「サイバーセキュリティ会社のM&Aを検討しているが、どう進めるのが正解か分からない」
「サイバーセキュリティ業界のM&Aを成功させる秘訣はなんだろう?」
この記事をご覧の方には、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
サイバーセキュリティ業界におけるM&Aは、適切な準備と戦略が必要不可欠です。しかし、サイバーセキュリティ会社のM&Aについてネットで検索してみても、専門用語が多くて理解が困難であり、どのように進めればいいかよく分からないという声も少なくありません。
そこで、M&Aの専門企業である「M&A HACK」が、サイバーセキュリティ会社のM&AについてM&Aが初めてという方にも分かりやすく解説します。M&Aにおける売却相場や実際の事例についてはもちろん、メリットやデメリット、注意スべきポイントについて詳しく解説していきますので、サイバーセキュリティ業界でのM&Aを検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
- 1 サイバーセキュリティとは
- 2 サイバーセキュリティ業界の市場動向と市場規模
- 3 サイバーセキュリティ業の動向と今後
- 4 サイバーセキュリティ業界のM&Aの動向
- 5 サイバーセキュリティのM&Aをするメリット
- 6 サイバーセキュリティのM&Aの注意点
- 7 サイバーセキュリティにおけるM&Aを成功させるためのポイント
- 8 サイバーセキュリティ業のM&Aにおける成功事例
- 8.1 リコージャパンがデジタルデータソリューションと資本業務提携
- 8.2 ソフィアホールディングスがサイバービジョンホスティングを譲渡
- 8.3 三井物産がRedpoint Cybersecurityを関連会社化
- 8.4 GMOインターネットグループがFlatt Securityを子会社化
- 8.5 SCSKがセキュリティサービス開発・販売事業などを子会社に承継
- 8.6 サイバーエージェントがCraft Eggを吸収合併
- 8.7 日立システムズがセキュアブレインと合併
- 8.8 フーバー・インベストメントがサイバーコマンドの株式取得
- 8.9 電気興業がサイバーコアを子会社化
- 8.10 サイバー・バズがスタイル・アーキテクトの譲渡
- 8.11 gumiがCA GameFiへ出資
- 8.12 サイバーエージェント、ネルケプランニングの株式取得
- 8.13 サイバーステップの子会社ブルームズが資金調達
- 8.14 サイバーエージェントが7gogoを吸収合併
- 8.15 サイバートラストがCloudLinux社と協業
- 9 まとめ
サイバーセキュリティとは
サイバーセキュリティについて、サイバーセキュリティの概要や具体的な定義など、サイバーセキュリティ会社の特徴や歴史について詳しく解説していきます。
サイバーセキュリティとは?
「サイバーセキュリティ」とは、サイバーセキュリティ基本法において、以下のように定義されています。
「電子的方・磁気的方式など人間の知覚では認識できない方法によって記録・発信・受信される情報漏えい、損失・毀損防止など情報の安全管理に対する措置および情報システム・ネットワークワークの信頼性確保に対する対策が講じられており、かつその状態が維持管理されていること」
法律上の定義だけ見ると難しく感じますが、簡単にまとめると「個人・法人がインターネットやパソコンを安全に使用できるように、情報漏洩やウイルス感染など被害を受けないように対策を講じること」になります。
近年、インターネット業界の急速な発展と成長に伴い、サイバーセキュリティ業界の重要性も高まってきています。AIの進歩や、多くの製品がIoTによりインターネットと繋がっていますので、サイバー攻撃に対する脅威に対抗するためにも、サイバーセキュリティ会社に求められる役割、そして需要も高まり続けています。
サイバーセキュリティが必要な理由
近年、サイバー攻撃を受けやすく、被害が大きくなる傾向にあります。
サイバー攻撃は、インターネットに接続している限り、個人・法人問わず誰もが標的になる可能性があります。日常的なサイト閲覧やデータのダウンロードの際に、サイバー攻撃を受けてしまうリスクがあるため、サイバーセキュリティは必要不可欠といえます。
サイバー攻撃によって受ける被害としては、個人情報や機密情報の漏洩による信頼失墜や経済的な損失はもちろん、結果として、業務継続が困難になってしまうケースもあります。また、サイバー攻撃の種類は多岐に渡るため、一種類のセキュリティだけで安心せず、総合的にセキュリティレベルをあげていくことで被害を防いでいく必要があります。
サイバー攻撃の種類と特徴
サイバーセキュリティを理解する上で、どのようなサイバー攻撃があるかを確認しておくのも有効な対策に繋がります。
代表的なサイバー攻撃の一つとして、不正アクセスがあります。アクセス権限がない人であっても不特定多数のIDやパスワードを組み合わせログイン試行を繰り返すことで、パスワードを特定するブルートフォース攻撃。または、1つのサイトで特定したIDやパスワードを使って他サイトにも不正アクセスするパスワードリスト攻撃などがあります。
