「家賃保証会社のM&Aにおける動向は?」
「賃貸管理会社のM&Aについて知りたい」
この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。
実際に現状「家賃保証会社・賃貸管理会社 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。
そこで、今回はM&Aの専門企業である「M&A HACK」が、家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。
家賃保証会社・賃貸管理会社におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
目次
家賃保証会社・賃貸管理会社とは
家賃保証会社と賃貸管理会社とは、連帯保証代行している会社や賃貸物件の管理業者おwしている業者のことです。
またひとつの不動産会社が、家賃保証会社と賃貸管理会社を兼ねている場合も多々あるので、広義の意味で「不動産会社」と定義されることも多いです。
しかし厳密には、家賃保証会社と賃貸管理会社で業務内容は異なります。そこで、家賃保証会社と賃貸管理会社の定義をそれぞれ解説していきます。
家賃保証会社とは
家賃保証会社とは、部屋を借りる際に必要となる連帯保証人の代わりとなる会社のことです。簡単に表現するのであれば、「入居者が家賃を滞納した際に、家賃を立て替えてくれる役割を持つ会社」となります。
家賃保証会社の存在が注目され始めたのは、ここ20年ほどで、2000年頃までは賃貸物件を借りる際には親族等の連帯保証人を立てるのが一般的でした。しかし「親族には頼みにくい」「そもそも連帯保証人の役割を果たせる親族がいない」などの問題を抱えている人が増えたこともあり、家賃保証会社を利用するケースが増えたのです。
現在では家賃保証会社の利用を不動産オーナーや不動産仲介業者が義務付けることが一般的になっています。そのため賃貸物件への入居時には、連帯保証人を立てない代わりに保証料として家賃の0.5~1ヶ月分を支払わなくてはならないケースが多いです。
賃貸管理会社とは
賃貸管理会社とは、アパートやマンションなどを所有しているオーナーに代わって、賃貸物件の管理をする会社のことです。建物のメンテナンスや入居者募集、クレーム対応など様々な役割を持ちます。
賃貸管理会社の役割には様々なものがありますが、大きくは「建物管理」と「賃貸管理」の2つに分類されます。建物管理と賃貸管理の業務内容は、以下の通りです。
「建物管理」としての主な業務 | 「賃貸管理」としての主な業務 |
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上記の他にも様々な業務があり、どの役割を担うかは管理会社によって異なります。また賃貸管理業務の一環として、家賃保証業務を担う不動産企業も多いです。
家賃保証会社・賃貸管理会社の運営に推奨される制度・資格
家賃保証会社・賃貸管理会社の運営では、登録または取得が必須とされている業許可・資格は存在しません。
しかし、それぞれに登録・取得が推奨されている制度・資格は存在します。家賃保証会社・賃貸管理会社の運営に推奨される制度・資格は、以下の通りです。
- 家賃債務保証業者登録制度
- 賃貸住宅管理業者登録制度
- 宅地建物取引士
- マンション管理士
- 管理業務主任者
それぞれの制度・資格について解説していきます。
家賃債務保証業者登録制度
家賃保証会社では、平成29年10月に国土交通省が「一定の基準を満たしている家賃債務保証業者は、国土交通大臣の登録を受けることができる」という家賃債務保証業者登録制度を設けました。
申請が通ると国土交通大臣の認可を受けた家賃保証会社として、信頼を担保することが可能です。登録を受ける要件としては以下の基準に適合している必要があります。
・暴力団員などが事業に関与していない
・保証事業を行なうための財産的基礎である純資産額が1,000万円以上
・コンプライアンスのための研修を実施する
・業務基準を規定した社内規則や組織体制が整備されている
・求償権(家賃立替分の取立て)の行使が適切な方法である
・賃借人からの相談や苦情に応じられる体制が整備されている
・法人の場合は、家賃債務保証業に5年以上継続しているか又は常務に従事する役員が、家賃債務保証業務に3年以上従事した経験がある
・事務所の代表者は家賃債務保証業の経験が1年以上ある
家賃債務保証業者登録制度は任意の制度であり、登録をしなくても家賃債務保証業を営むことは可能ですが、登録基準を満たせるようになった時点で登録することが望ましいです。
賃貸住宅管理業者登録制度
