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ビルメンテナンス会社のM&A・事業承継の全知識!売却相場・事例・成功ポイントを徹底解説

「ビルメンテナンス業界のM&Aの売却相場は?」
「ビルメンテナンス業界のM&Aについて知りたい」

この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。

実際に現状「ビルメンテナンス業界 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。

そこで、今回はM&Aの専門企業であるM&A HACK」が、この業界のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。

ビルメンテナンス業界におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、この業界のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。

目次

ビルメンテナンスとは

「オフィスビル」の写真

ビルメンテナンスとは

ビルメンテナンスとは、ビルや建物における様々な維持管理を指します。その事業内容は環境衛生管理、設備の保守点検、警備や防災対策、建物の保全作業など様々です。大手企業であれば、これらすべての業務を手掛けることができます。

主な業務としては、清掃やゴミ処理などの環境衛生管理、電気・通信・空調設備などの設備管理、不審者の侵入防止や災害時対応などの保安警備業務、建物の改修工事や日常のちょっとした修理などの建物保全業務が一例です。ビルメンテナンス会社はこれらを総合的に請け負うことで、建物の適切な運営に貢献しています。

ビルメンテナンス業者の顧客

一方で、ビルメンテナンス会社の主要顧客層は、ビルのオーナーや不動産会社、ビル管理会社、マンション管理組合などとなります。これらのビルの所有者や運営管理者から、建物の維持管理業務を一括して委託されることが一般的です。

ビルオーナーなどにとっては、様々な業務を個別に発注するよりも、ビルメンテナンス会社に一括委託した方が効率的で経済的となります。大規模なオフィスビルや商業施設、集合住宅など、ビルの規模が大きくなるほど、専門のビルメンテナンス会社に維持管理を外部委託することのメリットは高いです。

また、ビルの運営管理に専念したい不動産会社やビル管理会社からの委託も多くなっています。マンション管理組合においても、共用部分の清掃や設備管理などをビルメンテナンス会社に委ねるケースが多いです。

このように、ビルの所有者や管理者にとって、ビルメンテナンス会社は建物の適切な維持管理に不可欠な存在となっています。中小企業では特定の分野に特化し、地域密着型の事業展開を行うケースも多数です。

高度な技術が必要

ビルメンテナンス業務は、建物に備わる様々な設備機器の保守点検から、修理、改修工事に至るまで、高度な技術が要求される職種です。

建物には空調設備、給排水設備、照明設備、エレベーター設備など、多種多様な設備が組み込まれています。それぞれの設備は、専門的な構造や機能、制御方式を持っており、適切な保守には高い専門知識が必要です。例えば空調設備では、冷媒の漏れ点検や熱交換器の洗浄、制御プログラムの調整など、綿密な作業が大切となります。

また、設備のトラブルに際しては、原因の特定と速やかな対処が欠かせません。経験とノウハウに基づく的確な故障診断と、迅速な修理が要求されるのです。さらに大規模改修工事となれば、設計図面の読解力や各種法令の理解、工程管理の技術まで求められます。

このように、ビルメンテナンスには幅広い知識と高度な専門スキルが必要不可欠です。OJT(現場での実践教育)を重ね、長年の経験を積む中で技術を磨いていくことが重要視されています。今後、IoTやAIなど新しいテクノロジーを取り入れていくためにも、技術の継承と人材育成が大きな課題です。

ビルメンテナンス業界の市場動向と市場規模

公益社団法人全国ビルメンテナンス協会「ビルメンテナンス情報年間2023」から

公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が発表したデータによると、2021年度のビルメンテナンス市場の規模は約4兆5,700億円となり、前年の2020年度の約4兆5,000億円から微増しました。2020年度はコロナ禍の影響が最も大きかったため、2021年度はわずかながら回復の兆しが見られました。

しかし、この回復傾向は大手企業を中心としたものであり、中小規模のビルメンテナンス事業者の多くはなお厳しい経営環境に直面しています。新型コロナウイルスの影響から完全に脱しきれておらず、ビルメンテナンス業界全体として本格的な回復には至っていないということです。

ビルメンテナンス業界が持つ課題

ビルメンテナンス業界の市場規模は拡大傾向にありますが、この業界には様々な課題があります。この業界が持つ主な課題は、以下の通りです。

  • 深刻な人材不足
  • 技術の継承が困難
  • 老朽化による管理コスト上昇

それぞれ詳しく解説していきます。

深刻な人材不足

ビルメンテナンス業界における人手不足は深刻な状況が続いているのが現状です。コロナ禍によって、ビルメンテナンスの需要が激減しました。それによる賃金の大幅な低下が従業員の離職を引き起こす大きな要因です。さらに、処遇面での魅力に乏しいことも就労を避けられる理由となっています。

加えて、若年層の入職者が大幅に減少している点も大きな問題の一つです。ビルメンテナンス作業は肉体労働が中心となるため、現役世代の労働者が不可欠ですが、それを十分に確保できず常に人手不足な業界となっています。