または、ネットワークやサーバーに負荷をかけてシステムダウンさせるDDoS攻撃、サイトの誤作動を狙って引き起こさせるバッファーオーバーフロー攻撃、偽メールを不特定多数に送り個人情報を取得しようとするフィッシング詐欺など、数多くのサイバー攻撃があります。
どのような目的でサイバー攻撃を仕掛けてくるかイメージを理解し、サイバーセキュリティ対策で何から検討するべきか参考にしていく必要があります。
サイバーセキュリティ業界の市場動向と市場規模
M&Aにおいて、業界の現状と将来性について理解しておくことは非常に重要です。そこで、ここからは、サイバーセキュリティ業界の市場動向と市場規模について解説していきますので、参考にしてみてください。
サイバーセキュリティ業界が持つ課題
サイバーセキュリティ業界が向き合うべき課題としては、サイバー攻撃が身近なリスクになっていること、そして、サイバー犯罪の増加があげられます。
サイバー攻撃による被害が増加しているにも関わらず、サイバーセキュリティに対する知識や理解、必要性についてはまだまだ認知度が低いという現状もあります。より複雑化していくと想定されるサイバー攻撃に対して、サイバーセキュリティの必要性をどのように訴えていけるかが大きな課題と言えるでしょう。
サイバー犯罪の増加
前世会でのサイバー犯罪による損失額は2021年から2025年まで年率15%増加しており、被害額としても1435兆円相当と言われています。サイバー犯罪の増加の背景には、より組織的にサイバー攻撃を行なう犯罪集団の存在と、犯罪集団を支援する団体や政府が存在している可能性が示唆されています。
また、社会的な背景として、コロナ禍によって世界的に加速されたDX化、リモートワークなどにより、グローバル企業はもちろん、国内に特化した企業であっても、よりインターネットを介して重要は判断、情報共有を行なう機会が増えたことで、サイバー攻撃に対して対策すべき事象は増えているといえます。
サイバーセキュリティ業界における人材不足
サイバーセキュリティの需要増加に反比例するように、高いスキルを持った人材不足は拡大しています。近年のサイバーセキュリティにおける技術レベルは高度化しており、経験者であっても十分なスキルと実務経験を持った人材になるには時間がかかることも要因の一つと言われています。
人材不足が続くと想定されるサイバーセキュリティ業界においては、既存の技術者だけでなく、若手の育成や、今まではサイバーセキュリティ業界において十分に活躍の機会を得られなかった女性やマイノリティーからの参加を促進するために、各企業はもちろん、行政、国の施策においてもサイバーセキュリティ業界で活躍する人材育成は必要不可欠になっています。
サイバーセキュリティについての教育と啓蒙
サイバーセキュリティの重要性が高まっている一方で、サイバーセキュリティに対する十分な知識と、リスク対策の重要性を従業員や顧客に周知させるための行動はまだまだ不足しているといえます。どんなにサイバーセキュリティのシステムを構築しても、実際に活用する人材がリスク対策について軽視している状況においては、十分なリスク対策ができているとはいえないでしょう。
サイバーセキュリティのシステム導入、ならびに、システムをきちんと理解活用することで、どれだけ大きな損害を避けられるのか。また、サイバーセキュリティを軽視し続けた結果、どのような被害を受けてしまった企業が存在するのか。サイバー攻撃に対する教育と啓蒙はサイバーセキュリティ業界の大きな課題の一つといえるでしょう。
サイバーセキュリティ業の動向と今後
サイバーセキュリティ業界おけるM&Aの動向について解説します。これからサイバーセキュリティ会社のM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
AIを含む最新技術に対応できるシステム構築
OpenAI社が発表したChatGPTをはじめとする生成AIが急速に普及してくるなど、最新技術に対応できるサイバーセキュリティのシステム構築が急務となっています。
AIがデータを学習するという性質上、サイバー攻撃による情報漏洩の被害もより大きくなることが想定されますし、常に変化するAIに対応できるセキュリティシステムを構築し続けることは用意ではありません。技術が進歩することで利便性向上などのメリットがある反面、リスク対策も高度に複雑化していきますので、サイバーセキュリティ業界全体での技術革新が必要不可欠になるでしょう。
セキュリティ製品市場のさらなる競争の激化
サイバーセキュリティの市場は年々増加傾向にあります。日本国内においても、2021年の情報セキュリティ製品市場の売上高は前年比16%アップの4360億円と、今後も増加傾向は暫く続くと考えられています。
売上の構成比として、過半数が外資系企業であるという事実もありますので、国内企業における市場競争力が注目されていくでしょう。