賃貸管理会社の登録制度は、平成23年から始まった「賃貸住宅管理業者登録制度」です。国土交通省が創設した登録制度で、登録事業者を公表することで、アパートやマンションを持つオーナーが、管理会社を選ぶ際の一つの判断材料となることを目的としています。
賃貸住宅管理業者登録制度は、管理する住宅戸数が一定規模以上の賃貸住宅管理業者は、登録が義務化されるのが特徴です。登録は申請によって行ないますが、一定の要件に該当すれば登録を拒否されます。
また登録の有効期間は5年間で、期間は更新することが可能です。任意制度であるものの、ほぼ登録は義務化されており、実際にはほとんどの賃貸管理会社が登録している制度になります。
宅地建物取引士
家賃保証会社・賃貸管理会社にとって、宅地建物取引士(宅建士)の存在は必須ではありません。宅地建物取引士を持つ人材が在籍していなくても、家賃保証会社・賃貸管理会社の運営自体は可能です。
しかし多くの家賃保証会社・賃貸管理会社では、不動産仲介業なども同時に営んでいるケースが多いため、宅地建物取引士を取得している人材は非常に重宝されます。
また宅地建物取引士の資格は、宅地建物取引業法に基づき定められた日本の国家資格です。不動産業における専門家であることを示す効果もあるため、宅地建物取引士の資格使用の如何に関わらず、取引先やお客様からも信頼を得ることができるでしょう。
マンション管理士
特に賃貸管理会社の運営においてマンション管理士は非常に重宝される人材です。マンション管理士は、マンションの住民が安心して暮らせるようにサポートする専門家であることを示す国家資格です。
賃貸管理会社にとってマンション管理士が果たす役割は大きく、マンション管理士の雇用は必須でないものの、ほとんどの賃貸管理会社はマンション管理士を雇用しています。マンション管理士の主な業務内容は、以下の通りです。
- マンション管理費・修繕積立金の管理
- マンションの管理規約の作成・変更
- 修繕工事の作成計画・進行
- 住民間でのトラブル解決に向けての予備的交渉
- 住民からの要望聴取とオーナーへの打診
マンション管理士は物件の管理・運営を行うだけでなく、住民とオーナーとの橋渡し役でもあります。マンション管理士として技能はもちろんのこと、高い交渉力やコミュニケーションスキルも求められる存在です。
管理業務主任者
賃貸管理会社で働く人材として推奨されるのが、管理業務主任者の資格です。管理業務主任者は、マンション管理業を開始する場合に必要となる国家資格になります。マンション管理業とは、マンション管理組合から依頼を受けてマンションの日常管理や定期的な修繕などをサポートする業務になります。
管理業務主任者を名乗るには、管理業務主任試験(試験主体:国土交通大臣、指定試験機関:一般社団法人マンション管理業協会)に合格し、管理業務主任者証の交付を受けなければなりません。管理業務主任者の主な業務内容は次の通りです。
- 管理組合などに対して行う管理事務の報告
- 管理委託業務に関する重要事項の説明
- マンションの設備や組合運営に関するマネージメント
管理組合に対して行う重要事項の説明や管理事務の報告は、管理業務主任者の独占業務になります。管理組合だけでは補いきれないマネジメントを専門知識によってサポートする存在です。
家賃保証会社・賃貸管理会社の市場動向
家賃保証会社・賃貸管理会社の市場動向について解説していきます。家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
人口減少と大都市集中の人口構造による影響
日本における人口構造の変化も家賃保証会社・賃貸管理会社にとって大きな影響を与えています。少子高齢化の進展により、65歳以上の人口が増える一方、生産年齢人口(15歳~64歳)の数は減少し続けている状態です。
賃貸物件における主な顧客は、生産年齢人口に属する人達です。ライフステージに合わせて取引が発生する(結婚・家族増加・独立など)ため、生産年齢人口の減少は家賃保証会社・賃貸管理会社にとって大きな痛手となっています。
また地方では少子高齢化に加え、人口流出と過疎化が進行しており、同時に家賃保証会社・賃貸管理会社の需要も低迷しているのが現状です。地方の家賃保証会社・賃貸管理会社は顧客獲得に苦労する一方、人口が集中する都市部では、不動産業者同士の顧客獲得競争が激化しています。
不動産テックの拡大
現代の家賃保証会社・賃貸管理会社を含む不動産業界において重要視されるのが、「不動産テック産業」の存在です。不動産テックとは、不動産における業務をITにより効率化・自動化・データ化し、さらに遠隔で商談や物件案内を実現したりするサービスを指します。
不動産テック導入による業務効率化と付加価値向上は、不動産産業において各社の経営課題そのものに直結する要素です。不動産テックを活用すれば、大幅な業務効率化をすることが出来ますが、仲介サービスなどの在り方が一変するため、非常に高い対応力が求められます。