現在は大手事業者と中小事業者の格差が非常に広がっている状況です。そのため、中小企業では差別化を図るために外国語対応スタッフの採用や教育制度の充実、新しい技術の導入など、様々な施策に積極的に取り組んでいます。

技術の継承が困難

ビルメンテナンス業界では、長年の経験を持つベテラン従業員の大量退職が進み、彼らが持つ専門的な知識やノウハウを次の世代に確実に継承していくことが大きな課題となっています。

この業界は設備機器の保守点検から修理、改修工事までを含む幅広い作業を扱っており、高度な専門性が求められる業界です。これまでは現場での実践を通じた訓練が一般的でしたが、ベテランの退職により貴重な経験知が失われてしまう恐れがあります。

技術の継承が滞れば、作業の質の低下や効率性の悪化が避けられません。また突発的なトラブルへの対処が遅れるなど、ビル管理業務全体に重大な支障をきたす可能性があります。そのため、若手従業員への確実な技能・知識の移転が喫緊の課題です。

人材を教育する人々は、集合研修の実施や技術マニュアルの整備、ベテランとの実践的な合同作業など、様々な取り組みを行っています。熟練技術者の豊富な知見を体系化し、着実に次世代へ継承することが、この業界の生産性と安全性の維持につながるのです。

老朽化による管理コスト上昇

ビルメンテナンス業界における大きな課題の一つが、ビル設備の老朽化です。建物が建てられてから長い年月が経過すると、設備機器の劣化が避けられなくなります。エアコン、照明、給排水設備、エレベーターなど、ビルを支える様々な設備が経年によって性能が低下してしまうでしょう。

それによって、ビルメンテナンスにかかる費用も上昇してしまいます。しかしながら、設備の入替えをする場合では多額の費用が必要となり、建物オーナー側の負担が大きいです。修繕積立金の範囲を超える費用となれば、更新の遅れが避けられません。結果的に老朽化した危険な設備が長期に渡り使用され続けてしまう可能性があります。

加えて、古い設備はエネルギー効率が悪く、ランニングコストも高いです。環境負荷の観点からも、新しい省エネ型設備への移行が求められます。建物の経済的価値を維持し、安全性と環境性能を確保するためには、戦略的な設備投資とライフサイクルコストの見直しが欠かせません。オーナーとテナント、ビルメンテナンス会社の三者が協力して、適切な時期に設備更新を行うことが重要となっています。

ビルメンテナンス業の動向と今後

「都会のビル群を見上げる」の写真

M&Aにおいて業界の現状とこれからを理解しておくことは非常に重要です。そこで、ここではビルメンテナンス事業の動向と今後について解説していきます。ぜひ参考にしてください。

先進技術の導入が加速

ビルメンテナンス業界では、IoT、AI、ロボット技術などの先進技術を積極的に導入する動きが広がっています。センサーやカメラなどのIoTデバイスから収集したビルの状態データを、AIで解析することで、設備の予防保全や故障予測が可能です。適切なタイミングで保守を行うことで、トラブルを未然に防げるだけでなく、コスト削減にもつながります。

また、ロボットの活用により、人手不足の解消や作業の自動化、生産性の向上も可能です。ドローンを利用した点検や、ウェアラブルデバイスを使った遠隔作業支援なども実用化が進んでいます。さらに、レーザースキャナーで建物の3Dデータを取得し、修繕計画を立てる試みも行われるなど、テクノロジーを用いたメンテナンス業務の高度化が加速中です。

一方で、こうした新技術を活用するには、機器の導入コストや人材育成、セキュリティ対策などの課題もあります。しかし、メンテナンス品質の向上やコスト削減を実現するためにも、技術革新への対応は避けられない道です。今後は業界全体で先進技術の検証と効果的な活用方法を見出していく必要があるでしょう。

食品ロス対応の重要化

近年、ビルの環境性能向上への社会的要請が高まっており、ビルメンテナンス業界にも大きな影響を与えています。建物から排出されるCO2を削減し、地球温暖化対策に貢献することが必要です。

このため、ビルの省エネルギー化が重要な課題となっています。古い低効率な設備を、最新の高効率設備に更新することで、消費エネルギーを大幅に削減可能です。また、ビル内に太陽光発電設備を設置するなど、再生可能エネルギーの活用も進められています。

さらに先進的な取り組みとして、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギービル)への対応も必須です。建物で消費する年間の正味エネルギー量を概ねゼロにする高い環境性能が求められ、ビルメンテナンスにも大きな影響があります。省エネ設備の導入はもちろん、光熱費の削減、長寿命化対策など、ビル運営から維持管理に至る総合的な取り組みが必要不可欠です。

外国人労働者の雇用の増加

ビルメンテナンス業界では、日本人従業員の確保が困難なため、外国人労働者の受け入れによって人手を補おうという動きが広がっています。言語や文化の違いはあるものの、外国人労働者を積極的に雇用することで、人員の手当てを図る企業が増えてきました。