高度なスキルを保有した人材獲得と育成
サイバーセキュリティ業界はIT技術の進化に伴い、驚くほどの速度で複雑化しています。結果として、サイバーセキュリティ業界の経験と高度な技術を保有している人材の需要が高くなり、人手不足による人材獲得競争が過激になっています。
世の中のほとんどの製品やサービスは、今やインターネットなしでは成立しなくなりつつありますから、利便性の向上に伴い、万が一のリスク対策として、サイバーセキュリティ技術の需要も高まり、IT技術を持った人材不足はしばらく続くことが懸念されています。
高度なITスキルを保有した人材を育成するのは多くの時間とコストがかかりますから、国内に留まらず、海外の優秀な人材獲得も見据えて、サイバーセキュリティ企業のM&Aによって一気に人材獲得を目指す企業も増えていくでしょう。
サイバーセキュリティ業界のM&Aの動向
サイバーセキュリティ業界におけるM&Aの動向について解説します。これからサイバーセキュリティのM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。
サイバーセキュリティ企業のM&A需要の増加
現在、あらゆるものがインターネットに接続されるIoT化が進んできています。日常生活をより便利にするために多くの製品がインターネットに接続されることで、サイバー攻撃のリスクも高まってきています。
同時に、サイバー攻撃の技術も高度に進化しており、あらゆる角度からのサイバーセキュリティ対策が求められるでしょう。行政としても、個人の消費者によるサイバー攻撃の被害を削減するために、サイバーセキュリティに関する需要は増えていくと考えられ、需要増加に伴い、サイバーセキュリティ技術に乏しい企業はサイバーセキュリティ企業のM&Aを検討し始める可能性が高いと考えられます。
大手企業による自社グループ内にサイバーセキュリティ企業の設立
企業規模が大きくなればなるほど、サイバー攻撃による情報漏洩や信用低下のリスクは大きくなってきます。サイバー攻撃に対して十分な対策をしてこなかった企業ほど、外注ではなく自社グループ内にサイバーセキュリティ企業やチームを立ち上げ、セキュリティレベルを早急に上げる動きが拡大しています。
とはいえ、未経験者でサイバーセキュリティ対策チームを設立することは時間も費用もかかるため、M&Aによってサイバーセキュリティ企業を買収することで、グループ内に専門チームを組織するという動きも増えていくでしょう。
国内だけでなく、海外企業との競争も見据えた経営戦略
2020年の新型コロナウィルスの世界的流行に伴い、先進国だけにとどまらず、発展途上国においても国や企業単位でサイバーセキュリティ対策を推進されるようになりました。オフラインでの接触やサービスが限られた結果、デジタル化が加速したことで、サイバー攻撃に対しての意識が急速に高まってきています。
結果として、東南アジアにおいても、インターネット普及率が97%を超えるマレーシアなどでは、サイバーセキュリティ業界の進化発展が目まぐるしく、M&Aの検討先としても注目されています。
サイバーセキュリティ対策は国内の技術者や専門企業に頼るだけではなく、海外のサイバーセキュリティ企業との連携やM&Aを駆使することで、高いレベルのセキュリティシステムの導入、サイバーセキュリティに特化した人材の獲得を推し進めていく必要があるでしょう。
サイバーセキュリティのM&Aをするメリット
サイバーセキュリティ業界のM&Aにおいてのメリットを売却側・買収側の両方から解説します。メリットを元にして、サイバーセキュリティ業界のM&Aを検討してください。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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売却側のメリット
サイバーセキュリティ業界における売却側のメリットは、以下の通りです。
- 雇用条件の維持と確保
- 事業のリスク分散
- 売却益の獲得
- 後継者問題の解消
- 市場競争力の強化
それぞれ詳しく解説していきます。
雇用条件の維持と確保
会社売却をすることで、従業員の雇用条件の維持と確保ができます。経営状態が悪化していくことで、社員の雇用を守り続けるのは困難になります。
企業の市場価値が低下する前に、早期にM&Aを活用して対策をすることで、長年企業を支えてくれた従業員の雇用を守ることができます。従業員の雇用条件を維持したまま事業を存続できるというのは、従業員にとって大きなメリットになるでしょう。
事業のリスク分散
サイバーセキュリティ業界では、事業環境が目まぐるしく変化し続けています。仮に現状では業績が良くても、特定の事業に依存し続けることはリスクを伴います。サイバーセキュリティ事業を売却することで、他の事業にお金と人材を投資することで、新しい事業の柱を構築することでリスク分散できる可能性があります。
例えば、今後の国際競争が激化すると予測されるサイバーセキュリティ事業から、国内に向けて安定的な利益が見込める事業を立ち上げるなど、様々な選択肢から経営判断をしていく必要があります。
