が可能。2)現経営者は会社売却の利益を得ることができる。3)M&Aが企業改革の好機となり、更なる成長の推進力となることもある。

この3つの類型の中で実際にどれが多いのかについての調査結果が以下の第2-2-11図(白書)です。

中小企業のM&Aの現状
出典:中小企業白書 2023 Ⅱ-128

このグラフを見ると、従来型の親族内承継(青色)は減少傾向にあり、2022年は従業員承継(オレンジ色)と同率となっています。また、いわゆるM&A(赤色)は、2020年から増加傾向にあります。

このように、親族内継承は減少し、従業員承継とM&Aが昨今、増加傾向にあるのです。

事業承継後は、売上が増加する

上述したように、事業承継そのものが増加傾向にあり、その中でも従業員承継とM&Aが主役となっています。

そこで、実際に事業承継後の企業成長について分析したものが、第2-2-12図(白書)です。

中小企業のM&Aの現状
出典:中小企業白書 2023 Ⅱ-128

これは、売上高成長率を同業他社との差で示したものです。

事業承継後、2年間は同業他社と比較してマイナス成長ですが、5年目以降は事業承継実施企業の成長率が、同業他社よりも上回っています。

このように事業承継は企業の新たな成長機会であることが明確に数値として示されているのです。

M&Aは活発化:2022年は過去最多

事業承継の3つの類型の中で、社外への引継ぎ(いわゆるM&A)の件数推移が、第2-2-42図(白書)となります。

中小企業のM&Aの現状
出典:中小企業白書 2023 Ⅱ-173

2022年は、過去最多の4,304件となっており、非公表のデータも考慮すれば、近年のM&Aは極めて活発化しているといえます。

ここまでのまとめ

ここまで説明してきた中小企業のM&Aの現状をまとめたものが以下となります。

  1. 50代から60代の経営者は、企業の持続的成長のために積極的に事業承継を実施している。
  2. その事業承継のパターンとして従業員承継とM&Aが増加している。
  3. M&A実施企業は、同業者よりも成長率が高い傾向にある。

このように、中小企業にとってM&Aは、企業の持続的な成長にとって欠かせない戦略になっていることが数値としても明確に現れているのです。

参考:買い手側から見た中小企業M&A

以下は、参考資料として「買い手側の中小企業M&Aに対するニーズや目的」を白書から紹介します。

中小企業のM&Aの現状
出典:中小企業白書 2023 Ⅱ-175

第2-2-44図(白書)から、以下のような買い手側の特徴がみられます。

  1. 買収先は、買い手側よりも小規模の会社となっている
  2. 異業種ではなく、同業種の買取りを望んでいる
  3. 仕入先や協力会社が対象となっている
  4. 同一の都道府県か近隣の企業が対象となっている
  5. 水平統合型M&Aを目的としたものが多い

次に、買い手側企業の買収目的の分析結果が、第2-2-45図(白書)です。

中小企業のM&Aの現状
出典:中小企業白書 2023 Ⅱ-176

この結果から、M&Aを実施する主な目的は、「売上やシェア拡大」、「新規事業・異業種参入」のほか、「優秀な人材の確保」や「専門技術やノウハウの獲得」などとなっています。

中小企業のM&Aの現状

ここまで、中小企業のM&Aの現状について「2023年版「中小企業白書」全文 | 中小企業庁」から実際の数字で確認してきました。

次からは、中小企業のM&Aで用いられる主な手法について説明していきます。

中小企業のM&Aで用いられる手法とは

中小企業のM&Aで用いられる主な手法は、以下の通りです。

株式譲渡

概要:

  • 株式譲渡とは、売り手・売却側の株主が保有している発行済株式を買い手・買収側に譲渡する手法。
  • 売り手側の企業(A社)は買い手側(B社)の子会社となる。(以下の画像は、2020年3月31日付経済産業省プレスリリース「「中小M&Aガイドライン」を策定しました (METI/経済産業省)」に記載の「中小M&Aガイドライン参考資料」から抜粋。現在は、国立国会図書館のアーカイブ資料)
中小企業のM&Aの現状
出典:中小M&Aガイドライン参考資料