M&Aにおいては中小規模の不動産業者を情報通信分野(IT分野)の企業が買収するケースも多く、これは自社の持つITリソースを不動産業において活用することが狙いです。今後は不動産テックを取り入れた業者により業界変革が起こることが大いに予想されます。
高齢化・核家族化による家賃保証会社の需要拡大
高齢化によって、家賃保証会社・賃貸管理会社を含む不動産業界全体の需要は低下傾向にあります。しかし一方で、高齢化・核家族化は家賃保証会社にとって、追い風となっているのも事実です。
現代の日本は超高齢化社会・核家族化の状態にあり、これらが原因で「連帯保証人を請け負う親族がいない」・「親族には頼めない」という高齢者が増加しています。また連帯保証人が存在しても、支払い能力がない場合も多いです。
不動産仲介業者やオーナーもこのような入居者を受け入れるリスクを考慮し、家賃保証会社の介入を促進する動きを見せています。今後も高齢化と核家族化は加速することが予測されるため、家賃保証会社の需要は高まっていくことでしょう。
家賃保証会社・賃貸管理会社におけるM&Aの動向
家賃保証会社・賃貸管理会社におけるM&Aの動向を解説していきます。これから家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
業界全体のM&Aは拡大傾向
上記は、帝国データバンクが調査した2019年度の「M&Aに対する企業の意識調査」による調査結果です。不動産業は、38.6%と上位比率となっています。
不動産テックの拡大・後継者不足・コロナ禍による減収など、様々な要因からM&Aを検討する不動産関連業者が増えてきているのが現状です。大手・中堅による中小規模企業の買収は今後も活発化されることが予測されます。
家賃保証会社・賃貸管理会社においては中小規模事業者の数も多いことから、特に後継者不足による問題が深刻です。実際に後継者不足による問題解消のため、国は社外から第三者への事業承継をサポートする政策を打ち出しており、プログラムの一環である事業承継・引継ぎ支援センターには相談が相次いでいます。
さらに不動産テックの拡大も後押しとなり、家賃保証会社・賃貸管理会社業におけるM&Aは、今後益々加速されることが予測出来るでしょう。
他業種からの新規参入が増加
不動産業界全体のM&Aは増加傾向にあるだけでなく、家賃保証会社・賃貸管理会社においては異業種からの新規参入が増加傾向にあります。
家賃保証会社・賃貸管理会社は安定した収入を得やすいため、他業種からのM&Aによる参入が増えているのです。また家賃保証会社・賃貸管理会社は他業種への展開もしやすい業種であることから、シナジー効果を期待した他業種からのM&Aが増加しています。
また事業承継の需要から売却・譲渡案件が増えていることも、他業種からの参入が活発化している理由のひとつです。他業界の大手企業が中小の家賃保証会社・賃貸管理会社をM&Aによって買収するケースも増えています。
不動産テックに関連したM&Aの増加
不動産テックは、家賃保証会社・賃貸管理会社を含む不動産業界全体に大きな影響を与えています。家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aにおいては、不動産テックに関連した案件が増加傾向です。
家賃保証会社・賃貸管理会社関連企業でのIT技術を活用したサービスの展開は、増加傾向にある競合他社との差別化に繋がる可能性があります。不動産テックを家賃保証会社・賃貸管理会社の運営に役立てれば、他社にはない付加価値を提供出来るでしょう。
また家賃保証会社・賃貸管理会社の不動産テック導入によるIT化は、まだまだこれから伸び代のある事案です。今後は益々不動産テックに関連した家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aが増加していくでしょう。
家賃保証会社・賃貸管理会社にてM&Aを行うことのメリット
家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aにおいてのメリットを売却側・買収側の両方から解説します。メリットを参考に家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aを検討してください。
売却側のメリット | 買収側のメリット |
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家賃保証会社・賃貸管理会社でM&Aの売却を行うことのメリット
家賃保証会社・賃貸管理会社でM&Aによる売却を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 資金調達・オーナーのEXIT