実際に外国人労働者を活用する際には、現場でのコミュニケーション円滑化や、作業上の安全確保、生活面での支援など、様々な課題に対応が求められます。外国人従業員への実務教育の徹底や、バイリンガル人材の活用なども重要です。

そして、将来の中心となる人材の確保と育成を見据え、外国人労働者の長期的な定着を狙う取り組みも行われるようになってきました。単なる人手補充にとどまらず、外国人従業員のキャリア形成支援にも力を入れる動きがあります。

ビルメンテナンス業界は人手不足対策として外国人労働者活用が本格化しており、外国人従業員の育成と定着に注力することで、企業は長期的に役立つ人材を確保することが可能です。

ビルメンテナンス業界のM&Aの動向

ビルメンテナンス業界におけるM&Aの動向について解説します。これから企業のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。

人手不足対策のためのM&Aが増加

現在ビルメンテナンス業界が慢性的な人材不足に直面する中、M&Aが有効な解決策の1つとして活用されています。M&Aによって買い取った企業の従業員を自社に入れることによって、人材を獲得することが可能です。

M&Aによって、作業員の人員を集約化し補完できるだけでなく、優秀な人材を確保し、彼らの持つノウハウやスキルを吸収することが可能になります。これにより自社の人材育成力を高め、長期的な視点から人員を確保・強化できるはずです。また、M&Aで良いビルメンテナンス技術を買い取ることで、限られた人員での生産性を最大化し、人手不足を補う効果も期待できます。

さらにM&Aを契機に規模が拡大すれば、従業員の賃金アップなども実現しやすくなり、人材確保が一層しやすくなるでしょう。若手や未経験者の育成が重要課題となっているこの業界で、M&Aを通じた教育研修体制の強化により、人材育成面での大きな効果を挙げられる可能性もあります。

環境関連企業の買収の増加

現在、環境対応や社会課題への取り組みが重視されている状態です。その中、各社は環境に配慮する経営(ESG経営)の強化を重要課題と位置付けています。持続可能な事業の確立に向け、M&Aを積極的に活用する動きが活発です。

そして、具体的にビルメンテナンス業界では、環境負荷の低減が大切な課題とされています。そこで一部の大手企業が、リサイクル事業や環境エネルギー関連企業の買収を検討中です。買収先の環境配慮型のノウハウやリソースを取り込み、持続可能な経営の強化を図る狙いがあります。CO2排出削減や再生可能エネルギーの活用など、具体的な施策を展開できるようになります。

なお、このような環境配慮の姿勢を公開することも大事です。買収側は、投資家のために環境事業の強化、広報をしています。一方で、売却側はM&Aなども見据え、企業イメージアップのための環境事業に積極的です。

大手や関連企業からの買収の増加

最近は大手ビルメンテナンス会社による中小企業の買収事例も出てきています。大手がビルメンテナンス事業に加わることで、安定した受注が見込めることがメリットです。さらに、信頼を得て更なる受注を狙えます。

加えて、工程管理の効率化や品質管理の向上、人員・機材の有効活用などもメリットです。下請け会社を買収することで、シナジー効果が生まれます。一方で、ビルメンテナンス業を手がける中小企業同士のM&Aも活発です。これにより、お互いで協力した受注規模の拡大や地域展開、人材確保などを図ることが可能です。

このように、関連事業者間でのM&Aを通じて、業務の効率化や収益力の向上を図る動きがビルメンテナンス業界で活発となります。業界再編が進む中で、経営基盤の強化が課題となっている状況がうかがえるでしょう。

ビルメンテナンスのM&Aをするメリット

ビルメンテナンスのM&Aにおいてのメリットを売却側・買収側の両方から解説します。メリットを元にしてM&Aを検討してください。

売却側のメリット 買収側のメリット
  • 仕事効率の向上
  • 人材不足の解決
  • 従業員の雇用先の確保
  • 担保や個人保証の解決
  • 早期リタイアが可能
  • 譲渡による利益の獲得
  • 事業規模の迅速で効果的な拡大
  • 新規事業へのハードルの低下
  • 優秀な人材の確保が可能
  • シナジー効果の発揮
  • 優秀な技術や知的財産の獲得

売却側のメリット

ビルメンテナンスにおける売却側のメリットは、以下の通りです。

  • 仕事効率の向上
  • 人材不足の解決
  • 従業員の雇用先の確保
  • 担保や個人保証の解決
  • 早期リタイアが可能
  • 譲渡による利益の獲得

それぞれ詳しく解説していきます。

仕事効率の向上

どの仕事でも、仕事をどれだけ効率的に早く行えるかが大切です。しかし、中小企業においては設備や技術への投資に限界がある状態です。なので、大企業に勝てるようなサービスを行うことは困難でしょう。

