「金属加工・金属製品製造業界のM&Aについて詳しく知りたい」
「事業承継を考えているが、どのように進めれば成功するのか?」
この記事を読んでいる方は、このような疑問をお持ちの方が多いのではないでしょうか。
金属加工や金属製品製造業界におけるM&Aや事業承継は、適切な戦略と情報が不可欠です。市場の動向、売却相場、成功事例など、必要な情報を得ることが成功の鍵を握ります。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、金属加工・金属製品製造会社のM&A・事業承継に関する全ての知識をわかりやすく解説します。
売却相場や成功事例、成功のポイントまで、業界特有の視点から徹底的に解説するため、この分野でのM&Aを検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
- 1 金属加工・金属製品製造とは
- 2 金属加工・金属製品製造業界の市場動向と市場規模
- 3 金属加工・金属製品製造業の動向と今後
- 4 金属加工・金属製品製造業界のM&Aの動向
- 5 金属加工・金属製品製造のM&Aをするメリット
- 6 金属加工・金属製品製造のM&Aの注意点
- 7 金属加工・金属製品製造におけるM&Aを成功させるためのポイント
- 8 金属加工・金属製品製造業のM&Aにおける成功事例
- 8.1 日本製鉄株式会社による日鉄スラグ製品株式会社、エスメント関東株式会社及びエスメント中部株式会社のM&A
- 8.2 日本製鉄株式会社によるUnited States Steel社のM&A
- 8.3 株式会社神戸製鋼所による神鋼スラグ製品株式会社のM&A
- 8.4 フジオーゼックス株式会社による株式会社マルヨシ製作所のM&A
- 8.5 株式会社戸上メタリックスによる株式会社三協製作所のM&A
- 8.6 サンエツ金属株式会社による日立アロイ株式会社のM&A
- 8.7 藤井産業株式会社による株式会社サンユウのM&A
- 8.8 株式会社TBKによる株式会社サンテックのM&A
- 8.9 株式会社FUJIによるファスフォードテクノロジ株式会社のM&A
- 8.10 瀧上工業株式会社によるケイシステックニジューサン株式会社のM&A
- 8.11 日本電産株式会社によるGenmark Automation社のM&A
- 8.12 新東工業株式会社による株式会社オメガ社のM&A
- 8.13 株式会社イチネンホールディングスによる昌弘機工株式会社のM&A
- 9 まとめ
金属加工・金属製品製造とは
このセクションでは、金属加工・金属製品製造の具体的な定義から始め、金属加工・金属製品製造会社の主要な金属加工技術や用途などについて解説していきます。
金属加工・金属製品製造業界の定義
金属加工・金属製品製造業界は、金属を原材料として加工し、さまざまな製品を製造する産業分野のことを指します。
この業界には、鉄鋼、アルミニウム、銅、チタンなどの金属を加工し、機械部品、建設材料、家電製品、自動車部品など、幅広い分野で使用される製品を生産する企業が含まれます。
金属加工・金属製品製造業界は、経済活動の基盤となる重要な産業の一つであり、他の産業にも大きな影響を与えています。
主要な金属加工技術と用途
金属加工には様々な技術が用いられており、それぞれの技術は異なる用途に適しています。以下の表は、主要な金属加工技術とその特徴、用途をまとめたものです。
金属加工技術 | 特徴 | 用途 |
鋳造 | 溶融した金属を型に流し込んで成形・複雑な形状の部品を大量生産可能 | 自動車部品・機械部品・建築部材 |
鍛造 | 金属を加熱し、ハンマー打撃やプレス加工で形状を整える・強度や靭性に優れた部品を製造可能 | 自動車部品・航空機部品・工具類 |
切削 | 旋盤やフライス盤などの工作機械で金属を切り削る・高い寸法精度が要求される部品の製造に適する | 機械部品・金型・医療機器 |
プレス加工 | 金型を用いて金属板を打ち抜いたり曲げたりする・大量生産に適しており、生産性が高い | 自動車部品・家電製品・建築部材 |
溶接 | 金属部品を接合する技術・ 様々な分野で不可欠な加工法 | 建設・造船・自動車製造 |
これらの金属加工技術は、それぞれの特徴を活かして幅広い分野で活用されています。例えば、自動車産業では、鋳造や鍛造、プレス加工などの技術が部品製造に用いられ、建設業界では溶接が構造物の組立てに欠かせません。
金属加工技術の選択は、製品の要求性能や生産量、コストなどを考慮して決定されます。
金属製品の市場での需要動向
金属製品の需要は、建設業、自動車産業、機械産業、電機・電子産業など、幅広い産業の動向に左右されます。
近年では、新興国の経済成長に伴うインフラ整備や都市化の進展により、建設用の金属製品、自動車産業では、軽量化や電動化への対応が求められており、アルミニウムや高張力鋼板など、高機能な金属材料の需要が増加しています。
電機・電子産業では、スマートフォンやウェアラブル端末などの普及により、小型・軽量化に適した金属部品の需要が高まっており、金属製品の需要は、今後も世界経済の成長や技術革新の動向に大きく影響を受けるでしょう。
金属加工・金属製品製造業界の市場動向と市場規模