- 借入における個人保証の解除
- 事業の選択と集中
- 後継者不足の解消
- 従業員の雇用維持
それぞれ詳しく解説していきます。
資金調達・オーナーのEXIT
当然ながらM&Aによって売却された企業は、買収側の企業より金銭的収入を得ることができます。これは売却側のオーナーにとって大きなメリットとなる要素です。
M&Aによって獲得した現金の使い道としては、代表的なものとして以下のものが挙げられます。
- 残っている借入金の返済に充てる
- オーナー自身の引退後の生活資金とする
- 新規事業における資金源とする
一方で、M&Aをせずに廃業となれば、有形資産を処分する費用や解雇する従業員への補償など、多くのコストがかかります。オーナーにとっては廃業を選ぶよりM&Aを選ぶことの方が、遥かにメリットは大きいでしょう。
借入における個人保証の解除
借入による資金調達を行った場合には、当然ながら返済義務が生じ、これが出来ない場合には個人資産を失うことになります。家賃保証会社・賃貸管理会社に関わらず、これは全ての経営者にとって大きな精神的負担となる事柄です。
特に中小規模の家賃保証会社・賃貸管理会社の場合、経営資金の融資調達はオーナー経営者が個人保証したり、個人資産を担保に入れることがほとんどのはず。貸倒によるオーナー個人の損害は計り知れないものです。
M&Aで会社を売却することで、会社は廃業や倒産を免れるだけでなく、基本的に債権も買い手に引き継がれるため、個人保証や担保差し入れを解消することができます。オーナーにとっては肩の重い荷を下ろすことにも繋がるのです。
事業の選択と集中
景気悪化を辿る日本では、生き残りのために複数の事業を多角展開する企業も珍しくありません。しかし事業の多角化は一歩間違えれば、赤字を生み出し、廃業の原因とさえなり得ます。
M&Aのスキームの一つである「事業譲渡」を用いることで、不要となった事業やその関連資産だけを選別して売却することが可能です。実際に事業譲渡により、特定の事業のみを他者委に売却する企業は多くあります。
M&Aの事業譲渡によって事業を売却することで、事業の選択と集中が出来れば、経営状態を好転させられるかもしれません。得意分野に資金や人員を集中できるため、成功率も高まるはずです。
後継者不足の解消
特に中小規模の家賃保証会社・賃貸管理会社にある問題として、後継者不足による廃業が挙げられますが、M&Aによる売却を進めることで後継者不足の解消に繋げることができます。
実際に後継者不足解消のため、中小規模の事業者が大手・中堅企業に買収されることで、後継者問題の解消に繋げるケースが多いです。M&Aでは、会社を譲渡することで譲受企業から経営陣を迎え、これまで通り会社を存続させる事ができます。
また大手企業の経営者クラスに位置する優秀な人物が経営者となるため、売却側の事業規模がこれまでより拡大される場合が多いです。後継者不足に悩んでいる企業にとって、M&Aを行うことは廃業を避けるための大きな手段のひとつです。
従業員の雇用維持
売却側の企業が廃業目前であった場合には、M&Aを実行することで、既存従業員の雇用を継続して守ることができます。実際にM&Aを行った場合、ほとんどのケースで譲受企業によって従業員の雇用が継続されます。
労働条件においても引き継がれるケースがほとんどなので、廃業に比べると既存従業員が被る影響を大きく抑えることに繋がるでしょう。給与待遇や労働条件が同じであれば、M&A後の離職率も低下させることができます。
また待遇面においては、M&A後に給与受験・労働時間・年間休日・福利厚生などの改善が行われるケースも多いです。M&A以前よりも好条件で雇用されるケースもあるので、既存従業員にとっては大きなメリットとなり得ます。
家賃保証会社・賃貸管理会社でM&Aの買収を行うことのメリット
家賃保証会社・賃貸管理会社でM&Aによる買収を行うことのメリットは、以下の通りです。
- 事業拡大のチャンス
- 新規事業への進出
- 顧客の獲得が用意になる
それぞれ詳しく解説していきます。
事業拡大のチャンス
M&Aにおいて買収側が得られる最大のメリットは、事業拡大のチャンスを得られることでしょう。M&Aによって買収側の企業は不動産業における規模・シェアの拡大を狙うことができます。
家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aにおいては、売手となる企業が持つ設備や建物事務所のような有形資産に加え、顧客・取引先・特殊情報などの無形資産を手に入れることも可能です。家賃保証会社・賃貸管理会社にとって、「顧客(物件売主)」などの無形資産は実績に直結する要素であるため、M&Aによる早期事業拡大も視野に入れることができます。
