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学習塾のM&A・事業承継の全知識!売却相場・事例・成功ポイントを徹底解説

「学習塾業界のM&Aの売却相場は?」
「学習塾業界のM&Aについて知りたい」

この記事をご覧の方は、上記のような疑問をお持ちの人が多いのではないでしょうか。

実際に現状「学習塾業界 M&A」等と検索しても、信憑性に欠ける記事や専門家が執筆した解読が難解な記事しかなく、素人が目にしても理解できない記事が多いです。

そこで、今回はM&Aの専門企業であるM&A HACK」が、学習塾業界のM&Aについて分かりやすく簡潔に解説します。

学習塾業界におけるM&Aの売却相場や成功ポイントについても詳しく解説するので、学習塾業界のM&Aに興味のある人は、ぜひ参考にしてください。

目次

学習塾とは

学習塾とは

学習塾とは、学校の教育課程に関して、生徒に対して補習や受験指導などの学習支援を行う民間の教育施設です。主な教科は国語、算数・数学、理科、社会、英語などの基礎科目が中心となりますが、一部では実験などの体験型学習で意欲向上を図る塾もあります。

塾の形は大きく分けて2つあり、受験対策に特化した進学塾と、学校の授業の理解が追いつかない生徒への補習を主眼とする補習塾です。特に都市部では進学塾が多く、難関校への合格実績をアピールして生徒を集めています。

指導形態は生徒数やニーズによって異なり、進学塾では講師1人が大人数を相手に授業形式の指導を行うことが一般的です。ただし、生徒一人ひとりの学力に合わせて教材や指導方法をカスタマイズする個別指導スタイルを採用しているところもあります。

近年は2020年ごろから開始された新学習指導要領に伴って、一部の学習内容が変更されたり、また共通テストでは「情報」という教科も追加されたりしました。それらの対応を目的に、指導内容や指導方式の見直しを行う塾も増えています。

個別指導への移行の加速

近年の学習塾業界では、集団指導から個別指導への移行が加速しています。生徒一人ひとりのレベルに合わせた丁寧な学習指導を求める声が高まっており、大手学習塾も個別指導方式へとシフトする傾向です。

しかし、個別指導への移行には課題も存在します。講師の増員が必要となるため、人件費が増大し、利益が減少してしまうでしょう。そこで一部の学習塾では、講師をアルバイトやフリーランスとして雇用したり、教える場所を一箇所に集約するなど、費用の削減を図る動きが出てきています。

大手学習塾においては、経営圧迫要因を解消するため、インターネットやITを活用した個別指導の導入も進んでいる状況です。最近ではスマートフォンを使った授業配信やAIでの学習支援を提供する事業者も増加しています。デジタル化への対応も、学習塾業界にとってとても大事です。

M&Aの動きも見られる

学習塾業界では最近業界再編の動きが加速する中で、M&Aを使った事業拡大をする事業者がいます。これの背景は少子化に伴う生徒獲得競争の激化です。大量の生徒の獲得を目指した大手学習塾同士の合併はもちろん、異業種からの参入におけるM&Aも活発化しつつあります。

一方で、大手を中心としたM&A攻勢に対抗すべく、中小塾同士の経営統合による規模拡大や、地域密着型塾の再編も一部で見られるようになってきました。今後、地方でも業界再編の行方に目が離せない状況となっています。

他に、学習塾がIT技術や教育ノウハウなどを持つ会社を買収し、それによってより効率が上がったサービスを目指す動きも盛んです。IT技術や教育ノウハウによって質の高い教育を提供していることをアピールすれば、より生徒が増えるでしょう。

学習塾業界の市場動向と市場規模

学習塾・予備校市場規模推移

 

矢野経済研究所「学習塾・予備校市場に関する調査を実施(2021年)」より

矢野経済研究所の調査によると、2020年度の学習塾業界の市場規模は前年度より若干減りました。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響は他業界に比べると相対的に小さかったようです。

経済産業省のデータによると、全国の学習塾の事業所数は約52,372か所に上ります。学習塾は教育関連産業の中で最大の市場規模を占める存在です。教育関連市場には、通信教育、資格スクール、幼児教室、体操教室などの業態が含まれます。

現在、資金力のある大手学習塾グループでは、既存の学習指導事業に留まらず、幼児教育、英会話教室、学童保育などの分野にも事業を広げる傾向です。競争に勝つために、多様な教育関連サービスへの参入を図っています。

全体として、新型コロナ禍においても学習塾業界はある程度の底堅さを示しており、大手を中心に異分野への事業展開がされている状況です。学習塾業界は割と収益などは安定していると考えられますが、今後は少子化により競争が厳しくなると考えられます。

学習塾業界が持つ課題

 

学習塾業界には現在様々な課題があります。学習塾業界が持つ主な課題は、以下の通りです。

  • 少子化の深刻化
  • IT対応の必須化
  • 赤字経営の会社の増加

それぞれ詳しく解説していきます。

少子化の深刻化

少子化が進行する中、特に地方では子供の数が減少しており、生徒確保に苦戦する学習塾が増えてきているのが実情です。経営改善を重ねても集客が思うように伸びないケースが出てきています。

学習塾は講師の人件費や設備費、教材費などの固定費がかさむビジネスモデルです。生徒数が減れば売上が伴って減少し、固定費がそのまま残るため、経営を圧迫することになります。最悪の場合、廃業を余儀なくされかねません。

参入障壁が低い学習塾業界では、一部地域で子供の数に比べ過剰な参入があり、同業他社との競争が過熱している状況もあります。中小・個人経営の塾ではコストカットに限界があり、採算性の維持が課題です。

一方で好調な塾でも、将来を見据えた経営の見直しが求められます。プログラミングや英会話などの新領域への進出を図ることで、新しい収益の柱を構築する必要があるでしょう。総じて、少子化による需要の減少は学習塾業界全体の大きな課題となっており、効率的な経営と新規事業の開拓による収益基盤の多様化が、経営陣に求められる対応になってきています。