M&Aにおいて業界の現状とこれからを理解しておくことは非常に重要です。そこで、ここでは、金属加工・金属製品製造業の動向と今後について解説していきます。ぜひ参考にしてください。
金属加工・金属製品製造業界が持つ課題
金属加工・金属製品製造業界が抱える課題は以下のようなものが挙げられます。
- 市場の不確実性
- 国内外の経済状況や需要の変動に大きく影響を受ける
- 景気の低迷や国際競争の激化により、需要が減少するリスクがある
- 業界全体の収益性が悪化する可能性がある
- 原材料価格と為替レートの変動
- 原材料価格の変動が企業の収益性に大きな影響を与える
- 為替レートの変動も収益性に影響を及ぼす
- コスト面での課題の増加
- 環境規制の強化により、対応コストが増加
- 人件費の上昇がコスト圧力となる
これらの課題に対応するためには、業界全体で生産性の向上や新技術の導入、新市場の開拓などの取り組みが必要とされています。
特に、需要の変動に柔軟に対応できる生産体制の構築や、コスト管理の徹底が重要です。また、環境規制への対応を積極的に進め、持続可能な事業運営を目指すことも求められています。
金属プレス製品の市場規模
金属プレス製品は、金属板材を金型とプレス機械を用いて加工し、自動車部品、家電製品、建築部材など幅広い分野で使用される重要な製品です。
日本経済新聞社の情報によると、2020年の金属プレス製品の出荷額は、1兆3082億円に上るとしています。金属プレス加工の特徴は、肉厚の薄い板材加工に適し、大量生産に向くことであり、一般的な生産工程は金型製作、プレス、溶接、仕上げ・組み立て、表面処理などから成ります。
金属プレス製品の主要な需要先は自動車産業で、全需要の8割を占めています。2023年の金属プレス製品販売額は前年比26.4%増となり、特に自動車向けは29%増と大きく伸びました。
一方で、自動車や電気・通信機器業界が生産拠点の海外移転と部品の現地調達率向上を進めていることは、海外展開力に欠ける中小金属プレス業者にとって痛手となっています。また、アジア諸国の金属プレス製品の品質向上も国内業者にとっては脅威です。
金属プレス製品の大手事業者の多くは自動車部品メーカーで、トヨタ系の高木製作所、日産系のユニプレス、ホンダ系のエイチアンドエフとエイチワンなどが挙げられます。
ユニプレスは2021年10月にメタルテックと資本提携し、2024年3月期は売上高3130億円(2.8%増)、営業利益75億円(2倍)と増収増益を予想しています。
金属プレス製品業界は、自動車産業を中心に需要が拡大しており、市場規模も大きいと言えるでしょう。しかし、海外への生産移管や新興国メーカーの台頭など、競争環境は厳しさを増しており、国内業者は生産性向上や高付加価値製品の開発などに取り組んでいく必要があります。
技術革新の影響と業界への挑戦
金属加工・金属製品製造業界では、IoTやAI、ロボット技術などの先進技術を活用した生産プロセスの自動化・効率化が進んでいます。
これらの技術革新は、生産性の向上や品質の安定化につながる一方で、設備投資の増加やスキルを持った人材の確保といった新たな課題も生み出しています。
また、3Dプリンティング技術の発展により、金属部品の製造方法が大きく変化している状況です。3Dプリンティングは、複雑な形状の部品を短納期で製造できるため、少量多品種生産に適しています。
金属加工・金属製品製造業界では、こうした技術革新を積極的に取り入れ、付加価値の高い製品やサービスを提供していくことが求められています。
環境規制とサステナビリティへの取り組み
金属加工・金属製品製造業界では、温室効果ガスの排出削減や資源の効率的利用など、環境負荷の低減が重要な課題となっています。
各国政府による環境規制の強化や、消費者の環境意識の高まりを受けて、企業には、生産プロセスの省エネルギー化や再生可能エネルギーの活用、リサイクルの推進などの取り組みが求められています。
また、サプライチェーン全体でのサステナビリティの追求も重要な課題です。原材料の調達から製品の使用、廃棄に至るまでのライフサイクル全体で環境負荷を最小化し、持続可能な社会の実現に貢献することが期待されています。
金属加工・金属製品製造業界では、こうした環境面での取り組みを強化することで、企業価値の向上や競争力の強化につなげていくことが重要となっています。
金属加工・金属製品製造業の動向と今後
金属加工・金属製品製造業界における動向について解説します。これから金属加工・金属製品製造企業のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。
新興市場への展開と成長機会
金属加工・金属製品製造業界では、新興国の経済成長や都市化の進展に伴い、インフラ整備や産業発展に関連する金属製品の需要が拡大しています。
中国、インド、東南アジアなどの新興市場では、建設業や自動車産業、電機・電子産業などの成長が著しく、金属加工・金属製品製造業界にとって大きなビジネスチャンスが存在します。
新興市場への展開に際しては、現地の市場特性や規制環境、文化的背景などを十分に理解し、現地のパートナー企業との協業やサプライチェーンの最適化を図ることが重要です。また、現地のニーズに合った製品開発や、価格競争力の向上にも取り組む必要があります。