売却益の獲得
自社を売却することで売却益を獲得できるのも大きなメリットです。買収側からみて魅力的なリソースを保有していれば、それだけ高額で売却することができるでしょう。経営悪化してからの売却は難しくなりますし、収益が減ってきてから企業の解散、場合によっては倒産してしまうと、その後、今までの生活水準を維持するのは困難になってしまいます。
場合によっては、売却益を活用して新規事業の立ち上げ資金にすることや、より高度な設備投資や技術開発に繋げることもできるでしょう。中小企業の場合であれば、経営陣の退職金として、M&Aによる売却益を活用することもできます。
後継者問題の解消
中小規模のサイバーセキュリティ企業の中には、後継者候補が見つからず、将来的な事業承継に頭を悩ませているケースも少なくありません。特に立ち上げ社長の場合、適切な後継者を選んでから経営者の立場を退きたいと考えても、すぐに実行できない場合もあります。
後継者問題を抱える企業にとって、M&Aは有効な手段の一つです。M&Aを活用すれば後継者問題を抱えていても自社を存続させることができますし、結果として、適切な後継者を見つけてから事業を引き継げる可能性が高まります。
市場競争力の強化
サイバーセキュリティ業界において、企業の資本力や知名度、また優秀な人材確保は必要不可欠になります。M&Aによって買収側企業との協力体制を構築できれば、さらなる事業拡大や、コスト削減、サービスの品質向上ができるでしょう。
今後、競争が激化していくと想定されるサイバーセキュリティ業界において、競合他社よりスピーディーに事業拡大するために、M&Aは有効な選択肢の一つになるでしょう。
買収側のメリット
サイバーセキュリティ業界における買収側のメリットは、以下の通りです。
- 優秀な人材確保
- 新サービスの迅速な展開
- 市場シェアの拡大
- 国際競争力の強化
- 経営資源の効率化
それぞれ詳しく解説していきます。
優秀な人材確保
M&Aを通じて、サイバーセキュリティ業界における専門性を持った稀有な人材を確保することができます。特に、サイバーセキュリティ業界では、国内の技術者だけではなく、海外の技術者を確保していかなくては、ライバル企業に遅れをとってしまう可能性が高く、スピーディーな人材確保に向けて、M&Aという選択肢を持つことは必要不可欠になってくるでしょう。
新サービスの迅速な展開
サイバーセキュリティ事業を強化することで、自社の利益を守りたい。もしくは、サイバーセキュリティ事業を新しい事業の柱にしていこうと考えている企業にとって、M&Aは迅速なサービス展開に向けて有効な手段といえます。なぜなら、サイバーセキュリティ事業を自社でゼロから立ち上げるのに比べて、すでに事業化されている企業を買収することで、短期間に、新サービスの立ち上げを行なうことができるからです。
サイバーセキュリティ業界においては、最新テクノロジーを活用したサイバー攻撃に対して適切なアップデートを行い続ける必要があり、専門的な技術者を育成するには多大なコストと時間がかかります。M&Aを活用することで、人材育成や立ち上げのリスクを軽減させることができ、結果として、大きな利益を得られるチャンスが手に入ります。変化の激しいサイバーセキュリティ業界においては、非常に効果的な施策といえるでしょう。
市場シェアの拡大
競合他社に対してサイバーセキュリティ企業をM&Aすることで、市場シェアを一気に拡大し、業界内のブランド価値を高めることができます。ブランド価値の向上に伴い、他社に対しての優位性を得ることで、影響力、交渉力を高めることができます。
また、M&Aを成功させることで、買収先が保有している既存の設備や既存顧客を獲得し短期間で事業規模の拡大を行い、業界内の勢力図を大きく変化させられ可能性もあるでしょう。
国際競争力の強化
サイバーセキュリティの分野において、国内だけでなく、海外への事業展開も必要不可欠になってきています。また、ITのグローバル化によって、ITスキルの高い技術者やエンジニアなどの人材を獲得するには世界を視野に入れて人材確保を進めていく必要があります。
ゼロから海外で新規事業を立ち上げるには、膨大な資源と時間が必要になりますので、効率よく事業展開をするために、M&Aは有効な手段となります。海外において実績のある企業を買収できれば、人材や技術はもちろん、現地におけるブランドや知名度も取得することで国際競争力を一気に強化することもできるでしょう。
経営資源の効率化
サイバーセキュリティ業界において、自社内の資源だけで競合他社に負けない技術やノウハウを構築していくのには時間がかかりすぎてしまいます。M&Aを活用することで、買収先企業の人材や設備、過去の蓄積データを活用し、コストを抑えて事業展開を加速することができます。
変化の早いサイバーセキュリティ業界において、全てを自社のリソースだけで賄うことは困難です。M&Aを活用することで他社より一歩先んじて市場シェアを獲得していくことができるでしょう。