しかし、大企業の傘下に入ることにより、大企業の豊富な資金や従業員を使って自社を急成長させることが可能です。また、合併した大企業と競争の必要がなくなるのも良いといえます。

人材不足の解決

昔に創業をしたビルメンテナンス関係に携わる企業は、現在後を継ぐ人がいない状態です。これには少子高齢化や高い技術を必要とする労働環境などが関わっています。深刻な後継者不足によって廃業してしまうと、顧客や取引先に迷惑をかけてしまうでしょう。

M&Aをここですることにより、買い手に経営を任せることができます。それにより、会社は廃業を避けて存続することが可能です。買い手側の豊富な人材により、今までできなかったことができる可能性もあります。

従業員の雇用先の確保

先ほどの後継者問題とも関係しますが、会社が廃業となると従業員が全員失業してしまうこととなります。ここでM&Aを使うことにより従業員の雇用先を確保することが可能です。それによって、自身が従業員を解雇する必要もなくなり、従業員の暮らしが守られます。

従業員の雇用条件については買い手と売り手で詳しく相談する必要はありますが、買い手も従業員の確保は進めたいので、上手くいくケースが多いです。

M&Aに関しては黒字の会社の方が買われやすいのですが、赤字の会社でも何かユニークな魅力や顧客からの人気、信頼などがあれば売却できる可能性があります。

担保や個人保証の解決

中小の業者にとって、事業運営のために融資を受ける際に、経営者個人が保証や担保を差し入れることは一般的です。しかし、その個人保証や担保は、万が一の場合に経営者自身の私財を失う危険性があり、大きな心理的プレッシャーとなります。

そういった観点から、M&Aによって事業を売却することで、経営者は個人保証や担保に伴う個人的なリスクから解放されるメリットがあると言えるでしょう。つまり、M&Aを活用することで、経営者自身が破産の危機にさらされるリスクを回避できます。

早期リタイアが可能

事業の経営者は、後継者不足や赤字による借金など事業に対する悩みや不安を抱えています。M&Aで会社を売ることにより、経営者ではなくなり悩みや不安は無くなるでしょう。

会社を売却して得た収益を使えば、今後の生活資金も確保可能なので、老後までずっと金に困らずに生活が可能です。ですので、早期で仕事を辞めるためにM&Aをすることもよくあります。

譲渡による利益の獲得

M&Aで売却をすることにより、企業価値に応じて利益を得ることができます。中小企業においてはかなりの場合経営者とその周りが株式などを保有しているので、ほとんどの利益を独占し新たな事業に活用が可能です。さらに、エグジットのためにM&Aをすることもできます。

実際、新たな事業をするために既存の企業を売却する例も多いです。しかし、M&Aのプランにより課せられる税金や売却益の獲得者が変わる可能性もあるため、そこは注意が必要となります。

買収側のメリット

ビルメンテナンス業界における買収側のメリットは、以下の通りです。

  • 事業規模の迅速で効果的な拡大
  • 新規事業へのハードルの低下
  • 優秀な人材の確保が可能
  • シナジー効果の発揮
  • 優秀な技術や知的財産の獲得

それぞれ詳しく解説していきます。

事業規模の迅速で効果的な拡大

M&Aにおいて買収側が得られる最大のメリットは、事業拡大ができることです。M&Aによって買収側の企業は事業規模や事業エリアの拡大などを狙うことができます。

ビルメンテナンスのM&Aにおいては、機械や従業員といった有形資産と、人々からの信頼やビルの管理技術などの無形資産を両方手に入れることが可能です。大きな信頼や独自の強みを持つ企業を買い取ることによって、円滑な事業を展開できます。ビルメンテナンスにおいては競合他社に負けずに顧客のニーズに応えることが必須なので、それが円滑になるのは嬉しいことです。

新規事業へのハードルの低下

M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに早期進出が可能となります。

景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。

また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。

ビルメンテナンス業界は、多くの従業員や良い機械などがなければ満足な利益を出すことができない業界です。なので、それらを持つ企業を買い取ることにより、有利な状態でビジネスを始めることができます。

優秀な人材の確保が可能

少子高齢化が問題となっている現代では、優秀な人材の確保はどの業界においても必須の課題です。優秀な人材を確保することは、そのまま企業の行く末に作用します。

M&Aを行うことによって、売却側企業に所属する従業員をそのまま雇用すれば、優秀な人材をそのまま自社に引き入れることができます。もちろん業界におけるノウハウも既に所有しているため、研修を行う手間も省くことが可能です。

ただし売却側企業に所属する従業員全員が優秀であることの保証はないことに加え、M&A後の企業文化の変化に付いてこられず、離職する従業員が発生する可能性もあります。M&Aによって従業員を引き継ぐ場合には、非常に繊細な注意が必要です。

さらに、ビルメンテナンスは高度な技術が必要となります。そのため、従業員を前の会社よりも多く働かせ辞職されてしまうと大変です。従業員の心身のケアは常にする必要があります。