新興市場への展開は、金属加工・金属製品製造業界にとって大きな成長機会であると同時に、リスクマネジメントや戦略的な意思決定が求められる挑戦的な取り組みでもあります。
自動化とロボット技術の導入
金属加工・金属製品製造業界では、生産性の向上や品質の安定化、労働力不足への対応などを目的として、自動化やロボット技術の導入が加速しています。
工場の自動化により、生産プロセスの効率化や省人化が進み、コスト削減や納期の短縮につながり、ロボット技術の活用により、高度な加工や組立作業の自動化が可能となり、品質の向上や作業者の負担軽減が期待できます。
さらに、AIやIoTを活用した生産管理システムの導入により、設備の稼働状況や品質データをリアルタイムで把握し、生産の最適化を図ることもできるでしょう。
ただし、自動化やロボット技術の導入には、多額の投資が必要であり、投資対効果の見極めや人材育成などの課題もあります。
金属加工・金属製品製造業界では、こうした課題を乗り越えながら、自動化やロボット技術を戦略的に活用し、競争力の強化につなげていくことが求められています。
サステナビリティとリサイクル技術の進展
金属加工・金属製品製造業界では、持続可能な社会の実現に向けて、サステナビリティとリサイクル技術の重要性が高まっています。
金属資源の枯渇や環境負荷の低減が喫緊の課題となる中、金属製品のリサイクルや、生産プロセスでの省エネルギー・省資源化が求められています。
特に、アルミニウムや銅などのリサイクルは、資源の有効活用や CO2 排出量の削減に大きく貢献しており、製品設計の段階から、リサイクルしやすい材料の選択や分解しやすい構造の採用など、環境配慮型の設計(エコデザイン)が重要です。
さらに、生産工程での歩留まり改善や不良品の削減、廃棄物の再資源化などにも取り組む必要があります。
金属加工・金属製品製造業界では、こうしたサステナビリティとリサイクル技術の進展を通じて、環境負荷の低減と経済性の両立を図り、持続可能な事業運営を実現していくことが求められています。
金属加工・金属製品製造業界のM&Aの動向
金属加工・金属製品製造業界におけるM&Aの動向について解説します。これから金属加工・金属製品製造企業のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。
最近のM&A事例と影響
近年、金属加工・金属製品製造業界ではM&Aが活発化しており、日本製鉄は2023年に2つのM&Aを実施しました。
1つ目は、子会社3社の統合であり、国内の人口減少や需要減少に対応し、スラグ事業の効率化とカーボンニュートラルへの貢献を目的としています。
2つ目は、米国のU.S. Steel社の買収であり、グローバルな製鉄能力の拡大と米国市場でのプレゼンス強化を目指しています。
これらのM&Aは、日本製鉄の競争力強化と事業拡大、カーボンニュートラルへの対応を目的としたものであり、今後の影響として、グローバルな競争力の向上や市場シェアの拡大などが期待されています。
一方で、組織再編や人員配置の変更など、社内体制の整備も重要な課題となるでしょう。
M&Aにおける業界のトレンド
金属加工・金属製品製造業界では、近年、以下のようなM&Aのトレンドが見られます。
- 事業ポートフォリオの最適化:非中核事業の売却や、成長分野への経営資源の集中を目的としたM&Aが増加しています。
- グローバル展開の加速:新興国市場での事業拡大や、グローバルなサプライチェーンの構築を目指したクロスボーダーM&Aが活発化しています。
- 技術獲得・シナジー追求:IoTやAI、軽量化技術など、先端技術の獲得や、事業シナジーの実現を目的としたM&Aが行われています。
- 異業種からの参入:自動車産業や電機・電子産業など、関連業界からの参入を目的としたM&Aも増加傾向にあります。
- 環境・エネルギー分野への注力:脱炭素社会の実現に向けた取り組みの一環として、環境・エネルギー関連事業へのM&Aが活発化しています。
金属加工・金属製品製造業界では、こうしたM&Aのトレンドを踏まえながら、自社の強みを生かした戦略的なM&Aを推進し、事業の成長と企業価値の向上を図ることが求められています。
経済的・政治的要因によるM&A活動の変動
金属加工・金属製品製造業界におけるM&A活動は、経済的・政治的な要因によって大きく変動します。景気の動向や需要の変化、原材料価格の変動などの経済的要因は、企業の収益性や投資余力に影響を与え、M&Aの活発度を左右します。
好景気で需要が拡大する局面では、事業拡大や新市場開拓を目的としたM&Aが増加する傾向にあり、景気の悪化や需要の減退局面では、事業の選択や事業構造の再編を目的としたM&Aが増加する傾向にあります。
また、政治的な要因も、M&A活動に大きな影響を及ぼす一つの要因です。各国の通商政策や関税措置、外国為替政策などは、企業のグローバル展開や投資戦略に影響を与えます。
例えば、保護主義的な通商政策や関税の引き上げは、クロスボーダーM&Aの障壁となる可能性があり、地政学的リスクの高まりや政情不安なども、M&A活動を抑制する要因となります。