サイバーセキュリティのM&Aの注意点
サイバーセキュリティ業界のM&Aを行う際の注意点を解説します。サイバーセキュリティ業界のM&Aを行なう際の注意点は以下のとおりです。
財務状況の適切な把握
サイバーセキュリティ企業のM&Aを行なう際には、買収先企業の財務状況を適切に把握することでリスクの有無を把握する必要があります。
サイバーセキュリティ企業の価値は、財務諸表に見られる表面的な数値だけではなく、サイバーセキュリティ業界で活躍できるITスキルを持った人材、買収先企業の業界内シェアやブランドイメージ等も考慮する必要があります。
また、財務状況の把握としては、マイナスの資産が隠れていないかも調査することが重要です。可能性として、全てのお金の流れが記帳されているかどうか、未払いの報酬や給料、未解決の顧客トラブルや訴訟問題など、買収先企業の隠れたリスクを適切に調査することが重要です。
財務状況や正しい資産価値の把握を行なうためには、通常の業務をこなしながら片手間で行なうのは困難といえます。だからこそ、M&Aの専門家に調査してもらうなど、厳密な検証を行ったうえで、経営判断をすることが大切なのです。
文化の統合と企業風土の調和
M&Aの成功には、自社と買収先企業との文化の統合と企業風土の調和ができるかが重要になります。特に、サイバーセキュリティ企業では、グローバル展開している場合も多く、国民性や価値観も全く異なる企業が対象となるケースも少なくありません。
買収先企業の企業文化を尊重しつつも、自社の文化に調和させていくことが求められます。従業員同士、積極的にコミュニケーションを取り、相互理解を深めながら事業統合をしていく必要があります。
権利関係と法的なリスクと対策
サイバーセキュリティ企業のM&Aを行なう際には、権利関係や法的なリスク対策も重要になります。特に、サイバー攻撃から重要情報を守る役割を持ったサイバーセキュリティ企業において、M&Aの結果、引き継ぎ漏れからトラブルに発展したり、システムの規制やルールの対応などは、企業ごとの仕組みや各国の法律を理解した上で進めてる必要があります。
M&Aにおける法的なリスクを避け対策をしていくには、M&Aの専門家による適切なアドバイスを受けることが重要です。デューデリジェンスを徹底し、事前に想定されるリスクを明確にすることで、リスクを最小化していくことができます。結果として、効率よくM&Aによる目標達成に至ることができるでしょう。
サイバーセキュリティにおけるM&Aを成功させるためのポイント
サイバーセキュリティ会社におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。サイバーセキュリティ会社におけるM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
・M&A戦略の立案
・相場価格をよく理解しておく
・PMI(統合後プロセス)の確立
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
サイバーセキュリティのM&Aを成功させるためには、明確なM&A戦略の立案が必要不可欠です。そのため、自社の事業戦略や成長戦略の方向性を明確にする必要があります。
M&A戦略とは、M&Aを行う前に、自社の経営課題や成果に向けて道筋を明確にし、M&Aを行なうことで得られるリターンを最大化させることです。M&Aは事前準備の質と量によって、得られる成果が大きく変わりますので、M&A戦略を綿密に行えるかどうかはM&Aの成否に大きく関わります。
とはいえ、サイバーセキュリティ業界内でのシェアが大きい企業だとしても、M&Aという特殊な領域においては専門家のアドバイスを受けずにM&Aを成功させるのは極めて困難といえます。当然、M&Aだけに専念するのではなく、日々の業務をこなしながらになりますので、特定の企業を買収した結果、どのようなリスクとリターンがあるのかを明確化しておくのは、想像以上に大きな負担になってしまうでしょう。
相場価格をよく理解しておく
サイバーセキュリティのM&Aでは、適切な買収価格の設定が重要になります。買収先のサイバーセキュリティ企業の相場価格を適切に理解しておく必要があります。
企業価値の判断基準についても、目に見える財務状況、グローバル化が進む市場における成長性、将来的な技術力など、多方面から評価しておく必要があります。単独でM&Aを行うことによって、適切な評価ができない可能性もあります。市場データが少ない場合や、買収先企業の評価が複雑な場合、魅力的な企業の買収を断念して損をしてしまう可能性もありますし、逆に、過大評価した企業を買収した結果、以前よりも自社グループの評価が下がってしまう可能性もあります。
PMI(統合後プロセス)の確立
M&Aの成功には、買収後の統合プロセスが非常に重要になります。どんな優良企業を買収したとしても、買収後にきちんと統合ができなければ大きな成果を得ることはできません。一方で、目的に沿った適切な統合ができれば、大きな相乗効果により、費用対効果の高い投資になることもあります。