IT対応の必須化

一部の学習塾は、IT活用が遅れていて良い教育を提供できずに経営が行き詰り、結果的に廃業に追い込まれている状況です。その一方で、積極的にITを導入し続けている大手事業者への売上が一極集中する傾向にあります。

近年はAIを使った教育の最適化が加速したり、Web会議を使った授業が行われたりしており、これらのITサービスに対応できずに生徒を失う塾が多いです。学習塾業界においては、今後生き残りをかけてITへの対応が避けて通れない最重要課題となっています。

なので、学習塾が生き残るためにはIT会社と自発的に取引をして生徒のニーズを満たせるように努力をする必要があるでしょう。

指導カリキュラムの変化

2020年ごろから、新学習指導要領が導入されました。それによって、これまでの暗記中心の指導から思考力を伸ばす指導への転換が求められており、講師の指導スキルの向上が急務となっています。生徒に考えさせる問いかけや、主体的な学びを促すことも不可欠になってきました。しかし、従来の講師陣にはそうした力量が十分に備わっていないのが実情です。

また、新教科である情報については、講師自身がまだ不足していたり、効果的なテキストが用意できていないケースが多く、効果的な指導方法や教科書を活用するための課題が残されています。さらに、このような新しい指導方式への対応が求められる中で、少人数制に切り替えるなどのカリキュラム改編が必要となり、コスト面での負担が重くのしかかっているのが問題です。

このように、新学習指導要領への移行は、学習塾経営者や講師に対して大きな負荷がかかっており、軌道修正に向けて多くの努力を強いられている状況と言えるでしょう。

学習塾業界の動向と今後

 

M&Aにおいて業界の現状とこれからを理解しておくことは非常に重要です。そこで、ここでは学習塾業界の動向と今後について解説していきます。ぜひ参考にしてください。

グローバル化と多様化する学習ニーズへの対応

IT技術の進化とグローバル化が加速する中、オンライン教育を通じて世界中の生徒に対する教育サービス提供が可能になってきました。オンラインならば物理的な制約がなく、場所を問わず学習できる利点があります。しかし一方で、一つの国や地域のスタイルを押し付けるのではなく、それぞれの現地の文化やニーズに合わせたカスタマイズが必須です。例えば学習スタイルや学習内容は地域によって異なるため、コンテンツや指導方法を現地化する必要があります。

また社会の変化に伴い、求められる人材像や必要なスキルが大きく変わってきました。単に学力だけでなく、プログラミングやデータ解析、デジタルリテラシー、創造性や課題解決力の育成が重視されるようになっています。

この流れを受けて、既存の枠にとらわれず、常に新しい学びの分野を開拓していくことが大切です。AI時代に対応したプログラミング教育や起業家育成、デザイン思考、資格講座など、教育領域の多様化が求められています。

働き方の変革が必要に

塾にとって大切なことは、優秀な講師の確保と育成です。AIやデジタル化の進展に伴い、知識伝達型から生徒一人ひとりに最適化された革新的な指導法が求められており、高度な指導力を備えた人材が不足しています。今後は給与水準の大幅な引き上げはもちろん、研修制度の充実、キャリアパスの明確化など、魅力的な処遇と育成環境の整備が不可欠です。

また教員免許保持者以外の、多様な専門人材の登用も重要になります。ママ講師、IT、デザイン、起業家経験者など、様々な分野の専門性を持つ人材を積極的に活用することで、新しい価値創造や多様な教育サービスの提供が可能となるでしょう。AIなどの先端技術を理解し活用できる人材確保も課題です。

さらにワークライフバランスの実現に向けた働き方改革も進んでいます。女性の講師は、育児と両立が難しいのが現状です。フレックスタイム制や在宅勤務の導入、時短勤務の検討など、業務の柔軟性を高め、生産性向上を目指す必要があります。優秀な人材の定着とモチベーション維持のためには、こうした働き方改革が欠かせません。一方で人件費高騰リスクもあり、教育の質と経営環境のバランスが重要になってくるでしょう。

外国人労働者の雇用の増加

学習塾業界では、日本人従業員の確保の代わりやより良い外国語教育のために、外国人講師の受け入れによって人手を補おうという動きが広がっています。言語や文化の違いはあるものの、外国人労働者を積極的に雇用することで、人員の手当てを図る企業が増えてきました。

実際に外国人労働者を活用する際には、教師同士のコミュニケーション円滑化や、生活面での支援など、様々な課題に対応が求められます。外国人講師への実務教育の徹底や、バイリンガル人材の活用なども重要です。

そして、将来の中心となる人材の確保と育成を見据え、外国人労働者の長期的な定着を狙う取り組みも行われるようになってきました。単なる人手補充にとどまらず、外国人従業員のキャリア形成支援にも力を入れる動きがあります。

学習塾業界は人手不足対策として外国人労働者活用が本格化しており、外国人講師の育成と定着に注力することで、企業は長期的に役立つ人材を確保することが可能です。

学習塾業界のM&Aの動向

学習塾業界におけるM&Aの動向について解説します。これから企業のM&Aを検討している人は、ぜひ情報の一部として参考にしてください。

少子化対策のためのM&Aが増加

少子化が進行する中、生徒数の確保が学習塾経営の最大課題となっています。規模を問わず、生徒数を増やすためにM&Aを行う塾が増加してきました。生徒数が多ければ経営効率化が可能になるため、大手塾ではM&Aで大量の生徒と拠点を確保し事業拡大を図るケースが目立ちます。

また、長期的な少子化対策として、M&Aにより大人向け教育事業との統合を行い、ターゲット層を児童生徒から社会人・高齢者層にも広げる動きも顕著です。

さらに、優秀講師の確保も課題となります。アルバイト講師が多く人手不足に陥りやすいため、安定した指導力を確保するためにM&Aを実施し、相互に講師を補完し合う事例が出てきました。