この図では、株式譲渡の流れを以下のように示しています。

  1. 買い手側(B社)の株主である株主Yは、売り手側(A社)の株主XからA社の全株式を買い取る。
  2. A社は、譲渡後にはB社の子会社になっており、株主Yだけが全株式を保有していることになる。

メリット:

  • 会社の資産・負債・従業員や社外の第三者との契約、許認可等は原則存続する。
  • 続きが他の手法に比べて容易である。
  • 買い手側企業は売り手側企業を子会社として取得するため、事業の拡大や多角化を図ることができる。

注意点:

  • 未払残業代や貸借対照表上の数字には表れない簿外債務や損害賠償債務等をそのまま引き継ぐ可能性がある。

事業譲渡

概要:

  • 事業譲渡とは、売り手・売却側が持つ事業の全部または一部を買い手・買収側に譲渡する手法である。
  • 買い手側は、売り手側の事業を引き継ぎ、運営を継続する。
中小企業のM&Aの現状
出典:中小M&Aガイドライン参考資料

この図では、売り手側(A社)の「乙事業」を、買い手側(B社)が買い取ることを示しています。

メリット:

  • 買い手側企業は、新たな事業領域への進出や、事業拡大が可能となる。
  • 買い手側企業は、特定の事業や財産だけを買い取るため、簿外債務・偶発債務のリスクが減る。
  • 売り手側企業は、事業の一部を売却することで資金調達や経営資源の集中化を図ることができる。

注意点:

  • 事業譲渡の場合、資産・負債・契約及び許認可等を個別に移転させる必要があるため、債権者や従業員などの利害関係者から個別の同意を得る必要がある。
  • 許認可は承継されないことが多く、買い手側で許認可を新規に取得する必要がある。
  • 事業譲渡は、株式譲渡に比べて手続が煩雑になる。

これらの手法のほかに、「会社分割」・「合併」・「業務提携・資本提携」などがありますが、中小企業のM&Aでは、株式譲渡と事業譲渡の二つが多く採用されています。

ここまで説明してきたように、中小企業のM&Aは、増加傾向にあると共に、株式譲渡や事業譲渡は、中小企業のM&Aにおいて重要な手法の一つです。

では、企業戦略としてみた場合のM&Aはどのようなものがあるかについて次に説明します。

M&Aの4つの主要なパターン

M&Aには次の4つのパターンがあります。自社の経営戦略・自社を取り巻く社会環境などを考慮し、どのパターンを選ぶのかを決めていきます。

  1. 水平統合:
    競合する同業他社を買収し、事業規模の拡大や市場シェアの高める戦略。
  2. 垂直統合:
    製造・販売・流通など、異なるバリューチェーン上の企業を買収し、事業の効率化を図る戦略。
  3. 異業種買収:
    自社の事業以外の事業を展開する企業を買収し、新規事業への参入や顧客層の拡大を図る戦略。
  4. 部分買収:
    特定の事業部門やブランドのみを買収し、必要な機能や資源だけを取り込む戦略。

最後に、中小企業のM&Aの工程・流れについて説明していきます。

中小企業のM&Aの各工程・流れ

中小企業のM&Aの現状

中小企業のM&Aの全体の工程・流れが下図です。

中小企業のM&Aの現状
出典:中小M&Aガイドライン(第2版) P30

このフロー図は、中小企業庁が作成した中小M&Aガイドライン(第2版)に掲載され、以下のように説明されています(太字・赤字は「M&A HACK」による)

一般的に、中小M&Aは、以下のフロー図の「中小企業の動き」に記載の流れに沿って進むことが多い。また、同図の各工程においては、「主な支援機関」に記載の支援機関が中小M&Aの支援を行うことが多い(実際には、個別の事例において、これら以外の支援機関が支援を行うケースもある。)。