シナジー効果の発揮

他の企業を買収し二つの企業の経営資源や技術を融合することにより、相乗的な効果が生まれます。例えば企業が持っていた大量の従業員ともう一つの企業が持っていた最新の機械を組み合わせて、効率的な業務体制を作るなどが一例です。

さらに、二つの企業の従業員同士が交流しながら働くことにより、お互いで技術の向上ができるかもしれません。ただし、逆に二つの企業が合わさることにより悪い効果が生まれる可能性もあるので、工夫が必要です。

優秀な技術や知的財産の獲得

買収をするとできることの一つに、優秀な技術や知的財産の獲得が挙げられます。ビルメンテナンスにおける作業の効率化に関するノウハウや、顧客管理に関するリスト、さらには地域での知名度や顧客基盤といった無形の資産は、買収先企業から獲得できれば大きな強みとなるはずです。

例えば、電気の管理を自動で行う技術、管理工程の最適化手法などを取得できれば、業務効率の改善や生産性の向上が図れ、競争力を高められます。また、取引先、管理方法、従業員などを管理するシステム、機械のバッテリーの管理プログラムや顧客データベースなどのITツールを入手できれば、サービスの高付加価値化や収益性の向上にもつながるでしょう。

さらに、買収した企業が長年培ってきた地域における高い信頼と顧客基盤があれば、買収企業はその顧客を自社に取り込むことで、瞬時に売上を伸ばすチャンスを得られます。特に中小企業の買収では、そうした地場に根付いた技術やノウハウ、顧客の獲得が、大手企業にとって大きなメリットとなる場合が多いです。

ビルメンテナンスのM&Aの注意点

ビルメンテナンス業界のM&Aを行う際の注意点を解説します。M&Aを行う際の注意点は、以下の通りです。

  • M&A前の調査(デューデリジェンス)
  • 買収先の事前の情報確認
  • 従業員、取引先や情報の流出
  • M&Aの専門知識を持たない状態での引き継ぎ

それぞれ詳しく解説していきます。

M&A前の調査(デューデリジェンス)

M&Aにおいて、買収する企業のことを詳しく調査することは必須です。企業を買収した後に問題が発見されると非常に大きな負担がかかってしまいます。そのため現在のM&Aでは先にデューデリジェンスと呼ばれる調査をすることが主流です。

例を挙げると、薄外債務の発覚で思わぬ借金を抱えることがよく起こり得ます。そのため、財務に関する調査を事前にしておくことでそれを防ぐことが可能です。全ての問題を洗い出し解決することにより、買収後スムーズに事業を進められます。

これは買う側に限ったことではありません。売る側も社内調査をしておきそれを報告する義務があります。もしデューデリジェンスで問題が発覚した場合、相手の信頼を下げてしまうことがあり危険です。

買収先の事前の情報確認

これも事前調査と関係がありますが、買収した企業の資源や過去の情報をあらかじめ確認しなければなりません。もし買収した企業が想定より少ない機械を持っていた場合、大きな損害が生じてしまいます。

他にも、買収した企業が過去に問題を起こしていた場合も大変です。従業員の不祥事などが起こっていると、顧客の信頼度を大きく下げます。すると、サービスの利用者が減り想定よりも少ない利益を得ることになるでしょう。

売り手側もきちんとM&Aの前に情報の整理をする必要があります。もし相手側が自身の会社のことをよく理解していない場合、正しく情報を伝えることが大事です。それだけでなく、買い手が資源などを売り手と共有したくない場合もあります。それに関しても先に確認しておくことが重要です。

従業員、取引先や情報の流出

M&Aにて買収を行う企業は、売り手側の従業員や取引先を狙うことも数多くあります。しかし、環境と企業文化が変わることにより、従業員や取引先が流出してしまうかもしれません。

それを防ぐためには、従業員や取引先の事情やこだわりなどを丁寧に考えて、良い施策を打つことが大切です。

さらに、場合によってはM&Aの計画情報が交渉中に漏えいすることがあります。そうすると、従業員や取引先がM&Aの前に減少してしまい価値が下がってしまうかもしれません。そのためには、情報を明かさないために交渉相手と秘密保持契約を結び、情報の漏えい対策をすることが必須です。

M&Aの専門知識を持たない状態での引き継ぎ

ビルメンテナンス業界に限らず、M&Aでは、買い手が売り手より知識や経験が豊富なことから情報格差があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。

買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手が有利になるような企業の低額買収が起こりかねません。最悪の場合には、M&Aで得をしようとしたはずが、不利な条件でM&Aをすることによって、巨大な損害を被るケースもあります。

そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのが定石です。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。

ビルメンテナンスにおけるM&Aを成功させるためのポイント

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ビルメンテナンスにおけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。M&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。

  • M&A戦略の立案
  • 相場価格をよく理解しておく
  • 統合後の事業計画の確立

それぞれ詳しく例を用いながら解説していきます。

M&A戦略の立案

M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化・明確化されます。

M&A戦略では、自社を分析するSWOT分析や市場調査・業界トレンドを調査して傾向の把握が必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収、売却先の選定や交渉を行っていくこととなります。