金属加工・金属製品製造業界では、こうした経済的・政治的要因によるM&A活動の変動を的確に把握し、適切なタイミングでM&Aを実行することが重要です。同時に、M&Aに伴うリスクを慎重に評価し、適切なリスクマネジメントを行うことも求められます。
金属加工・金属製品製造のM&Aをするメリット
金属加工・金属製品製造のM&Aにおいてのメリットを売却側・買収側の両方から解説します。メリットを元にして金属加工・金属製品製造のM&Aを検討してください。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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売却側のメリット
金属加工・金属製品製造業界における売却側のメリットは、以下の通りです。
- 資本の流動化
- リスクの分散
- 技術獲得
- 市場拡大
- 経営資源の最適化
それぞれ詳しく解説していきます。
資本の流動化
金属加工・金属製品製造業の事業売却は、保有資産を現金化し、資本の流動性を高めるための有効な手段です。
事業売却によって得られた資金は、新たな投資機会の追求や、債務の返済、株主への還元など、さまざまな用途に活用することができます。
特に、事業環境の変化に対応するための設備投資や、新市場への展開などに必要な資金を確保する上で、事業売却は重要な選択肢となります。
リスクの分散
特定の事業分野や地域に依存することは、経営上のリスクを高める可能性があります。事業売却を通じて、特定の事業へのリソース集中を避け、ビジネスポートフォリオを分散することで、リスクを軽減することができます。
例えば、需要の変動が大きい事業や、競争が激化している市場から撤退し、より安定的で収益性の高い事業に経営資源を振り向けることで、持続的な成長を実現できます。
技術獲得
事業売却先の選定に際しては、自社の技術力を高めるための機会としても活用できます。売却先企業が保有する先進技術や、優れた生産管理ノウハウなどを獲得することで、自社の技術力や生産性を向上させることが可能です。
特に、金属加工・金属製品製造業界では、新素材の開発や加工技術の革新が競争力の源泉となるため、事業売却を通じた技術獲得は重要な意義を持ちます。
市場拡大
事業売却先との提携を通じて、新たな市場や販路を開拓することができます。売却先企業が持つ顧客基盤やブランド力、流通網などを活用することで、自社単独では参入が難しい市場へのアクセスが可能になります。
特に、海外市場への展開を図る際には、現地のパートナー企業との提携が不可欠であり、事業売却を通じた協業関係の構築は、グローバル展開を加速する上で有効な手段となります。
経営資源の最適化
事業売却は、経営資源の最適化を図る上でも重要な役割を果たします。非中核事業や収益性の低い事業を売却することで、経営資源を成長分野や収益性の高い事業に集中させることができます。これにより、全社的な効率性や収益性を改善し、企業価値の向上につなげることが可能です。
また、事業売却によって得られた資金を活用し、設備の近代化や人材育成への投資を行うことで、長期的な競争力の強化も期待できます。
買収側のメリット
金属加工・金属製品製造業界における買収側のメリットは、以下の通りです。
- 競争力の向上
- 新市場への進出
- 高度な技術の獲得
- シナジー効果の最大化
- 業界内での地位確立
それぞれ詳しく解説していきます。
競争力の向上
金属加工・金属製品製造業界では、買収を通じて競争力を高めることができます。買収先企業が持つ優れた技術力や生産設備、ノウハウなどを獲得し、自社の事業に取り込むことで、製品の品質向上やコスト削減、納期短縮などを実現できます。
また、買収先企業との相乗効果により、新製品の開発力や販売力の強化も期待できます。競合他社に先駆けて有望な企業を買収することは、業界内での競争優位性を確立する上で重要な意味を持ちます。
新市場への進出
買収は、新たな市場や事業領域への進出を加速する有効な手段です。特に、海外市場への展開を図る際には、現地企業の買収が有効なアプローチとなります。
現地の市場特性や規制環境に精通した企業を買収することで、スムーズな市場参入が可能となります。また、買収先企業が持つ顧客基盤や流通網を活用することで、早期の事業立ち上げと収益化が期待できます。
金属加工・金属製品製造業界では、グローバル展開が成長戦略の重要な柱となっており、クロスボーダーM&Aを通じた新市場開拓が活発化しています。
高度な技術の獲得
金属加工・金属製品製造業界では、先進的な技術力が競争力の源泉となります。買収を通じて、自社が保有していない高度な技術や知見を獲得することができます。
特に、IoTやAI、ロボティクスなどの先端技術を持つ企業の買収は、自社の技術力を飛躍的に高める上で有効な手段です。
また、買収先企業の優れた研究開発体制や人材を取り込むことで、自社の技術革新力を強化することも可能です。技術獲得を目的とした戦略的M&Aは、金属加工・金属製品製造業界で重要性が増しています。
シナジー効果の最大化
買収先企業との連携を深めることで、事業シナジーを最大限に引き出すことが可能です。生産設備の相互活用や、調達の共同化、販売網の相互乗り入れなどを通じて、コスト削減や売上拡大を実現できます。