出典:中小M&Aガイドライン(第2版) P29

ここで指摘されているように、中小企業のM&Aの多くはこの流れで行われると同時に、各工程それぞれにM&A専門業者が助言・支援を行っているのが現状です。

では、それぞれの工程の概要を「中小M&Aガイドライン(第2版)P30-46」に準じて説明します(注:下の表の見出しは、上記のフロー図記載の見出しに準ずる。例.「(1)意思決定」)

以下の表で、大まかな中小企業のM&Aの各ステップが理解いただけるはずです。

工程・流れ 内容
(1)意思決定
  • 経営者がM&Aを行うかどうかの決定は容易ではなく、支援機関への相談を行う。
  • その後、最後の意思決定を経営者自らが行う。
(2)ー1 仲介者・FA(※)を選定する場合
  • まずは、M&A専門業者のような仲介者・FAを選定し、仲介契約・FA契約を締結する。
  • 仲介者・FAの選定は、報酬だけでなく業務形態や業務範囲・内容、M&A取引の実績などを確認し、複数から比較検討して決定する。

※FA(フィナンシャル・アドバイザー)とは、買い手側・売り手側それぞれ一方との契約に基づいてマッチング等を行う支援機関のこと。

(3)バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)
  • 企業価値評価は事例ごとに異なるため、適切な方法の選択には支援機関やM&A専門業者への相談が望ましい。
(4)譲り受け側の選定(マッチング)
  • 相手を探すマッチングは、最も重要な工程。
  • 信頼できるM&A専門業者などにマッチング支援を依頼して進めることが有用。
(5)交渉
  • 売り手・買い手の経営者同士の面談(トップ面談)は、特に重要。
(6)基本合意の締結
  • 基本合意は、その時点における売り手・買い手の主な了解事項を確認して締結。
(7)デュー・ディリジェンス(DD)
  • 買い手が、売り手の財務・法務などの観点から第三者専門家に依頼して調査。
(8)最終契約の締結
  • DDで発見された点や基本合意で留保していた事項について再交渉を行い、最終的な契約を締結する。
  • 株式譲渡か事業譲渡が用いられることが多い
(9)クロージング
  • 株式や事業の譲渡、譲渡代金の支払を行う。
(10)クロージング後(ポストM&A)
  • クロージング後、売り手側は、PMI(M&A 実行後における事業の統合に伴う作業)として、買い手側への円滑な引継ぎに誠実に対応する。

中小企業のM&Aでは、専門業者が必要

中小企業のM&Aの現状

ここまで、中小企業の観点からのM&Aについて、売り手・買い手双方のメリット、数値による概況やM&Aの類型、各工程について説明してきました。

また、M&Aを円滑に進めるためには、数多くの事例を取り扱っている我々のようなM&A専門企業の必要性もご理解いただけたと思います。

今までの説明で、もしご不明な点、さらに深く知りたいとお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。

ご相談は無料です。

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さて、次からは、ドラッグストア業界へ再度、視点を戻し、この業界のM&Aについてくわしく説明していきます。

第二部:ドラッグストアの概況・大手の経営統合と中小ドラッグストアの生き残り戦略

一般用医薬品や処方薬の販売をメインにしながらも、日用品や食品、化粧品などを積極的に販売することで、成長を続けるドラッグストア。

まずは、ドラッグストアの概況について説明していきます。

ドラッグストアのM&A

小売業界で大きな存在感を占めるドラッグストア

以下の図のように、ドラッグストアの売上高は、日本の商業販売額の中で、スーパー、コンビニに続く第3位を占めています。

ドラッグストアのM&A
出典:経済産業省 2023年 小売業販売を振り返る P1

また、ドラッグストアの成長率は、前年比8.2%で、小売業の中で首位を走っています。

ドラッグストアのM&A
出典:経済産業省 商業動態統計調査から「M&A HACK」作成

ドラッグストア全体で、2014年は、5兆円程度の売上が、2023年には9兆円近くまで大きく成長しています。

多種多様な商品を扱っているドラッグストアですが、食品と調剤が全体の売り上げをけん引していることがわかります。

ドラッグストアのM&A
出典:経済産業省 商業動態統計調査から「M&A HACK」作成

このグラフのように、2014年は1兆2,000億円だった食品は2倍以上の2兆7,000億円に増加、調剤医薬品は、3,400億円から8,100億円まで、こちらも2倍以上に増加しています。