また家賃保証会社・賃貸管理会社の市場においては、大手企業の市場シェア率が高いですが、M&Aを行うことで自社の市場シェアを拡大させることが可能です。中小同士のM&Aを行うことで、大手企業に対抗する勢力を付けることにも繋がります。
新規事業への進出
M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに早期進出が可能となります。
景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。
また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。
顧客獲得が用意になる
家賃保証会社・賃貸管理会社は中小企業を含み事業者数が非常に多く、商圏エリアに競合が密集する傾向にあるため、新規参入のハードルが非常に高い業界です。M&Aによって家賃保証会社・賃貸管理会社の買収をすれば、一から顧客を獲得する労力がなく、一定の成果・実績を最初から狙うことができます。
特に日本は大都市密集型の人口構造であるため、家賃保証会社・賃貸管理会社として高い実績を上げるためには、必然的に都市部へ進出することが必須です。しかし、競合が多い都市部で新参の新規飛び入りの家賃保証会社・賃貸管理会社が成功を収めるのは容易ではありません。
M&Aの買収による事業譲渡を行えば、譲渡企業の商圏をそのまま獲得することが可能です。一から商圏顧客の獲得競争に混ざる必要がないため、顧客獲得に関連する費用も抑えることが出来るでしょう。
家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aにおける成功事例
家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aにおける成功事例を紹介します。これから家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
ハウスパートナーホールディングスによるサカエ不動産・アールシーのM&A
2020年6月に「ハウスパートナーホールディングス」が「サカエ不動産」「アールシー」の全株式を取得し完全子会社化したM&Aです。取得対価は非公開となっています。
譲り受け企業である「ハウスパートナーホールディングス」は、千葉・東京・埼玉で不動産管理・仲介事業を展開している企業です。一方の「サカエ不動産」は千葉県で不動産管理・仲介業を。アールシーは千葉県で不動産のリフォーム・修繕工事・クリーニングを展開している企業になります。
「ハウスパートナーホールディングス」は、千葉県にて不動産関連事業を展開する2社を買収することにより、千葉県内での商圏拡充・強化に成功。さらにアールシーの不動産サービス業のノウハウを活かし、既存顧客へのサービス品質向上を果たしています。
ハウスパートナーホールディングス、サカエ不動産買収し完全子会社化。千葉市エリアにおける経営基盤を強化
ハウスドゥによる小山建設グループ3社のM&A
2019年8月、「ハウスドゥ」は、「小山建設」の全株式・「小山不動産」株式の55%・「草加松原住建」の全株式を取得し、3社を完全子会社化しました。本M&Aによる取得対価は26億5,000万円です。
「ハウスドゥ」は、全国に1,000店舗の不動産仲介フランチャイズチェーンを展開、さらに不動産売買・リースバック・リフォーム事業を展開しています。譲渡企業である「小山建設」「小山不動産」「草加松建設」の3社は、埼玉県草加市を拠点とし、小山建設を中核とするグループにて、不動産仲介・管理業などを展開しています。
このM&Aは、後継者問題・競争率激化などを抱える不動産業界で、自社とより親和性の高い企業同士が合併し、基盤強化を果たすことが出来た事例です。ハウスドゥによる事業承継プログラムの一環としてM&Aが実行されています。
ハウスドゥ、小山建設グループの全株式取得、子会社化
ヒューリックとリソー教育によるM&A
2020年9月にヒューリックとリソー教育が資本業務提携を締結したM&Aの事例です。リソー教育はヒューリックの発行する普通株式の5%分を7,700マ年で取得。一方のヒューリック側もリソー教育の取締役会長が保有する株式の5%相当分を取得しています。
リソー教育は、学習塾「TOMAS」などの運営や幼児教育事業「伸芽会」などの運営を行っている企業です。一方の「ヒューリック」は、不動産の所有・賃貸・売買・仲介業務を展開している企業になります。
本件M&Aは、買収や合併などの一般的な手法ではなく、資本業務提携のスキームを利用した事例です。資本の移動を両社間にて行うことで、経営におけるシナジー効果を得ることが狙いとなります。