また、互いの強みを活かした新製品の開発や、クロスセルの推進など、収益機会の拡大も期待できます。買収後の PMIを適切に管理し、シナジー効果を着実に発現させることが、M&A成功の鍵となります。
業界内での地位確立
大型の M&A を成功させることで、業界内での地位や影響力を高めることができます。買収を通じて事業規模を拡大し、市場シェアを高めることは、競合他社に対する交渉力の向上や、顧客からの信頼獲得につながります。
また、買収先企業が持つブランド力や技術力を活用することで、自社の企業イメージを向上させることも可能です。
業界内でのプレゼンス拡大は、新規顧客の開拓や優秀な人材の獲得にも好影響を与え、長期的な競争優位性の確立に寄与します。
金属加工・金属製品製造のM&Aの注意点
金属加工・金属製品製造のM&Aを行う際の注意点を解説します。金属加工・金属製品製造のM&Aを行う際の注意点は、以下の通りです。
価格評価の難しさと対策
金属加工・金属製品製造業界では、事業の価値評価が難しいケースが少なくありません。特に、高度な技術力や独自のノウハウを持つ企業の価値を正確に評価することは容易ではありません。
また、市況の変動や為替レートの影響を受けやすいため、将来の収益予測にも不確実性が伴います。こうした価格評価の難しさに対処するためには、デューデリジェンスを徹底し、対象企業の事業内容や財務状況を詳細に分析することが重要です。
業界に精通した専門家の知見を活用し、適切な評価手法を用いることも有効です。
異文化間の経営統合の課題
クロスボーダーM&Aでは、企業文化や経営スタイルの違いが、PMIにおける大きな課題となります。
特に、日本企業と欧米企業の間では、意思決定プロセスや組織運営の方法に大きな隔たりがあるため、文化的な溝を埋めるための努力が求められます。
異文化間の経営統合を円滑に進めるためには、買収先企業の文化や価値観を尊重し、相互理解を深めることが重要です。
また、コミュニケーションを密にとり、両社の従業員の不安や抵抗感を払拭することも欠かせません。統合プロセスにおいては、文化的な違いを踏まえたきめ細かな対応が求められます。
技術移転と知的財産の保護
金属加工・金属製品製造業界では、先進的な技術や知的財産が競争力の源泉となります。M&Aを通じて技術移転を行う際には、知的財産の保護が重要な課題となります。
買収先企業の技術情報や営業秘密が流出するリスクを最小限に抑える必要があります。このため、技術移転プロセスにおいては、秘密保持契約の締結や、アクセス権限の厳格な管理が不可欠です。
また、買収先企業の知的財産権の権利関係を明確にし、特許権や商標権などの適切な保護措置を講じることも重要です。技術移転と知的財産の保護は、M&A成功の鍵を握る重要な要素と言えるでしょう。
金属加工・金属製品製造におけるM&Aを成功させるためのポイント
金属加工・金属製品製造におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。金属加工・金属製品製造におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- 相場価格の把握
- PMI(統合後プロセス)の確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&Aを成功させるためには、自社の事業戦略と整合性のあるM&A戦略を立案することが重要です。買収の目的を明確にし、対象企業の選定基準を設定する必要があります。
また、買収後の事業計画や統合プロセスのロードマップを策定し、M&Aの成果を最大化するための方策を検討しておくことも欠かせません。
M&A戦略の立案においては、自社の強みや弱みを冷静に分析し、事業環境の変化を見据えた長期的な視点が求められます。
相場価格をよく理解しておく
M&Aの交渉においては、業界の相場価格を十分に理解しておくことが重要です。過去の類似案件の事例や、業界の平均的な収益性などを把握し、適切な価格水準を見極める必要があります。
また、対象企業の業績や成長性、シナジー効果などを詳細に分析し、価格の妥当性を検証することも欠かせません。相場価格をよく理解することで、買収価格の交渉を有利に進めることができます。
PMI(統合後プロセス)の確立
M&Aの成否は、PMIがうまくいくかどうかに大きく左右されます。買収後の経営統合を円滑に進めるためには、両社の業務プロセスや組織体制、企業文化などを速やかに統合する必要があります。
しかし、M&Aを単独で行う場合、経験不足や人的リソースの制約から、PMIの計画策定や実行が不十分になりがちです。特に、企業文化の違いによる従業員の不安や抵抗感への対応は、専門的なノウハウを必要とします。
こうした課題を解決するためには、M&A仲介会社の活用が有効です。M&A仲介会社は、豊富な経験と専門知識を持ち、PMIの計画策定から実行までを一貫してサポートします。
また、両社の従業員とのコミュニケーションを円滑に進め、統合に対する不安や抵抗感を払拭するための施策を提案します。M&A仲介会社の 専門知識を活用することで、PMIをスムーズに進め、M&Aの成果を最大限に引き出すことが可能となるでしょう。