ドラッグストアは、食品から医薬品までを1度の買い物で済ますことができるだけでなく、コンビニエンスストアよりも安い価格で日用品や食品などを購入できます。

コロナ禍で、人との接触を避ける点においても、一度にすべてが安価で揃うという利便性が、ドラッグストアの成長に寄与したといえます。

大手5社で業界全体の売上の5割を占める

以下が、2023年度末時点での大手ドラッグストア上位3位の売上高です。

1位:ウエルシアホールディングス

売上高:1兆1,442億円

ドラッグストアのM&A
  • ドラッグストア業界で1位を4年連続で獲得
  • 調剤併設型店舗の積極的に展開
  • 「地域No.1の健康ステーション」を目指し、介護サービスやデイサービス、グループホームなどの事業展開も行う。

参考:2023年度有価証券報告書|ウエルシアホールディングス株式会社 P2

2位:ツルハホールディングス

売上高:9,700億円

  • 調剤併設型店舗の積極的な展開で業績を伸ばす
  • 「お客様の生活に豊かさと余裕を提供する」という理念のもと、地域医療の担い手として、より身近で安心できるサービスを提供
  • HBC(健康・美容・ケア)の展開に定評があり、自社社員によるカウンセリングで消費者に対応

参考:2023年度有価証券報告書|株式会社ツルハホールディングス P2

3位:マツキヨココカラ&カンパニー

売上高:9,510憶円

ドラッグストアのM&A
  • 2023年4月、マツモトキヨシホールディングスとココカラファインが経営統合し、新会社「株式会社マツキヨココカラ&カンパニー」が誕生。
  • 地域に密着した医療・介護・健康サポートの提供を目指し、地域包括ケアシステムの構築に取り組む。
  • アジア地域への事業展開にも注力しており、海外市場での事業拡大を目指す。

参考:2023年度有価証券報告書|株式会社マツキヨココカラ&カンパニー P2

さて、このランキングの上位1位と2位である、ウエルシアHDとツルハHDが経営統合するという大きなニュースが2024年2月に発表されました。

以下に説明します。

日本最大のドラッグストア連合体へ:ウエルシアHDとツルハHD 経営統合へ協議開始合意

イオンとツルハホールディングス(以下、ツルハHD)、ウエルシアホールディングス(以下、ウエルシアHD)の3社は2月28日、経営統合の協議を開始することに合意、それに向けて、資本業務提携を締結しました。

概要は以下の通りです。

  • 親会社のイオンが、香港投資ファンドから約1000億円でツルハHD株を取得。
  • イオンは、段階的にツルハ株を買い増して統合を主導。2027年末までに統合を終える計画。
  • ツルハHDは、イオンの持分法適用関連会社になり、最終的にイオンの子会社へ
  • 株式交換でウエルシアHDは、ツルハHDの子会社となる。
ドラッグストアのM&A
出典:ウエルシア、社長”不倫辞任”で頭をもたげる「2つの懸念」|会社四季報オンライン

この経営統合が実現すれば、ドラッグストア売上高3位以下を大きく引き離す、売上高2兆円超、5000店超の巨大企業が誕生すると同時に、アジア展開も見据えたイオングループのヘルス&ウエルネス事業の中核を担うこととなります。

参考:株式会社ツルハホールディングス、イオン株式会社及びウエルシアホールディングス
株式会社との資本業務提携、並びに株式会社ツルハホールディングスにおける主要株
主及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ

2021年には、マツモトキヨシホールディングスとココカラファインが経営統合し、現在、店舗数は3400店舗と業界トップとなっています。

しかし、この統合が実現すれば、上述したように、店舗数は5000店舗を超え、売上・店舗数それぞれ業界1位となります。

今回の経営統合を機に、ドラッグストア業界では新たな再編が起き、さらに大手の寡占化が進む可能性があります。

一方、中小規模のドラッグストアは、生き残りをかけて、今後、どのような戦略を立てていくのかについて、次に説明します。

フード&ドラッグ:独自路線を進む中堅ドラッグストアチェーン

食品の品揃えを強化し価格訴求することで集客を図り、粗利益率の高いヘルス&ビューティケア商材によって収益を確保するというビジネスモデルが「フード&ドラッグ」という業態です。

食品を買う「ついで」に、日用雑貨を買ってもらう。粗利益率の高い日用雑貨や化粧品を購入してもらい、低収益の食品を支える業態です。

食品を自前で提供:ゲンキーの戦略

北陸の中堅ドラッグストアチェーンのゲンキー。近年、急速に成長している中堅ドラッグストアーチェーンです。

2019年に1,000億円だった売上は、24年6月期は売上高1,800憶円を予想、5年間で2倍近くの成長を遂げています。

ドラッグストアのM&A
出典:【Genky DrugStores】[9267]決算発表や業務・財務情報 | 日経電子版
外部に委託することが多いドラッグストア業界では異例の、自前で食品加工兼物流センターを設置し、自社のドラッグストアに弁当や総菜、精肉を供給しています。現在、売り上げに占める食品の割合は、6割以上で、業界トップを走るゲンキー。さらに、ドラッグストアでありながら調剤薬局を持たない戦略です。

ドラッグストアのM&A
出典:Genky DrugStores株式会社 2023年6月期 決算説明資料 P20
ドラッグストアのM&A
出典:Genky DrugStores株式会社 2023年6月期 決算説明資料 P14 赤枠は「M&A HACK

食品販売を前面に押し出していく点について、ゲンキーの藤永社長はインタビューで以下のように答えています。

フード&ドラッグを標榜するからには、「食品スーパー(SM)に行かなくても買物が完結できる店」にする必要があります。ただし、食品を単なる“集客マシン”と位置づけて展開するだけでは、よい結果は得られません。食品を入れると、ヘルス&ビューティケア用品の売上高構成比が下がり、それだけ収益性も低くなるからです。

また、フードを絡めたワンストップ性を打ち出すなら、生鮮は必須です。他社では外部納品やコンセッショナリーの導入、あるいは地場SMのM&A(合併・買収)によって生鮮の品揃えを拡充する動きもあるようです。しかしそうした戦略は、収益性はもちろん、売場運営や人材のマネジメント面でも負担が大きいでしょう。

それに対してわれわれは売場運営、商品政策(MD)の策定、PC活用、物流をすべて自前で行っています。自社で戦略を考えて仕組みをつくらなければ、生鮮を含めた食品の導入による収益性向上と差別化は難しいのではないでしょうか。

出典:ゲンキー藤永賢一社長が語る、「他のフード&ドラッグ」にない強みと1万店戦略 _流通・小売業界 ニュースサイト【ダイヤモンド・チェーンストアオンライン】 太字・赤字は「M&A HACK

このように、食品の収益向上と差別化を目的に自前主義を掲げるゲンキー。以下のように、積極的に物流・食品加工センターを設置しています。

ドラッグストアのM&A
出典:Genky DrugStores株式会社 2023年6月期 決算説明資料 P29

ゲンキーは中堅ドラッグストアとして、自前主義を貫いている一方、積極的なM&Aでフード&ドラッグ業態を推進している企業が、ドラッグストア上位10位以内に位置するクスリのアオキです。