このように、生徒減少と人手不足の2つの課題に直面する中、M&Aを活用し経営基盤を強化しようとする機運が、学習塾業界で高まっているのが現状です。

関連業種同士でのM&Aが多くある

学習塾業界への参入障壁は非常に低くなっており、指導力のある講師や良い教科書さえいれば、オンラインでも新たに学習塾を開業することが可能になっています。そのため、中小企業や個人が運営する学習塾が急増し、業界内の競争が非常に激しいです。

しかしながら、小規模な個人塾などは、独自の魅力や差別化要因を打ち出すのが難しく、生徒の確保に苦戦することがあります。結果的に短期間で廃業に追い込まれてしまうケースも少なくありません。このような厳しい経営環境を打開するため、学習塾業界では同業種や関連業種間でM&A(合併・買収)を行い、経営基盤の維持・強化を目指すケースが増えてきました。

大手学習塾とM&Aを実施することで、自社のブランド力向上や広告宣伝費の削減などのメリットが期待できるため、広告費をほとんどかけられない中小規模の個人塾は、積極的にM&Aを検討する動きが見られます。自力での生き残りが困難な中小塾にとって、M&Aは有力な経営選択肢となっており、業界全体でM&A機運が高まっているのが現状です。

サービス向上のためのM&Aも多数

学習塾業界では近年、単なる規模拡大だけでなく、事業範囲の拡張やサービスの質向上を目的としたM&Aが増えてきています。生徒数や拠点数を伸ばすだけでなく、自社の弱みを補完し総合力を高めるのが狙いです。

例えば、特定の地域に強みを持つ塾が、別の地域に根付いた塾を買収することで、不足していた地理的な空白地帯を埋めサービスを全国的に均一化できます。また、教科や指導方法、ICT活用などで互いに異なる強みを持つ塾同士がM&Aを行えば、それぞれの長所を組み合わせてサービスの幅を広げ、質を大きく向上させることができるでしょう。

加えて、従来の学習塾事業に加え、英語や資格講座、プログラミング教育など新しい分野に強みを持つ教育事業者を買収することで、自社のラインナップを拡充し、トータルでより包括的な教育サービスが提供可能になります。生徒のニーズの多様化に対応するためです。

さらには、教材開発や人材育成、マーケティングなどの経営資源面でも、M&Aによるシナジー効果が期待できます。例えば、教材開発の優れた塾と人材育成に長けた塾がM&Aすれば、お互いの強みを生かし合い、より質の高い教育サービスを生み出せるはずです。

学習塾のM&Aをするメリット

学習塾のM&Aにおいてのメリットを売却側・買収側の両方から解説します。メリットを元にしてM&Aを検討してください。

売却側のメリット 買収側のメリット
  • 仕事効率の向上
  • 人材不足の解決
  • 学習環境が維持可能
  • 担保や個人保証の解決
  • 早期リタイアが可能
  • 譲渡による利益の獲得
  • 事業規模の迅速で効果的な拡大
  • 新規事業へのハードルの低下
  • 優秀な人材の確保が可能
  • シナジー効果の発揮
  • 優秀な技術や知的財産の獲得

売却側のメリット

学習塾業界における売却側のメリットは、以下の通りです。

  • 仕事効率の向上
  • 人材不足の解決
  • 学習環境が維持可能
  • 担保や個人保証の解決
  • 早期リタイアが可能
  • 譲渡による利益の獲得

それぞれ詳しく解説していきます。

仕事効率の向上

学習塾事業においては、生徒をどう効率的に教えられるかが大切です。しかし、中小企業においては設備や人材への投資に限界がある状態です。なので、大企業に勝てるようなサービスを行うことは困難でしょう。

しかし、大企業の傘下に入ることにより、大企業の豊富な資金や設備を使って自社を急成長させることが可能です。また、合併した大企業と競争の必要がなくなるのも良いといえます。

人材不足の解決

学習塾のM&Aでは、講師不足の問題を解消できるメリットがあります。買収される側で講師が不足していても、買収側から新たに講師を補充可能です。買収側には新規事業を立ち上げるための十分な資産があるため、必要な人材を大量に確保できるでしょう。

優秀な講師確保は学習塾経営の要ですから、買収側も講師補充について十分検討し、対策を講じているはずです。買収側の資源を活用して不足講師を適切に補充でき、従来の講師不足問題を解消できます。

学習環境が維持可能

学習塾を売却する際の大きなメリットは、買い手の資金により従来の学習環境をそのまま維持できる点にあります。売却後も同じ場所で経営が続けられるため、これまで通っていた生徒は塾を変更する必要がなく、馴染みの環境で引き続き通うことが可能です。学習環境の変化がないので、生徒のモチベーション低下や集中力・学習能力の低下を防げます。

また、経営者側も事業売却後も地域での塾のブランド価値が失われることがありません。買い手による経営継続で、これまで築いてきた教育への信頼関係を維持できるのです。

担保や個人保証の解決

中小の業者にとって、事業運営のために融資を受ける際に、経営者個人が保証や担保を差し入れることは一般的です。しかし、その個人保証や担保は、万が一の場合に経営者自身の私財を失う危険性があり、大きな心理的プレッシャーとなります。

そういった観点から、M&Aによって事業を売却することで、経営者は個人保証や担保に伴う個人的なリスクから解放されるメリットがあると言えるでしょう。つまり、M&Aを活用することで、経営者自身が破産の危機にさらされるリスクを回避できます。

早期リタイアが可能

事業の経営者は、後継者不足や赤字による借金など事業に対する悩みや不安を抱えています。M&Aで会社を売ることにより、経営者ではなくなり悩みや不安は無くなるでしょう。

会社を売却して得た収益を使えば、今後の生活資金も確保可能なので、老後までずっと金に困らずに生活が可能です。ですので、早期で仕事を辞めるために企業におけるM&Aをすることもよくあります。

譲渡による利益の獲得

M&Aで売却をすることにより、企業価値に応じて利益を得ることができます。中小企業においてはかなりの場合経営者とその周りが株式などを保有しているので、ほとんどの利益を独占し新たな事業に活用が可能です。さらに、エグジットのためにM&Aをすることもできます。