PMIを単独で行う場合、統合後のビジョンや目標の設定、実行計画の立案、従業員とのコミュニケーションなど、様々な課題に社内リソースを割く必要があり、本業に支障をきたす可能性があります。
既存の組織と買収企業の組織との慣習や業務プロセスの統合、新体制における人事制度の抜本的な見直し、組織共通の情報システムの統合など、様々な課題一つ一つに取り組み必要があります。
しかし、サイバーセキュリティ企業が単独でM&Aを行った場合、M&Aを実行することに注力してしまった結果、PMIが十分に行われない可能性があります。「M&A HACK」は、M&Aの専門組織として、M&Aの戦略策定から相乗効果の生まれる買収先の紹介まで、M&A取引をゼロからサポートする仲介サービスになります。当サービスは完全成功報酬型のため、リスクを気にすることなく検討することができます。初めての相談は無料になりますので、せっかくのM&Aで失敗したくないと考える方は、まずは下記からお問い合わせください。
無料相談のご予約:
https://sfs-inc.jp/ma/contact
サイバーセキュリティ業のM&Aにおける成功事例
サイバーセキュリティ業界におけるM&Aの成功事例を紹介します。これからサイバーセキュリティ業界におけるM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
リコージャパンがデジタルデータソリューションと資本業務提携
リコージャパン株式会社は、デジタルデータソリューションが提供するセキュリティ製品である「DDH BOX(digital data hacking box)」を活用した「RICOH サイバーセキュリティパック インシデント対応サービス」の発売を2023年夏に開始決定しました。
デジタルデータソリューション株式会社はサイバーセキュリティ事業、フォレンジクス事業、データリカバリー事業を行う企業になります。
M&Aが公式に発表されたのが2024年5月20日になります。
参考:リコージャパンとデジタルデータソリューションがサイバーセキュリティサービス事業拡大に向けた資本業務提携契約を締結〜サイバー攻撃の損失を最小限に抑制するセキュリティサービスを強化〜
ソフィアホールディングスがサイバービジョンホスティングを譲渡
株式会社ソフィアホールディングスは、中長期的な企業価値の向上、主要セグメント内における既存事業において選択と集中を行い、さらなる強化を進める目的で株式譲渡を行いました。
株式会社サイバービジョンホスティングは、サーバー・ネットワークの構築、及び運用保守サービスを提供しています。
M&Aが公式より発表されたのが2024年5月15日になります。
三井物産がRedpoint Cybersecurityを関連会社化
三井物産株式会社は、三井グループの大手総合商社として、100%子会社である三井物産セキュアディレクション株式会社を設立した後、20年以上にわたりサイバーセキュリティサービスを展開し、セキュリティ対策の事業を展開しています。
Redpoint Cybersecurityは米国の法人を主な対象として、セキュリティ分野のコンサルティング、運用サービスと幅広くサービスを提供しています。
三井物産株式会社は、海外市場における成長が見込まれるサイバーセキュリティ市場を取り込むことを目的として、Redpoint Cybersecurityを関連会社化することで、米国へ事業を拡大を目指しています。三井物産株式会社が保有している過去の知見やネットワークを活かし米国における顧客基盤の拡大、成長加速をすることで、デジタルサービスを安心して使える世界の基盤づくりに貢献していくとしています。
M&Aが公式に発表されたのが2024年4月24日になります。
GMOインターネットグループがFlatt Securityを子会社化
GMOインターネットグループ株式会社は、インターネット事業を1995年に開始してから、現在ではインターネットインフラ事業を中心に、広告事業、金融事業、暗号資産事業など多様な事業を展開してきました。
株式会社Flatt Securityは、2019年のセキュリティ事業開始から海外展開を見据え、グローバルに通用するプロダクト・サービスの提供をコンセプトに成長を続けてきた企業になります。
優秀なセキュリティエンジニアを有し、開発力に強みがある株式会社Flatt Securityを子会社化することで、豊富な知見やノウハウを、GMOインターネットグループが持つ顧客基盤との融合をさせ、日本はもちろん、世界における安心と安全なインターネット世界の実現を目指しています。
M&Aが公式に発表されたのが2024年2月13日になります。
参考:サイバーセキュリティ事業を展開する株式会社 Flatt Security の 株式取得(子会社化)及び第三者割当増資引受に関するお知らせ
SCSKがセキュリティサービス開発・販売事業などを子会社に承継
SCSK株式会社は、ITコンサルティング、システム開発、検証サービス、ITインフラ構築、 ITマネジメント、ITハード・ソフト販売、BPO等のサービス提供を行っています。