食品スーパーを積極的に買収:クスリのアオキ

クスリのアオキは、「第三次中期経営計画:Vision2026(2022年5月期 ~ 2026年5月期)」で、以下の重点施策を打ち出しています。

ゲンキーと同様に「フード&ドラッグ」を打ち出しています。

ドラッグストアのM&A

しかし、ゲンキーとは違い、積極的に食品スーパーを買収することとし、2020年6月、金沢市内に食品スーパー5店舗を展開するナルックスを子会社化。その後、20年10月に京都府北部で8店舗を展開するフクヤを子会社化、さらに21年5月に石川県輪島市のサン・フラワー・マリヤマを吸収合併しています。

その後も、下図のように、事業譲渡や吸収合併を急速に行っています。

このように、クスリのアオキは、各エリアで食品スーパーを買収し、好立地物件をアオキの店舗へ改装しています。

ドラッグストアのM&A
クスリのアオキ宮村店」(旧「フクヤ宮村店」)
出典:買収した京都老舗スーパーをクスリのアオキとしてオープン ドラッグ強化型売場づくりを徹底解説 _流通・小売業界 ニュースサイト【ダイヤモンド・チェーンストアオンライン】

ここまで説明してきたように、ゲンキー・クスリのアオキいずれも、フード&ドラッグという業態を打ち出しながらも、ゲンキーは自前で、クスリのアオキは積極的なM&Aという対照的な戦略を推進しています。

大手チェーンが、中堅ドラッグストアチェーンを傘下に入れて、拡大していく流れは、今後も続きます。しかし、ここで紹介したゲンキーやアオキのように、大手からは距離を置き、地域に密着した経営を続ける中堅ドラッグストアチェーンは少なくないでしょう。

その意味でも、中堅ドラッグストアチェーンにおいて、自社の戦略に基づくM&Aの実施は、今後の大手の進出を考えても重要性は高まる一方だといえます。

直面する課題への対応は、自社単独では難しい

ここまで説明してきたように、ドラッグストアにおいても、M&Aは有効な戦略の一つです。

大手の寡占化が続く中で、ドラッグストア業界で差別化を図り、生き残っていくためには、大きな投資や時間が必要であり、すべての企業が自社だけで実現することは難しいのが現状です。

これらの観点からも、時間を買うことで早期に課題を解消するM&A戦略は、急速な変化に対応する有効な戦略となるのです。

クスリのアオキのように、自社単独で営業基盤を構築するのではなく、既に強固な営業基盤を保有する地元企業を買収し、時間やコストを抑えていくという観点から、中小企業のM&A戦略の一つとして検討する価値があるといえます。

ここまで、ドラッグストアの概況や中堅ドラッグストアチェーンのM&A戦略などについて説明してきました。

最後に、中小企業がM&Aを実行するうえで知っておくべきことを説明します。

第四部:中小企業のM&Aについて欠かせないこと

中小企業のM&Aの注意点

ここでは、中小企業がM&Aを行う際に留意すべき点として、競業避止義務について説明していきます。

競業避止義務:中小企業のM&Aの注意点

中小企業のM&Aにおいて最も留意すべきポイントとなるのが、「競業避止義務」です。

競業避止義務とは、一般的に「一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと」と定義されます。

以下が、留意すべき点です。

  1. 情報の非公開化:
    M&Aに関わる企業は、取引の過程で得た相手方の機密情報や営業上の秘密を外部に漏らさない義務があります。これには、製品開発や戦略・顧客リストなどが含まれます。
  2. 事業活動の制限:
    M&A後、特に買収された側の企業の経営者や重要な従業員は、一定期間、同業他社で働くことや新たに競合する事業を立ち上げることが制限される場合があります。買収した企業の投資価値保護のためです。
  3. 顧客やサプライヤーとの関係:
    M&Aを通じて得た顧客やサプライヤーとの関係を利用して、不当な競争優位を得る行為を避ける義務があります。これには、不公正な価格設定や市場独占の形成を防ぐことが含まれます。
  4. 市場への影響:
    M&Aによって既存市場の様相が大きく変化し市場の競争が不当に制限される可能性があります。これは消費者の利益を毀損することにつながるため、適切な市場分析と関係者間や監督官庁と調整を行う必要があります。
  5. 従業員の扱い:
    M&Aで発生する可能性がある従業員の解雇や職務の変更に際して、公平な手続きを行う義務があります。これには、適切な通知期間の提供や、必要に応じた再教育・再配置の支援が含まれます。