実際、新たな事業をするために既存の企業を売却する例も多いです。しかし、M&Aのプランにより課せられる税金や売却益の獲得者が変わる可能性もあるため、そこは注意が必要となります。

買収側のメリット

学習塾業界における買収側のメリットは、以下の通りです。

  • 事業規模の迅速で効果的な拡大
  • 新規事業へのハードルの低下
  • 優秀な人材の確保が可能
  • シナジー効果の発揮
  • 優秀な技術や知的財産の獲得

それぞれ詳しく解説していきます。

事業規模の迅速で効果的な拡大

M&Aにおいて買収側が得られる最大のメリットは、事業拡大ができることです。M&Aによって買収側の企業は事業規模や事業エリアの拡大などを狙うことができます。

学習塾のM&Aにおいては、教科書や講師といった有形資産と、地域からの信頼や教育ノウハウなどの無形資産を両方手に入れることが可能です。大きな信頼や独自の強みを持つ企業を買い取ることによって、円滑な事業を展開できます。学習塾業界においては競合他社に負けずに生徒のニーズに応えることが必須なので、それが円滑になるのは嬉しいことです。

新規事業へのハードルの低下

M&Aを行うことによって、買収側企業は新規事業への参入を容易に行うことが可能です。一から新規事業として立ち上げるより、はるかに早期進出が可能となります。

景気の悪化により単一分野での事業展開は非常に危険とされている現代において、M&Aによる新規事業への参入は非常にメリットが大きいとされている戦略です。リスク分散の観点からM&Aをする大手企業の数は、ここ数年で一気に増加しています。

また売却先の企業が持つノウハウや市場シェアをそのまま引き継ぐことができるため、総体的に見れば、新規事業への投資額を削減することにも繋がるでしょう。新規事業参入におけるコスト削減でも大きく貢献する要素となります。

学習塾業界は、多くの講師や教室などがなければ満足な利益を出すことができない業界です。なので、それらを持つ企業を買い取ることにより、有利な状態でビジネスを始めることができます。

優秀な人材の確保が可能

少子高齢化が問題となっている現代では、優秀な人材の確保はどの業界においても必須の課題です。優秀な人材を確保することは、そのまま企業の行く末に作用します。

M&Aを行うことによって、売却側企業に所属する講師をそのまま雇用すれば、優秀な人材をそのまま自社に引き入れることができます。もちろん業界におけるノウハウも既に所有しているため、研修を行う手間も省くことが可能です。

ただし売却側企業に所属する従業員全員が優秀であることの保証はないことに加え、M&A後の企業文化の変化に付いてこられず、離職する従業員が発生する可能性もあります。M&Aによって講師を引き継ぐ場合には、非常に繊細な注意が必要です。

さらに、いくつかの講師は夜中でも勤務することになります。そのため、従業員を前の会社よりも多く働かせると過労死などの問題が起こりかねません。従業員の心身のケアは常にする必要があります。

シナジー効果の発揮

他の企業を買収し二つの企業の経営資源や技術を融合することにより、相乗的な効果が生まれます。例えば企業が持っていた大量の講師ともう一つの企業が持っていたIT技術を組み合わせて、効率的な業務体制を作るなどが一例です。

さらに、二つの企業の講師同士が交流しながら働くことにより、お互いで技術の向上ができるかもしれません。ただし、逆に二つの企業が合わさることにより悪い効果が生まれる可能性もあるので、工夫が必要です。

優秀な技術や知的財産の獲得

買収をするとできることの一つに、優秀な技術や知的財産の獲得が挙げられます。学習塾における教育の効率化に関するノウハウや、生徒の管理、講師の管理に関するシステム、さらには地域での知名度や顧客基盤といった無形の資産は、買収先企業から獲得できれば大きな強みとなるはずです。

例えば、生徒の管理を自動で行う技術、教室の監視カメラなどを取得できれば、業務効率の改善やサービスの安全化が図れ、競争力を高められます。また、取引先、教科書、講師などを管理するシステム、教室のエアコンの温度管理プログラムや生徒データベースなどのITツールを入手できれば、サービスの高付加価値化や収益性の向上にもつながるでしょう。

さらに、買収した企業が長年培ってきた地域における高い信頼と顧客基盤があれば、買収企業はその顧客を自社に取り込むことで、瞬時に売上を伸ばすチャンスを得られます。特に中小企業の買収では、そうした地場に根付いた技術やノウハウ、顧客の獲得が、大手企業にとって大きなメリットとなる場合が多いです。

学習塾のM&Aの注意点

学習塾のM&Aを行う際の注意点を解説します。M&Aを行う際の注意点は、以下の通りです。

  • M&A前の調査(デューデリジェンス)
  • 買収先の事前の情報確認
  • 従業員、取引先や情報の流出
  • M&Aの専門知識を持たない状態での引き継ぎ

それぞれ詳しく解説していきます。

M&A前の調査(デューデリジェンス)

M&Aにおいて、買収する企業のことを詳しく調査することは必須です。企業を買収した後に問題が発見されると非常に大きな負担がかかってしまいます。そのため現在のM&Aでは先にデューデリジェンスと呼ばれる調査をすることが主流です。

例を挙げると、薄外債務の発覚で思わぬ借金を抱えることがよく起こり得ます。そのため、財務に関する調査を事前にしておくことでそれを防ぐことが可能です。全ての問題を洗い出し解決することにより、買収後スムーズに事業を進められます。

これは買う側に限ったことではありません。売る側も社内調査をしておきそれを報告する義務があります。もしデューデリジェンスで問題が発覚した場合、相手の信頼を下げてしまうことがあり危険です。

買収先の事前の情報確認

これも事前調査と関係がありますが、買収した企業の資源や過去の情報をあらかじめ確認しなければなりません。もし買収した企業が想定より少ない生徒だった場合、大きな損害が生じてしまいます。