ヒューリック株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する意見表明、同社との資本業務提携契約の変更、及び同社を割当予定先とする第三者割当による新株式発行に関するお知らせ
APAMANとプレストサービスによるM&A
2018年5月、APAMANは子会社である賃貸管理会社Apaman Propertyを通じ、プレストサービスを株式譲渡による全株式取得で子会社化したM&Aの事例です。取引金額は一般公開されていません。
譲り受け企業であるAPAMANの子会社「Apaman Property」は、賃貸管理業を生業とする企業です。一方の「プレストサービス」もApaman Propertyと同じく賃貸管理業を運営しています。
本件M&Aは、賃貸管理業者同士の株式譲渡の成功事例です。譲り受け企業であるAPAMANは、同業者であるプレストサービスを自社に取り込むことで、賃貸管理業の収益安定化と事業拡大を図っています。
当社連結子会社による株式会社プレストサービスの株式の取得(孫会社化)に関するお知らせ
西部ガスとエストラストによるM&A
2017年2月に、西部ガスがエストラストをTOB(株式公開買付)によって子会社化したM&Aの事例です。本件M&Aにおける取引金額は約25億円です。
譲り受け企業である「西部ガス」は、ガスの製造・販売・供給に加え、ガスに関連する建設工事・設置などを手掛ける企業です。一方の「エストラスト」は、九州・山口を地盤とするマンション販売・管理などの運営をする企業になります。
本件M&Aをきっかけとして、エストラストはこれまで運営してきたオール電化物件関連のビジネスをガス主体の物件販売に切り替えることになりました。これにより、西部ガスのガス事業が拡大するとともに、不動産関連事業への新規参入も果たしています。
株式会社エストラスト株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
香陵住販とKASUMICによるM&A
2019年3月に、香陵住販がKASUMICを株式譲渡のスキームにより買収したM&Aの事例です。香陵住販はKASUMICの全株式を取得し、取引金額は3億1,300万円となっています。
譲り受け企業である「香陵住販」は、茨城県水戸市に本社を置く不動産会社で、賃貸仲介事業・不動産売買事業・賃貸管理事業・収益不動産事業などを展開している企業です。一方の「KASUMIC」は、同じく茨城県で不動産の仲介・管理などを手掛けている企業になります。
本件は、同じ商圏エリアに属する不動産企業同士のM&Aです。香陵住販は茨城県での管理戸数拡大と、KASUMICとの不動産事業のシナジー効果を得ています。賃貸管理業社同士が商圏エリア内での市場競争力を高めるために実施したM&Aとなっています。
フォーサイドと日本賃貸住宅保証機構によるM&A
2017年6月、フォーサイドが日本賃貸住宅保証機構の所有する株式の内40%を買収したM&Aの事例です。株式譲渡のスキームによって実施され、取得金額は4億100万円となっています。
譲り受け企業である「フォーサイド」は、東京都中央区を所在地とし、IT分野において幅広い事業を手掛ける企業です。一方の「日本賃貸住宅保証機構」は、大阪府大阪市に本社を構える賃貸家賃保証関連企業になります。
本件M&Aは、フォーサイドがこれまでの投資用不動産に加え、IT分野のノウハウを活かすことで賃貸保証事業・管理事業への新規参入を図ることが狙いです。IT企業が収益の安定化を図る意図で家賃保証・賃貸管理業に新規参入した事例となります。
日本アセットマーケティングとアセッツ・パートナーズのM&A
2016年12月に日本アセットマーケティングがアセッツ・パートナーズの全株式を取得し、完全子会社化したM&Aの事例です。取得金額は100万円となっています。
譲り受け企業である「日本アセットマーケティング」は、東京都に本社を置き、不動産賃貸・管理業を展開する企業です。一方の「アセッツ・パートナーズ」は、アセットマーケティングと同じく不動産賃貸・管理業を運営していました。
本件M&Aは、買収側・売却側ともに不動産賃貸・管理業を営む企業同士のM&Aです。同業者同士が合併することにより、さらなる事業拡大を狙ったものと考えられます。双方が持つノウハウを活かしシナジー効果をもたらした成功事例です。
日本アセットマーケティング、不動産開発のアセッツ・パートナーズを子会社化
ビジネス・ワンホールディングスとピーエムジャパンによるM&A
2014年4月にビジネス・ワンホールディングスは同社子会社であるビジネス・ワン賃貸管理を通じ、ピーエムジャパンの賃貸管理事業の一部を株式譲渡により譲り受けしたM&Aの事例です。取得金額は1億8,000万円となっています。