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金属加工・金属製品製造業のM&Aにおける成功事例
金属加工・金属製品製造業界におけるM&Aの成功事例を紹介します。これから金属加工・金属製品製造業界におけるM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
日本製鉄株式会社による日鉄スラグ製品株式会社、エスメント関東株式会社及びエスメント中部株式会社のM&A
2023年4月に、日本製鉄株式会社が日鉄スラグ製品株式会社、エスメント関東株式会社、エスメント中部株式会社を統合した事例です。
日本製鉄株式会社は、鉄鋼製造を主力業務とする大手企業で、鉄鋼生産に伴って生成される鉄鋼スラグを環境資材として再利用しています。スラグ事業を通じて循環型社会の実現に貢献しています。
日鉄スラグ製品株式会社、エスメント関東株式会社、エスメント中部株式会社は、日本製鉄の子会社であり、高炉スラグを加工して微粉末製品「エスメント®」を製造・販売しています。これらの製品は主に高炉セメントの材料として土木建築分野で使用されています。
このM&Aの主な目的は、国内の人口減少や鉄鋼、セメントの需要減少に対応し、世界的なカーボンニュートラルへの動きに適応するために行われました。統合によって、日本製鉄グループの製造・出荷体制を強化し、高炉セメントおよびエスメントの需要拡大に対応します。また、顧客の利便性向上とスラグの有効利用拡大を図り、カーボンニュートラル社会の実現に貢献することを目的としています。
参考:スラグ微粉末および高炉セメント製造販売会社の統合について
日本製鉄株式会社によるUnited States Steel社のM&A
2023年12月に、日本製鉄株式会社がUnited States Steel Corporation社を買収した事例です。
日本製鉄株式会社は、総合力世界No.1を目指す鉄鋼メーカーです。技術力と商品力に優れ、需要の伸びが確実な地域や分野での生産体制の拡大を戦略としています。以前からインド、タイにおいても買収を行っており、世界的に製鉄事業の拡大を進めています。
United States Steel Corporation(U.S. Steel)社は、高炉・電炉一貫の鉄鋼メーカーで、自動車や家電、建材用の薄板、エネルギー分野用の鋼管などを製造・販売しています。米国と欧州での製造施設を持ち、総合的な製鉄能力と高級鋼の生産能力があります。
このM&Aの主な目的は、日本製鉄がU.S. Steelを買収することで、その高度な製鉄技術と市場における地位を活用し、グローバルな製鉄能力を拡大することを目指すとしています。
この買収は、米国市場でのプレゼンスを強化し、世界最大の高級鋼市場である米国におけるビジネスチャンスを最大化することを意図しています。また、カーボンニュートラルへの取り組みを強化し、持続可能な製鉄技術の発展に貢献することも目的です。
参考:米国United States Steel Corporation の買収について
株式会社神戸製鋼所による神鋼スラグ製品株式会社のM&A
2023年10月に、株式会社神戸製鋼所が神鋼スラグ製品株式会社を吸収合併した事例です。
株式会社神戸製鋼所は、鉄鋼・非鉄金属製品の製造販売を行う大手企業で、多岐にわたる製品を取り扱い、電気供給事業も手がけています。鉄鋼製品の製造において長い歴史と高い技術力を有しています。
神鋼スラグ製品株式会社は、鉄鋼スラグ製品の営業活動と販売実務を行う企業で、鉄鋼副生品の販売や産廃処理処分事務代行なども手掛けています。この会社は、株式会社神戸製鋼所の完全子会社として、鉄鋼スラグ製品の市場拡大に貢献してきました。
このM&Aの主な目的は、鉄鋼スラグ製品の用途拡大とカーボンニュートラルおよび生物多様性への貢献を進めるためです。株式会社神戸製鋼所は、製造と販売の二重組織体制を解消し、一体運営とすることで、効率化と事業の強化を図ることを目指しています。この統合により、製品の品質向上と市場への迅速な対応が可能となり、より幅広い市場ニーズに応えることが期待されています。
参考:完全子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ
フジオーゼックス株式会社による株式会社マルヨシ製作所のM&A
2023年5月に、フジオーゼックス株式会社が株式会社マルヨシ製作所の全株式を取得し子会社化した事例です。
フジオーゼックス株式会社は、自動車業界を中心に広範な事業展開を行っており、新規事業の立ち上げと基軸事業の成長を目指しています。この会社は、事業拡大を図るために広い視野での市場拡大を模索しています。
株式会社マルヨシ製作所は、1990年に設立された金属製品製造業者で、主にセパレータフィルム製造用の金属ロールやシャフト等を製造し、関連装置メーカーに製品を提供しています。同社はその高品質な製品で知られ、今後の市場需要の増加が見込まれています。
このM&Aの主な目的は、フジオーゼックス株式会社がマルヨシ製作所を子会社化することにより、自社の事業拡大を図り、グループとしてのシナジー効果の創出を目指しています。特に、マルヨシ製作所の技術力を活かし、新たな事業領域への進出と市場の拡大を進めることが目的です。これにより、フジオーゼックスは、製品ラインナップを多様化し、競争力を高めることが期待されています。