他にも、買収した企業が過去に問題を起こしていた場合も大変です。講師の不祥事などが起こっていると、顧客の信頼度を大きく下げます。すると、サービスの利用者が減り想定よりも少ない利益を得ることになるでしょう。

売り手側もきちんとM&Aの前に情報の整理をする必要があります。もし相手側が自身の会社のことをよく理解していない場合、正しく情報を伝えることが大事です。それだけでなく、買い手が資源などを売り手と共有したくない場合もあります。それに関しても先に確認しておくことが重要です。

従業員、取引先や情報の流出

M&Aにて買収を行う企業は、売り手側の講師や取引先を狙うことも数多くあります。しかし、環境と企業文化が変わることにより、従業員や取引先が流出してしまうかもしれません。

それを防ぐためには、従業員や取引先の事情やこだわりなどを丁寧に考えて、良い施策を打つことが大切です。

さらに、場合によってはM&Aの計画情報が交渉中に漏えいすることがあります。そうすると、講師や取引先がM&Aの前に減少してしまい価値が下がってしまうかもしれません。そのためには、情報を明かさないために交渉相手と秘密保持契約を結び、情報の漏えい対策をすることが必須です。

M&Aの専門知識を持たない状態での引き継ぎ

この業界に限らず、M&Aでは、買い手が売り手より知識や経験が豊富なことから情報格差があるため、M&Aの専門知識を持たない状態での売買は非常に危険です。

買い手の知識・経験が圧倒的に売り手を上回る場合には、買い手が有利になるような企業の低額買収が起こりかねません。最悪の場合には、M&Aで得をしようとしたはずが、不利な条件でM&Aをすることによって、巨大な損害を被るケースもあります。

そこで、もしM&Aの経験が不足しているのであれば、M&Aアドバイザーを導入するのが定石です。M&Aで自社が損害を被ることを避けるのはもちろん、より有利な条件でM&Aを成功させることが出来るでしょう。

学習塾におけるM&Aを成功させるためのポイント

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学習塾業界におけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。M&Aを成功させるためのポイントは、以下の通りです。

  • M&A戦略の立案
  • 相場価格をよく理解しておく
  • 統合後の事業計画の確立

それぞれ詳しく例を用いながら解説していきます。

M&A戦略の立案

M&A戦略とは、M&Aによってどのような効果を得るのかを検討するための準備や計画を指すものです。M&A戦略の如何によって、M&A後の事業計画もより具体化・明確化されます。

M&A戦略では、自社を分析するSWOT分析や市場調査・業界トレンドを調査して傾向の把握が必須です。明確な戦略を立てたうえで、買収、売却先の選定や交渉を行っていくこととなります。

M&A戦略において重要視すべきポイントは、以下の通りです。

  • M&Aにより何を達成したいか(売却・売却後まで視野に入れたもの)
  • 自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か(事業の一部または全部)
  • いつ・誰と・何を・いくらで・どのように売却(買収)するか
  • 買収(売却)において障壁となる要素はあるか
  • M&Aに必要な予算はどのくらいか(買収側のみ)

上記のポイントを押さえておくだけで、M&Aにおける戦略はより具体的なものになるはずです。反対にM&A戦略が雑だと、交渉において不利な条件を飲まされるなどの弊害が発生します。

以下は学習塾における簡単な一例です。参考にしてみてください。

買収側

M&Aにより何を達成したいか

M&Aにより、生徒を大幅に増やし、それに伴い講師も受け入れ効率的な業務体制を作る。それにより売上高を大幅に増やしたい。

いつ・誰と・何を・いくらで・どのように買収するか

半年後にA社の事業や資産の全部を相場にあった金額で銀行融資を使って買収する。

買収において障壁となる要素はあるか

現在まだA社の生徒の数が具体的にわからず、買収をした際損をしてしまうリスクがある。
M&Aに必要な予算はどのくらいか 〇〇億円での買収を予定。しかし、売り手の希望による少しの変更は可。

売却側

M&Aにより何を達成したいか M&Aによりさらに多くの講師を確保したい。また、売却時に手に入れた利益を使いさらに教室を増やしたい。
自社は売れるのか。売れるとすればどの部分か 自社は質の良いテキストを所有しており、講師の教育に力を入れている。多大な信頼と優秀な講師を持っているので、それら全部をアピールすれば多大な収益が得られる。
いつ・誰と・何を・いくらで・どのように売却するか 利益が安定している時期にB社に対して自社のテキスト、講師を含めた全ての財産を時価に会う適正な価格でM&Aアドバイザーを通して譲渡する。
売却において障壁となる要素はあるか 現在ITシステムがあまり充実していない。買収より前に本格的なITシステムの導入を行い、万全の状態にしておく必要がある。

(実際はこれよりもっと細かく正確に計画を練る必要があります)

しかし、この例を見ると「相場にあった金額」や「時価に会う適正な価格」など、どう決めれば良いかわからないものが複数あると思います。これらを決めるのに大抵の企業は専門業者に依頼や相談をするのが定石です。素人が一人でM&Aをするのは大変危険なので絶対にやってはいけません。

そこで、自社にM&Aにおいて詳しい人物が所属していないのであれば、M&A委託業者に戦略の立案・実行を依頼することを強く推奨します。費用こそ掛かりますが、よりスムーズにM&Aを成功まで導いてくれるでしょう。

当社のM&A仲介サービス「M&A HACK」では上記の戦略実行・買い手紹介を完全成功報酬でリスクなしの報酬形態で一気通貫対応しています。初回の相談は無料ですのでお気軽に下記よりご相談ください。

無料相談のご予約:
https://sfs-inc.jp/ma/contact

相場価格をよく理解しておく

M&Aを実行する際には、売り手側・買い手側ともに相場価格をよく理解しておくことが必要です。M&Aの企業売買における相場価格は、該当の会社の価値によって算出され、事業売却・企業買収の金額目安とされます。