M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。

  • M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
  • 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
  • いつ・誰と・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
  • 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
  • M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)

上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が雑だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。

以下はビルメンテナンス業界における簡単な一例です。参考にしてみてください。

買収側

M&Aにより何を達成したいか

M&Aにより、ビルメンテナンス事業の信頼をさらに固めたい。それにより売上高を大幅に増やしたい。

いつ・誰と・何を・いくらで・どのように買収するか

半年後にA社の開発した事業や資産の一部を相場にあった金額で銀行融資を使って買収する。

買収において障壁となる要素はあるか

現在まだA社の従業員のスキルがわからず、買収時に損をする可能性がある。
M&Aに必要な予算はどのくらいか 〇〇億円での買収を予定。しかし、売り手の希望による少しの変更は可。

売却側

M&Aにより何を達成したいか M&Aにより最新の機械や優秀な従業員を整えたい。また、売却時に手に入れた利益を老後のために貯金しておきたい。
自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か 自社は高度な技術を用いたビルメンテナンス事業をしており、従業員の教育に力を入れている。多大な信頼と優秀な従業員を持っているので、それら全部をアピールすれば多大な収益が得られる。
いつ・誰と・何を・いくらで・どのように売却するか 利益が安定している時期にB社に対して自社の従業員を含めた全ての財産を時価に会う適正な価格でM&Aアドバイザーを通して譲渡する。
売却において障壁となる要素はあるか 現在顧客リストの整備ができていない。買収より前に顧客のデータを整理し、万全の状態にしておく必要がある。

(実際はこれよりもっと細かく正確に計画を練る必要があります)

しかし、この例を見ると「相場にあった金額」や「時価に会う適正な価格」など、どう決めれば良いかわからないものが複数あると思います。これらを決めるのに大抵の企業は専門業者に依頼や相談をするのが定石です。素人が一人でM&Aをするのは大変危険なので絶対にやってはいけません。

そこで、自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。

当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。

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相場価格をよく理解しておく

M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。

ビルメンテナンス業界のM&Aでは、例として株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることがあります。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。

  • 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
  • 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分

当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を簡単に計算してみましょう。

場合によっては相手側との相談により予算が変わることがあります。なので、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。

統合後の事業計画の確立

M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた目標を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMIという考え方が重要になります。

PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後にどうすれば良いか」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。

  • 新たな経営体制の構築
  • 経営における目標実現のための計画作成
  • 両社協業のための体制構築・業務システムの強化

上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。

またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきものです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行なわなければなりません。

ビルメンテナンス業界のM&Aにおける成功事例

ビルメンテナンス業界に関係するM&Aにおける成功事例を紹介します。これからこの業界におけるM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。

三菱電機によるMotum社の買収

2022年4月、三菱電機はスウェーデンの昇降機メーカーMotum社の全株式を取得し、完全子会社化しました。三菱電機は日本を本拠地とする大手総合電機メーカーであり、グループの中核企業です。一方、Motum社は主にスウェーデンで昇降機事業を展開している会社です。

近年、三菱電機は海外市場での昇降機事業の拡大に力を入れており、特に欧州における保守・リニューアル需要の高まりを受けて、この分野の事業基盤強化が急務となっていました。Motum社の買収により、スウェーデンを中心に欧州での昇降機の保守・リニューアル事業を強化できると期待されています。

加えて、Motum社の運営ノウハウを三菱電機の昇降機事業に活用する計画です。今後は、昇降機とビル関連の製品・サービスとの連携を深め、欧州におけるビル事業全体の強化を図っていく方針だとされています。

参考:スウェーデン昇降機事業会社 Motum 社を買収

ジャパンエレベーターサービスホールディングスと生田ビルディングメンテナンスのM&A

ジャパンエレベーターサービスホールディングスは、2022年10月に高知県を拠点とするビルメンテナンス会社である生田ビルディングメンテナンスを完全子会社化しました。この買収の主な目的は、顧客基盤の強化と生産性の向上を図ることです。

ジャパンエレベーターサービスは独立系のエレベーターメンテナンス企業として保守・リニューアル業務を手掛けており、エレベーターなどの保守契約台数を増やすことで事業基盤を拡大していく方針でした。一方で四国地区における事業基盤の強化も重要な狙いでした。

生田ビルディングメンテナンスを子会社化することで、両社の人的資源を有効活用し、共通のサービス提供地域における業務効率の向上と技術ノウハウの共有によるサービス品質の向上が期待できるのです。ジャパンエレベーターサービスはM&A手法を積極的に活用して事業拡大を目指しており、この買収案件もその一環として位置づけられています。