譲り受け企業である「ビジネス・ワン賃貸管理(ビジネス・ワンホールディングスの子会社)」は、賃貸マンションの管理事業を展開している企業です。一方の「ピーエムジャパン」は、福岡県福岡市に本社を置く、賃貸管理企業になります。
本件M&Aは、ビジネス・ワンホールディングが同社子会社であるビジネス・ワン賃貸管理の事業規模拡大を目的としたものです。資金力のある大手不動産関連企業が、中小規模の不動産企業に対しM&Aを実施した事例となります。
ビジネス・ワンHD、連結子会社ビジネス・ワン賃貸管理により事業の一部を譲受け
タカラレーベンと住宅情報館によるM&A
2015年1月に、タカラレーベンが住宅情報館の全株式を取得し、同社を完全子会社化したM&Aの事例です。取得金額は一般公表されていません。
譲り受け企業である「タカラレーベン」は、新築分譲マンションの企画・開発・販売、不動産流動化事業、賃貸事業、流通事業などを手掛ける企業です。一方の「住宅情報館」は、愛知県に本社を構える賃貸管理などを主体に運営する企業になります。
本件M&Aにより、タカラレーベンは、住宅情報館が持つ約2,200戸の不動産管理事業を取得することで、関西での事業拡大に成功しています。不動産関連企業同士のM&Aにより、事業拡大に成功した事例です。
家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aにおける注意点
家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aにおける注意点に関して解説します。家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aにおける注意点は以下の通りです。
- M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
- コンプライアンスの厳守
- 既存従業員による離職対策
それぞれ詳しく解説していきます。
M&Aの専門知識を持たない状態での引継ぎ
M&Aでは、買い手と売り手の情報格差(買い手のM&Aに関する知識・経験が圧倒的に豊富)であるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。
買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手有利の条件(買収金額が相場よりも圧倒的に小さくなってしまう)という現象が起こりかねません。最悪の場合には、不利な条件でM&Aをすることによって、莫大な損害を被るケースもあります。
そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのがおすすめ。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。
コンプライアンスの厳守
家賃保証会社・賃貸管理会社を含む不動産業界のビジネスは、他業界に比べて特にコンプライアンスの順守を求められる業界です。そこで、買収先企業がコンプライアンス順守を徹底しているか事前にチェックしておくことが必要になります。
特に家賃保証会社・賃貸管理会社の取引先・入居者に関する情報管理は必須事項です。もし家賃保証会社・賃貸管理会社を買収する場合には、必ず買収・譲渡前に顧客情報管理の体制を確認しておきましょう。
もし買収先の家賃保証会社・賃貸管理会社の顧客情報管理が不十分な場合には、即座に見直しを依頼する、または譲渡後直ぐに管理体制を見直すことが必須です。M&A後の企業信頼性を担保するためにもコンプライアンス厳守の体制を整えましょう。
既存従業員への離職対策
買収先の既存従業員による離職対策は、M&Aを成功させるために必要なポイントのひとつです。既存授業員の離職を防ぎ、優秀な人材を雇用し続けることが重要になります。
経営者視点から見ればM&Aは立派な経営戦略であり、大きなシナジー効果を生むものです。しかし従業員にとっては、今後の働き方や会社との雇用関係に大きな変化をもたらす為、M&Aによって雇用条件や働き方が悪化すると離職を招きます。
M&Aによる離職を防ぐためには、従業員の働き方や雇用関係の変化に対し、敏感に配慮することが重要です。既存従業員が不安となる要素はあらかじめ取り除いておくことが、M&Aによる離職を防ぐ手段として有効になります。
家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aを成功させるためのポイント
家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aを成功させるためのポイントについて解説します。家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。