株式会社戸上メタリックスによる株式会社三協製作所のM&A
2022年4月に、株式会社戸上メタリックスが株式会社三協製作所を吸収合併した事例です。
株式会社戸上メタリックスは、電気機器の鋼板ケースの製造及び塗装、並びに建物等のメンテナンス業務を行っている企業です。
株式会社三協製作所は、電子機器部品の製造及びメッキ加工を主たる事業としています。
このM&Aの主な目的は、株式会社戸上メタリックスが建設機械部品や産業用配電機器部品の金属加工事業における経営資源を集約することを目的としています。特に、亜鉛メッキ事業の事業環境整備のための設備投資を推進し、当事業の高付加価値化による収益力の向上を図ることが主目的です。
参考:連結子会社間の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ
サンエツ金属株式会社による日立アロイ株式会社のM&A
2020年6月に、サンエツ金属株式会社が日立アロイ株式会社の黄銅棒と加工品の事業を譲り受けた事例です。
サンエツ金属株式会社は、金属製品の製造と販売を行う企業で、特に黄銅製品の市場で活動を拡大しています。この会社は高品質な金属製品の供給を通じて、市場ニーズに応えています。
日立アロイ株式会社は、黄銅棒や加工品の製造を行っていた企業で、押出機を除く黄銅棒専用の製造設備と、加工品専用の製造設備を保有していました。また、黄銅線の製造に関する設備も一部含まれています。
このM&Aの主な目的は、サンエツ金属株式会社が日立アロイ株式会社から事業を譲り受けることで、自社の製品ラインを強化し、製造ノウハウと顧客基盤を拡充することです。この事業譲受により、サンエツ金属は製品ポートフォリオを拡大し、市場での競争力を高めることが期待されています。
藤井産業株式会社による株式会社サンユウのM&A
2018年12月に、藤井産業株式会社が株式会社サンユウを子会社化した事例です。
藤井産業株式会社は、IoTを活用した製造現場の見える化や省エネ設備の提案を進めており、顧客密着型の営業戦略で埼玉エリアの市場拡大を図っています。同社は、品質・生産性の向上や省力化・省人化のニーズに対応する技術とサービスを提供しています。
株式会社サンユウは、産業機械の電気設備工事、制御盤・分電盤の設計及び製作を行っている企業です。
このM&Aの主な目的は、藤井産業株式会社が株式会社サンユウを完全子会社化することで、両社の長年培った経営資源や強みを相互活用し、顧客への提案の充実、技術力の向上、取扱商品の拡充、仕入の効率化を図ることです。この子会社化により、シナジー効果が期待され、グループの企業価値向上に寄与することを目指しています。
参考:株式会社サンユウの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
株式会社TBKによる株式会社サンテックのM&A
2018年11月に、株式会社TBKが株式会社サンテックの株式を取得し子会社化した事例です。
株式会社TBKは、自動車を中心とした産業分野に専用工作機械を提供しています。完全オーダーメイドの専用加工機を提供することで、顧客の特定ニーズに対応し、高い技術力とノウハウを蓄積しています。
株式会社サンテックは、静岡県浜松市に本拠を置き、機械設計業、金属工作機械製造業、金属加工機械卸売業を行っています。1989年に設立され、高度な技術力を持ち、特に専用工作機械の設計から製造、アフターフォローまで一貫体制を整えています。
このM&Aの主な目的は、株式会社TBKは、株式会社サンテックを子会社化することにより、グループの業容拡大に対応するための技術力を強化し、双方の顧客基盤を活用してビジネス領域を広げ、両社の持続的な成長と企業価値の向上を図ることを目的としています。
参考:株式会社サンテックの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
株式会社FUJIによるファスフォードテクノロジ株式会社のM&A
2018年8月に、株式会社FUJIがファスフォードテクノロジ株式会社の全株式を取得した事例です。
株式会社FUJIは、愛知県知立市に本社を置く企業で、ロボットソリューション事業を主力としています。この会社は電子部品実装ロボットの分野で世界トップクラスのシェアを持ち、高速かつ高精度な実装技術で知られています。
ファスフォードテクノロジ株式会社は、山梨県南アルプス市に本社を置き、半導体製造装置の設計、製造、販売を行っています。特にDRAMやNANDなどのメモリ向けダイボンディング装置で世界トップクラスのシェアを誇ります。
このM&Aの主な目的は、株式会社FUJIがファスフォードテクノロジ株式会社の技術力と製品ラインナップを自社のロボットソリューション事業と組み合わせることで、半導体後工程及び電子部品実装工程における提案力を強化し、次世代技術開発を推進することを目指すとしています。この取引により、新たな価値を創造し、顧客にさらなる感動を提供する製品開発に注力する計画です。
参考:半導体製造装置メーカー”ファスフォードテクノロジ株式会社”の株式取得
瀧上工業株式会社によるケイシステックニジューサン株式会社のM&A