参考:株式会社生田ビルディングメンテナンスの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

ジャパンエレベーターサービスホールディングスのUNIECO社買収

2021年11月、ジャパンエレベーターサービスホールディングスは、ベトナムのエレベーター設置・メンテナンス会社であるUNIECO VIETNAM COMPANY LIMITEDを子会社化しました。ジャパンエレベーターサービスホールディングスは独立系エレベーターメンテナンス企業で、近年M&Aを積極的に行っています。UNIECOはベトナムのハノイを拠点に、エレベーターの販売・設置と保守管理事業を手掛けていました。

ジャパンエレベーターサービスホールディングスは、中長期的な成長戦略の一環として東南アジア進出を掲げており、この地域への事業展開に向けた準備を進めていました。特に高い経済成長を遂げているベトナムは有望な市場とみなされていました。

UNIECOの子会社化により、ジャパンエレベーターサービスは東南アジア地域への本格的な事業拡大を図り、より一層の企業価値向上を目指そうとしていました。UNIECOの買収はその重要な一里塚として位置付けられていたと言えます。

参考:UNIECO VIETNAM COMPANY LIMITED の 資本持分の取得(子会社化)に関するお知らせ

ジーネクストとBPMの資本業務提携

2021年7月、ビルメンテナンス分野のBPMと、AIやDXなどのIT事業を手掛けるジーネクストが資本業務提携を締結しました。BPMは施工管理やコンサルティングのほか、ビルメンテナンス向けクラウドサービス「Qosmos」の開発・提供を行っています。一方のジーネクストは、顧客接点データを活用したAI/BIの開発や、顧客対応DXプラットフォーム「Discoveriez」の事業を展開する企業です。

両社はお互いの強みを掛け合わせることで、シナジー効果を発揮できると見込みました。具体的には、BPMの「Qosmos」とジーネクストの「Discoveriez」を連携させ、現場の知識管理機能を強化することが可能になります。また、それぞれが保有するリソースの相互活用によって、さらなる相乗効果が期待できるとの判断からこの資本業務提携に踏み切りました。

今後、両社は建物や設備のメンテナンス業務のDX化を推進し、入居者により安心・安全な生活環境を提供することを目指していきます。ビルメンテナンス業界全体の変革と発展につなげていく考えです。

参考:BPMとジーネクストが資本業務提携

イノウエテクニカとTOKAIホールディングスのM&A

2020年11月、TOKAIホールディングスは静岡県を拠点とするビルメンテナンス会社のイノウエテクニカを完全子会社化しました。TOKAIグループは多角的な事業を展開するグループで、TOKAIホールディングスはその持株会社です。一方、イノウエテクニカは静岡県東部を中心に公共施設や民間企業向けのビルメンテナンス業務で確かな実績を持つ地場企業でした。

この買収の背景には、TOKAIホールディングスがイノウエテクニカの長年にわたって培ってきた組織力、地域との信頼関係、技術ノウハウを引き継ぎ、自社の既存ビルメンテナンス事業の強化を図ろうとしていたことがあります。TOKAIホールディングスは両社のリソースを相互に活用することで、静岡県全域でのビルメンテナンス事業の拡大を目指すとともに、将来的には県外へも事業を広げていく構えです。

地場のビルメンテナンス企業を買収することで、TOKAIグループがその強みを取り込み、自社の関連事業の発展と新規地域への進出の起点としようという狙いがあったと言えます。

参考:株式会社イノウエテクニカの株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ

建衛工業の穴吹ハウジングサービスに対する株式譲渡

2020年11月、香川県に本社を置く不動産管理大手の穴吹ハウジングサービスは、北海道のビルメンテナンス会社である建衛工業の株式を取得し、子会社化しました。穴吹ハウジングサービスはマンション管理やパーキング事業などを全国展開しており、建衛工業は札幌を中心に分譲マンション管理やビルメンテナンス業務を手掛けていました。

穴吹ハウジングサービスにとって、この買収は北海道エリアでの事業基盤の拡大を主な目的としていました。建衛工業を子会社化することで、北海道での不動産管理事業の強化が図れるほか、穴吹ハウジングサービスが手掛ける民泊事業の成長にも弾みがつくと判断されました。

一方の建衛工業側は、後継者問題への対応から事業の継続を求めていました。今回の株式売却により、顧客へのサービス向上が実現できるとの考えから、穴吹ハウジングサービスへの経営権の移譲に踏み切ったと言えます。双方にとってメリットのあるM&Aであったと捉えられています。

参考:建衛工業株式会社の株式取得(子会社化) 契約締結に関するお知らせ

メイセイと日本ハウズイングのM&A

2020年8月、ビルメンテナンス大手の日本ハウズイングは、給排水設備関連の保守・点検などを手掛けるメイセイの全株式を取得し、完全子会社化しました。

日本ハウズイングは、マンション・ビルの管理事業や不動産管理、リフォーム工事など多岐にわたる事業を展開している企業です。一方のメイセイは、給排水設備の保守・点検、修理工事、設備の清掃・洗浄などを主な事業としていました。