M&Aでは、例として株式譲渡もしくは事業譲渡が使われることがあります。株式譲渡と事業譲渡の大まかな相場は以下のように計算されます。

  • 株式譲渡:時価純資産額+営業利益×2年~5年分
  • 事業譲渡:時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分

当然ながら事業利益が多いほどに相場価格も高騰します。実際のM&A売却における相場計算はM&A委託企業に依頼することになりますが、もし可能であれば依頼前に自社の相場を簡単に計算してみましょう。

場合によっては相手側との相談により予算が変わることがあります。なので、売り手側であれば算出価格よりも安く予算を立て、買い手側であれば相場よりも高く予算を立てるのがポイントです。予算の算出においては、相場よりも多少のズレが発生することをあらかじめ考慮しておきましょう。

統合後の事業計画の確立

M&Aにおいては成約がゴールではなく、売り手側と買い手側の両者が思い描いた目標を実現させることが本当のゴールです。そこでM&AにおいてはPMIという考え方が重要になります。

PMIとは、いわばM&A成約後の「統合後にどうすれば良いか」を指す単語です。PMIにおける重要な要素には、以下のようなものがあります。

  • 新たな経営体制の構築
  • 経営における目標実現のための計画作成
  • 両社協業のための体制構築・業務システムの強化

上記の点に留意しながら、PMIを立案します。PMIを綿密に行うことで、売り手・買い手の両者に発生するリスクを最小限に抑え、成果を最大化させることが出来るでしょう。

またPMIは成約後に立案するものではなく、M&A戦略の立案時から実行すべきものです。M&Aの成約には1年以上の期間が掛かることがほとんどなので、PMIも長期的に行なわなければなりません。

学習塾業界のM&Aにおける成功事例

学習塾業界に関係するM&Aにおける成功事例を紹介します。これから学習塾業界におけるM&Aを検討している人は、ぜひ参考にしてください。

昴におけるタケジヒューマンマインドの吸収

九州4県を中心に66校の学習塾を運営してきた教育事業者の昴は、沖縄県での事業基盤拡大と経営の安定化を図るため、新たな戦略を打ち出しました。

社会状況が大きく変化する中、昴は新たなビジネス機会と市場獲得を目指し、沖縄県で高校生向け予備校「即解ゼミ127°E」を運営するタケジヒューマンマインドの全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。

この合併により、両社の経営資源が一体化され、収益力の強化と事業運営の効率化が実現できると見込まれます。合併後、昴は九州4県と沖縄県で合計68校の学習塾網を持つことになり、沖縄県内でのシェアが大きく高まるでしょう。時代の変化に適応しつつ、さらなる市場開拓と持続的成長の実現に向け、経営基盤の拡充と安定化が今後も期待されます。

参考:株式会社タケジヒューマンマインドの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

SELC Australia Pty Ltdと京進のM&A

京進は、SELC Australia Pty Ltdの全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。それによって、様々な効果を見込んでいます。

SELC Australia Pty Ltdは、オーストラリア・シドニーで留学生向けの語学学校や専門学校を運営する会社です。一方、京進自身もシドニーで英語教育事業を展開していました。両社のノウハウとリソースを共有・一体化することで、京進の英会話事業における新規サービス展開や、語学関連事業全般でのシナジー効果が生まれ、事業拡大が図れると考えられています。

SELC Australia自体は2020年8月に会社更生手続き(Administration)を行い、9月に債権者と和解書を締結するなど、経営の健全性確保に努めてきました。株式取得に当たっては、オーストラリア当局の承認なども済んでいます。

京進は国内外で多角的な教育・人材関連事業を手掛ける大手です。この買収を通じて、海外拠点のノウハウ・リソースを自社に取り込み、語学事業の強化と新たな展開を実現するものと見られています。

参考:SELC Australia Pty Ltd の株式取得に関するお知らせ

Cheer plusの城南進学研究社への株式譲渡

城南進学研究社は、Cheer plus社を完全子会社化しました。今回、城南進学研究社がCheer plusを完全子会社化したことで、両社の既存事業とノウハウを組み合わせることによるシナジー効果が生まれるとされています。

城南進学研究社グループは、保育園や英語教室などの乳幼児教育事業において、積極的な教室展開やM&Aによる事業拡大を進めてきました。一方のCheer plus社は、東京都世田谷区で認可外保育園「サニーキッズインターナショナルアカデミー」(1歳~8歳対象)を運営しており、英語教育や学童保育など、優れたノウハウを有しています。

この買収の理由として具体的には、城南進学研究社の事業規模のさらなる拡大が加速すると同時に、Cheer plusの持つノウハウを活用することで、より質の高い保育サービスの提供が可能になると判断されたことにあります。つまり、M&Aの狙いは規模とサービス品質の両面で相乗効果が生まれ、城南進学研究社グループの乳幼児教育事業の成長が一層促進されることです。

参考:cheer plus 株式会社子会社化のお知らせ

マナボによる駿台グループへの株式譲渡

株式会社マナボは、2018年5月31日付で全株式を大手予備校の駿台グループ傘下のエスエイティーティー株式会社に譲渡し、駿台グループの一員となりました。今後、両社はシナジー効果を生み出していく考えです。

マナボはこれまでオンラインでの家庭教師サービス「manabo」を提供してきた会社で、一方の駿台グループは大学受験に実績のある予備校グループで、多くの生徒を持ちます。

買収した後は、まずマナボが持つITシステム・ノウハウと駿台グループの教育ノウハウを組み合わせ、教育におけるIT分野での新サービス開発を推進していく予定です。さらにeラーニングの充実や、駿台グループが直接の拠点を持たない地域での教育研修サービスの強化を図ります。

加えて駿台グループの子会社を窓口として、マナボのシステムを病院、自治体、企業の研修など、教育以外の異業種にも展開していく考えです。つまり予備校大手と家庭教師会社が統合することで、IT分野における新サービスの開発と様々な分野への事業領域拡大を実現していくことが目指されているということになります。