子会社であるSCSKセキュリティは、セキュリティサービス開発・販売 (コンサルティング、脆弱性診断と評価、トレーニング等) セキュリティ製品販売を行っています。
子会社に事業を承継する目的としては、企業や組織がデジタル化を進めるにつれて発生する新たなセキュリティリスクをコントロールすることを重要視したことで、永続的かつ効率的なセキュリティ対策を必要とする企業や組織のセキュリティリスクを低減するとともに、投資効果を最大化させ安心安全な社会を実現していくことを目的としています。
M&Aが公式に発表されたのが2024年1月31日になります。
サイバーエージェントがCraft Eggを吸収合併
株式会社サイバーエージェントは、メディア事業、インターネット広告事業、 ゲーム事業、投資育成事業を行っています。
Craft Eggは、スマートフォン向けゲーム運営を主に行ってきました。
株式会社サイバーエージェントは株式会社Craft Eggを吸収合併することで、株式会社ブシロードとの共同制作において、スマートフォン向けゲーム「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」を推し進めていく方針になります。
M&Aが公式に発表されたのが2024年1月31日になります。
参考:株式会社Craft Eggの吸収合併(簡易合併・略式合併)について
日立システムズがセキュアブレインと合併
株式会社日立システムズは、システム構築事業、システム運用、システム監視、ネットワークサービス事業、情報関連機器・ソフトウェアの販売と開発を行っています。
セキュアブレインは、Webサービスを提供する事業者に向けて、ITセキュリティを届ける、サイバーセキュリティ専門会社として2004年に設立しています。
合併の目的として、セキュアブレインのWebセキュリティノウハウを活用したモバイルアプリケーションセキュリティサービスや、マルウェア関連技術を用いたランサムウェア対策ソリューションの開発など、セキュアブレインが得意とする先端技術を活用して新たなイノベーション創出に取り組むことを目的としています。
M&Aが公式に発表されたのが2024年1月24日になります。
参考:マネージドセキュリティサービス事業拡大に向け組織・体制強化
フーバー・インベストメントがサイバーコマンドの株式取得
株式会社フーバーブレインの連結子会社であるフーバー・インベストメント株式会社は、有価証券の売買・投資・運用、および保有資産の管理、運用に関する総合コンサルティング業務等を行っています。
サイバーコマンドは、サイバーセキュリティトレーニングの提供等を行うサイバーセキュリティ事業を展開しています。
フーバー・インベストメント株式会社は、サイバーコマンドの今後の成長を見込み、ITエンジニアの集団を構築するというグループ戦略の一環として資本面でも提携を推進しています。
M&Aが公式に発表されたのが2023年11月16日になります。
電気興業がサイバーコアを子会社化
電気興業株式会社は、各種アンテナ、反射板、鉄塔の製作や、通信機器の建設を行う電気通信事業、高周波誘導加熱装置の製造、販売、加工を行う高周波事業を展開しています。
サイバーコアは、画像処理・画像認識・人工知能アルゴリズムの開発を行っています。
電気興業株式会社が、主にアンテナ製造や設計で培った無線通信技術、及び様々なカメラを中心としたセンシング技術と、サイバーコアの持つ画像やセンシングAI技術をかけ合わせることで、両社の強みを活かして企業価値を更に向上させていきたいという意図があります。
M&Aが公式に発表されたのが2023年8月25日になります。
参考:株式会社サイバーコアの株式取得(子会社の取得)に関するお知らせ
サイバー・バズがスタイル・アーキテクトの譲渡
株式会社サイバー・バズは、ソーシャルメディアマーケティング事業を展開しています。その中でも、化粧品・トイレタリーを中心とした様々なブランド、企業のSNSマーケティングおよびブランディングの支援に強みを持ちます。
スタイル・アーキテクト株式会社は、ネットマーケティング集客支援、メディア開発支援事業、食品および雑貨企画・製造・販売による直営ネット通販事業を行っています。
サイバー・バズグループは、経営資源をサイバー・バズの主力事業であるソーシャルメディアマーケティング事業に集中させ、企業価値向上を図ることを目的として譲渡を決定しました。
M&Aが公式に発表されたのが2023年8月15日になります。
参考:連結子会社の株式譲渡および特別損失(子会社株式売却損)の計上に関するお知らせ
gumiがCA GameFiへ出資
株式会社gumiは、モバイルオンラインゲーム事業、ブロックチェーン、メタバース事業を行っています。
株式会社CA GameFiはWeb3・ブロックチェーン領域の強みを持つ会社になります。
株式会社gumiはWeb3・ブロックチェーン領域での連携を始め、ブロックチェーン事業を今後の業績拡大に向けた成長基盤として位置付け、ブロックチェーンゲームやNFTのコンテンツ開発・提供を推進していく方針になります。