M&Aを行う際は、これらの競業避止義務に留意し、適切な契約内容を定めることが重要です。

中小企業のM&Aを成功させる3つのポイント

ガラス製造・土石製品製造会社のM&A

今までのM&A HACKの経験から、中小企業のM&Aを成功させるためには、大きく3つのポイントがあると考えています。

  1. M&A戦略の綿密な立案
  2. 相場価格をよく理解しておく
  3. 統合後のプロセス(PMI)の重要性

これらをそれぞれ詳しく解説していきます。

M&A戦略の立案のポイント

M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。

M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。

M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。

  • M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
  • 自身の企業は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
  • いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
  • 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
  • M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側)

上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになります。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。

M&Aについて自社に詳しい人物がいない場合、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。

当社のM&A仲介サービスM&A HACKでは上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬、リスクなしの報酬形態にて一気通貫で対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。

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相場価格をよく理解しておく

M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、相手先の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。

中小企業のM&Aでは、上述したように株式譲渡か事業譲渡が活用されます。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。

  • 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
  • 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分

当然ながら事業利益が多いほど、相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A専門業者などに依頼することになりますが、可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。

また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することは、あらかじめ考慮しておく必要があります。

PMI(統合後プロセス)の確立

M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。

PMIとは何か:

PMIは、M&A成立後に行うもので、売り手側と買い手側企業の統合に向けた作業であり、本来のM&Aの目的を実現させ、統合の効果を最大化するために必要なものです。

中小企業のM&Aの現状
出典:中小PMIガイドライン P10

この図のように、M&Aの成功にはPMIは欠かせないプロセスといえます。また図のように、PMIは、以下の3つを軸に計画を策定します。

  • 経営統合
  • 信頼関係構築
  • 業務統合

PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させます。

また、PMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間を要することがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。

PMIの詳細については、中小企業庁が令和4年に策定した「中小PMIガイドライン」を参照いただくか、M&A専門企業の「M&A HACK」までご相談ください。

ご相談は無料です。

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終わりに

今まで紹介してきたように、M&Aは、自社だけでなく業界全体の成長をも促す重要な手段です。

ドラッグストアにとって、拠点の拡大や関連事業の参入、事業承継などを目的として、M&A戦略を行うことは、今後は必須であるといっても過言ではありません。

まとめとして、ここでお伝えしたいことは、M&A成功のポイントは、明確な成長戦略を持つことがまず必要であるということです。

また、M&Aを単なる拡大戦略と捉えるのではなく、企業の長期的な目標達成にどのように貢献するかを考え、戦略を立案しなければなりません。

さらに、M&A後の統合プロセスにおいて、企業文化の融合や従業員のモチベーション維持に注意を払うことも、成功への鍵となります。さらに、事前のデューデリジェンス(買収前調査)を徹底することで、リスクを最小限に抑えることも求められます。

このように、M&Aは、大手企業だけでなく、中小企業にとっても大きなチャンスであると同時に、専門性のある慎重な準備と戦略的なアプローチが必要な取り組みです。

そのためにも、専門的な知見と経験を持つM&Aアドバイザリー企業であるM&A HACKなどの専門家と協力し、適切なサポートを受けながらM&A戦略を立案することが重要であることを最後にお伝えいたします。

最後になりますが、ドラッグストアの経営者・オーナーの皆様のM&Aのご検討に、この記事が少しでもお役に立てればと考えております。

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