両社はすでに継続的な取引関係にあり、日本ハウズイングはメイセイの給排水設備に関する高い技術力と実績を評価していました。メイセイを子会社化することで、両社の連携がより一層強まり、優秀な技術者の確保や給排水設備関連の技術力向上が見込めます。その結果、顧客へのサービス品質が向上し、顧客満足度の更なる向上にもつながると日本ハウズイングは期待しています。

この買収を通じて、日本ハウズイングは給排水設備の保守・点検分野での事業基盤を大きく強化することができました。メイセイの高い専門性を取り込み、ビルメンテナンス事業全体の競争力アップを図る狙いがあったと言えるでしょう。

参考:株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

富士ファシリティサービスとファーストブラザーズのM&A

2020年7月、不動産投資を中心事業とするファーストブラザーズは、ビル運営管理やファシリティマネジメントを手掛ける富士ファシリティサービスの株式を取得し、完全子会社化しました。

富士ファシリティサービスは、長年にわたりビル運営管理業務やビル設備の点検・清掃などのファシリティマネジメントサービスを提供してきた実績と信頼があります。ファーストブラザーズはこうした同社の半世紀以上の経験と実績を高く評価していました。

この買収を通じて、ファーストブラザーズは富士ファシリティサービスの大阪をはじめとする拠点網を足がかりに、ファシリティマネジメント事業の領域を拡大し、同事業の成長が見込めると判断しました。富士ファシリティサービスの経営資源と専門性を取り込むことで、ファーストブラザーズ自身のファシリティマネジメント分野での事業基盤を大きく強化できるとの考えから、本件M&Aに踏み切ったと言えます。

不動産投資が主力事業のファーストブラザーズが、ビル運営管理のプロフェッショナル集団を自社グループに組み入れることで、関連事業の拡大と成長を目指す戦略的な買収であったと捉えられます。

参考:富士ファシリティサービス株式会社の株式取得(子会社化)に係る株式譲渡契約締結のお知らせ

都市総合サービスから三幸への株式譲渡

2019年6月、総合ビルメンテナンス企業の三幸は、協力関係にあった都市総合サービスの残り全株式を取得し、完全子会社化しました。三幸は以前から都市総合サービスの株式8.87%を保有しており、部分的な資本関係がありました。

都市総合サービスもビルメンテナンス業を中核事業の一つとしており、両社は協力体制を構築していました。三幸は今回、都市総合サービスとの協力関係をより一層強固なものとするため、完全子会社化に踏み切りました。

この買収を通じて、三幸は両社の人的・物的資源の一体的な運用が可能になるため、業務の効率化や事業の拡大が実現できると期待しています。また、連携強化によるシナジー効果から、企業価値の向上にもつながるとの判断から、全株式取得を決断したと考えられます。

三幸にとって、すでに部分出資していた都市総合サービスを完全子会社化することで、ビルメンテナンス事業における競争力の更なる強化が図れると見込んでいます。既存の協力関係を深化させ、経営資源の相互活用を通じた事業シナジーの最大化を目指す狙いがあったと言えるでしょう。

参考:都市総合サービス株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

ふきのとうとホクタテのM&A

2020年3月、北陸地区でビルメンテナンスや通信システム、商社事業を展開するホクタテは、富山県内でビル管理・清掃請負業務を手掛ける有限会社ふきのとうの全株式を取得し、完全子会社化しました。

この買収の主な背景には、ホクタテがグループ内での連携を強化することで、人手不足への対応や事業基盤の強化・拡大を実現できると考えていたことがあります。富山県内に事業基盤を持つふきのとうをグループに迎え入れ、経営資源を相互に活用することで、人的リソースの有効活用が可能になると判断されました。

また、ふきのとうの持つビル管理・清掃事業のノウハウを取り込むことで、ホクタテ自身のビルメンテナンス事業の強化も可能です。お互いの強みを組み合わせることによるシナジー効果が見込めたことも、この買収の背景にあったと考えられます。

ホクタテは、今後もグループ全体で連携し、より付加価値の高い安全で安心できるサービスを提供できる体制を整備していく方針です。人手不足対策とビルメンテナンス事業の競争力向上を狙い、地場企業の買収に踏み切ったと言えるでしょう。

参考:有限会社ふきのとうの株式取得のお知らせ

まとめ

「オフィスビル」の写真

今回はビルメンテナンス業界のM&A・事業承継の全知識ということで、この業界のM&Aにおける売却相場・事例・成功ポイントを解説しました。

ビルメンテナンス業界は、現在人手不足が慢性的に続いている状態です。そのため、今後M&Aでの人員拡大が必要になってくる企業もあるでしょう。それだけでなく、ビルの管理体制を整備して効率的な事業を行うことも欠かせません。

M&Aは企業の存続や成長のための戦略としてとても効果があります。ですが、生半可にできるものではありません。ぜひ今回の記事を参考にビルメンテナンスにおけるM&Aを検討してみてください。

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