M&Aが公式に発表されたのが2023年6月9日になります。
参考:株式会社CA GameFiへの出資に関する決議のお知らせ
サイバーエージェント、ネルケプランニングの株式取得
株式会社サイバーエージェントは、メディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業、投資育成事業を行っています。
株式会社ネルケプランニングは、舞台制作会社として、漫画やアニメ・ゲームを原作とする2.5次元ミュージカル等のステージ制作、権利開発、キャスティング事業をメインに行なっています。
株式会社サイバーエージェントが運営する「ABEMA」において配信している、俳優育成オーディションバトル番組内で、主役の椅子を勝ち取った俳優たちがオリジナル舞台に出演できるという番組を共同制作にて行なうなど、株式会社ネルケプランニングが演劇業界で培った実績をグループに組み込み、演劇におけるリアルとデジタルの融合を図ったサービス転換を行っています。
M&Aが公式に発表されたのが2023年6月5日になります。
参考:舞台制作会社ネルケプランニングがサイバーエージェントグループに参画
サイバーステップの子会社ブルームズが資金調達
サイバーステップ株式会社は、子会社である株式会社ブルームズが法人・個人投資家に対して第三者割当増資を実施することで、総額2億10万円の資金調達を行いました。
サイバーステップ株式会社は、ネットワーク・エンターテイメントソフトウェアの開発、分散ネットワークライブラリ・3Dグラフィックエンジンの研究開発、オンラインゲームサービスのライセンスおよび運営を行っています。
子会社である株式会社ブルームズは、タレント・俳優のマネジメント業、アニメーション・ゲーム作品の音響制作、ドラマCD等の音響制作、イベントの企画・制作、スタッフ協力を行っています。
今回の資金調達の目的としては、株式会社ブルームズの米国ナスダック市場への上場を目的としています。
M&Aが公式に発表されたのが2023年6月2日になります。
参考:当社子会社の株式会社ブルームズ 米国ナスダック市場への上場を目的として資金調達を実施
サイバーエージェントが7gogoを吸収合併
株式会社サイバーエージェントは、メディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業、投資育成事業を行っています。
株式会社7gogoは、スマートフォン向けSNSサービス「755」の運営・提供を行っています。
株式会社サイバーエージェントは今回の吸収合併を通して、経営資源の効率化を図ることを目的とし、株式会社7gogoが運営していた「755」は、引き続き、株式投資をすればサイバーエージェントにて提供していく予定になります。
M&Aが公式に発表されたのが2023年4月26日になります。
参考:株式会社7gogo の吸収合併(簡易合併・略式合併)について
サイバートラストがCloudLinux社と協業
サイバートラスト株式会社は、セキュリティソフトの販売、及び情報セキュリティに関するサービスを行っています。
CentOS Linux Inc(米国 カリフォルニア州)はAlmaLinux OSの開発支援をしてきました。
サイバートラスト株式会社は今回の協業によって、長期的に継続して、迅速なセキュリティアップデートを提供する新たなOSSセキュリティサービスを展開することで、国内法人システムにおける安定したLinuxシステム環境の運用を支援していく狙いがあります。
M&Aが公式に発表されたのが2023年5月22日になります。
参考:サイバートラスト、米CloudLinux社と協業し、日本国内法人のAlmaLinuxユーザーを最長16年支援
まとめ
サイバーセキュリティ業界のM&Aにおける具体的な事例や、メリット・デメリットなどについて解説してきました。
サイバーセキュリティ業界では、国内、海外問わずM&Aが活発になっています。今後も、サイバーセキュリティ業界において、進化していくサイバー攻撃に対して対抗していくためにも、優秀なIT技術を持った人材確保が激化することが予想されています。
進化のスピードが年々加速していくIT業界において、競合他社に遅れを取らないためにも、M&Aを活用して、グローバルに事業を展開していく必要性が高まるでしょう。
M&Aは、企業の将来を左右する重要かつ、優先度の高い経営判断になります。市場動向や自社と他社との客観的な分析を元に、M&Aの専門組織のアドバイスを受けながら選択していくことが重要になります。当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」は完全成功報酬型のため、初回の相談は無料で行なうことができます。M&Aを効果的に進めたいとお考えの場合、まずは下記よりご相談くださいませ。
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