- M&A戦略の立案
- PMI(統合後プロセス)の確立
- 相場価格への理解
それぞれ詳しく解説していきます。
M&A戦略の立案
M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化されます。
M&A戦略では、自社の分析(SWOT分析)や市場調査・業界トレンドなど様々な要素を調査することが必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収(売却)先選定や交渉を行なっていくことになります。
M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。
- M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
- 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
- いつ・誰に・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
- 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
- M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)
上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が場当たり的だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。
また自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。M&A専門業者に委託することで、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。
当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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PMI(統合後プロセス)の確立
M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた成長を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMI(Post Merger Integration)の考え方が重要になります。
PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後プロセス」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。
- 新経営体制の構築
- 経営ビジョン実現のための計画策定
- 両社協業のための体制構築・業務オペレーション
上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。
またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行うことになります。
相場価格への理解
M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。
家賃保証会社・賃貸管理会社のM&Aでは、株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることが多いです。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を計算してみましょう。
また、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。
家賃保証会社・賃貸管理会社におけるM&Aのまとめ
今回は家賃保証会社・賃貸管理会社におけるM&Aについて、家賃保証会社・賃貸管理会社の現状や特徴、市場動向やM&A事例を踏まえて解説しました。
家賃保証会社・賃貸管理会社は事業者の数が非常に多いこともあり、M&Aが盛んに実行されている業界です。M&Aによる経営統合によって事業拡大に成功している家賃保証会社・賃貸管理会社も数多く存在します。
しかしM&Aは企業の成長戦略として非常に有効な手段である一方、万全を期して臨む必要のある経営戦略です。当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。
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