参考:株式会社マナボは5月31日付で、駿台グループの一員になりました。

ベネッセとUdemyの資本提携

ベネッセホールディングスは、社会人の生涯学習であるリカレント教育事業の成長を加速させるため、世界的なオンライン学習プラットフォーム「Udemy」を運営するUdemy社に約55億円を出資することで、より深い連携関係を構築します。

この資本提携により、日本国内におけるUdemyサービスの独占的な共同運営権を取得可能です。ベネッセはこの提携を通じて、Udemyが持つ社会人学習者の膨大な学習履歴データを活用し、社会人向けに新たな学習サービスやキャリア支援サービスを開発していきます。

社会人のための教育の需要が高まる中、ベネッセグループはUdemyとのシナジーを最大化することで、社会人の生涯学習とキャリア形成を強力に支援する新しい社会基盤の構築を目指す方針です。

参考:ベネッセHD、教育プラットフォームを提供する米Udemy社と資本提携

早稲田アカデミーによる個別進学館の吸収

早稲田アカデミーは2021年12月に個別進学館を吸収合併しました。

早稲田アカデミーは、関東を中心に中学・高校・大学受験の集団指導塾を運営する大手学習塾です。一方の個別進学館は、明光ネットワークジャパンやMAXISエデュケーションから個別指導事業を譲り受けて2016年に設立された会社となります。

このM&Aの狙いは、意思決定の迅速化と事業運営の効率化を図ることです。個別進学館を自社に入れることで、経営資源の有効活用とスピーディーな意思決定が可能になります。他に、集団指導校舎との連携強化も理由です。個別指導と集団指導の垣根を取り払い、お互いの長所を生かした新サービス展開の基盤を築くことができます。

つまり、今回の統合を通じて、グループ経営の機動力を高め、意思決定の迅速化と事業運営の効率化を図る一方、集団指導と個別指導の連携を深めて新サービス展開の土台を築くことが、主な目的とされているのです。

参考:吸収合併に係る事後開示書面

学研ホールディングスによるジープラスメディアの買収

2022年3月、株式会社学研ホールディングスは、株式会社ジープラスメディア(GPM社)の全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。

GPM社は、2001年から日本在住の外国人向けに、英字ニュースサイト「Japan Today」や求人・生活情報サイト「GaijinPot」、不動産情報サイト「Real Estate Japan」、ライフスタイル情報サイト「SavvyTokyo」などを運営してきた会社です。日本に在住する外国人からの高い支持と認知度を誇っています。一方、学研ホールディングスは、教育・出版・医療福祉・物流など多岐にわたる事業を傘下に抱える持株会社です。

今回の子会社化により、学研ホールディングスは、GPM社が持つ外国人向けサービスのノウハウやユーザー基盤を自社グループに取り込むことができます。これにより、デジタル分野とグローバル分野において、両社の強みを掛け合わせた新しい事業機会の創出が可能になるとのことです。

参考:株式会社 学研ホールディングスへの移行のお知らせ

サンリオとやる気スイッチグループホールディングスとの資本提携

2022年2月、キャラクター総合娯楽企業のサンリオと総合教育サービスグループのやる気スイッチグループホールディングスが資本提携を結びました。サンリオがやる気スイッチグループの株式10%を取得したものです。

サンリオは「ハローキティ」などの多数の有名キャラを保有し、国内外で小売、エンターテイメント事業などを展開しています。一方のやる気スイッチグループホールディングスは、個別指導塾「スクールIE」などの教育事業を運営する持株会社で、国内外に2,000超の教室を持つ企業です。

両社はこの提携により、相互の強みを活かした様々な新規事業の創出を目指します。やる気スイッチグループの知育玩具をサンリオ店舗で販売、サンリオ施設でのイベント開催、教材へのキャラ活用など、幅広い分野での協業が検討中です。たくさんのキャラクターとエンターテイメント分野の強みを持つサンリオと、教育サービス分野に強みを持つやる気スイッチグループが連携し、お互いの長所を最大限に生かした新規事業の創出を目指すということになります。

参考:サンリオとやる気スイッチグループ HDが資本提携

ヒューリックによるリソー教育の一部取得

ヒューリックは、主力の不動産賃貸事業に加えて、教育事業への進出を目指しています。そのため、個別指導塾「TOMAS」を運営するリソー教育の株式を追加で取得し、筆頭株主になりました。このことで、両社の協力関係をより強固にすることを狙っています。

具体的には、ヒューリックはリソー教育の株式を約70億円分追加取得し、出資比率を20.38%に引き上げました。両社は以前から協力関係にありましたが、今回の株式取得により、教育事業での協力関係をさらに深めることができます。

ヒューリックは、入居者を教育関連企業に特化したビルの開発を計画しており、リソー教育の専門知識を活用することで、不動産賃貸に次ぐ主力事業を育成することを目指している状況です。不動産事業と教育事業を組み合わせ、新たなビジネスモデルを作ろうとしています。

ヒューリック、リソー教育の筆頭株主に 70億円追加出資

エージェントが「本気のパソコン塾」事業を譲受

2021年4月、システムサポート・人材サービス会社のエージェントは、三浦宙也氏が運営するオンラインスクール「本気のパソコン塾」の事業を譲り受けました。

エージェントは、システム・アプリ開発、オフショア開発ラボ、人材派遣・紹介、就業支援メディア運営など幅広い事業を手掛けています。中でも個人のキャリアチェンジを支援する「Next Career」という人材紹介サービスが核となっていました。一方の本気のパソコン塾は、WEBデザインやプログラミングなどのPCの実践的スキルを教えるオンラインスクールです。

未経験からIT技術職への転職には、スクールでの事前スキル習得が不可欠となります。そこでエージェントは、本気のパソコン塾の事業を譲り受けることで、未経験者にITスキル習得の場を提供でき、さらに本気のパソコン塾の会員に転職の機会を提供できるとみなしました。エージェントとしては、本気のパソコン塾を事業基盤として、オンラインスクール事業の拡大や関連サービスの展開を行うことで、総合的な事業価値の向上を目指す考えです。