2018年6月に、瀧上工業株式会社がケイシステックニジューサン株式会社の株式を取得し子会社化した事例です。
瀧上工業株式会社は、橋梁事業を主力とし、保全事業や鉄骨鉄構事業にも注力しています。この会社は、新設橋梁事業や大規模修繕工事などで安定受注を目指し、中期経営計画で持続的な成長を追求しています。
ケイシステックニジューサン株式会社は、愛知県岡崎市に本社を置き、工作機械や自動車用工作機械、冶工具等の設計・製作及び販売を行っている企業です。高い技術力を持ち、自動車部品メーカー系列の企業へ製品を供給しています。
このM&Aの主な目的は、瀧上工業株式会社がケイシステックニジューサン株式会社の技術力と製品ラインを活用して、自社の事業ポートフォリオを拡張し、新たな市場での成長を目指すことです。瀧上工業の多角化戦略の一環として実施され、事業基盤の強化と持続可能な成長を図ることを目的としています。
日本電産株式会社によるGenmark Automation社のM&A
2018年4月に、日本電産株式会社がGenmark Automation社の株式を取得し子会社化した事例です。
日本電産株式会社は、モーター製品の開発・製造・販売を主業とするグローバル企業です。この会社は特に高性能で小型のモーター技術に強みを持ち、世界各地で広範な製品ラインを展開しています。
Genmark Automation社は、カリフォルニア州に本社を置く半導体ウェハー搬送用ロボットの開発・製造・販売を行う企業です。この会社は特に大気ロボット・真空ロボットの技術で知られ、IoT関連の半導体ロボットの開発において強みを持っています。
このM&Aの主な目的は、日本電産が液晶・半導体製造工程における搬送ロボットの製造・販売を拡大するためです。この取得により、製品ラインナップとグローバル体制を強化し、さらなる市場拡大を目指すことを目的としています。これにより、日本電産は世界的な半導体市場での競争力を高め、技術革新と市場需要の捉え方を向上させることが期待されています。
参考:米国 半導体ウエハー搬送ロボットメーカー ジェンマーク社 (Genmark Automation, Inc.)の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
新東工業株式会社による株式会社オメガ社のM&A
2018年2月に、新東工業株式会社がオメガ社の株式を取得し子会社化した事例です。
新東工業株式会社は、鋳造事業分野において「自硬性設備」のラインナップを充実させ、販売ネットワークを拡充することを目的としています。この企業は、中・大型鋳物の生産に適した機器を提供し、ロボットや建設機械、工作機械などの分野で需要拡大を見込んでいます。
オメガ社は英国に本社を置き、1984年に設立された鋳造設備の設計・製造・販売およびアフターサービスを行っている企業です。自硬性設備や中子造型機などの製造に特化し、インド、南アフリカ、マレーシアに子会社を持ち、世界54カ国に販売ネットワークを構築しています。
このM&Aの主な目的は、新東工業株式会社がオメガ社を子会社化することで、「自硬性設備」の分野におけるグローバルな対応力を向上させるとともに、オメガ社の販売ネットワークを活用し、中型向けの自硬性設備及びその他製品の拡販を図ることです。この取引を通じて、成長分野での地歩を固め、さらなる事業拡大を進めることが期待されています。
株式会社イチネンホールディングスによる昌弘機工株式会社のM&A
2018年1月に、株式会社イチネンホールディングスが昌弘機工株式会社の株式を取得し子会社化した事例です。
株式会社イチネンホールディングスは、自動車リース関連事業、ケミカル事業、パーキング事業、機械工具販売事業、合成樹脂事業を展開する多角的なビジネスを行っています。この企業は、新たな商圏への進出と事業のさらなる拡大を目指しています。
昌弘機工株式会社は、自動梱包機、封緘機、包装荷造機械の製造および販売を行っている企業で、SPOTブランドで知られています。大阪府四条畷市に本社を置き、1957年に設立された歴史ある企業です。
このM&Aの主な目的は、株式会社イチネンホールディングスが昌弘機工株式会社の子会社化により、機械工具販売事業における取扱商品の分野を充実させると共に、新たな商圏への進出を図ることです。これにより、同事業の拡大と市場競争力の強化を目的としています。
参考:昌弘機工株式会社の株式取得(子会社化)、 及び人事異動に関するお知らせ
まとめ
金属加工・金属製品製造業界では、M&Aが事業拡大や競争力強化の有効な手段として注目されています。M&Aを通じて、新市場の開拓や技術力の向上、シナジー効果の創出などを実現することが可能です。
一方で、価格評価の難しさや異文化間の経営統合、技術移転と知的財産の保護など、M&Aの実行にはさまざまな課題が伴います。
M&Aを成功させるためには、自社の事業戦略に即したM&A戦略の立案や相場価格の適切な理解、PMIの確立などが重要なポイントとなります。
M&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある戦略です。ぜひ今回の記事を参考に金属加工・金属製品製造におけるM&Aを検討してみてください。