参考:オンラインスクール「本気のパソコン塾」事業譲受のお知らせ

ヤマノホールディングスによる東京ガイダンスとのM&A

ヤマノホールディングスは2022年5月、教育事業の強化を目的として、個別指導学習塾「スクールIE」に加盟し東京・神奈川地区で16店舗を運営する東京ガイダンスの全株式を3億1,500万円で取得し、完全子会社化しました。

ヤマノホールディングスは持株会社であり、教育事業、美容事業、訪問・展示会販売事業を中核事業としてグループ経営を行っている会社です。今回のガイダンス買収は、両社の協業によるシナジー効果を活かし、教育事業の更なる拡大を図る戦略的な買収と位置付けられています。

ヤマノホールディングスは、東京ガイダンスの経営ノウハウとの相乗効果により、首都圏を中心に個別指導塾の事業を加速させる計画です。教育分野での事業基盤を強化することで、グループ全体の収益力向上と事業ポートフォリオの最適化を目指しています。

参考:東京ガイダンス株式会社 株式取得に関する補⾜説明資料

スプリックスによるひのき会の和陽日本語学院事業の子会社化

スプリックスは、2022年6月にひのき会の和陽日本語学院事業を完全子会社化しました。取得価額は非公開です。

スプリックスは新潟県や首都圏で個別指導の「森塾」を運営するほか、国際基礎学力検定「TOFAS」など海外事業にも注力しています。一方のひのき会は、学習塾経営指導と日本語学校経営を手掛けていました。

この買収を通じ、スプリックスは両社のブランド力と運営ノウハウを組み合わせ、日本語教育事業を強化する狙いです。日本の労働力不足や外国人留学生の入国緩和を受け、日本語教育の社会的意義が高まっていることが背景にあります。

今後は日本語学校事業を基盤にするとともに、中期的にはスプリックスの海外展開において、ひのき会と共同で日本語教育コンテンツの開発を行う予定です。スプリックスは「教育を通して世界中の人に人生の新たなステージを届ける」というミッションを掲げています。

参考:日本語学校事業の譲受及び子会社設立に関するお知らせ

明光ネットワークジャパンによるSimpleの買収

明光ネットワークジャパンにより、新規事業分野への進出と事業ポートフォリオの多角化、そして両社間のシナジー効果の発揮を目指してsimple株式会社の完全子会社化が戦略的に行われました。

明光ネットワークジャパンは、従来の教育事業に加えて人材紹介事業を新たな収益の柱として育成する方針を掲げていました。少子高齢化が進行する中で、保育分野における人材需要は高まっており、Simpleの保育士や栄養士向けの転職支援事業を取り込むことで、この分野での事業基盤を確立することができます。同時に、単一の教育事業に依存しない多角的な事業ポートフォリオを構築し、社会環境の変化に強い企業体制を整備することが可能です。

さらに、明光ネットワークジャパンとSimpleは、「人の可能性を開く」という経営理念や企業文化に親和性があり、明光ネットワークジャパンの教育ノウハウとSimpleの人材紹介ノウハウを組み合わせることで、グループ全体としてシナジー効果が生まれると期待されています。つまり、この買収を通じて、新規事業の確立、事業ポートフォリオの多様化、そしてグループ間のシナジー創出という3つの効果を同時に実現し、明光ネットワークジャパンの持続的な成長を後押しすることが狙いです。

参考:Simple株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

スタディプラスによるシリーズDラウンドへの資金の調達

スタディプラスは、2010年の創業以来、学習者および教育機関向けの学習管理プラットフォームを中核事業として展開してきました。COVID-19の影響により教育の変革が加速し、学習管理アプリ「Studyplus」のユーザー数が急増、教育機関向けプラットフォーム「Studyplus for School」も1,000校以上に普及するなど、事業領域が大きく変化しました。

この背景の下、スタディプラスは2022年8月にシリーズDラウンドで資金調達を実施しました。調達資金は、「Studyplus」「Studyplus for School」「Studyplusブック」などのソフトウェア製品の機能強化と、教育現場の課題解決に向けた取り組みに充当される計画です。個別最適化学習の実現に向けた教育データの活用等にも注力し、「学ぶ喜びをすべての人へ」というミッションの達成を目指します。

参考:スタディプラス、シリーズDラウンドでの資金調達を実施

さくらさくプラスによるVAMOSの子会社化

2021年6月、さくらさくプラスがVAMOSを子会社化するM&Aを実施しました。VAMOSは東京都内で中学受験対策の学習塾3校を運営する教育事業者であり、さくらさくプラスは関東圏に73園の認可保育園「さくらさくみらい」を展開する保育事業者です。

この買収を通じて、乳幼児期から小学校卒業に至るまでの一貫した教育サービスを提供できる体制を整備することができます。加えて、さくらさくプラスが有する不動産事業のノウハウを生かして、教育事業における不動産の有効活用を図ることが可能です。

今後は、女性の社会進出に伴う共働き世帯の増加や少子化による一人当たりの教育費の上昇など、保育と教育を取り巻く環境変化に対応し、サービス提供を強化することを目指しています。このM&Aによって、保育業界と学習塾業界の両方で事業を活性化させ、子どもたちの健全な成長と「なりたい将来」の実現をサポートする総合的な教育インフラを構築する方針です。

参考:子どもの「なりたいみらい」の実現に向けてさくらさくプラスが学習塾VAMOSを完全子会社化

まとめ

 

今回は、学習塾M&A・事業承継の全知識ということで、学習塾業界のM&Aにおける売却相場・事例・成功ポイントを解説しました。

学習塾業界は、少子化で生徒を取り合っている状態です。そのため、今後M&Aでの生徒引き入れが必要になってくる企業もあるでしょう。それだけでなく、教育の効率化のためにITシステムの導入も欠かせません。

M&Aは企業の存続や成長のための戦略としてとても効果があります。ですが、生半可にできるものではありません。ぜひ今回の記事を参考に学習塾におけるM&Aを検討してみてください。

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